説明

着色経木シートの製造方法

【課題】経木シートへの染色を可能にすること
【解決手段】(a)木材をシート状に薄くスライスして経木シートを作成し、
(b)その得られた経木シートに(i)尿素、(ii)重曹(iii)還元防止剤、(iv)均染剤、及び(v)染料を含み、任意に(vi)機能性キレート剤を含む染料溶液で染色することを含む着色経木シートの製造方法及び(i)尿素、(ii)重曹、(iii)還元防止剤、(iv)均染剤、及び(v)染料を含み、任意に(vi)機能性キレート剤を含む経木シート用着色剤。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、着色経木シートの製造方法及び経木シートを着色するための着色剤に関する。
【発明が解決すべき課題】
【0002】
従来木材をシート状に薄くスライスして得た経木シートは納豆,団子等を包む材料として使用されて来た。しかし経木シート自体は縦方向に裂け易くかつ横方向の折曲げによって割れるという性質を有する。納豆,団子等の包装材として使用する限りにおいて、このような欠点はそれほど問題とならない。
【0003】
しかし現在は多様化の時代である。消費者はすべてのものに新しい素材を要求している。本発明者は多様化した消費者の要望に答えるべく、経木シートの新用途開発に幅広い研究を行なった。しかしここで問題となるのは経木シートの縦方向に裂け易く、横方向の折曲げにより割れるという性質である。特開平3−69708号公報に示す如く、本発明者は経木シートにウレタン樹脂を含侵させることにより、経木シートの縦方向に裂けやすいという欠点は、解消された。
【0004】
このようなウレタン樹脂含侵経木シートは、例えば玩具や人形折り紙、模型等、アルバム、ノート、手帳等の表紙その他文具用品、電燈用傘、包装紙、或いは壁紙、アコーディオンカーテン、机等の装飾等建築材料、折箱、くず箱、紙箱、菓子、煙草、酒等の容器、包装箱その他等、極めて応用例の広汎なシート状素材として使用できる。
【0005】
しかし、ここで問題になるのは、経木シートの天然の木目模様である。経木シートの天然の木目模様に着色できれば、ウレタン樹脂含侵経木シートの用途が広がるものである。
しかしながら、従来では、経木シートへの着色は、大変困難であった。
【0006】
例えば、従来の染色方法である直接染料やオイルステレを使用すると、これらは、木の表面に張り付いているだけなので、直ぐに色落ちする。
【課題を解決すべき手段】
【0007】
本発明者は、幅広い研究の結果、下記の染料溶液を使用することにより、経木シートに染色できることを発見した。
本発明は、(a)木材をシート状に薄くスライスして経木シートを作成し、
(b)その得られた経木シートに
(i)尿素、(ii)重曹(iii)還元防止剤、(iv)均染剤、及び(v)染料を含み、任意に(vi)機能性キレート剤を含む
染料溶液で染色することを含む着色経木シートの製造方法に関する。
【0008】
本発明は、又(i)尿素、(ii)重曹、(iii)還元防止剤、(iv)均染剤、及び(v)染料を含み、任意に(vi)機能性キレート剤を含む経木シート用着色剤にも関する。
【0009】
尿素は、染料が湿度を保つために、系を湿った状態に保持するために使用される。尿素は、染色溶液に対し、0.5〜10%使用されることが好ましい。
重曹は、染料と経木シート中のセルロース繊維とを化学結合させるためである。両者を結合させることにより、染料が色落ちしなくなる。重曹は、染色溶液に対し、0.5〜10%使用されることが好ましい。
【0010】
還元防止剤は、木からアクがでる時の防止剤である。還元防止剤は、染色溶液に対し、0.1〜2%使用されることが好ましい。還元防止剤の例は、ニトロベンゼンスルフォン酸ソーダ及びメタニトロベンゼンスルフォン酸ソーダである。
【0011】
均染剤の例は、アリルアミン系重合体、メタクリルアミン系重合体、アリルメチルアミン系重合体である。均染剤は、染色溶液に対し、0.2〜2%使用されることが好ましい。
【0012】
機能性キレート剤は、水が悪い時に入れる。機能性キレート剤の例は、アクリル酸化合物である。機能性キレート剤は、染色溶液に対し、0.2〜2%使用されることが好ましい。
【0013】
染料を溶解するために、公知の染料の溶解剤(例えば、レジスターL、スルフォン酸ソーダ)を添加しても良い。
蒸気がま内に一定時間保持する蒸しは、染色の後、温度をかけて木材繊維を膨脹させて染料を入りやすくする。蒸しは、通常10〜20分間行う。
染色溶液の例
【0014】
(1)緑色の配合例

【表1】

【0015】
(II)オレンジ色の配合例
【表2】

【0016】
上記配合例1−14の溶液各々にさらに温水2000ccを加えて染色溶液を調製した。
実施例 1
木材をシート状に薄くスライスして得た経木シート(100枚の重合厚が25mm程度のもの)を、上記の染色溶液各々に30分間浸漬した。その後その経木シートを乾燥した。
【0017】
蒸しは、15分間行った。次に乾燥を行った。
得られた着色経木シートをポリウレタンディスパージョンエラストロンDP−200(第一工業製薬(株)製)の80%水溶液に5〜10分間浸漬し、引上げ後100℃で2〜3分間乾燥し経木シートを得た。この経木シートは木理縦方向に裂けにくく、横方向へ折曲げてもささくれができずかつ折目がつき難い特性を示した。
【0018】
ウレタン樹脂含侵中もすべてのサンプルにおいて、着色染料が落ちることはなかった。
発明の効果
本発明の着色経木シートは、壁掛け、壁紙、テーブルクロス、アルバム、ノート、手帳等の表紙その他文具用品、電燈用傘、カーテン地、折箱、くず箱、紙箱、菓子、煙草、酒等の容器の表面、包装箱その他等、極めて多方面に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)木材をシート状に薄くスライスして経木シートを作成し、
(b)その得られた経木シートに
(i)尿素、
(ii)重曹
(iii)還元防止剤、
(iv)均染剤、及び
(v)染料
を含み、任意に(vi)機能性キレート剤を含む
染料溶液で染色する
ことを含む着色経木シートの製造方法。
【請求項2】
(i)尿素、
(ii)重曹、
(iii)還元防止剤、
(iv)均染剤、及び
(v)染料
を含み、任意に(vi)機能性キレート剤
を含む経木シート用着色剤。

【公開番号】特開2006−26995(P2006−26995A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206939(P2004−206939)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(504271766)有限会社高橋屋染工場 (1)
【Fターム(参考)】