説明

着香剤組成物

【課題】化学繊維を素材とする繊維製品に使用しても、香りが長期にわたって持続する着香剤組成物の提供。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有し、
(A)/(B)質量比が1/100〜9/100、(C)/(B)質量比が20/100〜120/100、(D)/(B)質量比が1/100〜25/100である着香剤組成物。
(A):香料アルコールとケイ酸とのエステル化合物
(B):下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加化合物
−Z−〔(EO)/(PO)〕−R (2)
〔式中、Rは炭化水素基、Zは−O−又は−COO−であり、R−Z−の総炭素数は2〜22である。pは2〜10、qは0〜5、Rは水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。〕
(C):シリコーン化合物
(D):カチオン性基含有高分子重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着香剤組成物に関する。より詳細には、家庭における衣類等の繊維製品の洗濯用として好適な着香剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、においに対する意識の高まりから、衣類によい香りを長く残すことが求められてきており、衣料用洗浄剤や仕上げ剤などの繊維製品処理剤を用いて残香性を付与する技術の開発が行われている。しかし、衣類に長く残る香りは、揮散性が乏しく重厚な香りの香料成分が主であり、さわやかな香りや華やかな香りを持続させることはできなかった。さらに、重厚な香りの香料成分も乾燥機やアイロンといった熱が加わる工程を経ると揮発してしまい、香りを残すことができなかった。
【0003】
香り立ちに優れ、さわやかな香りや華やかな香りを繊維製品に付与できる技術として、特許文献1及び2にはケイ酸エステル化合物を含有する繊維処理剤が開示されている。これらの技術においては、ケイ酸エステル化合物の加水分解物(アルコール性香気成分)が香料成分として用いられており、繊維製品に付着したケイ酸エステル化合物が加水分解する際に香りが発せられる。
【0004】
特許文献3にはシリコーン化合物とカチオン性の水溶性高分子化合物を特定比率にて含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−256818号公報
【特許文献2】特表2003−526644号公報
【特許文献3】再公表WO2004/025017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2記載の繊維製品処理剤組成物は、木綿を素材とする繊維製品に対して使用した場合には、香りが長期にわたって持続するが、ポリエステル、ナイロン、アクリルアミド等の化学繊維に対して使用した場合には、香りが充分に持続しない課題があった。
【0007】
本発明の課題は、化学繊維を素材とする繊維製品に使用しても、香りが長期にわたって持続する着香剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有し、
(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕が1/100〜9/100、
(C)成分と(B)成分の質量比〔(C)成分/(B)成分〕が20/100〜120/100、
(D)成分と(B)成分の質量比〔(D)成分/(B)成分〕が1/100〜25/100、
である着香剤組成物を提供する。
(A)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【0009】
【化1】


〔式中、Xは−OH、−R、−OR又は−ORであり、YはX又は−OSi(X)であり、Rは置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基、Rは香料アルコールから水酸基1個を除いた残基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−ORを少なくとも1つ有する。〕
(B)成分:一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加化合物
−Z−〔(EO)/(PO)〕−R (2)
〔式中、Rは炭化水素基であり、Zは、−O−又は−COO−であり、R−Z−の総炭素数は2〜22である。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表し、p及びqは平均付加モル数を表し、pは2〜10の数であり、qは0〜5の数である。Rは水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。〕
(C)成分:シリコーン化合物
(D)成分:カチオン性基含有高分子重合体
【発明の効果】
【0010】
本発明の着香剤組成物によれば、化学繊維を素材とする繊維製品に使用しても、長期にわたって香りを持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、上記一般式(1)で表されるケイ酸エステル化合物である。かかるケイ酸エステル化合物は、加水分解することで香料アルコール(即ち、ROH)を放出することができる。
【0012】
一般式(1)において、Xは−OH、−R、−OR又は−ORであり、YはX又は−OSi(X)である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−ORを少なくとも1つ有する。
【0013】
は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、及びベンジル基から選ばれる基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0014】
は、香料アルコールから水酸基1個を除いた残基である。香料アルコールは、「香料と調香の基礎知識、中島基貴編著、産業図書株式会社発行、2005年第4刷」に記載されるように、脂肪族アルコール、テルペン/セスキテルペン系アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、及び合成サンダルに分類される。本発明においては、香料アルコールは、特に制限されるものではないが、芳香族アルコール、合成サンダル、及びテルペン/セスキテルペン系アルコールから選ばれる1種以上が好ましく、抗菌防カビ性能を併せ持つ点でテルペン/セスキテルペン系アルコールがより好ましい。
【0015】
芳香族アルコールとしては、特に制限されるものではないが、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエチルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、シンナミックアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、チモール、カルバクロール、オイゲノール、又はイソオイゲノール等の炭素数7〜15の芳香族アルコールが挙げられ、中でも、炭素数8〜10の芳香族アルコールが好ましい。
【0016】
合成サンダルとしては、特に制限されるものではないが、サンダルマイソールコア、サンタロール、バクダノール、又はエバノールが挙げられる。
【0017】
テルペン/セスキテルペン系アルコールとしては、特に制限されるものではないが、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、アオロシメノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、ターピネン−4−オール、l−メントール、イソプレゴール、ファルネソール、又はネロリドール等が挙げられ、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、α−ターピネオール、ターピネン−4−オール、又はイソプレゴールが好ましく、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、α−ターピネオール、又はターピネン−4−オールがより好ましい。
【0018】
は、炭素数1〜6の炭化水素基を示すが、炭素数1〜3の炭化水素基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、エチル基が更に好ましい。
【0019】
上記一般式(1)においてnは平均値を示す0〜15の数であり、n=0の化合物が好適である。この場合、4個のXのうち2〜4個が−ORであり、残りが−R又は−ORである化合物が好適である。さらに、4個のXのうち3又は4個が−ORであり、残りが−R又は−ORである化合物がより好適である。
【0020】
n=0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化2】


〔式中、R及びRは前記と同じ意味を示す。〕
【0022】
一般式(1)において、nが1〜15の場合、好ましいケイ酸エステルとしては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。本願の効果をより享受できる観点から、下記式(1−3)で表される化合物が特に好ましい。
【0023】
n=1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
【化3】


〔式中、R及びRは前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数であり、Tは−OR、−OR、又は−Rを示す。ここで、Rは前記と同じ意味を示す。〕
【0025】
(B)成分との併用で本発明の効果を最も享受できる好ましい(A)成分は上記一般式(1)においてn=0の化合物であり、より好ましくは、上記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられ、特に(1−1)で表される化合物が好ましい。
【0026】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加化合物である。
【0027】
−Z−〔(EO)/(PO)〕−R (2)
【0028】
式中、Rは炭化水素基であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは直鎖のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−であり、好ましくは−O−である。R−Z−の総炭素数は2〜22であり、好ましくは3〜18、より好ましくは4〜14である。総炭素数が2以上であると(A)成分や(C)成分と共に化学繊維に吸着し易くなり、総炭素数が22以下であると(A)成分及び(C)成分と均一に混合し易くなり、香りの持続性を向上させる効果に優れる。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表し、p及びqは平均付加モル数を表し、pは2〜10の数であり、qは0〜5の数である。EO及びPOの付加形態はランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。
【0029】
着香剤組成物中での(A)成分の安定性の観点から、(B)成分はグリフィン法によって計算されるHLB10.0〜16.0が好ましく、10.5〜15.0がより好ましい。
【0030】
上記一般式(2)において、pの数が15〜100程度と大きいアルキレンオキサイド付加化合物は、当分野において親水性の乳化剤として一般的に使用されている。本発明では、pの数が少ない方が化学繊維における(A)成分由来の残香性に優れていることを予想外にも見出した。特に本発明の効果を享受できる観点から、pの数は、好ましくは4〜10、より好ましくは6〜10である。qは(B)成分の親水性と疎水性のバランス適度に調節する為に、付加されていても良いが、qは0であっても良い。
【0031】
本発明ではまた、Rの炭素数が異なるアルキレンオキサイド付加化合物を2種以上用いた方が化学繊維における(A)成分由来の残香性に優れることも見出した。炭素数の長いアルキレンオキシド付加物が(A)成分を(C)成分中に均一に分散又は可溶化させる働きをし、炭素数の短いアルキレンオキシド付加物を併用することで、(A)成分と炭素数の長いアルキレンオキシド付加物および(C)成分の混合体の親水性が高まり、水に分散させやすくしていると推定している。とりわけ、Rの炭素数の差が好ましくは4以上12以下、特に好ましくは5以上13以下であるアルキレンオキサイド付加化合物を2種以上組み合わせて用いることが好適である。なお、アルキレンオキサイド付加化合物を3種以上用いる場合、そのうち少なくとも2種の化合物について上記のR炭素数差条件が満たされていれば良い。
【0032】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、シリコーン化合物である。(C)成分としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。(A)成分の安定性、柔軟効果の観点から、中でもジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。特に、香りの持続性の観点からアミノ変性シリコーンとポリエーテル変性シリコーンを併用することが好適である。
【0033】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、HLBが0を超え7以下であるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0034】
(C)成分のHLBは、0を超え5以下が好ましく、0を超え3以下が更に好ましい。(C)成分としては、下記一般式(3)で表されるポリエーテル変性シリコーン〔以下(c1)成分という〕及び下記一般式(4)で表されるポリエーテル変性シリコーン〔以下(c2)成分という〕が挙げられる。
【0035】
【化4】


〔式中、R7aは水素原子又は1価の炭化水素基を示し、水素原子又はメチル基が好ましい。R7bは炭素数1〜20の2価炭化水素基を示し、炭素数3〜6の2価炭化水素基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。R7cは炭素数1〜3のアルキル基、水素原子又はヒドロキシ基を示し、メチル基が好ましい。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基である。fはエチレンオキシ基の平均付加モル数、gはプロピレンオキシ基の平均付加モル数、hは平均で0以上の数、iは平均で0以上の数を示し、これらの値は、25℃におけるポリエーテル変性シリコーンの粘度が、好ましくは2〜100万mm2/s、更に好ましくは50〜50万mm2/s、特に好ましくは150〜10万mm2/sとなるように選ばれるが、f、gは、それぞれ0〜60の数が好ましく、0〜35の数が更に好ましい。hは、平均で1〜500の数が好ましい。iは、平均で1〜100の数が好ましい。尚、複数個のR7a、R7b、R7c、f、g及びhは同一でも異なっていてもよい〕。
【0036】
【化5】


〔式中、R8aは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基、水素原子、ヒドロキシ基から選ばれ、特にメチル基が好ましい。R8b、R8cはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、水素原子、ヒドロキシ基から選ばれ、特にメチル基が好ましい。p、qは平均重合度であり、これらの値は25℃におけるポリエーテル変性シリコーンの粘度が、好ましくは2〜100万mm2/s、更に好ましくは50〜50万mm2/s、特に好ましくは150〜10万mm2/sとなるように選ばれ、pは10〜10000、好ましくは10〜1000であり、qは1〜1000、好ましくは3〜100である。R8dは、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R8eは、−(EO)j−(PO)k−L(Lは炭素数1〜3のアルキル基あるいは水素原子、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、j及びkはそれぞれ平均付加モル数を示し、その合計は1〜100、好ましくは2〜100、特に好ましくは2〜50である。)で表される基を示す。〕
【0037】
上記(c1)成分のHLBの値は、次のようにして測定された曇数Aから、下記式で求められる値である。
【0038】
HLB=曇数A×0.89+1.11
【0039】
<曇数の測定法>
曇数Aは公知の方法〔界面活性剤便覧、324頁〜325頁(産業図書(株) 昭和35年7月5日発行)〕に準じて、以下のようにして測定される。
【0040】
無水のポリエール変性シリコーン2.5gを秤量し、98%エタノールを加え25mlに定容(25mlメスフラスコ使用)する。次に、これを5mlホールピペットで分取し、50mlビーカーに入れ25℃の低温に保ち攪拌(マグネティックスターラー使用)しながら、2%フェノール水溶液で25mlビューレットを使用して測定する。液が混濁したところを終点とし、この滴定に要した2%フェノール水溶液のml数を曇数Aとする。
【0041】
上記(c2)成分のHLBの値は、下記式で求められる値である。
【0042】
HLB=[(EO)の質量%+(PO)の質量%]÷5
【0043】
本発明で用いられる具体的な(c1)成分としては、日本ユニカー(株)製のFZ−2203、FZ−2206、FZ−2207、FZ−2222、F1−009−01、F1−009−05、F1−009−09、F1−009−11、F1−009−13を挙げることができる。
【0044】
本発明で用いられる具体的な(c2)成分としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3772M、SH3775M、信越化学工業(株)製のKF6012、KF6016、KF6017、東芝シリコーン(株)製のTSF4445、TSF4446を挙げることができる。
【0045】
アミノ変成シリコーンとしては、25℃での動粘度が100〜20,000mm/s、アミノ当量400〜8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましい。
【0046】
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、より好ましくは200〜10,000mm/s、特に好ましくは500〜5,000mm/sである。
【0047】
また、アミノ当量は、より好ましくは600〜5,000g/mol、特に好ましくは800〜3,000g/molである。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量/1分子当りの窒素原子数で求められる。ここで重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
【0048】
アミノ変性シリコーンの具体例として、下記一般式(5)で表される化合物〔以下(c3)成分という〕が挙げられる。
【0049】
【化6】

【0050】
〔式中、R9aは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R9bは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R9cは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が上記範囲になるように選ばれる。尚、R9a、R9b、R9cはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR9bは同一でも異なっていても良い。〕
【0051】
一般式(5)の化合物において、xは10〜10,000の数が好ましく、20〜5,000の数がより好ましく、30〜3,000の数の数が更に好ましい。yは1〜1,000の数が好ましく、1〜500の数がより好ましく、1〜200の数が更に好ましい。一般式(5)の化合物の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜100,000、特に好ましくは8,000〜50,000である。
【0052】
一般式(5)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
−C−NH
−C−NH−C−NH
−C−NH−[C−NH]−C−NH
−C−NH(CH
−C−NH−C−NH(CH
−C−NH−[C−NH]−C−NH(CH
−C−N(CH
−C−N(CH)−C−N(CH
−C−N(CH)−[C−N(CH)]−C−N(CH
−C−NH−cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1〜30の数である。)
【0053】
本発明のアミノ変成シリコーンとしては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSS−3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、BY16−892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16−898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、信越化学工業(株)製のKF8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF−864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
【0054】
(c3)成分としては、信越化学工業(株)製のKF−864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のBY16−898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)がより好ましい。
【0055】
本発明の着香剤組成物において、アミノ基やポリオキシアルキレン基等の親水性の官能基を有するシリコーン化合物は、(A)成分の周りに水を誘引するよう作用し、化学繊維上における(A)成分由来の残香性の改善に寄与するものと推察される。なお、アミノ基を有するシリコーン化合物に関しては、アミノ基が(A)成分の加水分解を促進する触媒的な作用効果を呈し、(A)成分からの香料アルコールの放出に寄与するが、長期にわたって香りを持続性させる観点からは、アミノ基を有するシリコーン化合物を単独で用いるよりも、ポリオキシアルキレン基を有するシリコーン化合物と組み合わせて用いた方が、本願の効果をより享受することができる。
【0056】
本発明の(C)成分は、オイル状のものをそのまま配合しても差し支えないが、(C)成分の粒子が水中に分散した水性エマルジョンとして配合することができる。(C)成分の水性エマルジョンには、乳化剤として界面活性剤を用いることが好ましく、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン性界面活性剤、アミンオキシド、スルホベタイン、カルボベタイン等の両性界面活性剤、トリ長鎖アルキル4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤を用いることができる。
【0057】
(C)成分の水性エマルジョンにおける乳化粒子の体積平均粒径は、滑らかな風合いを得る観点から、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μm、特に好ましくは0.01〜1μmである。体積平均粒径は動的光散乱法によって測定することができる。
【0058】
また本発明で用いることができる(C)成分の水性エマルジョンとしては、上記のオイル状のものを界面活性剤等の乳化剤を用いて、各種の乳化機(ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等)により水中に分散させたものを用いても良いが、オルガノアルコキシシランとジメチルシクロポリシロキサン等を用い、水中で重合反応を行うことにより、所望の(C)成分を含むエマルジョンを調製し、これを(C)成分の水性エマルジョンとしてそのまま用いても良い。
【0059】
<(D)成分>
(D)成分はカチオン性基含有高分子重合体である。ここで、カチオン性基とは、水中において、水のpHによっては陽イオン性を呈し得る性質を有する官能基をいう。カチオン性基の具体例としては、1級〜3級アミノ基、その酸塩又はその4級化物が挙げられる。本発明の好ましい(D)成分の具体例は、以下の(d1)〜(d3)から選ばれる1種以上のカチオン性基含有高分子重合体である。
【0060】
以下、(d1)〜(d3)のカチオン性基含有高分子重合体について説明する。
【0061】
<カチオン性基含有高分子重合体(d1)>
(d1)は、下記一般式(6)若しくは(7)で表されるビニル単量体、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種〔以下、モノマー(d1−1)という〕を必須の構成単位とする高分子重合体である。
【0062】
【化7】

【0063】
〔式中、Rb1は水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基(好ましくはメチル基、又はエチル基)を示し、Rb2及びRb3は同一又は異なって、水素原子又は水酸基で置換されていても良い炭素数1〜4の炭化水素基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、又はヒドロキシエチル基を示す。Yはエステル基(好ましくは−COO−又は−OCO−)若しくはアミド基(好ましくは−CONH−又は−NHCO−)を示し、Zは水酸基を含んでいても良い炭素数1〜8のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基、プロピレン基、又は−CHCH(OH)−を示す。〕
【0064】
【化8】

【0065】
〔式中、Rb4及びRb5は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、Rb6は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示す。〕
【0066】
モノマー(d1−1)としては、特に制限されるものではないが、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、又はジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、若しくはそれらを酸により中和した酸中和物、若しくは4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩、又はジメチルジアリルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0067】
中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸などの有機酸が挙げられる。
【0068】
4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0069】
(d1)のカチオン性基含有高分子重合体は、上記モノマー(d1−1)を単独重合させるか、又は他の共重合可能なモノマー〔以下、モノマー(d1−2)という〕と共重合させて調製することができる。
【0070】
モノマー(d1−2)としては、以下の(i)〜(iv)から選ばれるものが好ましい。
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、スチレンスルホン酸又はその塩、スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩等のアニオン性基含有ビニル単量体
(ii)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜18)アミド等のアミド基含有非イオン性ビニル単量体
(iii)アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜14)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル等のエステル基含有非イオン性ビニル単量体
(iv)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンから選ばれる、酸素原子又は窒素原子を含有しないビニル単量体
【0071】
中でも、(iii)エステル基含有非イオン性ビニル単量体及び(iv)酸素原子又は窒素原子を含有しないビニル単量体が好ましく、(iii)エステル基含有非イオン性ビニル単量体が特に好ましい。
【0072】
(d1)のカチオン性基含有高分子重合体がモノマー(d1−1)とモノマー(d1−2)の共重合体である場合、モノマー(d1−1)の共重合量は、繊維製品への(A)成分の吸着性を高める観点から、モノマー全量に対して50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。
【0073】
また、カチオン性基含有高分子重合体(d1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜90,000である。Mwと数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、好ましくは1.0〜40、より好ましくは1.5〜35である。ここで、カチオン性基含有高分子重合体(d1)のMw、Mnは、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、(1%酢酸/エタノール):水=3:7(質量比)の混合溶媒で調製したLiBrの50mmol/L溶液を溶媒として、極性溶媒用GPCカラム「α−M(東ソー(株)製)」を2本直列して用い、ポリエチレングリコール換算の分子量により算出する。
【0074】
<カチオン性基含有高分子重合体(d2)>
(d2)は、カチオン性多糖である。カチオン性多糖の主骨格を形成する多糖としては、特に制限されるものではないが、セルロース、デンプン、デキストラン、ローカストビーンガム、グアーガム、プルラン、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、又はカードラン等が挙げられ、セルロース、デンプンが好ましい。
【0075】
本発明において、多糖にカチオン性基を導入する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、多糖と、第三アミノ又は第四アンモニウムアルキル化試薬を、20〜80℃、1〜24時間反応させて、多糖にカチオン性基を導入することができる。第三級アミノ又は第四級アンモニウムアルキル化試薬の例としては、2−ジアルキル(炭素数1〜3)アミノエチルクロライド等の第三級アミノアルキル化試薬、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシ−プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウムアルキル化試薬が挙げられる。
【0076】
本発明に用いられるカチオン性多糖は、非イオン性基やアニオン性基を有していても良い。非イオン性基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基が挙げられる。また、アニオン性基としては、例えば、カルボキシメチル基等のカルボキシアルキル(炭素数1〜5)基が挙げられる。
【0077】
多糖に非イオン性基を導入する方法としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを多糖と反応させることによって、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基を導入することができる。また、多糖にアニオン性基を導入する方法としては、例えば、クロロメチル酢酸等のアニオン化試薬を多糖と反応させることによって、カルボキメチル基を導入することができる。
【0078】
カチオン性多糖のカチオン性官能基の導入量は、カチオン性多糖の全質量に対するカチオン性官能基のアミン、その酸塩あるいは4級アンモニウム塩の窒素原子の質量割合を指標として表す。即ち、カチオン性多糖の全質量に対するカチオン性官能基のアミン、その酸塩あるいは4級アンモニウム塩の窒素原子の質量割合[N質量(%)]で表す。ここでN質量(%)は、下記のカチオン性官能基の導入量指標測定法に示す方法を用いることにより測定、算出することができる。N質量(%)は、繊維製品への(A)成分の吸着性を高める観点から、0.01〜3.0が好ましく、0.1〜2.0がより好ましい。尚、(d2)成分のカチオン性官能基の導入量指標[N質量(%)]は下記の方法により測定した。
【0079】
<カチオン性官能基の導入量指標測定法>
カチオン性多糖0.1gを精秤し、0.1質量%水溶液になる様にイオン交換水に溶解させた。このカチオン性多糖水溶液10.0gを精秤し(ag)、5倍に希釈した後にトルイジンブルーを3滴加えて、1/400Nポリビニル硫酸カリウム(PVSK)水溶液で滴定した。滴定の終点は青→紫〜赤である。滴定に要したPVSK量から、次式によりN質量(%)を求める。
【0080】
【数1】


〔式中、fは1/400N PVSKの力価を示す。〕
【0081】
測定により得られたN質量(%)を多糖に導入されたカチオン基量の指標とした。
【0082】
また、本発明に用いられるカチオン性多糖の重量平均分子量(プルラン換算)は、10,000〜15,000,000が好ましく、30,000〜12,000,000がより好ましい。ここでカチオン性多糖の重量平均分子量は下記方法で測定した。
【0083】
<重量平均分子量測定法>
ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の測定条件で測定した。
装置;東ソー(株)製HLC−8120
GPCカラム;東ソー(株)製TSKgelα−M(1本)
溶離液;ジメチルスルホキシド(50mM臭化カリウム)
流速;0.5mL/min
カラム温度;50℃
検出器;RI
試料濃度;5mg/mL
注入量;100μL
分子量換算用検量線;昭和電工製単分散プルランを使用。
試料の分子量:標準プルラン基準の相対値
【0084】
<カチオン性基含有高分子重合体(d3)>
(d3)は、ポリ[アルキレン(炭素数2〜3)イミン]であり、−(C2nNH)−[左記式中、nは2又は3]で表される炭素数2〜3のアルキレンイミン単位が直鎖状、分岐状又は網目状に重合した水溶性高分子化合物である。
【0085】
本発明において、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は、600〜100,000が好ましく、3,000〜90,000がより好ましく、4,000〜80,000が更に好ましい。
【0086】
本発明において、ポリアルキレンイミンとしては、繊維製品への(A)成分の吸着性を高める観点から、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0087】
ポリアルキレンイミンの製法は特に制限されず、公知の重合法により製造することができる。例えば、ポリエチレンイミンは、〔1〕エチレンイミンを二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸等を触媒として開環重合させる方法、〔2〕塩化エチレンとエチレンジアミンを重縮合させる方法、〔3〕オキサゾリドン−2を加熱する方法等が挙げられる。
【0088】
(D)成分は処理浴中の洗濯すすぎ水中からキャリーオーバーされる、アニオン活性剤と相互作用し、疎水性の会合体を形成すると考えており、それが本来化学繊維に付着しやすい(A)成分を効果的に吸着させていると考えている。
【0089】
[着香剤組成物]
本発明の着香剤組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有する。
【0090】
本発明の着香剤組成物中の(A)成分の含有量は、香り持続性の観点から0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が更に好ましく、0.2〜2質量%が特に好ましい。
【0091】
本発明の着香剤組成物中の(B)成分の含有量は、化学繊維における香り持続性の観点から、5〜20質量%が好ましく、8〜18質量%が好ましく、10〜16質量%が更に好ましく、11〜15質量%が特に好ましい。
【0092】
化学繊維における香り持続性の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕は1/100〜9/100であり、1.5/100〜8/100が好ましく、1.5/100〜6/100がより好ましく、2/100〜6/100が特に好ましい。
【0093】
本発明の着香剤組成物は、主柔軟基剤として(C)成分を含有する。(A)成分の安定性、香りの持続性の観点から、本発明の着香剤組成物中の(C)成分の含有量は、1〜20質量%が好ましく、3〜18質量%がより好ましく、4〜16質量%が更に好ましい。
【0094】
香りの持続性の観点から、(C)成分と(B)成分の質量比〔(C)成分/(B)成分〕は20/100〜120/100であり、20/100〜100/100が好ましく、30/100〜90/100がより好ましい。
【0095】
本発明の着香剤組成物は、香りの持続性の観点から(D)成分を含有する。香りの持続性及び(A)成分の安定性の観点から、本発明の着香剤組成物中の(D)成分の含有量は、0.3〜2質量%が好ましく、0.4〜1.8質量%がより好ましく、0.5〜1.6質量%が更に好ましい。
【0096】
(A)成分の安定性並びに(A)成分由来の香りの持続性の観点から、(D)成分と(B)成分の質量比〔(D)成分/(B)成分〕は1/100〜25/100であり、2/100〜20/100が好ましく、3/100〜15/100がより好ましく、4/100〜11/100が特に好ましい。
【0097】
香りの持続性の観点から、(D)成分と(C)成分の質量比〔(D)成分/(C)成分〕は5/100〜50/100であり、7/100〜40/100が好ましく、10/100〜30/100がより好ましく、10/100〜19/100が特に好ましい。
【0098】
本発明の着香剤組成物において、上記(A)〜(D)成分並びに以下に記載する<その他成分>以外の成分は水とし得る。安定性、柔軟性、取り扱い性の観点から、本発明の着香剤組成物中の水の含有量は、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましく、60〜80質量%が更に好ましい。
【0099】
<その他成分>
本発明の着香剤組成物は、安定性、柔軟性、取り扱い性の観点から、炭素数1〜4のアルコール〔以下(E)成分という〕を含有することが好適である。(E)成分としては、好ましくは炭素数1〜3のアルコール、より好ましくはエタノールが好適である。本発明の着香剤組成物中の(E)成分の含有量は好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは1.5〜10質量%である。
【0100】
本発明の着香剤組成物は、その他界面活性剤、その他溶剤、その他香料、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、染料、顔料、粘度調整剤、pH調整剤等を必要に応じて用いることができる。
【0101】
本発明の着香剤組成物は、安定性の観点から、20℃におけるpHを5〜8に調整することが好ましく、5.5〜7.5に調整することがより好ましい。pH調整剤としては塩酸や硫酸等の無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸などの酸剤;及び/又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましい。特に塩酸、硫酸、クエン酸から選ばれる酸と、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤を用いることが好適である。
【0102】
本発明の着香剤組成物は、化学繊維を素材とする繊維製品に使用する場合であっても、長期にわたって香りを持続させることができる。ここで、化学繊維とは、ポリエステル、ナイロン、アクリルアミド、ポリウレタン、ビニロン等を素材に含む繊維をいう。
【実施例】
【0103】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。なお、(B)成分及び(B’)成分に関しては、R−Z−の総炭素数、Zの種類、p及びqの数、Rの種類をまとめて表1に示す。
<(A)成分>
・A−1:合成例1で得られたケイ酸エステル化合物
・A−2:合成例2で得られたケイ酸エステル化合物
・A−3:合成例3で得られたケイ酸エステル化合物
・A−4:合成例4で得られたケイ酸エステル化合物
<(B)成分>
・B−1:一般式(2)中、Rが炭素数12の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが6、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−2:一般式(2)中、Rが炭素数12の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが6、qが0、Rがメチル基のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−3:一般式(2)中、Rが炭素数12の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが6、qが1、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−4:一般式(2)中、Rが炭素数12の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが10、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−5:一般式(2)中、Rが炭素数11の直鎖1級アルキル基、Zが−COO−、pが10、qが0、Rがメチル基のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−6:一般式(2)中、Rが炭素数4の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが2、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
・B−7:一般式(2)中、Rが炭素数4の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが6、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
<(B’)成分:(B)成分の比較成分>
・B’−1:一般式(2)中、Rが炭素数11の直鎖1級アルキル基、Zが−COO−、pが15、qが0、Rがメチル基のアルキレンオキサイド付加化合物
・B’−2:一般式(2)中、Rが炭素数12の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが15、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
・B’−3:一般式(2)中、Rが炭素数4の直鎖1級アルキル基、Zが−O−、pが1、qが0、Rが水素原子のアルキレンオキサイド付加化合物
<(C)成分>
・C−1:FZ−2109(東レ・ダウコーニング(株)製:ポリエーテル変性シリコーン)
・C−2:下記式(4−1)で表されるポリエーテル変性シリコーン(HLB値1)
【0104】
【化9】


[式中、p1は450〜550、q1は5〜15、j1は2〜5の数である。]
【0105】
・C−3:下記式(4−2)で表されるポリエーテル変性シリコーン(HLB値1)
【0106】
【化10】


[式中、p2は380〜480、q2は5〜15、j2は2〜5の数である。]
【0107】
・C−4:KF−864(信越化学工業(株)製:アミノ変性ジメチルポリシロキサン)
・C−5:SF8457C(東レ・ダウコーニング(株)製:アミノ変性ジメチルポリシロキサン)
・C−6:SH200−3000cs(東レ・ダウコーニング(株)製:ジメチルポリシロキサン)
<(D)成分>
・D−1:MERQUAT 280(NALCO COMPANY製:塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸(モル比)=65/35)
・D−2:ダイドールEC−004(大同化成工業(株)製:ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム)
・D−3:ジェルナーQL100(ダイセル化学工業(株)製:カチオン化セルロース)
・D−4:クラレCM−318((株)クラレ製:カチオン変性ポリビニルアルコール)
<その他成分>
・E-1:エタノール
【0108】
【表1】

【0109】
合成例1:ケイ酸エステル化合物A−1の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜120℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに4時間攪拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラゲラニルエステルを含む76.92gの黄色油状物のケイ酸エステル化合物A−1を得た。
【0110】
合成例2:ケイ酸エステル化合物A−2の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.13mol)、シス−3−ヘキセノール64.74g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118℃〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながらさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラ(シス−3−ヘキセン−1−イル)エステルを含む89.1gの淡黄色油状物のケイ酸エステル化合物A−2を得た。
【0111】
合成例3:ケイ酸エステル化合物A−3の合成
200mLの四つ口フラスコにメチルトリエトキシシラン27.24g(0.20mol)、2−フェニルエタノール87.9g(0.57mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.958mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら115℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら118〜121℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ケイ酸テトラ(2−フェニルエチル)エステルを含む114.8gの淡黄色油状物のケイ酸エステル化合物A−3を得た。
【0112】
合成例4:ケイ酸エステル化合物A−4の合成
100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン72.96gと水酸化カリウム0.24g、イオン交換水0.4mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.4mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、67.29gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。
次いで、100mLの四つ口フラスコに先のテトラエトキシシラン縮合物25.00gとゲラニオール62.95g、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら97〜121℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら118〜121℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、65.36gのポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン〔一般式(1−3)において、m=5(平均)の化合物〕を含む淡黄色油状物のケイ酸エステル化合物A−4を得た。
【0113】
実施例1〜26及び比較例1〜9
表2、3に示す成分を用い、以下に示す方法で表2、3に示す組成の着香剤組成物を調製した。得られた着香剤組成物を化学繊維(ポリエステル)に処理した際の香りの持続性を下記要領で評価した。
【0114】
<着香剤組成物の調製>
500mLのガラスビーカーに、一枚の長さが2.5cmのタービン型羽根が3枚ついた攪拌羽根を設置(攪拌羽根底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、繊維製品処理剤組成物の出来上がり質量が300gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水、(D)成分及び(E)成分を投入した。ウォーターバスで50℃まで昇温した。50±3℃の温度範囲で、500rpmで攪拌しながら、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を予め混合したプレミックス品を1分間かけて添加した。10分攪拌後、10質量%の塩化カルシウム水溶液を添加した。10分攪拌後、所定のpHにするのに必要な量の10%塩酸水溶液及び/又は10%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。5分間攪拌した後に5℃のウォーターバスで30℃まで冷却した。最後に再度pHを確認し、必要に応じて10%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整した。最後に出来上がり質量が300gになるように、イオン交換水を添加した。
【0115】
<香りの持続性の評価方法>
(1)評価用ポリエステル繊維製品の前処理
ポリエステルジャージ(ポリエステル100%)2kgを市販洗剤(花王(株)アタックマイクロ粒子)を用いて全自動洗濯機(HITACHI NW−7FY)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.0833%、水量59L、洗い9分−濯ぎ2回−脱水6分)。洗濯後、肌着を11枚づつ二槽式洗濯機(HITACHI PS−H35L)で流水濯ぎを行い、1時間経過した時点で流水を止め、排水後5分間脱水した。脱水後、恒温室(23℃、40%)にて12時間吊り干し乾燥させた。
【0116】
(2)評価用ポリエステル繊維製品への着香剤組成物の処理
20℃水道水5Lをバケツ型洗濯機(National N−BK2)に注水し、着香剤組成物を2.5g投入し、15秒撹拌した。撹拌後、上記(1)記載の手順で前処理したポリエステルジャージ300gを投入し、5分間撹拌処理した。撹拌後、二槽式洗濯機(HITACHI PS−H35L)で3分脱水し、恒温室(23℃40%)にて7日間吊り干し乾燥させた(「評価繊維」)。
比較対照として、上記と同様の手順で着香剤組成物を処理し、二槽式洗濯機で脱水した後、恒温室(23℃40%)にて24時間吊り干し乾燥させたポリエステルジャージ(「対照繊維1」)を用意した。また、着香剤組成物による処理を行わなかったポリエステルジャージ(「対照繊維2」)も用意した。
【0117】
(3)香りの持続性の評価
評価繊維、対照繊維1、並びに対照繊維2から香る香りの強さを検討し、下記評価基準にて、評価点0、1、2、3、4及び5の6段階評価で、評価した。
評価点0:評価繊維の香りの強さは対照繊維2と同等
評価点5:評価繊維の香りの強さは対照繊維1と同等
【0118】
評価は10人のパネラーの平均点を求めた。結果を表2、3に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有し、
(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕が1/100〜9/100、
(C)成分と(B)成分の質量比〔(C)成分/(B)成分〕が20/100〜120/100、
(D)成分と(B)成分の質量比〔(D)成分/(B)成分〕が1/100〜25/100、
である着香剤組成物。
(A)成分:一般式(1)で表されるケイ酸エステル化合物
【化1】


〔式中、Xは−OH、−R、−OR又は−ORであり、YはX又は−OSi(X)であり、Rは置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い総炭素数1〜22の炭化水素基、Rは香料アルコールから水酸基1個を除いた残基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−ORを少なくとも1つ有する。〕
(B)成分:下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加化合物
−Z−〔(EO)/(PO)〕−R (2)
〔式中、Rは炭化水素基であり、Zは、−O−又は−COO−であり、R−Z−の総炭素数は2〜22である。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表し、p及びqは平均付加モル数を表し、pは2〜10の数であり、qは0〜5の数である。Rは水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。〕
(C)成分:シリコーン化合物
(D)成分:カチオン性基含有高分子重合体
【請求項2】
(C)成分が、アミノ変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれるシリコーン化合物である、請求項1記載の着香剤組成物。
【請求項3】
(D)成分と(C)成分の質量比〔(D)成分/(C)成分〕が5/100〜50/100である、請求項1又は2記載の着香剤組成物。
【請求項4】
更に、下記(E)成分を0.5〜20質量%含有する、請求項1〜3の何れか1項記載の着香剤組成物。
(E)成分:炭素数1〜4のアルコール
【請求項5】
(A)成分を0.01〜10質量%、(B)成分を5〜20質量%、(C)成分を1〜20質量%、(D)成分を0.3〜2質量%及び水を40〜90質量%含有し、20℃におけるpHが5〜8である、請求項1〜4の何れか1項記載の着香剤組成物。

【公開番号】特開2012−41443(P2012−41443A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183820(P2010−183820)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】