説明

着陸する航空機を順序付けるための方法

多くの種類の輸送手段は、それらが進行するにつれてそれらの背後の環境を乱す。その結果、2つの連続する輸送手段間の遅延は、後続の輸送手段が先導する輸送手段により引き起こされた、乱された環境によって悪影響を受ける状況を回避するために維持されなければならない。過去においては、順序付けは「先着順」で行われてきたが、これでは十分ではない。複数の輸送手段を順序付ける方法が開示され、複数の候補輸送手段の中の各候補輸送手段が、順序の中の次の順位を割り当てられる候補である。この方法は(1)前記候補輸送手段の内の1つに関する情報を受信するステップと、(2)前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するステップと、(3)前記候補輸送手段ごとにステップ(1)と(2)を繰り返すステップと、(4)前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の内の1つを選択するステップと、(5)前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸送手段を順序付ける方法に関する。本発明には特に航空機の着陸順序を確立するための応用例がある。
【背景技術】
【0002】
「後方乱気流(wake turbulence)」として知られる現象は、航空機の翼が揚力を生じさせるときに必ず形成する後流渦(wake vortices)により引き起こされる。翼の上面と底面の間の圧力差は、翼の後部に空気流の増加(roll-up)を生じさせ、翼端の下流にたなびく空気の渦巻く塊を生じさせる。渦の強さ又は強度は、主に、最も強力な渦が重い航空機により生じる場合の航空機重量の関数である。
【0003】
特に後続の航空機の質量が小さすぎる、あるいは渦の強度が大きすぎる場合に、渦の中へ飛行していくことは、後続の航空機のアンバランスを引き起こす(場合によっては後続の航空機を墜落させる)可能性がある。その結果、この潜在的に危険な状況を回避するためには、着陸する2機の連続する航空機の間の遅延を維持しなければならない。この遅延は、先導する航空機と後続の航空機の質量比に比例して広げられなければならない。
【0004】
航空機の3つのカテゴリがあり(「重い」、「大型」及び「小型」)、それらの間の安全な遅延がそれらの相対的なサイズの増分関数であると仮定すると、図1は連続する着陸の間に維持されなければならない(例えば分などの時間単位での)遅延をまとめた表を示す。全ての航空機がただ1つのカテゴリに属している場合、遅延はつねに最小となるであろう。また、到着する航空交通が、全ての「小型」航空機が最初に着陸し、次に全ての「大型」航空機が続き、最後に全ての「重い」航空機が続く3つの集合に分類される場合も、遅延は最小になるであろう。もちろん、時刻表の要件が航空交通をこのような完全に並べられた順序に編成できるようにする可能性はきわめて低い。現実には、全ての3つのカテゴリに属する航空機は無作為に互いに続き、航空管制官が直面する問題は、次に着陸を許可されるべき航空機を選ぶことである。
【0005】
着陸しようとする航空機を順序付け、着陸する航空機が安全に分けられていることを確実にするために航空管制官が現在使用している2つのシステムは、共に米国94035カリフォルニア州(California,94035,USA)、モフェットフィールド(Moffet Field)の航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration)(NASA)エイムズ研究センター(Ames Research Centre)により開発された、トラフィック管理アドバイザー(Traffic Management Advisor)(TMA)と、ファイナルアプローチスペーシングツール(Final Approach Spacing Tool(FAST)である。
【0006】
これらのシステムの両方とも、ターミナルエリア(航空交通官制サービスが飛行場に到着する、及び飛行場を離陸する航空機に提供される空域を説明するために使用される用語)に進入する際に航空交通官制機関(ATC)に(着陸要求をもって)連絡する最初に着陸しようとする航空機が最初に発着枠を割り当てられ、順序の最初に置かれる先着順(FCFS)で、着陸しようとする航空機を順序付ける。以後、着陸しようとする航空機は、それらがターミナルエリアに入り、ATCに連絡する順に順序に加えられる。安全性の制約に準拠するために、順序付けされる航空機の間には適切な間隔が適用される。しかしながら、FCFSで航空機を順序付けることは、到着する航空機が発着枠を割り当ててもらうために(通常は待機/保留スタック内の)ターミナルエリアで強制的に待機させられるため、それらの遅延の増加をもたらす最適とは言えない着陸率につながることが判明している。同様に、これは航空会社が提供するサービスの質の低下につながり、待機している航空機の燃料消費の増加ももたらす。
【発明の開示】
【0007】
本発明の第1の態様によると、複数の候補輸送手段を順序付ける方法であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、
(1)前記候補輸送手段の内の1つに関する情報を受信するステップと、
(2)前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するステップと、
(3)前記候補輸送手段のそれぞれにステップ(1)と(2)を繰り返すステップと、
(4)前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の内の1つを選択するステップと、
(5)前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるステップと、
を含む方法が提供される。
【0008】
好ましくは、複数の候補輸送手段は複数の候補航空機を含み、順序は着陸順序である。順序の中の順位を最も最近割り当てられた航空機からの候補航空機情報に関する情報を使用することによって、候補航空機のそれぞれについて値が計算でき、候補航空機の内の1機が選択され、順序の中の次の順位を割り当てられる。このようにして生成された航空機の順序は、例えば「先着順」などの、それ以外で生成された順序より最適である。
【0009】
好ましくは、前記受信される情報は、前記受信される情報が関連する候補輸送手段から受信される。このようにして、受信される情報はより最新のものになる。
【0010】
好ましくは、前記値は、前記候補輸送手段が順序の中の次の順位を割り当てられたならば、前記候補輸送手段と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段の間で、維持されなければならないであろう間隔を表す。このようにして、連続する輸送手段間の平均的な間隔は縮小される。
【0011】
好ましくは、前記値は、前記候補輸送手段が前記順序の中の次の順位を割り当てられたならば、前記候補輸送手段によって経験されるであろう遅延を表す。このようにして、前記候補輸送手段により経験される平均的な遅延が短縮される。
【0012】
本発明の第2の態様によると、複数の候補輸送手段を順序付けるための順序付け装置を操作する方法であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、
(1)前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するステップと、
(2)前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するステップと、
(3)前記候補輸送手段のそれぞれにステップ(1)と(2)を繰り返すステップと、
(4)前記起因する値に基づいて前記候補輸送手段の内の1つを選択するステップと、
(5)前記順序の中の次の順位を前記選択された候補輸送手段に割り当てるステップと、
を含む方法が提供される。
【0013】
好ましくは、前記方法は、
(6)前記選択された候補輸送手段に、前記順序の中の次の順位の詳細を送信するステップをさらに含む。
【0014】
本発明の第3の態様によると、複数の候補輸送手段を順序付けるよう動作するように構成された順序付け装置であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、
前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するための受信手段と、
前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するための計算手段と、
前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の1つを選択するための選択手段と、
前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるための割り当て手段と、
を含むデータ処理装置が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によると、複数の候補輸送手段を順序付けるよう動作するように構成された順序付け装置であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であって、
前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するよう動作するように構成された受信機と、
前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するよう動作するように構成された計算機と、
前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の内の1つを選択するよう動作するように構成されたセレクタと、
前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるように動作するように構成されたアロケータと、
を含むデータ処理装置が提供される。
【0016】
本発明の第5の態様によると、本発明の第1の態様に記載された方法ステップを実行するために、処理装置によって実行可能な命令のプログラムを伝搬する、デジタルデータキャリヤが提供される。
【0017】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して、ほんの一例としてここで説明され、類似する参照番号は類似するパーツを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図2に関して、ターミナルエリアATC203の管理下にあるターミナルエリア内の目的地の飛行場に近づく複数の航空機201が示されている。目的地の飛行場での着陸タイムスロットを要求するために、航空機201のそれぞれは前記ターミナルエリア進入時に、ターミナルエリアATC203にコンタクトしなければならない。航空機は予測不可能なやり方で、つまり無作為な順序で、前記ターミナルエリアに到着する。
【0019】
ターミナルエリアATC203内のコンピュータ205は、航空機順序付け選択プロセスを実行するために実行可能なソフトウェアの制御下で動作する。当業者により理解されるように、本発明を実現するために使用されるソフトウェアのどれか又は全ては、それがコンピュータにロードできる、あるいは適切な伝送媒体を使用してコンピュータネットワーク上でダウンロードできるように、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM又は磁気テープなどの多様な伝送及び/又は記憶媒体に入れることができる。
【0020】
図3を参照すると、コンピュータ205にロードされるソフトウェアは動的集合301内のエンティティの優先順位(E、E、E,...,E)を生じさせる(attributing)、及び/又は改訂することによって動作する。各エンティティ(E)に関連付けられているのは、リアルタイム変数[x(E),y(E)]の集合体である。ソフトウェアは、動的集合301内に記憶されるエンティティの優先順位を更新し、それらを静的集合305に移動するために最適化アルゴリズムに従って動作するスケジューラ303をさらに含む。各エンティティは前記ターミナルエリアに到着する単一の航空機を表す。航空機は、動的集合301により表される待機/保留スタック内で、着陸タイムスロットを割り当てられるのを待機する。最適化アルゴリズムを使用して、(スケジューラ303で表される)ATCは、静的集合305によって表される着陸順序の順を決定する。各エンティティに関連付けられるリアルタイム変数の例は、航空機のフライト識別番号、航空機のサイズ、及び航空機の目的地における推定到着時刻(ETA)である。
【0021】
2つの追加のリアルタイム変数IとDは、スケジューラによってアルゴリズム内で使用されるために、エンティティごとに定められる。Iは、エンティティEによって表される航空機に次の着陸枠が割り当てられるのであれば、静的集合305内の最新のエンティティにより表される航空機に対する間隔である。(これが図1に関して前述されたことを想起されたい)。Dは、エンティティEによって表される航空機に次の着陸枠が割り当てられるのであれば、航空機のETAと比較されるときのエンティティEによって表される航空機の遅延である。
【0022】
前記2つの変数IとDは、エンティティEによって表される航空機に次に使用可能な着陸タイムスロットを割り当てる関連の「費用」を表す、費用関数f(I,D)に結合される。費用関数における前記2つの変数IとDの相対的な重みは調整可能であり、2つの成分αとβの値として定義される。費用関数f(I,D)は、以下の数式[1]に完全に示されている。
【数1】

【0023】
動的集合から1つのエンティティを選択し、それを静的集合に移す(つまり、次に使用可能なタイムスロットをエンティティEによって表される航空機に割り当てる)ことの費用は、間隔Iのα乗に正比例し、遅延Dのβ乗に反比例する。低間隔及び高遅延はある特定のエンティティを選択する費用を減少させ、したがって表されている航空機の着陸タイムスロットを割り当てる費用を減少させる。航空機がタイムスロットを割り当てられるのをすでに待機しているのが長いほど、それが次に使用可能なタイムスロットを割り当てられる可能性は高くなる。しかしながら、全てのことは等しい(つまり全ての航空機は類似した遅延を有する)ため、最も短い間隔の航空機が選択されるであろう。これは、航空機のスループットを最大限にし、待機中の航空機の長い待ち行列の可能性を削減し、したがって飛行場と航空機の両方の利益になるには、最善である。
【0024】
αを増加すると、遅延Dを犠牲にして間隔Iの重みが大きくなる。通常、これは連続する航空機間に最小間隔を生じさせる。他方、βを増加すると、間隔Iを犠牲にして遅延Dの重みが大きくなり、通常、遅延の削減、したがって着陸しようとする航空機の待ち時間の短縮を生じさせる。
【0025】
好ましい実施形態では、αとβの値はα=1.0とβ=2.0に設定される。しかしながら、変化する優先順位を反映するためにα及び/又はβの値を修正できる。異なる航空機は、例えば、航空機上での緊急状況、航空機が積んでいる燃料の量、航空機の旅程の総持続期間、航空機に積載される積み荷及び/又は乗客の性質等のために、異なる優先順位を有してよい。その結果「許容できる遅延」と見なされるものは相応して変化してよい。
【0026】
さらに、他の変数及び/又はパラメータは、例えば航空機の本質的な優先順位、現在の燃料消費及び/又は航空機の燃料負荷、現在の大気の状態、天気予報等、好ましい実施形態に含まれない他の要因を説明するために、方程式[1]に追加できるであろう。これは、スケジューラによって決定の基礎として使用される費用関数によって戻される出力変数を修正するにすぎないであろう。
【0027】
好ましい実施形態では、どのエンティティを動的集合から静的集合に移す必要があるのか、したがってどの航空機に次に使用可能な着陸タイムスロットを割り当てる必要があるのかに関する決定は決定論的に下され、すなわち最低費用のエンティティが移動される。
【0028】
ここで図4を参照すると、ターミナルエリアへの進入時、近づいてくる航空機201は、着陸タイムスロットに対する要求をもって、無線通信を介してターミナルエリアATC203にコンタクトする(ステップ401)。これは、航空機の目的地での推定到着時刻(ETA)の10分前と20分前の間の、任意のときに発生すると仮定される。この初期のコンタクトメッセージは、航空機のフライト識別番号、航空機のサイズ、及び航空機のETAなどの情報を含む。コンタクトメッセージ受信時、ターミナルエリアATC203は、待機/保留スタック内で待機するという命令を含むメッセージを要求側航空機201に送り返す(ステップ403)ことによって、前記メッセージをアクノレッジする。同時に、要求側航空機201を表すエンティティがターミナルエリアATC203によって作成され、動的集合301に追加される(ステップ405)。これは、例えば、コンピュータ205に取り付けられたキーボード(又は他のこのような入力装置)を介して、コンピュータ205に関連情報を入力することによって達成される。他の実施形態では、情報は、要求側航空機とターミナルエリアATC203間で確立されるデータリンクを介して、コンピュータ205に自動的に入力されるであろう。このエンティティと関連付けられているのは、航空機によってターミナルエリアATC203に送信される情報を表すリアルタイム変数である。図4に関して前述されたプロセスは、航空機201がターミナルエリアに進入するときはいつでも繰り返される。複数の航空機201が毎分ターミナルエリアに進入し、着陸タイムスロットに対する要求をもってターミナルエリアATC203にコンタクトしてよい。この結果、いくつかのエンティティが作成され、動的集合に追加される。
【0029】
図5を参照すると、スケジューラの動作がここでさらに詳しく説明される。最初に、スケジューラの新しいセッションが初期化される(ステップ501)。スケジューラによって割り当てられる各着陸タイムスロットのために、新たなセッションが開始される。他の実施形態では、多かれ少なかれ分毎のセッションがより適している可能性があるが、好ましい実施形態ではスケジューラは毎分一度実行される。
【0030】
スケジューラは、次にターミナルエリアATC203にコンタクトした航空機を表す次のエンティティのための情報を抽出する(ステップ503)。抽出された情報とは、航空機がその初期コンタクトメッセージの中でターミナルエリアATC203に送信した情報である(図4、ステップ401)。次に、スケジューラは、現在処理されているエンティティが指定された期間、例えば30分間、動的集合で待機しているかどうかをチェックする(ステップ505)。(これが30分を超えて待機/保留スタック内で待機している航空機に相当することが理解されるであろう)。このチェックがYESであると、ターミナルエリアATC203は、それを別の飛行場にリダイレクトする(ステップ507)ためにこのエンティティによって表される航空機にコンタクトし、代表的なエンティティが動的集合から削除される。チェックがNOである場合には、スケジューラはこのエンティティの費用関数を計算し続ける(ステップ509)。費用関数の計算はさらに詳細に後述される。
【0031】
スケジューラは、次に、いま計算された費用関数が、このセッションでこれまで計算された中で最低であるかどうかをチェックする(ステップ511)。それがこれまで計算された中で最低である場合には、このエンティティは、別のエンティティの費用関数がさらに低くなるときまで、一時的に最善の選択エンティティとして分類される(ステップ513)。現在のセッションの第1のエンティティについて費用関数を計算したら、スケジューラは次に現在動的集合内にある全てのエンティティの費用関数が計算されたかどうかをチェックする(ステップ515)。このチェックの結果がNOである場合には、ステップ503から515が繰り返される。費用関数が現在動的集合内にある全てのエンティティについて計算されている場合には、結果的に最善の選択エンティティと分類されることになるエンティティは、動的集合から静的集合に移動され(ステップ517)、スケジューラは、最善の選択エンティティによって表される航空機に割り当てるための、次に使用可能な着陸タイムスロットを計算する(ステップ518)。着陸タイムスロットの計算は以下に詳細に説明される。
【0032】
最善の選択エンティティによって表される航空機に割り当てられる着陸タイムスロットを計算すると、スケジューラはこの航空機に関連付けられる遅延(つまりこの割り当てられた着陸タイムスロットとこのETAの間の差異)が、特定の期間、例えば60分より長いかどうかをチェックする。このチェックの結果がYESである場合には、ターミナルエリアATC203は、航空機を別の飛行場にリダイレクトするために航空機にコンタクトし(ステップ521)、その後スケジューラの新しいセッションが開始される。チェックの結果がNOである場合には、ターミナルエリアATC203は航空機にコンタクトし、それに割り当てられた着陸タイムスロットを航空機に知らせ(ステップ523)、この時点でスケジューラの新しいセッションが開始される。
【0033】
図6を参照すると、(ステップ509で実行される)費用関数の計算がここでさらに詳細に説明される。スケジューラは最初に、動的集合から静的集合に移動した最後のエンティティから情報を抽出する(ステップ601)。このエンティティは、着陸タイムスロットを割り当てられる最も最近の航空機を表すことが理解されるであろう。抽出された情報は、最も最近の航空機のサイズ及びそれに割り当てられる着陸タイムスロットを含む。この情報及び(ステップ503で抽出されたことが思い出されるであろう)現在処理されているエンティティによって表される航空機のサイズを使用して、スケジューラは、次に、現在処理されているエンティティによって表される航空機が次の着陸タイムスロットを割り当てられたとしたら、これらの2機の航空機の間の間隔(I)がどのようにならなければならないのかを計算する(ステップ603)。それ以外に定められた間隔も考えられるが、本実施形態では、連続する航空機間の間隔は図1の表に関して前述された間隔である。スケジューラは、次に、現在処理されているエンティティにより表される航空機に提案される、着陸タイムスロットを計算する(ステップ605)ために、最も最近の航空機に割り当てられる着陸タイムスロットにこの間隔を追加できる。それから、スケジューラは、現在処理されているエンティティにより表される航空機が、この着陸タイムスロットを割り当てられると被るであろう遅延(D)を、航空機のETAと比較することによって計算できる(ステップ607)。最後に、スケジューラは、現在処理されているエンティティの費用関数を計算する(ステップ609)ために間隔Iと遅延Dを使用できる。
【0034】
図7を参照すると、(ステップ518で実行される)着陸タイムスロットの計算が、ここでさらに詳細に説明される。スケジューラは、最初に、動的集合から静的集合に移動した最後のエンティティから情報を抽出する(ステップ701)。このエンティティは、着陸タイムスロットを割り当てられる最も最近の航空機を表すことが理解されるであろう。抽出された情報は、最も最近の航空機のサイズ及びそれに割り当てられる着陸タイムスロットを含む。この情報及びステップ703でスケジューラによって抽出された最善の選択エンティティによって表される航空機のサイズを使用して、スケジューラは次にこれらの2機の航空機の間の間隔(I)が、図1の表1に関して前記に定められた間隔に基づいてどうならなければならないのかを計算する(ステップ705)。最後に、スケジューラは、最善の選択エンティティによって表される航空機のための着陸タイムスロットを計算する(ステップ707)ために、この間隔を、最も最近の航空機に割り当てられる着陸タイムスロットに追加する。
【0035】
最善の選択エンティティのためのcst関数を計算する際に(ステップ509)、最善の選択エンティティにより表される航空機に提案される着陸タイムスロットが計算される(ステップ605)ことが理解されるであろう。したがって、代替実施形態では、この情報はコンピュータ205によって一時的に記憶され、ターミナルエリアATC203が航空機にコンタクトし、これの割り当てられる着陸タイムスロットを航空機に知らせるときに、ターミナルエリアATC203によって使用できるであろう。
【0036】
図8は「先着順」に作成される期間08:17から08:59までの着陸順序を描いている。図9は、本発明に従って計算される同じ期間の及び同一の交通パターン(同じ航空機、同じ到着順序)の着陸順序を描いている。
【0037】
図8と図9両方の表は、航空機が目的地に着陸する時刻を指す「着陸時刻」で並べられている。「フライトID」は航空機のフライト識別番号を指し、「カテゴリ」は航空機のサイズカテゴリを指し、「ATCコンタクト」は、航空機がターミナルエリアへの進入時にターミナルエリアATC203にその初期コンタクトメッセージを送信する時刻を指し、「ETA」は航空機の目的地での推定到着時刻を指し、「ATC割り当て」は、ターミナルエリアATC203が、この割り当てられる着陸タイムスロットの詳細をもって航空機にコンタクトする時刻を指し、「遅延」は航空機のETAとこれの実際の着陸時刻の時間差を指す。
【0038】
表9の陰影付き行は、先行する航空機より早くターミナルエリアATC203にコンタクトしたが、これらの先行者より遅い着陸タイムスロットを割り当てられた航空機を示す。(この一連イベントは、着陸シーケンスが「先着順」で決定されるが、ターミナルエリアATC203にコンタクトする航空機が後続の航空機より遅いETAを有するときにだけ、発生することがある。これは表8の陰影付き行により示される。)
図8を参照すると、30機の航空機が08:17と08:59の間の42分間の期間内に着陸する。それらの間の平均的な間隔は1分25秒であり、各航空機が被る平均遅延は18分44秒である。図9を参照すると、同じ42分間の期間に37機の航空機が着陸する。それらの間の平均的な間隔は、今ではたった1分10秒であり、各航空機が被る平均遅延は15分16秒に低下した。これは、目的地の収容能力の23.3%増、到着する航空機が被る平均遅延の18.5%の削減、及び連続的な航空機の着陸間の平均間隔の17.4%の削減を表す。これは、燃料消費の多大な削減、及び収容能力の増加による飛行場の収益の増加を含む、航空機を運行している航空会社にとってサービスの質の大きな改善になる。
【0039】
図10のグラフは比較をまとめている。それは、航空機が目的地に着陸する時刻と対照した、航空機が被る遅延のプロットである。正午までにほとんど全てのフライトは少なくとも30分遅延し、前記状況は最適化がないため悪化し続け、余分な航空交通量は吸収できず、待機/保留待ち行列は長くなり続けるにすぎない。対照的に、本発明に従って順序付けられるフライトが被る遅延は、一日中ほぼ一定している。一日の終わりまでに、「先着順」で順序付けられた3機の航空機は、それらが最大許容遅延(このケースでは1時間)を超える遅延を被ったために、別の目的地にルートを変更されなければならなかった。航空機が被った平均遅延は、本発明に従って順序付けられた航空機の10分未満と比較して30分を超えていた。
【0040】
前述された実施形態では、どのエンティティが動的集合から静的集合に移動されなければならないのか、したがってどの航空機に次に使用可能な着陸タイムスロットを割り当てなければならないのかに関する決定は、決定論的に下されるが、
【数2】

【数3】

【0041】
に類似する関数に基づいて確率論的に決定を下すことも可能であり、ここではNは動的集合で現在待機しているエンティティの数であり、Cはエンティティxを選択する相対的な費用であり、Pはエンティティxが選ばれる確率である。
【0042】
前記実施形態は航空機の着陸順序に関して説明されたが、本発明があらゆる輸送手段の、それらの輸送手段が進行するにつれてそれらの後部の環境を乱す状況での順序付けにも、まさに適用可能であることは明らかであろう。このような状況の一例はそれらの後に航跡を残す船舶/ボートである。
【0043】
本発明は輸送手段の順序を成功裏に最適化する。試験結果は、着陸しようとする航空機を本発明に従って順序付けると、(航空機がより頻繁に着陸できるため)飛行場の収容能力が増加し、(航空機が被る遅延が短縮されるため)それらの航空機を運行している航空会社が提供するサービスの質が改善することになることを示唆している。過去にはこれらの2つの目的は相容れないと考えられていた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】航空機の連続着陸の間に維持されなければならない遅延をまとめた表である。
【図2】目的地の飛行場に近づく航空機を描く図である。
【図3】本発明の一実施形態を実現するために使用されるソフトウェアの概略図である。
【図4】航空機順序付けプロセスの第1の段階を描くフロー図である。
【図5】航空機順序付けプロセスの残りの段階を描くフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態に従った費用関数の計算を描くフロー図である。
【図7】本発明の一実施形態に従った着陸タイムスロットの計算を描くフロー図である。
【図8】「先着順」で航空機を順序付けた結果を示す表である。
【図9】本発明の一実施形態に従って航空機を順序付けた結果を示す表である。
【図10】「先着順」で順序付けられる航空機が被る遅延と、本発明の一実施形態に従って順序付けられる航空機により被る遅延の、比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の候補輸送手段を順序付ける方法であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、該方法は、
(1)前記候補輸送手段の内の1つに関する情報を受信するステップと、
(2)前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた候補輸送手段から受信される情報と、に基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するステップと、
(3)前記候補輸送手段のそれぞれにステップ(1)と(2)を繰り返すステップと、
(4)前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の内の1つを選択するステップと、
(5)前記順序の中の前記次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記輸送手段は航空機である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記順序は前記着陸順序である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記受信される情報は、前記受信される情報が関連する前記候補輸送手段から受信される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記受信される情報は、前記情報が関連する前記候補輸送手段のサイズに関係する情報を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記値は、前記候補輸送手段が前記順序の中の次の順位を割り当てられたならば、前記候補輸送手段と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた候補輸送手段の間で、維持されなければならないであろう間隔を表す、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記値は、前記候補輸送手段が前記順序の中の次の順位を割り当てられたならば、前記候補輸送手段によって経験されるであろう遅延を表す、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数の候補輸送手段を順序付ける順序付け装置を動作する方法であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、該方法は、
(1)前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するステップと、
(2)前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するステップと、
(3)前記候補輸送手段のそれぞれにステップ(1)と(2)を繰り返すステップと、
(4)前記起因する値に基づいて前記候補輸送手段の内の1つを選択するステップと、
(5)前記順序の中の次の順位を前記選択された候補輸送手段に割り当てるステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
(6)前記選択された候補輸送手段に、前記順序の中の次の順位の詳細を送信するステップ、をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記輸送手段は航空機である、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記順序は着陸順序である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の候補輸送手段を順序付けるよう動作するように構成された順序付け装置であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であり、
前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するための受信手段と、
前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報とに基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するための計算手段と、
前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の1つを選択するための選択手段と、
前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるための割り当て手段と、
を含む、データ処理装置。
【請求項13】
複数の候補輸送手段を順序付けるよう動作するように構成された順序付け装置であって、前記複数の候補輸送手段の中のそれぞれの候補輸送手段は、順序の中の次の順位を割り当てられる候補であって、
前記候補輸送手段の内の1つに関連する情報を受信するよう動作するように構成された受信機と、
前記受信される情報と、前記順序の中の順位を最も最近割り当てられた前記候補輸送手段から受信される情報に基づいて、前記候補輸送手段に起因する値を計算するよう動作するように構成された計算機と、
前記起因する値に基づいて、前記候補輸送手段の内の1つを選択するよう動作するように構成されたセレクタと、
前記順序の中の次の順位を、前記選択された候補輸送手段に割り当てるよう動作するように構成されたアロケータと、
を含む、データ処理装置。
【請求項14】
前記輸送手段は航空機である、請求項13に記載の順序付け装置。
【請求項15】
前記順序は着陸順序である、請求項14に記載の順序付け装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法ステップを実行するために、処理装置によって実行可能な命令のプログラムを伝搬する、デジタルデータキャリヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−523874(P2006−523874A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505954(P2006−505954)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001056
【国際公開番号】WO2004/086333
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(390028587)ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー (104)
【氏名又は名称原語表記】BRITISH TELECOMMUNICATIONS PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】