説明

着色金属顔料、その製造方法、それを含有するコーティング組成物および化粧料

【課題】本発明は、耐光性、耐候性および隠蔽力を良好に維持しつつ、多様な色彩と変化に富む干渉色とが安定的に発現可能な着色金属顔料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の着色金属顔料は、金属顔料と、該金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に形成された、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面に形成された金属粒子と、を少なくとも含むものであって、該金属粒子は、該金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上がり外観に優れた着色金属顔料およびその製造方法、ならびにこれを含有するコーティング組成物および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠性に優れるメタリック感を有する着色金属顔料としては、金属顔料に着色顔料を付着させたものが従来公知である。該着色金属顔料において、金属顔料に付着させる着色顔料としては、ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、スレン系、ペリノン系、ペリレン系、フタロン系、フタロシアニン系等の有機顔料あるいは酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料が使用されている。
【0003】
しかしながら、上記のような着色金属顔料においては金属顔料表面での光の反射により表面に付着させた着色顔料が光劣化し易いという問題がある。この問題を解決するためには、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、酸化鉄などの比較的耐光性の優れた顔料を選ばざるを得ず、得られる着色金属顔料の意匠性に限界があるのが現状である。
【0004】
一方、マイカ等の真珠光沢顔料においては、表面に酸化珪素、酸化チタニウム、金属等の皮膜を形成することにより干渉色を付与した顔料が公知である。しかし、これらの真珠光沢顔料は隠蔽力が小さいため、塗料やインキに配合しても下地を充分に隠蔽できないという欠点がある。この欠点を回避するため、隠蔽力の高い金属顔料として、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウムなどの干渉膜を被覆することにより着色された金属顔料が開示されているが、いずれも解決手段としては不十分である。
【0005】
特開平01−110568号公報(特許文献1)および特開平02−000669号公報(特許文献2)には、金属顔料の表面に酸化チタニウムをゾル−ゲル法により析出させる方法が開示されている。しかし、この方法では彩度の高い金属顔料は得られず、また、酸化チタニウム層が活性の高いアナターゼ相となり、塗料などに配合された場合に樹脂の劣化を促進し耐候性を低下させる場合があるという問題がある。
【0006】
特開昭56−120771号公報(特許文献3)、特開平01−311176号公報(特許文献4)、および特開平06−032994号公報(特許文献5)には、酸化鉄、酸化チタン、金属酸化物と炭素、金属、金属酸化物等との複合層を気相法により金属顔料表面に形成する方法が開示されている。しかし、気相法を用いる場合には、金属顔料を流動化させ、金属酸化物の前駆体を供給して金属顔料表面に加熱析出させる必要がある。この析出方法は特殊な装置を必要とする上、金属顔料の粉塵爆発の危険性が大きく、さらに金属酸化物の前駆体は毒性の強いものが多いため取り扱いが困難であるという問題がある。
【0007】
特開平08−209024号公報(特許文献6)には、1.8以下の屈折率を有する無色の被覆層と2.0以上の屈折率を有する選択的吸収層との2層構造を基本とする多層被覆金属顔料が開示されている。この特許文献6には、CVD法(化学気相成長法)または溶液中で金属化合物を加水分解する方法により金属顔料表面に金属酸化物層を形成する方法が開示されている。しかし、気相法であるCVD法には上記のような欠点がある。また、溶液中で金属化合物を加水分解して金属酸化物層を形成する方法では、加水分解反応が多量の水を含む塩基性もしくは酸性雰囲気で行なわれるため、処理工程中に金属顔料と水との反応が起こり、金属顔料の凝集や反応の暴走が生じる問題がある。
【0008】
特開平07−258579号公報(特許文献7)には、酸化珪素、酸化珪素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物からなる第1の層、金属および/または非選択的吸収性の金属酸化物からなる第2の層、所望により無色または選択的吸収性の金属酸化物からなる第3の層からなる多層膜をアルミニウムフレーク等の支持層にコーティングしたラスター顔料が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献7に開示されている方法では、第1の層の厚みが不均一になる傾向があり良好な彩度が得られない。また、第1の層を形成する際に金属酸化物が支持体表面に析出せず遊離してしまう傾向があり、遊離した金属酸化物粒子のために反射光が散乱され、良好な金属光沢が得られないという問題がある。さらに、第1の層の上に金属酸化物層を形成する方法としてCVD法および無電解めっき法が開示されているが、CVD法では上記のような問題がある上に金属酸化物層を均一に析出させることが難しく、金属が付着していない粒子ができてしまう場合が多いという問題がある。また無電解めっき法を用いても、金属酸化物層を細かく均一に析出させることが困難で、金属酸化物層が点在するような形状で不均一に析出する結果、好ましい彩度が得られないという問題がある。
【0010】
特開2003−049093号公報(特許文献8)には、金属基材と、各々が基材を完全に包囲する複数の層とを含む多層光沢顔料であって、屈折率が1.8以下である材料の無色誘電体層および屈折率が1.8を超える材料の無色誘電体層からなる少なくとも1つの層パック、および、選択的または非選択的吸収性層を含むことを特徴とする多層光沢顔料が開示されている。特開2003−131029号公報(特許文献9)には、金属基材およびその両側および片側に適用された複数の層を含む光学的多層系であって、屈折率が1.8以下である材料の無色誘電体層および屈折率が1.8を超える材料の無色誘電体層からなる少なくとも1つの層パック、および選択的または非選択的吸収性層を含んでなり、層パックと選択的または非選択的吸収性層とがいずれも金属酸化物層を完全には包囲していないことを特徴とする光学多層系が開示されている。特開2003−089758号公報(特許文献10)には、金属酸化物を被覆したことにより干渉色を呈する金属酸化物被覆薄片状基質の表面全体に、その干渉色を強めるための半透明性金属薄膜を被覆してなる高彩度薄片状顔料が開示されている。特開2003−041150号公報(特許文献11)には、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物で処理された薄片状金属基質表面上に、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、錫からなる群から選択される金属の金属水和酸化物を含有する被覆層を有することを特徴とする高耐腐食性薄片状金属顔料が開示されている。しかし、これらの特許文献8〜11に開示されている方法では、干渉色の変化度合や高い彩度の発現には限界があり、満足できるレベルの良好な意匠性を備えた着色金属顔料を得ることは困難であるという問題がある。
【0011】
国際公開第2007/094253号パンフレット(特許文献12)に開示されている着色金属顔料は、金属顔料と、金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、非晶質酸化珪素膜層の表面に形成された金属層と、金属層の表面に形成された金属粒子とを含む構成を有し、これにより良好な意匠性を得ることは可能であるが、その表面に形成される金属粒子の付着状態が不安定で、色調が変化しやすいという問題があった。また、金属粒子と非晶質酸化珪素膜層との間に不可避成分として存在する金属層が化粧品原料として登録されていないために、化粧品用途では使用が限定されるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平01−110568号公報
【特許文献2】特開平02−000669号公報
【特許文献3】特開昭56−120771号公報
【特許文献4】特開平01−311176号公報
【特許文献5】特開平06−032994号公報
【特許文献6】特開平08−209024号公報
【特許文献7】特開平07−258579号公報
【特許文献8】特開2003−049093号公報
【特許文献9】特開2003−131029号公報
【特許文献10】特開2003−089758号公報
【特許文献11】特開2003−041150号公報
【特許文献12】国際公開第2007/094253号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、耐光性、耐候性および隠蔽力を良好に維持しつつ、多様な色彩と変化に富む干渉色とが安定的に発現可能な着色金属顔料およびその製造方法、ならびに該着色金属顔料を含有するコーティング組成物および化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の着色金属顔料は、金属顔料と、該金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に形成された、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面に形成された金属粒子と、を少なくとも含むものであって、該金属粒子は、該金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記金属酸化物層は、Mg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。また金属粒子は、Cu、Ni、およびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。
【0016】
さらに、上記非晶質酸化珪素膜層は、その厚みが10〜500nmの範囲内であり、かつ上記金属粒子は、その平均粒径が50nm以下であることが好ましい。なお、金属顔料は、非晶質酸化珪素膜層を形成する前に、モリブデン化合物、燐化合物、過酸化水素水などにより下地層が形成されていても良い。このように金属顔料の表面に下地層が形成されている場合であっても、本発明においては、非晶質酸化珪素膜層が金属顔料の表面に形成されると表現するものとする。また、金属粒子の上に耐候被膜層がさらに形成されていても良い。該耐候被膜層としては、アルミニウム、珪素、およびセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、水酸化物、水和物の単独膜または混合物膜、または樹脂被覆層が例示される。
【0017】
本発明はまた、上記の着色金属顔料の製造方法であって、金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料上に析出させることにより、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成する工程と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層を析出させることにより金属酸化物層を形成する工程と、無電解めっき法により該金属酸化物層の表面に金属粒子を形成する工程と、を少なくとも含む、着色金属顔料の製造方法に関する。
【0018】
この製造方法において、上記金属酸化物層は、Mg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上記の着色金属顔料または上記の製造方法により得られる着色金属顔料を少なくとも含有するコーティング組成物および化粧料に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層、金属酸化物層および金属粒子を少なくとも形成することによって、比較的簡便かつ安価な手段で、耐光性、耐候性および隠蔽力を良好に維持しつつ、多様な色彩と変化に富む干渉色とが安定的に発現可能な着色金属顔料を得ることが可能となる。また、該着色金属顔料を用いることにより優れた仕上がり外観を有するコーティング膜を与えることが可能なコーティング組成物および該着色金属顔料を含有し優れた隠蔽力を有しかつ鮮明な色合いが得られる化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
<着色金属顔料>
本発明の着色金属顔料は、金属顔料と、該金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に形成された、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面に形成された金属粒子と、を少なくとも含み、金属酸化物層の表面のうち一部のみが金属粒子で直接被覆されていることを特徴とする。
【0022】
すなわち、本発明の着色金属顔料においては、金属粒子が金属酸化物層、換言すれば基材である金属顔料、を完全に覆う層としては形成されていないため、金属粒子で被覆されている部位と被覆されていない部位とが存在する。このように、金属粒子が基材である金属顔料を部分的に覆うように形成されていることにより、金属顔料からの反射光のうち金属粒子の粒子間を抜けた反射光のみが可視光として認識される。その結果、金属顔料からの反射明度が弱められることになり、彩度、すなわち色が発現する。さらに本発明の着色金属顔料においては、基材である金属顔料の表面からの反射光と金属粒子表面からの反射光の干渉により、彩度の高い干渉色が発現される。
【0023】
また、本発明においては金属粒子が金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されるため、金属酸化物層と金属粒子との良好な密着性により金属粒子の剥落が防止され、多様な色彩と変化に富む干渉色とが発現された着色金属顔料を安定的に得ることができる。
【0024】
本発明の着色金属顔料は、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層、金属酸化物層および金属粒子を少なくとも形成することにより得られるため、比較的簡便な手段で製造できるとともに、耐光性、耐候性、および隠蔽力が犠牲にされることなく良好な仕上がり外観が付与される点で有利である。
【0025】
本発明の着色金属顔料は、各種の塗料やインキ等に使用することにより仕上がり外観に優れるコーティング膜を与えるコーティング組成物を形成することができる。該着色金属顔料は特に水性の塗料やインキに対して好適に用いられる。このように本発明の着色金属顔料は、産業上極めて有用に利用されるものである。
【0026】
<金属顔料>
本発明で使用される金属顔料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、ニッケル、クロムおよびこれらの合金、あるいは金属被覆フレーク状ガラスその他の金属被覆無機顔料等が好ましく例示でき、このうちアルミニウムが意匠性の点で特に好ましく用いられる。アルミニウムを用いた場合、非晶質酸化珪素膜層を形成し、さらに金属粒子を重ねることによって、干渉色を呈する多彩な着色金属顔料が得られる点で有利である。
【0027】
金属顔料の好ましい平均粒径としては2〜300μmの範囲内が例示できる。平均粒径が2μm以上である場合コーティング膜に良好な仕上がり外観や良好な隠蔽力を与える着色金属顔料を得ることができ、300μm以下である場合、着色金属顔料の分散不良によるコーティング膜の仕上がり外観の低下等を防止可能な着色金属顔料を得ることができる。該平均粒径は5〜100μmの範囲内とされることがさらに好ましい。なお本明細書における金属顔料の平均粒径とは平均長径を意味する。このような平均粒径は、レーザー回折法により測定することができる。
【0028】
金属顔料の好ましい厚み(平均厚み)としては、0.01〜5μmの範囲内が例示できる。厚みが0.01μm以上である場合、コーティング膜の耐光性および耐候性を損なうことなく仕上がり外観を良好に維持することが可能な着色金属顔料が得られ、5μm以下である場合、コーティング膜に良好な意匠性と多様な色彩を与える着色金属顔料を得ることができる。該厚みは、0.02〜1μmの範囲内とされることがさらに好ましい。このような厚みは、水面拡散面積法(水面拡散面積=Scm2/gとすると、厚み=4000/Sμm)により測定することができる。
【0029】
金属顔料の好ましい形状としては、フレーク状(すなわち鱗片状)であることが好ましく、平均粒径Aと平均厚みBとの比A/Bが5〜1000の範囲内であるものが好ましく例示できる。上記の比A/Bが5以上である場合コーティング膜の意匠性が良好で、より多彩な色彩の発現が可能であり、1000以下である場合、着色金属顔料の製造時における金属顔料の変形や、コーティング組成物中での着色金属顔料の分散性の低下が生じ難い点で好ましい。比A/Bは、15〜500の範囲内とされることがより好ましい。金属顔料の形状としては、表面が平滑で丸みを帯びた端面を有するコイン状の形状が特に好ましい。
【0030】
本発明において使用される金属顔料は、たとえばアトマイズ法粉末や、金属薄片を湿式ボールミル法(すなわちホール法)または乾式ボールミル法で粉砕した粉末等として得られる。または、フィルム等に金属薄膜を蒸着した後剥離および粉砕することによっても得られる。また、金属被覆フレーク状ガラスやその他の金属被覆顔料は、フレーク状ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化チタン等のフレーク状あるいは粒状の無機基材に無電解めっき、蒸着、スパッタリング等の手法により、Ag、Cu、Ni、Fe、Co、Cr、Snなどの単体あるいは合金を層状に形成することによって得られる。
【0031】
<非晶質酸化珪素膜層>
本発明の着色金属顔料においては、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層(非晶質酸化珪素により構成される層)が形成されている。この非晶質酸化珪素膜層は、金属顔料の表面の全面に形成されることが好ましいが、金属顔料の表面の一部において非晶質酸化珪素膜層が形成されていない部分が含まれていても、本発明の効果を示す限り本発明の範囲を逸脱するものではない。このような非晶質酸化珪素膜層は金属顔料の表面に直接形成されても良いが、金属顔料と非晶質酸化珪素膜層との間に他の層を下地層として介在させることが好ましい。下地層としては、後述するような、モリブデン、リン、およびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物、水酸化物、水和物の少なくともいずれかの単独膜または混合物膜からなる層が例示できるが、これに限定されない。また、該下地層は1層または2層以上とされることができ、2層以上の場合は組成の異なる層を積層しても良い。
【0032】
本発明においては、非晶質酸化珪素膜層が形成されることにより任意の屈折率が与えられ、干渉色が発現するという効果が得られる。非晶質酸化珪素膜層の形成方法としては、たとえば金属顔料と、有機珪素化合物を含む溶液とを、塩基性または酸性に保ちながらスラリー状態またはペースト状態で撹拌または混練する方法等が採用でき、これにより金属顔料の表面、または下地層が表面に形成された金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成することができる。
【0033】
上記の有機珪素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等およびそれらの縮合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が例示される。
【0034】
また、有機珪素化合物を含む溶液とするための珪素化合物を溶解させる溶剤としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン等の親水性溶剤を用いることが好ましい。また、該溶剤に、アルコキシシランを加水分解するのに充分な水をさらに配合することが望ましい。
【0035】
このように非晶質酸化珪素膜層は、金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料上に析出させることにより、金属顔料の表面に形成することができる。
【0036】
非晶質酸化珪素膜層の厚みは、10〜500nmの範囲内、さらに10〜100nmの範囲内とされることが好ましい。該厚みが10nm以上である場合、金属顔料表面への金属粒子の吸着状態を良好なものとし、より高い彩度を呈するコーティング膜を形成することができ、500nm以下である場合、コーティング膜の隠蔽力が優れるとともに金属顔料のメタリック外観を過度に損ねる危険性が少ない。なお、非晶質酸化珪素膜層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により測定することができる。
【0037】
このように、本発明の非晶質酸化珪素膜層の厚みを10〜500nmの範囲内とすると、後述の金属粒子の平均粒径を50nm以下とすることと相俟って、特に彩度の高い干渉色が発現されるという効果を得ることができるため好ましい。
【0038】
なお、非晶質酸化珪素膜層の「非晶質」とは、X線回折法による結晶構造分析において酸化珪素に由来する明確な回折ピークが検出されない状態にあることをいう。
【0039】
<金属酸化物層>
本発明においては、非晶質酸化珪素膜層の表面に、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層が形成される。この金属酸化物層は、非晶質酸化珪素膜層の表面の全面に形成されることが好ましいが、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部において金属酸化物層が形成されていない部分が含まれていても、本発明の効果を示す限り本発明の範囲を逸脱するものではない。このような金属酸化物層が形成されることにより、後述の金属粒子と金属酸化物層との良好な吸着状態により、金属粒子を一定の間隔を隔てて緻密かつ均一に析出させ、彩度の高い干渉色を発現させることができる。
【0040】
本発明の金属酸化物層に代えて金属単体からなる金属層を形成する場合も、金属粒子を吸着することは可能であるが、金属酸化物層は金属層に比し金属粒子の吸着作用が飛躍的に向上したものとなる。これは、恐らく金属層に比べ金属酸化物層の方が非晶質酸化珪素膜層との密着性が向上したためであると考えられる。
【0041】
このような金属酸化物層は、Mg(マグネシウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、およびCe(セリウム)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましく、中でも、Sn、Zn、Ti、Ceのいずれか1種の金属酸化物を含むことが好ましい。
【0042】
金属酸化物層の形成方法は特に限定されないが、たとえば、金属酸化物層を構成する金属のアルコキシドをゾル−ゲル法により加水分解して非晶質酸化珪素膜層上に析出させる方法、金属酸化物層を構成する金属の金属塩溶液にアルカリを加えて金属酸化物を中和析出させる方法、有機溶媒中に有機金属化合物を溶解した溶液に非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料を接触させ熱処理により酸化することにより非晶質酸化珪素膜層上に金属酸化物層を形成する方法等が好適である。
【0043】
加水分解して析出させる方法において使用される金属アルコキシドとしては、テトラエトキシ錫、テトラブトキシチタンなどが例示でき、該金属アルコキシドを分散させたコロイド溶液を好ましく使用することができる。また金属アルコキシドの加水分解触媒としては、アンモニア水、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジン、尿素などが例示できる。
【0044】
中和析出させる方法において使用される金属塩としては、塩化錫、フッ化錫、塩化亜鉛、硫酸チタニル、硝酸セリウム、酢酸セリウム等が例示できる。また金属塩の中和剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが例示できる。また反応溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルプロピレングリコール、ブチルセロソルブなどが例示できる。
【0045】
有機金属化合物を使用する方法において使用される有機金属化合物としては、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ジルコニウム、ジブチル錫ジラウレートなどの脂肪酸金属塩が例示され、有機金属化合物を溶解する溶媒としては、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブなど、該有機金属化合物が溶解可能な、あらゆる有機溶剤が使用できる。有機金属化合物を分解して酸化させる熱処理温度としては200℃〜500℃が好ましい。200℃以下では有機金属化合物を酸化することが困難で、500℃以上では金属顔料の凝集を生じ易く、さらに発火の危険性も大きくなる。
【0046】
本発明における金属粒子が、水溶性金属塩を使用して無電解めっきにより形成される場合、金属酸化物層の上に、該無電解めっきの前処理として一般的に用いられる、Sn、Pt、Au、Pd、Znなどを含む層を形成しても良い。これらの層が形成される場合であっても、本発明においては、金属粒子が金属酸化物層を直接被覆するようにして形成されると表現するものとする。
【0047】
本発明においては、非晶質酸化珪素膜層と無電解めっきの前処理層の間に金属酸化物層を設けることにより、金属粒子の付着力が、従来技術(特許文献12記載の方法)に比べて強固になっており、機械的、熱的、化学的な攻撃に対する色調安定性に優れている。また、金属酸化物層を非晶質酸化珪素膜層の上に形成することにより、従来技術とは異なった発色を得ることが可能となる。
【0048】
本発明において、金属酸化物層の厚みは30nm以下とされることが好ましい。この場合、得られる着色金属顔料により良好な彩度と干渉色が付与される。金属酸化物層の厚みは、さらに0.1〜10nmの範囲内とされることが好ましい。なお、金属酸化物層は非晶質酸化珪素膜層の表面に均一に析出していても不均一に析出していても良い。金属酸化物層が厚すぎる場合は得られる着色金属顔料の厚みも厚くなり、隠蔽力が低下する。また、薄すぎる場合は、十分な効果が得られず、色調が安定しない。なお、金属酸化物層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により測定することができる。
【0049】
<金属粒子>
本発明の着色金属顔料においては、金属粒子が金属酸化物層の表面に形成される。そして、この金属粒子は、金属酸化物層の表面の一部を直接被覆するように形成されることを特徴とする。
【0050】
本発明の着色金属顔料は金属粒子が形成されていない部位、すなわち金属粒子によって被覆されていない部位を有する。これにより、金属粒子の表面からの反射光と、非晶質酸化珪素膜層を通過する、基材である金属顔料表面からの反射光との干渉が生じ、彩度の高い干渉色を呈する着色金属顔料が得られる。また金属酸化物層の表面に直接金属粒子が形成されることにより金属酸化物層と金属粒子との密着性が良好となり、多様な色彩と変化に富む干渉色を有する着色金属顔料を確実に得ることができる。
【0051】
本発明における金属粒子としては、たとえばAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Sn(スズ)、Pt(白金)、Au(金)およびこれらの合金からなる群より選ばれる1種以上を含む粒子が好ましく例示できる。金属粒子がこれらの金属および金属合金から選ばれる1種以上を含む場合、彩度の高い干渉色を呈する着色金属顔料が得られる。特に好ましい金属粒子としては、Cu、Ni、およびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む粒子が挙げられる。
【0052】
このような金属粒子は、その平均粒径が50nm以下であることが好ましい。この場合、金属粒子が形成されている部位と該金属粒子が形成されていない部位とを有する着色金属顔料表面の表面形態が比較的平滑であり、仕上がり外観に優れるメタリック膜を与えることができる着色金属顔料が得られる。金属粒子の平均粒径は、30nm以下とされることがより好ましい。なお、金属粒子の平均粒径の下限は特に限定されないが、1nm以上とすることが好ましい。1nm未満であると光が金属粒子を透過してしまうため、金属粒子層からの反射光が少なくなり、光干渉による着色効果が弱まるため、得られた着色金属顔料の彩度が低下する場合があるからである。
【0053】
さらに、本発明の着色金属顔料においては、非晶質酸化珪素膜層の厚みが10〜500nmの範囲内であり、かつ金属粒子の平均粒径が50nm以下であることが特に好ましい。この場合特に彩度の高い干渉色が発現される。
【0054】
本発明の着色金属顔料において形成される金属粒子は、金属酸化物層を完全に覆うことなく、該金属酸化物層の一部を覆うように形成されるが、より高彩度の着色金属顔料が得られる点で、金属粒子同士の間隔が10nm以下とされることが好ましい。この場合、10nm以下とされる金属粒子間の間隔が、上記でいう金属粒子によって被覆されていない部位に相当する。この場合、該間隔の下限値は0.1nm以上とすることが好ましい。
【0055】
また本発明においては、金属粒子が金属酸化物層の上に2粒子以上重なって析出していても良いが、単独粒子として1層で析出していることが好ましい。この場合、金属粒子からの反射光と、基材の金属顔料から反射し金属粒子間を抜けた反射光との干渉により彩度の高い干渉色が付与される。さらに、各々の金属粒子が互いに接触することなく金属酸化物層の上に析出していることが好ましい。最も典型的には、各々の金属粒子が互いに接触することなく、かつ金属粒子同士の間隔が10nm以下となるように金属酸化物層の上に1層で析出していることが好ましい。
【0056】
なお、金属粒子の析出状態、平均粒径および金属粒子同士の間隔は、たとえば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により評価することができる。この場合、観察用の試料作製としては、金属粒子が形成された着色金属顔料の断面を、FIB(Focused Ion Beam)加工する方法が好ましく採用できる。この方法は、走査型イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscopy)像を見ながら加工箇所を決定できるため、試料中の特定の個所を加工することができる。上記のような方法で加工を行ない、金属粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて30〜300万倍で観察する。
【0057】
金属粒子の形成方法は特に限定されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法などが好適である。これらの方法のうち、無電解めっき法は金属粒子を上記のような所定の間隔を隔てて均一に析出させることができ、良好な彩度が得られるため、特に好適である。
【0058】
<耐候被膜層等>
本発明においては、金属粒子の上に、下記に示すような耐候被膜層が形成されていても良い。
【0059】
1) 酸化物、水酸化物、水和物の単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層
酸化物、水酸化物、水和物の少なくともいずれかの単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層がさらに形成されていることが好ましい。該耐候被膜層を形成することにより、本発明に係る着色金属顔料を配合した塗膜に変色防止効果が付与され、塗膜の耐候性を向上させることができる。特に金属粒子として銀や銅など、酸化反応や硫化反応を起こしやすい金属を使用した場合には、耐候被膜層を形成することにより耐候性が付与されるため有効である。特に、アルミニウム、珪素、セリウムから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物、水酸化物、水和物を含む層が好ましい。
【0060】
2) カップリング剤
金属粒子または上記の耐候被膜層を形成する場合には該耐候被膜層が、カップリング剤、特に珪素および/またはチタンを含むカップリング剤でさらに処理されていることが好ましい。この場合、本発明の着色金属顔料と塗料樹脂等とを含有するコーティング組成物から塗膜を形成する際に着色金属顔料と塗料樹脂との親和性が向上すること等によって、塗膜の密着性の向上効果が得られる。カップリング剤としてはたとえばシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、RA−Si(ORB3、またはRA−SiRB(ORB2(RA:炭素数2〜18のアルキル基またはアリール基またはアルケニル基、RB:炭素数1〜3のアルキル基)等が好ましく例示できる。また上記式中のRAが官能基を有することも好ましい。該官能基としては、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ(メタクリル)基、アクリロキシ(アクリル)基、メルカプト基、ケチミノ基等が挙げられる。
【0061】
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、n−メチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エポキシ−シラン)、n−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シランなど、およびこれらの縮合物などが挙げられる。
【0062】
チタンカップリング剤はシランカップリング剤に比べ種類は少ないものの本発明におけるカップリング剤として好ましく用いられ得る。チタンカップリング剤は、一般に親水基の加水分解性基と疎水基の側鎖有機官能基とを有する。典型的には、親水基の加水分解性基としてアルコキシル基、疎水基の側鎖有機官能基としてアルキルリン酸エステル基、アミノ基、スルフィド基等が含まれる。チタンカップリング剤の好ましい市販品の例としては、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクトKR46B等が挙げられる。例えばプレンアクトKR46Bの場合、加水分解性基としてC817O−、側鎖有機官能基としてHO−P−(OC13272,C817O−がTiに配位した構造を有する。
【0063】
<樹脂被覆層>
本発明の着色金属顔料に、最外層として樹脂被覆層を形成することにより、該着色金属顔料を配合した塗膜の耐薬品性、耐候性、耐水性、耐湿性等の性能を向上させることができる。これは、本発明の着色金属顔料と塗料樹脂とを配合したコーティング組成物を用いて塗膜を形成する際に、着色金属顔料と塗料樹脂との密着性が向上し、塗膜物性が良好になるためである。
【0064】
樹脂被覆層を構成するモノマー成分としては、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマーおよび3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマー、および/または、ベンゼン核を有する重合性モノマー、を含む少なくとも2種類以上のモノマーから合成された共重合体が例示できる。
【0065】
カルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアッシドフォスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート等が挙げられる。
【0066】
3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0067】
これらの多官能アクリル酸エステルモノマーは樹脂の三次元架橋に寄与し、有機溶剤および水に対し、樹脂被覆層を不溶化する効果を有する。
【0068】
ベンゼン核を有する重合性モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、フェニルビニルケトン、フェニルビニルエーテル、ジビニルベンゼンモノオキサイドフェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0069】
上記の他に、下記のようなモノマーを用いて共重合させても良い。これらのモノマーを共重合させることにより、本発明の着色金属顔料を用いた塗膜の耐湿性、耐候性、密着性などの性能をさらに改善することができる。
【0070】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、その他の不飽和カルボン酸(たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸など)のエステル。
【0071】
本発明の着色金属顔料の主な構成について以上に説明したが、該着色金属顔料においては金属酸化物層と金属粒子とが直接接して形成されていれば良く、本発明の効果が損なわれない範囲で、上記で説明したもの以外の層や粒状物等がさらに形成されていても構わない。
【0072】
<コーティング組成物>
本発明はまた、上記の着色金属顔料または後述の製造方法により得られる着色金属顔料を少なくとも含有する、塗料またはインキなどのコーティング組成物に関する。なお、本発明におけるコーティング組成物には、たとえば塗料およびその塗膜、あるいはインキおよびその印刷物が包含される。塗料およびインキとしては有機溶剤型、水性のいずれも採用可能であるが、水性塗料あるいは水性インキにおいては、耐光性、耐候性の向上が重要な課題であるため、本発明の着色金属顔料は特に水性塗料あるいは水性インキに対して有効に配合される。
【0073】
コーティング組成物における着色金属顔料の配合量は、コーティング組成物の0.1〜30質量%の範囲内とされることが好ましい。該配合量が0.1質量%以上である場合メタリック効果等の装飾効果が良好であり、30質量%以下である場合コーティング組成物の耐候性、耐食性、機械強度等が良好である。コーティング組成物における着色金属顔料の配合量は、コーティング組成物の1〜20質量%の範囲内とされることがより好ましい。
【0074】
コーティング組成物は、たとえば本発明の着色金属顔料に塗料樹脂を適宜配合して得られる。塗料樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂等が例示できる。
【0075】
本発明のコーティング組成物には、着色金属顔料および塗料樹脂に加え、着色金属顔料以外の着色顔料、体質顔料、染料等を併用しても良い。併用される着色顔料としては、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ペリレン、アゾレーキ、酸化鉄、黄鉛、カーボンブラック、酸化チタン、パールマイカ等が例示できる。
【0076】
なお本発明のコーティング組成物には、上記の成分の他、添加剤として、水、有機溶剤、界面活性剤、硬化剤、紫外線吸収剤、静電気除去剤、増粘剤等も適宜配合され得る。
【0077】
本発明のコーティング組成物を用いて塗膜を形成する場合、電着塗装等による下塗り層や中塗り層の上に該塗膜を形成しても良く、また本発明のコーティング組成物による塗膜の上にトップコート層がさらに形成されても良い。
【0078】
<化粧料>
本発明はまた、上記の着色金属顔料または後述の製造方法により得られる着色金属顔料を少なくとも含有する化粧料に関する。
【0079】
従来化粧料に光沢感や光輝感を付与するためパール顔料やアルミニウム顔料が用いられているが、パール顔料については隠蔽性に乏しく、アルミニウム顔料についてはグレー色を呈するため着色顔料を配合しても鮮明な色合いが得られないという問題が有った。アルミニウム顔料についてはさらに水と反応しやすいため、水を含有する化粧料には使用できないという問題も有った。
【0080】
本発明の着色金属顔料を配合することにより、優れた隠蔽力を有し、かつ鮮明な色合いが得られる化粧料が得られる。さらに、本発明の着色金属顔料は水を含む化粧料に使用しても反応しないという特性(安定性)を有する。また、本発明の着色金属顔料は、従来のような金属層を含まないため、化粧品用途が限定されることもない。
【0081】
本発明の着色金属顔料を配合した化粧料は特に限定されないが、具体的な実施の形態としては以下のような化粧料が挙げられる。
【0082】
<化粧料の実施の形態>
1)化粧料の種類としては以下のようなものが挙げられる。
メーキャップ化粧料(口紅、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、ネイルエナメルなど)、毛髪化粧料(ヘアージェル、ヘアワックス、ヘアトリートメント、シャンプー、ヘアマニキュアジェルなど)、基礎化粧料(下地クリーム)。
【0083】
2)化粧料を構成する構成成分としては本発明の着色金属顔料以外には以下のようなものが挙げられる。
【0084】
<油分>
油脂(オリーブ油、ひまし油等)、ロウ類(ミツロウ、カルナバロウ、ラノリンなど)、炭化水素油(流動パラフィン、スクワラン、ポリブテンなど)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリミリスチン酸グリセリルなど)、高級脂肪酸(オレイン酸、イソステアリン酸など)、高級アルコール(イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなど)、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、フッ素化合物(パーフルオロポリエーテルなど)。
【0085】
<その他>
界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、水溶性高分子、皮膜形成剤、非水溶性高分子、高分子エマルション、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、紫外線吸収剤、ビタミン類、酸化防止剤、抗菌剤、香料、水。
【0086】
<配合量>
化粧料中に着色金属顔料を0.1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%配合する。
【0087】
3)調合方法
特に限定されず通常の化粧料の製造方法が適用できる。
【0088】
分散方法としては、ディスパー、ロールミル等が好適である。
<着色金属顔料の製造方法>
本発明の着色金属顔料は、たとえば以下の製造工程に従って製造され得る。すなわち、金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料上に析出させることにより、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成する工程(非晶質酸化珪素膜層形成工程)と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層を析出させることにより金属酸化物層を形成する工程(金属酸化物層形成工程)と、無電解めっき法により該金属酸化物層の表面に金属粒子を形成する工程(金属粒子形成工程)と、を少なくとも含む製造方法により製造することができる。
【0089】
また、本発明において金属顔料と非晶質酸化珪素膜層との間に下地層が形成される場合には、まず金属顔料の表面に下地層を形成する。典型的には、金属顔料とモリブデン化合物および/またはリン化合物を含む溶液とを、スラリー状態またはペースト状態で撹拌または混練して、金属顔料に、モリブデンおよびリンから選ばれる少なくとも1種の元素を含む水和膜を形成し、その後加熱により下地層とする方法等が採用され得る。
【0090】
該下地層の上に、非晶質酸化珪素膜層を形成する(非晶質酸化珪素膜層形成工程)。下地層を形成した金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料(下地層)上に析出させることにより、金属顔料(下地層)の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成する。親水性溶剤としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン等を用いることができる。有機珪素化合物としては、たとえばメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等およびそれらの縮合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。
【0091】
親水性溶剤としてアルコールを用いる場合、金属顔料(下地層)表面にアルコキシシリケートを形成し、加水分解、脱水縮合することにより非晶質酸化珪素膜層を形成する。なお、上記の加水分解反応の触媒としては酸または塩基が好ましく用いられる。
【0092】
続いて、上記の方法で非晶質酸化珪素膜層により被覆された金属顔料の表面に金属酸化物層を形成する(金属酸化物層形成工程)。金属酸化物層形成工程は、後述の金属粒子形成工程の前工程として行なうことができる。すなわち、後工程である金属粒子形成工程で金属粒子を析出させる際の活性点を形成し得る金属種として、たとえばMg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のアルコキシドをゾル−ゲル法により加水分解析出させる方法や、これらの金属を含む金属塩溶液にアルカリを加えて中和析出させる方法、これらの金属を含む有機金属化合物溶液に接触させる方法等により、非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料の表面に金属酸化物層を形成する。なお、この工程の詳細は、上記の金属酸化物層の説明において述べたとおりである。また、このようにして形成される金属酸化物層は、Mg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。
【0093】
続いて、金属酸化物層の表面に、無電解めっき法等により金属粒子を均一なナノ粒子状物として形成する(金属粒子形成工程)。無電解めっきは、たとえば、金属酸化物層を形成した金属顔料を、水を分散媒としてスラリー化した後、無電解めっき液を添加することにより反応させる方法で行なうことができる。無電解めっき液は、典型的には、主に金属粒子形成のもとになる金属源、還元剤、錯化剤を少なくとも含んで構成される。
【0094】
金属源としては、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Pt、Auのいずれかを含む水溶性金属塩を使用することができる。水溶性塩としては、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、塩化物、酢酸塩、乳酸塩、スルファミン酸塩、フッ化物、ヨウ化物、シアン化物等が使用され得る。
【0095】
還元剤としては、次亜リン酸、ホルムアルデヒド、水素化ボロン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、ブドウ糖、酒石酸やそのアルカリ金属塩等が使用され得る。
【0096】
錯化剤としては、コハク酸等のカルボン酸、クエン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸、グリシン、EDTA、アミノ酢酸等の有機酸およびこれらの酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が使用され得る。これらの錯化剤を用いることにより安定して金属粒子を形成することが可能となる。
【0097】
このような方法を採用することにより、金属粒子を金属酸化物層上に上記のような所定の間隔を隔てて均一に析出させること(すなわち金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成させること)ができる。
【0098】
なお、金属粒子形成工程の前に、前処理として金属酸化物層の上に、Sn、Pt、Pd、Au等を含む溶液による表面活性化処理を行なってもよい。
【0099】
また、本発明においては、金属粒子の上に有機化合物または界面活性剤の少なくともいずれかの単独膜または混合物膜からなる腐食抑制層が形成されていることが好ましい。腐食抑制層がアルミニウムおよび/または珪素を含む場合、非晶質酸化珪素膜層および金属粒子が少なくとも形成された金属顔料を親水性溶媒中に懸濁させたスラリー状態またはペースト状態の懸濁液にアルミニウムおよび/または珪素を含む化合物を加えて、攪拌または混練することにより、上記の金属顔料の表面にアルミニウムおよび/または珪素を含む化合物が付着することにより、腐食抑制層を形成することができる。
【0100】
本発明においては、金属粒子形成工程の後に耐候被膜層を形成する工程(耐候被膜層形成工程)が含まれることが好ましい。耐候被膜層がアルミニウムおよび/または珪素を含む場合、前述のように、金属粒子が少なくとも形成された金属顔料と、アルミニウムおよび/または珪素を含む溶液とをスラリー状態またはペースト状態で撹拌または混練することにより水和膜を形成し、その後加熱によりアルミニウムおよび/または珪素の酸化物、水酸化物、水和物の少なくともいずれかの単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層を形成することができる。また耐候被膜層がセリウムを含む場合には、酢酸セリウム、硝酸セリウム、セリウムアルコキシド、セリウムゾル等を溶解または分散した溶液中に、金属粒子が少なくとも形成された金属顔料を加え、塩基性雰囲気を保ちながら加熱攪拌または混練することによって、セリウムの酸化物、水酸化物、水和物の少なくともいずれかの単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層を形成することができる。
【0101】
上記の耐候被膜層が形成される場合には、カップリング処理工程がさらに組み合わされることが好ましい。カップリング処理は、たとえば耐候被膜層がアルミニウムおよび/または珪素を含む場合は、金属粒子が形成された後の金属顔料と、アルミニウムおよび/または珪素を含む溶液とをスラリー状態またはペースト状態で攪拌または混練した後にカップリング剤を添加する方法等により行なわれ、耐候被膜層がセリウムを含む場合は、セリウム化合物の溶液または分散液に、金属粒子が形成された後の金属顔料を加え、塩基性雰囲気を保ちながら加熱攪拌または混練した後にカップリング剤を添加する方法等により行なわれる。また、耐候被膜層が形成された後の金属顔料をイソプロピルアルコール等の溶媒に分散させてスラリー化し、該スラリーにカップリング剤を添加する方法等も採用され得る。
【0102】
本発明においては、金属粒子形成工程の後に、耐候被膜層としての樹脂被覆層を形成する工程(樹脂被覆層形成工程)を含めても良い。樹脂被覆層を形成する工程は、金属粒子が少なくとも形成された金属顔料をミネラルスピリット、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの非極性溶媒に分散し、さらに前述したモノマーを加え、不活性雰囲気下、50−150℃、より好ましくは70−100℃で攪拌混合しながら、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を添加する。その後、モノマーが十分重合するまで攪拌を継続し(1−20時間、より好ましくは3−10時間)、反応終了後スラリーを固液分離してペースト状組成物とすることにより、樹脂被覆層を形成することができる。
【0103】
上記のような方法で本発明の着色金属顔料を調製することができる。さらに、得られた着色金属顔料を塗料樹脂や必要に応じて他の着色顔料、体質顔料、染料、添加剤等と従来公知の方法で混合することにより、本発明のコーティング組成物を調製することができる。また、従来公知の方法により、本発明の着色金属顔料を含有した化粧料を調製することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
<実施例1>
過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水3gに金属モリブデン粉末0.3gを少しずつ加え、反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール(以下IPAと略す)500gに溶解し、さらに、金属顔料として市販のアルミニウム顔料(フレーク状アルミニウム、商品名:「5422NS」(東洋アルミニウム(株)製)、固形分:75質量%、平均粒径:19μm、平均厚み:1μm)を40g(すなわちアルミニウム分として30g)加え、75℃で1時間攪拌混合してスラリーを得た。このようにして、下地層としてモリブデン酸化物がその表面に形成された金属顔料を得た。
【0106】
その後、上記スラリーにアンモニア水と水80gとを加えスラリーのpH値を10.0に調整した。pHを調整したスラリー(すなわち下地層を形成した金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤)に、有機珪素化合物としてテトラエトキシシラン40gを40gのIPAに溶解したものを徐々に滴下し、さらに75℃で2時間攪拌混合することにより、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料(下地層)上に析出させた。その後、スラリーをフィルターで固液分離し、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成した(非晶質酸化珪素膜層形成工程)。以下、この状態の金属顔料を「シリカコートアルミニウム顔料」という。
【0107】
次いで、上記で得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、塩化錫40gおよび塩酸2gを含む水溶液300gに攪拌分散し、スラリー温度を30℃に保ちながら、10%水酸化ナトリウム水溶液をpH値が7.0になるまで少しずつ滴下し、滴下終了後1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを再度固液分離し水洗して、シリカコートアルミニウム顔料の表面に酸化錫層を析出させることにより金属酸化物層として酸化錫層を形成した(金属酸化物層形成工程)。以下、この状態の金属顔料を「金属酸化物層被覆アルミニウム顔料」という。
【0108】
続いて、上記で得られた金属酸化物層被覆アルミニウム顔料10gを、硝酸銀3g、ホルムアルデヒド2g、アンモニア水10gを含む無電解銀めっき液800gに分散し、30℃で1時間保持することにより、無電解めっき法によって金属酸化物層の表面に金属粒子(銀粒子)を形成した(金属粒子形成工程)。以下、この状態の金属顔料を「金属粒子付着アルミニウム顔料」という。この金属粒子付着アルミニウム顔料は、金属酸化物層上に金属粒子が一定の間隔を隔てて均一に形成されるもの(すなわち金属粒子が金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなるもの)であった。
【0109】
このようにして得られた金属粒子付着アルミニウム顔料を固液分離し、乾燥することにより、青色の本発明に係る着色金属顔料である着色アルミニウム顔料を得た。該着色アルミニウム顔料を目視で観察したところ、見る角度によって青紫色から濃茶色に変化する干渉色を呈し、かつ良好なメタリック感を有していた。また、透過型電子顕微鏡を用いてこの着色アルミニウム顔料を観察したところ、非晶質酸化珪素膜層の厚みは70nmであり、金属酸化物層の厚みは2nmであり、金属粒子はその平均粒径が5nmであり、それが0.5nmの間隔を隔てて金属酸化物層上に均一に形成されていた。
【0110】
<実施例2>
実施例1と同様の非晶質酸化珪素膜層形成工程で得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、硝酸セリウム50gを含む水溶液500gに攪拌分散し、スラリー温度を40℃に保ちながら、5%アンモニア水溶液をpH値が7.0になるまで少しずつ滴下し、滴下終了後1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを再度固液分離し水洗して、シリカコートアルミニウム顔料の表面に酸化セリウム層を析出させることにより金属酸化物層として酸化セリウム層を形成した(金属酸化物層形成工程)。以下、この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属酸化物層被覆アルミニウム顔料」という。
【0111】
次いで、得られたスラリーを固液分離し水洗後、硝酸銀3g、ぶどう糖40g、アンモニア水20gを含む無電解銀めっき液900gに分散し、40℃で10分間保持することにより、無電解めっき法によって金属酸化物層の表面に金属粒子(銀粒子)を形成した(金属粒子形成工程)。この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属粒子付着アルミニウム顔料」という。この金属粒子付着アルミニウム顔料は、金属酸化物層上に金属粒子が一定の間隔を隔てて均一に形成されるもの(すなわち金属粒子が金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなるもの)であった。
【0112】
このようにして得られた金属粒子付着アルミニウム顔料を固液分離し、乾燥することにより、橙色の本発明に係る着色金属顔料である着色アルミニウム顔料を得た。該着色アルミニウム顔料を目視で観察したところ、見る角度によって緑色から橙色に変化する干渉色を呈し、かつ良好なメタリック感を有していた。また、透過型電子顕微鏡を用いてこの着色アルミニウム顔料を観察したところ、非晶質酸化珪素膜層の厚みは70nmであり、金属酸化物層の厚みは5nmであり、金属粒子はその平均粒径が7nmであり、それが0.8nmの間隔を隔てて金属酸化物層上に均一に形成されていた。
【0113】
<実施例3>
実施例1と同様の非晶質酸化珪素膜層形成工程で得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、テトラブトキシチタン30gを含む水溶液400gに撹拌分散し、5%アンモニア水溶液をpH値が10.0になるまで少しずつ滴下し、滴下終了後1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを固液分離し水洗して、シリカコートアルミニウム顔料の表面に
酸化チタン層を析出させることにより金属酸化物層として酸化チタン層を形成した(金属酸化物層形成工程)。以下、この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属酸化物層被覆アルミニウム顔料」という。
【0114】
次いで、得られたスラリーを固液分離し水洗後、硝酸銀3g、酒石酸ナトリウムカリウム15g、アンモニア水15gを含む無電解銀めっき液200gに分散し、35℃で40分保持することにより、無電解めっき法によって金属酸化物層の表面に金属粒子(銀粒子)を形成した(金属粒子形成工程)。この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属粒子付着アルミニウム顔料」という。この金属粒子付着アルミニウム顔料は、金属酸化物層上に金属粒子が一定の間隔を隔てて均一に形成されるもの(すなわち金属粒子が金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなるもの)であった。
【0115】
このようにして得られた金属粒子付着アルミニウム顔料を固液分離し、乾燥することにより、緑色の本発明に係る着色金属顔料である着色アルミニウム顔料を得た。該着色アルミニウム顔料を目視で観察したところ、見る角度によって青色から緑色に変化する干渉色を呈し、かつ良好なメタリック感を有していた。また、透過型電子顕微鏡を用いてこの着色アルミニウム顔料を観察したところ、非晶質酸化珪素膜層の厚みは70nmであり、金属酸化物層の厚みは10nmであり、金属粒子はその平均粒径が12nmであり、それが1nmの間隔を隔てて金属酸化物層上に均一に形成されていた。
【0116】
<実施例4>
実施例1と同様の非晶質酸化珪素膜層形成工程で得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、塩化亜鉛50gを含む水溶液300gに撹拌分散し、その後5%アンモニア水溶液をpH値が7.0になるまで少しずつ滴下し、滴下終了後1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを再度固液分離し水洗して、シリカコートアルミニウム顔料の表面に酸化亜鉛層を析出させることにより金属酸化物層として酸化亜鉛層を形成した(金属酸化物形成工程)。以下、この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属酸化物層被覆アルミニウム顔料」という。
【0117】
次いで、得られたスラリーを固液分離し水洗後、硝酸銀3g、ぶどう糖40g、アンモニア水20gを含む無電解銀めっき液900gに分散し、40℃で10分間保持することにより、無電解めっき法によって金属酸化物層の表面に金属粒子(銀粒子)を形成した(金属粒子形成工程)。この状態の金属顔料を実施例1と同様に「金属粒子付着アルミニウム顔料」という。この金属粒子付着アルミニウム顔料は、金属酸化物層上に金属粒子が一定の間隔を隔てて均一に形成されるもの(すなわち金属粒子が金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなるもの)であった。
【0118】
このようにして得られた金属粒子付着アルミニウム顔料を固液分離し、乾燥することにより、橙色の本発明に係る着色金属顔料である着色アルミニウム顔料を得た。該着色アルミニウム顔料を目視で観察したところ、見る角度によって橙色から青色に変化する干渉色を呈し、かつ良好なメタリック感を有していた。また、透過型電子顕微鏡を用いてこの着色アルミニウム顔料を観察したところ、非晶質酸化珪素膜層の厚みは70nmであり、金属酸化物層の厚みは5nmであり、金属粒子はその平均粒径が20nmであり、それが1nmの間隔を隔てて金属酸化物層上に均一に形成されていた。
【0119】
<実施例5>
実施例1で得られた着色金属顔料30gを200gのIPAに分散したスラリーに、テトラエトキシシラン5g、10質量%尿素水溶液15gを加え、75℃で5時間攪拌混合して反応させることにより、金属顔料の表面に酸化珪素からなる耐候被膜層を形成した(耐候被膜層形成工程)。このスラリーを濾過し、固形分60質量%の耐候被膜層を最表面に形成した着色金属顔料を得た。以下、この状態の金属顔料を「耐候被膜層被覆アルミニウム顔料」という。
【0120】
次いで、上記で得られた耐候被膜層被覆アルミニウム顔料30gを400gのIPAに分散したスラリーに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン2gを添加し、75℃で1時間攪拌混合して反応させることにより、耐候被膜層の表面をさらにカップリング処理した(カップリング処理工程)。このスラリーを濾過し、固形分60質量%の本発明に係る着色金属顔料である着色アルミニウム顔料を得た。得られた着色アルミニウム顔料は、実施例1と同様の色相を呈した。透過型電子顕微鏡を用いてこの着色アルミニウム顔料を観察したところ、耐候被膜層の厚みは20nmであった。
【0121】
<実施例6>
実施例1において、金属顔料を銀被覆フレーク状ガラス(厚み:1μm、平均粒径:25μm、銀被覆量:30質量%)とした以外は実施例1と同様にして、着色金属顔料を得た。得られた着色金属顔料は、観察角度によってオレンジ色から黄色に変化する干渉色を呈した。透過型電子顕微鏡を用いてこの着色金属顔料を観察したところ、非晶質酸化珪素膜層の厚みは90nmであり、金属酸化物層の厚みは4nmであり、金属粒子はその平均粒径が15nmであり、それが0.3nmの間隔を隔てて金属酸化物層上に均一に形成されていた。
【0122】
<比較例1>
国際公開第2007/094253号パンフレット(特許文献12)の実施例1と全く同様の方法により着色金属顔料を作製した。
【0123】
すなわち、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水3gに金属モリブデン粉末0.3gを少しずつ加え、反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール(以下IPAと略す)500gに溶解し、さらに、金属顔料として市販のアルミニウム顔料(東洋アルミニウム(株)製「5422NS」、固形分75質量%、平均粒径:19μm、平均厚み:1μm)を40g(すなわちアルミニウム分として30g)加え、75℃で1時間攪拌混合してスラリーを得た。
【0124】
その後、上記スラリーにアンモニア水と水80gとを加えスラリーのpH値を10.0に調整した。pH調整したスラリーに、テトラエトキシシラン40gを40gのIPAに溶解したものを徐々に滴下し、さらに75℃で2時間攪拌混合した。その後、スラリーをフィルターで固液分離し、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成し(非晶質酸化珪素膜層形成工程)、シリカコートアルミニウム顔料を調製した。
【0125】
得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、塩化錫40gおよび塩酸2gを含む水溶液300gに30℃で1時間分散し、再度固液分離し水洗して、シリカコートアルミニウム顔料の表面に金属層を形成し(金属層形成工程)、金属層被覆アルミニウム顔料を調製した。
【0126】
得られた金属層被覆アルミニウム顔料を、硝酸銀3g、ホルムアルデヒド2g、アンモニア水10gを含む無電解銀めっき液800gに分散し、30℃で1時間保持して金属層の表面に金属粒子を形成し(金属粒子形成工程)、金属粒子付着アルミニウム顔料を得た。得られた金属粒子付着アルミニウム顔料を固液分離し、乾燥することにより、青色の着色金属顔料を得た。該着色金属顔料を目視で観察したところ、見る角度によって青紫色から濃茶色に変化する干渉色を呈し、かつ良好なメタリック感を有していた。
【0127】
この着色金属顔料は、本発明の着色金属顔料に対し、金属酸化物層に代えて金属層を形成した構成を有する。
【0128】
<比較例2>
実施例1と同様の非晶質酸化珪素膜層形成工程で得られたシリカコートアルミニウム顔料10gを、硝酸銀3g、ホルムアルデヒド2g、アンモニア水10gを含む無電解銀めっき液800gに分散し、30℃で1時間保持した。得られたフレークを固液分離し、乾燥したところ薄い青色を呈するアルミニウム顔料が得られた。該アルミニウム顔料を目視で観察したところ、カラーフロップ性は弱く、彩度の低いものであった。
【0129】
このアルミニウム顔料は、本発明の着色金属顔料に対し、金属酸化物層を形成しないという構成を有する。
【0130】
<金属粒子の付着強度試験>
実施例1と比較例1で得られたそれぞれの着色金属顔料5gに、ミネラルスピリットを3g加え、100mlのPP(ポリプロピレン)カップに採り、スパチュラで5分間、合計60回、手動混練した。混練前後の着色金属顔料を1.5g(固形分換算)、100mlのPPカップに量りとり、常温乾燥型アクリルラッカー(日本ペイント(株)製、オートクリヤースーパー)を50g加え、ディスパーにて3分間分散し塗料を作製した。得られた塗料を225μmのドクターブレードにて両面アート紙に塗布し、乾燥後、JIS L0804のグレースケール評価に準じて、着色金属顔料の混練の前後による変色度合(すなわち金属粒子の付着強度)を評価した。
【0131】
具体的には、グレースケール評価にて号数が大きいほど、着色金属顔料の混練の前後での色差が小さくなり、金属粒子の付着強度が強いと判定できる。これにより付着強度を評価したところ、実施例1の着色金属顔料はグレースケール評価で色差が小さく、付着強度が高いのでほとんど色落ちしなかったのに対し、比較例1で得られた着色金属顔料はグレースケール評価で色差が大きく、付着強度が小さいので色落ちが激しく、シルバー色に近い状態となった。
【0132】
実施例2−6で得られた着色金属顔料についても同様の試験を行なった結果、ほとんど色落ちは認められなかった。また、比較例2の着色金属顔料についても同様の試験を行なった結果、色落ちが認められた。それぞれの着色金属顔料について、上記の金属粒子の付着強度試験をJIS L0804のグレースケール評価により評価した結果を表1に示す。
【0133】
すなわち、実施例1−6の着色金属顔料に比し、比較例1−2の着色金属顔料は、金属粒子の付着力が弱く、金属粒子が金属顔料から剥離したために干渉作用が低減し、色落ちしたものと考えられる。
【0134】
<水性塗料の調製>
(レオロジーコントロール剤の調製)
ポリアマイド系レオロジーコントロール剤(楠本化成(株)製「ディスパロンAQ600」(商品名))19.5質量部、ブチルセロソルブ6質量部、イオン交換水106.5質量部を1時間攪拌混合してレオロジーコントロール剤(組成物1)を調製した。
【0135】
(樹脂溶液の調製)
アクリルコポリマー(Neuplex社製「Setaqua 6802」(商品名))を27.9質量部、ポリウレタンディスパージョンA(Bayer MaterialScience製「Bayhydrol XP 2621」(商品名))を16.8質量部、ポリウレタンディスパージョンB(Bayer MaterialScience製「Bayhydrol PT241」(商品名))を4.1質量部、メラミン樹脂溶液(三井サイテック社製「Cymel327」(商品名))を1.9質量部、ブチルセロソルブ5.3質量部、消泡レベリング剤(楠本化成(株)製「AQ7120」(商品名))を0.3質量部、イオン交換水を12.4質量部混合し、30分以上攪拌して樹脂溶液(組成物2)を調製した。
【0136】
(メタリックベースの調製)
不揮発分が4.4質量部に相当する上記実施例または上記比較例で作製した着色金属顔料それぞれに、分散剤(楠本化成(株)製「AQ320」(商品名))0.4質量部とブチルセロソルブを加えて15.00質量部とし、10分間攪拌混合しメタリックベース(組成物3)を調製した。
【0137】
(水性ベースメタリック塗料の調製)
上記樹脂溶液(組成物2)96.2質量部に、上記メタリックベース(組成物3)10.5質量部を加えて10分以上攪拌混合した。次に、この混合物に対して、レオロジーコントロール剤(組成物1)12.3質量部を徐々に加えた後、更に10分攪拌混合した。その後、混合物のpHが8.3±0.1となるように10%ジメチルエタノールアミン水溶液を加え、さらに10分以上攪拌混合した。最後に粘度が基準値(Ford cup No.4にて25秒)になるように適量のイオン交換水を加え、10分以上攪拌混合したものを水性ベースメタリック塗料とした。
【0138】
(クリアーコート用塗料の調製)
ポリアクリレート(Bayer MaterialScience製「Desmophen A870BA」(商品名))51.15g、添加剤A(Borchers社製「Baysilone Paint Additive OL17」(商品名)の10%キシレン溶液)0.53g、添加剤B(Monsanto社製「Modaflow」(商品名)の1%キシレン溶液)0.53g、添加剤C(Ciba Spezialitatenchemie Lampertheim社製「Tinuvin292」(商品名)の10%キシレン溶液)5.3g、添加剤D(Ciba Spezialitatenchemie Lampertheim社製「Tinuvin1130」(商品名)の10%キシレン溶液)10.7g、希釈溶剤A(1−メトキシプロピルアセテート:ソルベントナフサ=1:1(質量比))10.17g、希釈溶剤B(ブチルグリコールアセテート)2.13gを30分以上攪拌混合した。その後、イソシアヌレート(住化バイエルウレタン社製「スミジュールN3300」(商品名))と混合溶剤(ブチルアセテート:ソルベントナフサ=1:1(質量比))とを、9:1(質量比)で希釈したものを19.49g加え、30分以上混合攪拌を行なったものをクリヤーコート用塗料とした。
【0139】
<塗板の作製方法>
上記のようにして調製した水性ベースメタリック塗料を金属板(軟鋼製)にスプレー塗装した。得られたスプレー塗板を5分以上常温でセッティングした後、該スプレー塗板を80℃にて3分間乾燥した。その後スプレー塗板を10分以上常温でセッティングした後、該スプレー塗板にさらに上記のクリヤーコート用塗料をスプレーにて塗布した。クリヤーコートを塗布後10分以上常温にてセッティングした後、130℃にて30分間焼き付けを行なうことによりスプレー塗装された塗板を得た。この塗板における塗膜の厚みは、水性ベースメタリック塗膜が14〜18μm、クリヤーコート塗膜が35〜40μmになるように上記スプレー塗装を行なう際に塗装条件を調整した。
【0140】
<塗膜耐水(湿)性試験>
上記の「塗板の作製方法」により得られた塗板を40℃、湿度98%以上に保持された耐湿試験機にて10日間維持した。その後、塗膜の色差を評価した。
【0141】
(色差)
上記の「塗板の作製方法」により得られた塗板について、多角度測色計(X−Rite社製「X−Rite MA−68II」(商品名))を用いて観測角が45度(塗膜法線方向にて受光)における、塗板に形成された塗膜の、L*45、a*45、b*45の値を測定し、上記耐湿試験機による試験の前後における塗膜の色差ΔE*45を求めた。評価としては、「優」:ΔE*45が3未満、「良」:ΔE*45が3以上〜7未満、「不良」:ΔE*45が7以上とした。その結果を表1に示す。
【0142】
<塗膜耐候性試験>
上記の「塗板の作製方法」により得られた塗板を、スーパーキセノン促進耐候性試験機(スガ試験機製「SUGA SX75」(商品名))に入れ、1500時間テストした。その後、塗膜の色差を評価した。スーパーキセノンによる促進耐候性試験の条件は下記の通りである。
キセノンランプ照射光量:180W/m2
黒参照パネル温度:63℃
降雨条件:1サイクル(180分)当り12分間
(色差)
上記の「塗板の作製方法」により得られた塗板について、多角度測色計(X−Rite社製「X−Rite MA−68II」(商品名))を用いて観測角が45度(塗膜法線方向にて受光)における、塗板に形成された塗膜の、L*45、a*45、b*45の値を測定し、スーパーキセノン促進耐候性試験機による試験の前後における塗膜の色差ΔE*45を求めた。評価としては、「優」:ΔE*45が3未満、「良」:ΔE*45が3以上〜7未満、「不良」:ΔE*45が7以上とした。その結果を表1に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
表1より明らかなように、各実施例の着色金属顔料は、各比較例の着色金属顔料に比し、「金属粒子の付着強度試験」、「塗膜耐水(湿)性試験」、「塗膜耐候性試験」の各試験においていずれも優れた結果が示された。以上の結果より、本発明の構成を有する着色金属顔料が、耐光性、耐候性および隠蔽力を良好に維持しつつ、多様な色彩と変化に富む干渉色とが安定的に発現可能であることが確認できた。なお、「金属粒子の付着強度試験」は主として隠蔽力を評価するものであり、「塗膜耐候性試験」は主として耐光性および耐候性を評価するものであり、「塗膜耐水(湿)性試験」は主として多様な色彩と変化に富む干渉色とが安定的に発現可能であることを評価するものである。
【0145】
<化粧料の作製>
下記の処方により、実施例1〜6の着色金属顔料をそれぞれ用いて、各種化粧料を作製し、従来の市販化粧料と比較した。
【0146】
<実施例7〜12>
アイシャドウ(スティック型)
(1)タルク 5.0質量部
(2)二酸化チタン 3.0質量部
(3)着色金属顔料 50.0質量部
(4)カルナバロウ 10.0質量部
(5)固形パラフィン 5.0質量部
(6)ラノリン誘導体 5.0質量部
(7)スクワラン 20.9質量部
(8)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 1.0質量部
(9)香料 0.1質量部
上記(3)の着色金属顔料が実施例1〜6の着色金属顔料に相当し、実施例1の着色金属顔料を用いたものが実施例7のアイシャドウであり、同様にして実施例2〜6の着色金属顔料を用いたものがそれぞれ実施例8〜12のアイシャドウに該当する。なお、以下の実施例13〜24についても同様である。
【0147】
<実施例13〜18>
毛髪化粧料(ヘアジェル)
(1)カルボキシビニルポリマー 5.0質量部
(2)エチルアルコール 2.0質量部
(3)PEG1500 1.0質量部
(4)アミノメチルプロパノール 1.5質量部
(5)メチルバラベン 0.1質量部
(6)着色金属顔料 7.0質量部
(7)精製水 83.4質量部
<実施例19〜24>
ネイルエナメル
(1)ニトロセルロース(1/2秒) 6.5質量部
(2)ニトロセルロース(1/8秒) 11.0質量部
(3)トルエンスルホンアミド樹脂 12.5質量部
(4)クエン酸アセトトリブチル 5.3質量部
(5)カンファー 1.0質量部
(6)n−ブチルアルコール 0.5質量部
(7)エチルアルコール 4.5質量部
(8)酢酸エチル 15.0質量部
(9)酢酸ブチル 30.0質量部
(10)着色金属顔料 13.7質量部
いずれの場合も、従来の化粧料に比べて、隠蔽性と光沢に優れ、鮮明な色合いを示す化粧料が得られた。
【0148】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0149】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料と、該金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、該非晶質酸化珪素膜層の表面に形成された、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層と、該金属酸化物層の表面に形成された金属粒子と、を少なくとも含む着色金属顔料であって、
前記金属粒子は、前記金属酸化物層の一部を直接被覆するように形成されてなる、着色金属顔料。
【請求項2】
前記金属酸化物層は、Mg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項1記載の着色金属顔料。
【請求項3】
前記金属粒子は、Cu、Ni、およびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む、請求項1または2に記載の着色金属顔料。
【請求項4】
前記非晶質酸化珪素膜層は、その厚みが10〜500nmの範囲内であり、かつ、
前記金属粒子は、その平均粒径が50nm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の着色金属顔料。
【請求項5】
請求項1記載の着色金属顔料の製造方法であって、
金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料上に析出させることにより、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成する工程と、
前記非晶質酸化珪素膜層の表面に、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層を析出させることにより金属酸化物層を形成する工程と、
無電解めっき法により前記金属酸化物層の表面に金属粒子を形成する工程と、を少なくとも含む、着色金属顔料の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物層は、Mg、Sn、Zn、Co、Ni、Fe、Zr、Ti、およびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項5記載の着色金属顔料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の着色金属顔料、または請求項5または6に記載の製造方法により得られる着色金属顔料を少なくとも含有するコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の着色金属顔料、または請求項5または6に記載の製造方法により得られる着色金属顔料を少なくとも含有する化粧料。

【公開番号】特開2012−31232(P2012−31232A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169470(P2010−169470)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】