説明

睡眠呼吸障害のための治療のマクロ制御

【課題】睡眠呼吸障害の兆候に対するその感度を自動的に調整する、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置を提供する。
【解決手段】睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置。制御アルゴリズムの外側ループにおいて使用するために覚醒指数が決定され、この覚醒指数は睡眠覚醒の頻度の指標である。気道閉塞を検出するために、制御アルゴリズムの内側ループにおける呼吸気流量信号が監視される。覚醒指数が高い場合には、閉塞検出の感度および/または治療の積極性が高められ、また、覚醒指数が低い場合には、閉塞検出の感度および/または治療の積極性が低下される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置に関する。特に、本発明は、睡眠呼吸障害の治療で使用される装置における制御パラメータの自動調整に関する。
【発明の背景】
【0002】
Sullivanは、鼻の持続的気道陽圧法(CPAP)を用いた閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療を発明した(米国特許第4,944,310号参照)。OSAの診断には、睡眠専門クリニックにおいて二晩を要する。最初の晩の間、患者は、OSAを持っているかどうかを診るために監視される。次の晩の間、CPAPデバイスが患者の気道を開放状態に維持するのに適した圧力設定を決めるために、所定の範囲の鼻マスク圧力が検査される。圧力設定が決定されると、患者には、その後の在宅治療のため、その圧力に設定されたCPAPデバイスが処方される。睡眠専門クリニック内の場所は限りがあるため、患者は、診断の機会を得るまでに最大で2年待つ可能性がある。最近になって、患者を患者自身の自宅で診断して治療することができる自動デバイスが開発されてきており、これにより診断の遅れが減少する。また、一部の自動デバイスは、患者の要求にしたがって、一晩中の間、治療圧力を増減することもできる。
【0003】
米国特許第5,199,424号(SullivanおよびLynch)は、睡眠中に呼吸を監視するためのデバイスおよび患者制御型のCPAP治療の制御について記載している。特に、この特許は、制御可能な可変圧空気源と、患者の呼吸器系とシール状態で空気を伝えるべく連通するノーズピースと、空気源からノーズピースへ延びる空気流通ラインと、患者の呼吸器系と音を伝えるべく連通するようになっているサウンドトランスデューサと、トランスデューサからの出力に応じて空気源の出力圧を制御することにより、いびきを示す音の検出に応じて所定の手順にしたがって空気源の圧力を増大させるフィードバックシステムとを有するCPAP装置について記載している。サウンドトランスデューサは、その最も一般的な形態において、いびき音の検出に加えて呼吸の割合、吸入空気流量、吸入空気流速等の他の呼吸パラメータを検出できる圧力トランスデューサを備える。空気源の出力空気圧は、1または複数のこれらのパラメータに応じて、所定の手順にしたがって増大される。
【0004】
米国特許第5,134,995号(Gruenkeら)は、特に、吸入の直前に患者の気道に対して与えられる鼻気圧を増大させることによって、また、その後に、その圧力を減少させて呼気労力を軽減することによって、患者の呼吸を円滑にして、複合的な閉塞性睡眠無呼吸および特定の心臓血管状態を治療する装置および方法について記載していると言われている。好ましい装置は、患者の鼻孔を制御可能な圧力で加圧するための患者接続型空気供給デバイスと、この供給デバイスに結合され且つ鼻圧を監視する圧力トランスデューサおよび鼻圧を選択的に制御するマイクロコントローラを有するコントローラとを有している。作動時、コントローラは、吸入直前に患者の呼吸周期における1つの点を決定するとともに、その点で鼻圧の増大を開始することにより正常な吸息を促進させ、その後、鼻圧を低下させて呼気労力を軽減する。
【0005】
米国特許第5,203,343号(Axeら)は、可変圧を使用して睡眠呼吸障害を制御するための方法およびデバイスについて記載していると言われている。コンプレッサは、ユーザが眠っている間、空気を比較的低い圧力でユーザの気道へと供給する。圧力トランスデューサは、圧力を監視するとともに、圧力を電気信号に変換する。電気信号は、フィルタ処理されるとともに、いびき中に存在する波形の特性と比較される。波形の包絡線が持続時間および面積における平均閾値を超える場合、マイクロプロセッサは、いびきに関連している可能性がある包絡線を処理する。この手の選択された数の包絡線が選択された期間内に生じる場合、マイクロプロセッサは、いびきが存在していると見なし、コンプレッサの圧力を増大させる。いびきが特定の期間内に検出されない場合、マイクロプロセッサはレベルを徐々に下げる。
【0006】
米国特許第5,335,654号(Rapoport)は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療において、空気を患者に装着された鼻マスクへと方向付けるために使用されるCPAPフロージェネレータについて記載されていると言われている。ジェネレータからの空気流が監視され、空気流の波形が流量制限に対応する特徴を示すと、流量および/または圧力が増大される。流量制限を生じない最小レベルにCPAP流量を調整するために、ジェネレータは波形変動を繰り返し検査するように制御されてもよい。
【0007】
米国特許第5,704,345号(Berthon−Jones)は、呼吸器系における無呼吸および気道の閉塞を検出するための方法および装置について記載している。無呼吸、気道の開通性および/または部分閉塞の発生を決定するための方法および装置が開示されている。気流信号を与えるために、患者からの呼吸気流量が測定される。無呼吸の決定は、移動時間窓にわたって気流信号の変動を計算するとともに、この変動と閾値とを比較することにより行なわれる。気道の部分閉塞の1つの決定は、気流信号の吸気部分を検出し、それを1持続時間および1面積にスケーリングし、スケーリングされた信号の振幅の指数値を中央部にわたって計算することにより行なわれる。あるいは、指数値は、中央部にわたる気流信号の平坦性の指標である。気道の開通性の1つの決定は、周知の周波数の振動圧波形を患者の気道に対して加え、振動圧波形によってもたらされる周知の周波数の気流信号の成分の大きさを計算し、計算された大きさと閾値とを比較することによって行なわれる。あるいは、気流信号は、心臓性の働きに起因する成分の存在を検出するために解析される。
【0008】
米国特許第6,367,474号(Berthon−JonesおよびFarrugia)は、患者の気道との接続部を有するマスクに結合された供給チューブにより大気圧を上回る治療圧力で患者へ送られる呼吸可能な空気を生成するようになっている制御可能フロージェネレータを有するCPAP治療装置について記載している。センサは、コントローラに対して供給される患者の呼吸流量を示す信号を生成する。コントローラは、閾値を下回る呼吸気流量の減少から無呼吸の発生を決定するようになっており、無呼吸が発生した場合には、無呼吸の持続時間を決定するとともに、無呼吸の持続時間の増加関数であり且つ無呼吸の直前の治療圧力の減少関数である大きさだけ治療圧力をフロージェネレータにより増大させるようになっている。
【0009】
一般に、CPAP治療の管理制御におけるこれらのタイプの技術は、「マイクロ制御」アルゴリズムと見なすことができる。すなわち、これらの技術は、任意の所定の瞬間の患者の状態を監視する。吸気流量−時間曲線の平坦性の検出、患者換気の減少の検出、いびきの検出を含む患者の状態を監視するための様々な技術が使用されてもよい。睡眠呼吸障害の兆候がある場合の応答は、治療圧力の増大である。睡眠呼吸障害の兆候が無い場合には、治療圧力が減少されてもよい。重大な関心事は、そのようなアルゴリズムがOSAの治療においてどの程度有効かということである。
【0010】
無呼吸呼吸低下指標(AHI)は、患者が睡眠中に受ける無呼吸数および呼吸低下数の指標を与える。AHIは、時として、OSAの診断を助けるために使用される。また、AHIは、鼻のCPAP治療の有効性の目安として使用されてもよい。そのため、少なくとも1つの自動CPAPデバイス、すなわち、ResMed Limitedにより製造されるAUTOSET T(商標)は、特に夜の治療の後にAHIを報告する。そのような手法に伴う問題は、治療が有効ではなかったことをAHIが示している場合に、技術者または医師によって調整しなければ、そのような結果に対してデバイスが対応できない虞があるということである。
【発明の簡単な説明】
【0011】
本発明の第1の態様においては、睡眠呼吸障害の兆候に対するその感度を自動的に調整する、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様においては、患者の睡眠覚醒を監視し且つ睡眠覚醒の指標にしたがって睡眠呼吸障害の兆候に対して応答するその積極性の度合いを自動的に調整する、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様においては、治療の効果が連続的に監視される、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置が提供される。治療が有効ではなかったという表示がなされる場合には、治療圧力変化が加速される。治療が有効であったという表示がなされる場合には、治療圧力変化が減速される。
【0014】
本発明の他の態様において、睡眠呼吸障害のマイクロ制御を行なう方法および装置では、その有効性を監視し且つ有効でないことが判明する場合にはその動作パラメータを調整するマクロ制御アルゴリズムが与えられる。したがって、第1の検出制御ループは、患者の健康状態の変化を検査することにより、第2の検出制御ループの有効性を検出し、その後、第1の検出制御ループは、第1の制御ループの性能を向上させるように第2の検出制御ループを調整する。
【0015】
本発明の他の態様において、睡眠呼吸障害の治療を行なう方法および装置では、制御アルゴリズムの外側ループにおいて使用するために覚醒指数が決定され、この覚醒指数は睡眠覚醒の頻度の指標である。気道閉塞を検出するために、制御アルゴリズムの内側ループにおいて患者の呼吸気流量信号が監視される。覚醒指数が高い場合には、閉塞検出の感度および/または治療の積極性が高められ、また、覚醒指数が低い場合には、閉塞検出の感度および/または治療の積極性が低下される。
【0016】
本発明の他の態様においては、内側制御ループおよび外側制御ループを有する、睡眠呼吸障害を治療するための方法および装置であって、内側ループは少なくとも2つの治療モードを与えるようになっており、外側ループは、内側ループによって与えられる治療の効果を監視し、必要に応じてモードを変更するようになっている方法および装置が提供される。
【0017】
本発明の他の態様においては、睡眠呼吸障害を治療するためのデバイスにおけるコントローラであって、選択的な治療アルゴリズムの組を与えるようにプログラムされるとともに、睡眠呼吸障害の兆候にしたがって上記組の中から最も適切なアルゴリズムを選択するようにプログラムされたコントローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る装置を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る「マクロ制御」アルゴリズムを示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る「マイクロ制御」アルゴリズムを示している。
【図4】睡眠覚醒の事象を示す流量−時間曲線のグラフである。
【図5】睡眠または呼吸覚醒の関数にしたがって圧力供給デバイスの設定を調整するためのデバイスの一実施形態における情報流れ図である。
【図6】睡眠覚醒指数に基づいて治療圧力を調整するためのコントローラの入力の一実施形態を示している。
【図7】睡眠覚醒の指標にしたがって治療圧力の減少の積極性を調整するための関数を示している。
【図8】睡眠覚醒の指標にしたがって治療圧力の増加の積極性を調整するための関数を示している。
【図9】睡眠覚醒の指標にしたがって流量制限検出の感度を調整するための関数を示している。
【図10】睡眠覚醒の指標にしたがって流量制限検出の感度を調整するための他の関数を示している。
【図11】治療圧力の指標にしたがって流量制限検出の感度を調整するための関数を示している。
【発明の詳細説明】
【0019】
本発明を実行するのに適した装置が図1に示されている。インペラ(羽根車)1が電動機2に結合されており、電動機2は、サーボ3に接続されるとともに、コントローラ4によって管理される。コントローラ4は、マイクロプロセッサと、データ記憶装置と、本発明に係るアルゴリズムがプログラムされたメモリとを有している。したがって、コントローラまたはプロセッサは、ここで詳細に説明する方法論を実施するように構成されて適合されており、集積チップ、メモリおよび/または他の命令またはデータ記憶媒体を含んでいてもよい。プログラム命令は、デバイスのメモリ内の集積チップでコード化されても良く、あるいは、ソフトウェアとしてロードされてもよい。
【0020】
インペラ、モータ、コントローラアセンブリはブロワを形成している。このブロワには、可撓性導管6を介してマスク5が接続されている。ブロワのハウジング上には様々なスイッチ7およびディスプレイ8が設けられている。特に流量10、圧力11、いびき12、モータ速度13、モータ電流14を監視するため、ブロワ内には多数のセンサが設けられている。これらのタイプのセンサとして役立ち得る様々なデバイスは技術的に周知である。コンピュータやコントローラ等の外部デバイスと装置との間でデータを転送できるようにする通信インタフェース15が設けられている。本発明の好ましい形態では鼻マスク5が示されているが、他の形態の患者インタフェース、例えば鼻・口マスクまたは全顔面マスクが使用されてもよい。また、変速モータが好ましいが、陽圧で呼吸できるガスの供給を行なうための他の手段、例えば可変通気またはステップダウンパイプ圧供給を伴う定速モータが使用されてもよい。
【0021】
参照することによりその全体の内容が本願に組み込まれる米国特許第5,704,345号(Berthon−Jones)に記載された方法においては、患者の睡眠呼吸障害または気道閉塞の兆候がデバイスにより監視される。例えば、流量センサ、圧力センサ、いびきセンサ10,11,12は、吸気流量−時間曲線の形状、患者の換気およびいびきに関する情報を与える。ほぼ平らな吸気流量−時間曲線は、部分閉塞の兆候として、いびきが存在しているとして解釈される。
【0022】
I. 閉塞兆候
(a)形状係数
1つの形態において、流量−時間曲線の形状は以下のように監視される。デジタル化された流量信号は、任意の漏れ成分を除去するためにフィルタ処理される。その後、各呼吸の吸気および呼気部分がゼロ交差検出器によって識別される。時間点を表す多数の等間隔の点(一般的には65個の点)は、各呼吸における吸気流量−時間曲線に沿って補間器(ソフトウェアの状態)により補間される。複数の点によって描かれた曲線は、その後、呼吸数および呼吸の深さの変化の影響を除去するため、1長さ(unity length)(持続時間/周期)および1面積(unity area)を有するようにスケーラによってスケーリングされる。
【0023】
スケーリングされた呼吸は、比較器(ソフトウェアの状態)内で、正常な閉塞されていない呼吸を表わす予め記憶されたテンプレートと比較されるのが好都合である。テンプレートは、正常な吸気事象における曲線と非常に類似している。吸気事象中に常にこのテンプレートから特定の閾値(一般的には1スケール単位)を超えて逸脱する呼吸、例えば試験要素によって決定される咳、ため息、飲み込み、しゃっくりなどに起因する呼吸は、拒絶される。
【0024】
この試験によって拒絶されないデータにおいて、そのようなスケーリングされた第1の点の移動平均は、前の幾つかの吸気事象に関して演算プロセッサにより計算される。これは、そのような第2の点等における同じ吸気事象にわたって繰り返される。したがって、65個のスケーリングされたデータ点が、演算プロセッサによって生成されるとともに、前の幾つかの吸気事象の移動平均を表わしている。以下、65個の点の連続的に更新される値の移動平均を「スケール流量」と称する。同様に、移動平均ではなく、単一の吸気事象を利用することができる。
【0025】
スケール流量から、部分閉塞の決定に直接に関連する2つの形状係数が計算される。各形状係数は、前述した閉塞指数と同じである。
【0026】
第1の形状係数は、65個の全てのスケール流量点の平均に対する真ん中の32個のスケール流量点の平均の比率である。したがって、これは、スケーリングされた吸気事象の真ん中部分の大きさの減少(凹部)の決定である。65個の全ての点における平均は1であるため、実際には除算を行なう必要がない。
【0027】
正常な吸気事象において、この比率は1を超える平均値を有している。なぜなら、正常な吸気事象は他の場所よりも真ん中で高い流量を有しているからである。逆に、流量が大幅に限られる呼吸の場合、比率は1以下である。これは、上気道吸引へこみ圧力(collapsing pressure)が最大となるときに流量制限が特に呼吸の真ん中半分の間にわたって生じるからである。1.17の比率は、一般に、部分的に閉塞された呼吸と閉塞されていない呼吸との間の閾値として解釈され、一般的なユーザの適正な酸化の維持を可能にする閉塞度合いと同じである。
【0028】
他の実施形態において、サンプル点の数、呼吸数、真ん中の点の数は、変えることができるとともに、部分閉塞が生じているかどうかの重要な決定をもたらす。同様に、閾値は1.17以外の値であってもよい。閾値を下げると、閉塞検出に対するデバイスの感度が低下する。閾値を上げると、閉塞検出に対するデバイスの感度が高くなる。
【0029】
もう1つの方法として、第2の形状係数は、単位スケール流量からのRMS偏差として計算され、真ん中の32個の点にわたって考慮される。これは、基本的に、スケーリングされた呼吸事象の中間点の平坦性の指標である。全体的に流量が制限された呼吸において、流量振幅−時間曲線は方形波であり、RMS偏差はゼロである。正常な呼吸の場合、RMS偏差は約0.2単位であり、この偏差は、流量制限が厳しくなるにつれて減少する。一般的には0.15単位の閾値が使用される。閾値を下げると、閉塞検出に対するデバイスの感度が低下する。閾値を上げると、閉塞検出に対するデバイスの感度が高くなる。
【0030】
随意的に、形状係数は、参照することによりその全体が本願に組み込まれる2001年8月8日に提出された米国特許出願09/924,325号に開示されるように、流量信号の特定の部分を重み付けることにより決定されてもよい。
【0031】
前述した両方の形状係数は、装置によって行なわれる方法論を実施する際に独立に使用することができ、それにより、部分的に閉塞された呼吸を検出する際の感度および信頼性が高くなる。この場合も同様に、両方の形状パラメータが協働するようにコントローラにより実行される両方の形状係数を実施することにより、良好な性能が得られる。この場合、第2の形状係数は、最も激しい閉塞を除く全ての閉塞を検出するために使用するのが好ましく、また、したがって、第1の形状係数は、最も激しい閉塞のみを検出するためのものであることが好ましく、これは臨界閾値を1.17から1.0へ下げることにより達成される。
【0032】
2つの形状係数は協働して作用してもよい。スケール流量信号が形状検出器に対して与えられる。形状検出器は両方の形状係数を生成する。第1の形状係数は、決定ブロックに対して加えられ、1.0の閾値に対して比較される。比較結果が「YES」の場合には、CPAP圧設定に増大があることが決定される。第2の形状係数は、決定ブロックに対して与えられ、0.15の閾値に対して比較される。答えが「YES」の場合、それもCPAP圧の増大に適している。
【0033】
いずれの場合にも、比較結果が「NO」の場合、これらの結果はAND演算においてANDがとられる。すなわち、両方の閾値基準が満たされない場合には、1つの出力が得られるだけである。この場合、部分閉塞は存在せず、あるいは、正常なレベルに戻っている。この場合には、CPAP圧を減少させることが適当である。
【0034】
このような構成によれば、いずれかのアルゴリズムに影響を与える任意の異常な点が回避される。例えば、呼吸の初期に流量制限のない期間が最初に存在すると、流量−時間曲線中に早期の急激なピークを認めることができる。このことは、呼吸の真ん中半分の間にわたるスケール流量が1を下回っている可能性のあることを意味している。したがって、非常に激しく閉塞された呼吸においては、1からのRMS偏差が再び増大する場合があり、第2の形状係数はそのような呼吸を認識し損なう。しかしながら、これらの呼吸は、感度が低下された第1の形状係数によって正確に識別される。幾つかの正常な呼吸は、吸気の真ん中半分の間にわたる平均流量が1に近い場合には、直角三角形に近い吸気流量−時間波形を伴う可能性がある。そのような波形は、いずれの形状係数も正確にもたらさない。すなわち、吸気の真ん中半分の間にわたる瞬間の流量は、1つの点だけで1であり、その他の場所では1よりも大きく或いは1よりも小さいため、単位スケール流量からのRMS偏差は大きい。
【0035】
本発明の1つの形態では、各呼吸の吸気部分に関して新たな形状係数が計算される。他の形態では、2つ以上の呼吸の吸気部分から1つの形状係数が計算される。形状係数の計算で使用される呼吸の数を変えると、デバイスの感度が変わる。含める呼吸を少なくすると、部分閉塞の兆候に対するデバイスの感度が更に高まる。
【0036】
部分閉塞の兆候があるという決定がなされれば、治療圧力が増大されてもよい。例えば、第1の形状係数が1.0を下回ると、CPAP圧は、1.0を下回る比率の大きさに比例して増大される。圧力の変化を得るために、形状係数と閾値との間の差にゲインが掛け合わされてもよい。1つの形態においては、1.0の比率を下回る単位当たりの呼吸毎に1cmHOの増大が使用される。逆に、比率が1.0を上回り、部分閉塞の不存在を示している場合、CPAP圧は20分の時定数をもって徐々に減少する。第2の形状係数が0.2を下回っている場合、CPAP圧は、0.2を下回る単位当たりの呼吸毎に1cmHOの割合で増大される。逆に、形状係数が0.2単位を上回っている場合、圧力は20分の時定数をもって徐々に低下される。部分閉塞の兆候が存在する場合または存在しない場合における圧力の増大または減少の大きさは、部分的には、アルゴリズムがその治療にどのくらい積極的に適応するかを定める。
【0037】
当業者であれば分かるように、例えば丸み指数を、検出感度を高め或いは下げるように制御されてもよい閾値と比較することにより、流量制限を検出するための他の方法が使用されてもよい。
【0038】
(b)いびき検出
前述したように、いびきの検出は、患者の気道における閉塞の指標となり得る。いびき検出器(例えば、参照することによりその全体の内容が本願に組み込まれる米国特許第5,245,995号に開示されている、いびき検出器)によっていびきが検出される場合には、マスク圧力も増大される。所定の呼吸におけるいびき指数が臨界閾値を越える場合、圧力は、閾値を上回る単位当たり1cmHOだけ増大される。
【0039】
圧力が増大される大きさを増やすと、デバイスは更に積極的に治療を行なうようになる。いびき指数におけるデフォルト閾値は0.2単位であり、これは、ベッドサイドに立っている技術者により辛うじて確実に検出できるいびきにほぼ対応している。いびき閾値を増大させると、デバイスの感度は低下する。本発明の1つの形態において、圧力の増大率は、最大で0.2cmHO/秒または12cmHO/分に制限される。逆に、いびき閾値を下げると、デバイスの感度が高くなる。
【0040】
II. 呼吸努力関連覚醒または睡眠覚醒の指数
睡眠呼吸障害を治療する際のデバイスの効果を監視するため、睡眠覚醒または呼吸努力関連覚醒の指数が計算される(この明細書本文の最後にある、請求項で使用されている覚醒指数という用語は、睡眠覚醒または呼吸努力関連覚醒に起因する覚醒の頻度に応じた指標のことである)。1つの形態において、指数は、患者の呼吸のサイズ(規模)から計算される。患者の呼吸のサイズは、空気の流量を経時的に監視するとともに、積分して体積を計算することにより決定することができる。患者が第1のサイズの一続きの或いは一連の呼吸を行なった後に大きな呼吸を行なう場合、これは、不十分な治療によりこの患者が睡眠から目覚める兆候であり、また、更に積極的な治療が必要とされる可能性があるという表示である。例えば、一続きの或いは一連の8個の小さな呼吸に続いて大きな呼吸が起こる場合、これは、患者が睡眠から目覚めることの指標となり得る。1つの形態においては、1つの呼吸が前の呼吸すなわち小さい呼吸の2倍を上回っていた場合、「大きい」と見なされる。複数の呼吸が平均換気量よりも少ない場合、これらの呼吸は「小さい」と見なされる。好ましい形態においては、患者の呼吸を監視するだけで済むが、睡眠覚醒の他の指数が使用されてもよい。例えば、発汗および心拍等の交感神経系の働きの表示を決定するセンサを使用することができる。
【0041】
他の実施形態において、睡眠からの覚醒は、無呼吸後のため息、すなわち、あくびを検出することにより決定されてもよい。これは、CPAP装置によって達成されてもよい。例えば、呼吸における所定の度合いの平坦性または閉塞の後に大きな呼吸が起こるといったことを含む一連の呼吸を検出するために、呼吸気流量が監視される。平坦性または閉塞は、例えば、CPAP圧を増大させるのに十分であると見なすことさえできない軽微な或いはかすかな度合いの平坦性であっても良く、また、非常に感度が高い閾値をもって前述した形状係数により検出されてもよい。「大きい」呼吸は、それが所定の量を有する絶対的に大きい呼吸である場合に「大きい」と見なされても良く、あるいは、更に単純に、それが患者の他の呼吸、例えば大きな呼吸の直前の1または複数の呼吸よりも比較的大きい(これは体積から決定されてもよい)場合に「大きい」と見なされてもよい。例えば、呼吸毎を基本として、吸気部分または呼吸気流量信号が積分されてもよい。このタイプの検出可能な状態が図4に示されている。図中、睡眠覚醒の検出は、流量制限された呼吸n−1または幾つかのそのような呼吸n−1,n−2,n−3に続く呼吸nを検出することに基づいていてもよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、呼吸努力関連覚醒の検出は、流量センサからのデータまたは信号から換気の短期移動平均指標を用いて不規則な呼吸を検査することにより評価されてもよい。指標のピークまたは他の著しい或いは相対的な増大は覚醒事象を示している。短期移動平均は、ローパスフィルタ処理された呼吸気流量信号を、この目的のために選択された時定数をもって積分することにより決定することができる。
【0043】
III. 睡眠覚醒検出に基づく全体制御
本発明に係る全体の或いは「マイクロ制御」アルゴリズムは、患者の治療が成功するかどうかの決定に基づいて、患者を積極的に治療する方法に関する決定を行なった後、それに応じて、「マイクロ制御」ループのパラメータ値を調整する。マクロ制御ループが図2に示されており、マイクロ制御ループが図3に示されている。この場合、図示のように、後者は前者の一部である(図3の最下部に示される関数G,Kは、以下の図7,8に関連して説明する)。睡眠から覚醒してきている患者は更に積極的に治療される。睡眠から覚醒していない患者はあまり積極的に治療されない。同様に、治療の成功の評価に基づいて、アルゴリズムは、閉塞検出ルーチンの感度を調整して、あまり成功しない治療における感度を高める。
【0044】
本発明の1つの形態において、デバイスは、例えば閾値等のパラメータ値のためのデフォルト設定を使用して患者の治療を開始するが、一晩中にわたって睡眠覚醒を監視する。夜の治療の最後に、代表パラメータ値がメモリに記憶され、その後の夜の治療において、前の治療セッションからの代表パラメータ値が治療の初めに使用される。
【0045】
患者が睡眠から覚醒しているという決定がなされた場合には、形状指数を決定するために平均化される呼吸の数が減少される。それが患者の改善を得るのに不十分である場合には、治療圧力の増大を始めるために必要な閾値レベルが調整され、それによりデバイスの感度が高められる。
【0046】
他の形態においては、覚醒指数に基づいて治療の効果がないと決定されると、治療圧力の減少の時定数が増大される。このようにすると、部分閉塞の兆候の検出によって生じた増加の後、長い期間にわたって圧力が高く維持される。
【0047】
随意的に、装置は、前述した覚醒指数のうちの1つにしたがった睡眠覚醒または呼吸努力関連覚醒の事象の検出に応じて治療圧力を増大するように構成されていてもよい。例えば、圧力は、検出された各覚醒事象毎に特定の圧力単位分だけ最大圧まで増大されてもよい。同様に、圧力は、覚醒事象の不存在下で、例えば1時間等の所定の期間にわたって最小支持圧へと減少されてもよい。別の方法として、睡眠覚醒を示す呼吸の直前の1または複数の呼吸周期に関連するデータがその後に装置によって解析されることにより、呼吸関連事象を補償するのに適した比例的な量の治療圧変化が決定されてもよい。したがって、睡眠覚醒の検出によって更なる或いは付加的な解析が引き起こされてもよい。例えば、前の呼吸は、形状係数の一方または前述した閉塞検出器により、ここで説明したように既に受けた感度よりも高い感度の閾値を用いて再び解析されてもよい。新たな解析を用いると、計算された比例的な量の圧力変化は、流量制限が特定の呼吸において以前に検出されなかった場合、流量制限の検出に基づいて生成されてもよい。この実施形態においては、再解析のために、前の呼吸からの流量信号関連データをメモリに記憶することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、制御方法論は、患者が目覚めている間に圧力を低く(4cmHO)維持するためにデフォルト値を採用するが、睡眠の到来と共に圧力を増大させる。そのようにするための方法は技術で知られている。その後、デバイスは、好ましくは患者が眠り込んでいてもよい期間の後、呼吸関連事象覚醒または睡眠覚醒の存在を検出する。1つの形態において、デバイスは、その後、呼吸覚醒を示す大きな呼吸によって終了される流量制限の短い突然の期間を検出するために流量を監視する。デバイスがそのような睡眠覚醒を検出すると、デバイスは、(1)例えば検出閾値に対して調整を行なうことにより、閉塞または他のSDB事象の検出に対して更に感度が高くなり、(2)例えば各事象に応じて使用される圧力ゲインを増大することにより、これらの事象に対するその圧力応答が速くなり或いは積極的になり、(3)覚醒事象が安定し或いは中断したときに圧力を再び下げるために更に消極的となる。
【0049】
その後の睡眠覚醒(スペクトルの安定な端部と不安定な端部との間の患者の中間を表わしている)においては前述したプロセスが繰り返され、それにより、およそ2つの覚醒後あるいはそれに近い数の覚醒後、デバイスは、それ自体を調整して、非常に増大した応答速度をもって治療を行い、また、最適な圧力が見つかると、1時間かそこらの間にわたってその最適な圧力を維持する。
【0050】
好ましくは、更なる呼吸覚醒が検出される場合(スペクトルの最も不安定で覚醒可能な現在不十分に治療された末端を表わしている)、デバイスは、治療圧力を何時までも維持する。したがって、デバイスは、基本的に、睡眠の始まりの自動検出を伴う所定のCPAPデバイスとなる。随意的に、治療の次の日において、デバイスは、前述したそのデフォルト動作に戻ることができ、あるいは、前のセッション中に到達した設定を使用することにより、検出感度、積極的な(急速な)治療圧応答または高圧を維持する持続性を、大きな度合いまたは小さな度合いまで回復することができる。
【0051】
SDBの治療における睡眠覚醒に基づく制御のための方法論/装置が図5および図6に示されている。図5に示されるように、閉塞および/またはいびき検出器は、呼吸気流量から閉塞指数および/またはいびき指数を得る(請求項において使用される閉塞検出は、高い閉塞指数の検出、高いいびき指数の検出、または、これらの両方の検出を包含している)。呼吸努力関連覚醒検出器または睡眠覚醒検出器は、閉塞指数またはいびき指数および呼吸気流量から睡眠覚醒指数を得る。閉塞および/またはいびき指数および睡眠覚醒指数は、その後、圧力決定デバイスにより圧力設定を得る際に利用される。図6は図5の圧力決定デバイスを示している。図6に示されるように、呼吸努力関連覚醒/睡眠覚醒指数は、閉塞/いびき指数と比較して閾値を調整するために適用される。また、睡眠覚醒指数は、ゲインを調整して圧力増大の積極性を変えるためにも適用される。最終的に、睡眠覚醒指数は、治療圧力の回復時定数を調整してSDB事象が正常なレベルに戻った後に圧力減少を遅らせるためにも適用される。すなわち、高い呼吸覚醒指数は、感度の高い閉塞/いびき検出、検出された事象に応じた更に積極的な圧力増大、SDB事象に対する長期にわたる圧力治療をもたらす。
【0052】
(a)睡眠覚醒に基づくゲイン調整
前述したように、検出された睡眠覚醒に応じて、検出されたSDB事象に対して成される圧力応答は、より積極的な圧力増大および/またはあまり積極的でない圧力減少をもたらすように修正されてもよい。様々な機能は、検出された睡眠覚醒の指数に応じてこれらの調整を行なうことができる。例えば、圧力低下の積極性(すなわち、あまり積極的でない減少)は、以下の式を用いて達成することができる。これは、圧力増大を必要とする検出された閉塞が存在しないときに圧力変化としての機能を果たしてもよい。
S>Sのとき、 ΔP=−K(P−Pmin
ここで、
ΔPは、圧力調整または圧力変化;
Kは、検出された睡眠覚醒の関数;
Pは、患者に対して供給される実際の圧力;
minは、所望の最小圧力レベル;
Sは、例えば流量平坦性等の閉塞指数またはいびき指数;
は、閉塞指数における閾値である。
【0053】
睡眠覚醒の様々な関数Kが考えられてもよい。例えば、1つのそのような関数は、検出された睡眠覚醒の数に基づいていてもよい。この場合、Kは、検出された事象の数が最大値まで増大することに伴って減少する。そのような関数が図7に示されている。覚醒の数およびKの最大値の選択は、臨床実験に基づいていても良く、当業者のスキルの範囲内である。図示のように、覚醒の数は、時間の関数に基づいていても良く、例えば1時間当たりを基準にして直前の1時間からの事象の数を使用してもよい。他の実施形態において、関数は、デバイスを用いた特定のセッションにおける睡眠覚醒の数、例えば一晩中にわたる睡眠覚醒の数に基づいていてもよい。一例として示された式においては、閉塞がもはや見出されなくなった後に圧力が減少するため、圧力は、検出された睡眠覚醒の数がこれまでの1時間において15事象に近づくにつれてゆっくりと減少する。したがって、上記関数の結果としての治療圧力の減少は、検出された事象が僅か或いは全くない場合には指数関数的となって最小圧力に近づくが、多数の事象が検出されるとあまり急速に減少しない。図示のように、そのような検出の特定の数を超えると、睡眠覚醒事象の選択された臨界数に近い0にKが近づくにつれてデバイスが治療を取りやめることを防止することができる。
【0054】
逆に、検出された指数を閾値と比較することにより治療されなければならないSDB事象が存在することを形状検出器/いびき指数が示すと、あるゲインに応じて治療圧力が増大される。本発明の一実施形態において、圧力増大率に影響を及ぼすゲインは睡眠覚醒の関数である。そのような1つのゲインは、以下の式にしたがって治療圧力を供給するために使用されてもよい。
S<Sのとき、 ΔP=G(S−S
ここで、
ΔPは、圧力調整または圧力変化;
Gは、検出された睡眠覚醒の関数;
Sは、例えば流量平坦性等の閉塞指数またはいびき指数;
は、閉塞指数における閾値である。
【0055】
例えば、Gにおける指数関数は、検出された睡眠覚醒事象の累積数の増加関数としてゲインを増大するために利用されてもよい。そのような1つの関数が図8に示されている。図示のグラフにおいて、睡眠覚醒の事象が検出されない場合、または、特定の時間後に何も検出されない場合、例えば直前の1時間において何も検出されない場合には、ゲインが典型的なゲインにとどまる。しかしながら、これらの検出された事象の数が蓄積すると、ゲインは、好ましくは特定の最大値またはより高いゲインへ近づく指数関数として増大される。無論、検出された睡眠覚醒事象の数が減少すると、ゲインは、睡眠覚醒関数の選択されたグラフにしたがって減少される。
【0056】
指数関数が示されているが、当業者であれば分かるように、検出された睡眠覚醒事象の数の増大に応じてゲインを増大させるための他の関数、例えば一次関数または他のランプ関数が利用されてもよい。
【0057】
(b)睡眠覚醒に基づく閾値調整
前述したように、睡眠覚醒の指数に応じて閉塞応答閾値を変えることにより、装置の感度の調整または変更が実施されてもよい。当業者であれば分かるように、閾値の大きさの増大または減少による変化が、感度の向上または低下に関連付けられてもよい。この関係は、前述したように特定の閉塞指数およびその閾値の性質(種類)に帰因する。ここで説明した方法に関連する幾つかの適した関数が図9および図10のグラフに示されている。図9に示された典型的なグラフにおいては、検出された事象の数が所定の期間にわたって増大するにつれて、例えば直前の1時間にわたって増大するにつれて、閾値は、ランプ関数等の減少関数となり、低感度値から高感度値へと移行する。例えば、前述したようにいびき閾値を調整する場合、睡眠覚醒事象が検出されないと、いびき閾値は、約0.2単位のそのデフォルト(初期設定値)を維持してもよい。しかしながら、覚醒事象の数が増大すると、閾値は、ランプ関数または一次関数にしたがって更に低い閾値へと減少されても良く、これにより、いびき関連の閉塞事象の検出が行なうことができるようになる(感度向上)。
【0058】
図10のサンプルグラフは、前述した形状係数の感度を調整または変更するために利用されてもよい。図示のように、検出される睡眠覚醒事象が存在しない場合には、デフォルト閾値が一定に維持されてもよい。しかしながら、睡眠覚醒の検出数が増大するにつれて、形状係数閾値が増大し、閉塞事象の検出を更に行なえるようになり(感度が更に高くなる)、その結果、検出された閉塞事象を扱うための圧力治療の増大の可能性が高まる。当業者であれば分かるように、様々な閉塞閾値の感度を変更するために睡眠覚醒指数の他の関数が利用されてもよい。
【0059】
同様に、閾値は、治療圧力の関数であってもよい。そのような1つの関数が図11に示されており、これは前述した第2の形状係数に関連している。本実施例において、閾値は、治療圧力が10cmHOを越えるまで、0.15単位のデフォルト値に保持される。その後、閾値は、治療圧力が20cmHOに近づくにつれて減少して0に近づく。
【0060】
本発明の他の形態において、睡眠呼吸障害を治療するための装置には、治療アルゴリズムの「ツールボックス」から最も適した治療を選択するようにプログラムされたコントローラが設けられている。コントローラは2つの部分を有している。
【0061】
第1の部分は、異なる形態の治療、例えば基本的なCPAP、自動的に調整するCPAP(例えば米国特許第5,704,345号に記載されているようなCPAP)、2レベルCPAPまたは例えばチェーン・ストークス(CS)呼吸の治療のための更に複雑な療法(例えば、相互参照することによりその内容が本願に組み込まれる米国特許第6,532,959号を参照)を行なうようにプログラムされている。
【0062】
第2の部分は、患者および現在の治療アルゴリズムの効果を監視する。したがって、本発明に係る装置は、中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸との間を区別できる無呼吸モニタ(例えば、米国特許第5,704,345号を参照)と、酸素脱飽和事象を検出できるオキシメータと、いびきモニタとを有している。複数の指数が計算される。例えば、コントローラは、中枢性無呼吸事象、閉塞性無呼吸事象、呼吸低下事象、脱飽和事象の数を決定するとともに、無呼吸呼吸低下(AHI)、中枢性無呼吸指数(CI)、脱飽和指数(DI)等の適切な指数を決定する。流量平坦性のように、いびきの強さおよび重症度も監視される。
【0063】
コントローラは、特定のモードが示されると、治療モードを変更する。1つの形態において、デバイスは、例えば8〜12cmHO、好ましくは9cmHOの状態の範囲の治療に適した圧力での基本的なCPAP治療にデフィルト値を採用する。いびき、流量平坦性、閉塞性無呼吸は、治療レベルが不十分である可能性がありデバイスが自動CPAP治療アルゴリズムへ切り換わることを示している(米国特許第5,704,345号参照)。しかしながら、AHI>5/時間は、自動CPAPアルゴリズムの感度を高める必要があることを示しており、その結果、コントローラがこれを試みる。CI>5/時間は、2レベルCPAPまたはチェーン・ストークス治療アルゴリズムが適切であることを示している。AHI+CI>5/時間である場合には、2レベルまたはCS治療が指示される。継続中の定期的な脱飽和(例えば、3%〜4%脱飽和>10/時間)は2レベルCPAPを必要とする。
【0064】
本発明の1つの形態では、中枢性無呼吸検出器が含まれている。そして、これは、鬱血性心不全(CHF)における中枢性無呼吸の発生を監視するために使用することができる。中枢性無呼吸を監視することにより、病気の進行を監視することができる。病気の進行について医師に警告するため、警報またはデバイスメッセージを使用することができる。また、中枢性無呼吸は代償不全の始まりを示しているため、深刻な代償不全の警告および入院の要求を行なうために本発明を使用することができる。
【0065】
様々な選択的な実施形態および特徴に関して本発明を説明してきたが、これらの実施形態および特徴が本発明の原理の単なる一例にすぎないことは言うまでもない。当業者であれば分かるように、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、他の変形例を成すことができる。
【符号の説明】
【0066】
2…電動機、3…サーボ、4…コントローラ、5…マスク、6…可撓性導管、7…スイッチ、8…ディスプレイ、10,11,12…センサ、15…通信インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置であって、少なくとも2つの治療モードを与えるようになっている内側ループ制御機構と、前記内側ループ制御機構によって与えられる治療の効果を監視し、必要に応じてモードの変更を制御するようになっている外側ループ制御機構とを備える装置。
【請求項2】
前記内側ループ制御機構によって与えられる治療モードが、基本的なCPAP、自動的に調整するCPAP、2レベルCPAP、チェーン・ストークス呼吸の治療から選択される少なくとも2つを含む、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。
【請求項3】
前記外側ループ制御機構が、中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸との間を区別し、または、酸素脱飽和事象を検出し、または、いびきを監視し、あるいは、これらのうちの2つ以上を行なう、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。
【請求項4】
前記外側ループ制御機構が、中枢性無呼吸事象の数、閉塞性無呼吸事象の数、呼吸低下事象の数、脱飽和事象の数のうちの少なくとも2つを決定する、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。
【請求項5】
前記外側ループ制御機構が、無呼吸呼吸低下指数(AHI)、中枢性無呼吸指数(CI)、脱飽和指数(DI)等の適当な指数を決定する、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。
【請求項6】
前記外側ループ制御機構が、いびきの強さおよび重症度を監視する、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。
【請求項7】
前記外側ループ制御機構が流量平坦性を監視する、請求項1に記載の睡眠呼吸障害を監視して治療するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−227595(P2010−227595A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−133766(P2010−133766)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【分割の表示】特願2006−540093(P2006−540093)の分割
【原出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD