説明

着色酸素捕捉ポリマー

本発明は、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属塩触媒および触媒酸化を完全には失活させない着色剤の溶融ブレンドに関する。好ましい着色剤は、ポリマー溶融ブレンドから製造された物品で約0.25未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、最も好ましくは0.05未満の触媒失活ファクター(CDF)をもたらす。本発明はまた、活性酸素捕捉性を有する、フィルム、熱成形トレー、またはブロー成形容器などの、記載のCDFを有する着色単層物品を含む。着色剤は、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒を溶融ブレンドした後に、遷移金属触媒イオンの結合エネルギーを1eVより多く増大させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色酸素捕捉ポリマーおよびかかるポリマーから製造された物品に関する。特にそれは、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および着色剤を含有するポリマーブレンドに関する。着色剤は、遷移金属触媒を完全には失活させない着色剤の群から選択される。好ましい着色剤は、溶融ポリマーブレンドから製造された物品で約0.25未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満、最も好ましくは0.05未満の触媒失活ファクター(CDF)をもたらす。本発明はまた、活性酸素捕捉性を有する、フィルム、熱成形トレー、またはブロー成形容器のような、記載のCDFを有するかかるポリマーブレンドから製造された着色単層物品を含む。
【背景技術】
【0002】
フィルム、熱成形トレー、またはブロー成形容器の製造に使用される典型的なポリマーは、その物理的特性のためにポリエステルを主としてベースにする。好適なポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなホモポリマー、またはどちらかのもしくは両方のコポリマーであることができる。ブロー成形容器のためには、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートコポリマー(PET/IP)が特に有用である。
【0003】
酸素捕捉ポリマーは周知であり、特に食品包装事業で有用である。酸素が包装食品の臭いおよび味に影響し得るし、それによって食品の貯蔵寿命を短くすることは知られている。一方、酸素捕捉包装材料は、包装バリアを横断する過程にある酸素と反応する。こうして、酸素捕捉包装材料は、酸素に過度に暴露された食品または飲料の臭いおよび/または不快な味を減らすまたは排除する。
【0004】
典型的な酸素捕捉化合物は、ポリブタジエンベースのポリマー、もしくはポリエチレン/シクロヘキセンコポリマーのようなアリル位を含有する、またはm−キシリルアミン−ベースのポリアミドのようなベンジル位を含有する被酸化性有機ポリマー分子、またはこれらの混合物である。被酸化性有機ポリマーそれだけの使用は、非常に遅い酸化プロセスをもたらすが、かかるポリマーは、例えば、PETの所望の物理的特性を欠き、かつ、PETと比べると非常に高くつく。被酸化性ポリマーへの酸化触媒の組み入れがこの問題を解決する。
【0005】
前に述べられた被酸化性有機ポリマーに関しては、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(MXD6として商業的に公知の)が広く知られている。さらに、先行技術は、被酸化性有機ポリマーがそれに酸素を活発に捕捉させるために遷移金属触媒を必要とすることを開示している。先行技術で記載された最も一般的な遷移金属触媒はコバルト塩である。
【0006】
発明者カーヒル(Cahill)らの名において、アモコ・コーポレーション(Amoco Corporation)に譲渡された(特許文献1)では、非常的に重要な被酸化性有機ポリマーがポリブタジエンであり、そして被酸化性有機ポリマーのための触媒が遷移金属塩または他の化合物である酸素捕捉組成物を開示している。この出願は、食品および飲料工業用の包装フィルムおよび容器のためのポリマーとのブレンドのようなかかる組成物の有用性を開示している。
【0007】
チン(Ching)らの名において、シェブロン・ケミカル・カンパニー(Chevron Chemical Company)に譲渡された(特許文献2)では、少なくとも1つのシクロヘキセン基または官能基を有するポリマーまたはオリゴマーを含む酸素捕捉組成物を開示している。この出願はまた、酸素捕捉組成物を活性化するための触媒としての遷移元素の使用を開示している。遷移金属触媒は、塩および他の組成物の形で用いられる。この参考文献はまた、コバルト、遷移金属触媒が好ましいことに言及している。
【0008】
ポリアミド多層容器、およびポリエチレンテレフタレート(PET)とのブレンドで酸素捕捉を促進するための遷移金属触媒の使用は、例えば、次の特許で開示されてきた。
【0009】
コクラン(Cochran)らに付与された米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)では、好ましい遷移金属触媒としてコバルト塩および好ましい被酸化性有機ポリマーとしてポリ(m−キシリレンアジパミド)(MXD6)の使用を開示している。
【0010】
ホン(Hong)に付与された米国特許公報(特許文献6)および米国特許公報(特許文献7)、ならびにキム(Kim)に付与された米国特許公報(特許文献8)ではまた、MXD6とPETとのブレンドおよびコバルト塩触媒を開示している。
【0011】
最近までこれらの被酸化性有機ポリマーは、多層フィルム、熱成形トレーまたはブロー成形容器で内層として使用されてきた。グリーン、ブルーまたはアンバーボトルのような着色物品のために、着色剤は非捕捉性の外層および内層に混合される。かかる多層物品では、着色剤と酸素捕捉層に含有される遷移金属触媒との間に何の反応もない。多層プロセスのコストを下げるための着色単層フィルム、シートおよび容器に対するニーズがある。
【0012】
ポリマーの酸化がヒドロペルオキシドの形成ありのフリーラジカル反応を伴うことは一般に認められている。遷移金属イオンはヒドロペルオキシドのラジカル化学種への分解を触媒し、それは酸化速度、従って酸素捕捉速度を大きく加速する。
【0013】
ある種の着色剤が、溶融ブレンディング後およびその後(物品中でのような)に、触媒を失活させ、それらを触媒としてより有効でないようにすることが驚くべきことに分かった。先行の多層フィルム、熱成形トレー、またはブロー成形容器とは違って、着色剤は溶融相で遷移金属触媒と密に混合されるので、従って、ある種の着色剤だけを単層酸素捕捉物品のために使用することができる。
【0014】
【特許文献1】PCT特許出願国際公開第98/12244号パンフレット
【特許文献2】PCT特許出願国際公開第99/48963号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,021,515号明細書
【特許文献4】米国特許第5,639,815号明細書
【特許文献5】米国特許第5,955,527号明細書
【特許文献6】米国特許第5,281,360号明細書
【特許文献7】米国特許第5,866,649号明細書
【特許文献8】米国特許第6,288,161号明細書
【非特許文献1】セケリック(Sekelik)ら著、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パートB(Journal of Polymer Science Part B):ポリマー・フィジックス(Polymer Physics)、37巻(1999)、847−857ページ
【非特許文献2】クレッシ(Qureshi)ら著、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パートB(Journal of Polymer Science Part B):ポリマー・フィジックス(Polymer Physics)、38巻(2000)、1679−1686ページ
【非特許文献3】ポリアコバ(Polyakova)ら著、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パートB(Journal of Polymer Science Part B):ポリマー・フィジックス(Polymer Physics)、39巻(2001)、1889−1899ページ
【非特許文献4】CRC化学および物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、81版
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、単層活性酸素捕捉溶融ブレンドポリマーシステムで触媒を完全には失活させないある種の着色剤の使用に関する。最も広い意味では、本発明は、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および溶融ブレンディング後に触媒を完全には失活させない着色剤のブレンドを含む。場合により相溶化剤がブレンドに含まれ得る。
【0016】
本発明の最も広い範囲はまた、活性酸素捕捉性を有する、フィルム、熱成形トレー、またはブロー成形容器のような、着色単層物品を含む。
【0017】
本発明の最も広い範囲はまた、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および約0.25未満の色失活ファクターを有する着色剤を含む溶融ブレンドポリマー樹脂から製造された物品を含む。
【0018】
本発明の最も広い範囲はまた、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および遷移金属触媒イオンの結合エネルギーを1eVより多く増大させない着色剤を含む溶融ブレンドポリマー樹脂を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の溶融ブレンド組成物またはポリマー樹脂は、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、触媒を失活させない着色剤、および場合により相溶化剤を含む。
【0020】
包装用に使用されるベースポリマーには、例えば、低密度ポリエチレン、非常に低密度のポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および線状低密度ポリエチレンのようなポリエチレン;例えば、(PET)、(PEN)およびPET/IPのようなそれらのコポリマーのようなポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリ塩化ビニリデン(PVDC);ならびにエチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、およびアイオノマーのようなエチレンコポリマーが含まれるが、それらに限定されない。異なるベースポリマーのブレンドもまた使用することができる。
【0021】
好ましいベースポリマーはポリエステル、特にPETおよびそのコポリマーである。一般に、ポリエステルは2つの方法、すなわち(1)エステル法および(2)酸法のうちの1つによって製造することができる。エステル法は、ジカルボン酸エステル(テレフタル酸ジメチルのような)がエステル交換反応でエチレングリコールまたは他のジオールと反応させられる場合である。反応は可逆的であるので、原料をモノマーへ完全に転化させるためにアルコール(テレフタル酸ジメチルが用いられるときにはメタノール)を除去することが一般に必要である。ある種の触媒がエステル交換反応での使用について周知である。昔は、触媒活性は、エステル交換反応の終わりにリン化合物、例えば、リン酸を導入することによって封鎖された。主としてエステル交換触媒は、黄色度がポリマー中に生じるのを防ぐために封鎖された。
【0022】
次にモノマーは重縮合を受け、この反応に用いられる触媒は一般にアンチモン、ゲルマニウム、もしくはチタン化合物、またはこれらの混合物である。
【0023】
ポリエステルの第2の製造方法では、酸(テレフタル酸のような)が、モノマーおよび水を生成する直接エステル化反応によってジオール(エチレングリコールのような)と反応させられる。この反応もまたエステル法のように可逆的であり、従って反応を完結するまで進めるために水は除去されなければならない。直接エステル化工程は触媒を必要としない。次にモノマーは、エステル法でとまさに同じように重縮合を受けてポリエステルを形成し、用いられる触媒および条件は一般に、エステル法についてのものと同じものである。
【0024】
エステルまたは酸法での温度、圧力、および関連装置は当業者に周知である。ほとんどの包装用途向けには、この溶融相ポリエステルは冷却され、固相重合によってより高い分子量へとさらに重合させられる。
【0025】
要約すると、エステル法には2つの工程、すなわち、(1)エステル交換、および(2)重縮合がある。酸法にもまた2つの工程、すなわち、(1)直接エステル化、および(2)重縮合がある。固相重合がしばしば分子量を上げるために用いられる。
【0026】
好適なポリエステルは、少なくとも65モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも75モル%、さらにより好ましくは少なくとも95モルのテレフタル酸もしくはC1〜C4ジアルキルテレフタレートを含む二酸またはジエステル成分と、少なくとも65モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも75モル%、さらにより好ましくは少なくとも95モル%のエチレングリコールを含むジオール成分との反応から製造される。二酸成分がテレフタル酸であり、そしてジオール成分がエチレングリコールであり、それによってポリエチレンテレフタレート(PET)を形成することがまた好ましい。二酸成分すべてについてのモルパーセントは合計で100モル%になり、ジオール成分すべてについてのモル百分率は合計で100モル%になる。
【0027】
ポリエステル成分がエチレングリコール以外の1つまたは複数のジオール成分で変性される場合、記載のポリエステルの好適なジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2MPDO)、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、および鎖中に1つまたは複数の酸素原子を含有するジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらの混合物などから選択されてもよい。一般に、これらのジオールは2〜18個、好ましくは2〜8個の炭素原子を含有する。脂環式ジオールは、それらのシスもしくはトランス立体配置で、または両方の形の混合物として用いることができる。好ましい変性ジオール成分は1,4−シクロヘキサンジメタノールもしくはジエチレングリコール、またはこれらの混合物である。
【0028】
ポリエステル成分がテレフタル酸以外の1つまたは複数の酸成分で変性される場合、線状ポリエステルの好適な酸成分(脂肪族、脂環式、または芳香族ジカルボン酸)は、例えば、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビ安息香酸、またはこれらの混合物などから選択される。ポリマー製造で、ジカルボン酸のジメチル、ジエチル、またはジプロピルエステルのようなその機能性酸誘導体を使用することがしばしは好ましい。これらの酸の酸無水物または酸ハロゲン化物がまた差し支えなければ用いられてもよい。これらの酸変性剤は、テレフタル酸と比較して結晶化速度を一般に遅くする。PETとイソフタル酸とのコポリマーが最も好ましい。一般に、イソフタル酸はコポリマーの約1〜約10モル%、好ましくは約1.5〜6モル%存在する。
【0029】
テレフタル酸かテレフタル酸ジメチルかのどちらかからの少なくとも85モル%テレフタレートを上記コモノマーの任意のものと反応させることによって製造された変性ポリエステルがまた本発明によって特に考えられる。
【0030】
テレフタル酸(もしくはテレフタル酸ジメチル)とエチレングリコールとから製造されたポリエステル、または上述のような変性ポリエステルに加えて、本発明はまた、2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはビ安息香酸のような100%の芳香族二酸、またはそれらのジエステル、およびこれらの芳香族二酸/ジエステルからの少なくとも85モル%のジカルボキシレートを上記コモノマーの任意のものと反応させることによって製造された変性ポリエステルの使用を含む。
【0031】
好適な被酸化性有機ポリマーは、ポリブタジエンベースのポリマーもしくはポリエチレン/シクロヘキセンコポリマーのようなアリル位を含有する、またはm−キシリルアミン−ベースのポリアミドのようなベンジル位を含有するポリマー分子、またはこれらの混合物である。
【0032】
好ましくは、被酸化性有機ポリマーは、アミド結合が少なくとも1つの芳香環および非芳香族化学種を含有する部分芳香族ポリアミドの群から選択される。好ましい部分芳香族ポリアミドには、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−テレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド−コ−テレフタルアミド)、またはこれらの2つ以上の混合物が含まれる。別名MXD6として商業的に知られるポリ(m−キシリレンアジパミド)が最も好ましい。
【0033】
被酸化性有機ポリアミドの好ましい範囲は、容器に必要とされる必要なガスバリア性に依存して組成物の1〜10重量%である。
【0034】
ポリマー成分および被酸化性有機ポリマーと組み合わせて、本発明の組成物は触媒として遷移金属化合物を含み、こうして溶融ブレンディング後に酸素捕捉ブレンドを生み出す。触媒は、ブレンドを「活性」酸素捕捉ポリマーブレンドにする。遷移金属触媒は、周期表の第1、第2、または第3遷移シリーズから選択された金属を含む塩であることができる。金属は好ましくは、Rh、Ru、またはSc〜Zn(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZn)のシリーズの元素の1つ、より好ましくはMn、Fe、Co、Ni、およびCuの少なくとも1つ、最も好ましくはCoである。かかる塩に好適なアニオンには、塩化物、アセテート、オクトエート、オレエート、ステアレート、パルミテート、2−エチルヘキサノエート、ネオデカノエート、およびナフテネートが含まれるが、それらに限定されない。遷移金属触媒の好ましい量は、ポリマーブレンドを基準にして、約25〜約300重量ppmの範囲にある。
【0035】
酸素捕捉ポリマーがベースポリマーと非相溶性であるケースでは、被酸化性有機ポリマーの領域サイズを減らし、こうして物品のヘイズを減らすために、イオン性相溶化剤を使用することができる。イオン性相溶化剤は好ましくは、スルホン酸金属塩基を含有するコポリエステルである。スルホン酸塩の金属イオンはNa+、Li+、K+、Zn++、Mn++、Ca++などであってもよい。スルホン酸塩基は、ベンゼン、ナフタレン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル、またはメチレンジフェニル核のような芳香族酸核に結合している。
【0036】
好ましくは、芳香族酸核はスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、およびそれらのエステルである。最も好ましくは、スルホモノマーは5−スルホイソフタル酸ナトリウムまたは5−スルホイソフタル酸亜鉛であり、最も好ましくは、ジメチルエステル(SIM)およびグリコールエステル(SIPEG)のようなそれらのジアルキルエステルである。物品のヘイズを減らすための5−スルホイソフタル酸ナトリウムまたは5−スルホイソフタル酸亜鉛の好ましい範囲は、ブレンドまたは組成物の0.1〜2.0モル%である。
【0037】
必要とされないが、添加剤がベースポリマー/被酸化性有機ポリマーブレンドに使用されてもよい。通常の公知の添加剤には、フィラー、分岐剤、リヒート剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、殺生剤、ブローイング剤、カップリング剤、難燃剤、熱安定剤、耐衝撃改良剤、UVおよび可視光安定剤、結晶化助剤、滑剤、可塑剤、加工助剤、アセトアルデヒドおよび他の捕捉剤、ならびにスリップ剤、またはそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。着色剤のケースでのように、これらの添加剤は、遷移金属触媒を失活させないように選ばれなければならない。
【0038】
ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒(および場合によりイオン性相溶化剤)の溶融ブレンドは、(i)容器の形状へ延伸ブロー成形することができるプリフォームを製造する、(ii)包装フィルムへ延伸することができるフィルムを製造する、(iii)食品トレーへ熱成形することができるシートを製造する、または(iv)射出成形容器を製造する射出成形機のスロートで成分を加えることによって都合よく調製される。押出機の混合セクションは、均一なブレンドを生み出すためのデザインのものであるべきである。
【0039】
これらのプロセス工程は、炭酸ソフトドリンク、水またはビールボトル、包装フィルムおよび熱成形トレーを形成するためにうまく機能する。本発明は、ポリマー容器、フィルムまたはトレーの通常の公知製造方法の任意のもので用いることができる。
【0040】
かなりの研究の後に、ある種の着色剤が溶融ブレンディング後におよびその後に遷移金属触媒と結合していることが分かった。各遷移金属触媒は、より安定な化合物を形成するかもしれない化合物と反応することができるイオンを有する。理論で縛られないが、ある種の染料への遷移金属触媒イオンのこの結合は、遷移金属触媒が被酸化性ポリマーの酸化のための触媒として働くのを妨げる。
【0041】
遷移金属は、元素の電子配置が満ちた外殻軌道と不完全に満ちた第2最外軌道とを有することによって特徴付けられるという点においてユニークである。これは、遷移金属が恐るべき数の酸化状態を形成するのを可能にし、一原子価状態から別の状態へ移動することの容易さは、それらが被酸化性ポリマーの酸化を触媒する理由であると考えられる。遷移金属イオンが配位子と結合して配位化合物または錯体を与え得ることは周知である。ある種の着色剤は、遷移金属イオンとかかる配位化合物を形成するであろう配位子を有すると考えられる。
【0042】
着色剤とのかかる結合の証拠はX線光電子分光法(XPS)を用いて示された。遷移金属イオンの結合エネルギーは遷移金属の酸化触媒挙動を失活させない着色剤の存在下では変化しなかったが、遷移金属の酸化触媒挙動を失活させる着色剤の存在下では、イオンの結合エネルギーは1〜2電子ボルトだけ増大した。これは、遷移金属イオンが、被酸化性ポリマーの酸化を失活させる着色剤の存在下では、着色剤に結合していることを示唆する。
【実施例】
【0043】
(試験手順)
1.酸素および透過度
ゼロパーセント相対湿度での、1気圧での、および23℃のでフィルムサンプルの酸素流量を、モコン・オックス−トラン(Mocon Ox−Tran)モデル2/21(モコン、ミネアポリス、ミネソタ州(MOCON Minneapolis,MN))で測定した。98%窒素と2%水素との混合物をキャリアガスとして使用し、100%酸素を試験ガスとして使用した。試験前に、試験片を、PETマトリックス中に溶解した微量の大気酸素を除去するために最低24時間装置内部で窒素中で順化させた。順化は、酸素流量を30分サイクルについて1パーセント未満だけ変化させた場合に定常ベースラインが得られるまで続けた。その後、酸素を試験セルに導入した。酸素の量の減少を0〜50時間測定した。データの処理は、酸素暴露と共に時間の関数(cc(STP).cm)/(m2.気圧.日)として、見かけ透過係数(APC)を生み出し、これらの単位は、フィルム厚さの測定によって浸透を標準化している。生成APCデータは、標準透過係数における定常状態値ではない。APCは、この係数が時間と共にゆっくり変化するけれども、ある固定時点での酸素透過を説明する生成データである。これらの変化は余りにも小さいので、任意の固定時点でそれらの値を測定するために必要な時間の間ずっと検出することはできない。酸素透過度の計算は、適切な境界条件でフィックス(Fick)の拡散の第2法則から、ポリマーの透過係数についての文献方法に従って行った。文献資料は(非特許文献1)である。第2の文献資料は(非特許文献2)である。第3の文献資料は(非特許文献3)である。
【0044】
すべてのフィルム透過性値は(cc(STP).cm)/(m2.気圧.日)の単位で報告する。触媒失活ファクター(CDF)は
(ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒および0.25重量%着色剤の酸素透過度)/(ベースポリマーおよび被酸化性有機ポリマーの酸素透過度)
と定義される。
【0045】
1のCDFは、完全な失活に相当し、0のCDFは酸化触媒の失活なしに相当する。
【0046】
2.XPS分析
遷移金属塩の200ppmおよび着色剤の約1重量%の溶液を、5グラムのトリフルオロ酢酸中で調製した。溶液を、均一溶液を達成するために振盪した。
【0047】
上で得られた均一溶液をサイズが1×1cm2のガラススライド上にスピンコートした。コーティングに使用した溶液の容量は約100μlであった。コーティングの目的のために用いたスピンコーターは、スピードライン・テクノロジーズ(Speedline Technologies)製モデル6708Dであった。ガラススライドを回転するディスク上に置き、ガラススライドが1200rpmの一定速度で回転中である後に溶液を落下させた。それを1200rpmの同じ速度でもう30秒間さらに回転させ、引き続き2秒間で1500rpmに速度を上げ、当該速度で10秒間回転させた。その後回転しているディスクを6秒間で停止させた。スピンコートしたサンプルを、溶媒の除去のために真空下50〜60℃で6〜8時間置いた。遷移金属塩および着色剤を含有するガラススライドをXPSによって分析した。
【0048】
用いたXPS機器はパーキン・エルマー(Perkin Elmer)ESCAであり、条件は、Al Kα(1486.6eV)の照射電極で通過エネルギー−93eV、チャンバー圧力−10-8トルであった。遷移金属の結合エネルギーの範囲での50スキャンを取って平均した。
【0049】
(実施例1)
市販のPETボトル樹脂T2201(インビスタ、スパータンバーグ、サウスカロライナ州、米国(INVISTA Spartanburg,South Carolina,USA))をベース樹脂として使用し、0.11モル%スルホイソフタル酸を与えるために5−スルホイソフタル酸ナトリウムコポリエステルとブレンドした。被酸化性有機ポリマーは、全ブレンドの重量を基準にして、5重量%の濃度での三菱ガス化学株式会社、東京、日本国製のタイプ6007ポリ(m−キシリレンアジパミド)(MXD6)であった。遷移金属は、全ブレンドの重量を基準にして、60ppmコバルトのレベルでのステアリン酸コバルトであった。ベース樹脂、MXD6、およびステアリン酸コバルトのこのブレンドを、ブレンドの重量を基準にして、0.25重量%の濃度での様々な着色剤と溶融ブレンドし、プリフォームへ射出成形した。これらのプリフォームを標準の0.6リットルボトルへ延伸ブロー成形した。ボトル側壁の酸素透過度を50時間後に測定し、そしてそれぞれ、両方とも着色剤なしの、5重量%MXD6入りPET対照、および遷移金属塩(60ppmのCo)入りPET−MXD6についての0.133および0.0004(cc(STP).cm)/(m2.気圧.日)と比較した。様々な供給業者および様々なタイプからの着色剤を使用した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
この表が例示するように、CDFと着色剤の(化学的)タイプとの相関関係は全くない。例えば、アントラキノンブルー染料は0.017のCDFを有するが、アントラキノングリーン着色剤は1.00のCDFを有した。約0.25未満のCDFの着色剤が本発明の範囲内である。
【0052】
(実施例2)
ソルベント・レッド(Solvent Red)195とのおよびソルベント・グリーン(Solvent Green)3との酢酸コバルト四水和物(対照)の溶液を調製し、上に議論したようなXPSによって分析した。コバルト金属の2p3/2結合エネルギーは778.1eVである((非特許文献4))。対照Co(II)酸化状態の結合エネルギーは780.8eVであると測定され、ソルベント・レッド195(0.014のCDF)の存在下では780.8eVに留まったが、ソルベント・グリーン(0.899のCDF)の存在下では結合エネルギーは783.2eVに増大した。
【0053】
この分析は、被酸化性ポリマーの酸化で遷移金属触媒を失活させる着色剤が遷移金属イオンとの配位結合を呈することを示す。
【0054】
本発明の特定の実施形態が詳細に記載されてきたが、本発明は範囲が対応して限定されず、本明細書に添付される特許請求の範囲の精神および条件内に入るすべての変化および修正を含むことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装物品用の溶融ブレンド樹脂であって、
前記溶融ブレンド樹脂から製造された物品が約0.25未満のCDFを有するように、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および着色剤を含むことを特徴とする溶融ブレンド樹脂。
【請求項2】
前記着色剤が、遷移金属触媒イオンの結合エネルギーを1eVより多く増大させないことを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項3】
前記ベースポリマーが、ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項4】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリエステルであることを特徴とする請求項3に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項5】
前記被酸化性有機ポリマーが、部分芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項6】
前記部分芳香族ポリアミドが、MXD6であることを特徴とする請求項5に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項7】
前記被酸化性有機ポリマーが、ポリブタジエンであることを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項8】
前記遷移金属触媒が、コバルト塩であることを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項9】
前記コバルト塩が、ステアリン酸コバルトであることを特徴とする請求項8に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項10】
イオン性相溶化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項11】
前記相溶化剤が、スルホン酸金属塩を含有するコポリエステルであることを特徴とする請求項10に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項12】
前記スルホン酸金属塩が、5−スルホイソフタル酸ナトリウムであることを特徴とする請求項11に記載の溶融ブレンド樹脂。
【請求項13】
0.01(cc(STP).cm)/(m2.気圧.日)未満の酸素透過度を有する着色ポリエステル単層容器であって、前記単層容器が約0.25未満のCDFを有するように、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および着色剤の溶融ブレンドを含むことを特徴とする容器。
【請求項14】
前記着色剤が、遷移金属触媒イオンの結合エネルギーを1eVより多く増大させないことを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記遷移金属触媒が、コバルト塩であることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項16】
前記コバルト塩が、ステアリン酸コバルトであることを特徴とする請求項15に記載の容器。
【請求項17】
前記ベースポリマーが、ポリエステルまたはコポリエステルであり、かつ、前記被酸化性有機ポリマーが、部分芳香族ポリアミド、ポリブタジエン、またはポリエチレン/シクロヘキセンコポリマーであることを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項18】
0.01(cc(STP).cm)/(m2.気圧.日)未満の酸素透過度を有する単層フィルム、熱成形可能なトレー、またはブロー成形容器であって、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および着色剤の溶融ブレンドから形成されることを特徴とする単層フィルム、熱成形可能なトレー、またはブロー成形容器。
【請求項19】
包装物品用のポリマーブレンドであって、前記ブレンドが遷移金属触媒イオンの結合エネルギーを1eVより多く増大させないように、ベースポリマー、被酸化性有機ポリマー、遷移金属触媒、および着色剤の溶融ブレンドを含むことを特徴とするポリマーブレンド。
【請求項20】
前記ブレンドが、約0.25未満のCDFを有することを特徴とする請求項19に記載のポリマーブレンド。

【公表番号】特表2008−510848(P2008−510848A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527984(P2007−527984)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/029297
【国際公開番号】WO2006/023583
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】