説明

睡眠制御装置

【課題】短時間の仮眠により眠気解消や疲労回復を図るのに適した睡眠制御装置を提供すること。
【解決手段】仮眠目的に応じて車両搭乗者の睡眠状態を制御する睡眠制御装置100は、車両搭乗者の仮眠目的を決定する仮眠目的決定手段10と、車両搭乗者の睡眠段階を判定する睡眠段階判定手段11と、睡眠段階判定手段11が判定する睡眠段階に応じて車両搭乗者に所定の刺激を与える刺激付与部40と、仮眠目的決定手段10が決定した仮眠目的に基づいて覚醒条件を決定する覚醒条件決定手段12と、車両搭乗者の睡眠段階を「睡眠段階2」に維持しながら、覚醒条件が満たされた場合に、刺激付与部40により車両搭乗者を覚醒させるための刺激を与える睡眠制御手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの睡眠状態を制御するための睡眠制御装置に関し、特に、睡眠によって得られる効果を考慮しながら短時間の仮眠を制御するための睡眠制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの睡眠のリズムに合わせて環境温度を制御することで、効率的に深い睡眠をそのユーザが得られるようにする環境温度制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、非接触方式のセンサを利用して睡眠中のユーザの生理学的信号を測定し、且つ、音響、照明、温度といった睡眠環境を制御することによって、熟睡及び覚醒誘導のフィードバック制御を行う熟睡及び覚醒誘導装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−296177号公報
【特許文献2】特開2007−98138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献に記載の装置は何れも、ユーザに深い睡眠を取らせることを目的としているので、特定の行為を遂行するために、短時間の仮眠により眠気解消や疲労回復を図ることを目的とする場合には不適である。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、短時間の仮眠により眠気解消や疲労回復を図るのに適した睡眠制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明は、仮眠目的に応じてユーザの睡眠状態を制御する睡眠制御装置であって、ユーザの仮眠目的を決定する仮眠目的決定手段と、ユーザの睡眠段階を判定する睡眠段階判定手段と、前記睡眠段階判定手段が判定する睡眠段階に応じてユーザに所定の刺激を与える刺激付与手段と、前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に基づいて覚醒条件を決定する覚醒条件決定手段と、ユーザの睡眠段階を所定の睡眠段階に維持しながら、覚醒条件が満たされた場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与える睡眠制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明に係る睡眠制御装置であって、前記覚醒条件決定手段は、前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に応じて所定の睡眠段階の累積時間を覚醒条件として決定し、前記睡眠制御手段は、前記所定の睡眠段階の累積時間が閾値に達した場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与えることを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、第一の発明に係る睡眠制御装置であって、前記覚醒条件決定手段は、前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に応じて睡眠紡錘波の累積数を覚醒条件として決定し、前記睡眠制御手段は、前記睡眠紡錘波の累積数が閾値に達した場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与えることを特徴とする。
【0009】
また、第四の発明は、第一乃至第三の何れかの発明に係る睡眠制御装置であって、前記仮眠目的決定手段は、ユーザ入力に基づいてユーザの仮眠目的を決定することを特徴とする。
【0010】
また、第五の発明は、第一乃至第四の何れかの発明に係る睡眠制御装置であって、仮眠中のユーザの睡眠状態をユーザ毎に記録する睡眠状態記録手段と、仮眠中の環境状態をユーザ毎に記録する環境状態記録手段と、仮眠から覚醒した後のユーザによる仮眠に対する評価をユーザ毎に記録する仮眠評価記録手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、短時間の仮眠により眠気解消や疲労回復を図るのに適した睡眠制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係る睡眠制御装置100の構成例を示すブロック図であり、睡眠制御装置100は、例えば、車両に搭載される装置であって、制御部1、操作入力部20、生体情報検出部21、個人認証部22、環境情報検出部23、記憶部3、刺激付与部40及び表示部41を構成要素として有し、各構成要素をCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載LANで接続している。
【0014】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、操作入力部20、生体情報検出部21、個人認証部22及び環境情報検出部23からの入力を受けて記憶部3を参照しながら所定の演算を実行し、その演算結果を刺激付与部40及び表示部41に対して出力する。
【0015】
また、制御部1は、仮眠目的決定手段10、睡眠段階判定手段11、覚醒条件決定手段12、睡眠制御手段13、睡眠状態記録手段14、環境状態記録手段15及び仮眠評価記録手段16のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0016】
操作入力部20は、車両に搭乗する者(目的地までの途中にあって短時間の仮眠を希望する運転者であり、以下、「搭乗者」とする。なお、仮眠後には運転が再開されるものとする。)が睡眠制御装置100に各種情報を入力するための装置であり、例えば、タッチパネル、ジョイスティック、リモートコントローラ、エスカッションボタン、マイク等であって、睡眠制御装置100に対する搭乗者による仮眠目的等の入力に利用され、その搭乗者によって入力された情報を制御部1に対して出力する。
【0017】
生体情報検出部21は、搭乗者の生体情報(心拍数、脳波、血圧、呼吸、四肢運動、顎運動、眼球運動、心電図、酸素飽和度、胸壁運動、腹壁運動、体位等である。)を非侵襲的に検出するための装置であって、例えば、心拍数センサであり、運転席の背もたれ部分に内蔵され、運転席で仮眠を取る搭乗者の心拍数を継続的に制御部1に対して出力する。
【0018】
また、生体情報検出部21は、運転席のシート部やステアリングホイールの表面に埋め込まれた圧電素子を含み、制御部1がそれら圧電素子の出力に基づいて搭乗者の体位を判定できるようにする。
【0019】
個人認証部22は、個人を認証するための装置であって、例えば、指紋、声紋、静脈パターン若しくは虹彩等を用いた生体認証装置、又は、暗証番号の入力や免許証の読み取りを用いた認証装置であり、制御部1の求めに応じて個人認証を行いその認証結果を制御部1に出力する。
【0020】
環境情報検出部23は、車両周辺や車室内の環境情報(温度、湿度、明るさ、時刻、騒音等である。)を検出するための装置であり、例えば、車体表面又は車室内に設置された温度計、湿度計、騒音計、照度計等があり、検出した値を制御部1に対して出力する。
【0021】
記憶部3は、各種情報を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disk)等の書き換えが可能な記憶装置であって、仮眠情報データベース30(以下、「仮眠情報DB30」とする。)及び覚醒条件テーブル31を記憶する。
【0022】
仮眠情報DB30は、仮眠情報を体系的に記録するためのデータベースであり、例えば、生体情報検出部21及び環境情報検出部23が検出した値(一次データ)を搭乗者毎に記録してもよく、それら一次データを解析した値(平均値、最大値、最小値等のように一次データを加工した二次データである。)を一次データの代わりに或いは一次データに加えて記録するようにしてもよい。
【0023】
覚醒条件テーブル31は、睡眠中の搭乗者を覚醒させるタイミングを決定するための覚醒条件を記憶するテーブルであり、好適には、搭乗者毎に用意される。
【0024】
図2は、覚醒条件テーブル31の構成例を示す図であり、覚醒条件テーブル31は、三つの仮眠目的(眠気軽減、疲労感軽減、又は作業成績改善である。)のそれぞれに対する三つの覚醒条件(所定の睡眠段階(例えば、「睡眠段階2」である。)の累積時間、睡眠紡錘波の累積数、又は睡眠紡錘波の出現間隔である。)を定義し、例えば、仮眠目的として眠気軽減が選択された場合、所定の睡眠段階の累積時間の閾値として6分が設定されることを意味する。
【0025】
このような覚醒条件の違いは、必要とされる眠りの質及び量が仮眠目的に応じて異なるという見解に基づいている。なお、覚醒条件は、複数の条件を組み合わせたもの(AND条件又はOR条件等をいう。)であってもよく、環境状態に応じて変化させてもよい。
【0026】
また、仮眠目的は、後述するように、操作入力部20を介して搭乗者が選択入力するようにしてもよく、生体情報検出部21が検出した睡眠前の搭乗者の生体情報(例えば、まばたきの回数、着座圧の分布変化等を含む。)、環境状態、連続運転時間、又は運転状態(例えば、アクセルの使用状況、ステアリングのふらつき量の標準偏差等を含む。)に基づいて制御部1が自動的に選択決定するようにしてもよい。
【0027】
ここで、「睡眠段階」とは、眠りの深さを示す指標であり、例えば、脳波の波形に基づいて分類される「睡眠段階1」から「睡眠段階4」の4段階を有し、「睡眠段階1」から「睡眠段階4」に増大するにつれて眠りが深くなることを意味する。
【0028】
また、「睡眠紡錘波」とは、ノンレム睡眠時の脳波に見られる12〜14Hzの波であり、その出現により「睡眠段階2」の判定が行われる。
【0029】
なお、覚醒条件は、脳波を構成する種々の波(例えば、睡眠紡錘波、徐波(「睡眠段階3」又は「睡眠段階4」で現れるデルタ波である。)等である。)のパワースペクトルに基づいて決定されてもよい。
【0030】
刺激付与部40は、搭乗者に対して物理的な刺激を付与するための装置であり、例えば、制御部1が出力する制御信号に応じて、ヘッドレスト部に内蔵された車載スピーカが出力する音による聴覚刺激、車載照明機器が発する光による視覚刺激、又は、運転席に設置されたバイブレータが出力する振動による触覚刺激等を運転席で眠っている搭乗者に対して付与する。
【0031】
表示部41は、各種情報を表示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイ等であって、制御部1が出力する制御信号に応じて各種情報を表示する。
【0032】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0033】
仮眠目的決定手段10は、搭乗者が希望している仮眠による効果が何であるかを把握するための手段であり、例えば、三つの仮眠目的(眠気軽減、疲労感軽減、及び作業成績改善である。)に対応するソフトウェアボタンを配した画面(以下、「仮眠目的決定画面」とする。)を表示部41に表示させ、操作入力部20を介して三つのうちの何れか一つのソフトウェアボタンを搭乗者に選択させるようにする。
【0034】
また、仮眠目的決定手段10は、上述のようにソフトウェアボタンを表示させて仮眠目的を直接的に選択させる以外に、間接的な質問(例えば、「体調はいかがですか?」又は「眠気がありますか?」等である。)を表示部41にテキスト表示させて搭乗者に回答させ(例えば、0〜100%の度合いで回答させる。)、仮眠目的を判定するようにしてもよい(例えば、「眠気がありますか?」との質問に対する回答が80%であった場合、仮眠目的が「眠気軽減」であると判定する。)。
【0035】
更に、仮眠目的決定手段10は、運転中の搭乗者の挙動、運転操作内容、ナビゲーションシステムに設定された目的地や希望到着時刻等に基づいてその搭乗者に最も適した仮眠目的を自動的に決定するようにしてもよい。
【0036】
なお、仮眠目的決定手段10は、表示部41の代わりに、或いは、表示部41に加えて音声出力部から音声情報を出力して搭乗者に仮眠目的を選択させるようにしてもよい。
【0037】
睡眠段階判定手段11は、睡眠中の搭乗者の睡眠段階を判定するための手段であり、例えば、生体情報検出部21の出力に基づいて搭乗者の睡眠段階を判定する。この判定は、理想的には搭乗者の脳波を継続的に検出しながら行われるが、代替的に、心拍数、呼吸、眼球運動、体温、皮膚電位等を継続的に検出することによって行われてもよい。
【0038】
また、睡眠段階判定手段11は、搭乗者の脳波中に睡眠紡錘波又はK復号(大徐波と睡眠紡錘波との組み合わせである。)を検出した場合、眼電図においてゆっくりとした眼球運動(SEM)が停止したことを検出した場合、或いは、呼吸振幅のばらつきが所定値を下回った場合若しくは腹式呼吸から胸式呼吸への移行を検出した場合に、搭乗者の睡眠段階が「睡眠段階2」に移行したと判定する。
【0039】
覚醒条件決定手段12は、睡眠中の搭乗者を覚醒させるための条件(覚醒条件)を決定するための手段であり、例えば、睡眠中の搭乗者を覚醒させるために刺激付与部40による物理的刺激をその搭乗者に付与するタイミングを決定する。
【0040】
最初に、覚醒条件決定手段12は、表示部41にテキストメッセージ「搭乗者を認証します」を表示させ、車載の指紋認証装置に指を押し当てるよう搭乗者を促すようにする。なお、乗車時等に認証が既に行われている場合、覚醒条件決定手段12は、その認証結果をそのまま用いるようにしてもよい。
【0041】
その後、覚醒条件決定手段12は、仮眠目的決定手段10が決定した仮眠目的の値をキー項目として記憶部3の覚醒条件テーブル31(図2)を検索し覚醒条件を決定する。なお、覚醒条件テーブル31は、搭乗者毎に用意されており、覚醒条件決定手段12は、個人認証部22の認証結果に基づいて各搭乗者に対応する覚醒条件テーブル31を参照する。
【0042】
また、覚醒条件決定手段12は、例えば、T=W1・S1+W2・S2+W3・S3+W4・S4−WW・SWで表される値Tが閾値を超えることを覚醒条件としてもよい。なお、W1〜W4は、各睡眠段階に対する重み付け係数であり、S1〜S4は、各睡眠段階の累積時間である。また、WW及びSWはそれぞれ、覚醒段階に対する重み付け及び仮眠を開始した後の覚醒段階の累積時間である。なお、W1〜W4及びWWは、必要に応じて変更されてもよい。
【0043】
睡眠制御手段13は、搭乗者の睡眠を制御するための手段であり、例えば、睡眠段階判定手段11により睡眠段階を継続的に判定しながら、その睡眠段階が「睡眠段階2」で維持されるよう、現在の睡眠段階が「睡眠段階3」又は「睡眠段階4」であると判定された場合には、刺激付与部40に制御信号を送信しその搭乗者の睡眠段階を下げる(浅くする)ための適度の刺激(その搭乗者を覚醒させない程度の刺激である。)を付与させ、或いは、その搭乗者の睡眠段階を下げるのに適した睡眠環境を整えるようにする。
【0044】
一方、睡眠制御手段13は、搭乗者が未だ覚醒状態にあるか、或いは、現在の睡眠段階が「睡眠段階1」であると判定された場合には、刺激付与部40に制御信号を送信しその搭乗者の睡眠段階を上げる(深める)ための適度の刺激を付与させ、或いは、その搭乗者の睡眠段階を上げるのに適した睡眠環境を整えるようにする。
【0045】
なお、睡眠制御手段13は、現在の睡眠段階が「睡眠段階2」であると判定された場合には、刺激付与部40に制御信号を送信することなく(搭乗者に刺激を与えることなく)、そのときの睡眠環境を維持するようにする。
【0046】
更に、睡眠制御手段13は、その搭乗者の睡眠段階を「睡眠段階2」に維持しながら、覚醒条件決定手段12が決定した覚醒条件が満たされたか否かを監視し、覚醒条件が満たされたと判定した場合には、刺激付与部40に制御信号を送信しその搭乗者を覚醒させるための刺激を付与させるようにする。
【0047】
睡眠状態記録手段14は、搭乗者の睡眠状態を記録するための手段であり、例えば、生体情報検出部21の出力に基づいて判定されるその搭乗者の睡眠段階の推移を継続的に記録し、睡眠段階毎の累積時間、継続時間、中断時間等を制御部1が解析できるようにする。
【0048】
また、睡眠状態記録手段14は、その搭乗者の脳波を継続的に記録し、睡眠紡錘波の累積数、出現間隔等を制御部1が解析できるようにしてもよい。
【0049】
睡眠制御手段13は、睡眠状態記録手段14が記録し制御部1が解析した各種情報に基づいて覚醒条件が満たされたか否かを判定する。
【0050】
環境状態記録手段15は、車両周辺又は車室内の環境状態を記録するための手段であり、例えば、環境情報検出部23の出力に基づいて車室内の温度、湿度、騒音等を睡眠状態記録手段14の記録結果に関連付けながら継続的に記録し、それら環境状態が搭乗者の睡眠状態に与える影響を制御部1が解析できるようにする。
【0051】
仮眠評価記録手段16は、仮眠から目覚めた搭乗者によるその仮眠に対する評価(仮眠目的の達成度合い)を記録するための手段であり、例えば、生体情報検出部21の出力に基づいて搭乗者が仮眠から目覚めたことを検出した場合に、表示部41に仮眠目的の達成度合いをその搭乗者に入力させるための画面(以下、「仮眠評価画面」とする。)を表示させ、0〜100%の度合いでその達成度を回答させるようにする。
【0052】
操作入力部20を介して達成度の入力が行われると、仮眠評価記録手段16は、その入力結果を仮眠情報DB30に記録し、制御部1は、その記録結果に基づいて、搭乗者が選択できる仮眠目的と覚醒条件テーブル31に記憶されている覚醒条件の閾値との関係が適切であるか否かを解析し、その閾値を調整することができる。
【0053】
また、制御部1は、記憶部3の仮眠情報DB30を参照することで、睡眠状態記録手段14及び環境状態記録手段15によって記録された過去の仮眠情報に基づいて、仮眠目的を実現させるために必要とされる仮眠時間を仮眠開始前に予測し表示部41に提示することができる。
【0054】
これにより、搭乗者は、自身が実現しようとする仮眠目的のために必要な仮眠時間を予め知ることができ、目的地への到着時刻や将来の渋滞状況を考慮しながら、仮眠をすべきか否かを決定できるようになる。
【0055】
次に、図3を参照しながら、睡眠制御装置100が仮眠目的に応じて搭乗者の睡眠を制御する処理(以下、「仮眠制御処理」とする。)について説明する。なお、図3は、仮眠制御処理の流れを示すフローチャートであり、車両が停止状態にある場合に限り、搭乗者の求めに応じて実行され、或いは、所定の開始条件が満たされた場合に実行される。
【0056】
最初に、制御部1は、表示部41にテキストメッセージ“指紋認証装置に指を押し当てて下さい”を表示させ、個人認証部22である指紋認証装置を起動させる。
【0057】
指紋認証装置は、読み取った指紋に基づいて搭乗者を認証し、その認証結果を制御部1に出力する(ステップS1)。
【0058】
その後、制御部1は、仮眠目的決定手段10により表示部41に仮眠目的決定画面を表示させ、仮眠によって得たい効果が何であるかを搭乗者に入力させるようにする。仮眠目的決定画面は、“眠気軽減”、“疲労感軽減”及び“作業成績改善”の三つのソフトウェアボタン表示を含み、仮眠目的決定手段10は、操作入力部20であるタッチパネルを介した搭乗者のタッチ入力を受けて仮眠目的が三つのうちの何れであるかを決定する(ステップS2)。この例では、搭乗者は、“眠気軽減”を仮眠目的として選択したものとする。
【0059】
その後、制御部1は、覚醒条件決定手段12によりその搭乗者に対応する覚醒条件テーブル31(図2)を参照し、仮眠目的に合致する覚醒条件(この例では、「睡眠段階2」の累積時間が6分に達することを覚醒条件とする。)を決定する(ステップS3)。
【0060】
このとき、制御部1は、その搭乗者に対応する過去の仮眠情報を仮眠情報DB30から読み出し、仮眠時における環境状態で分類しながら(例えば、現在の環境状態に類似する環境状態で行われた仮眠に関する情報を抽出する。)、その搭乗者が目を閉じてから「睡眠段階2」に達するのに要した時間の平均値、及び、「睡眠段階2」の累積時間が6分になるのに要した時間の平均値等を抽出し、現在の環境状態で所望の仮眠を行うのに要する時間を予測して表示部41に提示する。
【0061】
なお、制御部1は、その搭乗者に対応する過去の仮眠情報が存在しない場合であっても、予め用意された情報に基づいて現在の環境状態で所望の仮眠を行うのに要する時間を予測して表示部41に提示するようにする。
【0062】
この時点において、搭乗者は、提示された予測時間と目的地に到着しなければならない時刻やその後の渋滞予測等とを考慮しながら、睡眠制御装置100が提示する通りの仮眠を取るか、仮眠目的を変更するか、或いは、仮眠を取らずにそのまま運転を続行するかを選択することができる。この選択は、仮眠目的決定画面における方法と同様の方法で実行される。
【0063】
提示通りの仮眠を取ることを搭乗者が選択しなかった場合、例えば、提示された仮眠時間よりも短い仮眠時間を搭乗者が希望した場合には、制御部1は、“仮眠目的に合った睡眠効果が得られないおそれがあります”といった注意メッセージを表示部41に表示させる。
【0064】
提示通りの仮眠を取ることを搭乗者が選択した場合、制御部1は、睡眠制御手段13により生体情報検出部21である運転席埋め込み型の心拍数センサを起動させてその搭乗者の心拍数の監視を開始させ(ステップS4)、睡眠段階判定手段11によるその心拍数の推移に基づいた現在の睡眠段階SDの判定を開始させる。
【0065】
この時点において、制御部1は、睡眠状態記録手段14による睡眠状態の仮眠情報DB30への記録、及び、環境状態記録手段15による環境状態の仮眠情報DB30への記録を開始させる。将来の仮眠情報の解析に役立てるためである。
【0066】
その後、制御部1は、睡眠段階判定手段11によって判定された現在の睡眠段階SDが所定の睡眠段階T1(この例では「睡眠段階2」である。)に合致するかを判定する(ステップS5)。
【0067】
現在の睡眠段階SDが所定の睡眠段階T1よりも深い睡眠段階にあると判定された場合(SD>T1)、制御部1は、睡眠制御手段13により刺激付与部40を起動させ、所定の睡眠段階T1よりも深い睡眠段階に入らせないよう、且つ、その搭乗者を覚醒させることがないよう、その搭乗者に対して適度の刺激を付与させる(ステップS6)。この場合の刺激は、音楽、匂い、熱、マッサージ、ツボ押し、光又は振動等の何れであってもよい。なお、制御部1は、カーエアコンにより車室内の温度又は湿度等を調節し、睡眠段階をより浅い睡眠段階に移行させるのに適した環境状態を創出するようにしてもよい。
【0068】
また、現在の睡眠段階SDが所定の睡眠段階T1よりも浅い睡眠段階にあると判定された場合(SD<T1)、制御部1は、刺激付与部40を起動させないようにしてその搭乗者の睡眠段階が深まるのを阻害することがないようにしてもよく、或いは、刺激付与部40を起動させその搭乗者の睡眠段階を深めるための快適な刺激を積極的に付与するようにしてもよい。なお、制御部1は、カーエアコンにより車室内の温度又は湿度等を調節して睡眠段階を深めるのに適した環境状態を創出するようにしてもよい。
【0069】
一方、現在の睡眠段階SDが所定の睡眠段階T1になっていると判定された場合(SD=T1)、制御部1は、前回のステップS5の判定時刻から今回のステップS5の判定時刻までの時間(判定間隔)を累積時間ATに加えるようにする(ステップS7)。
【0070】
その後、制御部1は、覚醒条件決定手段12により累積時間ATと閾値T2とを比較し(ステップS8)、累積時間ATが閾値T2未満であると判定した場合には(AT<T2)、未だ覚醒条件が満たされていないとしてステップS5からの処理を繰り返すようにし、一方で、累積時間ATが閾値T2に達したと判定した場合には(AT≧T2)、覚醒条件が満たされたとして睡眠制御手段13により刺激付与部40を起動させ、その搭乗者を覚醒させるための刺激を付与させるようにする(ステップS9)。
【0071】
その後、制御部1は、仮眠評価記録手段16により、心拍数センサの出力に基づいてその搭乗者が覚醒したことを検出した後に、表示部41に仮眠評価画面を表示させ、仮眠を取る前にその搭乗者が選択した仮眠目的に対する達成度(満足度)を、タッチパネルを介してその搭乗者にタッチ入力させるようにする(ステップS10)。この評価は、仮眠目的決定画面における方法と同様の方法で実行され、例えば、10段階の満足度のうちの一つをその搭乗者に選択させることによって行われる。
【0072】
以上の構成により、睡眠制御装置100は、搭乗者の仮眠目的に応じた必要十分な時間だけ浅い睡眠段階を継続させるようその搭乗者の睡眠を制御することで、睡眠慣性(目が覚めた後も睡眠が続いているように感じる状態をいう。)の影響により眠気が残ったり、或いは、作業成績が低下したりしてしまうような状態を引き起こすことなく、その搭乗者が仮眠を取る前に希望していた仮眠による効果を希望通りにもたらし、その搭乗者の満足度を向上させることができる。
【0073】
また、睡眠制御装置100は、搭乗者の仮眠目的を満たすために必要且つ十分な仮眠をその搭乗者が取れるようにするので、眠気を感じてはいるがゆっくりと仮眠を取る時間がないような状況や、疲労感の回復までは求めないが眠気だけは取り除きたいといった状況にも柔軟に対応することができ、仮眠目的に合致しない長い仮眠を取らせることでかえって搭乗者の不満を募らせてしまうのを防止することができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0075】
例えば、上述の実施例において、睡眠制御装置100は、仮眠を取った後に運転を再開させる必要がある車両搭乗者を対象としているが、十分な睡眠時間を取ることができないままに仕事を継続しなければならない医療関係者等が短い休憩時間を利用して仮眠を取るような場合の使用にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る睡眠制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】覚醒条件テーブルの構成例を示す図である。
【図3】仮眠制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1 制御部
3 記憶部
10 仮眠目的決定手段
11 睡眠段階判定手段
12 覚醒条件決定手段
13 睡眠制御手段
14 睡眠状態記録手段
15 環境状態記録手段
16 仮眠評価記録手段
20 操作入力部
21 生体情報検出部
22 個人認証部
23 環境情報検出部
30 仮眠情報データベース
31 覚醒条件テーブル
40 刺激付与部
41 表示部
100 睡眠制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮眠目的に応じてユーザの睡眠状態を制御する睡眠制御装置であって、
ユーザの仮眠目的を決定する仮眠目的決定手段と、
ユーザの睡眠段階を判定する睡眠段階判定手段と、
前記睡眠段階判定手段が判定する睡眠段階に応じてユーザに所定の刺激を与える刺激付与手段と、
前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に基づいて覚醒条件を決定する覚醒条件決定手段と、
ユーザの睡眠段階を所定の睡眠段階に維持しながら、覚醒条件が満たされた場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与える睡眠制御手段と、
を備えることを特徴とする睡眠制御装置。
【請求項2】
前記覚醒条件決定手段は、前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に応じて所定の睡眠段階の累積時間を覚醒条件として決定し、
前記睡眠制御手段は、前記所定の睡眠段階の累積時間が閾値に達した場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与える、
ことを特徴とする請求項1に記載の睡眠制御装置。
【請求項3】
前記覚醒条件決定手段は、前記仮眠目的決定手段が決定した仮眠目的に応じて睡眠紡錘波の累積数を覚醒条件として決定し、
前記睡眠制御手段は、前記睡眠紡錘波の累積数が閾値に達した場合に、前記刺激付与手段によりユーザを覚醒させるための刺激を与える、
ことを特徴とする請求項1に記載の睡眠制御装置。
【請求項4】
前記仮眠目的決定手段は、ユーザ入力に基づいてユーザの仮眠目的を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の睡眠制御装置。
【請求項5】
仮眠中のユーザの睡眠状態をユーザ毎に記録する睡眠状態記録手段と、
仮眠中の環境状態をユーザ毎に記録する環境状態記録手段と、
仮眠から覚醒した後のユーザによる仮眠に対する評価をユーザ毎に記録する仮眠評価記録手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の睡眠制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−82377(P2010−82377A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257719(P2008−257719)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)