説明

着色硬化性組成物、カラーフィルタ、固体撮像素子、液晶表示装置、有機EL表示装置、及び金属キレート色素

【課題】耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成し得る着色硬化性組成物、カラーフィルタ、固体撮像素子、液晶表示装置、および有機EL表示装置並びに金属キレート色素を提供する。
【解決手段】重合性化合物、重合開始剤、及び金属キレート色素を含み、該金属キレート色素が(1)〜(4)のうち少なくとも3つを満足する着色硬化性組成物。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環又は複素芳香環で構成される場合は、炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、もしくは色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合にはアリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色硬化性組成物に関し、それを用いたカラーフィルタ、固体撮像素子、液晶表示装置、および有機EL表示装置、並びに金属キレート色素に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタを製造する方法の1つに、顔料分散法があり、この顔料分散法としては、顔料を種々の感放射線性硬化性組成物に分散させた着色感放射線性硬化性組成物を用い、フォトリソ法やインクジェット法によってカラーフィルタを製造する方法がある。フォトリソ法では、感放射線性硬化性組成物を基板上にスピンコーターやロールコーター等を用いて塗布し、乾燥させて塗布膜を形成し、該塗布膜をパターン露光し現像することによって、着色された画素を得る。この操作を所望の色相分だけ繰り返すことで、カラーフィルタを作製する。
上記の方法は、顔料を用いることから光や熱に対して安定であると共に、フォトリソ法によってパターニングを行うことから位置精度が充分に確保され、カラーディスプレー用カラーフィルタ等の製造に好適な方法として広く利用されてきた。
【0003】
一方、CCD等の固体撮像素子用のカラーフィルタにおいては、近年、更なる高精細化が望まれている。高精細化に伴い、パターンのサイズは微細化される傾向にあるが、従来から広く利用されてきた顔料分散法では、パターンのサイズをより微細化し解像度をより向上させることは困難と考えられている。その理由の一つは、微細なパターンにおいては、顔料粒子が凝集してできる粗大粒子が、色ムラを発生させる原因となるからである。したがって、近年では、これまで汎用的に用いられてきた顔料分散法は、固体撮像素子のような微細パターンが要求される用途には、必ずしも適さない状況となっている。
【0004】
上記の背景のもと、高解像度を達成するために、従来から着色剤として染料を用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、染料含有の硬化性組成物は、以下に示すような新たな問題点を有している。すなわち、
(1)分子分散状態である染料は、一般に分子集合体である顔料に比べて、耐光性、耐熱性に劣る、
(2)分子分散状態である染料は、一般に分子集合体である顔料に比べて、耐溶剤性に劣る、
(3)染料は、硬化性組成物中の他の成分との相互作用を示すことが多く、硬化部、非硬化部の溶解性(現像性)の調節が難しい、
(4)染料のモル吸光係数(ε)が低い場合には多量の染料を添加しなければならず、そのために硬化性組成物中の重合性化合物(モノマー)やバインダー、光重合開始剤等の他の成分を減らさざるを得ず、硬化性組成物の硬化性、硬化後の耐熱性、非硬化部の現像性等が低下する、等である。
【0005】
染料が抱えるこれらの問題点のうち、(1)染料の耐光性、耐熱性、及び(4)染料のモル吸光係数(ε)を解決する染料として、ジピロメテン系金属錯体が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
ジピロメテン系金属錯体は、可視光で重合する重合性組成物において、ラジカル重合開始剤の増感剤のほか、機能性化合物としても用いられている(例えば、特許文献3〜9参照。)。このジピロメテン系金属錯体の特徴として、耐光性、耐熱性に優れ、モル吸光係数(ε)が高く、色再現性上好ましい吸収特性を有する等が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−75375号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0076044号明細書
【特許文献3】特許第3279035号公報
【特許文献4】特許第3324279号公報
【特許文献5】特開平11−352685号公報
【特許文献6】特開平11−352686号公報
【特許文献7】特開2000−19729号公報
【特許文献8】特開2000−19738号公報
【特許文献9】特開2002−236360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、染料としてジピロメテン系金属錯体を含有する着色硬化性組成物には、より優れた堅牢性、特に耐光性と耐熱性とが要求されていた。
また、前記の問題点(2)に記載のように、染料を着色成分として用いるには耐溶剤性を向上させることが求められていた。耐溶剤性とは、硬化部における着色成分が溶剤に溶出せず、硬化膜中に保持される性能である。フォトリソ法によりカラーフィルタを製造する際、各色のパターンを逐次的に形成させるため、着色パターンの上に色相の異なるレジスト液が覆う。その際、硬化部における着色成分が次色の着色硬化性組成物に溶け出すと混色の問題が発生するため、カラーフィルタ製造工程では硬化部に非常に高い耐溶剤性が求められる。この点、染料は分子分散状態であり、強い分子間力で集合体を形成している顔料に比べて耐溶剤性に劣る。
さらに、カラーフィルタの製造では、塗布、露光、現像工程後に、着色パターンの硬化度を上げるため加熱処理を行うことがあるので、硬化部での染料の固定性も問題になる。分子分散状態である染料は、分子集合体である顔料に比較して、小さな熱エネルギーで運動できるため、色相の異なる隣接パターンへ色移りしやすく、硬化部での染料の固定性は大きな課題であった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の第1の目的は、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成し得る着色硬化性組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、薄層化された場合でも、耐熱性、耐光性に優れた着色パターンを有するカラーフィルタ及び該カラーフィルタを用いた固体撮像素子、液晶表示装置、並びに有機EL表示装置を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、耐熱性、耐光性に優れた特定構造の金属キレート色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、各種色素を詳細に検討した結果、金属キレート色素、中でも特定構造のジピロメテン系金属キレート色素によって、耐熱性、耐光性等の堅牢性に優れ、良好な色相と高い吸光係数を有する硬化膜が形成され、且つ必要によりアルカリ可溶性基を導入することで、パターン形成性に優れる、即ち、現像に用いるアルカリ現像液の濃度依存性が小さい、着色硬化性組成物を提供できるとの知見を得、本発明はかかる知見に基づいて達成された。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0010】
<1> 重合性化合物、重合開始剤、及び、金属キレート色素を含み、色素配位子と金属原子とで構成された該金属キレート色素が下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足する着色硬化性組成物。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。
【0011】
<2> 前記金属キレート色素が、前記(1)〜(4)の4つの要件を全て満足する<1>に記載の着色硬化性組成物。
<3> 前記金属キレート色素が、下記一般式(1)で表される色素である<1>又は<2>に記載の着色硬化性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(1)中、R11〜R16は各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R17は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。X11は、Mに結合可能な基を表し、X12は、Mの電荷を中和する基を表す。X11とX12とは、互いに結合してMと共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。なお、上記一般式(1)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含み、また、R11とR16とが環を形成することはない。
【0014】
<4> 前記金属キレート色素が、下記一般式(2)で表わされる色素である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(2)中、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R22〜R25は各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。R27は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。Z21及びZ22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y21及びY22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)を表す。R21とY12とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R26とY22とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X21はMと結合可能な基および/またはMの電荷を中和する基を表し、aは0、1、又は2を表す。一般式(2)で表される化合物は、互変異性体を含む。
【0017】
<5> 前記金属キレート色素が、色素構造を2以上有する色素多量体である<1>〜<4>に記載の着色硬化性組成物。
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を用いてなる着色パターンを備えたカラーフィルタ。
<7> <6>に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子。
<8> <6>に記載のカラーフィルタを備えた液晶表示装置。
<9> <6>に記載のカラーフィルタを備えた有機EL表示装置。
【0018】
<10> 色素配位子と金属原子とで構成され、下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足する金属キレート色素。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成し得る着色硬化性組成物を提供することができる。
また、薄層化された場合でも、耐熱性、耐光性に優れた着色パターンを有するカラーフィルタおよび該カラーフィルタを用いた固体撮像素子、液晶表示装置並びに有機EL表示装置を提供することができる。
更に、耐熱性、耐光性に優れた特定構造の金属キレート色素を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の着色硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、及び、金属キレート色素を含み、色素配位子と金属原子とで構成された該金属キレート色素が下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足することを特徴とする。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。
【0021】
本発明の着色硬化性組成物は、着色画素のパターンが薄膜(例えば厚み1μm以下)に形成され、2μm以下の微少サイズ(基板法線方向からみた画素パターンの辺長が例えば0.5〜2.0μm)の高精細さが求められ、良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子用のカラーフィルタの形成や、高い堅牢性が求められる液晶表示装置用のカラーフィルタの形成に特に有効である。
【0022】
以下に本発明の着色硬化性組成物、カラーフィルタ、固体撮像素子、および液晶表示装置並びに金属キレート色素について詳述する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実形態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実形態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
<金属キレート色素>
本発明の着色硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、及び、金属キレート色素を含む。まず、本発明の着色硬化性組成物に必須成分のひとつである金属キレート色素について詳述する。
一般に、金属キレート色素は耐光性に優れることが知られているが、本発明の用途で使用されるような200℃以上の高温に対する堅牢性については知られていない。
本発明の着色硬化性組成物に含まれる金属キレート色素は、色素配位子と金属原子とで構成され、下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足する金属キレート色素である。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が、置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。
【0024】
本発明者らは鋭意検討の末、上記した4つの要件が金属キレート色素の堅牢性を向上させる手段として有効であり、また、各要件は各々独立に有効であることを見出した。本発明においては、上記した4つの要件のうち3つ以上を満足するものが本発明の効果を発揮することを見出したものであるが、さらに4つの要件全てを満足する金属キレート色素が最も堅牢で好ましいものである。
【0025】
要件(1)〜(4)について説明する。
要件(1)に記載の、本発明における金属キレート色素の色素配位子が酸基を有する場合には酸基は、色素配位子部分に置換した酸基であってもよいし、金属イオンの荷電を調整するために存在する色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸であってもよい。
要件(2)に記載の分岐鎖置換基とは、炭素原子から構成される分岐鎖アルキル基(2級アルキル基、3級アルキル基、より好ましくは3級アルキル基)、もしくは分岐点の炭素原子が1つの酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子で置換され、残りが1つもしくは2つの炭素原子で置換された分岐鎖置換基であってもよい。分岐鎖置換基は色素配位子上のいずれの位置に存在していてもよく、発色団1つ当たり2つ以上有することであり、4つ以上がさらに好ましく、6個以上あることが最も好ましい。特に、中心金属から数えて5個以内の原子上に4個以上置換していることが好ましく、3個以内の原子上に4個以上置換していることが更に好ましい。
【0026】
要件(3)に記載の色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基は、α水素の数が置換基1つあたり1以下であれば特に制限はなく、例えばアルキル基(2級もしくは3級のアルキル基であって、更に置換基を有していてもよい。)、アリール基が好ましい例として挙げられる。また、色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合は、アリル位水素がなければ特に制限はないが、特に、一般式(1)におけるR17、または一般式(2)におけるR27がアルキル基である場合には、アリル位水素を持たないアルキル基である場合が好ましい。
要件(4)に記載の褪色防止基とは、褪色防止能を有すれば如何なる褪色防止基であってもよいが、好ましくは特開平5−185760号公報に記載の一般式(7)、(8)、〔化20〕〜〔化25〕に記載された褪色防止基を挙げることができる。中でも、下記一般式(7)に記載の褪色防止基が最も好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式(7)中、複数あるR31はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数1〜21のヘテロ環基、または炭素数1〜21のシリル基を表す。Xは−O−、−S−または=N−Rである(Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基を表わす。)。Xが−O−で、且つR31がアルキル基の場合は2個の隣り合う−OR31基同士が結合してメチレン基またはエチレン基を形成してもよい。Xはエーテル結合、エステル結合、アミド結合(カルボン酸アミド、スルホン酸アミド)、ウレタン結合等の結合基を表す。mは1〜3の整数であり、R32〜R35はそれぞれ独立に、水素原子または有機残基を表す。
【0029】
褪色防止基として好ましい具体例は、特開平5-185760号公報の〔化26〕〜〔化33〕に挙げられたものである。
【0030】
本発明に挙げた4つの要件は普遍性があるため、金属キレート色素全般に対して有効な要件となりうるが、下記一般式(1)または一般式(2)で表される金属キレート色素に対して特に有効である。
【0031】
【化4】

【0032】
一般式(1)中、R11〜R16は各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R17は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。X11は、Mに結合可能な基を表し、X12は、Mの電荷を中和する基を表す。X11とX12とは、互いに結合してMと共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。なお、上記一般式(1)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含み、また、R11とR16とが環を形成することはない。 ここで、上記(1)〜(4)の要件を満たす置換基を、置換基X11、X12、及び、R11〜R17のいずれかとして有する態様が好ましく、該置換基群のうち、前記した(1)〜(4)のうち、互いに異なる要件を満たす置換基が少なくとも3つ存在し、4つ存在することがより好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
一般式(2)中、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R22〜R25は各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。R27は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。Z21及びZ22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y21及びY22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)を表す。R21とY12とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R26とY22とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X21はMと結合可能な基および/またはMの電荷を中和する基を表し、aは0、1、又は2を表す。なお、一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含む。
【0035】
以下、本発明における金属キレート色素として好適な一般式(1)および一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物について、さらに詳細に説明する。
(一般式(1)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物)
【0036】
【化6】

【0037】
一般式(1)中、R11〜R16は各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R17は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。X11は、Mに結合可能な基を表し、X12は、Mの電荷を中和する基を表す。X11とX12とは、互いに結合してMと共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。なお、上記一般式(1)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含み、また、R11とR16とが環を形成することはない。
【0038】
上記R11〜R16としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基、更に好ましくは2級もしくは3級のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、特に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基))、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ、2,4−ジ−t−アミルフェニルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基))、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、
【0039】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくは32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、N-メチル-N-フェニルアミノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
【0040】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)が挙げられる。
【0041】
前記R11及びR16としては、上記の中でも、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が更に好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基が特に好ましい。
前記R12及びR15としては、上記の中でも、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が更に好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
前記R13及びR14としては、上記の中でも、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基である。
【0042】
13及びR14がアルキル基を表す場合の、該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状の置換又は無置換のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及び、ベンジル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜12の分岐鎖、又は環状の置換又は無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチルが挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜12の2級又は3級の置換又は無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0043】
13及びR14がアリール基を表す場合の、該アリール基としては、好ましくは、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基が挙げられ、より好ましくは置換又は無置換のフェニル基である。
13及びR14がヘテロ環基を表す場合の、該ヘテロ環基としては、好ましくは、置換又は無置換の2−チエニル基、置換又は無置換の4−ピリジル基、置換又は無置換の2−フリル基、置換又は無置換の2−ピリミジニル基、置換又は無置換の1−ピリジル基、置換又は無置換の2−ベンゾチアゾリル基、置換又は無置換の1−イミダゾリル基、置換又は無置換の1−ピラゾリル基、置換又は無置換のベンゾトリアゾール−1−イル基が挙げられ、より好ましくは置換又は無置換の2−チエニル基、置換又は無置換の4−ピリジル基、置換又は無置換の2−フリル基、置換又は無置換の2−ピリミジニル基、置換又は無置換の1−ピリジル基が挙げられる。
【0044】
前記一般式(1)中、Mは、金属原子又は金属原子を含む連結基を表す。金属原子又は金属原子を含む連結基としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属原子を含む連結基であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物に由来するイオン、2価の金属水酸化物に由来するイオン、又は2価の金属塩化物に由来するイオン等が含まれる。
例えば、2価の金属原子としては、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等である。
金属原子を含む連結基としては、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物由来のイオン、TiO、VO等の金属酸化物由来のイオン、Si(OH)等の金属水酸化物由来のイオンである。
【0045】
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、金属原子又は金属原子を含む連結基として、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、及びVOが好ましく、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、及びVOが更に好ましく、Zn、Cu、Co、及びVOが特に好ましく、Znが最も好ましい。
【0046】
また、前記一般式(1)中、R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0047】
前記一般式(1)中、X11は、Mに結合可能な基であればいずれであってもよく、具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)等、更に「金属キレート」([1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、[2](1996年)、[3](1997年)等)に記載の化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。中でも、製造の点で、水、カルボン酸化合物、アルコール類から水素原子を1個除いた基が好ましく、水、カルボン酸化合物から水素原子を1個除いた基がより好ましい。
【0048】
前記一般式(1)中、X12で表される「Mの電荷を中和する基」としては、例えば、ハロゲンイオン、水酸イオン、カルボン酸イオン、燐酸イオン、スルホン酸イオン等の陰イオンが挙げられ、中でも、堅牢性向上の観点から、特に対応するプロトン酸の酸解離定数が3より小さなハロゲンイオン、カルボン酸イオン、燐酸イオン、スルホン酸イオン が好ましく、ハロゲンイオン、燐酸イオン、スルホン酸イオンが最も好ましい。
【0049】
前記一般式(1)中、X11とX12とは、互いに結合して、Mと共に5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、及び7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子、又は/及び硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0050】
前記一般式(1)で表される化合物の好ましい態様としては、R11〜R16は各々独立に、R11〜R16の説明で記載した好ましい態様であり、R17はR17の説明で記載した好ましい態様であり、MはZn、Cu、Co、又はVOであり、X11は水、又はカルボン酸化合物から水素原子を1個除いた基であり、X12は対応するプロトン酸の酸解離定数が3より小さなハロゲンイオン、カルボン酸イオン、燐酸イオン、またはスルホン酸イオンであり、X11とX12とが互いに結合して5員又は6員環を形成していてもよい。
【0051】
(一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物)
【0052】
【化7】

【0053】
上記一般式(2)中、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R22〜R25は各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。R27は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。Z21及びZ22は、それぞれ独立にNR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y21及びY22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)を表す。R21とY21とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R26とY22とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X21はMと結合可能な基および/またはMの電荷を中和する基を表し、aは0、1、又は2を表す。なお、上記一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含む。
【0054】
上記R22〜R25は、前記一般式(1)中のR12〜R15と同義であり、好ましい態様も同様である。上記R27は、前記一般式(1)中のR17と同義であり、好ましい態様も同様である。上記Mは、前記一般式(1)中のMと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
より詳細には、前記一般式(2)において上記R22〜R25のうち、前記R22及びR25としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、又は、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が更に好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
前記R23及びR24としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは置換又は無置換の分岐鎖もしくは環状のアルキル基、置換又は無置換のアリール基である。ここで、より好ましいアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基の具体例は、一般式(1)の前記R13及びR14において列記した具体例を同様に挙げることができる。
【0056】
前記一般式(2)中、R21及びR26は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基、更に好ましくは2級もしくは3級のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、特に好ましくは、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル、4−t−ブチルフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、t−オクチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ)、又はヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール、3−アミノピラゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン)を表す。
【0057】
前記R21及びR26としては、上記の中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、がより好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基が更に好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0058】
前記一般式(2)中、R21及びR26のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、前記一般式(1)のR11の置換基で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
前記一般式(2)中、Z21及びZ22はそれぞれ独立に、NR、酸素原子、又は硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基、更に好ましくは2級もしくは3級のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、特に好ましくは、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、2−エチルヘキシル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)を表す。
【0060】
前記一般式(2)中、Y21及びY22はそれぞれ独立に、NRを表し、Rは、前記Z21及びZ22のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0061】
前記一般式(2)中、R21とY21とは、互いに結合して炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0062】
前記一般式(2)中、R26とY22とは、互いに結合して炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0063】
前記一般式(2)中、R21とY21、及びR26とY22がそれぞれ結合して形成される5員、6員、及び7員の環が、置換可能な環である場合には、前記一般式(1)のR11の置換基で説明した置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
前記一般式(2)中、X21はMと結合可能な基および/またはMの電荷を中和する基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるX11、X21と同様な基が挙げられ、好ましい態様も同様である。aは0、1、又は2を表す。
【0065】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい態様としては、R22〜R25は各々独立に、前記一般式(1)中のR12〜R15の説明で記載した好ましい態様であり、R27は前記一般式(1)中のR17の説明で記載した好ましい態様であり、MはZn、Cu、Co、又はVOであり、Z21はNR(Rは水素原子、アルキル基)、又は酸素原子であり、Z22はNR(Rは水素原子、アルキル基)、又は酸素原子であり、Y21はNR(Rは水素原子、アルキル基)であり、Y22は窒素原子であり、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基であり、X21はMの電荷を中和する、対応するプロトン酸の酸解離定数が3より小さなハロゲンイオン、カルボン酸イオン、燐酸イオン、またはスルホン酸イオンであり、aは0又は1である。R21とY21とが互いに結合して5員又は6員環を形成、又はR26とY22とが互いに結合して5員、6員環を形成していてもよい。
【0066】
前記一般式(2)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R22〜R25は各々独立に、一般式(1)で表される化合物におけるR12〜R15の説明で記載した好ましい態様であり、R27は前記一般式(1)中のR17の説明で記載した好ましい態様であり、MはZnであり、Z21及びZ22は、酸素原子であり、Y21はNHであり、Y22は窒素原子であり、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基であり、X21はMの電荷を中和する、対応するプロトン酸の酸解離定数が3より小さなハロゲンイオン、カルボン酸イオン、燐酸イオン、またはスルホン酸イオンであり、aは0又は1である。R21とY21とが互いに結合して5員又は6員環を形成、又はR26とY22とが互いに結合して5員、6員環を形成していてもよい。
【0067】
前記一般式(1)及び一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物のモル吸光係数は、膜厚の観点から、できるだけ高いほうが好ましい。また、最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、520nm〜580nmが好ましく、530nm〜570nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長、及びモル吸光係数は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)により測定されるものである。
前記一般式(1)及び一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物の融点は、溶解性の観点から、300℃より高すぎない方がよい。
【0068】
前記一般式(1)及び一般式(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、米国特許第4,774,339号、同第5,433,896号、特開2001−240761号公報、同2002−155052号公報、特許第3614586号公報、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)等に記載の方法で合成することができる。具体的には、特開2008−292970号公報の段落0131〜0157に記載の方法を適用することができる。
【0069】
本発明の金属キレート色素は、色素構造を2以上有する色素多量体であってもよい。
色素多量体の構造については特に制限はなく、2量体以上のオリゴマーやポリマーを含む。多量体の構成様式についても特に制限はなく、付加縮合生成物、重縮合生成物、ラジカル重合生成物を挙げることが出来る。中でも、一般式(1)もしくは(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物に−(L31)p−(L32)q−C(R31)=CHで表される重合性基が導入された、下記一般式(3)で表わされる色素単量体から誘導された色素多量体が好ましい。
【0070】
【化8】

【0071】
〔一般式(3)中、R31は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基を表す。L32は、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)N(R)−、−C(=O)O−、下記一般式(4)で表される基、下記一般式(5)で表される基、又は下記一般式(6)で表される基を表す。L31は、2価の連結基を表す。p及びqは各々独立に、0又は1を表す。Dyeは、上記一般式(1)または(2)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物から任意の水素原子が1つ外れた色素残基を表す。〕
【0072】
【化9】

【0073】
〔一般式(4)〜(6)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Rは水素原子、又は置換基を表す。kは0〜4の整数を表す。一般式(4)〜一般式(6)中、*は一般式(3)における−C(R31)=CH基と結合する位置を表し、**は、一般式(3)におけるL31又はDye(n=0の場合)と結合する位置を表す。〕
【0074】
本発明に用いうる色素多量体においては、部分構造である色素構造は1種でもよく、2種以上でもよい。また、金属キレート色素に、エチレン性不飽和結合単量体が共重合成分として含まれる場合、該色素単量体は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、共重合成分として、所望によりさらに含まれ得る他の単量体も、これを共重合成分として含む場合には、1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0075】
本発明における金属キレート色素である上記一般式(3)で表される構造を部分構造として有する色素多量体においては、上記一般式(3)で表される色素単量体を質量比(質量%)で100質量%含むもの、すなわち、上記一般式(3)で表される色素単量体のみが重合してなる多量体でもよい。
本発明の金属キレート色素を着色硬化性組成物に適用する場合、着色パターン形成性を向上させる観点から、金属キレート色素は、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。
【0076】
本発明における金属キレート色素は、共重合成分として、末端エチレン性不飽和結合を有し、一般式(3)で表される色素単量体とは構造の異なる単量体(「他のエチレン性不飽和結合単量体」ということがある。)を含んでもよい。
すなわち、本発明における金属キレート色素は、前記一般式(3)で表される色素単量体と、該色素単量体とは構造の異なる他のエチレン性不飽和結合単量体とを含む共重合体であってもよい。このとき、該共重合体は、前記一般式(3)で表される色素単量体を、1種のみ含んでもよく、2種以上含んでよく、また、前記他のエチレン性不飽和結合単量体を、1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0077】
前記他のエチレン性不飽和結合単量体としては、少なくとも末端部にエチレン性不飽和結合を有する化合物であって、一般式(3)で表される色素単量体とは構造の異なる単量体であれば、特に制限されない。
本発明の金属キレート色素を着色硬化性組成物に適用する場合、着色パターン形成性を向上させる観点から、他のエチレン性不飽和結合単量体は、末端エチレン性不飽和結合に加え、さらに、アルカリ可溶性基を有する単量体であることが好ましい。
【0078】
アルカリ可溶性基を有する前記他のエチレン性不飽和結合単量体の例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0079】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
【0080】
本発明の金属キレート色素は、上述のようなアルカリ可溶性基を有するビニルモノマーに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含むことにより、本発明の金属キレート色素を着色硬化性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
【0081】
本発明の金属キレート色素において、アルカリ可溶性基を有するビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、酸価として好ましくは50mgKOH/g以上であり、特に好ましくは50mgKOH/g〜200mgKOH/gである。すなわち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、アルカリ可溶性基を有するビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、酸価として50mgKOH/g以上であることが好ましい。本発明の金属キレート色素と顔料とを共に用いて着色硬化性組成物を構成する場合、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、アルカリ可溶性基を有するビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、酸価として50mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0082】
本発明における色素単量体との共重合で使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、本明細書において「アクリル、メタクリル」のいずれか或いは双方を示す場合「(メタ)アクリル」と記載することがある。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0084】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0085】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0086】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0087】
以下に、本発明における色素単量体に用いうる前記他のエチレン性不飽和結合単量体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
【化10】

【0089】
本発明の金属キレート色素にアルカリ可溶性基を導入する方法としては、特に制限はなく、一般式(1)もしくは(2)の各置換基に導入することが出来る。色素多量体の場合、アルカリ可溶性基を有する単量体を用いて金属キレート色素を合成する場合、前記一般式(3)で表される色素単量体、及び前記他のエチレン性不飽和結合単量体の少なくとも1種が、アルカリ可溶性基を有する単量体であればよい。前記一般式(3)で表される色素単量体がアルカリ可溶性基を有する単量体である場合、Dye部分(色素残基)がアルカリ可溶性基を有することができる。合成適合性の点で、前記他のエチレン性不飽和結合単量体の少なくとも1種がアルカリ可溶性基を有する単量体であることが好ましい。
【0090】
本発明の金属キレート色素は、着色硬化性組成物に適用した場合の着色パターン形成性の観点から、アルカリ可溶性基を、酸価10〜400mgKOH/g含むことが好ましく、酸価30〜300mgKOH/g含むことがより好ましく、酸価50〜200mgKOH/g含むことが更に好ましい。
本発明において、酸価はJIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により求める。
【0091】
(金属キレート色素の具体例)
以下に、本発明で用いることができる好ましい金属キレート色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【化11】

【0093】
【化12】

【0094】
【化13】

【0095】
【化14】

【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
以下に、本発明に用いうる金属キレート色素多量体の具体例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、表中、単量体Mの番号は、既述の色素単量体の具体例に対応し、単量体bの番号は、既述のエチレン性不飽和結合単量体の具体例に対応する。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
以下に、上記の金属キレート色素の具体例のいくつかについて、合成方法の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
<例示化合物M−23の合成>
例示化合物M−23は、下記の合成スキームに従って合成できる。特開2008−292970号公報記載の例示化合物III−80の合成において、クロロアセトフェノンの代わりに2−クロロ−2’,5’−ジメトキシアセトフェノンを用いて5-アミノピロール体(中間体A)を調製し、ついでアシル化、チオエーテル化、エステル化を経て2つの中間体Cと中間体Fとをカップリングさせ、ついで塩化亜鉛を用いてキレート化させることで調製することができる。
【0105】
【化19】

【0106】
(中間体Aの合成)
2−クロロ−2’,5’−ジメトキシアセトフェノン214.7g(1.0モル)をジメチルアセトアミド900mLに懸濁させ、水冷下この溶液にフタルイミドカリウム185.2g(1.0モル)を数回に分けて添加した。添加後、室温にて5時間攪拌を行い、反応を完結させた。この溶液を水3L中に攪拌しながら添加し、得られた結晶をろ過、水洗、乾燥した。収量は309.0gであった。
得られた結晶309.0g(0.95モル)と特開2008−292970号公報に記載の中間体2 198.8gとをエタノール1500mL中で混合し、水酸化ナトリウム88gの水400mLの溶液を室温にて加えて加熱還流させる。5時間後、新たに析出した結晶をろ別し、中間体Aを293.7g得た。
【0107】
(中間体Bの合成)
中間体A 290.0g(0.75モル)をジメチルアセトアミド1000mLに溶解し、10℃以下にて塩化ピバロイル90.5g(0.75モル)を滴下する。滴下終了後、室温にて更に2時間攪拌後、反応液を水中に注入し、得られた結晶をろ別した。乾燥後の収量は335.3gであった。
【0108】
(中間体Cの合成)
N-メチルホルムアニリド110gのアセトニトリル500mLの溶液にオキシ塩化りん125gを5℃以下にて滴下した。更に5℃以下にて1時間攪拌後、中間体B 329.4g(0.7モル)を少しずつ加えた。室温にて3時間撹拌後、水中に空け、得られた結晶をろ別、水洗、乾燥した。中間体Cの収量は331.6gであった。
【0109】
(中間体Dの合成)
中間体A 290.0g(0.75モル)をジメチルアセトアミド1000mLに溶解し、10℃以下にて2−クロロプロピオン酸クロリド95.2g(0.75モル)を滴下する。滴下終了後、室温にて更に2時間攪拌後、反応液を水中に注入し、得られた結晶をろ別、乾燥した。乾燥後の収量は350.6gであった。
【0110】
(中間体Eの合成)
中間体D 333.9g(0.7モル)をジメチルアセトアミド1000mLに溶解し、2−メルカプトエタノール57.4gを加えた。次いで20℃以下にてDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)116.9gを滴下し、更に室温にて2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル1000mLで希釈し、1規定塩酸1000mLにて洗浄、分液した。抽出液を濃縮しついでアセトニトリル1000mLを加えて氷冷し、析出した結晶をろ別、乾燥した。得られた中間体Eの収量は254.1gであった。
【0111】
(中間体Fの合成)
中間体E 207.5g(0.4モル)をジメチルアセトアミド700mLに溶解させ、メタクリル酸クロリド90.4gを室温にて滴下した。室温にて更に3時間撹拌し、酢酸エチル1000mLで希釈し、水1000mLで水洗した。抽出液を濃縮し油状物242gを得た。
【0112】
(中間体Gの合成)
中間体C 49.9g(0.1モル)と中間体F58.7g(0.1モル)とを無水酢酸320mLに溶解させ、次いでトリフルオロ酢酸38.5mLを10℃以下にて滴下した。室温にて3時間撹拌後、反応液を炭酸水素ナトリウム500gの飽和水溶液中に添加し、無水酢酸を加水分解した。得られた赤色結晶をろ別乾燥した。収量は106.0gであった。
【0113】
(M−23の合成)
中間体G 106.0gをテトラヒドロフラン2000mLに溶解させ、塩化亜鉛13.6gのメタノール溶液を滴下した。析出した結晶をろ別、乾燥し、M−23を95g得た。
【0114】
<例示化合物P−7の合成>
単量体M−18(3.50g)、単量体b−2(1.50g)、n−ドデカンチオール420mgをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)28.3mlに溶解させ、窒素下、85℃で攪拌し、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)478mgを添加した。その後、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)478mgを2時間おきに二度追加添加し、90℃に昇温し、更に2時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリル400ml中に反応液を滴下し、得られた結晶をろ過し、例示化合物P−7(4.21g)を得た。
【0115】
<例示化合物P−11の合成>
単量体M−23(4.25g)、単量体b−2(0.75g)、n−ドデカンチオール420mgをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)28.3mlに溶解させ、窒素下、85℃で攪拌し、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)239mgを添加した。その後、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)239mgを2時間おきに二度追加添加し、90℃に昇温し、更に2時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリル400ml中に反応液を滴下し、得られた結晶をろ過し、例示化合物P−11(3.89g)を得た。
【0116】
上記例示化合物のなかでも、アルカリ現像性の観点からは、例示化合物P−1、P−3,P−5,P−6〜P−8,P−10〜P−15等が好ましい。
【0117】
本発明の金属キレート色素の分子量は、重量平均分子量(Mw)で5000〜30000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜20000の範囲であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量(Mw)で5000〜25000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜17000の範囲である。特に好ましくは、重量平均分子量(Mw)で5000〜20000の範囲、数平均分子量(Mn)で3000〜15000の範囲である。
本発明の金属キレート色素を着色硬化性組成物に適用し、カラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、特定重合体の重量平均分子量(Mw)は20000以下であることが好ましい。
【0118】
〔着色硬化性組成物〕
本発明の着色硬化性組成物は、着色剤として上記した金属キレート色素を含み、さらに重合性化合物、および重合開始剤を含有する。本発明の着色硬化性組成物は、熱、光またはその両方で硬化することを特徴とするものであり、必要によって、溶剤、バインダー、及び架橋剤など他の成分を用いて構成することができる。
【0119】
本発明における金属キレート色素は前記した(1)〜(4)の要件のうち3つ以上を満足するので、本発明の着色硬化性組成物は、画素パターンが薄膜(例えば、厚み1μm以下)に形成される。さらに、本発明の着色硬化性組成物は、2μm以下の微少サイズ(基板法線方向からみた画素パターンの辺長が、例えば0.5〜2.0μm)の高精細さが求められ、良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子用のカラーフィルタの作製に特に好適である。特に金属キレート色素として、特定構造のジピロメテン系金属錯体化合物を用いた時に本発明の効果は発揮される。
【0120】
本発明の着色硬化性組成物においては、前記金属キレート色素を1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の着色硬化性組成物中における前記金属キレート色素の含有量は、前記金属キレート色素の分子量及びモル吸光係数によって異なるが、着色硬化性組成物の全固形分に対して、10質量%〜70質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましく、15質量%〜30質量%が最も好ましい。
【0121】
本発明の着色硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記金属キレート色素以外の着色剤も併せて用いることができる。例えば、550nm〜650nmに吸収極大を有するトリアリールメタン系の着色剤(例えば、C.I.アシッドブルー7、C.I.アシッドブルー83、C.I.アシッドブルー90、C.I.ソルベント・ブルー38、C.I.アシッド・バイオレット17、C.I.アシッド・バイオレット49、C.I.アシッド・グリーン3等)、500nm〜600nmに吸収極大を有するキサンテン系の色素、例えば、C.I.アシッド・レッド289等を使用できる。
【0122】
前記トリアリールメタン系の着色剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で使用でき、本発明の感光性着色硬化性組成物の全固形分に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0123】
(フタロシアニン系顔料)
また、青色フィルタを作製するためには、前記金属キレート色素を少なくとも1種とフタロシアニン系顔料とを混合して用いることが、カラーフィルタの色相、および光堅牢性の観点で好ましい。
フタロシアニン系顔料としては、フタロシアニン骨格を有する顔料であれば特に制限されるものではない。また、フタロシアニン系顔料に含まれる中心金属としては、フタロシアニン骨格を構成できる金属であればよく、特に限定されない。その中でも、中心金属としては、マグネシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムが好ましく用いられる。
【0124】
具体的には、C.I.ピグメントブルー15,C.I.ピグメントブルー15:1,C.I.ピグメントブルー15:2,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:4,C.I.ピグメントブルー15:5,C.I.ピグメントブルー15:6,C.I.ピグメントブルー16,C.I.ピグメントブルー17:1,C.I.ピグメントブルー75,C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントグリーン7,C.I.ピグメントグリーン36,C.I.ピグメントグリーン37、クロロアルミニウムフタロシアニン、ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンオキシド、亜鉛フタロシアニンが挙げられる。中でも、耐光性と着色力との点から、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー15:1,C.I.ピグメントブルー15:2が好ましく、特に、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
【0125】
フタロシアニン系顔料の着色硬化性組成物中における含有量は、着色硬化性組成物の全固形分に対して、10質量%〜70質量%が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましく、35質量%〜50質量%が最も好ましい。
また、前記金属キレート色素とフタロシアニン系顔料との含有比は、前記金属キレート色素がジピロメテン系金属錯体化合物である場合には、フタロシアニン系顔料:ジピロメテン系金属錯体化合物=100:5〜100:100が好ましく、100:15〜100:75がより好ましく、100:25〜100:50が更に好ましい。
【0126】
(分散剤)
本発明の着色硬化性組成物は、顔料を含む場合、分散剤を含有することができる。
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0127】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0128】
顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子としては、例えば、特開平3−112992号公報、特表2003−533455号公報等に記載の末端にりん酸基を有する高分子、特開2002−273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9−77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007−277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0129】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子としては、例えば、特開昭54ー37082号公報、特表平8−507960号公報、特開2009−258668公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9−169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10−339949号、特開2004−37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003−238837号公報、特開2008−9426号公報、特開2008−81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010−106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体等が挙げられる。特に、特開2009−203462号公報に記載の塩基性基と酸性基を有する両性分散樹脂は、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色硬化性組成物が示す現像性の観点から特に好ましい。
【0130】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亜合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、特に柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色硬化性組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、更に、特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
【0131】
顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子としては、特開2003−49110号公報、特開2009−52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0132】
本発明に用いうる顔料分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000E、三洋化成社製 イオネットS−20等が挙げられる。
【0133】
これらの顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。また、本発明の顔料分散剤は、前記顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子と伴に、アルカリ可溶性樹脂と併用して用いても良い。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004−300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7−319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
【0134】
重合性組成物における顔料分散剤の含有量としては、着色剤である顔料100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部であることが更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料100質量部に対して、質量換算で5〜100部の範囲が好ましく、10〜80部の範囲であることがより好ましい。
また、顔料誘導体を併用する場合、顔料誘導体の使用量としては、顔料100質量部に対し、質量換算で1〜30部の範囲にあることが好ましく、3〜20部の範囲にあることがより好ましく、5〜15部の範囲にあることが特に好ましい。
【0135】
重合性組成物において、着色剤としての顔料を用い、顔料分散剤をさらに用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤及び分散剤の含有量の総和が、重合性組成物を構成する全固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0136】
(重合性化合物)
本発明の着色硬化性組成物は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましい。
【0137】
前記少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
【0138】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、重合性化合物として用いることができる。
【0139】
中でも、重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0140】
また、重合性化合物としては、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた硬化性組成物を得ることができる。
重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
また、重合性化合物としては、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
本発明に用いられる重合性化合物としては、4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0141】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することが好ましい。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記式(i)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0142】
【化20】

【0143】
(式(i)中、6個のRは全てが下記式(ii)で表される基であるか、または6個のRのうち1〜5個が下記式(ii)で表される基であり、残余が下記式(iii)で表される基である。)
【0144】
【化21】

【0145】
(式(ii)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、mは1または2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0146】
【化22】

【0147】
(式(iii)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0148】
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(i)〜(iii)においてm=1、式(ii)で表される基の数=2、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式、m=1、式(ii)で表される基の数=3、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式、m=1、式(ii)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA−120(同式においてm=2、式(ii)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0149】
重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性化合物の着色硬化性組成物中における含有量としては、質量換算で10質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜75質量%がより好ましく、20質量%〜60質量%が特に好ましい。重合性化合物の含有量が前記範囲内において、十分な硬化反応が進行する。
【0150】
(重合開始剤)
本発明の着色硬化性組成物は、重合開始剤を含有する。
前記重合開始剤は、重合性組成物に感光性を付与し、着色硬化性組成物とすることができ、カラーレジスト等に好適に用いることができるようになる。重合開始剤としては、以下に述べる重合開始剤として知られているものを用いることができる。
重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記重合開始剤は、約300〜800nm(330〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0151】
前記重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0152】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0153】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0154】
本発明で重合開始剤として好適に用いられるオキシム誘導体等のオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0155】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE OXE−01(BASF社製)、IRGACURE OXE−02(BASF社製)も好適に用いられる。
好ましくはさらに、特開2007−231000公報、及び、特開2007−322744公報に記載される環状オキシム化合物に対しても好適に用いることができる。
最も好ましくは、特開2007−269779公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム系光重合開始剤としては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0156】
【化23】

【0157】
(式(I)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。)
前記Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0158】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、及び、3−ニトロフェナシル基が例示できる。
【0159】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びに、オバレニル基が例示できる。
【0160】
置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、及び、4−メトキシベンゾイル基が例示できる。
【0161】
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、及び、トリフルオロメチルオキシカルボニル基が例示できる。
【0162】
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基として具体的には、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が例示できる。
【0163】
置換基を有していてもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子を含む、芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。
具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及び、チオキサントリル基が例示できる。
【0164】
置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基として具体的には、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、及び、トリフルオロメチルチオカルボニル基が例示できる。
【0165】
置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基として具体的には、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルチオカルボニル基が挙げられる。
【0166】
前記Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基を表す。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0167】
なかでも、特に好ましくは以下に示す構造である。
下記の構造中、Y、X、及び、nは、それぞれ、後述する式(II)におけるY、X、及び、nと同義であり、好ましい例も同様である。
【0168】
【化24】

【0169】
前記Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロヘキシレン基、アルキニレン基が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
中でも、Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0170】
前記Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に置換基を有していてもよいアリール基の具体例として挙げた置換アリール基に導入された置換基と同様のものが例示できる。
なかでも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0171】
式(I)においては、前記Arと隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下
に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチ
ル基を表す。
【0172】
【化25】

【0173】
オキシム化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0174】
【化26】

【0175】
(式(II)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(II)におけるR、A、及びArは、前記式(I)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0176】
前記Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0177】
これらの中でも、Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、式(II)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0178】
前記Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、「*」は、前記式(II)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0179】
【化27】

【0180】
中でも、高感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0181】
【化28】

【0182】
さらにオキシム化合物は、下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0183】
【化29】

【0184】
(式(III)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(III)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、前記式(II)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0185】
以下好適に用いられるオキシム化合物の具体例(C−4)〜(C−13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0186】
【化30】

【0187】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものであり、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることが好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0188】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、3,000〜300,000であることが好ましく、5.000〜300,000であることがより好ましく、10000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0189】
また、上記以外の重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシ
クマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる
【0190】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾルフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0191】
重合開始剤としては、オキシム化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物からなる群より選択される化合物がさらに好ましい。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤、及び、既述のオキシム系開始剤、さらにオキシム系開始剤として、特開2001−233842号記載の化合物も用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。またアシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。
【0192】
重合開始剤は、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて含有することができる。
着色硬化性組成物の全固形分中における重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、本発明の効果をより効果的に得る観点から、3質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜19質量%がより好ましく、5質量%〜18質量%が特に好ましい。
【0193】
(有機溶剤)
本発明の着色硬化性組成物は、有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤は、並存する各成分の溶解性や着色硬化性組成物としたときの塗布性を満足できるものであれば、基本的には特に制限はなく、特に、アルカリ可溶性バインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
【0194】
有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(具体的には、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(具体的には、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(具体的には、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等が挙げられる。)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0195】
また、エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0196】
これらの有機溶剤は、前述の各成分の溶解性、及びアルカリ可溶性バインダーを含む場合はその溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0197】
有機溶剤の着色硬化性組成物中における含有量としては、組成物中の全固形分濃度が10質量%〜80質量%になる量が好ましく、15質量%〜60質量%になる量がより好ましい。
【0198】
(他の成分)
本発明の着色硬化性組成物は、上述の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、アルカリ可溶性バインダー、架橋剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0199】
−アルカリ可溶性バインダー−
本発明の着色硬化性組成物には、アルカリ可溶性バインダーを添加してもよい。アルカリ可溶性バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基など)を有するアルカリ可溶性バインダーの中から適宜選択することができる。
【0200】
上記アルカリ可溶性バインダーとしてより好ましいものは、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等のアクリル系共重合体のものが挙げられる。
アルカリ可溶性バインダーの酸価としては、20〜200mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/g、更に好ましくは50〜120mgKOH/gの範囲のものが好ましい。
【0201】
アルカリ可溶性バインダーの具体例としては、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート、及びアリール(メタ)アクリレートとしては、CH=C(R11)(COOR13)〔ここで、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R13は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキルは炭素数1〜8のアルキル基)、ヒドロキシグリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等を挙げることができる。
【0202】
またアルカリ可溶性バインダーの分子側鎖にポリアルキレンオキサイド鎖を有する樹脂も好ましいものである。前記ポリアルキレンオキサイド鎖としてはポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖あるいはこれらの併用も可能である。
ポリエチレンオキシド鎖、およびポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数は1〜20が好ましく、2〜12がより好ましい。これらの側鎖にポリアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系共重合体は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどおよびこれらの末端OH基をアルキル封鎖した化合物、例えばメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどを共重合成分とするアクリル系共重合体が好ましい。
【0203】
また、前記ビニル化合物としては、CH=CR1214〔ここで、R12は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R14は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。〕具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等を挙げることができる。
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、アルキル(メタ)アクリレート(アルキルは炭素数2から4のアルキル基)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンである。
【0204】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
【0205】
これらのアクリル系樹脂は、既に述べたように、20〜200mgKOH/gの範囲の酸価を有することが好ましい。酸価をこの範囲とすることで、アクリル系樹脂のアルカリに対する溶解性が適正になり、現像適正範囲(現像ラチチュード)を広くすることができる。
また、アクリル系樹脂の重量平均分子量Mw(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)は、着色硬化性組成物を塗布等の工程上使用しやすい粘度範囲を実現するために、また膜強度を確保するために、2,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜50,000である。
【0206】
また、本発明における着色硬化性組成物の架橋効率を向上させるために、ポリマーの側鎖に重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。特に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を含有するアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。これにより、感度が向上し、且つレンズ上及びガラス基板上の残渣が低減する。
【0207】
これら重合性二重結合を含有するポリマーの例を以下に示すが、COOH基、OH基等のアルカリ可溶性基と炭素炭素間不飽和結合が含まれていれば下記に限定されない。
(1)予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、
(2)カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、
(3)酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、
(4)OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂。
上記のうち、特に(1)及び(2)の樹脂が好ましい。
【0208】
重合性二重結合を有するアルカリ可溶性バインダーの酸価としては、好ましくは30〜150mgKOH/g、より好ましくは35〜120mgKOH/gであり、また重量平均分子量Mwとしては好ましくは2,000〜50,000、より好ましくは3,000〜30,000である。
具体例として、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートと、メタクリル酸と、さらにこれらと共重合可能なアクリル系若しくはビニル系化合物等のモノマーとの共重合体に、OH基に対し反応性を有するエポキシ環と炭素間不飽和結合基を有する化合物(例えばグリシジルアクリレートなどの化合物)を反応させて得られる化合物等を使用できる。OH基との反応ではエポキシ環のほかに酸無水物、イソシアネート基、アクリロイル基を有する化合物も使用できる。また、特開平6−102669号公報、特開平6−1938号公報に記載のエポキシ環を有する化合物にアクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物に、飽和もしくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる反応物も使用できる。また、重合性二重結合を有するアルカリ可溶性バインダーの重合性基を有する繰り返し単位は、バインダーに対し5〜60質量%含有されることが好ましく、10〜40質量%含有されることがさらに好ましい。
【0209】
COOH基のようなアルカリ可溶性基と炭素炭素間不飽和基とを併せ持つ化合物として、例えば、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製);Photomer 6173(COOH基含有Polyurethane acrylic oligomer、Diamond Shamrock Co.Ltd.,製);ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製);サイクロマーPシリーズ、プラクセルCF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業(株)製);Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、などが挙げられる。
【0210】
アルカリ可溶性バインダーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルまたはスチレンと、(メタ)アクリル酸との共重合体を(メタ)アクリル酸グリシジルで変性した樹脂、が最も好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルとしては、炭素数1〜10のアルキルを有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0211】
また、アルカリ可溶性バインダーとしては、下記一般式(E−1)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を重合してなるポリマー(a)を用いることも好ましい。
【0212】
【化31】

【0213】
一般式(E−1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【0214】
本発明の着色硬化性組成物が前記ポリマー(a)を含有することにより、該組成物を用いて形成された硬化塗膜の耐熱性及び透明性がより向上する。
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(E−1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、ステアリル基、ラウリル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基等のアリール基;シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、ジシクロペンタジエニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、等の脂環式基;1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル基等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。
これらの中でも特に、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素を含む基が耐熱性の点で好ましい。
なお、RおよびRは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0215】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0216】
アルカリ可溶性バインダーの着色硬化性組成物中における含有量としては、着色硬化性組成物の固形分に対して質量換算で、0質量%〜90質量%であることが好ましく、3質量%〜60質量%であることがより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂がこの範囲であれば、適度な膜強度が向上し、現像での溶解性のコントロールがし易くなるので好ましい。また所望する厚さの塗膜が得やすくなる点で好ましい。
【0217】
−増感剤−
本発明の着色硬化性組成物には、重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、併用する重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
増感剤の好ましい例としては、特開2008−214395号公報の段落番号〔0085〕〜〔0098〕に記載された化合物を挙げることができる。
増感剤の着色硬化性組成物における含有量は、感度と保存安定性の観点から、着色硬化性組成物の全固形分の質量に対し、0.1〜30質量%の範囲が好ましく、1〜20質量%の範囲がより好ましく、2〜15質量%の範囲が更に好ましい。
【0218】
−架橋剤−
本発明の着色硬化性組成物に架橋剤を用い、着色硬化性組成物を硬化させてなる着色硬化膜の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物又はヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
架橋剤の具体例などの詳細については、特開2004−295116号公報の段落0134〜0147の記載を参照することができる。
【0219】
−界面活性剤−
本発明の着色硬化性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0220】
特に、本発明の着色硬化性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する着色硬化性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0221】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、着色硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0222】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F479、同F482、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0223】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等が挙げられる。
【0224】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0225】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0226】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン株式会社製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−444(4)(5)(6)(7)6」、「TSF−44 60」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、ビッグケミー社製「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0227】
−重合禁止剤−
本発明の着色硬化性組成物においては、該着色硬化性組成物の製造中又は保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、着色硬化性組成物に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0228】
−密着向上剤−
本発明の着色硬化性組成物には、着色画素と基板との密着性を向上させるために、密着向上剤を添加することができる。密着向上剤としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
シラン系カップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられる。
密着向上剤の添加量は、着色硬化性組成物の全固形分中0.5〜30質量%が好ましく、0.7〜20質量%がより好ましい。
特に、本発明の着色硬化性組成物により、基板上に固体撮像素子を作製する場合には、感度向上の観点から、密着向上剤を添加することが好ましい。
【0229】
−その他の添加物−
着色硬化性組成物には、さらに必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、上記以外の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落0155〜0156に記載のものを挙げることができる。
【0230】
(現像促進剤)
また、非露光領域のアルカリ溶解性を促進し、着色硬化性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、該組成物に分子量1000以下の有機カルボン酸、分子量300以上5,000以下のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールグリセロールプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート(Mw 1500)、グリセロールプロポキシレート(Mw 1000)、グリセロールプロポキシレート(Mw 750)、グリセロールプロポキシレート(Mw 4100)など)を添加してもよい。
分子量1000以下の有機カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0231】
〔着色硬化性組成物の調製方法〕
本発明の着色硬化性組成物は、前述の成分を混合することで調製される。
なお、着色硬化性組成物の調製に際しては、着色硬化性組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された着色硬化性組成物は、好ましくは、孔径0.01μm〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05μm〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することができる。
【0232】
本発明の着色硬化性組成物は、保存安定性に優れ、更に、耐光性に優れた着色硬化膜を形成することができるため、液晶表示装置、有機EL表示装置、および固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷インキ、インクジェットインキ、及び塗料などの作製用途として好適に用いることができる。特に、CCD、及びCMOS等の固体撮像素子用の着色画素形成用として好適に用いることができる。
【0233】
≪カラーフィルタ及びその製造方法≫
次に、本発明の着色硬化性組成物を用いてカラーフィルタを製造する方法について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法では、まず、支持体上に、既述の本発明の着色硬化性組成物を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布して、着色硬化性組成物層を形成し、その後、必要に応じて、予備硬化(プリベーク)を行い、該着色硬化性組成物を乾燥させる(塗布工程)。
【0234】
支持体としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等のカラーフィルタに用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板(例えばCCD用、CMOS用のシリコン基板)などが挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止、或いは表面の平坦化のために、下塗り層を設けてもよい。
【0235】
なお、着色硬化性組成物を支持体上に回転塗布する際には、液の滴下量を低減のため、着色硬化性組成物の滴下に先立ち、適当な有機溶剤を滴下、回転させることにより、着色硬化性組成物の支持体への馴染みをよくすることができる。
【0236】
上記プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜130℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
また、着色硬化性組成物により形成される着色硬化性組成物層の厚みは、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、0.2μm〜5.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.5μmであることが更に好ましく、0.3μm〜1.5μmの範囲が最も好ましい。なお、ここでいう着色硬化性組成物層の厚さは、プリベーク後の膜厚である。
【0237】
続いて、本発明のカラーフィルタの製造方法では、支持体上に形成された着色硬化性組成物層には、マスクを介した露光が行われる(露光工程)。
この露光に適用し得る光若しくは放射線としては、g線、h線、i線、KrF光、ArF光が好ましく、特にi線が好ましい。照射光にi線を用いる場合、100mJ/cm〜10000mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。
また、露光した着色硬化性組成物層は、次の現像処理前にホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜180℃で、0.5分間〜15分間程度加熱することができる。
また、露光は、着色硬化性組成物層中の色材の酸化褪色を抑制するために、チャンバー内に窒素ガスを流しながら行なうことができる。
【0238】
続いて、露光後の着色硬化性組成物層に対し、現像液にて現像を行う(現像工程)。これにより、着色されたパターン(レジストパターン)を形成することができる。
現像液は、着色硬化性組成物層の未硬化部(非露光部)を溶解し、硬化部(露光部)を溶解しないものであれば、種々の有機溶剤の組み合わせや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-ウンデセン等の有機、無機のアルカリ性化合物の水溶液を用いることができる。
現像液がアルカリ性水溶液である場合、アルカリ濃度が好ましくはpH11〜13、更に好ましくはpH11.5〜12.5となるように調整するのがよい。特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを、濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%となるように調整したアルカリ性水溶液を現像液として用いることができる。
現像時間は、30秒〜300秒が好ましく、更に好ましくは30秒〜120秒である。現像温度は、20℃〜40℃が好ましく、更に好ましくは23℃である。
現像は、パドル方式、シャワー方式、スプレー方式等で行うことができる。
【0239】
また、アルカリ性水溶液を用いて現像した後は、水で洗浄することが好ましい。洗浄方式も、目的に応じて適宜選択されるが、シリコンウエハ基板等の支持体を回転数10rpm〜500rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行うことができる。
【0240】
その後、必要に応じて、形成されたパターン(レジストパターン)に対し後加熱及び/又は後露光を行い、パターンの硬化を促進させてもよい(後硬化工程)。
【0241】
−紫外線照射工程−
紫外線照射工程は、前記パターン形成工程で現像処理を行なった後のパターンに、現像前の露光処理における露光量[mJ/cm]の10倍以上の照射光量[mJ/cm]の紫外光(UV光)を照射する。パターン形成工程での現像処理と後述の加熱処理との間に、現像後のパターン(金属キレート色素含有ネガ型硬化性組成物)にUV光を所定時間、照射することにより、後に加熱された際に色移りするのを効果的に防止でき、耐光性が向上する。
【0242】
UV光を照射する光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、DEEP UVランプなどを用いることができる。中でも、照射される紫外光中に275nm以下の波長光を含み、かつ275nm以下の波長光の照射照度[mW/cm]が紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して5%以上である光を照射できるものが好ましい。紫外光中の275nm以下の波長光の照射照度を5%以上とすることで、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。この点から、前記パターン形成工程での露光に用いられるi線等の輝線などの光源と異なる光源、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯などを用いて行なうことが好ましい。中でも、前記同様の理由から、紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して7%以上が好ましい。また、275nm以下の波長光の照射照度の上限は、25%以下が望ましい。
【0243】
なお、積分照射照度とは、分光波長ごとの照度(単位面積を単位時間に通過する放射エネルギー;[mW/m])を縦軸とし、光の波長[nm]を横軸とした曲線を引いた場合に照射光に含まれる各波長光の照度の和(面積)をいう。
【0244】
UV光の照射は、前記パターン形成工程での露光時の露光量の10倍以上の照射光量[mJ/cm]として行なう。本工程での照射光量が10倍未満であると、着色画素間や上下層間における色移りを防止できず、また耐光性も悪化する。
中でも、UV光の照射光量は、パターン形成工程での露光時の露光量の12倍以上200倍以下が好ましく、15倍以上100倍以下がより好ましい。
【0245】
この場合、照射される紫外光における積分照射照度が200mW/cm以上であることが好ましい。積分照射照度が200mW/cm以上であると、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。中でも、250〜2000mW/cmが好ましく、300〜1000mW/cmがより好ましい。
後加熱は、ホットプレートやオーブンを用いて、100℃〜300℃で実施することが好ましく、更に好ましくは、150℃〜250℃である。また、後加熱時間は、30秒〜30000秒が好ましく、更に好ましくは、60秒〜1000秒である。
一方、後露光は、g線、h線、i線、KrF、ArF、UV光、電子線、X線等により行うことができるが、g線、h線、i線、UV光が好ましく、特に、UV光が好ましい。UV光の照射(UVキュア)を行う際は、20℃以上50℃以下(好ましくは25℃以上40℃以下)の低温で行うことが好ましい。UV光の波長は、200nm〜300nmの範囲の波長を含んでいることが好適であり、光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ等を使用することができる。照射時間としては、10秒〜180秒、好ましくは20秒〜120秒、更に好ましくは30秒〜60秒である。
後露光と後加熱は、どちらを先に行ってもよいが、後加熱に先立って、後露光を実施することが好ましい。後露光で硬化を促進させることにより、後加熱過程で見られるパターンの熱ダレやすそ引きによる形状の変形を抑止するためである。
【0246】
このようにして得られた、着色されたパターンがカラーフィルタにおける画素を構成することになる。
複数の色相の画素を有するカラーフィルタの作製においては、前述の塗布工程、露光工程、及び現像工程(必要に応じて硬化工程)を所望の色数に合わせて繰り返せばよい。
【0247】
本発明の着色硬化性組成物は、例えば、塗布装置吐出部のノズル、塗布装置の配管部、塗布装置内等に付着した場合でも、公知の洗浄液を用いて容易に洗浄除去することができる。この場合、より効率の良い洗浄除去を行うためには、本発明の着色硬化性組成物に含まれる溶剤として前掲した溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。
【0248】
また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も、本発明の着色硬化性組成物の洗浄除去用の洗浄液として好適に用いることができる。
洗浄液としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることが好ましい。
洗浄液として用いうるこれら溶剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤を2種以上混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合してなる混合溶剤が好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。混合溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。
なお、着色硬化性組成物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には、着色感光性組成物が含有しうる界面活性剤として前掲した界面活性剤を添加してもよい。
【0249】
本発明のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ(本発明のカラーフィルタ)は、本発明の着色硬化性組成物を用いていることから、耐光性に優れたものとなる。
そのため、本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置、有機EL表示装置、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子及びこれを用いたカメラシステムに用いることができ、中でも、着色パターンが微少サイズで薄膜に形成され、しかも良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子の用途、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等の用途に好適である。
【0250】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えたものである。本発明のカラーフィルタは、高い耐光性を有するものであり、このカラーフィルタを備えた固体撮像素子は優れた色再現性を得ることが可能となる。
【0251】
固体撮像素子の構成としては、本発明のカラーフィルタを備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、次のような構成が挙げられる。
即ち、支持体上に、CCDイメージセンサー(固体撮像素子)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、その上に、本発明のカラーフィルタを設け、次いで、マイクロレンズを積層する構成である。
【0252】
また、本発明のカラーフィルタを備えるカメラシステムは、色材の光褪色性の観点から、カメラレンズやIRカット膜が、ダイクロコートされたカバーガラス、マイクロレンズ等を備えており、その材料の光学特性は、400nm以下のUV光の一部又は全部を吸収するものであることが望ましい。また、カメラシステムの構造としては、色材の酸化褪色を抑止するため、カラーフィルタへの酸素透過性が低減されるような構造になっていることが好ましく、例えば、カメラシステムの一部又は全体が窒素ガスで封止されていることが好ましい。
【0253】
<液晶表示装置、有機EL表示装置>
本発明のカラーフィルタは、液晶表示装置用、および有機EL表示装置用のカラーフィルタに用いられる。本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置、および有機EL表示装置は、表示画像の色合いが良好で表示特性に優れた高画質画像を表示することができる。
【0254】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置、および有機EL表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」などに記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置、および有機EL表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0255】
本発明のカラーフィルタは、カラーTFT方式の液晶表示装置に用いてもよい。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、及びR−OCB等にも適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタ層に対する要求特性は、前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち低誘電率及び剥離液耐性が必要とされることがある。本発明のカラーフィルタにおいては、色相に優れた染料多量体を用いることから、色純度などの良い色合いに優れるので、解像度が高く長期耐久性に優れたCOA方式の液晶表示装置を提供することができる。なお、低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0256】
本発明の液晶表示装置は、本発明のカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18〜24ページ(島 康裕)、同25〜30ページ(八木隆明)などに記載されている。
【0257】
本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0258】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0259】
[実施例1]
(1)レジスト溶液Aの調製(ネガ型)
下記の成分を混合して溶解し、レジスト溶液Aを調製した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と称する。) 5.20部
・シクロヘキサノン(以下、「CyH」と称する。) 52.60部
・バインダー 30.50部
(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、モル比=60:20:20、重量平均分子量30200(ポリスチレン換算)、41%シクロヘキサノン溶液)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.20部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.006部
・フッ素系界面活性剤(DIC社製メガファックF−475) 0.80部
・重合開始剤:4-ベンズオキソラン−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(みどり化学(株)製TAZ−107) 0.58部
【0260】
(2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を0.5%NaOH水で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。次いで、上記(1)で得たレジスト溶液Aを洗浄したガラス基板上に乾燥後の膜厚が2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥させて、下塗り層付ガラス基板を調製した。
【0261】
(3)着色硬化性組成物の調製
まず、C.I.Pigment Blue15:6分散液を下記の方法で調整した。
C.I.Pigment Blue15:6を11.5質量部(平均粒子径55nm)、及び顔料分散剤BYK−161(BYK社製)を3.5質量部、PGMEA85質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、25nmであった。
【0262】
この分散液を用いて、下記の各成分を混合して、着色硬化性組成物を得た。
・CyH 1.133部
・メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体(モル比=70:30、重量平均分子量30000、20%CyH溶液) 1.009部
・ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD DPHA 0.225部
・フッ素系界面活性剤(DIC社製メガファックF−475) 0.125部
・オキシム系光重合開始剤(下記構造の化合物) 0.087部
・金属キレート色素(例示化合物P−7) 0.183部
・Pigment Blue 15:6分散液 2.418部
(固形分濃度12.55%、顔料濃度11.50%)
・グリセロールプロポキシレート(1%CyH溶液) 0.048部
【0263】
【化32】

【0264】
(4)着色硬化性組成物の露光・現像(画像形成)
上記(3)で得た着色硬化性組成物を、上記(2)で得た下塗り層付ガラス基板の下塗り層の上に乾燥後の膜厚が0.6μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
次いで、露光装置UX3100−SR(ウシオ電機(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長で線幅2μmのマスクを通して、200mJ/cmの露光量で照射した。露光後、現像液CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。その後、200℃で15分間ポストベークを行った。
【0265】
(5)評価
着色硬化性組成物を用いてガラス基板上に塗設された塗布膜の耐熱性、耐溶剤性、耐光性を下記のようにして評価した。評価結果は下記表3に示す。
【0266】
〔耐熱性〕
上記(3)で得た着色硬化性組成物が塗布されたガラス基板を、該基板面で接するように200℃のホットプレートに載置して1時間加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、加熱前後での色差(ΔEab値)を測定して熱堅牢性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。ΔEab値は、値の小さい方が、耐熱性が良好なことを示す。なお、ΔEab値は、CIE1976(L,a,b)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
−判定基準−
◎:ΔEab値<3
○:3≦ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦15
×:ΔEab値>15
【0267】
〔耐溶剤性〕
上記(4)で得たポストベーク後の各種塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、この上に上記(1)で得たレジスト溶液Aを膜厚1μmとなるように塗布しプリベークを行った後、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して23℃・120秒間の条件で現像を行い、再度分光を測定した(分光B)。この分光A、Bの差より色素残存率(%)を算出し、これを耐溶剤性を評価する指標とした。この数値は100%に近いほど耐溶剤性に優れていることを示す。
−判定基準−
○:染料残存率>90%
△:70%≦染料残存率≦90%
×:染料残存率<70%
【0268】
〔耐光性〕
上記(4)で得たポストベーク後の各種塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、キセノンランプを10万luxで20時間照射した(200万lux・h相当)。キセノンランプ照射の前後での塗膜の色差(ΔEab値)を測定し、耐光性の指標とした。なお、ΔEab値の小さいほうが、耐光性が良好であり、判断基準は以下の通りである。
−判定基準−
◎:ΔEab値<3
○:3≦ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦15
×:ΔEab値>15
【0269】
[実施例1〜11、比較例1〜7]
実施例1の(3)着色硬化性組成物の調製において、例示化合物P−7を下記表3に記載の着色剤に変更(但し、等質量)した以外、実施例1と同様にしてパターンを形成し、更に同様の評価を行った。評価結果は表3に示す。
表3中の比較色素1〜比較色素7の構造を下記に示す。
【0270】
【化33】

【0271】
【化34】

【0272】
【化35】

【0273】
比較染料1、8は、4つの要件のうち(2)を満たす。
比較染料2、9は、4つの要件のうち(1)と(2)とを満たす。
比較染料3、10は、4つの要件のうち(1)と、(3)とを満たす。
比較染料4、11は、4つの要件のうち(1)と、(4)とを満たす。
比較染料5は、4つの要件のうち(2)と、(3)とを満たす。
比較染料6は、4つの要件のうち(2)と、(4)とを満たす。
比較染料7は、4つの要件のうち(3)と、(4)とを満たす。
比較染料8は、4つの要件のうち(2)を満たす。
比較染料9は、4つの要件のうち(1)と(2)とを満たす。
比較染料10は、4つの要件のうち(1)と(3)とを満たす。
比較染料11は、4つの要件のうち(1)と(4)とを満たす。
【0274】
例示化合物例P−11と同じ合成条件で、比較染料1〜7をそれぞれb−2と反応させて得られた色素多量体を、本発明の比較色素多量体CP−1〜CP−7とした。得られた耐熱性、耐溶剤性、および耐光性の結果を表3に示す。
【0275】
【表3】

【0276】
表3に示すとおり、本発明で示した4つの要件のうち、3つ以上を満たす金属キレート色素を着色剤に用いた実施例は、2つ以下の要件しか満たさない比較色素を用いた比較例に比べて、耐熱性、耐溶剤性、および耐光性に優れた着色硬化性組成物であることが確認できた。
【0277】
共重合成分の影響を除くため、実施例1の(3)の着色硬化性組成物の調製において、例示化合物P−7を下記表4に記載の色素単量体に変更し(但し、等質量)、実施例1の(4)の露光においてマスク通さずに均一露光した以外は実施例1と同様にして、色素単量体について評価を行った。
【0278】
【表4】

【0279】
表4に示すように、本発明で示した4つの要件のうち、3つ以上を満たす金属キレート色素の単量体を着色剤に用いた実施例においても、耐熱性、耐光性に優れていることがわかる。耐溶剤性については金属キレート色素の多量体に比べると単量体は総じて悪化するが、本発明の要件を満たさない比較色素を用いた比較例と比べると、本発明が優れていることがわかる。
【0280】
なお、実施例1における光重合開始剤を以下の構造の化合物OXE−01、およびOXE−02にそれぞれ変更した着色硬化性組成物は、実施例1と同様の結果が得られ、オキシム系開始剤を用いた着色硬化性組成物は、良好な耐熱性、耐溶剤性、耐光性が得られることがわかった。
なお、OXE−01、およびOXE−02は、いずれもBASF社の市販の開始剤である。
【0281】
【化36】

【0282】
<実施例23>
(固体撮像素子の作製)
−有彩色硬化性組成物の調製−
実施例1で調製した青色硬化性組成物において、金属キレート色素およびPigment Blue 15:6を、下記に記載の赤色および緑色顔料に変更した他は実施例1の青色硬化性組成物の調整と同様にして、それぞれ赤色硬化性組成物、および緑色硬化性組成物を調製した。
【0283】
・赤色硬化性組成物用赤色顔料
C.I.ピグメントレッド254
・緑色硬化性組成物用緑色顔料
C.I.ピグメント グリーン36とC.I.ピグメント イエロー139との70/30〔質量比〕混合物
【0284】
−固体撮像素子用のフルカラーのカラーフィルタの作製−
前記実施例1で用いた青色硬化性組成物をシリコンウエハ上に乾燥後の膜厚が0.8μmとなるようにスピン塗布し、得られた青色硬化性組成物層を有するシリコンウエハを1.0×1.0μmのアイランド状パターンで1/4の面積の青色画素を形成し、次いで前記緑色硬化性組成物を用いて同様にして2/4の面積の緑色画素を形成し、さらに前記赤色硬化性組成物を用いて残りの1/4の面積の赤色画素を形成して、固体撮像素子用のカラーフィルタを作製した。
【0285】
−評価−
得られた固体撮像素子用のフルカラーのカラーフィルタを固体撮像素子に組み込んだところ、該固体撮像素子は、高解像度で、色分離性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物、重合開始剤、及び、金属キレート色素を含み、色素配位子と金属原子とで構成された該金属キレート色素が下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足する着色硬化性組成物。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。
【請求項2】
前記金属キレート色素が、前記(1)〜(4)の4つの要件を全て満足する請求項1に記載の着色硬化性組成物。
【請求項3】
前記金属キレート色素が、下記一般式(1)で表される色素である請求項1又は請求項2に記載の着色硬化性組成物。
【化1】


一般式(1)中、R11〜R16は各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R17は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。X11は、Mに結合可能な基を表し、X12は、Mの電荷を中和する基を表す。X11とX12とは、互いに結合してMと共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。なお、上記一般式(1)で表されるジピロメテン系金属錯体化合物は、互変異性体を含み、また、R11とR16とが環を形成することはない。
【請求項4】
前記金属キレート色素が、下記一般式(2)で表わされる色素である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【化2】


一般式(2)中、R21及びR26は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R22〜R25は各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。R27は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、金属原子、又は金属原子を含む連結基を表す。Z21及びZ22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y21及びY22は各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)を表す。R21とY12とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R26とY22とは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X21はMと結合可能な基および/またはMの電荷を中和する基を表し、aは0、1、又は2を表す。一般式(2)で表される化合物は、互変異性体を含む。
【請求項5】
前記金属キレート色素が、色素構造を2以上有する色素多量体である請求項1〜請求項4に記載の着色硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を用いてなる着色パターンを備えたカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーフィルタを備えた液晶表示装置。
【請求項9】
請求項6に記載のカラーフィルタを備えた有機EL表示装置。
【請求項10】
色素配位子と金属原子とで構成され、下記(1)〜(4)から選ばれた少なくとも3つの要件を満足する金属キレート色素。
(1)色素配位子が酸基を有する場合は酸基、および色素配位子以外の対アニオンに対応するプロトン酸のいずれかの酸解離定数pKa(25℃)が3未満である。
(2)色素配位子が置換基として少なくとも2つ以上の分岐鎖置換基を有する。
(3)色素配位子が炭化水素芳香環もしくは複素芳香環で構成される場合は、炭化水素芳香環もしくは複素芳香環上に存在する炭化水素基のα水素の数が置換基1つあたり1以下であるか、または色素配位子がメタクリロイル基以外のアルキレン基を含む場合には、アリル位水素がない。
(4)色素配位子を構成する原子団中に褪色防止基を有する。

【公開番号】特開2011−225808(P2011−225808A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250026(P2010−250026)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】