説明

着色粉体およびその製造方法

【課題】 着色力に優れ、かつ、優れた耐凝集性を有する着色粉体およびその製造方法の提供。
【解決手段】 着色粉体は、1種の重合体、金属酸化物を含有する着色粒子よりなり、着色粒子はその70個数%以上が条件Pを満たす着色粒子(P)または条件Qを満たす着色粒子(Q)のいずれかであり、着色粉体においては、着色粒子(P)が5〜35個数%含有されると共に着色粒子(Q)が60個数%以上含有される。条件P:その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物との占有面積比率が65面積%以上100面積%以下である。条件Q:前記占有面積比率が30面積%以上65面積%未満である。〔ただし、条件P,条件Qにおいて、SA1 は表面近傍領域S1 における個々の金属酸化物の占有面積の総和、SA2 は内部領域S2 における個々の金属酸化物の占有面積の総和である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物およびこれの分散安定剤を含有する着色粉体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結着樹脂中に金属酸化物の粉体を含有させた着色粉体は、例えば塗料、電子写真用トナー、電子ペーパーなどの粉体ディスプレイ用の表示材、化粧料などとして広く利用されている。
これらの着色粉体には、特に電子写真用トナーや粉体ディスプレイ用の表示材などのように着色粉体を帯電させて用いる場合は、優れた着色力が求められるのはもちろんのこと、過剰帯電や凝集が抑制されて電界による粉体移動性が高いことが求められる。
【0003】
従来から、着色粉体としては、例えば当該着色粉体を構成する着色粒子を、着色剤が結着樹脂中に均一に分散されて含有されたもの(例えば、特許文献1,2参照。)や、着色剤が表面近傍の領域に局在して含有されたもの(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、着色剤が結着樹脂中に均一に分散されて含有された着色粒子においては、着色粒子の表面に着色剤が不均一に露出している場合があるため、個々の着色粒子の帯電性にバラツキが生じて、過剰帯電されたり静電的な凝集が生じたりする結果、粉体移動性に劣ったものとなる、という問題があり、また、十分に優れた着色力を得るためには多量の着色剤を添加する必要があり、高い生産性が得られないという問題もある。
また、着色剤が表面近傍の領域に局在して含有された着色粒子においては、個々の着色粒子の帯電性が高い均一性を有し、過剰帯電や凝集の程度が小さく抑制されて粉体移動性に優れるが、十分な着色力が得られるとはいえない、という問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−105958号公報
【特許文献2】特開平10−260554号公報
【特許文献3】特開平6−126146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、着色力に優れ、かつ、優れた耐凝集性を有する着色粉体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の着色粉体は、少なくとも1種の重合体および金属酸化物を含有する着色粒子よりなる着色粉体であって、
前記着色粉体を構成する着色粒子は、その70個数%以上が、下記条件Pを満たす着色粒子(P)または下記条件Qを満たす着色粒子(Q)のいずれかであり、
前記着色粉体においては、着色粒子(P)が5〜35個数%含有されると共に着色粒子(Q)が60個数%以上含有されていることを特徴とする。
条件P:その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物との占有面積比率[SA1 /(SA1 +SA2 )×100]が65面積%以上100面積%以下である。
条件Q:その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物との占有面積比率[SA1 /(SA1 +SA2 )×100]が30面積%以上65面積%未満である。
〔ただし、上記条件Pおよび上記条件Qにおいて、SA1 は表面近傍領域S1 における個々の金属酸化物の占有面積の総和であり、SA2 は内部領域S2 における個々の金属酸化物の占有面積の総和である。〕
【0008】
本発明の着色粉体においては、着色粒子(P)が、その個数基準の平均長径が着色粒子(Q)の個数基準の平均長径の1.2〜5倍のものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物が、酸化チタンであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の着色粉体においては、前記着色粒子は、金属酸化物用分散剤を含有するものであって、当該金属酸化物用分散剤は、主鎖に側鎖基群が結合されてなる櫛型構造の重合体からなり、
前記側鎖基群が、下記(ア)〜(エ)のいずれかに示される側鎖基を含むものであることが好ましい。
(ア)少なくとも1つの−AZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−BZで表される側鎖基
(イ)少なくとも1つの−AZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
(ウ)少なくとも1つの−BZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
(エ)少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
ただし、以上において、Aは、下記一般式(A)で表されるポリエステル基〔A〕を示し、Bは、下記一般式(B)で表されるポリエステル基〔B〕を示し、Cは、ポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕を含む基であり、Zは、各々−R2 OH、−R3 SO3 H、または−R4 COOH(ただし、R2 〜R4 は各々アルキル基を示す。)である。
【化1】


〔上記一般式(A)および一般式(B)において、kは1〜5の整数、jはkより大きい2〜8の整数であり、m,nは、各々1〜1,000の整数である。〕
【0011】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物用分散剤を構成する重合体におけるポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の含有比率が、ポリエステル基〔A〕/ポリエステル基〔B〕が質量比で20/80〜50/50であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物が、個数平均粒子径20〜80nmのものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物用分散剤は、重合体100質量部に対して1〜15質量部含有されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物は、重合体100質量部に対して5〜30質量部含有されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の着色粉体においては、前記金属酸化物用分散剤を構成する重合体の主鎖は、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアミド構造を有するものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の着色粉体においては、着色粒子の粒径が、個数基準の平均長径で2〜30μmであることが好ましい。
【0017】
本発明の着色粉体の製造方法は、
上記の着色粉体を製造する方法であって、
前記重合体を生成する重合性単量体中に、前記金属酸化物を混合分散させて金属酸化物分散油相液を調製し、この金属酸化物分散油相液を水系媒体中において懸濁させた状態で重合処理を行う工程を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の着色粉体によれば、金属酸化物の表面近傍領域S1 における存在率を示す占有面積比率が特定の高い範囲にある着色粒子(P)が5〜35個数%含有されているために、個々の着色粒子の帯電性が高い均一性を有し、このために過剰帯電や凝集が抑制されて電界による粉体移動性に優れ、また、占有面積比率が前記特定の高い範囲よりも低い範囲にある着色粒子(Q)が60個数%以上含有されているために、少量の着色剤によって十分に優れた着色力が得られる。
さらに、着色粒子(P)および着色粒子(Q)が合計で70個数%以上含有されているために、個々の着色粒子の帯電均一性が極めて高いものとなり、また、少量の着色剤によって確実に優れた着色力が得られて高い生産性が得られる。
【0019】
また、本発明に係る着色粒子(P)および着色粒子(Q)の平均長径が規定された着色粉体においては、比較的小径の粒子は着色剤(金属酸化物)の存在が表面近傍領域S1 のみに限定されると着色力に劣るところ、比較的小径の粒子が表面近傍領域S1 のみならず内部領域S2 にまで着色剤が分散された着色粒子(Q)であり、かつ、比較的大径の粒子が表面近傍領域S1 に多くの着色剤が分散された着色粒子(P)であるために、少量の着色剤によって効果的に優れた着色力が得られる。
【0020】
また、本発明の着色粉体において、金属酸化物用分散剤として特定の形状および性状を有する櫛型構造の重合体(以下、「櫛型構造分散剤」ともいう。)を含有する場合は、表面近傍領域S1 において、金属酸化物が高い分散性で分散され、かつ、最表面に露出しない状態が得られ、これにより、表面に静電荷が溜まることが抑制されるので高い耐凝集性が得られ、その結果、粉体として十分な流動性が得られる。
そして、当該着色粉体を電子写真用トナーや粉体ディスプレイ用の表示材のように帯電させて使用する用途に適用した場合において、特に、長時間にわたって電圧印加を繰り返して駆動させても静電的な凝集がなく、優れた帯電特性を発揮することができる。
【0021】
分散剤として櫛型構造分散剤を用いることにより表面近傍領域S1 において、金属酸化物が高い分散性で分散された状態が得られる理由としては、当該分散剤の主鎖の極性によって、主鎖部分に金属酸化物が吸着されると共に、側鎖基は全体として短い炭素鎖がカルボニル基とカルボン酸エステル基とに挟まれた構造のポリエステル基〔A〕およびこれより長い炭素鎖がカルボニル基とカルボン酸エステル基とに挟まれた構造のポリエステル基〔B〕が含有されたものであることによって親水性と疎水性のバランスが好適な範囲に制御され、これにより結着樹脂に対する適度な分散状態、すなわち金属酸化物について高い分散安定性が得られ、さらに粒子の表面近傍領域S1 に金属酸化物が配向しやすくなると推測される。とりわけ、本発明の製造方法によって製造した着色粉体においては、側鎖基の末端の極性基が水との界面である表面に、金属酸化物を誘引しやすくなると考えられ、上記の効果が高く発揮される。
【0022】
本発明の着色粉体の製造方法によれば、着色粒子(P)および着色粒子(Q)よりなる特定の着色粉体を得ることができる。
これは、金属酸化物分散油相液を水系媒体中において機械的剪断力をかけるなどして分散処理を行うと、油滴として分散され懸濁した状態になるところ、このような油滴に対して重合処理を行うと、各油滴中においては金属酸化物が表面に配向するよう移動拡散するが、個々の油滴によって水系媒体からの熱伝導速度に差が生じることから、金属酸化物の分散状態の異なる着色粒子が生成するものと考えられる。
すなわち、金属酸化物が表面に向かって移動拡散する過程において、油滴によっては金属酸化物の一部が表面近傍領域S1 に到達する前に重合反応が増粘を生じるまでに進行し、従ってこのような油滴からは、金属酸化物が内部領域S2 に残留した状態、すなわちその断面における内部領域S2 と比較した表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物の占有面積比率が30面積%以上65面積%未満である着色粒子(Q)が生成すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0024】
本発明の着色粉体は、少なくとも1種の重合体よりなる結着樹脂と金属酸化物とを含有するものからなり、前記金属酸化物が着色剤の主成分として作用し、白、黒などの無彩色、もしくは赤、青などの有彩色を呈するものである。
これらの着色粉体は、例えば電子写真用トナー、電子ペーパーなどの粉体ディスプレイ用の表示材、塗料、または化粧料などとして利用される。
【0025】
本発明の着色粉体を構成する着色粒子の形状は特に限定されないが、真球形〜略球形の形状を有することが好ましい。ここに、真球形〜略球形の形状を有する着色粒子とは、着色粒子の長径と短径との比が、長径:短径で1:1〜4:1程度となる形状を有するものである。
ただし、着色粒子の長径とは、当該着色粒子の断面像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいい、着色粒子の短径とは、前記長径の垂線の当該着色粒子に係る線分が最大となる粒子の幅をいう。
そして本発明の着色粉体は、その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物12と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物12との占有面積比率、すなわち金属酸化物の表面近傍領域S1 における存在率が65面積%以上100面積%以下である着色粒子(P)(図1(a)参照。)が5〜35個数%含有されていると共に当該占有面積比率が30面積%以上65面積%未満である着色粒子(Q)(図1(b)参照。)が60個数%以上含有されており、さらに、着色粒子(P)および着色粒子(Q)が合計で70個数%以上とされている。このように着色粒子(P)および着色粒子(Q)が合計で70個数%以上含有されているために、電子写真用トナーおよび粉体ディスプレイ用の表示材として特に好適に利用することができる。
なお、その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物12と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物12との占有面積比率SRは、式(SR):SR=[SA1 /(SA1 +SA2 )×100]で表されるものである。
ただし、上記式(SR)において、SA1 は表面近傍領域S1 における個々の金属酸化物12の占有面積の総和であり、SA2 は内部領域S2 における個々の金属酸化物12の占有面積の総和である。
【0026】
本発明の着色粉体における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率(個数%)は、以下の方法によって算出されるものである。
すなわち、まず、着色粉体を光硬化性樹脂に包埋後、ウルトラミクロトーム「EM UC6」(LEICA社製)により加速電圧200kVで設定厚100nmの超薄切片を作製し、当該超薄切片について透過型電子顕微鏡(TEM)「2000FX」(日本電子社製)によって断面写真を撮影し、当該断面写真を、画像解析ソフトウエア「LUZEX AP」(ニレコ社製)によって金属酸化物12の像と合致するように2値化処理した。
次いで、着色粒子の周よりなる閉曲線aと、当該閉曲線a上の各点から長径Rの0.1倍の距離内側に離間した点の集合による閉曲線bとによって囲まれた表面近傍領域S1 、および閉曲線bによって囲まれた内部領域S2 について、表面近傍領域S1 における個々の金属酸化物12の占有面積の総和SA1 (nm2 )および内部領域S2 における個々の金属酸化物12の占有面積の総和SA2 (nm2 )より占有面積比率SR(=[SA1 /(SA1 +SA2 )×100])を算出した。ただし、「着色粒子の長径R」とは、断面写真における当該着色粒子の像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。
そして、この占有面積比率SRが65面積%以上100面積%以下である場合は着色粒子(P)とし、当該占有面積比率SRが30面積%以上65面積%未満である場合は着色粒子(Q)とし、この調査を前記断面写真より無差別に抽出した100個の着色粒子について行い、100個中の着色粒子(P)の個数pおよび着色粒子(Q)の個数qをそれぞれ計測することにより、当該個数pまたは個数qが着色粉体における着色粒子(P)または着色粒子(Q)の含有率として個数%で算出される。
【0027】
本発明の着色粉体における着色粒子(P)の含有率が5個数%未満である場合は、耐凝集性に劣り従って十分な粉体移動性が得られないおそれがあり、一方、着色粉体における着色粒子(P)の含有率が35個数%を超える場合は、十分な着色力が得られないおそれがある。
【0028】
〔金属酸化物〕
本発明の着色粉体を構成する着色粒子は、結着樹脂に対して金属酸化物が高い分散性で含有されており、この着色粒子に含有される金属酸化物としては、例えば酸化チタン、マグネタイト、ヘマタイトなどが挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。
【0029】
このような金属酸化物は、疎水化処理されたものであることが好ましい。
金属酸化物が疎水化処理されたものであることにより、疎水性である結着樹脂との高い親和性が得られ、従って結着樹脂における分散性を向上させることができ、さらに、結着樹脂からの剥離・脱落が生じにくい。
金属酸化物の疎水化処理剤としては、例えば、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ジメチルシリコーンオイルなどのシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0030】
このような着色粉体を構成する着色粒子において含有される金属酸化物は、結着樹脂中に微粒子状に分散されており、その個数平均粒子径は20〜80nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜50nmである。
【0031】
この金属酸化物による微粒子の個数平均粒子径は、以下のように測定されるものである。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)にて金属酸化物について倍率3万倍の写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP」(ニレコ社製)にて、当該写真画像の金属酸化物について2値化処理し、一次粒子100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値が個数平均粒子径とされる。
【0032】
着色粒子における金属酸化物は、重合体100質量部に対して5〜30質量部含有されていることが好ましく、より好ましくは8〜15質量部である。
【0033】
〔櫛型構造分散剤〕
本発明の着色粉体を構成する着色粒子は、金属酸化物用分散剤を含有するものであることが好ましく、当該金属酸化物用分散剤としては、以下に説明するような特定の形状および性状を有する櫛型構造分散剤が特に好ましく挙げられる。
すなわち、この櫛型構造分散剤は、金属酸化物を結着樹脂に対して分散した状態で存在させる機能を有するものであって、主鎖に側鎖基群が結合されてなる櫛型構造の重合体からなり、この側鎖基群として、以下の(ア)〜(エ)のいずれかに示される側鎖基を含むものである。
【0034】
(ア)少なくとも1つの−AZで表される側鎖基(以下、「側鎖基−AZ」ともいう。)、および少なくとも1つの−BZで表される側鎖基(以下、「側鎖基−BZ」ともいう。)
(イ)側鎖基−AZ、および少なくとも1つの−CZで表される側鎖基(以下、「側鎖基−CZ」ともいう。)
(ウ)側鎖基−BZおよび側鎖基−CZ
(エ)側鎖基−CZ
【0035】
ただし、以上において、Aは、上記一般式(A)で表されるポリエステル基〔A〕を示し、Bは、上記一般式(B)で表されるポリエステル基〔B〕を示し、Cは、ポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕を含む基を示す。
【0036】
ポリエステル基〔A〕、ポリエステル基〔B〕は、例えばラクトン類の開環重合によって得られるものである。
そして、上記一般式(A)中のkは1〜5の整数であり、上記一般式(B)中のjはkより大きい2〜8の整数である。
【0037】
また、上記一般式(A)中のm、および一般式(B)中のnは、各々1〜1,000の整数、より好ましくは各々5〜100の整数である。
このm,nが上記の範囲にあることにより、結着樹脂に対する適度な親和性が得られ、従って金属酸化物の結着樹脂への良好な分散性が得られる。
【0038】
以上において、櫛型構造分散剤の側鎖基群にポリエステル基〔A〕および/またはポリエステル基〔B〕が複数含まれる場合には、すべてのポリエステル基〔A〕について、これを示す一般式(A)中のkが同一の整数とされ、また、すべてのポリエステル基〔B〕について、これを示す一般式(B)中のjが同一の整数とされる。
また、ポリエステル基〔A〕を示す一般式(A)中のmは、櫛型構造分散剤の側鎖基群に含有されるすべてのポリエステル基〔A〕間で異なっていてもよく、同様に、ポリエステル基〔B〕を示す一般式(B)中のnは、櫛型構造分散剤の側鎖基群に含有されるすべてのポリエステル基〔B〕間で異なっていてもよい。
【0039】
櫛型構造分散剤において、側鎖基に含有されるポリエステル基〔A〕としては、上記一般式(A)中のkが4であるバレロラクトンユニットの繰り返し重合体が好ましく、ポリエステル基〔B〕としては、上記一般式(B)中のjが5であるカプロラクトンユニットの繰り返し重合体が好ましい。
【0040】
上記(ア)〜(エ)において、側鎖基−AZにおけるポリエステル基〔A〕は、そのカルボニル基側が主鎖に結合されても、カルボン酸エステル基側が主鎖に結合されてもよい。
また、側鎖基−BZにおけるポリエステル基〔B〕は、そのカルボニル基側が主鎖に結合されても、カルボン酸エステル基側が主鎖に結合されてもよい。
【0041】
また、側鎖基−CZ中のCとしては、ポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕がそれぞれ複数が含まれていてもよく、具体的には、−ABABZ、−ABABAZ、−BABABZ、−ABABABZなどとすることができる。
側鎖基−CZにおいては、Cを構成するポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕のそれぞれのカルボニル基側が主鎖に向かった状態で結合されても、それぞれのカルボン酸エステル基側が主鎖に向かった状態で結合されてもよい。ただし、一つの側鎖基−CZを構成するすべてのポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の向きが、カルボニル基側が主鎖に向かった状態であるか、あるいはカルボン酸エステル基側が主鎖に向かった状態であるか、のいずれかに一致している必要がある。
【0042】
側鎖基−CZにおいて、その一つの鎖長は、例えばポリエステル基〔A〕を示す一般式(A)中のmおよびポリエステル基〔B〕を示す一般式(B)中のnの合計が、例えば1,000以内とされることが好ましい。
【0043】
また、上記(ア)〜(エ)において、Zは、親水性基であって、具体的には、各々、−R2 OH、−R3 SO3 H、または−R4 COOHである。
ここに、R2 〜R4 は、各々アルキル基を示す。
櫛型構造分散剤において、複数の側鎖基の各々の末端Zは、互いに同じであっても異なっていてもよく、各金属酸化物間の着色粒子の表面への配向度合いが揃うことから、複数の末端Zが互いに同じものであることが好ましい。
【0044】
櫛型構造分散剤におけるポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の含有比率は、ポリエステル基〔A〕/ポリエステル基〔B〕が質量比で20/80〜50/50、好ましくは30/70〜40/60である。
ポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の含有比率が上記の範囲にあることにより、確実に金属酸化物を結着樹脂に対して高い分散性で分散させることができる。
【0045】
櫛型構造分散剤における側鎖基の割合は、後述する主鎖の種類や分子量、並びにポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の分子量などによっても異なるが、主鎖/(ポリエステル基〔A〕+ポリエステル基〔B〕)が質量比で1/10〜1/100であることが好ましい。
【0046】
櫛型構造分散剤における主鎖は、重縮合可能な官能基を含む重合体であれば特に限定されないが、その中でもポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンなどのポリアミン、またはポリアミド構造を有するもの(以下、「ポリアミド鎖」ともいう。)であることが好ましい。
主鎖を構成するポリアルキレンイミンとしては、例えばポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−1,1−ジメチルエチレンイミン、ポリ−1,2−ブチレンイミン、ポリ−2,3−ブチレンイミンなどを挙げることができる。
また、ポリアミド鎖は、繰り返し単位が下記一般式(1)で表されるものである。
一般式(1):−CO−R5 −CO−NH−R6 −NH−
ただし、上記一般式(1)において、R5 、R6 は、各々有機基である。
【0047】
主鎖の分子量は、ピーク分子量で300〜100,000であり、好ましくは600〜15,000である。
【0048】
櫛型構造分散剤は、以上のような主鎖の炭素原子または窒素原子との間に、各側鎖基が、アミド結合、ウレタン結合、またはエステル結合を形成することにより結合して構成されている。
【0049】
着色粒子における櫛型構造分散剤の含有量は、例えば、重合体100質量部に対して1〜15質量部含有されることが好ましい。
金属酸化物の含有量に対する櫛型構造分散剤の含有量が上記の範囲にあることにより、着色粉体を結着樹脂に十分に高い分散性で金属酸化物を分散させたものとすることができる。
【0050】
〔結着樹脂〕
結着樹脂としては、少なくとも重合体を含有するものであれば特に限定されずに用いることができる。
このような結着樹脂を構成する重合体の具体例として、例えば、スチレン系樹脂やアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、またはオレフィン系樹脂などが挙げられ、特に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂が好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、以上のような重合体よりなる樹脂に加えて、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アミド樹脂またはエポキシ樹脂などをも含有するものとすることができる。
【0051】
〔着色剤〕
本発明の着色粉体を構成する着色粒子中には、さらに着色剤として金属酸化物以外の適宜の有彩色/無彩色の染料または顔料が含有されていてもよい。
本発明の着色粉体を構成する着色粒子において、金属酸化物として酸化チタンを用いる場合は、当該酸化チタンが白色顔料として作用する。また、金属酸化物としてマグネタイトを用いる場合は、当該マグネタイトが黒色顔料として作用する。また、金属酸化物としてヘマタイトを用いる場合は、当該ヘマタイトが赤色顔料として作用する。
本発明の着色粉体を構成する着色粒子に着色剤として金属酸化物以外の染料または顔料を含有させる方法としては、後述する着色粉体の製造方法において、結着樹脂を形成すべき重合性単量体中に、金属酸化物および櫛型構造分散剤と共に溶解または分散させる方法が挙げられる。
【0052】
〔着色粉体の製造方法〕
本発明の着色粉体を製造する方法としては特に限定されるものではなく、着色粒子(P)と着色粒子(Q)とを別々に作製した後、これらを所望の割合で混合することによって製造してもよく、着色粒子(P)と着色粒子(Q)とを一括して作製する方法によって製造してもよい。
着色粒子(P)および/または着色粒子(Q)の作製方法についても、例えば結着樹脂と、金属酸化物と、必要に応じて金属酸化物用分散剤とを混練・粉砕する粉砕法によって作製してもよく、結着樹脂を形成すべき重合性単量体と、金属酸化物と、必要に応じて金属酸化物用分散剤とを混合・分散し、重合処理を行う重合法によって作製してもよい。
また、上記のような方法で製造した着色粉体に対して、さらに金属酸化物を外添剤として混合することによって、表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物の割合を調整することもできる。
これらの中でも、着色粒子(P)および着色粒子(Q)を一括して作製することができる、金属酸化物用分散剤として上述した櫛型構造分散剤を用いて懸濁重合する方法が、最も好ましく挙げられる。すなわち、少なくとも1種の、結着樹脂を形成すべき重合性単量体中に、金属酸化物と、櫛型構造分散剤と、重合開始剤とを添加し、次いでホモミキサーなどによって重合性単量体中にこれらを溶解あるいは分散させ、均一な金属酸化物分散油相液を調製し、次いで、あらかじめ分散安定剤が添加された水系媒体中に前記金属酸化物分散油相液を添加し、例えば機械的剪断力を与えることによって、金属酸化物分散油相液を水系媒体中に油滴として分散させて懸濁状態を得、その後、加熱して重合処理し、重合反応終了後、分散安定剤を除去し、洗浄、乾燥することにより着色粉体を得ることができる。
このように水系媒体において造粒することによって、櫛型構造分散剤の側鎖基の末端が親水性であるために形成される着色粉体を構成する着色粒子の表面に金属酸化物を配向させることができる。
【0053】
そして、このような製造方法によれば、着色粒子(P)および着色粒子(Q)よりなる着色粉体を得ることができる。
これは、金属酸化物分散油相液を水系媒体中に油滴として分散されるところ、このような油滴に対して重合処理を行うと、各油滴中においては金属酸化物が表面に配向するよう移動拡散するが、個々の油滴によって水系媒体からの熱伝導速度に差が生じることから、金属酸化物の分散状態の異なる着色粒子が生成するものと考えられる。
すなわち、金属酸化物が表面に向かって移動拡散する過程において、油滴によっては金属酸化物が表面近傍領域S1 に到達する前に重合反応が増粘を生じるまでに進行し、従ってこのような油滴からは、金属酸化物が内部領域S2 に残存した状態の着色粒子(Q)が生成すると考えられる。
個々の油滴が、それぞれ着色粒子(P)および着色粒子(Q)のいずれを生成するかは、用いる金属酸化物用分散剤の種類や量によっても異なると考えられる。
また、油滴が小粒径であるほど水系媒体からの熱伝導速度が大きくなるために重合中の増粘が早期に生じて内部領域S2 に金属酸化物が残存しやすくなり、一方、油滴が大粒径であるほど表面近傍領域S1 に金属酸化物が局在する傾向が生じると考えられる。
【0054】
重合性単量体中に金属酸化物を分散させる方法、および水系媒体中に金属酸化物分散油相液を分散させる方法としては、特に限定されず、例えば超音波分散機、高速撹拌型分散機などを用いることができる。
重合性単量体中に金属酸化物を分散させる分散粒子径としては、1次粒子径が20〜80nmとされることが好ましい。
また、水系媒体中に金属酸化物分散油相液を分散させた油滴の粒径は最終的に着色粉体を構成する着色粒子の粒径となるため、所望の粒径になるように制御して分散させる。
【0055】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる結着樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0056】
〔重合性単量体〕
結着樹脂を構成する重合体を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、フマル酸などのカルボン酸系単量体などを使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
〔重合開始剤〕
本発明の着色粉体の製造方法において、結着樹脂を得るための重合開始剤としては、適宜のラジカル重合開始剤を挙げることができ、例えば油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0058】
〔分散安定剤〕
本発明の着色粉体の製造方法において、水系媒体中に金属酸化物分散油相液による油滴を分散させるための分散安定剤としては、特に限定されず、例えばリン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどを挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウムなどの界面活性剤として一般的に使用されているものを使用することができる。
【0059】
〔連鎖移動剤〕
本発明の着色粉体の製造方法においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0060】
〔着色粒子の粒径〕
本発明の着色粉体を構成する着色粒子の粒径は、その用途によっても異なるが、例えば電子写真用トナーとして用いる場合は好ましくは個数基準の平均長径で3〜11μmとされる。また例えば着色粉体を電子ペーパー用表示材として用いる場合は好ましくは個数基準の平均長径で2〜30μmとされる。
着色粒子の粒径が過大であると、粒子間の隙間が大きくなって得られる着色力が低いものとなってしまう。一方、着色粉体の粒子が過小であると、耐凝集性に劣り、流動性が低いものとなってしまう。
この粒径は、水系媒体中に分散させる金属酸化物分散油相液による油滴の粒径を調整することによって制御することができる。
【0061】
着色粒子の個数基準の平均長径は、以下のように測定・算出されるものである。
すなわち、まず、着色粉体を光硬化性樹脂に包埋後、ウルトラミクロトーム「EM UC6」(LEICA社製)により加速電圧200kVで設定厚100nmの超薄切片を作製し、当該超薄切片について透過型電子顕微鏡(TEM)「2000FX」(日本電子社製)によって断面写真を撮影し、当該断面写真を、画像解析ソフトウエア「LUZEX AP」(ニレコ社製)によって金属酸化物の像と合致するように2値化処理し、この断面写真画像における着色粒子100個について、それぞれ長径Rを測定し、その個数平均値を算出することにより、個数基準の平均長径が得られる。
なお、着色粉体における着色粒子(P)の平均長径は、選択された着色粒子100個中に含有される着色粒子のうち条件Pを満足する着色粒子(P)の個数を母体として算出される。また、着色粒子(Q)の平均長径は、同様に、選択された着色粒子100個中に含有される着色粒子のうち条件Qを満足する着色粒子(Q)の個数を母体として算出される。
【0062】
以上のような着色粉体によれば、金属酸化物の表面近傍領域S1 における存在率を示す占有面積比率が特定の高い範囲にある着色粒子(P)が5〜35個数%含有されているために、個々の着色粒子の帯電性が高い均一性を有し、このために過剰帯電や凝集が抑制されて電界による粉体移動性に優れ、また、占有面積比率が前記特定の高い範囲よりも低い範囲にある着色粒子(Q)が60個数%以上含有されているために、少量の着色剤によって十分に優れた着色力が得られる。
さらに、着色粒子(P)および着色粒子(Q)が合計で70個数%以上含有されているために、個々の着色粒子の帯電均一性が極めて高いものとなり、また、少量の着色剤によって確実に優れた着色力が得られて高い生産性が得られる。
【0063】
また、着色粒子(P)および着色粒子(Q)の平均長径が規定された着色粉体においては、比較的小径の粒子は着色剤(金属酸化物)の存在が表面近傍領域S1 のみに限定されると着色力に劣るところ、比較的小径の粒子が表面近傍領域S1 のみならず内部領域S2 にまで着色剤が分散された着色粒子(Q)であり、かつ、比較的大径の粒子が表面近傍領域S1 に多くの着色剤が分散された着色粒子(P)であるために、少量の着色剤によって効果的に優れた着色力が得られる。
【0064】
また、着色粉体において、金属酸化物用分散剤として櫛型構造分散剤を含有する場合は、表面近傍領域S1 において、金属酸化物が高い分散性で分散され、かつ、最表面に露出しない状態が得られ、これにより、表面に静電荷が溜まることが抑制されるので高い耐凝集性が得られ、その結果、粉体として十分な流動性が得られる。
そして、当該着色粉体を電子写真用トナーや粉体ディスプレイ用の表示材のように帯電させて使用する用途に適用した場合において、特に、長時間にわたって電圧印加を繰り返して駆動させても静電的な凝集がなく、優れた帯電特性を発揮することができる。
【0065】
分散剤として櫛型構造分散剤を用いることにより表面近傍領域S1 において、金属酸化物が高い分散性で分散された状態が得られる理由としては、当該分散剤の主鎖の極性によって、主鎖部分に金属酸化物が吸着されると共に、側鎖基は全体として短い炭素鎖がカルボニル基とカルボン酸エステル基とに挟まれた構造のポリエステル基〔A〕およびこれより長い炭素鎖がカルボニル基とカルボン酸エステル基とに挟まれた構造のポリエステル基〔B〕が含有されたものであることによって親水性と疎水性のバランスが好適な範囲に制御され、これにより結着樹脂に対する適度な分散状態、すなわち金属酸化物について高い分散安定性が得られ、さらに粒子の表面近傍領域S1 に金属酸化物が配向しやすくなると推測される。とりわけ、本発明の製造方法によって製造した着色粉体においては、側鎖基の末端の極性基が水との界面である表面に、金属酸化物を誘引しやすくなると考えられ、上記の効果が高く発揮される。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>
メタクリル酸メチル100質量部、シリコーンオイルによって疎水化処理された酸化チタン「STT−30D」(チタン工業社製)(以下、これを「酸化チタン〔1〕」という。)20質量部、下記に詳述する櫛型構造分散剤(X−1)5質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2質量部を、高剪断力を有する混合機である「TK式ホモミキサー」(特殊機化工社製)により6,000rpmの回転数で撹拌、混合して、均一に溶解または分散させた金属酸化物分散油相液〔1〕を調製した。
一方、イオン交換水250部(水系媒体)にポリビニルアルコール「GH−23」(日本合成化学社製)2.5部を溶解し、これに上記の金属酸化物分散油相液〔1〕を投入し、60℃で窒素ガス雰囲気下において「TK式ホモミキサー」(特殊機化工業社製)によって10,000rpmで20分間撹拌し、金属酸化物分散油相液〔1〕を水系媒体中で油滴として分散させた。その後、パドル撹拌翼で撹拌しながら、60℃で3時間重合反応させた後、液温を80℃とし、10時間重合反応させて重合性単量体の重合処理を行った。その後、この反応系を濾過して固形分を分離し、新たにイオン交換水500部を加え、50℃に加温し、スラリー化して、10分間水洗浄を行った。この水洗浄を5回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥器によって50℃で一昼夜乾燥させることによって、着色粉体〔1〕を得た。
この着色粉体〔1〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率を上述した方法によって測定したところ、着色粒子(P)が15個数%含有されてなるものであった。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表2に示す。
ここに、着色粒子(P)および着色粒子(Q)の個数基準の平均長径は、上述した方法によって測定した。以下においても同様である。
【0068】
〔櫛型構造分散剤(X−1)〕
櫛型構造分散剤(X−1)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(表1において「PEI」と略記)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/56となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が35,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0069】
<実施例2〜14>
実施例1において、櫛型構造分散剤(X−1)の代わりに、それぞれ下記に詳述する櫛型構造分散剤(X−2)〜(X−14)を用いたことの他は同様にして、それぞれ着色粉体〔2〕〜〔14〕を得た。
これらの着色粉体〔2〕〜〔14〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径をそれぞれ表2に示す。
【0070】
〔櫛型構造分散剤(X−2)〕
櫛型構造分散剤(X−2)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/62となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が38,100である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 5 O)50−、Bは、−(CO(CH2 6 O)50−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0071】
〔櫛型構造分散剤(X−3)〕
櫛型構造分散剤(X−3)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/65となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が39,500である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)50−、Bは、−(CO(CH2 7 O)50−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0072】
〔櫛型構造分散剤(X−4)〕
櫛型構造分散剤(X−4)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で20/80、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/633となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が190,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)300 −、Bは、−(CO(CH2 5 O)700 −、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0073】
〔櫛型構造分散剤(X−5)〕
櫛型構造分散剤(X−5)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で20/80、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/43となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が27,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)10−、Bは、−(CO(CH2 5 O)90−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0074】
〔櫛型構造分散剤(X−6)〕
櫛型構造分散剤(X−6)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で50/50、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/49となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が30,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0075】
〔櫛型構造分散剤(X−7)〕
櫛型構造分散剤(X−7)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−ABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+ABZ)が質量比で1/171となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が104,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0076】
〔櫛型構造分散剤(X−8)〕
櫛型構造分散剤(X−8)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−ABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で50/50、主鎖:側鎖(AZ+ABZ)が質量比で1/97となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が59,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0077】
〔櫛型構造分散剤(X−9)〕
櫛型構造分散剤(X−9)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−ABZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(ABZ+BZ)が質量比で1/116となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が71,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0078】
〔櫛型構造分散剤(X−10)〕
櫛型構造分散剤(X−10)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−ABZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で50/50、主鎖:側鎖(ABZ+BZ)が質量比で1/97となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が59,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0079】
〔櫛型構造分散剤(X−11)〕
櫛型構造分散剤(X−11)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−ABAZの構成を有する側鎖基、−ABABZの構成を有する側鎖基および−BABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(ABAZ+ABABZ+BABZ)が質量比で1/164となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が100,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0080】
〔櫛型構造分散剤(X−12)〕
櫛型構造分散剤(X−12)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−ABAZの構成を有する側鎖基、−ABABZの構成を有する側鎖基および−BABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で50/50、主鎖:側鎖(ABAZ+ABABZ+BABZ)が質量比で1/97となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が59,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 4 OHである。
【0081】
〔櫛型構造分散剤(X−13)〕
櫛型構造分散剤(X−13)は、表1に示されるように、ポリアリルアミン(表1において「PAA」と略記)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/56となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が35,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0082】
〔櫛型構造分散剤(X−14)〕
櫛型構造分散剤(X−14)は、表1に示されるように、ポリカプロラクタム(表1において「PCL」と略記)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/56となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が35,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)35−、Bは、−(CO(CH2 5 O)65−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0083】
<実施例15>
実施例1において、櫛型構造分散剤(X−1)の添加量を5質量部から45質量部に変更したことの他は同様にして、着色粉体〔15〕を得た。
この着色粉体〔15〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表2に示す。
【0084】
<実施例16>
実施例1において、酸化チタン〔1〕の代わりに、オクチルシランにより疎水化処理された酸化チタン「MT−500」(テイカ社製)(以下、これを「酸化チタン〔2〕」とする。)を用いたことの他は同様にして、着色粉体〔16〕を得た。
この着色粉体〔16〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表2に示す。
【0085】
<実施例17>
実施例1において、メタクリル酸メチルをスチレンに変更したことの他は同様にして、着色粉体〔17〕を得た。
この着色粉体〔17〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表2に示す。
【0086】
<実施例18>
実施例1において、櫛型構造分散剤(X−1)を用いなかったことの他は同様にして、着色粉体〔18a〕を得た。この着色粉体〔18a〕は、占有面積比率SRが30面積%以上65面積%未満である着色粒子〔Q〕が70個数%含有される着色粉体であった。
【0087】
(結着樹脂粒子の合成例1)
・1段階目の重合(ソープフリー乳化重合):
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、スチレン(St)100質量部と水300質量部とを投入して撹拌混合し、さらに窒素気流下で撹拌を行いながら80℃に昇温した。次いでこの混合液中に過硫酸カリウム0.5質量部を加え、80℃に保持しながら6時間反応させ、重合体粒子の分散液〔A〕を得た。この重合体粒子の分散液〔A〕中の重合体粒子を電子顕微鏡写真により観察したところ、この重合体粒子は真球状であって、平均粒子径は0.41μm、相対標準偏差(CV値)は1.8%であった。また、重合体粒子の分散液〔A〕中の固形分量は24.2質量%であった。
・2段階目の重合:
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、スチレン(St)120.2質量部と、過酸化ベンゾイル1.0質量部とを投入して溶解させ、さらにこの溶液に、水300質量部、「ニューコール707SN」(日本乳化剤(株)製)3.3質量部および亜硝酸ナトリウム0.1質量部を加え、強撹拌下に10分間混合した。
次いで、この混合液に、1段階目の重合で得た重合体粒子の分散液〔A〕中の重合体粒子34.6質量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌したあと、75℃で2時間反応させて、重合体粒子の分散液〔B〕を得た。この重合体粒子の分散液〔B〕中の重合体粒子を電子顕微鏡写真により観察したところ、この重合体粒子は真球状であって、平均粒子径は1.83μm、相対標準偏差(CV値)は4.8%であった。また、重合体粒子の分散液〔B〕中の固形分量は33.2質量%であった。
・3段階目の重合:
次に、同様の装置において、スチレン(St)124.2質量部と過酸化ベンゾイル1.0質量部とを混合して溶解させ、さらにこの溶液に、水200質量部、「ニューコール707SN」(日本乳化剤(株)製)3.3質量部および亜硝酸ナトリウム0.1質量部を加え、強撹拌下に10分間混合した。
次いで、この混合液に、2段階目の重合で得た重合体粒子の分散液〔B〕中の重合体粒子15.6質量部を添加し、50℃で30分間穏やかに撹拌したあと、75℃で2時間反応させることにより、結着樹脂粒子〔C〕を含有する結着樹脂粒子分散液〔C〕を得た。この結着樹脂粒子分散液〔C〕中の固形分量は32.1質量%であった。
この結着樹脂粒子分散液〔C〕中の結着樹脂粒子〔C〕を電子顕微鏡写真により観察したところ、この結着樹脂粒子〔C〕は真球状であって、平均粒子径4.31μmで、相対標準偏差(CV値)は5.9%であった。
【0088】
(結着樹脂粒子の合成例2)
・ソープフリー乳化重合:
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、単量体であるスチレン(St)99質量部と4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaSS)1質量部と水400質量部とを投入して撹拌混合し、さらに窒素気流下で撹拌を行いながら80℃に昇温した。次いでこの混合液中に過硫酸カリウム0.5質量部を加え、80℃に保持しながら6時間反応させることにより、結着樹脂粒子〔D〕を含有する結着樹脂粒子分散液〔D〕を得た。この結着樹脂粒子分散液〔D〕中の固形分量は20.1質量%であった。
この結着樹脂粒子分散液〔D〕中の結着樹脂粒子〔D〕を電子顕微鏡写真により観察したところ、この結着樹脂粒子〔D〕は、ほぼ一定の粒子径を有する真球状であって、平均粒子径は0.12μm、相対標準偏差(CV値)は8.2%であった。
【0089】
(着色剤分散液の調製例)
n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2質量部をイオン交換水160質量部に撹拌溶解した溶解液に、撹拌下で酸化チタン「MT−500B」(テイカ社製)(以下、これを「酸化チタン〔3〕」という。)20質量部を徐々に加え、次いで、撹拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液〔E〕を得た。
【0090】
(着色粉体の製造例)
結着樹脂粒子分散液〔C〕155質量部と結着樹脂粒子分散液〔D〕49.5質量部とイオン交換水2000質量部と着色剤分散液〔E〕11.3質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を付けた5リットルの四つ口フラスコに入れて撹拌し、30℃に調整した後、この溶液に塩化ナトリウム49質量部を加え、pHを8.0に調整し、3時間撹拌し、その後、液温度90℃±2℃にて、3時間加熱撹拌し、融着させることによって、着色粉体〔18b〕を得た。この着色粉体〔18b〕は、占有面積比率SRがほぼ100面積%である着色粒子〔P〕のみが含有される着色粉体であった。
【0091】
上記の着色粉体〔18a〕と着色粉体〔18b〕とを、質量比率で10:90の割合で混合することにより、着色粉体〔18〕を得た。
この着色粉体〔18〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表2に示す。
【0092】
<比較例1〜11>
実施例1において、櫛型構造分散剤(X−1)の代わりに、それぞれ下記に詳述する櫛型構造分散剤(Y−1)〜櫛型構造分散剤(Y−11)を用いたことの他は同様にして、それぞれ比較用の着色粉体〔19〕〜〔29〕を得た。
これらの比較用の着色粉体〔19〕〜〔29〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径をそれぞれ表3に示す。
【0093】
〔櫛型構造分散剤(Y−1)〕
櫛型構造分散剤(Y−1)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/62となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が38,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 7 O)20−、Bは、−(CO(CH2 8 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0094】
〔櫛型構造分散剤(Y−2)〕
櫛型構造分散剤(Y−2)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基が、主鎖:側鎖(AZ)が質量比で1/52となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が32,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)50−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0095】
〔櫛型構造分散剤(Y−3)〕
櫛型構造分散剤(Y−3)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/1311となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が394,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 5 O)1200−、Bは、−(CO(CH2 6 O)1000−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0096】
〔櫛型構造分散剤(Y−4)〕
櫛型構造分散剤(Y−4)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/1022となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が614,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 5 O)500 −、Bは、−(CO(CH2 6 O)1500−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0097】
〔櫛型構造分散剤(Y−5)〕
櫛型構造分散剤(Y−5)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で30/70、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/38となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が24,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 3 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0098】
〔櫛型構造分散剤(Y−6)〕
櫛型構造分散剤(Y−6)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で20/80、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/61となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が37,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 9 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0099】
〔櫛型構造分散剤(Y−7)〕
櫛型構造分散剤(Y−7)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で10/90、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/149となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が90,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 5 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0100】
〔櫛型構造分散剤(Y−8)〕
櫛型構造分散剤(Y−8)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−BZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で70/30、主鎖:側鎖(AZ+BZ)が質量比で1/54となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が33,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 5 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0101】
〔櫛型構造分散剤(Y−9)〕
櫛型構造分散剤(Y−9)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−AZの構成を有する側鎖基および−ABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で70/30、主鎖:側鎖(AZ+ABZ)が質量比で1/181となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が110,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 5 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0102】
〔櫛型構造分散剤(Y−10)〕
櫛型構造分散剤(Y−10)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−BZの構成を有する側鎖基および−ABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で80/20、主鎖:側鎖(ABZ+BZ)が質量比で1/74となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が45,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 5 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0103】
〔櫛型構造分散剤(Y−11)〕
櫛型構造分散剤(Y−11)は、表1に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI)よりなる主鎖に、−ABAZの構成を有する側鎖基、−ABABZの構成を有する側鎖基および−BABZの構成を有する側鎖基が、A:Bが質量比で80/20、主鎖:側鎖(ABAZ+ABABZ+BABZ)が質量比で1/74となるよう、各々独立に結合されてなる、ピーク分子量が45,000である櫛型構造の重合体からなるものである。ただし、Aは、−(CO(CH2 4 O)20−、Bは、−(CO(CH2 5 O)80−、Zは、−(CH2 12OHである。
【0104】
【表1】

【0105】
<比較例12>
実施例1において、櫛型構造分散剤(X−1)を用いなかったことの他は同様にして、比較用の着色粉体〔30〕を得た。
この比較用の着色粉体〔30〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0106】
<比較例13>
テレフタル酸166質量部、イソフタル酸415質量部、トリメリット酸96質量部、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1300質量部およびエチレングリコール75質量部を、撹拌器、コンデンサー、温度計をセットした四つ口フラスコに入れ、窒素ガス気流下、全酸成分に対して0.07質量%のジブチル錫オキサイドを添加し、脱水縮合により生成した水を除去しながら、230℃にて15時間反応させてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の軟化点温度は155℃であり、DSC法によって測定したガラス転移点温度は62℃、酸価は10であった。
前記ポリエステル樹脂50部と、イソブチルトリメトキシシランで疎水化処理されたテイカ社製のルチル型白色二酸化チタン(以下、これを「酸化チタン〔4〕」という。)50部とメチルエチルケトン185部をデスパーでプレ分散した後、「アイガーモーターミルM−1000」(アイガー社製)で分散を行い、酸化チタン分散体のマスター溶液を得た。その後メチルエチルケトンを用いて当該酸化チタン分散体のマスター溶液の固形分含有量を35質量%に調整した。固形分中の白色顔料(酸化チタン〔4〕)の割合は50質量%であり、当該白色顔料はマスター溶液中において微細に分散されていた。さらに、得られた酸化チタン分散体のマスター溶液114.3部に上記のポリエステル樹脂60部をデスパーで撹拌して溶解させ、さらにメチルエチルケトンにより固形分含有量を55質量%に調整した。これを酸化チタン〔4〕分散系という。固形分中の白色顔料の割合は20質量%であった。
酸化チタン〔4〕分散系545.5部、メチルエチルケトン66.7部、イソプロピルアルコール43部、および16.4%の水酸化ナトリウム水溶液40部とを添加して、十分に混合し、撹拌を続けながら水680部を加えた。その後、減圧下に、溶剤、および水の一部を留去して白色樹脂粒子の水スラリーを得た。得られたスラリーは、遠心分離機によるスキミング方式により固液分離を行い、ウェットケーキを凍結乾燥することにより比較用の着色粉体〔31〕を得た。
この比較用の着色粉体〔31〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を上述した方法によって測定した。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0107】
<比較例14>
酸化チタン〔1〕40質量部、メタクリル酸メチル50質量部、分散剤としてスルホコハク酸ジオクチルナトリウム10質量部を混合し、ボールミルを用いて2時間分散処理を行い、酸化チタンを微粒子状に分散させたの酸化チタン分散液を得た。
この酸化チタン分散液30質量部、メタクリル酸メチル70質量部、エチレングリコールジメタクリレート20質量部および重合開始剤として2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.2質量部を混合して単量体組成物を調製した。
水50質量部にポリビニルアルコール(ケン化度87%)10質量部を添加した水系媒体に、上記の単量体組成物を投入して混合し、これをホモミキサー内で2,000rpmで撹拌し、モノマー滴が約7μmになるように調整した。次に、この分散系を撹拌機および温度計を備えた反応装置に移し、55℃に昇温してこの温度で5時間重合反応を行い、その後室温まで冷却し、吸引濾過によって得られた結着樹脂粉体を分離した。適量の温水およびメタノールで洗浄した後、室温で乾燥させ、比較用の着色粉体〔32〕を得た。
この比較用の着色粉体〔32〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を上述した方法によって測定した。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0108】
<比較例15>
スチレン(和光純薬社製)85質量部、アクリル酸n−ブチル(和光純薬社製)15質量部、ジビニルベンゼン(和光純薬社製)0.4質量部、アゾニトリル化合物「V−65」(和光純薬社製)5質量部および酸化チタン〔1〕40質量部を、均一に混合し、モノマー分散体〔1〕を調製した。
次いで、得られたモノマー分散体〔1〕100質量部を、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム水溶液(100ppm)1,000質量部およびリン酸三カルシウム(TCP)20質量部と共にホモジナイザーに収容し、10,000rpmで30分間撹拌した。
さらに、得られた分散液を撹拌羽根を用いて低速撹拌しながら、70℃に昇温して6時間にわたって重合を行わせた。重合の完了後、得られた粒子表面に付着しているTCPを除去するために希塩酸で洗浄し、デカンテーションにより希塩酸を除去した。次いで、得られたスラリーを1,000mLの水に分散させ、その後濾過した。この分散および濾過からなる洗浄操作を5回繰り返すことにより、比較用の着色粉体〔33〕を得た。
この比較用の着色粉体〔33〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を上述した方法によって測定した。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0109】
<比較例16>
酸化チタン〔1〕20質量部、ポリエステル樹脂100質量部、分散剤「T−77」(保土ヶ谷化学社製)1質量部を「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)を用いて混合し、次いで110℃に設定した2軸混練押出機を用いて溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、「ハンマーミル」(ホソカワミクロン社製)を用いて粗粉砕し、さらに機械式粉砕機「ターボミルT−400型」(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、その後、風力分級機で分級することによって比較用の着色粉体〔34〕を得た。
この比較用の着色粉体〔34〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を上述した方法によって測定した。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0110】
<比較例17>
イオン交換水250質量部にポリビニルアルコール「GH−23」(日本合成化学社製)2.5質量部を溶解させて分散剤溶液を調製した。この分散剤溶液に、スチレン100質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2質量部およびドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.5質量部よりなる単量体溶液を投入し、60℃で窒素ガス雰囲気下において「TK式ホモミキサー」(特殊機化工業社製)によって10,000rpmで20分間撹拌し、単量体溶液を水系媒体中で油滴として分散させた。
その後、パドル撹拌翼で撹拌しながら60℃で3時間重合反応させた後、液温を80℃とし、10時間重合反応させて重合処理を行った。その後、この反応系を濾過して固形分を分離し、新たにイオン交換水500質量部を加え、50℃に加温し、リスラリー化して、10分間水洗浄を行った。この水洗浄を5回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥器によって50℃で一昼夜乾燥させることによって、着色剤を含まない前駆体粒子を得た。
そして、この前駆体粒子100質量部に対して酸化チタン〔1〕20質量部を添加し、ヘンシェルミキサーによって40分間混合処理することにより、着色粉体〔35〕を得た。
この比較用の着色粉体〔35〕における着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を上述した方法によって測定した。着色粒子(P)および着色粒子(Q)の含有率および個数基準の平均長径を表3に示す。
【0111】
以上の着色粉体〔1〕〜〔18〕および比較用の着色粉体〔19〕〜〔35〕を用いて以下に詳細を示す着色力評価および耐凝集性評価を行った。結果を表2,3に示す。
【0112】
〔着色力評価〕
1cm×3cm角の透明の粘着テープ「透明美色」(住友スリーエム社製)の粘着層側に、それぞれ着色粉体〔1〕〜〔18〕および比較用の着色粉体〔19〕〜〔35〕1gを付着させ、エアスプレーにて余分な粉を除いてテープ上に着色粉体が1層分付着した状態を作成し、この粘着テープサンプルの透過濃度を、「X−rite341」(X−rite社製)で、中心および4隅の5点について測定し、その平均値を算出した。この透過濃度の平均値が2.50以上であれば十分な着色力を有するとして判断される。
【0113】
〔耐凝集性評価〕
(1)着色粉体の外添剤処理
上記で得られた着色粉体〔1〕〜〔18〕および比較用の着色粉体〔19〕〜〔35〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合し、外添剤処理済み着色粉体〔1’〕〜〔18’〕および比較用の外添剤処理済み着色粉体〔19’〕〜〔34’〕を得た。
(2)静電画像表示装置代用試験機の作成
静電画像表示装置代用試験機を、以下のように作製した。すなわち、約500Åの厚みの酸化インジウム電極を設けた一対のガラス基板を、間隔100μmになるようにスペーサーで調整し、それぞれ上記の外添剤処理済み着色粉体〔1’〕〜〔18’〕および比較用の外添剤処理済み着色粉体〔19’〕〜〔34’〕をガラス基板の中央部に設けた2.5cm×2cmの粒子封入セル部に入れ、ガラス基板周辺をエポキシ系接着剤にて接着して着色粉体を封入し、静電画像表示装置代用試験機〔1〕〜〔18〕および比較用の静電画像表示装置代用試験機〔19〕〜〔35〕を作製した。なお、着色粉体のガラス基板間への充填率は25容量%となるように調整した。
(3)耐凝集性の測定
上記のようにして作成した静電画像表示装置代用試験機〔1〕〜〔18〕および比較用の静電画像表示装置代用試験機〔19〕〜〔35〕の一方のガラス基板に、±500VのDCバイアスの印加を500回繰り返し行った後、−500Vの電圧を印加したときの、バイアス印加していない他方のガラス基板からバイアス印加した前記一方ガラス基板へと移動した着色粉体の質量を測定し、その移動割合を算出した。この移動割合が95%以上であれば十分な電界移動性を有し、従って十分な耐凝集性を有すると判断される。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
以上のように、実施例1〜18に係る着色粉体〔1〕〜〔18〕によれば、優れた着色力および耐凝集性が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の着色粉体を構成する着色粒子を示す説明用断面図であり、(a)に示される粒子が着色粒子(P)であり、(b)に示される粒子が着色粒子(Q)である。
【符号の説明】
【0118】
12 金属酸化物
1 表面近傍領域
2 内部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の重合体および金属酸化物を含有する着色粒子よりなる着色粉体であって、
前記着色粉体を構成する着色粒子は、その70個数%以上が、下記条件Pを満たす着色粒子(P)または下記条件Qを満たす着色粒子(Q)のいずれかであり、
前記着色粉体においては、着色粒子(P)が5〜35個数%含有されると共に着色粒子(Q)が60個数%以上含有されていることを特徴とする着色粉体。
条件P:その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物との占有面積比率[SA1 /(SA1 +SA2 )×100]が65面積%以上100面積%以下である。
条件Q:その断面における表面近傍領域S1 に存在する金属酸化物と、当該表面近傍領域S1 に囲まれた内部領域S2 に存在する金属酸化物との占有面積比率[SA1 /(SA1 +SA2 )×100]が30面積%以上65面積%未満である。
〔ただし、上記条件Pおよび上記条件Qにおいて、SA1 は表面近傍領域S1 における個々の金属酸化物の占有面積の総和であり、SA2 は内部領域S2 における個々の金属酸化物の占有面積の総和である。〕
【請求項2】
着色粒子(P)が、その個数基準の平均長径が着色粒子(Q)の個数基準の平均長径の1.2〜5倍のものであることを特徴とする請求項1に記載の着色粉体。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の着色粉体。
【請求項4】
前記着色粒子は、金属酸化物用分散剤を含有するものであって、当該金属酸化物用分散剤は、主鎖に側鎖基群が結合されてなる櫛型構造の重合体からなり、
前記側鎖基群が、下記(ア)〜(エ)のいずれかに示される側鎖基を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の着色粉体。
(ア)少なくとも1つの−AZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−BZで表される側鎖基
(イ)少なくとも1つの−AZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
(ウ)少なくとも1つの−BZで表される側鎖基、および少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
(エ)少なくとも1つの−CZで表される側鎖基
ただし、以上において、Aは、下記一般式(A)で表されるポリエステル基〔A〕を示し、Bは、下記一般式(B)で表されるポリエステル基〔B〕を示し、Cは、ポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕を含む基であり、Zは、各々−R2 OH、−R3 SO3 H、または−R4 COOH(ただし、R2 〜R4 は各々アルキル基を示す。)である。
【化1】


〔上記一般式(A)および一般式(B)において、kは1〜5の整数、jはkより大きい2〜8の整数であり、m,nは、各々1〜1,000の整数である。〕
【請求項5】
前記金属酸化物用分散剤を構成する重合体におけるポリエステル基〔A〕およびポリエステル基〔B〕の含有比率が、ポリエステル基〔A〕/ポリエステル基〔B〕が質量比で20/80〜50/50であることを特徴とする請求項4に記載の着色粉体。
【請求項6】
前記金属酸化物が、個数平均粒子径20〜80nmのものであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の着色粉体。
【請求項7】
前記金属酸化物用分散剤は、重合体100質量部に対して1〜15質量部含有されていることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の着色粉体。
【請求項8】
前記金属酸化物は、重合体100質量部に対して5〜30質量部含有されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の着色粉体。
【請求項9】
前記金属酸化物用分散剤を構成する重合体の主鎖は、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリアミド構造を有するものであることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれかに記載の着色粉体。
【請求項10】
着色粒子の粒径が、個数基準の平均長径で2〜30μmであることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の着色粉体。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の着色粉体を製造する方法であって、
前記重合体を生成する重合性単量体中に、前記金属酸化物を混合分散させて金属酸化物分散油相液を調製し、この金属酸化物分散油相液を水系媒体中において懸濁させた状態で重合処理を行う工程を経ることを特徴とする着色粉体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138151(P2009−138151A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318266(P2007−318266)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】