説明

着色硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置および有機ELディスプレイ

【課題】インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成するに際し、従来トレードオフの関係になることの多かった、画素の平坦性と濡れ拡がり性の双方を満足する着色硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット法によるカラーフィルタ形成に使用される着色材料であって、少なくとも(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤および(d)分散剤を含み、かつ水分量が0.4重量%以上5重量%以下であることを特徴とする、着色硬化性樹脂組成物を用いる。特に(d)分散剤の有効固形分換算におけるアミン価が10mgKOH/g以上であり、(d)分散剤が、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体である着色硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置および有機ELディスプレイに関する。詳しくは、カラーフィルタの製造に当たり、インクジェット法による画素形成に適した長期吐出安定性を有する着色硬化性樹脂組成物と、この着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルタと、このカラーフィルタを備えてなる液晶表示装置並びに有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法により画素バンク内、すなわちブラックマトリクスで囲まれた略矩形の凹部領域に、着色材料を打ち込む方式でのカラーフィルタ製造技術が実用化されている。カラーフィルタに必要な基本品質として、画素内の塗布膜の平坦性が良好であること、すなわち凹凸や偏りによる色ムラがないこと、シワやクラックのような塗膜欠陥がないことが、信頼性の確保の上で重要である。また製造プロセスの安定化、歩留まりの向上には、撥液性を有するバンク内で着弾した液滴の濡れ拡がりが良好であること、すなわち画素間の混色を避けながら必要な液滴量を充填できることが重要である。
しかしながら、インクジェット法によって着弾された微小な液滴の乾燥のメカニズムは、未だ理論的に十分に解明されていない。そのため、上記のような塗膜欠陥を生じることなく、平坦性が良好な乾燥塗膜を得るためのプロセス条件やインク組成(色材、分散剤、バインダ樹脂、有機溶剤等)については、経験的かつ試行錯誤的に調整するしかなかった。
また同様に、インクジェット法によって着弾された微小な液滴の濡れ広がりのメカニズムも、未だ理論的に十分に解明されていない。すなわち、lμL程度のマクロな液滴の濡れ拡がり挙動は、接触角や粘度などのマクロな液物性によってほぼ正確に記述できるが、インクジェット法による数〜数十pL程度の微小液滴の濡れ拡がり挙動は、それらとは必ずしも相関しないものである。そのため、インクの流動性を高めると乾燥時に塗膜の乱れを生じ易くなる等、濡れ拡がり性は画素の平坦性とトレードオフの関係になることが多かった。
これらの課題に対して、例えば特許文献1では、界面活性剤を添加して表面張力の温度変化を抑えることにより、着色層の凹凸を防止する方法が示されている。しかしながら、該文献記載の界面活性剤は、インクの表面張力自体を大きく低下させてしまうため、インクジェット法による吐出安定性を損なうおそれがあった。さらには、一般的な常識では予測が困難なことであるが、該文献記載のインクは、インクジェット法により着弾した微小液滴の濡れ拡がり性を低下させるという問題が生じた。
【特許文献1】特開平7−216276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したように、マクロな液滴の挙動としてうまく濡れ拡がるようにインクを調製しても、微小液滴とした際には、濡れ拡がりを阻害する要因が作用するため、所望の特性が得られないことが多い。また上記阻害要因自体を特定することは極めて困難であるため、微小液滴の濡れ拡がり性はインクの構成材料(色材、分散剤、バインダ樹脂、有機溶剤等)の組み合わせによって試行錯誤的に調整するしかなく、前述した画素の平坦性とトレードオフの関係を解消することは困難であった。
本発明の目的は、従来技術における上記の諸問題を解決することにあり、特にインクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成するに際し、従来トレードオフの関係になることの多かった画素の平坦性と濡れ拡がり性の双方を満足する着色硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の目的はまた、このような着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素をもつ、高品質のカラーフィルタ並びに液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、微小液滴の濡れ広がり性に対する阻害要因を鋭意解析したところ、その詳細なメカニズムについては不明であるが、着色硬化性樹脂組成物中の水分量の影響が大であり、水分量を比較的高く調整することで濡れ拡がり性が良好となり、かつ画素の平坦性も良好となることを見出した。特に分散剤成分として、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、アミン価が10mgKOH/g以上(有効固形分換算)の、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体である分散剤または窒素原子を含有するグラフト共重合体である分散剤を使用した場合は、その影響が特に顕著であることを見出した。
【発明の効果】
【0005】
インクジェット方式における濡れ拡がり性および画素平坦性が良好な着色硬化性樹脂組成物を提供し、カラーフィルタを品質歩留まり良く製造できることにより、液晶表示装置を大量安価に提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施様態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。
【0007】
[1]着色硬化性樹脂組成物
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、少なくとも(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤および(d)分散剤を含有し、かつ水分量が0.4重量%以上5重量%以下であることを特徴とする。
尚、以下に本発明の着色硬化性樹脂組成物の各構成成分を説明するが、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリルおよび/又はメタクリル」、「アクリレートおよび/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸および/又はメタクリル酸」を意味するものとする。また、「(共)重合体」は「単一重合体(ホモポリマー)および/又は共重合体(コポリマー)」を意味するものとする。
また、以下において、「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明の硬化性樹脂組成物中の全成分を指す。
また、以下において、樹脂((共)重合体)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の値である。
また、以下において、着色硬化性樹脂組成物は単に「インク」と称されることがある。
【0008】
[1−1](a)色材
(a)色材は、本発明の着色硬化性樹脂組成物を着色するものをいう。色材としては、染顔料が使用できるが、耐熱性、耐光性等の点から顔料が好ましい。顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。以下に、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。なお、以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0009】
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254など、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254などを挙げることができる。
【0010】
青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6など、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6を挙げることができる。
【0011】
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36などを挙げることができる。
【0012】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、185など、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180などを挙げることができる。
【0013】
オレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79などを挙げることができる。この中でも、好ましくは、C.I.ピグメントオレンジ38、71などを挙げることができる。
【0014】
紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、23など、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23を挙げることができる。
上述の各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、顔料として、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用したりすることができる。
【0015】
なお、これらの顔料の平均一次粒径は通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.25μm以下である。
なお、顔料の一次粒径は次の方法で求めた。すなわち、顔料をクロロホルム中に超音波分散し、コロジオン膜貼り付けメッシュ上に滴下して、乾燥させ、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、顔料の一次粒子像を得た。この像から一次粒径を測定し、個数平均値を算出して平均一次粒径を求めた。
また、色材として使用できる染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0016】
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドオレンジ7,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドブルー29,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトオレンジ26,C.I.ダイレクトグリーン28,C.I.ダイレクトグリーン59,C.I.リアクティブイエロー2,C.I.リアクティブレッド17,C.I.リアクティブレッド120,C.I.リアクティブブラック5,C.I.ディスパースオレンジ5,C.I.ディスパースレッド58,C.I.ディスパースブルー165,C.I.ベーシックブルー41,C.I.ベーシックレッド18,C.I.モルダントレッド7,C.I.モルダントイエロー5,C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0017】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドグリーン25,C.I.リアクティブブルー19,C.I.リアクティブブルー49,C.I.ディスパースレッド60,C.I.ディスパースブルー56,C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
この他、フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3,C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33,C.I.アシッドイエロー3,C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1,C.I.アシッドオレンジ3,C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
これらのうち、主に最終的に得られる塗膜の耐光性および/又は耐候性、並びに堅牢性が優れるという点において、(a)色材には顔料を使用することが好ましい。また、色調の調整等の点において、必要に応じて顔料と染料を併用してもよい。
【0018】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、全固形分に対する(a)色材の占める割合は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0019】
(a)色材の含有割合が少なすぎると、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、液晶セル化の際のギャップ制御などに悪影響を及ぼす場合がある。また、逆に(a)色材の含有割合が多すぎると、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が起きる危険性がある。
【0020】
[1−2](b)バインダ樹脂
本発明の着色硬化性樹脂組成物は(b)バインダ樹脂を必須成分とする。(b)バインダ樹脂は、例えば、特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、(b)バインダ樹脂として特に好ましいものにつき、以下に説明する。
【0021】
(b−1):「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」
特に好ましい樹脂の一つとして、「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」(以下、「(b−1)」樹脂と称することがある)が挙げられる。より具体的には、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させ、更に該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」が挙げられる。
【0022】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
式(1)中、R1〜R6は各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R7及びR8は各々独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表すか、或いは互いに連結して環を形成していてもよい。
式(1)において、R7とR8が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、又、炭素数が5〜6であるのが好ましい。
中でも、一般式(1)で表される構造としては、下記式(1a)、(1b)、又は(1c)で表される構造が好ましい。
バインダ樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色硬化性樹脂組成物をカラーフィルタや液晶表示素子などに使用する場合に、該着色硬化性樹脂組成物の耐熱性を向上させたり、該着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
【化3】

【0027】
前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
式(2)中、R9は水素原子又はメチル基を示し、R10は前記一般式(1)で表される構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(1) で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0030】
尚、前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα−、o−、m−又はp−位が、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、エステル基などで置換されたビニル芳香族類;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類;N−(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
【0031】
これら「他のラジカル重合性単量体」の中で、着色硬化性樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を付与させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種を使用することが有効である。特に「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、これらスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。
【0032】
その溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶剤の使用量は得られる共重合体100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。溶剤の使用量がこの範囲外では共重合体の分子量の制御が困難となる。
【0033】
又、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を使用することができる。その有機過酸化物触媒としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。又、アゾ化合物触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のラジカル重合開始剤が1種又は2種以上使用される。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0034】
共重合反応は、共重合反応に使用される単量体及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加した単量体を、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。又、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中に単量体を滴下してもよい。反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0035】
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートが少なすぎると、後述する不飽和一塩基酸や多塩基酸無水物の付加量が不十分となるおそれがあり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが多すぎて、他のラジカル重合性単量体が少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。
【0036】
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、必要に応じて多塩基酸無水物とを反応させる。
エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸;クロトン酸;o−、m−又はp−ビニル安息香酸;α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、(b−1)樹脂に重合性を付与することができる。
【0037】
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。不飽和一塩基酸の付加割合が少なすぎると、着色硬化性樹脂組成物の経時安定性等に関して、残存エポキシ基による悪影響が懸念される。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0038】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、及び/又は無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明の組成物の、画素バンク内での濡れ広がり性の向上が期待できる。
【0039】
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。この範囲での付加割合の調整が、組成物の濡れ広がり性の制御に有効だと考えられる。但し、付加割合が少なすぎると、上記効果は期待できない。尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0040】
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
生成したカルボキシル基の一部に、重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
又、この両方を付加させてもよい。
重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニル基やアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。市販品として、例えば、ナガセ化成工業社製の商品名「デナコールEX−111」、「デナコールEX−121」、「デナコールEX−141」、「デナコールEX−145」、「デナコールEX−146」、「デナコールEX−171」、「デナコールEX−192」等がある。
尚、このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
【0041】
(b−1)樹脂の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると樹脂の粘度が上昇し、これを用いた組成物のインクジェット吐出性が悪化する傾向がある。又、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0042】
(b−2):カルボキシル基含有直鎖状樹脂
カルボキシル基含有直鎖状樹脂(以下、「(b−2)樹脂」と称することがある)としては、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、通常、カルボキシル基を含有する重合性単量体を重合して得られる。
カルボキシル基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系単量体;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものである単量体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸、フタル酸、或いはそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させた単量体等が挙げられる。これらは複数種使用してもよい。
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは、(メタ)アクリル酸である。
【0043】
又、(b−2)樹脂は、上記のカルボキシル基含有重合性単量体に、カルボキシル基を有さない他の重合性単量体を共重合させてなる共重合体であってもよい。
他の重合性単量体としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン及びその誘導体等のビニル芳香族類;N−ビニルピロリドン等のビニル化合物類;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエチレングリコールマクロモノマー、ポリプロピレングリコールマクロモノマー、ポリカプロラクトンマクロモノマー等のマクロモノマー類等が挙げられる。これらは複数種併用してもよい。
【0044】
特に好ましいのは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドである。
(b−2)樹脂が、さらに水酸基を有していてもよい。水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを上述の各種単量体と共重合させることにより、カルボキシル基および水酸基を有する樹脂を得ることができる。
【0045】
(b−2)樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド等の水酸基を含まない重合性単量体と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体との共重合体;(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とシクロヘキシルマレイミドとの共重合体等が挙げられる。
顔料分散性に優れる点からは、特にベンジル(メタ)アクリレートを含む共重合体樹脂が好ましい。
【0046】
本発明における(b−2)樹脂の酸価は、通常30〜500mgKOH/g、好ましくは40〜350mgKOH/g、さらに好ましくは50〜300mgKOH/gである。なお、組成物の保存安定性の点からは、酸価は低い方が好ましい。
また、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜80000、好ましくは3000〜50000、さらに好ましくは4000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎると、着色硬化性樹脂組成物の安定性に劣る傾向があり、大きすぎると、樹脂の粘度が上昇し、組成物のインクジェット吐出性が悪化する傾向がある。
【0047】
(b−3):(b−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
前記(b−2)樹脂の、カルボキシル基部分にエポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下、「(b−3)樹脂」と称することがある)も特に好ましい。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物も挙げることができるが、耐熱性や、後述する顔料の分散性の観点から、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
【0048】
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、その脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕基等が挙げられる。又、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものであるのが好ましく、好適な脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、下記一般式(3a)〜(3m)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【化5】

【0050】
式(3a)〜(3m)中、R11は水素原子又はメチル基を、R12はアルキレン基を、R13は2価の炭化水素基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数である。
一般式(3a)〜(3m)における、R12のアルキレン基は、炭素数1〜10であるものが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示できるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基である。又、R13の炭化水素基としては、炭素数が1〜10であるものが好ましく、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0051】
これらの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、一般式(3c)で表される化合物が好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記(b−2)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基部分に、前記エポキシ基含有不飽和化合物を付加させるには、公知の手法を用いることができる。例えば、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物とを、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン、トリフェニルホスフィン等の触媒の存在下、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより、樹脂のカルボキシル基にエポキシ基含有不飽和化合物を導入することができる。
【0052】
エポキシ基含有不飽和化合物を導入したカルボキシル基含有樹脂の酸価は、通常10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、より好ましくは30〜150mgKOH/gである。
又、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜100000、好ましくは4000〜50000、更に好ましくは5000〜30000である。
【0053】
(b−4):(メタ)アクリル系樹脂
(b−4)(メタ)アクリル系樹脂(以下、「(b−4)樹脂」と称することがある)としては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを単量体成分とし、これらを重合してなるポリマーをいう。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(b−4−1):(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合してなるポリマー、及び(b−4−2):下記一般式(4)及び/又は(5)で示される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー、を挙げることができる。
【0054】
【化6】

【0055】
式(4)中、R1aおよびR2aは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【0056】
【化7】

【0057】
式(5)中、R1bは水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Lは2価の連結基又は直接結合を表し、Xは下記式(6)で示される基又は置換されていてもよいアダマンチル基を示す。
【0058】
【化8】

【0059】
式(6)中、R2b、R3b、R4bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表し、L、Lは2価の連結基を表す。なお式(5)中のL3は、式(6)におけるR3b又はR4bと結合し、環を形成してもよい。また、式(6)におけるL、L、および式(5)におけるLの2以上が互いに結合し、環を形成してもよい。
【0060】
(b−4−1):(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合してなるポリマー(以下「(b−4−1)樹脂」と称することがある)
(b−4−1)樹脂は、顔料との親和性が高いという点で、好ましく用いられる。
単量体成分中における前記(メタ)アクリル酸及びベンジル(メタ)アクリレートの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中(メタ)アクリル酸は、通常10〜90重量%、好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。また、ベンジル(メタ)アクリレートは、全単量体成分中、通常5〜90重量%、好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。(メタ)アクリル酸の量は、多すぎても少なすぎても、分散が困難になる傾向がある。
【0061】
(b−4−2):一般式(4)及び/又は(5)で示される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(以下「(b−4−2)樹脂」と称することがある)
まず、一般式(4)の化合物について説明する。
一般式(4)で表されるエーテルダイマーにおいて、R1aおよびR2aで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R1aおよびR2aは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0062】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0063】
(b−4−2)樹脂を得る際の、単量体成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中、通常2〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となるおそれがある。
【0064】
続いて、一般式(5)の化合物について説明する。
一般式(5)中、R1bは、好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子、メチル基である。
また、一般式(6)中、R2b、R3b、R4bの有機基としては、それぞれ独立に、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基である。
【0065】
2b、R3b、R4bの中で好ましい置換基としては、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基である。
1、L2は2価の連結基、L3は2価の連結基又は直接結合であれば特に限定を受けないが、少なくともL1又はL2のどちらかは炭素数1以上の連結基であるのが好ましい。また、L1、L2、L3はそれぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜15のアルキレン、−O−
、−S−、−C(=O)−、炭素数1〜15のアルケニレン、フェニレン、あるいはそれらの組み合わせが好ましい。
1、L2、L3の好ましい組合せとしては、L3は直接結合、炭素数1〜5のアルキレン、又はR3bあるいはR4bと結合して形成する環であり、L1、L2は炭素数1〜5のアルキレンである。
また、一般式(6)の好ましいものとしては、下記一般式(7)で示される化合物を挙げることができる。
【0066】
【化9】

【0067】
式(7)中、R2b、R3b、R4b、L1、L2は、式(6)におけると同義であり、R5b、R6bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表わす。
一般式(7)中、R5b、R6bの有機基としては、それぞれ独立に、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基である。
5b、R6bの中で好ましい置換基としては、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基である。
また、R1bのアルキル基、R2b、R3b、R4b、の各有機基、L1、L2、L3の2価の連結基、Xのアダマンチル基は、それぞれ独立して置換基を有していてよく、具体的には以下の置換基を挙げることができる。
【0068】
ハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、アミルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、アミルチオ基、t−アミルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;ビニルチオ基、プロペニルチオ基、ヘキセニルチオ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルチオ基;−COR17で表されるアシル基;カルボキシル基;−OCOR18で表されるアシルオキシ基;−NR1920で表されるアミノ基;−NHCOR21で表されるアシルアミノ基;−NHCOOR22で表されるカーバメート基;−CONR2324で表されるカルバモイル基;−COOR25で表されるカルボン酸エステル基;−SO3NR2627で表されるスルファモイル基;−SO328で表されるスルホン酸エステル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、オキサゾリル基、ベンゾキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和もしくは不飽和の複素環基;トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基等。
【0069】
なお、R17〜R28は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
また、上記置換基の位置関係は特に限定されず、複数の置換基を有する場合、同種でも異なっていてもよい。
一般式(5)で表される化合物の具体例としては下記が挙げられる。
【0070】
【化10】

【0071】
【化11】

【0072】
本発明に係る(b−4−2)樹脂を構成する単量体成分中、一般式(5)の割合は、特に制限されないが、通常は全単量体成分中0.5〜60重量%、好ましくは1〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。
【0073】
(b−4−3)(b−4)樹脂について
本発明における(b−4)樹脂は、(b−4−1)樹脂および(b−4−2)樹脂を含め、いずれも酸基を有することが好ましい。酸基を有することにより、得られる着色硬化性樹脂組成物が、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、酸−エポキシ硬化と略する)により硬化が可能な着色硬化性樹脂組成物とすることができる。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0074】
(b−4)樹脂に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として使用すればよい。なお「重合後に酸基を付与しうるモノマー」を単量体成分として使用する場合には、重合後に、後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0075】
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0076】
(b−4)樹脂を得る際の単量体成分が、前記酸基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
また(b−4)樹脂は、ラジカル重合性二重結合を有するものであってもよい。
【0077】
前記(b−4)樹脂にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば「重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー」(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0078】
(b−4)樹脂を得る際の単量体成分が、前記ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
本発明の(b−4)樹脂が、(b−4−2)樹脂である場合、エポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合すればよい。
【0079】
前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(b−4)樹脂を得る際の単量体成分が、前記エポキシ基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%であるのがよい。
【0080】
(b−4)樹脂を得る際の単量体成分は、上記必須の単量体成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、特に(b−4)樹脂の一部または全部を、後述するように分散剤として用いる場合は、(メタ)アクリル酸ベンジルを用いることが好ましく、その含有量は、通常全単量体成分中1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%であるのがよい。
【0081】
(b−4)樹脂を得る際の単量体成分が、前記共重合可能な他のモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0082】
次に、(b−4)樹脂の製造方法(重合方法)について説明する。
前記単量体成分の重合方法に特に制限はなく、従来公知の各種方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度=[単量体成分の全重量/(単量体成分の全重量+溶剤重量)]×100とする)は、使用する単量体成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なる。重合温度に関しては、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは重合温度60〜130℃である。また重合濃度に関しては、好ましくは重合濃度5〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。
【0083】
また、重合時に溶剤を用いる場合には、通常のラジカル重合反応で使用される溶剤を用いればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に特に制限は無いが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全単量体成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0085】
また分子量調整のために、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全単量体成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0086】
なお、一般式(4)の化合物を必須の単量体成分として使用する場合、前記重合反応においては、エーテルダイマーの環化反応が同時に進行するものと考えられるが、このときのエーテルダイマーの環化率は必ずしも100モル%である必要はない。
(b−4)樹脂を得る際に、単量体成分として、前述した酸基を付与しうるモノマーを用いることにより酸基を導入する場合、重合後に酸基を付与するための処理を行う必要がある。該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーを用いた場合には、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させるか、もしくは、まず(メタ)アクリル酸のような酸を付加させ、結果生じた水酸基に、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させればよい。
【0087】
(b−4)樹脂を得る際に、単量体成分として、前述したラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーを用いることによりラジカル重合性二重結合を導入する場合、重合後にラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行う必要がある。
該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いた場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いた場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の、水酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、(メタ)アクリル酸等の酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。
【0088】
本発明の(b−4)樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくはGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2000〜200000、より好ましくは4000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりインクジェット吐出性が悪化する場合があり、一方2000未満であると、膜強度が不充分となる傾向がある。
(b−4)樹脂が酸基を有する場合、好ましい酸価は30〜500mgKOH/g、より好ましくは50〜400mgKOH/gである。
【0089】
尚、(b−4)樹脂成分のうち、(b−4−2)樹脂としては、例えば、特開2004−300203号公報及び特開2004−300204号公報に記載の化合物を挙げることが出来る。
【0090】
(b−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下、「(b−5)樹脂」と称することがある)
エポキシアクリレート樹脂は、エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
【0091】
原料となるエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、油化シェルエポキシ社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−501」、「EPN−502」、「EPPN−503」)、フルオレンエポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学社製のカルドエポキシ樹脂「ESF−300」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「XD−1000」、大日本インキ社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−3000」、「NC−7300」)、および下記構造式で示されるエポキシ樹脂(特開平4−355450号公報参照)、等を好適に用いることができる。
【0092】
【化12】

【0093】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の他の例としては共重合型エポキシ樹脂が挙げられる。共重合型エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルメチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイドなど(以下「共重合型エポキシ樹脂の第1成分」と称す。)とこれら以外の1官能エチレン性不飽和基含有化合物(以下、「共重合型エポキシ樹脂の第2成分」と称す。)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、α−メチルスチレン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上、とを反応させて得られた共重合体が挙げられる。
【0094】
【化13】

【0095】
式(8)中、R61は水素原子又はエチル基、R62は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、rは2〜10の整数である。
一般式(8)の化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
上記共重合型エポキシ樹脂の分子量は約1000〜200000が好ましい。また、上記共重合型エポキシ樹脂の第1成分の使用量は、上記共重合型エポキシ樹脂の第2成分に対して好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0097】
このような共重合型エポキシ樹脂としては、具体的には日本油脂社製の「CP−15」、「CP−30」、「CP−50」、「CP−20SA」、「CP−510SA」、「CP−50S」、「CP−50M」、「CP−20MA」等が例示される。
原料エポキシ樹脂の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として、通常200〜200000、好ましくは300〜100000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲未満であると被膜形成性に問題を生じる場合が多く、逆に、上記範囲を越えた樹脂ではα,β−不飽和モノカルボン酸の付加反応時にゲル化が起こりやすく製造が困難となるおそれがある。
【0098】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。
エステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、アクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、アクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸−2−サクシノイルオキシエチル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル及びアクリル酸−2−フタロイルオキシエチルであり、特にアクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルとエポキシ樹脂との付加反応は、公知の手法を用いることができ、例えば、エステル化触媒存在下、50〜150℃の温度で反応させることにより実施することができる。エステル化触媒としてはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
【0100】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量は、原料エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸無水物との反応も不十分となる。また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
【0101】
α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルが付加したエポキシ樹脂に、更に付加させる多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
多塩基酸無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルの付加反応と同様な条件下で継続反応させることにより実施することができる。
多塩基酸無水物の付加量は、生成するエポキシアクリレート樹脂の酸価が10〜150mgKOH/gの範囲となるような量が好ましく、更に20〜140mgKOH/gの範囲が特に好ましい。なお、組成物の保存安定性の点からは、酸価は低い方が好ましい。
【0103】
その他、本発明における(b−5)樹脂としては、例えば特開平6−49174号公報記載のナフタレン含有樹脂;特開2003−89716号公報、特開2003−165830号公報、特開2005−325331号公報、特開2001−354735号公報記載のフルオレン含有樹脂;特開2005−126674号公報、特開2005−55814号公報、特開2004−295084号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
また、市販のカルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂を用いることもでき、市販品としては例えばダイセル社製の「ACA−200M」等を挙げることが出来る。
【0104】
バインダ樹脂としては、また、例えば特開2005−154708号公報などに記載のアクリル系のバインダも用いることができる。
上述した各種樹脂の中でも、本発明における(b)バインダ樹脂としては、(b−1):「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」が特に好ましい。またその分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として、5000〜20000程度が特に好ましい。
また、上述した各種樹脂は、後述する(d)分散剤との併用により、基板との密着性に優れた、高濃度の色画素を形成しうる。
具体的には、(b)バインダ樹脂の一部を前述の(d)分散剤とともに、後述する分散処理工程に使用する。この時、(b)バインダ樹脂は(a)色材に対して5〜200重量%程度使用することが好ましく、10〜100重量%程度使用することがより好ましい。
このように、分散処理工程に使用する(b)バインダ樹脂としては、(b)バインダ樹脂の項で記載した各種樹脂を使用することができるが、特に(b−4)(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、その中でも前記一般式(4)で表される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマー((b−4−2)樹脂)が最も好ましい。
(d)分散剤とともに分散処理工程に使用する場合、その(b)バインダ樹脂の酸価は10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が最も好ましく、また500mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以上が最も好ましい。なお、組成物の保存安定性の観点からは、酸価は低いほうが好ましい。
また(d)分散剤とともに分散処理工程に使用する場合、その(b)バインダ樹脂のGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が最も好ましく、また200000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が最も好ましい。分子量が大きすぎると、樹脂の粘度が上昇し、組成物のインクジェット吐出性が悪化するおそれがあり、また分子量が小さすぎると、分散安定性が低下するおそれがある。
【0105】
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、後述するように、光硬化性であっても熱硬化性であっても、その両方の作用により硬化するものであってもよい。
熱硬化作用を用いて硬化させる場合、バインダ樹脂としては、(b−1):「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」と、以下に挙げる(b−6)エポキシ基を有する樹脂を併用することが好ましい。
なお、インクジェット法にてカラーフィルタを製造する場合、後述する光重合開始剤を必ずしも含まなくてよいため、これに起因する輝度の低下を防ぐことができる点、また光硬化プロセスを省いて生産性を上げることができる点からは、熱硬化性を有するインク(着色硬化性樹脂組成物)を使用することが好ましい。
【0106】
(b−6)エポキシ基を有する樹脂
本発明にかかる(b−6)エポキシ基を有する樹脂(以下、「(b−6)樹脂」と称することがある)は、樹脂内にエポキシ基を有していれば特にその構造に限定はないが、中でも好ましいものとしては、側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物エポキシ基を有する(メタ)アクリレートを1種単独または2種以上の組み合わせて得られた重合体、あるいは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート構成単位にその他の単量体を通常10〜70モル%好ましくは15〜60モル%含有させた重合体が挙げられる。
エポキシ基を含有する樹脂の具体例としては次に挙げるような化合物が挙げられる。
【0107】
(b−6−1)側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物
側鎖にエポキシ基を有する脂環式ポリエーテル化合物としては、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物などの、側鎖にエポキシ基を有するポリシクロヘキシルエーテルが挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えばEHPE3150(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0108】
(b−6−2)ポリグリシジルエーテル化合物
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、テトラメチルビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、エチレンオキシド付加ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ、ビスフェノールA/アルデヒドノボラック型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、及びポリグリシジルエーテル樹脂として、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、フェノールとナフタレンとの重合エポキシ樹脂等のフェノール樹脂タイプエポキシ樹脂が挙げられる。
これらの(ポリ)グリシジルエーテル化合物は、残存するヒドロキシル基に酸無水物や二塩基酸等を反応させカルボキシル基を導入したものであってもよい。
【0109】
(b−6−3)ポリグリシジルエステル化合物
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ、フタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ等が挙げられる。
【0110】
(b−6−4)ポリグリシジルアミン化合物
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ビス(4−アミノフェニル)メタンのジグリシジルアミン型エポキシ、イソシアヌル酸のトリグリシジルアミン型エポキシ等が、それぞれ挙げられる。
【0111】
(b−6−5)その他の単量体
また、その他の例として、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸− 4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを1種単独または2種以上の組み合わせでた重合体、あるいは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート構成単位に他の共単量体を通常10〜70モル%好ましくは15−60モル%含有させた重合体が挙げられる。このうち共重合体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニルの如き(メタ)アクリル酸のエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンの如きビニル芳香族系化合物を挙げることができる。好ましいエポキシ基を有する(メタ)アクリレートは(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。好ましい共重合体としては(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、α−スチレンが挙げられる。
【0112】
また、本発明に使用される(b−6)樹脂に使用されるエポキシ基は、通常1,2−エポキシ基であるが、経時安定性の向上又は柔軟性の付与等の目的で、1,3−エポキシ基(オキセタン)、4,3−エポキシシクロへキシル基を使用することも出来る。
また、本発明に係る(b−6)樹脂において、芳香族環を含有しないもの、若しくは、無置換又はp(パラ)位に置換基を有するフェニル基を含有するものは加熱処理による変色が抑えられるため好適である。このようなエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、置換基を有していてもよいフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体等を挙げることができる。
【0113】
(b−6)樹脂の含有量は、(b−1)樹脂全体に対して、通常0.5モル%以上、好ましくは1.0モル%以上であり、通常70モル%以下、好ましくは65モル%以下である。(b−6)樹脂が少なすぎると耐薬品性向上効果が不十分となる可能性があり、多すぎると保存安定性が不十分となる可能性がある。
(b−6)樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、通常300以上好ましくは500以上であり通常100,000以下、好ましくは50,000以下である。分子量が小さすぎると膜強度に劣る傾向があり、大きすぎると塗布液としての液特性が非ニュートニアンとなる可能性がある。また、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、2.0以上5.0以下が好ましい。
【0114】
(b−6)樹脂の割合は、本発明の硬化性樹脂組成物における全固形分中、通常0重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。(b−6)樹脂の割合が少なすぎると耐薬品性向上効果が不十分となる可能性があり、多すぎると保存安定性が不十分となる場合がある。
前述の各種バインダ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、(b)バインダ樹脂の含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。バインダ樹脂の含有量がこの範囲よりも少ないと、膜が脆くなり、基板への密着性が低下することがある。逆に、この範囲よりも多いと、膜硬度が不足したり、着色力が不足したりする場合がある。
【0115】
[1−3](c)有機溶剤
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、(c)有機溶剤を必須成分とする。(c)有機溶剤は、前記各成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる(c)有機溶剤としては、着色硬化性樹脂組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよい。
具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0116】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
【0117】
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
1,3−ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
【0118】
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
【0119】
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
【0120】
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類、などが挙げられる。
【0121】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の沸点は、通常130℃以上300℃以下(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)であり、好ましくは、150℃以上280℃以下である。沸点が低すぎると、得られる塗膜の均一性が不良になる傾向がある。また、沸点が高すぎると、後述するように、硬化性樹脂組成物の乾燥抑制の効果は高いが、熱焼成後においても塗膜中に残留溶剤が多く存在し、品質上の不具合を生じたり、真空乾燥などでの乾燥時間が長くなり、タクトタイムを増大させるなどの不具合を生じたりする場合がある。
また、溶剤の蒸気圧は、得られる塗膜の均一性の観点から、通常10mmHg以下、より好ましくは5mmHg以下、さらに好ましくは1mmHg以下のものが使用できる。
【0122】
なお、インクジェット法によるカラーフィルタ製造において、ノズルから発せられるインクは数〜数十pLと非常に微細であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、(c)有機溶剤が沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。より好ましくは、沸点が200℃以上、特に好ましくは沸点が220℃以上である溶剤を含有する。また、沸点180℃以上である高沸点溶剤は、(c)有機溶剤中50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が最も好ましい。高沸点溶剤が50重量%未満である場合には、インク液滴からの溶剤の蒸発防止効果が十分に発揮されない可能性がある。
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
【0123】
さらに、インクの粘度調整や固形分の溶解度調整のためには、沸点が180℃より低い溶剤を一部含有することも効果的である。このような溶剤としては、低粘度で溶解性が高く、低表面張力であるような溶剤が好ましく、エーテル類、エステル類やケトン類などが好ましい。中でも特に、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノールアセテートなどが好ましい。
一方、有機溶剤がアルコール類を含有すると、インクジェット法における吐出安定性が劣化するという問題が生じる場合がある。よって、アルコール類は全溶剤中20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下が特に好ましい。
【0124】
本発明の着色硬化性樹脂組成物全体に占める、(c)有機溶剤の割合は、特に制限はないが、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。(c)有機溶剤が多すぎると、相対的に固形分濃度が低くなり過ぎて塗膜を形成するには不適当となったり、インクの粘度が高くなり過ぎて、組成物の安定性に支障をきたす等の問題が生じる場合があり、またインクジェット法に適用した場合に、吐出安定性が低下する可能性がある。
【0125】
[1−4](d)分散剤
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、(d)分散剤を必須成分とする。(d)分散剤の種類は特に制限はないが、(d−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、(d−2):窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体、(d−3):ウレタン樹脂分散剤から選ばれた1以上の分散剤を含有することが好ましい。
【0126】
(d−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、および(d−2):窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体は、これに含まれる窒素原子が顔料表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、全体として分散安定性の向上に寄与するものと推定される。
分散剤の性能は、その固体表面に対する吸着挙動により大きく左右される。分子のアーキテクチャーと吸着挙動の関係については、同じユニットを用いた場合は、ランダム共重合<グラフト共重合体<ブロック共重合体、の順で吸着挙動が優れていることが知られている。(例えば、Jones and Richards,”Polymers at Surfaces and Interfaces” p281)。
【0127】
詳しいメカニズムは不明だが、以下のことが推察される。
即ち、通常のランダム共重合体の場合、共重合体を構成するモノマーは、重合体形成時に、立体的に及び/又は電気的に、共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的に及び/又は電気的に安定しているため、顔料に吸着するとき、かえって障害となる場合がある。これに対し、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体のように分子配列が制御された樹脂は、分散剤の吸着を妨げる部分を、顔料と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。つまり、顔料と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を、溶剤親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することができる。特に結晶子サイズの小さい顔料を含有する色材の分散には、この分子配置が良好な分散性に影響するものと推察される。
【0128】
(d−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体
窒素原子を含有するグラフト共重合体(以下、「(d−1)共重合体」と称することがある)は、(a)色材を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、顔料と分散剤との吸着の障害となる部分(分子)が、顔料への吸着部周辺に配置することを、積極的に排斥し得る構造を有しているためと推察される。(d−1)共重合体としては、主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するものが好ましい。中でも、式(II)で表される繰り返し単位または/及び式(III)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0129】
【化14】

【0130】
式中、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表す。
式(II)中、R51は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状または分岐状の炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜3であり、更に好ましくはエチレン基である。Aは水素原子または下記式(IV)〜(VI)のいずれかを表すが、好ましくは式(IV)である。
【0131】
【化15】

【0132】
式(III)中、R51及びAは、前記式(II)におけるR51およびAと同義である。
【0133】
【化16】

【0134】
式(IV)中、W1は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、中でもブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数4〜7のアルキレン基が好ましい。pは1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0135】
【化17】

【0136】
式(V)中、Y1は2価の連結基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基、又はエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の炭素数1〜4のアルキレンオキシ基が好ましい。W2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Y2は水素原子または−CO−R52(R52はエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表し、中でもエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数2〜5のアルキル基が好ましい。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0137】
【化18】

【0138】
式(VI)中、W3は炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表し、中でもステアリル基等の炭素数10〜20のアルキル基、モノヒドロキシステアリル基等の水酸基を1〜2個有する炭素数10〜20のヒドロキシアルキル基が好ましい。
(d−1)共重合体における式(II)または(III)で表される繰り返し単位の含有率は、高い方が好ましく、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。式(II)で表される繰り返し単位と、式(III)で表される繰り返し単位の、両方を併有してもよく、その含有比率に特に制限は無いが、式(II)の繰り返し単位を多く含有していた方が好ましい。式(II)または式(III)で表される繰り返し単位の合計数は、1分子中に通常1〜100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である。
【0139】
また、式(II)及び式(III)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位としては、例えばアルキレン基、アルキレンオキシ基などが例示できる。本発明のグラフト共重合体は、その末端が−NH2又は−R51−NH2(R51は、前記R51と同義)のものが好ましい。
尚、(d−1)共重合体は、主鎖が直鎖状であっても分岐していてもよい。
(d−1)共重合体のアミン価は、通常5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜40mgKOH/gである。アミン価は高すぎても低すぎても分散安定性が低下し、粘度が不安定になることがあり、また、高すぎると液晶パネルを形成した後の電気特性が低下することがある。
【0140】
(d−1)共重合体のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、3000〜50000が好ましく、5000〜20000が特に好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、色材の凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしはゲル化してしまうことがある。重量平均分子量が50000を超えるとそれ自体が高粘度となり、また(c)有機溶剤への溶解性が不足する場合がある。また、分子自体の立体障害により、(a)色材への吸着が阻害されるため、分散性が低下する可能性がある。
【0141】
(d−1)共重合体の合成方法は、公知の方法が採用でき、例えば特公昭63−30057号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のグラフト共重合体を適用することもできる。
【0142】
(d−2):窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体
窒素原子を有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(以下、「(d−2)共重合体」と称することがある)は、(a)色材を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、分子配列が制御されていることにより、分散剤が顔料に吸着する際に障害となる構造が少ないためと推察される。
(d−2)共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有するB−ブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないA−ブロックとからなる、A−Bブロック共重合体及び/又はA−B−Aブロック共重合体が好ましい。
【0143】
(d−2)共重合体を構成するB−ブロックは、4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有する。
4級アンモニウム塩基は、好ましくは−N+313233・Z(但し、R31、R32及びR33は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。Zは、対アニオンを表す。)で表わされる4級アンモニウム塩基を有する。この4級アンモニウム塩基は、直接主鎖に結合していてもよいが、2価の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0144】
−N+313233・Zにおいて、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記のものが挙げられる。
【0145】
【化19】

【0146】
上記式中、RはR31、R32、及びR33のうち何れかの基を表す。
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
−N+313233におけるR31、R32、R33としてより好ましくは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基である。
【0147】
4級アンモニウム塩基を有するB−ブロックとしては、下記一般式(VII)で表わされる部分構造を含有するものが好ましい。
【0148】
【化20】

【0149】
上記一般式(VII)中、R31、R32、R33は各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32、及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。R34は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、2価の連結基を表し、Zは、対アニオンを表す。
一般式(VII)において、R31、R32、R33の炭化水素基は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜20の芳香族基を有する置換基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、フェニル基等を挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基が好ましい。
一般式(VII)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−R35−、−COO−R36−(但し、R35及びR36は、それぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のエーテル基(−R37−O−R38−:R37及びR38は、各々独立にアルキレン基)を表わす。)等が挙げられ、好ましくは−COO−R36−である。
【0150】
また、対アニオンのZとしては、Cl-、Br-、I-、ClO4-、BF4-、CH3COO-、PF6-等が挙げられる。
B−ブロックとしては、アミノ基を有するものが特に好ましい。アミノ基は、好ましくは−NR4142(但し、R41及びR42は、各々独立に、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で表わされ、これを含む部分構造として好ましいものは、例えば下記式で表される。
【0151】
【化21】

【0152】
(但し、R41及びR42は、上述したR41及びR42と同義、R43は炭素数1以上のアルキレン基、R44は水素原子又はメチル基を表す。)
中でも、R41及びR42はメチル基が好ましく、R43はメチレン基、エチレン基が好ましく、R44はメチル基であるのが好ましい。このような部分構造としては、例えば下記式で表される構造が挙げられる。
【0153】
【化22】

【0154】
上記の如き特定の4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を含有する部分構造は、1つのB−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上の4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基含有部分構造は、該B−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、該4級アンモニウム塩基及びアミノ基を含有しない部分構造が、B−ブロック中に含まれていてもよく、該部分構造の例としては、後述の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。かかる4級アンモニウム塩基及びアミノ基を含まない部分構造の、B−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%であるが、かかる4級アンモニウム塩基及びアミノ基非含有部分構造はB−ブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0155】
一方、(d−2)共重合体を構成するA−ブロックは、上述のB−ブロックを構成するモノマーと共重合しうるものであり、且つ、4級アンモニウム塩基及びアミノ基のいずれも有さないモノマーから成るものであれば、特に制限はない。
例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
中でも、A−ブロックとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを共重合成分として含む(すなわち、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造を含む)ものが好ましく、特に下記式(I)で表される部分構造を有するA−ブロックが好ましい。
【0156】
【化23】

【0157】
(式中、nは1〜5の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
上記式(I)で表される部分構造は、A−ブロック中に5〜40モル%含まれていることが、特に好ましい。
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造、特に上記式にて表される部分構造を有することにより、適度な凝集防止効果が認められ、分散系の安定化に寄与するため、好ましい。
また、適度な疎水性を付与することにより、溶媒の非極性部分へのなじみを良くする点からは、A−ブロックが、下記一般式(VIII)で表される、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造を含有することが好ましい。
【0158】
【化24】

【0159】
(一般式(VIII)中、R39は、水素原子又はメチル基を表す。R40は、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
なお、顔料との親和性が高く、なじみ易い点からは、R40が環状の基であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造は、1つのA−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。もちろん該A−ブロックは、更にこれら以外の部分構造を含有していてもよい。2種以上のモノマー由来の部分構造が、4級アンモニウム塩基を含有しないA−ブロック中に存在する場合、各部分構造は該A−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。A−ブロック中に上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造以外の部分構成を含有する場合、当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造の、A−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜85重量%である。
【0160】
本発明で用いる(d−2)共重合体は、このようなB−ブロックとA−ブロックとからなる、A−Bブロック又はA−B−Aブロック共重合型高分子化合物であるが、このようなブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば下記スキームで示される。
【0161】
【化25】

【0162】
ラジカルリビング重合法は重合活性種がラジカルであり、例えば下記スキームで示される。
【0163】
【化26】

【0164】
【化27】

【0165】
このようなアクリル系ブロック共重合体を合成するに際しては、特開昭60−89452号公報、特開平9−62002号公報、P. Lutz, P. Masson et al, Polym. Bull. 12, 79 (1984)、B. C. Anderson, G. D. Andrews et al, Macromolecules, 14, 1601 (1981)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J. 17, 977 (1985)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J.18, 1037 (1986)、右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987)、東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989)、M. Kuroki, T. Aida, J. Am. Chem. Sic, 109, 4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985)、D. Y. Sogoh, W. R. Hertler et al, Macromolecules, 20, 1473 (1987)、K. Matyaszewski et al, Chem. Rev.2001,101,2921-2990などに記載の公知の方法を採用することができる。
【0166】
本発明に係るA−Bブロック共重合体およびA−B−Aブロック共重合体の、1g中のアミン価(有効固形分換算)は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、さらに好ましくは50mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上であり、また通常300mgKOH/g以下である。
【0167】
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常100mgKOH/g以下であり、その分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で通常1000以上、100,000以下の範囲である。ブロック共重合体の分子量が小さすぎると分散安定性が低下する傾向があり、大きすぎると分散剤分子自体の立体障害により、顔料への吸着が阻害されるため、分散性が低下する可能性がある。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のアクリル系ブロック共重合体を適用することもできる。
【0168】
(d−3):ウレタン樹脂分散剤
ウレタン樹脂分散剤(以下、「(d−3)分散剤」と称することがある)としては、ポリイソシアネート化合物と、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物と、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン樹脂が特に好ましい。
【0169】
上記ポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート;及び、これらの3量体、水付加物、並びにこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体であり、これらを単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0170】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第3級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0171】
上記同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化されたもの、若しくはこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、又はこれら2種類以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール、又はそれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオール若しくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸又はそれらの無水物と反応させるか、ポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えば、ポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとして最も好ましいのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0172】
ポリエステルグリコールとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸類又はそれらの無水物と、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジーオル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール;ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン等のジオール類と、を重縮合させて得られたもの、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類若しくは炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオールあるいはポリラクトンモノオール、例えば、ポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのは、ポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、より具体的には、モノオールにε−カプロラクトンを開環付加重合して得られる化合物である。
【0173】
ポリカーボネートグリコールとしては、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
又、ポリオレフィングリコールとしては、ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
これらの同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物のうち、特にポリエーテルグリコールとポリエステルグリコールが好ましい。尚、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜6,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。
【0174】
上記同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物において、活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に1級のアミノ基の水素原子が好ましい。又、3級アミノ基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルアミノ基や、該ジアルキルアミノ基が連結してヘテロ環構造を形成している基、より具体的には、イミダゾール環、又はトリアゾール環が挙げられるが、中でもジメチルアミノ基及びイミダゾール環が分散安定性に優れるため好ましい。
【0175】
このような同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等か挙げられる。
【0176】
又、3級アミノ基が窒素含有ヘテロ環であるものとして、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等の窒素原子含有ヘテロ5員環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環等の窒素原子含有ヘテロ6員環が挙げられる。これらのイミダゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。又、トリアゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が好ましい。
【0177】
これらの(d−3)分散剤原料の好ましい使用比率は、ポリイソシアネート化合物100重量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物が、通常10〜200重量部、好ましくは20〜190重量部、更に好ましくは30〜180重量部、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物が、通常0.2〜25重量部、好ましくは0.3〜24重量部である。
【0178】
又、(d−3)分散剤の製造は、ウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。製造する際の溶剤としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の一部のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶剤等が用いられる。又、製造する際の触媒としては、通常のウレタン化反応触媒が用いられる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン系等が挙げられる。
又、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は、反応後の分散剤のアミン価で1〜100mgKOH/gの範囲に制御するのが好ましく、より好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲であり、更に好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲である。アミン価が上記範囲外であると分散能力が低下する傾向がある。尚、以上の反応で分散剤にイソシアネート基が残存する場合には、更にアルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと分散剤の経時安定性が高くなるので好ましい。
【0179】
尚、これら(d−3)分散剤のGPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。分子量1,000以下では分散性及び分散安定性が劣る傾向があり、200,000以上では溶解性が低下し分散性が劣ると同時に反応の制御が困難となる場合がある。
【0180】
(d−4):その他の分散剤
本発明の着色硬化性樹脂組成物に用いられる分散剤は上記の各種分散剤以外に、その他の分散剤を含有していてもよい。
その他の分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸、ポリエステルリン酸、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
このような分散剤の具体例としては、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(eFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、アジスパー(味の素社製)等のシリーズ名で市販のものの中から選択することができる。これらの高分子分散剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0181】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、(d)分散剤の含有割合は、(a)色材に含まれる顔料に対して、通常95重量%以下、好ましくは65重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であり、また、通常5重量%以上、好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。(d)分散剤の含有割合が少なすぎると、(a)色材への吸着が不足し、凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしゲル化してしまうことがあるため、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する可能性がある。逆に多すぎると、相対的に顔料の割合が減るため、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、カラーフィルタに用いた場合、液晶セル化工程でのセルギャップ制御不良が出ることがある。
本発明の着色硬化性樹脂組成物においては、上述した各種分散剤の中でも、特に(d−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、または(d−2):アクリル系ブロック共重合体を含む場合に、その効果が顕著に発揮される。
(d−2)分散剤の中では特に、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなるA−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体を含み、且つ該ブロック共重合体のアミン価が10mgK0H/g(有効固形分換算)以上である分散剤が挙げられる。なお、該分散剤のアミン価(有効固形分換算)は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、さらに好ましくは50mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上であり、また通常300mgKOH/g以下である。
なお分散剤のアミン価は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHCLO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし、次式によりアミン価を求める。
【0182】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(なお、Wは分散剤試料秤取量[g]、Vは滴定終点での滴定量[mL]、Sは分散剤試料の固形分濃度[wt%]を表す。)
また、本発明の着色硬化性樹脂組成物は、後述する該着色硬化性樹脂組成物調製時の分散処理工程において、上記(d)分散剤とともに、前述の(b)バインダ樹脂の一部を含有させることにより、共に分散剤としての役割を担わせてもよい。このように、分散剤と同様の働きをさせる樹脂を「分散樹脂」と称することがある。
【0183】
[1−5] 組成物中の水分量
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、当該組成物中の水分含有量が0.4重量%以上、好ましくは0.7重量%以上、更に好ましくは1.0重量%以上であり、5.0重量%以下、好ましくは4.0重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以下である。水分含有量が少なすぎると、着色硬化性樹脂組成物の濡れ拡がり性や画素平坦性の向上などにつき、十分な効果が得られず、また水分含有量が多すぎると、着色硬化性樹脂組成物により、ノズルヘッド部材等に腐食が発生したり、吐出安定性が低下するおそれがある。
なお、着色硬化性樹脂組成物中の水分量は、公知の手段で測定および調整できる。例えば、後述する方法にて調製された着色硬化性樹脂組成物の水分量を、カールフィッシャー法にて測定し、不足分は着色硬化性樹脂組成物に水を滴下することにより補い、過剰分は予めオーブン等で真空乾燥させたモレキュラーシーブ(例えば、和光純薬工業社製「Molecular Sieves 3A 1/16」など)を、着色硬化性樹脂組成物に加えて攪拌することにより脱水することができる。
その他の脱水の手段としては、シリカゲル、アルミナ等の多孔質材料や、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化カルシウム等の脱水剤を用いる方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0184】
[1−6](e)単量体
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、(e)単量体を含有するのが好ましい。(e)単量体は、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
エチレン性化合物は、例えば本発明の着色硬化性樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における単量体は、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する。
【0185】
エチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0186】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、イソプロピルオキシ化ジグリセロールジ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。又、これらアクリレートの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0187】
又、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。又、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0188】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0189】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
又、エチレン性化合物は酸価を有する単量体であってもよい。酸価を有する単量体としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上を混合して用いてもよい。又、必要に応じて単量体として酸基を有しない多官能単量体と酸基を有する多官能単量体を併用してもよい。
【0190】
酸基を有する多官能単量体の好ましい酸価としては、0.1〜40mgKOH/gであり、特に好ましくは5〜30mgKOH/gである。なお、異なる酸基の多官能単量体を2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能単量体を併用する場合、全体の多官能単量体としての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
【0191】
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能単量体は、東亞合成社製の「TO1382」として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能単量体と他の多官能単量体を組み合わせて使用することもできる。
なお、本発明の着色硬化性樹脂組成物をインクジェット法カラーフィルタ製造に使用する場合、(e)単量体は直鎖状のものや、比較的分子量が小さなものが好ましく、例えばエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、イソプロピルオキシ化ジグリセロールジ(メタ)アクリレートなどが好ましい。このような化合物は、「70PA」、「80MFA」(いずれも商品名。共栄社化学(株)製)、「A−TMPT−3EO」(商品名。新中村化学工業(株)製)等として市販されている。
【0192】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これらの(e)単量体の含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。又、前述の(a)色材に対する比率は、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、又、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0193】
[1−7](f)光重合開始系および/又は熱重合開始系
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、塗膜を硬化させる目的で、(f)光重合開始系および/又は熱重合開始系を含むことが好ましいが、硬化の方法は上記開始剤によるもの以外でもよい。
特に、本発明の着色硬化性樹脂組成物が、(b)バインダ樹脂としてエチレン性C=C二重結合を有する樹脂を含む場合や、(e)単量体としてエチレン性化合物を含む場合には、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光重合開始系および/又は熱によって重合活性ラジカルを発生する熱重合開始系を配合するのが好ましい。なお、本発明において光重合開始系としての(f)成分とは、光重合開始剤(以下、任意に(f1)成分と称する)に加速剤(以下、任意に(f2)成分と称する)、増感色素(以下、任意に(f3)成分と称する)などの付加剤が併用されている混合物を意味する。
【0194】
[1−7−1]光重合開始系
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、(f)光重合開始系を含有していてもよい。(f)光重合開始系は、通常、(f1)光重合開始剤、及び必要に応じて添加される(f3)増感色素、(f2)重合加速剤等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0195】
光重合開始系を構成する(f1)光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α- アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0196】
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1一イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
【0197】
又、ビイミダゾール誘導体類としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダソール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
又、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6''−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5一フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0198】
又、ハロメチル化トリアジン誘導体類としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0199】
又、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
又、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕、2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕、1−(o−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0200】
その他に、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p一ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体類;9−フェニルアクリジン、9−(pメトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体類;9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体類;ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0201】
必要に応じて用いられる(f2)重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;又は脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
これらの(f1)光重合開始剤及び(f2)重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0202】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これら(f1)光重合開始剤及び(f2)重合加速剤の合計の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、又、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。この含有割合が著しく低いと露光光線に対する感度が不充分となる場合がある。
【0203】
又、必要に応じて感応感度を高める目的で、(f3)増感色素が用いられる。(f3)増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
【0204】
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。特に、好ましいのは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。このうち最も好ましいものは、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0205】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これら(f3)の増感色素の含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、又、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲である。
【0206】
[1−7−2]熱重合開始系
本発明で用いられる(f)熱重合開始系(熱重合開始剤)の具体例としては、アゾ系化合物、有機過酸化物および過酸化水素等を挙げることができる。これらのうち、アゾ系化合物が好適に用いられる。
アゾ系化合物としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキセン-1-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(2-( カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル)、2,2-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-エチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(ジメチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(ジメチル-2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンテン)等を挙げることができ、これらのうちでも、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が好ましい。
【0207】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。具体的には、ジイソブチリルパーオキシド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカルボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカルボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカルボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジステアロイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジサッキニックアシドパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカルボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキシド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキシドとベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキシドとジベンゾイルパーオキシドの混合物等を挙げることができる。
なお、上述した(f1)光重合開始剤の中には、熱重合開始剤としても働くものがある。そのため、熱重合開始剤として、(f1)光重合開始剤の例として挙げた中から選択した化合物を使用してもよい。
【0208】
熱重合開始剤の割合が少な過ぎると膜の硬化が不十分であり、カラーフィルタとしての耐久性が不足する可能性がある。多過ぎると熱収縮の度合が大きくなり、熱硬化後にヒビ割れ、クラックの発生が起こる場合がある。また、保存安定性も低下する場合がある。従って、本発明の着色硬化性樹脂組成物の全固形分中0〜30重量%、特に0〜20重量%の範囲で選ぶのが好ましい。
【0209】
[1−8]界面活性剤
本発明の着色硬化性樹脂組成物は界面活性剤として、発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、電圧保持率や有機溶剤に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「エマール10」等のアルキル硫酸エステル塩系界面活性剤、花王社製の「ペレックスNB−L」等のアルキルナフタレンスルフォン酸塩系界面活性剤、花王社製の「ホモゲノールL−18」、「ホモゲノールL−100」等の特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤が更に好ましい。
【0210】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「アセタミン24」等のアルキルアミン塩系界面活性剤、花王社製の「コータミン24P」、「コータミン86W」等の第4級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系界面活性剤が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩系界面活性剤が更に好ましい。
非イオン系性面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン社製の「SH8400」;シリコーン社製の「KP341」等のシリコーン系界面活性剤;住友3M社製の「FC430」;大日本インキ化学工業社製の「F470」;ネオス社製の「DFX−18」等の弗素系界面活性剤;花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリジメチルシロキサンにポリエーテル基又はアラルキル基の側鎖が付加された構造を有する、いわゆるポリエーテル変性又はアラルキル変性シリコーン系界面活性剤が更に好ましい。
【0211】
界面活性剤は2種類以上を併用してもよく、例えばシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、弗素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせが好ましい。
このシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせとしては、例えばポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤/オリゴマー型弗素系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。具体的には、例えば、ジーイー東芝シリコーン社製「TSF4460」/ネオス社製「DFX−18」、ビックケミー社製「BYK−300」/セイミケミカル社製「S−393」、信越シリコーン社製「KP340」/大日本インキ化学工業社製「F−478」、トーレシリコーン社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS−401」、日本ユニカー社製「L−77」/住友3M社製「FC4430」等の組み合わせが挙げられる。
【0212】
[1−9]その他成分
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、前記各成分の外に、分散助剤、有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物、可塑剤、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。
分散助剤は、前記(a)色材における顔料の分散性の向上、分散安定性の向上等のために用いられ、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。
【0213】
これらの顔料誘導体の置換基としては、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。これらの置換基は顔料骨格に直接結合していてもよく、又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合していてもよい。前記置換基のうち、スルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が好ましく、スルホン酸基がより好ましい。
これら置換基は、一つの顔料骨格に複数置換していてもよいし、置換数の異なる化合物の混合物でもよい。
【0214】
顔料誘導体の具体例としては、アゾ系顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン系顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン系顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン系顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン系顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。中でも好ましくは、ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントイエロー139のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド255のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド264のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド272のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド209のスルホン酸誘導体、ピグメントオレンジ71のスルホン酸誘導体、ピグメントバイオレット23のスルホン酸誘導体であり、より好ましくはピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体である。
【0215】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これらの分散助剤の含有割合は、前記(a)色材成分に対して、通常0.1重量%以上であり、又、通常30重量%以下、好ましくは200重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。添加量が少ないとその効果が発揮されない可能性があり、逆に添加量が多過ぎると分散性、分散安定性がかえって悪くなる場合があるためである。
【0216】
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、後述するようにカラーフィルタに使用した場合、パターン密着性を向上させるため、分子量1000以下の有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物を含有していてもよい。これらは前述の(d)分散剤として、ウレタン樹脂分散剤を含む場合に含有されていることが好ましい。
その有機カルボン酸としては、具体的には、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、グリコール酸、(メタ)アクリル酸、等のモノカルボン酸;蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。又、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸等のフェニル基に直接カルボキシル基が結合したカルボン酸、フェニル基から炭素結合を介してカルボキシル基が結合したカルボン酸等が挙げられる。
【0217】
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸が好ましい。
有機カルボン酸無水物としては、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、無水n−オクタデシルコハク酸、無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸無水物が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には無水マレイン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0218】
本発明の着色硬化性樹脂組成物において、これらの有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物の含有割合は、全固形分中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、又、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよく、その可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等が挙げられる。これら可塑剤の含有割合は、全固形分中、10重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0219】
又、本発明の着色硬化性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含有していてもよく、その熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール等が挙げられる。これら熱重合防止剤の含有割合は、全固形分中、3重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0220】
[2]着色硬化性樹脂組成物の調製方法
次に、本発明の着色硬化性樹脂組成物を調製する方法を説明する。
先ず(a)色材、(c)有機溶剤、(d)分散剤とを各所定量秤量し、分散処理工程において、(a)色材中の顔料を分散させて顔料分散液とする。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を使用することができる。この分散処理を行なうことによって顔料が微粒子化されるため、着色硬化性樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルタ基板等の透過率が向上する。
【0221】
顔料を分散処理する際には、(b)バインダ樹脂の一部及び分散助剤等を適宜併用するのが好ましい。又、サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1〜数mm径のガラスビーズ、又はジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、又、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。尚、分散時間は、顔料分散液の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさ等により適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0222】
上記分散処理によって得られた顔料分散液に、更に必須成分である(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤、場合によっては、任意成分である(e)単量体、(f)光重合開始系および/または熱重合開始系、並びにそれら以外の成分を混合し、均一な分散溶液とすることにより、着色硬化性樹脂組成物を得る。尚、分散処理工程及び混合の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られた顔料分散液をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
【0223】
[3]着色硬化性樹脂組成物の応用
本発明の着色硬化性樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が(c)有機溶剤中に溶解或いは分散された状態である。これが基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置の構成部材が形成される。
以下、本発明の着色硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法、及びそれを用いた液晶表示装置(パネル)並びに有機ELディスプレイについて、説明する。
【0224】
[3−1]カラーフィルタ
本発明の着色硬化性樹脂組成物を用いた、インクジェット法によるカラーフィルタの製造方法について説明する。
インクジェット法では、まず基板上に隔壁パターン(ブラックマトリックス)を設け、そのパターン内に画素形成用のインクをダイレクトに付与し、カラーフィルタを作製する。インクの微小液滴を所望の位置に描画できるため、カラーフィルタの高生産性、低コスト化が達成できる。
【0225】
インクジェット法によるカラーフィルタのブラックマトリックス(BM)は、従来必要とされている遮光機能のみならず、画素内に打ち込まれたRGBインクが混色しないための隔壁としての機能も果たしているため、従来のフォトリソグラフィー法によるカラーフィルタの場合に比べ、膜厚が厚い(通常は膜厚1.5μm以上、好ましくは1.8〜2.5μm程度、より好ましくは2.0〜2.3μm程度の厚さである。)という特徴がある。また、RGBインクの混色を防ぐために、ブラックマトリクスの上面に撥液処理を施す場合が多い。
従って、従来用いられてきた金属クロム、酸化クロム、窒化クロム等のクロム化合物や、ニッケルとタングステン合金等の遮光金属材料からなるブラックマトリックスより、黒色色材を含む感光性材料を用いて形成された、樹脂ブラックマトリクス(BM)の方が好ましい。
【0226】
本発明のカラーフィルタにおいて、樹脂ブラックマトリクス(BM)は一般的なフォトリソグラフィー法にて形成すればよい。得られた樹脂BMに対して、透明基板表面の親水化とBMパターンの撥液化を、各々化学的処理あるいは物理的処理により施す。
次に、樹脂BMパターンに囲まれた略矩形の凹部領域に、本発明の着色硬化性樹脂組成物を用いてインクジェット装置により描画し、乾燥、光硬化および/または熱硬化にて該組成物を完全に硬化させ、画素を形成することによりカラーフィルタを得る。画素形成用の着色硬化性樹脂組成物としては、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色が使用される場合が多いが、これらに限定されない。
【0227】
本発明のカラーフィルタに用いられる透明基板の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン等の熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート、或いは各種ガラス板等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、耐熱性プラスチック板が好ましく用いられる。
【0228】
着色硬化性樹脂組成物の塗膜の乾燥には、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等の加熱乾燥を用いることができ、好ましい乾燥条件は40〜150℃、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。また減圧(真空)乾燥を用いることもでき、好ましい乾燥条件は0.1〜1Torr、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。さらに両者を併用することもでき、順次または同時に行うこともできる。
【0229】
また、本発明の着色硬化性樹脂組成物を光硬化により硬化させる場合、露光に用いる光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の照射光の波長のみを使用する場合には光学フィルターを利用することもできる。
【0230】
[3−2]液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置(パネル)について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のカラーフィルタを用いて、例えば、次の様にして製造される。
先ず、カラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサーを配置した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成する。次いで、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。
【0231】
配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法やフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは、通常、10〜100nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線(UV)の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調節し得る表面状態に加工される。
スペーサーは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが使用され、通常2〜8μmのものが好適である。カラーフィルタ基板上に、フォトリソグラフィー法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサーの代わりに活用することも出来る。対向基板としては、通常、アレイ基板が使用され、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。
【0232】
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2〜8μmの範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂などのシール材によって封止する。シール材は、UV照射および/または加熱によって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
【0233】
周辺がシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記の液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶セル内に液晶を注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10−2〜1×10−7Pa、好ましくは1×10−3〜1×10−6Paである。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜90℃である。減圧時の加温保持は、通常10〜60分間の範囲とされ、その後に液晶中に浸漬される。液晶が注入された液晶セルは、UV硬化樹脂の硬化により、液晶注入口を封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
【0234】
液晶の種類は、特に制限されず、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物など、従来公知の液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶などの何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶、コレステリック液晶などが知られているが、これらの何れであってもよい。
【0235】
[3−3]有機ELディスプレイ
本発明のカラーフィルタを用いて有機ELディスプレイを作成する場合、例えば図1に示すように、まず透明支持基板10上に、着色樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられた樹脂ブラックマトリックス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルタを作製し、該カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20の内、少なくとも一つは本発明の着色樹脂組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
【実施例】
【0236】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
【0237】
(合成例1:バインダー樹脂(b−4−2)(一般式(4)で示される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー)の合成)
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400重量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
一方、モノマー槽中にジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート10重量部、メタクリル酸15重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸ベンジル55重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.6重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27重量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。
温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間、110℃を維持した後、室温まで冷却し、重量平均分子量9200,酸価107mgKOH/gの30重量%重合体溶液を得た。
【0238】
(合成例2:バインダー樹脂(b−1)(エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂)の合成)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部を滴下し、および2.2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。
次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃3.5時間反応させた。
こうして得られたバインダ樹脂のGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400 酸価80mgKOH/gであった。
【0239】
(実施例1)
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36を8.6g、C.I.ピグメントイエロー150を8.6g、以下に記す分散剤(A)を固形分換算で5.8g、合成例1で得られたバインダ樹脂を固形分換算で5.8g、溶媒としてブチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート)115.2gを混合し、攪拌均一化した後に、粒子径0.5mmのジルコニアビーズを300g加え、ペイントコンディショナーで5時間振とうして分散処理し、顔料分散液を作製した。
また別途、バインダ樹脂としてダイセル化学社製エポキシ樹脂EHPE3150を3.0gと、合成例2で得られたバインダ樹脂7.5gを、重合開始剤としてチバガイギー社製イルガキュアー907を1.4g、溶媒としてブチルカルビトールアセテート16.2gを混合して、クリアーベースを作製した。
上記顔料分散液72.0gを攪拌しながら、上記クリアーベース28.0gを滴下混合した後、5μmのメンブレンフィルターで濾過して、均一な着色硬化性樹脂組成物90.0gを得た。
さらにこの着色硬化性樹脂組成物に、攪拌しながら純水を0.8g添加した後、水分量を測定したところ、着色硬化性樹脂組成物における水分量は1.0重量%であった。
なお、組成物中の水分量は後述する方法にて測定した。
【0240】
<分散剤(A):ビックケミー社製「BYK-LPN6919」>
分散剤としては、3級アミノ基を有するメタクリル系A−Bブロック共重合体を用いた。重量平均分子量Mwは9000、アミン価は121mgKOH/g、酸価はほぼ0mgKOH/gであり、B−ブロックにおける「側鎖にアミノ基を有する繰り返し単位」が下記式(i)で表される構造であり、下記式(ii)で表される繰り返し単位の、A−ブロックにおける割合は11モル%である。
【化28】

なお、アミン価は、以下の方法で測定した。
【0241】
<アミン価の測定>
100mLのビーカーに分散剤の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/L HCLO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
アミン価 [mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]である。)
【0242】
<水分量の測定方法>
実施例および比較例にて得られた着色硬化性樹脂組成物について、カールフィッシャー法により、以下の条件で水分量の測定を行なった。
・装置:ダイアインスツルメンツ社製KF水分計CA−100
・注入量:40〜50μL
・陽極/陰極液:アクアミクロンAS/CXU
・End Sens.:0.1μg/sec
【0243】
続いて、以下の評価方法に従って、得られた着色硬化性樹脂組成物の濡れ拡がり性を評価した。結果を表−1に示す。画素バンクの中央部に対してインクジェット法により200pl相当量の塗布を行ったところ、3分後に画素面積の70%まで濡れ広がった。また同様に2000pl相当量の塗布を行い、5分間放置した後に、減圧処理によって塗布基板を乾燥したところ、画素面積の90%が平坦なカラーフィルタ膜面が得られた。
【0244】
(比較例1)
実施例1の着色硬化性樹脂組成物に、純水を添加しないこと以外は、全く同様の手順で着色硬化性樹脂組成物を作製した。この着色硬化性樹脂組成物の水分量を測定したところ、0.1重量%であった。この着色硬化性樹脂組成物についても、以下の評価方法に従って、濡れ拡がり性を評価した。結果を表−1に示す。
【0245】
(評価方法)
旭ガラス社製無アルカリガラス基板(AN635)10cm角0.7mm厚に、ブラックマトリクス用硬化性樹脂組成物を塗布し、フォトリソ法によって線幅20μm、開口幅220μm×700μm、厚み2.0μmのマトリクスパターンを形成した。
上記基板にフッ素プラズマ処理にて撥液処理を施した後、ブラックマトリックスパターンの各画素の中心部(すなわち、画素バンクの中央部)に対してインクジェット法により200pl相当量の塗布を行い、3分後の画素面積に対する濡れ広がりの面積比率(%)を評価した。また同様に2000pl相当量の塗布を行い、5分間放置した後に、減圧処理によって塗布基板を乾燥した後、表面形状を3次元レーザー顕微鏡で測定し、画素面積に対する平坦部分の面積比率(%)を評価した。
濡れ拡がりは、40%未満のものを×、40%以上60%未満のものを○、60%以上のものを◎とした。
画素平坦性は、60%未満のものを×、60%以上80%未満のものを△、80%以上のものを○とした。
【0246】
【表1】

【0247】
(合成例3:分散剤(d−1)(窒素原子を含有するグラフト共重合体)の合成)
重量平均分子量約5000を有するポリエチレンイミン50重量部、n=5のポリカプロラクトン40重量部、及びステアリン酸6重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300重量部と混合し、150℃で3時間、窒素雰囲気下にて攪拌した。こうして合成した分散剤Cのアミン価は54mgKOH/g、酸価は10mgKOH/gであった。
【0248】
(実施例2)
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36を8.6g、C.I.ピグメントイエロー150を5.7g、合成例3で得られた分散剤を3.8g(固形分として)、合成例1で得られたバインダ樹脂を固形分換算で3.8g、溶媒として1,3−ブチレングリコールジアセテート95.8gを混合し、撹拌均一化した後に、粒子系0.5mmのジルコニアビーズを300g加え、ペイントコンディショナーで5時間振とうして分散処理し、顔料分散液を作製した。
また別途、バインダ樹脂としてダイセル化学社製エポキシ樹脂EHPE3150を2.6gと、合成例2で得られたバインダ樹脂1.1gを、重合開始剤としてチバガイギー社製イルガキュアー907を0.5g、溶媒としてブチルカルビトールアセテート10.0gを混合して、クリアーベースを作製した。
上記顔料分散液53.5gを撹拌しながら、上記クリアーベース46.5gを滴下混合した後、5μmのメンブレンフィルターで濾過して、均一な着色硬化性樹脂組成物90.0gを得た。
さらにこの着色硬化性樹脂組成物に、撹拌しながら純水を0.4g添加した後、水分を測定したところ、着色硬化性樹脂組成物における水分量は0.5重量%であった。
【0249】
(実施例3)
実施例2において、着色硬化性樹脂組成物に添加する純水を0.9gとした以外は、全く同様の手順で着色硬化性樹脂組成物を作製した。この着色硬化性樹脂組成物の水分量を測定したところ、1.1重量%であった。
【0250】
(実施例4)
実施例2において、着色硬化性樹脂組成物に添加する純水を3.3gとした以外は、全く同様の手順で着色硬化性樹脂組成物を作製した。この着色硬化性樹脂組成物の水分量を測定したところ、3.7重量%であった。
【0251】
(比較例2)
実施例2において、着色硬化性樹脂組成物に純水を添加しないこと以外は、全く同様の手順で着色硬化性樹脂組成物を作製した。この着色硬化性樹脂組成物の水分量を測定したところ、0.1重量%であった。
【0252】
実施例2〜4及び比較例2にて得られた着色硬化性樹脂組成物を用い、前述の実施例1および比較例1と同様に、濡れ拡がり及び画素平坦性を評価した。結果を(表2)に示す。
【表2】

【0253】
表1及び2の結果より、水分量を通常の調液手法による場合よりも多くなるよう調整することによって、濡れ拡がりと画素平坦性が共に良好な着色硬化性樹脂組成物が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明によれば、インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成するに際し、従来トレードオフの関係になることの多かった、画素の平坦性と濡れ拡がり性の双方を満足する着色硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明のカラーフィルタを備えた有機EL素子の一例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0256】
10 透明支持基板
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
50 透明陽極
51 正孔注入層
52 正孔輸送層
53 発光層
54 電子注入層
55 陰極
100 有機EL素子
500 有機発光体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法によるカラーフィルタ形成に使用される着色材料であって、少なくとも(a)色材、(b)バインダ樹脂、(c)有機溶剤および(d)分散剤を含み、かつ水分量が0.4重量%以上5重量%以下であることを特徴とする、着色硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(d)分散剤が、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、側鎖にアミノ基を有さないA−ブロックからなる、A−Bブロック共重合体および/またはA−B−Aブロック共重合体からなる分散剤を含み、該分散剤の有効固形分換算におけるアミン価が10mgKOH/g以上である、請求項1に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(d)分散剤のA−ブロックが、A−ブロック中で下記式(I)で表される部分構造を5乃至40モル%含有する、請求項2に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【化1】

(ここで、nは1〜5のいずれかの整数を示す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項4】
(d)分散剤が、窒素原子を含有するグラフト共重合体からなる分散剤を含有する、請求項1に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(c)有機溶剤が、沸点180℃以上(圧力1013.25[hPa]条件下での沸点)である溶剤を含有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
沸点180℃以上(圧力1013.25[hPa]条件下での沸点)である溶剤の含有量が、(c)有機溶剤全量に対し50重量%以上である、請求項5に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(c)有機溶剤全量に対するアルコールの含有量が20重量%以下である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の着色硬化性樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを備えてなる液晶表示装置。
【請求項10】
請求項8に記載のカラーフィルタを備えてなる有機ELディスプレイ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−52031(P2009−52031A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190071(P2008−190071)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】