説明

着香剤組成物の製造方法

【課題】香りの劣化を効果的に抑制できる着香剤組成物を得る着香剤組成物の製造方法の提供。
【解決手段】(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、組成物中の(a)成分の含有量が5〜92質量%、(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)成分/(b)成分=100/1〜1/1、(a)成分と(c)成分の質量比が、(a)成分/(c)成分=15/1〜1/15となるように混合する、着香剤組成物の製造方法。
(a)成分:アルデヒド系香料成分から選ばれる少なくとも1種
(b)成分:酸化防止剤
(c)成分:イソプロピルパルミテート、イロプロピルミリステート及びベンジルベンゾエートから選ばれる少なくとも1種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着香剤組成物、その着香剤組成物を含有する繊維処理剤、その着香剤組成物を繊維製品に処理する繊維製品の賦香方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品や化粧品、トイレタリー製品に香料を用いることは一般に行われており、品質保持の目的で香りの劣化を抑制する技術が従来種々知られている。例えば、特許文献1には、香料を澱粉とグリセリンにより粉末化する技術が開示されている。また、特許文献2には、柑橘系天然精油または柑橘系香料を吸着剤と接触させる柑橘系香料の劣化抑制方法が開示されている。さらに、特許文献3には、抗酸化性成分と遷移金属イオンを含有させることによりシトラール又はシトラールを含有する製品の劣化臭成分の生成を抑制する技術が開示され、特許文献4には、バナバ、グァバ、ウラジロガシ、キンミズヒキ、バラ科植物、ケイヒ及びチョウジから選ばれる植物の抽出物を含有させることによる香味又は香気劣化抑制剤が開示されている。
【特許文献1】特開平8−23913号公報
【特許文献2】特開2005−143370号公報
【特許文献3】特開2004−123788号公報
【特許文献4】特開2008−1727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている技術では、乾燥した製品には応用が可能だが、液体状の製品などでは溶解してしまうため、使用用途に制限がある。特許文献2に開示されている技術では、柑橘系天然精油または柑橘系香料に限定され、また、特許文献3に開示されている技術では、シトラールまたはシトラールを含有する製品に限定されているため、汎用性が低い。特許文献4に開示されている技術では、天然物を用いているために安全性が高く、少量で効果が高いが、抽出工程が煩雑であるとともに非常に高価であるという欠点がある。これらのことから、より汎用性があり、工程が簡易で安価である香りの劣化抑制技術が望まれていた。
【0004】
本発明の課題は、香りの劣化を効果的に抑制できる着香剤組成物及び繊維処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、香りの劣化抑制を鋭意検討した結果、香りの劣化にはアルデヒド系香料成分が強く関与していることが判明した。アルデヒド系香料成分は構造中にアルデヒド基を有する香料成分であり、一般的に香り立ちが強く、残香性も高いため、多くの香料に含有されている。そこで、アルデヒド系香料成分の劣化抑制を目的に酸化防止剤及び油剤を、香料に対してそれぞれ特定の比率で含有する着香剤組成物が、香りの劣化を効果的に抑制できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が5〜92質量%、(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)成分/(b)成分=100/1〜1/1、(a)成分と(c)成分の質量比が、(a)成分/(c)成分=15/1〜1/15である、着香剤組成物、この着香剤組成物を0.1〜5質量%含有する繊維処理剤、並びにこの着香剤組成物を繊維製品に処理する、繊維製品の賦香方法を提供する。
(a)成分:アルデヒド系香料成分から選ばれる少なくとも1種
(b)成分:酸化防止剤
(c)成分:油剤
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、香りの劣化を効果的に抑制した着香剤組成物、及び香りの劣化を効果的に抑制した繊維処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、アルデヒド系香料成分から選ばれる少なくとも1種である。アルデヒド系香料成分とは香料分子内にアルデヒド基を少なくとも1つ有する化合物であり、具体的には、ヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、アルデヒド C−10(デシルアルデヒド)、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、2,6−ノナジエナール、シス−4−デセナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、センテナール、ボロナール、セトナール、サリチルアルデヒド、ミラックアルデヒド、リラール、トリプラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、マイラックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール等を挙げることができる。
【0009】
これらのアルデヒド系香料成分の中では、残香性を付与する観点から、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、2,6−ノナジエナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ミラックアルデヒド、リラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、マイラックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアールが好ましく、ヘキシルシンナミックアルデヒド、マイラックアルデヒド、アニスアルデヒド、ヘリオナール、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、エチルバニリン、ヘリオトロピン及びリリアールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0010】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は酸化防止剤である。本発明の酸化防止剤は、一般に酸化防止効果が知られている化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、β−ナフトール、フェニル−α−ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、ビタミンE(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、クェルセチン等が挙げられる。これらの中では、特に、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロールが好ましい。
【0011】
[(c)成分]
本発明の(c)成分は油剤である。油剤としては、特に限定されないが、シリコーン類、パラフィン類、アルコール類、カルボン酸類、エステル類などが挙げられる。
【0012】
上記シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンなどが挙げられる。上記パラフィン類としては、流動パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0013】
上記アルコール類、カルボン酸類、エステル類としては、炭素数が6以上であることが好ましく、炭素数が100以下のものがより好ましい。具体的には、アルコール類としては、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコールなどが挙げられる。カルボン酸類としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、アジピン酸などが挙げられる。エステル類としては、上記カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、ベンジルエステルなどが挙げられる。
【0014】
本発明に用いられる油剤は、保存安定性及び配合性の点から、シリコーン類及びエステル類が好ましく、シリコーン類、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルがより好ましい。
【0015】
更に、上記シリコーン類は、25℃において10〜100万mm2/sの粘度を有する
、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンが好ましく、特に、色相の安定性の点からジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0016】
[着香剤組成物]
本発明の着香剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する。本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、良好な残香性を得る観点から、5〜92質量%であり、10〜92質量%が好ましく、20〜92質量%がより好ましく、25〜92質量%が更に好ましく、25〜91質量%が更により好ましく、25〜90質量%が特に好ましい。(a)成分と(b)成分の質量比は、香りの劣化を抑制する観点から、(a)成分/(b)成分=100/1〜1/1であり、100/1〜5/1が好ましく、50/1〜5/1がより好ましく、25/1〜5/1が更に好ましい。(a)成分と(c)成分の質量比は、香りの劣化を抑制する観点から、(a)成分/(c)成分=15/1〜1/15であり、15/1〜1/5が好ましく、15/1〜1/1がより好ましい。
【0017】
本発明の着香剤組成物は、必要に応じて、(a)成分以外の香料成分を含有することができる。
【0018】
(a)成分以外の香料成分としては、炭化水素系香料成分、アルコール系香料成分、エーテル系香料成分、ケトン系香料成分、エステル系香料成分、二トリル系香料成分、環状エーテル系香料成分、アミン系香料成分、ラクトン系香料成分、環状ケトン系香料成分等が挙げられる。
【0019】
炭化水素系香料成分としては、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、ターピネオール、ターピノレン、γ−ターピネン、オレンジペラ等が挙げられる。
【0020】
アルコール系香料成分としては、トランス−2−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノール、3−オクタノール、リナロール、ゲラニオール、β−フェニルエチルアルコール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、l−メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、p−t−ブチルシクロヘキサノール、o−t−ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、オイゲノール、ポリサントール、フェニルヘキサノール、ジヒドロミルセノール等が挙げられる。
【0021】
エーテル系香料成分としては、ネロールオキサイド、1,8−シネオール、ローズオキサイド、リメトールメントフラン、リナロールオキサイド、ブチルジメチルジヒドロピラン、セドリルメチルエーテル、メトキシシクロドデカン、1−メチル−1−メトキシシクロドデカン、アニソール、アセトアニソール、アネトール、ジヒドロアネトール、メチルオイゲノール、フェニルエチルイソアミルエーテル、β−ナフチルメチルエーテル、β−ナフチルエチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
ケトン系香料成分としては、アセトイン、ジアセチル、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、α−イオノン、β−イオノン、メチルイオノン、α−イロン、α−ダマスコン、ジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0023】
エステル系香料成分としては、ベンジルアセテート、ギ酸エチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、酢酸シンナミル、酢酸アニシル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸リナリル、酪酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸シトロネリル、イソ吉草酸ゲラニル、桂皮酸エチル、桂皮酸ベンジル、桂皮酸シンナミル、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、フルテート、シクロヘキシルサリチレート等が挙げられる。
【0024】
二トリル系香料成分、環状エーテル系香料成分、アミン系香料成分、ラクトン系香料成分、環状ケトン系香料成分、その他香料成分としては、シトロネリルニトリル、アンブロキサン、ルボフィックス、メチルアンスラニレイト、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−デカラクトン、クマリン、ジャスモノラクトン、ジャスミンラクトン、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、パーライド、アンバーコア、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
【0025】
なお、上記香料成分の名称は「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)の記載に従った。
【0026】
本発明の着香剤組成物は、更に必要に応じてカチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、溶剤、無機塩、キレート剤、染料、顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤、水等を含有することができる。
【0027】
[繊維処理剤]
本発明の繊維処理剤は、本発明の着香剤組成物を含有する。本発明の繊維処理剤中の本発明の着香剤組成物の含有量は、繊維に良好な残香性を付与する観点から、0.1〜5質量%であり、0.5〜5質量%が好ましく、1.0〜5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の繊維処理剤には、柔軟基剤等を配合することができる。柔軟基剤としては、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されていても良い総炭素数14〜26の炭化水
素基を少なくとも一つ有する3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物、あるいはシリコーン化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明の繊維処理剤中の柔軟基剤の含有量は、3〜30質量%が好ましく、4〜25質量%がより好ましく、10〜25質量%が更に好ましい。
【0030】
本発明の繊維処理剤中には、pHを調節する目的で、pH調整剤を配合することができる。pH調整剤としては、塩酸、硫酸などの無機酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリが挙げられる。
【0031】
本発明の繊維処理剤には、粘度を調整する目的で、無機あるいは有機の電解質を配合する事ができる。無機電解質としては、塩酸、硫酸又はりん酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムがより好ましい。有機電解質としてはグリコール酸、クエン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、グリコール酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウムなどがより好ましい。
【0032】
本発明の繊維処理剤には、必要に応じて本発明の効果を妨げない範囲で、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、溶剤、キレート剤、染料、顔料、抗菌剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0033】
[繊維製品の賦香方法]
本発明の繊維製品の賦香方法は、本発明の着香剤組成物を繊維製品に処理する方法である。
【0034】
本発明の着香剤組成物を繊維製品に処理する際には、本発明の着香剤組成物を繊維製品1kgに対して、0.01〜0.35gの割合で処理することが好ましく、0.05〜0.35gの割合で処理することがより好ましい。又、本発明の着香剤組成物のみで繊維製品を処理しても良いし、本発明の着香剤組成物を含有した繊維処理剤組成物を用いて処理しても良い。
【0035】
繊維製品に対する処理方法としては、洗濯の洗浄工程及び/又はすすぎ工程において本発明の着香剤組成物を水に対して、0.001〜1000ppm、好ましくは0.01〜100ppmとなるように投入する方法が挙げられる。香料成分の定着の観点から、すすぎ工程に用いるのが好ましい。また、本発明の着香剤組成物を分散させた水溶液をトリガー容器に入れ、繊維製品に直接噴霧してもよい。分散濃度としてはトリガーにより噴霧できれば特に制限されるものではないが、0.001〜5.0質量%、更に0.005〜3.0質量%、特に0.01〜1.0質量%であることが、噴霧特性の観点から好ましい。本発明の着香剤組成物は繊維製品1kgあたり好ましくは0.005〜0.3g、より好ましくは0.05〜0.1gとなる様に噴霧する。使用するトリガー式スプレー容器は、実開平4−37554号公報に開示されているような蓄圧式トリガーが、噴霧の均一性の点で特に良好である。噴霧特性としては、特に地面に垂直に置いた対象物に15cm離れた場所からスプレーしたときの液のかかる面積が100〜800cm2、好ましくは15
0〜600cm2になるトリガー式噴霧器が好ましい。さらに、本発明の着香剤組成物を
不織布などの可撓性吸収体に染み込ませ、衣類乾燥機の中に繊維製品とともに入れてもよい。本発明の着香剤組成物の含有量が、0.001〜5.0質量%、更に0.005〜3.0質量%であることが、可撓性吸収体から繊維製品へ均一付着の観点から好ましい。可撓性吸収体による繊維処理においては、本発明の着香剤組成物が繊維製品1kg当り0.1〜20.0g、好ましくは0.5〜8.0gとなる様に使用する。
【0036】
本発明の着香剤組成物は、(b)成分である酸化防止剤と(a)成分であるアルデヒド系香料成分を特定の質量比率に設定し、更に、(c)成分である油剤を併用することによって、繊維製品の処理において効率的に香りを付与することができ、更に香りの劣化を抑制することができる。又、本発明の着香剤組成物を含有する繊維処理剤は、香料成分が安定であり、配合当初の香りの変化が無く複数種の香料成分を用いた場合でもバランスの崩れ等も起こらない。特にアルデヒド系香料成分は低pHでの安定性が悪いと考えられるが、本発明の着香剤組成物は、低pHでの安定性も良い。これは、油剤と香料が何らかの相互作用を起こすことにより、(b)成分の酸化防止剤による香料の安定化効果が増大する事によって、液性や温度の影響が受けにくくなったものと推定している。従って本発明の効果は、(a)成分、(b)成分、(c)成分の質量比率や含有量の特定の範囲において発現するものと考えられる。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例で用いた配合成分を、以下にまとめて示す。
【0038】
<配合成分>
・(a)成分
(a−1):ヘキシルシンナミックアルデヒド(和光純薬工業(株)製)
(a−2):シトラール(和光純薬工業(株)製)
(a−3):ヘリオトロピン(和光純薬工業(株)製)
(a−4):表1の調合香料
【0039】
【表1】

【0040】
・(b)成分
(b−1):BHT(和光純薬工業(株)製)
(b−2):BHA(和光純薬工業(株)製)
(b−3):dl−α−トコフェロール(和光純薬工業(株)製)
・(c)成分
(c−1):ジメチルポリシロキサン(粘度50万mm2/s(25℃))
(c−2):ポリエーテル変性シリコーン(粘度4500mm2/s(25℃)、東レダウ製、製品名:FZ−2203)
(c−3):イソプロピルパルミテート(和光純薬工業(株)製)
(c−4):ベンジルベンゾエート(和光純薬工業(株)製)
(c−5):フタル酸ジエチル(和光純薬工業(株)製)
実施例1及び比較例1
表2に示す(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、表2に示す割合でガラス容器中で混合し、密閉して、50℃で均一になるまで加熱及び攪拌した。得られた着香剤組成物について、下記方法で香りの劣化を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
<香りの劣化評価方法>
着香剤組成物を40℃にて30日保存後、パネラー10人が匂いを嗅ぎ、下記基準で香りの劣化を判定し、平均点を求めた。2点以上の評価点であれば良好な状態といえる。
【0042】
(評価基準)
3点:配合直後と同等
2点:若干変化があるが許容範囲
1点:変化がある
0点:著しく変化
【0043】
【表2】

【0044】
実施例2及び比較例2
表3に示す(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、表3に示す割合でガラス容器中で混合し、密閉して、50℃で均一になるまで加熱及び攪拌した。得られた着香剤組成物について、実施例1と同様の方法で香りの劣化を評価した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例3及び比較例3
表4に示す(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、表4に示す割合でガラス容器中で混合し、密閉して、50℃で均一になるまで加熱及び攪拌した。得られた着香剤組成物について、実施例1と同様の方法で香りの劣化を評価した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
実施例4及び比較例4
表5に示す(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、表5に示す割合でガラス容器中で混合し、密閉して、50℃で均一になるまで加熱及び攪拌した。得られた着香剤組成物について、実施例1と同様の方法で香りの劣化を評価した。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
実施例5及び比較例5
表6に示す(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、表6に示す割合でガラス容器中で混合し、密閉して、50℃で均一になるまで加熱及び攪拌した。得られた着香剤組成物について、実施例1と同様の方法で香りの劣化を評価した。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
実施例6及び比較例6
特開2006−257565号公報の表4中、実施例1の液体柔軟剤組成物において、香料組成物(h−1)に替えて、上記表6中の実施例5−1又は比較例5−1の着香剤組成物を、その含有量が1.0質量%となるように用いて柔軟剤組成物を調製した。
【0053】
得られた柔軟剤組成物について、実施例1と同様の方法で香りの劣化を評価した。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を、組成物中の(a)成分の含有量が5〜92質量%、(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)成分/(b)成分=100/1〜1/1、(a)成分と(c)成分の質量比が、(a)成分/(c)成分=15/1〜1/15となるように混合する、着香剤組成物の製造方法。
(a)成分:アルデヒド系香料成分から選ばれる少なくとも1種
(b)成分:酸化防止剤
(c)成分:イソプロピルパルミテート、イロプロピルミリステート及びベンジルベンゾエートから選ばれる少なくとも1種以上
【請求項2】
(b)成分が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びトコフェロールから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の、着香剤組成物の製造方法。
【請求項3】
(a)成分が、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、2,6−ノナジエナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ミラックアルデヒド、リラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、マイラックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアールから選ばれる少なくとも1種のアルデヒド系香料成分である請求項1又は2に記載の着香剤組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で得られた着香剤組成物を0.1〜5質量%含有する繊維処理剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で得られた着香剤組成物を用いて繊維製品を処理する繊維製品の賦香方法。

【公開番号】特開2011−256392(P2011−256392A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168209(P2011−168209)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2008−203867(P2008−203867)の分割
【原出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】