説明

着色防止性の洗濯洗剤組成物

本発明は、着色された繊維製品を洗うために洗剤を使用する際の洗剤組成物の着色保護性能を改善せんとするものである。この課題は、カルボキシルを有するトリアジン誘導体を該組成物中に添加することにより本質的に達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品洗浄時に色移り抑制性活性成分としてのカルボキシル化トリアジン誘導体の使用、および該化合物を含有する洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤およびビルダー材料のような洗浄プロセスに不可欠な構成成分に加えて、洗剤は、通常、用語「洗浄アジュバント」で結びつけられ種々の活性成分群(例えば、発泡調整剤、グレーイング抑制剤、漂白剤、漂白活性剤および酵素)を含み得る他の成分を含有する。このような補助物質も、染色された繊維製品が洗った後に変化した色調効果を有することを防ぐことを意図された物質に含まれる。洗浄された、即ち、きれいになった繊維製品におけるこの色調効果の変化は、第一に、洗浄プロセスによって繊維製品から染料が除去される事実(「退色」)に基づき得るものであって、第二に、異なる色のついた繊維製品から染料が溶け出して繊維製品上に堆積し得る事実(「変色」)に基づき得る。また、未染色物を着色物と一緒に洗う場合、変色の局面は、未染色品にも関係し得る。通常の界面活性剤含有水系を用いる処理によって繊維製品から汚れを除去する際の、これらの所望されない副作用を避けるために、洗剤は、(特にそれらが色のついた繊維製品を洗うための所謂色物洗剤または色物洗浄用洗剤として意図される場合)、繊維製品からの染料の放出を防ぐべき、または少なくとも洗液中に存在する溶け出した染料の繊維製品上への堆積を防ぐべき活性成分を含有する。従来使用されているポリマーの多くは、染色された繊維から染料を大きく引きつけるような染料に対して高い親和性を有し、その結果、より大きな色の損失が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今般、驚くべきことに、特定のカルボキシル化トリアジン誘導体を洗剤に使用する場合、それらが予想外に高い色調移動抑制をもたらすことが分かった。繊維製品から洗い落とされた染料による白色または異なる色のついた繊維製品の変色は、特に顕著に防止される。以下に定義されるトリアジン誘導体は、洗浄の間に繊維製品に吸収され、おそらくそれらのカルボン酸基含量のために、洗浄液中に存在する染料分子に対する忌避作用を有すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の主題は、一般式IまたはII:
T(NH−Ar(COM)Hal (I)
X−NH−CHCH−(NY−CHCH−)NH−X (II)
〔式中、
Tは1,3,5−トリアジニル基を表し、
Arはフェニル基を表し、
MはH,Na,LiまたはKを表し、
HalはCl,BrまたはIを表し、
aは1,2または3を表し、
bは1を表しcは2を表すか、またはbは2を表しcは1を表し、
XはT(NH−Ar(COM)Halc−1を表し、
YはHまたはXを表し、
およびnは0〜50の数を表す。〕
で示されるトリアジン誘導体の、特に界面活性剤を含有する、水溶液中で一緒に洗う際の、染色繊維製品から未染色繊維製品または異なった色調の染色繊維製品へのテキスタイル染料の移行を抑制するための使用である。
【0005】
本発明の別の主題は、上記一般式IまたはIIで示されるトリアジン誘導体の形態の色移り抑制剤ならびにこの成分に適合性の通常の構成成分を含有する色調保護洗剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
一般式Iで示されるトリアジン誘導体は、2,4,6−トリハロ1,3,5−トリアジンと1または2当量のアミノアリール化合物との反応によって得られ、アミノアリール化合物のアリール基は少なくとも1つのカルボキシル置換基を有する。好ましくは、1〜3個のカルボン酸および/またはカルボン酸塩の置換基を有するベンゼン単位である。使用し得るアミノアリール化合物としては、例えば、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、3−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸、2−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、5−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、6−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸および2−アミノ−1,3,5−ベンゼントリカルボン酸が挙げられ、ここで、カルボン酸基は塩の形態で存在していてもよい。上記アミノアリール化合物の混合物を使用してもよい。
【0007】
式IIで示される化合物(ここで、n=0)は、2当量のトリアジン基上に1または2個のハロゲンを有する式Iで示される化合物を、1当量のエチレンジアミンと反応させることによって得られる。エチレンジアミンに代えて、オリゴエチレンイミンおよび/またはポリエチレンイミンを使用してもよく、ここで、更に1当量の式Iで示される化合物をオリゴエチレンイミンまたはポリエチレンイミン上の内部位置における各N原子のために使用することが好ましい。好適なオリゴエチレンイミンおよび/またはポリエチレンイミンには、式:
NH−CHCH−(NH−CHCHNH
〔式中、nは1〜30、特に2〜20の数である。〕
で示されるものが含まれ、ここで、様々なオリゴマー化度および/または重合度のオリゴエチレンイミンおよび/またはポリエチレンイミンの混合物を使用してもよく、この場合、nは平均値としての非整数値であると推測される。
【0008】
様々なアミノアリール化合物を同時に使用すると、および/または、様々なオリゴエチレンイミンおよび/またはポリエチレンイミンを同時に使用すると、上記合成法で式IまたはIIで示される化合物が容易に得られ、ここで、各変数a,b,c,n,XおよびYは必ずしも同じではない。
【0009】
本発明の洗剤は、好ましくは0.05wt%〜2wt%、特に0.2wt%〜1wt%の一般式Iおよび/またはIIに示される色移り抑制性化合物を含有する。ここで、「および/または」の文言は、上記式のうちの1つに対応する化合物を併用できることも明らかにしようとしたものである。
【0010】
一般式IまたはIIで示される化合物は、上記の色調一貫性の二局面に貢献する。即ち、これらは変色および退色の両方を低減する。しかしながら、特に白色繊維製品を洗う場合、変色防止効果は最も顕著である。したがって、本発明の別の主題は、繊維製品を水溶液、特に界面活性剤含有水溶液中で洗う場合、該繊維製品の色効果が変化するのを避けるための、対応する化合物の使用である。該色効果の変化は、如何なる場合も、汚れた繊維製品ときれいになった繊維製品との間の違いではなく、洗浄操作前後のきれいな繊維製品の間の違いを意味するとすべきである。
【0011】
本発明の別の主題は、染色された繊維製品を界面活性剤含有水溶液中で洗う方法であって、界面活性剤と一般式Iおよび/またはIIで示される化合物を含有する水溶液を使用することを特徴とする方法である。このような方法においては、白色および/または未染色の繊維製品を変色させることなく、白色または未染色の繊維製品を染色された繊維製品と一緒に洗うこともできる。
【0012】
本発明の洗剤は、式IまたはIIで示される化合物に加えて、既知の染料移動抑制剤を好ましくは0.1重量%〜2重量%、とりわけ0.2重量%〜1重量%含有する。本発明の好ましい一態様においては、染料移動抑制剤は、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニリピリジン−N−オキシドのポリマーまたはそれらのコポリマーである。以下のものを使用することもできる:欧州特許出願EP0262897により知られる例えば分子量15000〜50000のポリビニルピロリドン、国際特許出願WO95/06098により知られる分子量が1000000を越える(とりわけ1500000〜4000000)ポリビニルピロリドン、独国特許出願DE2814287若しくはDE3803630または国際特許出願WO94/10281、WO94/26796、WO95/03388およびWO95/03382により知られるN−ビニルイミダゾール/N−ビニルピロリドンコポリマー、独国特許出願DE2814329により知られるポリビニルオキサゾリドン、欧州特許出願EP610846により知られるビニルモノマーおよびカルボン酸アミドに基づくコポリマー、国際特許出願WO95/09194により知られるピロリドン基含有ポリエステルおよびポリアミド、国際特許出願WO94/29422により知られるグラフトポリアミドアミンおよびポリエチレンイミン、独国特許出願DE4328254により知られる第二級アミンに由来するアミド基含有ポリマー、国際特許出願WO94/02579または欧州特許出願EP0135217により知られるポリアミン−N−オキシドポリマー、欧州特許出願EP0584738により知られるポリビニルアルコール、並びに欧州特許出願EP0584709により知られるアクリルアミドアルケニルスルホン酸に基づくコポリマー。しかし、ペルオキシダーゼと過酸化水素および/または水中で過酸化水素を生成する物質とから成る酵素系(例えば国際特許出願WO92/18687およびWO91/05839により知られる)を使用してもよい。この場合、ペルオキシダーゼ用のメディエーター化合物、例えば国際特許出願WO96/10079により知られるアセトシリンゴン、国際特許出願WO96/12845により知られるフェノール誘導体、または国際特許出願WO96/12846により知られるフェノチアジン若しくはフェノキサジンを加えることが好ましいが、前記色移動抑制活性物質ポリマーを加えてもよい。本発明の洗剤中に使用するポリビニルピロリドンは、好ましくは10000〜60000、とりわけ25000〜50000の平均分子量を有する。コポリマーの場合は、5000〜50000、とりわけ10000〜20000の平均分子量を有する、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとのモル比5:1ないし1:1のコポリマーが好ましい。
【0013】
本発明に従って使用する活性物質に加えて、本発明の洗剤(粉末状固体として、後に圧縮された粒子として、または均質溶液若しくは懸濁液として存在し得る)は原則的に、そのような洗剤において既知の通常の任意成分も含有してよい。本発明の洗剤は、とりわけ、ビルダー物質、界面活性剤、有機および/または無機の過酸素化合物をベースとする漂白剤、漂白活性剤、水混和性有機溶媒、酵素、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調節剤、および他の助剤、例えば蛍光増白剤、グレーイング抑制剤、発泡調節剤、並びに着色剤および香料を含有し得る。
【0014】
本発明の洗剤は、1種またはそれ以上の界面活性剤を含有し得、特にアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、それらの混合物、並びにカチオン性、双性イオン性および両性界面活性剤が挙げられ得る。
【0015】
適当なノニオン性界面活性剤はとりわけ、アルキルグリコシド、並びにアルキルグリコシドまたは直鎖若しくは分枝状アルコールのエトキシル化および/またはプロポキシル化物(アルキル部分の炭素数12〜18、アルキルエーテル基数3〜12、好ましくは4〜10)である。N-アルキルアミン、ビシナルジオール、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミド(アルキル部分に関しては前記長鎖アルコール誘導体に対応する)、およびアルキルフェノール(アルキル基の炭素数5〜12)の、対応するエトキシル化および/またはプロポキシル化物を使用することもできる。
【0016】
好ましいノニオン性界面活性剤は、アルコキシル化(好ましくはエトキシル化)した特に第一級のアルコールであり、これは好ましくは炭素数8〜18のアルコールと、アルコール1モル当たりエチレンオキシド(EO)平均1〜12モルから成り、アルコール残基は直鎖若しくは好ましくは2−メチル分枝状であり得、および/または通常のオキソアルコール残基におけるように直鎖およびメチル分枝基を混合して有し得る。しかし、天然物由来のC12−18アルコール(例えばヤシ油アルコール、パーム油アルコール、獣脂アルコールまたはオレイルアルコール)の直鎖基と、アルコール1モル当たり平均2〜8EOとを有するアルコールエトキシレートが特に好ましい。好ましいエトキシル化アルコールは例えば、C12−14アルコール+3EOまたは4EO、C9−11アルコール+7EO、C13−15アルコール+3EO、5EO、7EOまたは8EO、C12−18アルコール+3EO、5EOまたは7EO、およびそれらの混合物(例えばC12−14アルコール+3EOとC12−18アルコール+7EOとの混合物)を包含する。上記エトキシル化度は、生成物によって整数または非整数であり得る統計学的平均値である。同族体分布の狭いアルコールエトキシレート(狭範囲エトキシレート、NRE)が好ましい。このようなノニオン性界面活性剤に加えて、12を越えるEOを有する脂肪アルコールも使用し得る。その例は、(獣脂)脂肪アルコール+14EO、16EO、20EO、25EO、30EOまたは40EOである。機械的方法に使用する洗剤においては特に、通常非常に低発泡性の化合物を使用する。そのような化合物は好ましくは、分子中にエチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位をそれぞれ8モルまで有するC12−18アルキルポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルを包含する。しかし、低発泡性であることが知られている他のノニオン性界面活性剤、例えばC12−18アルキルポリエチレングリコール/ポリブチレングリコールエーテル(分子中にエチレンオキシド単位およびブチレンオキシド単位をそれぞれ8モルまで有する)、および末端基キャップアルキルポリアルキレングリコール混合エーテルを使用することもできる。欧州特許出願EP0300305に記載されているような、ヒドロキシル含有アルコキシル化アルコール(ヒドロキシ混合エーテルと称される)が特に好ましい。式RO(G)xで示されるアルキルグリコシドもノニオン性界面活性剤に包含される。式中、Rは第一級直鎖またはメチル分枝(とりわけ2−メチル分枝)脂肪族基(炭素数8〜22、好ましくは12〜18)であり、Gは炭素数5または6のグリコース単位(好ましくはグルコース)である。オリゴマー化度xはモノグリコシドおよびオリゴグリコシドの分布を示し、1〜10、好ましくは1.2〜1.4の数(分析的に決定された変数であり、分数値でもあり得る)である。同様に適当な界面活性剤は、式(III):
【化1】

[式中、RCOは炭素数6〜22の脂肪族アシル基であり、Rは水素、炭素数1〜4のアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、[Z]は炭素数3〜10/ヒドロキシル基数3〜10の直鎖または分枝状ポリヒドロキシアルキル基である。]
で示されるポリヒドロキシ脂肪酸アミドである。
【0017】
ポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、炭素数5または6の還元糖、とりわけグルコースから誘導することが好ましい。ポリヒドロキシ脂肪酸アミドの群は、式(IV):
【化2】

[式中、Rは炭素数7〜12の直鎖または分枝状のアルキルまたはアルケニル基であり、Rは炭素数2〜8の直鎖、分枝状若しくは環式のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rは炭素数1〜8の直鎖、分枝状若しくは環式のアルキル基またはアリール基またはオキシアルキル基、好ましくはC1−4アルキル基またはフェニル基であり、[Z]は、アルキル鎖に少なくとも2個のヒドロキシル基が置換した直鎖ポリヒドロキシアルキル基、またはそのアルコキシル化(好ましくはエトキシル化またはプロポキシル化)誘導体である。]
で示される化合物をも包含する。この場合も好ましくは、[Z]は、糖、例えばグルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノースまたはキシロースの還元的アミノ化により得られる。次いで、N−アルコキシ−置換化合物またはN−アリールオキシ−置換化合物を、例えば国際特許出願WO95/07331に従って触媒としてのアルコキシドの存在下に脂肪酸メチルエステルと反応させて、所望のポリヒドロキシ脂肪酸アミドに変換し得る。唯一のノニオン性界面活性剤として、または他のノニオン性界面活性剤(とりわけ、アルコキシル化脂肪アルコールおよび/またはアルキルグリコシド)と組み合わせて使用する他の好ましいノニオン性界面活性剤群は、脂肪酸アルキルエステル(好ましくはアルキル鎖の炭素数1〜4)、とりわけ脂肪酸メチルエステルの、アルコキシル化物、とりわけエトキシル化物またはエトキシル化/プロポキシル化物であり、これは例えば、日本国特許出願JP58/217598に記載されており、または好ましくは国際特許出願WO90/13533に記載の方法で製造する。アミンオキシド型のノニオン性界面活性剤、例えばN−ヤシ油アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシドおよびN−獣脂アルキル−N,N−ジヒドロキシエチルアミンオキシド、並びに脂肪酸アルカノールアミド型のノニオン性界面活性剤も適当である。このようなノニオン性界面活性剤の量は、好ましくはエトキシル化脂肪アルコールの量を越えず、より好ましくはその半量を越えない。他の適当な界面活性剤として、いわゆる「ジェミニ(Gemini)」界面活性剤として知られるものを使用してよい。ジェミニ界面活性剤は通常、1分子当たり2個の親水性基を有する化合物を含むと理解される。それらの基は通例、いわゆる「スペーサー」によって互いに隔てられている。スペーサーは通例、親水性基をそれらが互いに独立して機能し得るよう充分隔てる長さを有すべき炭素鎖である。ジェミニ界面活性剤は通例、臨界ミセル濃度が非常に低く、水の表面張力を著しく低下できる性質を特徴とする。ジェミニ界面活性剤は、「二量体」界面活性剤だけでなく、「三量体」界面活性剤をも包含することがある。適当なジェミニ界面活性剤の例は、独国特許出願DE4321022による硫酸化ヒドロキシ混合エーテル、または独国特許出願DE19503061による二量体アルコールビス−スルフェートおよび三量体アルコールトリス−スルフェートおよび−エーテルスルフェートである。独国特許出願DE19513391による末端基キャップした二量体および三量体混合エーテルは、とりわけその二機能および多機能によって特徴付けられる。即ち、そのような末端キャップ界面活性剤は、良好な湿潤性を示し、発泡性が低いので、機械による洗いまたは洗浄方法に使用するのに特に適当である。国際特許出願WO95/19953、WO95/19954および米国特許US3,234,258またはUS5,075,041に記載され、DAN(登録商標)の名称でシェルオイルカンパニーの市販生成物として入手し得るジェミニポリヒドロキシ脂肪アミドまたはポリポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、適当なアニオン性界面活性剤である。1〜6モルのエチレンオキシドでエトキシル化された直鎖状または分枝状C〜C21アルコール、例えば、平均3.5モルのエチレンオキシド(EO)でエトキシル化された2−メチル−分枝C〜C11アルコールまたは1〜4EOでエトキシル化されたC12〜C18脂肪アルコール、の硫酸モノエステルも適当である。
好ましいアニオン性界面活性剤は、スルホコハク酸とアルコール(好ましくは脂肪アルコール、より好ましくはエトキシル化脂肪アルコール)とのモノエステルおよび/またはジエステルである、スルホスクシネートまたはスルホコハク酸エステルとしても知られるアルキルスルホコハク酸の塩をも包含する。好ましいスルホスクシネートは、C8-18脂肪アルコール残基またはその混合物を有する。特に好ましいスルホスクシネートは、それ自体ノニオン性界面活性剤であるエトキシル化脂肪アルコールから誘導した脂肪アルコール基を有する。同族体分布の狭いエトキシル化脂肪アルコールから誘導した脂肪アルコール基を有するスルホスクシネートが、特に好ましい。アルキル(アルケニル)鎖中に好ましくは8〜18個の炭素原子を有するアルキル(アルケニル)コハク酸またはその塩を使用してもよい。他の適当なアニオン性界面活性剤は、アミノ酸の脂肪酸誘導体、例えばN-メチルタウリン(タウリド)および/またはN-メチルグリシン(サルコシド)の脂肪酸誘導体を包含する。サルコシドおよびサルコシネート、とりわけモノ若しくはポリ不飽和の高級脂肪酸のサルコシネート(例えばオレイルサルコシネート)が特に好ましい。他の適当なアニオン性界面活性剤はとりわけ石鹸である。適当な石鹸はとりわけ、飽和脂肪酸石鹸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、水素化エルカ酸およびベヘン酸の塩、並びに特に天然脂肪酸(例えばヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸または獣脂脂肪酸)から誘導した石鹸混合物を包含する。このような石鹸と共に、またはその代わりに、既知のアルケニルコハク酸塩を使用してもよい。
【0018】
アニオン性界面活性剤(石鹸を包含する)は、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩の形態で、および有機塩基(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン)との可溶性塩の形態で存在し得る。アニオン性界面活性剤は、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態であることが好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0019】
本発明の洗剤中に界面活性剤は、好ましくは5〜50重量%、とりわけ8〜30重量%の量で存在する。
【0020】
本発明の洗剤は、好ましくは少なくとも1種の水溶性および/または水不溶性有機および/または無機ビルダーを含有する。水溶性有機ビルダー材料は次のものを包含する:ポリカルボン酸、とりわけクエン酸および糖酸、モノマーおよびポリマー型のアミノポリカルボン酸、とりわけメチルグリシン二酢酸、ニトリロ三酢酸およびエチレンジアミン四酢酸、ポリアスパラギン酸、ポリホスホン酸、とりわけアミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ポリマー型のヒドロキシ化合物、例えばデキストリン、ポリマー型の(ポリ)カルボン酸、とりわけ欧州特許EP0625992および/または国際特許出願WO92/18542または欧州特許EP0232202に従って多糖またはデキストリンを酸化することにより得ることができるポリカルボキシレート、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸のポリマーおよびそれらのコポリマー(カルボン酸官能基を持たない少量の重合性物質が共重合していてもよい)。不飽和カルボン酸のホモポリマーの相対分子量は通例3000〜200000であり、コポリマーの相対分子量は2000〜200000、好ましくは30000〜120000である(遊離酸換算)。特に好ましいアクリル酸/マレイン酸コポリマーは、30000〜100000の相対分子量を持つ。市販生成物の例は、Sokalan(登録商標)CP5、CP10およびPA30(BASF)である。この種類の化合物のうち、好ましさは劣るとしても好適なものは、アクリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテル(例えばビニルメチルエーテル)、ビニルエステル、エチレン、プロピレンおよびスチレンとのコポリマーであって、酸部分が少なくとも50重量%を占めるものである。適当な水溶性有機ビルダー材料として、モノマーとして2種の不飽和酸および/またはそれらの塩と、第3のモノマーとしてビニルアルコールおよび/またはエステル化されたビニルアルコールまたは炭水化物を含むターポリマーを使用してもよい。第1の酸性モノマーおよび/またはその塩は、モノエチレン性不飽和C3−8カルボン酸、好ましくはC3−4モノカルボン酸(とりわけアクリル酸またはメタクリル酸)から誘導される。第2の酸性モノマーおよび/またはその塩はC4−8ジカルボン酸(マレイン酸が特に好ましい)の誘導体、および/または2位がアルキル基またはアリール基で置換されたアリルスルホン酸の誘導体であり得る。このようなポリマーはとりわけ、独国特許DE4221381および独国特許出願DE4300772に記載されている方法で製造することができ、通例1000〜200000の相対分子量を持つ。その他の好ましいコポリマーは、独国特許出願DE4303320およびDE4417734に記載されているコポリマーであって、好ましくはアクロレインとアクリル酸/アクリル酸塩、および/または酢酸ビニルをモノマーとして含有するものである。特に液体洗剤の製造には、有機ビルダー材料を水溶液の形態、好ましくは30〜50重量%水溶液の形態で使用し得る。上述の酸はすべて、通例それらの水溶性塩、とりわけアルカリ金属塩の形態で使用する。
【0021】
所望により、この種の有機ビルダー材料は40重量%までの量、とりわけ25重量%までの量、好ましくは1〜8重量%の量で存在し得る。ペースト状または液状の、特に水性の、本発明の洗剤には、上述の上限に近い量を使用することが好ましい。
【0022】
適当な水溶性無機ビルダー材料はとりわけ、アルカリ金属シリケート、アルカリ金属カーボネートおよびアルカリ金属ホスフェートで、アルカリ性、中性または酸性ナトリウム塩またはカリウム塩の形態で存在し得るものを包含する。その例は、リン酸三ナトリウム、二リン酸四ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、いわゆる「ヘキサメタリン酸ナトリウム」、リン酸三ナトリウムオリゴマー(オリゴマー化度5〜1000、とりわけ5〜50)、並びに対応するカリウム塩および/またはナトリウムおよびカリウム塩の混合物である。水不溶性水分散性無機ビルダー材料は、とりわけ、結晶または非晶のアルカリ金属アルミノシリケートで、これを50重量%まで、好ましくは40重量%以下の量で、液体組成物中ではとりわけ1〜5重量%の量で使用する。そのような無機ビルダーのうち、洗剤級の結晶アルミノケイ酸ナトリウム、とりわけゼオライトA、P、および場合によりXを、単独で、または混合物として(例えばゼオライトAおよびXの共結晶物(Vegobond(登録商標)AX、Condea Augusta S.p.A.の製品)として)使用することが好ましい。固体粒状洗剤においては、上記範囲の上限に近い量を使用することが好ましい。適当なアルミノシリケートにおいては、とりわけ30μmを越える大きさの粒子は存在せず、好ましくは10μmよりも小さい粒子が少なくとも80重量%を占める。そのカルシウム結合能は通例、100〜200mgCaO/gである(独国特許DE2412837に従って測定し得る)。
【0023】
上記アルミノシリケートの代替品および/または部分的な代替品として適当なものは、結晶アルカリ金属シリケートであって、単独で、または非晶シリケートとの混合物として存在し得る。本発明の洗剤中にビルダーとして使用し得るアルカリ金属シリケートは、アルカリ金属オキシドとSiOとのモル比が好ましくは0.95よりも小さく、とりわけ1:1.1ないし1:12のものであり、非晶または結晶形態で存在し得る。好ましいアルカリ金属シリケートは、NaO:SiOモル比1:2ないし1:2.8のケイ酸ナトリウム、とりわけ非晶ケイ酸ナトリウムである。NaO:SiOのモル比が1:1.9ないし1:2.8のものは、欧州特許出願EP0425427の方法によって製造し得る。単独で、または非晶シリケートとの混合物の形態で存在し得る好ましい結晶シリケートは、式:NaSi2x+1・yHO[式中、x(いわゆるモジュラス)は1.9〜22、特に1.9〜4の数であり、yは0〜33の数であり、xは好ましくは2、3または4である。]で示される結晶層状シリケートである。上記式で示される結晶層状シリケートは、例えば欧州特許出願EP0164514に記載されている。式中、xが2または3である結晶層状シリケートが好ましい。
β−およびδ−二ケイ酸ナトリウム(NaSi・yHO)が特に好ましい。β−二ケイ酸ナトリウムは、例えば、国際特許出願WO91/08171に記載の方法によって得られる。モジュラスが1.9〜3.2であるδ−ケイ酸ナトリウムは、日本国特許出願JP04/238809およびJP04/260610に従って調製し得る。xが1.9〜2.1である上記式で示される、実質的に無水の結晶アルカリ金属シリケート(欧州特許出願EP0548599、EP0502325およびEP0452428に記載のように調製できる、非晶アルカリ金属シリケートから調製したもの)を本発明の洗剤中に使用してもよい。本発明の洗剤の他の好ましい態様においては、欧州特許出願EP0436835の方法によって砂およびソーダから調製し得る、モジュラス2〜3の結晶層状ケイ酸ナトリウムを使用する。本発明の洗剤の他の好ましい態様においては、欧州特許EP0164552および/またはEP0293753の方法によって得られる、モジュラス1.9〜3.5の結晶ケイ酸ナトリウムを使用する。上記式(I)で示される結晶層状シリケートは、Clariant GmbHからNa−SKS、例えばNa−SKS−1(NaSi2245・xHO, kenyaite)、Na−SKS−2(NaSi1429・xHO, magadiite)、Na−SKS−3(NaSi17・xHO)またはNa−SKS−4(NaSi・xHO, makatite)の商品名で市販されている。それらのうち、特に適当なものは、Na−SKS−5 (α−NaSi)、Na−SKS−7(β−NaSi, natrosilite)、Na−SKS−9(NaHSi・3HO)、Na−SKS−10(NaHSi・3HO, kanemite)、Na−SKS−11(t−NaSi)およびNa−SKS−13(NaHSi)を包含し、Na−SKS−6(δ−NaSi)が特に重要である。結晶層状シリケートについての概要は、例えば、“Hoechst High Chem Magazin 14/1993”第33〜38頁および“Seifen−Oele−Fette−Wachse, Vol. 116, No. 20/1990”第805〜808頁に記載されている。本発明の洗剤の好ましい一態様においては、結晶層状シリケートおよびシトレートの顆粒状配合物、結晶層状シリケートおよび上記ポリカルボン酸(コ)ポリマーの顆粒状配合物(例えば独国特許出願DE19819187に記載されている)、またはアルカリ金属シリケートおよびカルカリ金属カーボネートの顆粒状配合物(例えば国際特許出願WO95/22592に記載されているか、または例えばNabion(登録商標)15として市販されている)を使用する。
【0024】
本発明の洗剤中にビルダー材料は、好ましくは75重量%まで、とりわけ5〜50重量%の量で存在する。
【0025】
本発明の洗剤に適当な過酸素化合物は、特に有機過酸、および/または有機酸の過酸塩、例えば、フタルイミド過カプロン酸、過安息香酸、またはジ過ドデカン二酸塩、過酸化水素、および洗浄条件下に過酸化水素を放出する無機塩、例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩、過ケイ酸塩および/または過硫酸塩(例えばCaroate)を包含する。固体の過酸素化合物を用いる場合は、それを粉末または顆粒(原則的に既知の方法でカプセル化し得る)の形態で使用し得る。本発明の洗剤が過酸素化合物を含有する場合、過酸素化合物は、好ましくは50重量%まで、より好ましくは5〜30重量%の量で存在する。既知の漂白安定剤、例えばホスホネート、ボレートおよび/またはメタボレートおよびメタシリケート並びにマグネシウム塩(例えば硫酸マグネシウム)を少量加えることが有利であり得る。
【0026】
使用し得る漂白活性剤は、過加水分解条件下に、炭素数好ましくは1〜10(より好ましくは2〜4)の脂肪族パーオキソカルボン酸、および/または置換若しくは不置換過安息香酸を生成する化合物である。上記炭素数のO−および/またはN−アシル基、および/または置換若しくは不置換ベンゾイル基を有する物質が適当である。好ましい漂白活性剤は、ポリアシル化アルキレンジアミン、とりわけテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、とりわけ1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコールウリル、とりわけテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、N−アシルイミド、とりわけN−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホネート、とりわけn−ノナノイルまたはイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n−またはイソ−NOBS)、無水カルボン酸、とりわけ無水フタル酸、アシル化多価アルコール、とりわけトリアセチン、エチレングリコールジアセテート、2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、エノールエステル、アセチル化ソルビトールおよびマンニトール(独国特許出願DE19616693およびDE19616767により知られる)および/またはそれらの混合物(SORMAN)(欧州特許出願EP0525239に記載されている)、アシル化糖誘導体、とりわけペンタアセチルグルコース(PAG)、ペンタアセチルフルクトース、テトラアセチルキシロースおよびオクタアセチルラクトース、アセチル化(場合によりN−アルキル化)グルカミンおよびグルコノラクトン、および/またはN−アシル化ラクタム、例えばN−ベンゾイルカプロラクタム(国際特許出願WO94/27970、WO94/28102、WO94/28103、WO95/00626、WO95/14759およびWO95/17498により知られる)である。親水性置換アシルアセタール(独国特許出願DE19616769により知られる)およびアシルラクタム(独国特許出願DE19616770および国際特許出願WO95/14075に記載されている)を使用することも好ましい。独国特許出願DE4443177により知られる従来の漂白活性剤組み合わせを使用してもよい。そのような漂白活性剤は、とりわけ前記の過酸化水素生成漂白剤の存在下に、通常の量で、好ましくは剤全体に対して0.5〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%の量で使用し得る。しかし、本発明に必須の過カルボン酸を唯一の漂白剤として使用する場合は、漂白活性剤が存在しないことが好ましい。
【0027】
通常の漂白活性剤に加えて、またはその代わりに、欧州特許EP0446982およびEP0453003により知られるスルホンイミン、および/または漂白増強作用を有する遷移金属塩若しくは遷移金属錯体を、いわゆる「漂白触媒」として使用してもよい。
【0028】
本発明の洗剤中で使用し得る酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、プルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ、ラッカーゼおよびペルオキシダーゼ並びにそれらの混合物からのものである。真菌または細菌、例えばBacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus lentus、Streptomyces griseus、Humicola lanuginosa、Humicola insolens、Pseudomonas pseudoalcaligenes、Pseudomonas cepaciaまたはCoprinus cinereusから得られる活性酵素物質が特に適当である。酵素は、例えば欧州特許EP0564476または国際特許出願WO94/23005に記載されているように、担体材料に吸着させ、および/またはカプセル化材料中に封入して、早期の失活から保護することができる。これらは、本発明の洗剤または洗浄剤中に、好ましくは5重量%まで、より好ましくは0.2〜4重量%の量で存在する。本発明の剤がプロテアーゼを含有する場合、そのタンパク質分解活性は好ましくは約100PE/g〜約10000PE/g、とりわけ約300PE/g〜約8000PE/gである。本発明の洗剤中にいくつかの酵素を使用する場合、2種またはそれ以上の個別の酵素および/または従来のように個別に配合物とした酵素を組み合わせるか、または例えば国際特許出願WO96/00772若しくはWO96/00773により知られるように2種またはそれ以上の酵素を合わせて配合した顆粒を使用し得る。
【0029】
本発明の洗剤(特に液状またはペーストの形態である場合)中に水以外に使用し得る有機溶媒は、C1−4アルコール(とりわけメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびt−ブタノール)、C2−4ジオール(とりわけエチレングリコールおよびプロピレングリコール)およびそれらの混合物、並びに上記種類の化合物から誘導されるエーテルを包含する。このような水混和性溶媒は本発明の洗剤中に、好ましくは30重量%以下の量で、より好ましくは6〜20重量%の量で存在する。
【0030】
他の成分の混合によって自動的に調節されない望ましいpH値を達成するために、本発明の洗剤は、その系に適合し環境にも適合する酸(とりわけクエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸および/またはアジピン酸)、並びに無機酸(とりわけ硫酸)あるいは塩基(とりわけ水酸化アンモニウムまたはアルカリ金属水酸化物)を含有し得る。このようなpH調節剤は本発明の洗剤中に好ましくは20重量%以下の量で、より好ましくは1.2〜17重量%の量で存在する。
【0031】
グレーイング抑制剤の機能は、テキスタイル繊維から離れた汚れを液中に懸濁させて保つというものである。この目的に適当なものは、水溶性で通例有機のコロイド、例えばデンプン、のり、ゼラチン、セルロース若しくはデンプンのエーテルカルボン酸若しくはエーテルスルホン酸の塩、またはセルロース若しくはデンプンの酸性硫酸エステルの塩である。酸基を有する水溶性ポリアミドも適当である。上記以外のデンプン誘導体、例えばアルデヒドデンプンを使用してもよい。セルロースエーテル、例えばカルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩)、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、混合エーテル(例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルカルボキシメチルセルロース)、およびそれらの混合物を、洗剤に対して例えば0.1〜5重量%の量で使用することが好ましい。
【0032】
本発明の繊維製品用洗剤は、例えば、蛍光増白剤として、ジアミノスチルベンジスルホン酸の誘導体またはそのアルカリ金属塩を含有し得る。しかしながら、本発明の繊維製品用洗剤は、好ましくは、色物用洗剤として使用されるための蛍光増白剤を含有しない。適当な蛍光増白剤は、例えば、4,4’-ビス-(2-アニリノ-4-モルホリノ-1,3,5-トリアジニル-6-アミノ)-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸の塩、または同様の構造で、モルホリノ基の代わりにジエタノールアミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基または2-メトキシエチルアミノ基を有する化合物である。置換ジフェニルスチリル型の増白剤、例えば4,4’-ビス-(2-スルホスチリル)-ビフェニル、4,4’-ビス-(4-クロロ-3-スルホスチリル)-ビフェニルまたは4-(4-クロロスチリル)-4’-(2-スルホスチリル)-ビフェニルのアルカリ金属塩を使用してもよい。上記増白剤の混合物を使用してもよい。
【0033】
機械洗浄法に使用する場合は特に、通常の抑泡剤を本発明の洗剤に加えることが有利であり得る。適当な抑泡剤の例は、C18-24脂肪酸フラクション含量の高い天然または合成物由来の石鹸である。適当な非界面活性抑泡剤は、例えばオルガノポリシロキサンおよびそれと、微細な、場合によりシラン化したシリカとの混合物、並びにパラフィン、ワックス、微結晶ワックスおよびそれらとシラン化シリカまたはビス-脂肪酸アルキレンジアミンとの混合物である。種々の抑泡剤の混合物、例えばシリコーン、パラフィンまたはワックスの混合物を使用することも有利である。抑泡剤、とりわけシリコーンおよび/またはパラフィンを含有する抑泡剤は、顆粒状の水溶性または水分散性支持材料に固定することが好ましい。パラフィンとビスステアリルエチレンジアミンの混合物が、特に好ましい。
【0034】
固体状の本発明の洗剤の製造は、困難を伴わず、既知の方法、例えば噴霧乾燥または造粒によって行うことができ、酵素および他の熱感受性成分(例えば漂白剤)は場合により後の段階で別々に加える。高い嵩密度(とりわけ650〜950g/lの範囲)を持つ本発明の洗剤は、欧州特許EP0486592により知られる押出工程を含む方法によって製造するのが好ましい。他の好ましい製法は、欧州特許EP0642576に記載の造粒法によるものである。
【0035】
一相またはそれ以上の相を有し得、一色またはそれ以上の色を有し得る錠剤形態、とりわけ一層または二層若しくはそれ以上の層(特に二層)を有する錠剤形態の本発明の洗剤を製造するには、全ての成分(場合により一層毎)をミキサー内で混合し、その混合物を従来の錠剤プレス(例えば偏心プレスまたは回転式プレス)で圧縮力約50〜100kN(好ましくは60〜70kN)で圧縮する方法によることが好ましい。多層錠の場合は特に、少なくとも一つの層を予め圧縮することが有利であり得る。これは好ましくは5〜20kN、とりわけ10〜15kNの圧縮力で行う。このようにして、破断強さおよび曲げ強さが通例100〜200N、好ましくは150Nを越える、破断抵抗性であるが適用条件下には充分速やかに溶解する錠剤を、問題なく製造することができる。このように製造した錠剤の重量は、好ましくは10〜50g、とりわけ15〜40gである。錠剤の立体形状は任意で、円形、卵形または矩形であり得、中間的な形状であってもよい。角および端には丸みを付けることが有利である。円形錠剤の直径は好ましくは30〜40mmである。特に、主として計量装置(例えば食器洗浄機の)によって導入する矩形または立方形の錠剤の大きさは、計量装置の形状および容積に応じて決める。好ましい例示態様は、底面が(20〜30mm)×(34〜40mm)、とりわけ26×36mmまたは24×38mmである。
【0036】
通常の溶媒を含有する溶液の形態である液状および/またはペースト状の本発明の洗剤は、通例、自動ミキサーに固形物として、または溶液の形態で導入し得る成分を単に混合することによって製造する。
【実施例】
【0037】
実施例1:2,4−ビス(3−カルボキシフェニルアミノ)−6−クロロトリアジンの製造
氷とアセトン(50ml)との混合物中に懸濁させた塩化シアヌル(13.6g、0.073モル)を、3−アミノ安息香酸(20g、0.146モル)の撹拌水溶液にpH8(炭酸ナトリウム)、0℃〜5℃にて添加した。混合物を、この温度で5時間撹拌し、次いで、30℃まで加熱し、30℃にて更に16時間撹拌した。リン酸緩衝液混合物(pH6.5、2g)、次いでアセトンを添加した。無色固体沈殿物を分離した(収量49g、純度46.7%)。
【0038】
実施例2:2,4−ビス(3,5−ジカルボキシフェニルアミノ)−6−クロロトリアジンの製造
水(200mL)と氷(20g)と水酸化ナトリウムの混合物中に、5−アミノイソフタル酸(98%、20g、0.108モル)を溶解した。新たに調製した塩化シアヌル(10g、0.054モル)の氷/アセトン(約50mL)中懸濁液を、0℃〜5℃にて撹拌しながら添加し、pHを6.5に維持した。4時間後に、混合物を30℃まで加熱し、その温度で16時間、pH6.5に維持した。リン酸緩衝液混合物、次いでアセトンを添加した。無色固体沈殿物を分離した(収量57g、純度53%)。
【0039】
実施例3:N,N’−ビス−[2−クロロ(3,5−ジカルボキシフェニルアミノ)トリアジン−6−イルアミノ]−1,2−ジアミノエタンの製造
5−アミノイソフタル酸(15.4g)を、1モル当量の塩化シアヌルと0℃〜5℃にて、実施例2に記載のようにして反応させた。得られた2,4−ビス(3,5−ジカルボキシフェニルアミノ)−6−クロロトリアジンの溶液へ1,2−ジアミノエタンを添加し、反応混合物をpH8で温度30℃にて4時間撹拌した。アセトンを撹拌しながら添加し、沈降生成物を分離した(収量22.1g、純度56%)。
【0040】
実施例4:N,N’−ビス−[2−クロロ−(3−カルボキシフェニルアミノ)トリアジン−6−イルアミノ]−1,2−ジアミノエタンの製造
5−アミノイソフタル酸に代えて3−アミノ安息香酸(11.5g)を用いたこと以外は実施例3の記載と同様にして、3−アミノ安息香酸を塩化シアヌル(15.4g)と0℃〜5℃にて反応させた。得られた4,6−ジクロロ−6−(3−カルボキシフェニルアミノ)トリアジンの溶液へ1,2−ジアミノエタンを添加し、反応混合物をpH8で温度30℃〜35℃にて4時間撹拌した。アセトンを撹拌しながら添加し、沈降生成物を分離した(収量20.2g、純度59%)。
【0041】
実施例5:N−ポリ(4−クロロ−6−[3,5−ジカルボキシフェニルアミノ]トリアジンイル)ポリエチレンイミンの製造
実施例2の記載と同様にして、5−アミノイソフタル酸(10g)を塩化シアヌルと0℃〜5℃にて反応させた。エチレンイミンオリゴマー(2.9g、平均分子量432)を得られた2−(3,5−ジカルボキシフェニルアミノ)−4,6−ジクロロトリアジンの溶液へ添加し、反応混合物を35℃にて6時間撹拌した。上記の後処理を行い、生成物17.5gを得た。
【0042】
実施例6:
実施例1〜5で製造した各トリアジン誘導体を、水溶液を用いて浸漬させることによって白色綿繊維製品上に強制的に付与し、次いで白色繊維製品を染色された繊維製品と一緒に、色移り抑制剤を含有しない粉末洗剤を用いて60℃にて洗った。
【0043】
白色繊維製品は変色されず、洗い落とされた色は、完全に洗液中に残されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IまたはII:
T(NH−Ar(COM)Hal (I)
X−NH−CHCH−(NY−CHCH−)NH−X (II)
〔式中、
Tは1,3,5−トリアジニル基を表し、
Arはフェニル基を表し、
MはH,Na,LiまたはKを表し、
HalはCl,BrまたはIを表し、
aは1,2または3を表し、
bは1を表しcは2を表すか、またはbは2を表しcは1を表し、
XはT(NH−Ar(COM)Halc−1を表し、
YはHまたはXを表し、
およびnは0〜50の数を表す。〕
で示されるトリアジン誘導体としての色移り抑制剤ならびに構成物質に適合性の通常成分を含んでなる洗剤。
【請求項2】
トリアジン誘導体は一般式Iで示され、2,4,6−トリハロ−1,3,5−トリアジンと1または2当量のアミノアリール化合物との反応によって得られ、アミノアリール化合物のアリール基は少なくとも1つのカルボキシル置換基を有する、請求項1に記載の洗剤。
【請求項3】
トリアジン誘導体は一般式IIで示され、式Iによる化合物2当量と1,2−ジアミノエタンまたはオリゴエチレンイミンもしくはポリエチレンイミンとの反応によって得られる、請求項1に記載の洗剤。
【請求項4】
オリゴエチレンイミンもしくはポリエチレンイミンは、式:
NHCHCH−(NH−CHCHNH
〔式中、nは1〜30、特に2〜20の数である〕
で示される、請求項3に記載の洗剤。
【請求項5】
アミノアリール化合物は2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、3−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸、2−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、5−アミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジカルボン酸、4−アミノ−1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、5−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、6−アミノ−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸および2−アミノ−1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(そのカルボン酸基は塩の形態であってもよい)、並びにそれらの混合物から選択される、請求項2〜4のいずれかに記載の洗剤。
【請求項6】
一般式Iおよび/またはIIの色移り抑制性トリアジン誘導体を0.05wt%〜2wt%、特に0.2wt%〜1wt%含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の洗剤。
【請求項7】
ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン−N−オキシドのポリマーまたはそれらのコポリマーを更に含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の洗剤。
【請求項8】
一般式IまたはII:
T(NH−Ar(COM)Hal (I)
X−NH−CHCH−(NY−CHCH−)NH−X (II)
〔式中、
Tは1,3,5−トリアジニル基を表し、
Arはフェニル基を表し、
MはH,Na,LiまたはKを表し、
HalはCl,BrまたはIを表し、
aは1,2または3を表し、
bは1を表しcは2を表すか、またはbは2を表しcは1を表し、
XはT(NH−Ar(COM)Halc−1を表し、
YはHまたはXを表し、
およびnは0〜50の数を表す。〕
で示されるトリアジン誘導体の、特に界面活性剤を含有する、水溶液中で一緒に洗う際の、染色繊維製品から未染色繊維製品または異なった色調の染色繊維製品へのテキスタイル染料の移行を抑制するための使用。
【請求項9】
一般式IまたはII:
T(NH−Ar(COM)Hal (I)
X−NH−CHCH−(NY−CHCH−)NH−X (II)
〔式中、
Tは1,3,5−トリアジニル基を表し、
Arはフェニル基を表し、
MはH,Na,LiまたはKを表し、
HalはCl,BrまたはIを表し、
aは1,2または3を表し、
bは1を表しcは2を表すか、またはbは2を表しcは1を表し、
XはT(NH−Ar(COM)Halc−1を表し、
YはHまたはXを表し、
およびnは0〜50の数を表す。〕
で示されるトリアジン誘導体の、特に界面活性剤を含有する、水溶液中で洗う際の、染色繊維製品の色調効果における変化を抑制するための使用。
【請求項10】
界面活性剤含有水溶液中で繊維製品を洗浄する方法であって、一般式Iおよび/またはIIのトリアジン誘導体を含有する界面活性剤を含有する水溶液を使用する、方法。

【公表番号】特表2009−529593(P2009−529593A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558661(P2008−558661)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001054
【国際公開番号】WO2007/104392
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】