説明

着色防止剤、着色防止方法及び着色防止剤が添加された配合物

【課題】室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止することができる着色防止剤、当該着色防止剤を用いた着色防止方法、及び当該着色防止剤によって着色が防止された重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体を含む配合物を提供する。
【解決手段】重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に添加して使用する、シラノール化合物からなる着色防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体に添加して使用される酸化防止剤又は重合禁止剤、特にフェノール系重合禁止剤に起因する着色を防止する着色防止剤、当該着色防止剤を用いた着色防止方法、及び当該着色防止剤によって着色が防止された重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体を含む配合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重合性単量体の保存安定性を目的として添加される酸化防止剤、重合禁止剤(重合抑制剤とも言う。)としてハイドロキノン、メトキシフェノール、ターシャリーブチルカテコール、メチルハイドロキノン等のフェノール系化合物、アミン系化合物が広く用いられている。しかし、これらの添加物(酸化防止剤、重合禁止剤)は、その効果を発現する際に発色を伴う場合が多く、この発色が、これらの添加物を添加した重合性単量体の着色をしばしば引き起こす。
【0003】
そして、このような重合性単量体の着色は、その重合性単量体を用いて製造される最終製品の用途によっては支障をもたらすことがある。例えば、車両用透明部材、透明シート用部材では、着色されると光の透過性が低下するため好ましくない。また、光学機器部材であるレンズ、プリズム、光ディスク、シート等は、色相安定性を要するため、着色による色相変化は好ましくない。同様に、半導体用部材、電子材料、粘着剤、接着剤、高吸水性樹脂、インク、塗料、繊維や、塗料、樹脂、繊維の改質剤などの原材料についても、その使途によっては透明あるいは白色であることを必要とすることがある。
【0004】
このため、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体の着色を防止することができる着色防止剤及び着色防止方法が要望されている。そこで、このような要望に応じるべく、先に、本発明者らは、特に、フェノール系重合抑制剤、アミン系重合抑制剤又は酸化防止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体の着色を効果的に防止する技術として、重合性単量体又はその部分重合体と酸化防止剤又は重合抑制剤とからなる配合物に対して、酸化防止剤又は重合抑制剤100質量部に対して外配で3〜100質量部添加して使用する、アリールホスフィン化合物及びシラザン化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物よりなる着色防止剤、及び、重合性単量体又はその部分重合体と酸化防止剤又は重合抑制剤とからなる配合物に対して、酸化防止剤又は重合抑制剤100質量部に対して、アリールホスフィン化合物及びシラザン化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を外配で3〜100質量部添加して使用する、着色防止方法を提案している(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1において提案された着色防止剤及び着色防止方法は、室温下での着色防止には効果が有るが、加熱下での着色防止には効果が無い場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−249308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止することができる着色防止剤、当該着色防止剤を用いた着色防止方法、及び当該着色防止剤によって着色が防止された重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体を含む配合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の着色防止剤、着色防止方法及び配合物が提供される。
【0009】
[1] 重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に添加して使用する、シラノール化合物からなる着色防止剤。
【0010】
[2] 前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加して使用する、[1]に記載の着色防止剤。
【0011】
[3] 前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である[1]又は[2]に記載の着色防止剤。
【0012】
[4] 前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である[1]〜[3]の何れかに記載の着色防止剤。
【0013】
[5] 前記フェノール系重合禁止剤が、ハイドロキノン、メトキシフェノール及びターシャリーブチルカテコールからなる群より選ばれた少なくとも一種のフェノール系重合禁止剤である[4]に記載の着色防止剤。
【0014】
[6] 前記重合性単量体が、アクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種の重合性単量体である[1]〜[5]の何れかに記載の着色防止剤。
【0015】
[7] 重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に対して、シラノール化合物からなる着色防止剤を添加することにより、前記酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する前記重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止する、着色防止方法。
【0016】
[8] 前記シラノール化合物からなる着色防止剤を、前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加する[7]に記載の着色防止方法。
【0017】
[9] 前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である[7]又は[8]に記載の着色防止方法。
【0018】
[10] 前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である[7]〜[9]の何れかに記載の着色防止方法。
【0019】
[11] 重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物であって、更に着色防止剤としてシラノール化合物が添加されている配合物。
【0020】
[12] 前記シラノール化合物が、前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加されている[11]に記載の配合物。
【0021】
[13] 前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である[11]又は[12]に記載の配合物。
【0022】
[14] 前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である[11]〜[13]の何れかに記載の配合物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の着色防止剤は、シラノール化合物からなるものであり、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に添加することにより、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止することができる。また、本発明の着色防止方法は、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に、シラノール化合物からなる着色防止剤を添加するものであり、これにより、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止することができる。更に、本発明の配合物は、着色防止剤としてシラノール化合物が添加されているものであり、このシラノール化合物(着色防止剤)によって、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色が防止されているため、高い透明性や色相安定性を必要とする製品の材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0025】
まず、本発明の着色防止剤について説明する。本発明の着色防止剤は、シラノール化合物からなるものであり、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に添加して使用する。本発明者らは、特許文献1に記載された従来の着色防止剤の問題点、すなわち、室温下での着色防止には効果が有るが、加熱下での着色防止には効果が無い場合があるという問題を解決するため、種々検討を行った結果、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に、シラノール化合物を添加すると、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を効果的に防止することができることを見出して、本発明を完成した。
【0026】
本発明の着色防止剤、すなわちシラノール化合物は、その使用において、添加量は特に制限されないが、配合物中の酸化防止剤又は重合禁止剤の量に対して、少なすぎると十分な着色防止効果が得られない場合が有り、また、多すぎると着色防止に要するコストが高くなりすぎて経済性の観点から好ましくない。着色防止効果と経済性とのバランスを考慮すると、本発明の着色防止剤は、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加して使用することが好ましく、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で10〜100質量部添加して使用することがより好ましい。なお、本発明の着色防止剤は、重合禁止剤の重合禁止効果を阻害しないため、重合禁止剤とともに使用されても、その効果を充分発揮することができる。
【0027】
本発明の着色防止剤として用いられるシラノール化合物の種類も、特に限定はされるものではないが、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物が、加熱下における着色防止効果の高さから、好適なものとして挙げられる。なお、従来、シラノール化合物は、主にシリル化剤として使用されてきたものであり(例えば、特開平10−150033号公報参照)、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止する効果を有することや、重合体の添加剤として用いることは知られていない。また、後述する実施例においては、本発明の着色防止剤として、トリフェニルシラノールからなるものを用いているが、その化学構造の類似性及びその類似性によってもたらされる化学的性質の共通性から、従来、トリフェニルシラノールと同様にシリル化剤として使用されてきたジフェニルシランジオール等の他のシラノール化合物についても、加熱下における高い着色防止効果を発現することが期待できる。
【0028】
本発明の着色防止剤の添加対象である配合物に含まれる重合禁止剤の種類は、特に限定されるものではないが、フェノール系重合禁止剤、特に、ハイドロキノン、メトキシフェノール及びターシャリーブチルカテコールからなる群より選ばれた少なくとも一種のフェノール系重合禁止剤が含まれた配合物は、本発明の着色防止剤の添加により、加熱下での高い着色防止効果が得られることから好ましい。また、本発明の着色防止剤の添加対象である配合物に含まれる酸化防止剤の種類についても、特に限定されるものではなく、例えば、精工化学株式会社製のノンフレックスMBP、ノンフレックスEBP、ノンフレックスCBP、ノンフレックス アルバ、BHTスワノックス、TBH(以上、製品名)といった各種酸化防止剤を含有する配合物に対し、本発明の着色防止剤を添加して使用することができる。
【0029】
本発明の着色防止剤の添加対象である配合物に含まれる重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の種類も、特に限定されるものではないが、好ましいものとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種の重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体が挙げられる。これらの重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体は、元々の色相が白色若しくは透明であるものが多く、高い透明性や色相安定性を必要とする製品の材料として広く用いられていることから、本発明の着色防止剤による効果を享受しやすいためである。アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0030】
次に、本発明の着色防止方法について説明する。本発明の着色防止方法は、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に対して、シラノール化合物からなる着色防止剤を添加することにより、前記酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する前記重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止するものである。既述のとおり、前記配合物に、シラノール化合物を添加すると、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を効果的に防止することができる。
【0031】
本発明の着色防止方法において、着色防止剤の添加方法には特に制限はなく、例えば、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体に酸化防止剤又は重合禁止剤を添加する際に、着色防止剤を同時に添加してもよい。また、着色防止剤の添加の形態についても特に制限はなく、通常は着色防止剤をそのまま添加すればよい。更に、酸化防止剤、重合禁止剤、着色防止剤以外に用途によって必要があれば、重合開始剤、可塑剤、改質剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、その他の安定剤等を添加しても、所望の効果を得ることができる。
【0032】
本発明の着色防止方法において、シラノール化合物からなる着色防止剤の添加量は特に制限されないが、本発明の着色防止剤の説明において述べた理由と同様の理由から、着色防止剤(シラノール化合物)は、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加することが好ましく、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で10〜100質量部添加することがより好ましい。
【0033】
本発明の着色防止方法において、着色防止剤として用いるシラノール化合物の種類も、特に限定はされるものではないが、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物が、加熱下における着色防止効果の高さから、好適なものとして挙げられる。また、着色防止剤の添加対象である配合物に含まれる重合禁止剤の種類も、特に限定されるものではないが、本発明の着色防止剤の説明において述べた理由と同様の理由から、フェノール系重合禁止剤、特に、ハイドロキノン、メトキシフェノール及びターシャリーブチルカテコールからなる群より選ばれた少なくとも一種のフェノール系重合禁止剤が好ましい。
【0034】
次いで、本発明の配合物について説明する。本発明の配合物は、重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物であって、更に着色防止剤としてシラノール化合物が添加されているものである。このように、本発明の配合物は、着色防止剤としてシラノール化合物が添加されており、このシラノール化合物(着色防止剤)によって、室温下のみならず、加熱下においても、酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色が防止されているため、高い透明性や色相安定性を必要とする製品の材料として好適に使用することができる。
【0035】
本発明の配合物において、着色防止剤(シラノール化合物)の添加量は特に制限されないが、本発明の着色防止剤の説明において述べた理由と同様の理由から、着色防止剤は、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加されていることが好ましく、酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で10〜100質量部添加されていることがより好ましい。
【0036】
本発明の配合物において、添加されているシラノール化合物の種類も、特に限定はされるものではないが、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物が、加熱下における着色防止効果の高さから、好適なものとして挙げられる。また、本発明の配合物に含まれる重合禁止剤の種類も、特に限定されるものではないが、本発明の着色防止剤の説明において述べた理由と同様の理由から、フェノール系重合禁止剤、特に、ハイドロキノン、メトキシフェノール及びターシャリーブチルカテコールからなる群より選ばれた少なくとも一種のフェノール系重合禁止剤が好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1〜3及び比較例1〜9)
表1に示すように、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン及びt−ブチルカテコールの内の何れかからなる重合禁止剤5gと、シラノール化合物の一種であるトリフェニルシラノール、アリールホスフィン化合物の一種であるトリフェニルホスフィン及びシラザン化合物の一種である1,1,1,3,3,3−へキサメチルジシラザンの内の何れかからなる着色防止剤0.5gとをスクリュー管に計り採り、これに不活性溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミド15gを加えて溶解させ、実施例1〜3及び比較例1〜6のサンプル液を得た。また、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン及びt−ブチルカテコールの内の何れかからなる重合禁止剤5gをスクリュー管に計り採り、これに、着色防止剤を添加することなく、N,N−ジメチルアセトアミド15gを加えて溶解させ、比較例7〜9のサンプル液を得た。次いで、これらのサンプル液が収容されたスクリュー管を70℃に設定されたオーブン中で加熱し、加熱状態を維持したまま、14日間に渡って、サンプル液の色相変化を目視にて観察した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すとおり、p−メトキシフェノールからなる重合禁止剤を含む実施例1、比較例1、比較例2及び比較例7のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例7のサンプル液では8日経過時点、トリフェニルホスフィンからなる着色防止剤が添加された比較例1のサンプル液と、1,1,1,3,3,3−へキサメチルジシラザンからなる着色防止剤が添加された比較例2のサンプル液とでは1日経過時点で、それぞれ着色が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が添加された実施例1のサンプル液では、14日経過しても無色の状態が維持されていた。
【0041】
また、ハイドロキノンからなる重合禁止剤含む実施例2、比較例3、比較例4及び比較例8のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例8のサンプル液では4日経過時点、トリフェニルホスフィンからなる着色防止剤が添加された比較例3のサンプル液と、1,1,1,3,3,3−へキサメチルジシラザンからなる着色防止剤が添加された比較例4のサンプル液とでは1日経過時点で、それぞれ着色が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が添加された実施例2のサンプル液では、4日経過しても無色の状態が維持されていた。
【0042】
更に、t−ブチルカテコールからなる重合禁止剤含む実施例3、比較例5、比較例6及び比較例9のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例9のサンプル液と、トリフェニルホスフィンからなる着色防止剤が添加された比較例5のサンプル液と、1,1,1,3,3,3−へキサメチルジシラザンからなる着色防止剤が添加された比較例6のサンプル液とでは1日経過時点で、それぞれ初期の色相からより濃い色相への変化が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が添加された実施例2のサンプル液では、8日経過しても初期の色相が維持されていた。
【0043】
(実施例4〜9及び比較例10〜12)
表2に示すように、重合性単量体であるアクリル酸2−エチルヘキシルに対し、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン及びt−ブチルカテコールの内の何れかからなる重合禁止剤1質量%と、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤1質量%又は0.1質量%とを外配で添加して溶解させ、実施例4〜9のサンプル液を得た。また、重合性単量体であるアクリル酸2−エチルヘキシルに対し、着色防止剤を添加することなく、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン及びt−ブチルカテコールの内の何れかからなるフェノール系重合禁止剤1質量%のみを外配で添加して溶解させ、比較例10〜12のサンプル液を得た。次いで、これらのサンプル液をそれぞれスクリュー管に15g計り採り、これらのサンプル液が収容されたスクリュー管を70℃に設定されたオーブン中で加熱し、加熱状態を維持したまま、28日間に渡って、サンプル液の色相変化を目視にて観察した。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すとおり、重合性単量体であるアクリル酸2−エチルヘキシルに、p−メトキシフェノールからなる重合禁止剤が添加された実施例4、実施例5及び比較例10のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例10のサンプル液では14日経過時点で着色が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が0.1質量%添加された実施例5のサンプル液では14日経過しても無色の状態が維持されており、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が1質量%添加された実施例4のサンプル液では28日経過しても無色の状態が維持されていた。
【0046】
また、重合性単量体であるアクリル酸2−エチルヘキシルに、ハイドロキノンからなる重合禁止剤が添加された実施例6、実施例7及び比較例11のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例11のサンプル液では8日経過時点で着色が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が0.1質量%添加された実施例7のサンプル液と、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が1質量%添加された実施例6のサンプル液とでは8日経過しても無色の状態が維持されていた。
【0047】
更に、重合性単量体であるアクリル酸2−エチルヘキシルに、t−ブチルカテコールからなる重合禁止剤が添加された実施例8、実施例9及び比較例12のサンプル液の加熱下における色相変化を比較すると、着色防止剤が添加されてない比較例12のサンプル液では4日経過時点で着色が確認されたのに対し、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が0.1質量%添加された実施例9のサンプル液では同じく4日経過時点で着色が確認されたものの、14日経過時点の色相は比較例12のサンプル液よりも薄く、トリフェニルシラノールからなる着色防止剤が1質量%添加された実施例8のサンプル液では4日経過しても無色の状態が維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、高い透明性や色相安定性を必要とする製品、例えば、車両用透明部材、透明シート用部材、レンズ、プリズム、光ディスク、シート等の光学機器部材、半導体用部材、電子材料、粘着剤、接着剤、高吸水性樹脂、インク、塗料、繊維といった製品の材料又はその製造に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に添加して使用する、シラノール化合物からなる着色防止剤。
【請求項2】
前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加して使用する、請求項1に記載の着色防止剤。
【請求項3】
前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である請求項1又は2に記載の着色防止剤。
【請求項4】
前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である請求項1〜3の何れか一項に記載の着色防止剤。
【請求項5】
前記フェノール系重合禁止剤が、ハイドロキノン、メトキシフェノール及びターシャリーブチルカテコールからなる群より選ばれた少なくとも一種のフェノール系重合禁止剤である請求項4に記載の着色防止剤。
【請求項6】
前記重合性単量体が、アクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種の重合性単量体である請求項1〜5の何れか一項に記載の着色防止剤。
【請求項7】
重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物に対して、シラノール化合物からなる着色防止剤を添加することにより、前記酸化防止剤又は重合禁止剤に起因する前記重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体の着色を防止する、着色防止方法。
【請求項8】
前記シラノール化合物からなる着色防止剤を、前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加する請求項7に記載の着色防止方法。
【請求項9】
前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である請求項7又は8に記載の着色防止方法。
【請求項10】
前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である請求項7〜9の何れか一項に記載の着色防止方法。
【請求項11】
重合性単量体又はその部分重合体若しくは重合体と酸化防止剤又は重合禁止剤とからなる配合物であって、更に着色防止剤としてシラノール化合物が添加されている配合物。
【請求項12】
前記シラノール化合物が、前記酸化防止剤又は重合禁止剤100質量部に対して外配で1〜200質量部添加されている請求項11に記載の配合物。
【請求項13】
前記シラノール化合物が、トリフェニルシラノール及びジフェニルシランジオールからなる群より選ばれた少なくとも一種のシラノール化合物である請求項11又は12に記載の配合物。
【請求項14】
前記重合禁止剤が、フェノール系重合禁止剤である請求項11〜13の何れか一項に記載の配合物。

【公開番号】特開2013−35989(P2013−35989A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175005(P2011−175005)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000195616)精工化学株式会社 (28)
【Fターム(参考)】