説明

睡眠改善用組成物

【課題】睡眠障害に高い改善効果を示し、しかも安全で日常的に簡便に摂取することが可能で、快適な睡眠を得ることができる優れた睡眠改善用組成物の提供。
【解決手段】乳蛋白質の主成分であるカゼインの加水分解物、及びサプリメントとして日常的に摂取されているミネラルを含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。この組成物は夜間に眼が覚める、睡眠が浅いといった睡眠障害に対して高い改善効果を示すとともに、安全性が高く、日常的に継続して摂取することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠改善用組成物に関し、詳細には、カゼインの加水分解物及びミネラルを含有する効果の高い睡眠改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においてストレスとは、外的な刺激が及ぼす様々な心身の反応のことをさす。本来、生体は恒常性を維持する方向に働き、種々のストレスに対しても適応していくことができるが、その適応が上手く働かなくなると、中枢神経系、自律神経系、内分泌系や免疫系などに不具合が発生し、様々な症状を自覚するようになる。そのような症状は多彩であり、高血圧、低血圧、高血糖、不整脈、頻脈、頭痛、睡眠障害(不眠など)、めまい、眼精疲労、下痢、便秘、腹痛、食欲不振、過食、吐き気、歯ぎしり、肩こり、腰痛、筋肉痛、倦怠感、しびれ、じんましん、アトピー、ぜん息、生理不順、更年期症状、冷や汗、多汗、動悸、息切れなどである。
【0003】
近年、ストレス社会とも言われるほどストレスを感じる機会は増加しており、上記の症状の中でも、睡眠障害に悩む人が多くなってきている。現代人の8割が不眠の経験があるという調査結果もあり、日本人の5人に1人以上の人が睡眠障害に悩んでいるといわれている。
【0004】
不眠は、一般に、寝つきが悪い入眠障害、何度も目が覚める熟眠障害、早朝に用もないのに起きてしまう早期覚醒などに分類される。睡眠障害の治療には、適度のアルコール摂取、生活習慣の改善や寝具の改善などが有効といわれているが、睡眠障害に悩むような人にはこれらはほとんど効果がないのが実状である。薬物を用いた治療法としては、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や、抗ヒスタミン系の睡眠補助薬などが用いられているが、これらの薬剤には精神症状や筋弛緩作用などの副作用があり、また、医薬品であるため簡便に入手することができず、その使用には問題がある。
【0005】
また、抗ヒスタミン薬の催眠作用を増強する為に、抗ヒスタミン薬と、ビタミン類及び/又はミネラルから選択される化合物の1種又は2種以上との併用が特許文献1に開示されている。しかしながら、医薬品である抗ヒスタミン薬を用いることを前提としたものであり、前記の問題点は残されている。
【0006】
一方、特許文献2には、ミルクカゼインの酵素加水分解物に含まれる配列番号1のデカペプチドにベンゾジアゼピン型の活性があることが記載され、鎮静効果があることが開示されている。このように、医薬品ではない食品成分に睡眠誘導作用や睡眠補助作用を求めて、様々な研究がなされ、リラックス効果などを謳った商品が販売されているが、満足のいく効果を有するものは得られていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−325070号公報
【特許文献2】特開平8−268903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、睡眠障害に高い改善効果を示し、しかも安全で日常的に簡便に摂取することが可能で、快適な睡眠を得ることができる優れた睡眠改善用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ね、カゼイン加水分解物とミネラルとを併用することによって、高い睡眠改善効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)カゼイン加水分解物及びミネラルを含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。
(2)カゼイン加水分解物が配列番号1で表されるペプチドを含む、(1)記載の組成物。
(3)カゼイン加水分解物がカゼイン酵素分解物である、(1)又は(2)記載の組成物。
(4)ミネラルとして、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、カリウム化合物、亜鉛化合物及び鉄化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)ミネラルとしてカルシウム化合物を含む、(4)記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の睡眠改善用組成物は、夜間に眼が覚める、睡眠が浅いといった睡眠障害に対して高い改善効果を示す。また、本発明の睡眠改善用組成物は、乳蛋白質の主成分であるカゼインの加水分解物、及びサプリメントとして日常的に摂取されているミネラルを有効成分としているため、安全性が高く、日常的に継続して摂取することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の睡眠改善用組成物は、カゼイン加水分解物に、ミネラルを配合することにより調製することができる。
【0013】
本発明の睡眠改善用組成物に用いるカゼイン加水分解物としては、睡眠障害を改善するものであれば、特に制限されない。カゼインは乳蛋白質の主体をなす蛋白質である。カゼインは牛乳由来であることが好ましく、一般的には、牛乳から脂肪を除いて得られる脱脂乳を20℃で酸を加えてpH4.6にすると、沈殿として得られる。カゼインはαカゼイン、βカゼイン及びκカゼインなどの複数の分子から構成され、それぞれは分子量約23000Da、23000Da、19000Daの蛋白質である。カゼインとして、これらのうちの1種類を用いてもよいし、複数種の混合物を用いてもよい。カゼイン加水分解物の調製は、カゼイン塩、例えば、カゼインのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を用いてもよい。従って、本発明においてカゼインには、カゼイン塩も包含される。カゼインは、通常、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から常法により精製して得ることができる。カゼインとして、具体的には、例えば、全カゼイン、酸カゼイン、乳酸カゼイン、硫酸カゼイン、塩酸カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート又はこれらの任意の混合物を用いることができる。
【0014】
カゼインの加水分解方法としては、公知の方法を用いればよく、例えば、酵素による加水分解方法及び酸による加水分解方法が挙げられる。
【0015】
酵素を用いて蛋白質を加水分解する場合は、通常、水性媒体中のカゼインに、1種又は複数種の蛋白質分解酵素を作用させて加水分解物を生成することができる。このとき、水性媒体中のカゼインの濃度は、通常、蛋白質換算で1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲が効率性及び操作性の点から望ましい。加水分解の際のpHは、使用する蛋白質分解酵素の至適pH付近に調整することが好ましい。加水分解の反応温度は、酵素作用の発現する最適温度範囲が好ましく、一般的には5〜80℃、好ましくは30〜70℃の範囲である。
【0016】
カゼインの加水分解に用いる蛋白質分解酵素としては、トリプシン及びズブチリシンなどのセリンプロテアーゼ、ペプシン及びカテプシンなどのアスパラギン酸プロテアーゼ、サーモリシンなどの金属プロテアーゼ、並びにパパインなどのシステインプロテアーゼなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、セリンプロテアーゼが好ましく、特にトリプシンが好ましい。
【0017】
酸を用いて蛋白質を加水分解する場合、酸の種類や規定度により適宜調節する必要があるが、通常、水性媒体中におけるカゼイン濃度を、1.0〜80質量%にして処理する。例えば、カゼインを水性媒体中に十分に分散させた後、酸規定度0.01〜2規定の範囲になるように酸を加え、水性媒体の温度を50〜100℃にして10分〜6時間反応させることにより、加水分解する。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸、酢酸、ギ酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸及びクエン酸等の有機酸が挙げられ、好ましくはギ酸及び酢酸が用いられる。
【0018】
加水分解処理の程度は、特に制限されないが、例えば、加水分解物の質量平均分子量が100〜50000Da、好ましくは200〜10000Da、さらに好ましくは500〜5000Da程度になるまで実施するのが好ましい。
【0019】
本発明の睡眠改善用組成物に用いられるカゼイン加水分解物としては、以下の式:Tyr−Leu−Gly−Tyr−Leu−Glu−Gln−Leu−Leu−Arg(配列番号1)で表されるアミノ酸10個が結合したデカペプチドを含むものが好ましい。このデカペプチドの精製物をカゼイン加水分解物として用いてもよい。なお、Tyrはチロシン、Leuはロイシン、Glyはグリシン、Gluはグルタミン酸、Glnはグルタミン、Argはアルギニンを表す。各アミノ酸はL−アミノ酸、D−アミノ酸及びラセミ体のいずれでもよく、例えば、デカペプチドの一部のアミノ酸がD−型、別の一部のアミノ酸がL−型、残りのアミノ酸がラセミ型となっていてもよい。すべてのアミノ酸がL−アミノ酸から構成されるデカペプチドが好ましい。
【0020】
上記デカペプチドは特許文献2に開示されており、カゼインの91〜100番目のアミノ酸配列に相当し、カゼインの酵素分解、特にトリプシン分解により得られる。カゼインを特許文献2に開示された方法によりトリプシンで加水分解すると、上記デカペプチドを5〜6質量%程度含有するペプチド混合物が得られる。加水分解条件を適宜設定することにより、0.5〜8質量%程度の上記デカペプチドを含有するペプチド混合物が得られる。このデカペプチドを含む加水分解物をそのまま本発明の睡眠改善用組成物に用いてもよいし、各種クロマトグラフィー(逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなど)、遠心分離、限外濾過などの慣用技術によって適度に分画、精製又は濃縮を行ったものを用いてもよい。
【0021】
カゼイン加水分解物に、上記デカペプチドを化学合成(液相合成法、固相合成法、ステップワイズペプチド固相合成法など)によって合成したものを添加して用いてもよい。
【0022】
カゼイン加水分解物としては、市販品を用いることもできる。例えば、ラクティウム(イングレディア社)は、カゼインをトリプシンにより加水分解したペプチド混合物であり、配列番号1のデカペプチドを約0.5〜8質量%含有する。これをそのまま、あるいは必要に応じて常法により精製して用いてもよい。
【0023】
本発明の睡眠改善用組成物においてカゼイン加水分解物の一日あたりの摂取量は、ペプチドの総質量を基準として、成人で0.1〜3000mg、好ましくは1〜1000mg、さらに好ましくは10〜500mgである。カゼイン加水分解物として、配列番号1のデカペプチドを精製して用いる場合には、上記カゼイン加水分解物の摂取量とカゼイン加水分解物中のデカペプチド含量とを勘案して決定すればよい。本発明の睡眠改善用組成物におけるカゼイン加水分解物の配合量は、前記摂取量が摂取できるように配合すればよく、一般的には、睡眠改善用組成物中、乾燥質量基準で、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜65質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。カゼイン加水分解物を精製しないで用いる場合、乾燥質量基準で、1質量%以上で配合するのが好ましい。
【0024】
本発明の睡眠改善用組成物に用いられるミネラルとしては、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、カリウム化合物、亜鉛化合物及び鉄化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カルシウム化合物、マグネシウム化合物、カリウム化合物、亜鉛化合物及び鉄化合物は、それぞれ、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛及び鉄、並びにそれらを含む化合物をさし、例えば、それぞれの塩やハロゲン化物も包含される。塩は、薬学的に又は食品として許容できる塩であれば特に制限されないが、例えば、酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等の無機酸との塩、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびクエン酸等の有機酸との塩が挙げられる。ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物が挙げられる。本発明の睡眠改善用組成物は、ミネラルとしてカルシウム化合物を含むことが好ましい。ミネラルは、化学合成によるもの、鉱物由来のもの、天然由来のもののいずれも使用できる。
【0025】
カルシウム化合物としては、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、L−グルタミン酸カルシウム、5'−リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、プロピオン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酸化カルシウムなどが挙げられる。このような各種カルシウム化合物は、天然のカルシウム源(貝殻、骨、牛乳等)から精製して用いてもよいし、市販の各種カルシウム素材やカルシウム試薬などを購入して用いてもよい。
【0026】
マグネシウム化合物としては、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウムと炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化マグネシウムと硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの共沈生成物などが挙げられる。このような各種マグネシウム化合物は、天然のマグネシウム源(マグネサイト、ドロマイトなど)から精製して用いてもよいし、市販の各種マグネシウム素材やマグネシウム試薬などを購入して用いてもよい。
【0027】
カリウム化合物としては、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硫酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、過炭酸カリウムなどが挙げられる。このような各種カリウム化合物は、天然のカリウム源(バナナなど)から精製して用いてもよいし、市販の各種カリウム素材やカリウム試薬などを購入して用いてもよい。
【0028】
亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛などが挙げられる。このような各種亜鉛は、天然の亜鉛源(牡蠣、レバーなど)から精製して用いてもよいし、市販の各種亜鉛素材や亜鉛試薬などを購入して用いてもよい。
【0029】
鉄化合物としては、塩化第二鉄、塩化第三鉄、酸化鉄、四酸化三鉄などが挙げられる。このような各種鉄は、天然の鉄源(ほうれん草、レバーなど)から精製して用いてもよいし、市販の各種鉄素材や鉄試薬などを購入して用いてもよい。
【0030】
本発明の睡眠改善用組成物においてミネラルの一日あたりの摂取量は、成人で0.001〜10g、好ましくは0.01〜5g、さらに好ましくは0.1〜1gである。本発明の睡眠改善用組成物におけるミネラルの配合量は、前記摂取量が摂取できるように配合すればよく、一般的には睡眠改善用組成物中、乾燥質量基準で、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜70質量%、さらに好ましくは1〜60質量%である。
【0031】
本発明の睡眠改善用組成物は、睡眠改善作用を有し、換言すれば、睡眠障害を改善することができる。睡眠障害は、睡眠に関連する障害、特に睡眠の量及び質の低下並びにそれに伴う症状をさし、例えば、不眠症(入眠障害、熟眠障害及び早期覚醒を含む)、睡眠不足、一次不眠症、ナルコレプシー、概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群及び睡眠随伴症などが包含される。本発明の睡眠改善用組成物により、寝つき・寝起きが悪い、睡眠が浅い、夜中に目が覚める、目が覚めると眠れない、睡眠にストレスを感じる、といった睡眠に関連する症状を改善することができる。
【0032】
本発明の睡眠改善用組成物に用いられるカゼイン加水分解物及びミネラルは、いずれも食品として用いられている成分である。従って、本発明の睡眠改善用組成物は、食品として、広く一般に提供することができ、疾患とはいえない一般的な睡眠障害の改善に適用するためにも有用である。すなわち、本発明の睡眠改善用組成物の形態は特に制限されず、例えば、医薬組成物として、又は食品(飼料を含む)として調製することができる。
【0033】
本発明の睡眠改善用組成物は、種々の動物に投与することができ、好適には哺乳動物に投与される。哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギなどの齧歯類、イヌ及びネコなどの愛玩動物、並びにウシ、ウマ及びブタなどの家畜が挙げられる。本発明の睡眠改善用組成物は、霊長類、特にヒトへの投与に好適である。睡眠障害を有するヒト、睡眠障害になる可能性があるヒトに本発明の睡眠改善用組成物を投与することが特に好ましい。
【0034】
本発明の睡眠改善用組成物を医薬組成物として調製する場合は、通常、有効成分であるカゼイン加水分解物及びミネラルと、好ましくは薬学的に許容される担体とを含む製剤として調製する。本発明の睡眠改善用組成物は、さらに、薬学的に慣用される添加剤、例えば、賦形剤、基剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、可塑剤、消泡剤、糖衣剤、剤皮、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、界面活性剤、可溶化剤、緩衝剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、分散剤、抗酸化剤、充填剤、粘稠剤、粘稠化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤・香料、芳香剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0035】
医薬組成物の剤形は、特に制限されず、錠剤、丸剤、顆粒剤、粉剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤、液剤、坐剤、流動食等の経口投与形態、吸入剤、舌下錠、点鼻スプレー剤、DDS製剤、注射剤等の非経口投与形態など任意の剤形とすることができる。
【0036】
医薬組成物の投与方法としては、経口投与の他、医薬の投与に一般に使用されている投与方法、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、経皮投与、皮下投与等が挙げられる。また、直腸、舌下、鼻内など消化管以外の粘膜から吸収せしめる投与方法を採用することも可能であり、この場合、例えば、DDS製剤、坐剤、舌下錠、点鼻スプレー剤等の形で投与することができる。消化管や粘膜からの吸収の形態をとる場合、カゼイン加水分解物としては、配列番号1のデカペプチドの精製物を含む組成物として投与するのが好ましい。
【0037】
本発明の睡眠改善用組成物を食品として調製する場合、その形態は特に制限されない。食品には飲料も包含され、健康食品、特定保健用食品及び機能性食品も包含される。健康食品、特定保健用食品及び機能性食品は、具体的には、錠剤、丸剤、顆粒剤、粉剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤、液剤、流動食等の各種製剤形態とすることができる。製剤形態の食品は、医薬製剤と同様に製造することができ、例えば、適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)を加えた後、慣用の手段を用いて製造することができる。食品の具体例として、さらに、コーヒー飲料、茶飲料、果汁入り飲料、清涼飲料、乳飲料及びアルコール飲料などの飲料、バター、マヨネーズ、ショートニング及びマーガリンなどのスプレッド類、クッキー、チョコレート、キャンディ及びチューインガムなどの菓子類、種々のサラダドレッシング、パン類、麺類、米飯類、パスタ類、ソース類、各種調味料、各種ダイエット製品などが挙げられる。
【0038】
食品形態の本発明の睡眠改善用組成物には、有効成分であるカゼイン加水分解物及びミネラルに加えて、医薬、食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤を配合することができ、さらに種々の活性物質を共存させてもよい。このような添加剤及び活性物質としては、各種油脂、生薬、アミノ酸、多価アルコール、天然高分子、ビタミン、食物繊維、界面活性剤、精製水、賦形剤、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー、着色料及び香料などが挙げられる。
【0039】
油脂としては、例えば、大豆油、サフラワー油及びオリーブ油等の植物油、牛脂及びイワシ油等の動物油脂が挙げられる。
【0040】
生薬としては、例えば、牛黄、地黄、枸杞子、ロイヤルゼリー、人参及び鹿茸等が挙げられる。
【0041】
アミノ酸類としては、例えば、アラニン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、タウリン及びカルニチン等が挙げられる。
【0042】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及び糖アルコール等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びマンニトール等が挙げられる。
【0043】
天然高分子としては、例えば、アラビアガム、澱粉、改質澱粉、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガム、カゼイン、グルテン、グルテン加水分解物、レシチン及びデキストリン等が挙げられる。
【0044】
食物繊維としては、ガム類、マンナン、ペクチン、ヘミセルロース、リグニン、β−グルカン、キシラン及びアラビノキシランなどが挙げられる。
【0045】
界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリド及びレシチン等が挙げられる。
【0046】
賦形剤としては、例えば、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、乳糖、ソルビトール、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、サイクロデキストリン及びポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0047】
ビタミンとしては、水溶性ビタミン及び脂溶性ビタミンが包含される。水溶性ビタミンとしては、ビタミンB群及びビタミンCが挙げられる。ビタミンB群には、ビタミンB1及びその誘導体、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、オロット酸、さらにビオチン、パントテン酸、ニコチン酸、葉酸などの各種ビタミンB複合体が包含される。ビタミンB1及びその誘導体には、チアミン又はその塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン又はその塩、ジセチアミン、ビスブチチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、チアミンモノフォスフェートジスルフィド、シコチアミン、オクトチアミン及びプロスルチアミンなどのビタミンB1の生理活性を有する全ての化合物が包含される。脂溶性ビタミンとしては、ビタミンE、ビタミンD又はその誘導体、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンA及びβカロチン等が挙げられる。
【0048】
有機酸としては、脂肪酸などのモノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸及びグルコン酸などのジカルボン酸やトリカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
上記以外に、例えば、タウリン、グルタチオン、クレアチン、α-リポ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、テアニン、γ−アミノ酪酸、カプサイシン、フラボノイド類、ポリフェノール類、重合ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドン等を配合してもよい。これら成分の配合量は、その種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、本発明の睡眠改善用組成物中、乾燥質量基準で、通常0.01〜90質量%である。
本発明の睡眠改善用組成物を飼料として用いる場合、飼料は、対象が人以外であることを除き食品とほぼ等しいことから、本明細書における食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0050】
本発明の睡眠改善用組成物には、他の睡眠を改善する成分、例えば、トマト酢、GABA、カルニチン、マカ、グリシン、テアニン、バレリアン、アシュワガンダ、パッションフラワー、セントジョーンズワート、ザイラリア、トリプトファン、ホップ、米胚芽、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ジフェンヒドラミンなどの1種又は2種以上を含ませることができる。その配合割合は、その種類、組成物の形態、用途、期待される効果等に応じて、適宜設定することができ、何ら制限されるものではないが、一般的に乾燥質量基準で、本発明の睡眠改善用組成物中、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%、さらに好ましくは0.5〜60質量%である。
【0051】
さらに本発明の組成物には、上記以外に種々の機能性成分、例えば、セラミド、コラーゲン、アスタキサンチン、共役リノール酸、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ−アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドンなどを配合してもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
カゼイン加水分解物(ラクティウム;イングレディア社)75g、カルシウム(ミルクカルシウム;森永乳業)278g、脱脂粉乳200g、パラチノース450g、及び糖アルコール297gを混合し、これにエタノール300mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、打錠機を用いて打錠し、1錠が1.3gの錠剤を1000錠製造した。
【0054】
(実施例2)
カゼイン加水分解物(ラクティウム;イングレディア社)130g、マグネシウム(炭酸マグネシウム;富田製薬)185g、脱脂粉乳200g、パラチノース520g、及び糖アルコール265gを混合し、これにエタノール300mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、打錠機を用いて打錠し、1錠が1.3gの錠剤を1000錠製造した。
【0055】
(比較例1)
カゼイン加水分解物(ラクティウム;イングレディア社)75g、脱脂粉乳280g、パラチノース600g、及び糖アルコール345gを混合し、これにエタノール300mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、打錠機を用いて打錠し、1錠が1.3gの錠剤を1000錠製造した。
【0056】
【表1】

【0057】
(試験例)睡眠改善試験
日常的に睡眠不足や睡眠障害を感じている成人に実施例1(7人)及び比較例1(12人)の錠剤を7日間、1日1回2錠ずつ夕食後に服用してもらい、症状の改善効果を検討した。効果はアンケートで集計し、表2の各項目について、服用前及び服用後に回答(複数回答)をもらった。結果は、服用前に症状を自覚した人が、服用後に自覚がなくなった割合を改善率(%)として表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2より、本発明のカゼイン加水分解物及びミネラルを含有する睡眠改善用組成物は、カゼイン加水分解物だけを含有する比較例の組成物よりも、各種の睡眠障害に対して高い改善効果を有することが示された。
【0060】
(実施例3)飴
カゼイン加水分解物(ラクティウム;イングレディア社)1質量部、カルシウム(ミルクカルシウム;森永乳業)2質量部、粉末ソルビトール96.5質量部、香料0.5質量部を混合し、常法にしたがって飴を調製した。
【0061】
(実施例4)キャラメル
カゼイン加水分解物(ラクティウム;イングレディア社)2.4質量部、カルシウム(ミルクカルシウム;森永乳業)3質量部、グラニュー糖32質量部、水飴20質量部、粉乳34質量部、硬化油3.9質量部、食塩0.6質量部、香料0.1質量部、水4質量部を混合し、常法にしたがってキャラメルを調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼイン加水分解物及びミネラルを含有することを特徴とする睡眠改善用組成物。
【請求項2】
カゼイン加水分解物が配列番号1で表されるペプチドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
カゼイン加水分解物がカゼイン酵素分解物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
ミネラルとして、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、カリウム化合物、亜鉛化合物及び鉄化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
ミネラルとしてカルシウム化合物を含む、請求項4記載の組成物。

【公開番号】特開2009−13143(P2009−13143A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180266(P2007−180266)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】