説明

睡眠改善用香料組成物およびこれを含有する化粧料、並びに睡眠を改善する方法

【課題】 睡眠改善効果に優れ、香り立ちのバランス、香りの持続性の良好な嗜好性の高い睡眠改善用組成物および睡眠を改善する方法を提供すること。
【解決手段】 サイプレス油、ラベンダー油を含有することを特徴とする睡眠改善用香料組成物および、就寝中のヒトにサイプレス油とラベンダー油との香りを一緒に嗅がせることにより、ヒトの睡眠を改善する方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイプレス油およびラベンダー油を含有する睡眠改善用香料組成物およびそれを含有する化粧料、並びに睡眠を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会生活の変化にともない、入眠障害、中途覚醒、熟睡障害、早朝覚醒などの症状を示す不眠症の悩みを持つ人々が増加している。不眠の要因としては、環境要因、生理的要因、心理的要因、器質的疾患要因、精神疾患要因が考えられる。なかでも、悩みや心配事、ストレスが要因となる心理的要因による不眠症がストレス社会と呼ばれる現代社会を反映して増加している。
ストレスに起因する対処法の1つとして、アロマテラピーが用いられることがある。不眠症に効果がある精油としては、イランイラン油、オレンジ油、カモミールロマン油、クミン油、コリアンダー油、プチグレン油、ベルガモット油、マジョラム油、マンダリン油、ラベンダー油、レモンバーベナ油、レモンバーム油等が知られている。
アロマテラピーに用いられる精油は香りの嗜好性や芳香の強さにより不快感をもよおすことがあった。そのような問題を解決する技術として、層状の芳香シート等にすることで初期の芳香が強すぎず、かつ適度に持続し、目的とする効果を発揮し、使用後には芳香が残らない芳香用品が研究されてきた。(例えば、特許文献1参照)
また、従来の睡眠薬の副作用を生じずに睡眠補充および/または導入用精油組成物として、シソ科植物から得られる1種以上の精油と、ミカン科植物から得られる1種以上の精油とアオイ科植物、フトモモ科植物、クワ科植物、ツバキ科植物およびモクセイ科植物から得られる1種以上の精油を組み合わせて用いる技術が検討されてきた。これらの技術のなかでラベンダー精油を用いて芳香用品の有用性や、ラベンダー油、ネロリ油、オレンジ油、ホップ油を組み合わせてアロマテープにして有効性を検討している。(例えば、特許文献2参照)
一方、女性用精神的疲労改善剤としては、有効成分である16−アンドロステンステロイドとリラックス作用を有する特定植物の精油を組み合わせることで、高い精神的疲労改善効果が得られることを検討した技術があり、有効成分とラベンダー精油、イランイラン精油やサイプレス精油、サンダルウッド精油等の植物精油との組合せにより精神的疲労改善効果を検討している。(例えば、特許文献3参照)
【0003】
【特許文献1】特開2008−56594号公報
【特許文献2】特開2000−355545号公報
【特許文献3】特開2008−156276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不眠症に効果がある精油としてあげられているラベンダー精油であっても、適用方法により、効果の現れ方が異なったり、組み合わせる精油により、効果が表れなかったり、睡眠改善ではないが、使用する植物精油の組合せによっては、有効成分の効果が得られなくなることがあった。
また、香水やスキンケア化粧料のみならず、芳香用品においても、香りの強さによって不快感をもよおすことがあり、特に、香りの質は、不快感を引き起こす要因になり、それが睡眠改善に悪影響を及ぼすことになるものである。
睡眠改善の研究では、有効成分の評価については多く検討されてきたが、このような香りの質の嗜好性に対しては検討されてこなかった。また、最近は、化粧料だけでなく、香りも自然派志向になってきているため、よりナチュラル感のある香りが望まれている。また、不眠症の中でも特に入眠障害、熟睡障害に対する改善方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、サイプレス油およびラベンダー油含有することにより、睡眠改善効果に優れ、香り立ちのバランス、香りの持続性が良好であり、香りの嗜好性が高い睡眠改善用香料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
更に、サイプレス油とラベンダー油の比が質量比で1:5〜9:1で含有する睡眠改善用香料組成物である。
サイプレス油およびラベンダー油の含有量の合計が組成物中25〜100質量%である睡眠改善用香料組成物である。
睡眠改善が入眠時間を短縮することである睡眠改善用香料組成物である。
睡眠改善用香料組成物を含有する化粧料である。
化粧料が、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、またはオーデコロンである。
睡眠改善用香料組成物を含有する睡眠改善用室内芳香料である。
就寝中のヒトにサイプレス油とラベンダー油との香りを一緒に嗅がせることにより、ヒトの睡眠を改善する方法である。
ヒトの身体の一部にサイプレス油とラベンダー油との香料組成物を塗布または噴霧して睡眠を改善する方法である。
拡散器(以下、「ディフューザー」と記載することもある。)を用いて、香りを散布、拡散してヒトに嗅がせることより、ヒトの睡眠を改善する方法である。ここで、ディフューザーとは、香りを拡散するための器具をいう。
【0006】
すなわち本発明はサイプレス油とラベンダー油とを含有することにより、睡眠改善効果に優れ、特に入眠にかかる時間を減少させ入眠障害を改善したり、睡眠中の覚醒回数を減少させて熟睡障害を改善する効果に優れ、更に香り立ちのバランス、香りの持続性の良好な嗜好性の高い睡眠改善用香料組成物およびこれを含有する化粧料、並びに睡眠を改善する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の睡眠改善用香料組成物は睡眠改善性に優れ、香り立ちのバランス、香りの持続性の良好な嗜好性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】イ.睡眠改善度B体動の測定結果:実施例1と比較例2のアクティグラフを使用して、体動を測定することにより得られた入眠時間の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるサイプレス油は、ヒノキ科キトルス属の樹木から得られる精油であり、葉、球果部、枝等より水蒸気蒸留法等を用いて抽出することができる。主な成分としては、α−ピネン、δ−3カレン、カディネン等が挙げられる。原産国はフランスやイタリア等挙げられるが、特にイタリアンサイプレス油が好ましい。
サイプレス油の含有量は、睡眠改善用香料組成物中4〜90質量%(以下、単に「%」と示す)が好ましく、25〜75%がより好ましい。この範囲であれば、良好な睡眠改善効果、香り立ちのバランス、香りの持続性が得られる。
【0010】
本発明に用いられるラベンダー油は、シソ科ラバンデュラ属の植物から得られる精油であり、花弁、花茎部、枝等より水蒸気蒸留法等を用いて抽出することができる。主な成分としては、リナロール、酢酸リナリル、リナロールオキシド、シネオール、D−カンファー等が挙げられる。原産国は、フランス、イタリア、ハンガリー、イギリス、北アメリカ、オーストラリア、北海道等が挙げられる。
ラベンダー油の含有量は睡眠改善用香料組成物中2.5〜83%が好ましく、25〜75%がより好ましい。この範囲であれば、良好な睡眠改善効果、香り立ちのバランス、香りの持続性が得られる。
【0011】
サイプレス油とラベンダー油の比は質量比で1:5〜9:1が好ましく、更に1:3〜3:1が好ましい。この範囲であれば、良好な睡眠改善効果、香り立ちのバランスが良く、香りの持続性が得られる。サイプレス油およびラベンダー油の含有量の合計が睡眠改善用香料組成物中25〜100%が好ましく、40〜90%がより好ましい。この範囲であれば、良好な睡眠改善効果、香り立ちのバランス、香りの持続性が得られる。
【0012】
本発明において、サイプレス油、ラベンダー油以外で、本発明の効果を損なわない範囲で更に香料を配合することにより、香り立ちのバランス、香りの嗜好性を調整することができる。ここで用いる香料としては、レモン油、ベルガモット油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ユーカリプタス油、ラバンジン油、ガルバナム油、カモミールロマン油、コリアンダー油、アルモアゼ油、セージ油、バジル油、カルダモン油、タイム油、ローズ油、ネロリ油、ゼラニウム油、イランイラン油、オリス油、ジャスミンアブソリュート、ローズウッド油、パチュリ油、セダーウッド油などが挙げられる。目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。中でもレモン油、オレンジ油、カモミールロマン油が好ましい。これらを配合すると、香り立ちのバランスがより良好になり、香りの持続性が得られ、更に、ナチュラル感のある香りが得られるため好ましい。
【0013】
睡眠改善用香料組成物を適用する場合は、香料が5〜30%の含有量となるように、エチルアルコールで希釈して使用することにより、香りの強さや香りのバランスがより良好になるため好ましい。
【0014】
本発明の睡眠改善用香料組成物は、化粧料組成物に含有してもよい。このような化粧料組成物は特に限定されず、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン等や、ボディーソープ、シャンプー、リンスインシャンプー、洗顔料、ハンドソープ、石鹸等の洗浄料組成物、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、クレンジング、マッサージ料、ボディクリーム、ボディーローション、ボディーパウダー、アロマオイル等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、口紅、下地料等のメーキャップ化粧料、ヘアクリーム、リンス、コンディショナー、整髪料等の頭髪化粧料が挙げられる。
本発明の睡眠改善用香料組成物の化粧料における含有量は、例えば、パルファムとしては15〜40%程度、オードパルファムとしては10〜20%程度、オードトワレとしては、5〜10%程度、オーデコロンとしては3〜5%程度が好ましい。この中でも、オードトワレ、オーデコロンであると、香りの強さが良好で睡眠改善効果が向上するため好ましい。これらは、エチルアルコールで希釈することが好ましいが、香料組成物と同程度の水を含有することが好ましい。水を含有することにより、肌に塗布した際白くなるのを防ぐことができるため好ましい。
上記のパルファム、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン以外の化粧料における含有量は0.01〜3%が好ましい。この中でもスキンケア化粧料であれば良好な睡眠改善効果が得られるため好ましい。
【0015】
本発明の化粧料は、通常化粧料に用いられる成分として、例えば、水を含む水性成分、界面活性剤、油剤、油性ゲル化剤、粉体、保湿剤、高分子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、美容成分等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
例えば、水性成分としては、水、多価アルコール、糖類、低級アルコール等、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等、油剤としては、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、油脂、鎖状シリコーン、環状シリコーン、各種変性シリコーン等、油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等、粉体としては、色素、染料、顔料等、その他、天然、半合成、合成等の水溶性高分子、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド、ペプチド誘導体、植物エキス等の美容成分、エデト酸塩等の金属キレート剤、クエン酸、乳酸、リン酸又はこれらの塩等のpH調整剤、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、の通常公知のものを使用することができる。
【0016】
本発明は、睡眠改善用香料組成物を含有して室内芳香料として用いることができる。例えば、睡眠改善用香料組成物をルームフレグランス、アロマキャンドル、室内用アロマオイル等とすることができる。室内芳香料中の睡眠改善用香料組成物の含有量は特に限定されないが、0.1〜100%が好ましく、更に0.1〜30%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。この範囲であると良好な香り立ちバランス得られるため好ましい。
【0017】
本発明のヒトの睡眠を改善する方法は、就寝中のヒトにサイプレス油とラベンダー油との香りを一緒に嗅がせることにより可能とすることができる。
また、サイプレス油とラベンダー油の比が質量比で1:5〜9:1の香料組成物を用いて、ヒトに嗅がせる方法をとることで、より睡眠を改善することができる。
そして、前記香料組成物を化粧料で用いてヒトに嗅がせる方法をとることで、より睡眠を改善することができる。
香りを嗅がせる時に、ヒトの身体の一部に香料組成物を塗布または噴霧することで簡便に、より睡眠を改善することができる。
また、サイプレス油とラベンダー油とを含む香料組成物を室内芳香料としてヒトに嗅がせることで、簡便に、より睡眠を改善することができる。
特にルームフレグランスや室内用アロマオイルに関しては、におい紙に塗布または噴霧して室内芳香料としたり、拡散器(ディフューザー)を用いて室内に芳香を満たす方法があるが、特に拡散器(ディフューザー)を用いて、香りを散布、拡散してヒトに嗅がせることが好ましい。この方法であるとより睡眠を改善することができる。
【0018】
本発明の化粧料が、オードパルファム、オードトワレ、またはオーデコロンの場合は、就寝前に手首の内側や、耳の後ろに塗布か噴霧して使用することができる。
本発明の化粧料がスキンケア化粧料で、例えばボディーローションの場合は、就寝前に、全身に塗布して使用することができる。
【0019】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施例1〜4及び比較例1〜2:オードトワレ
下記表1に示す組成のオードトワレを下記の製法で調製し、得られたオードトワレについて、睡眠改善度、香りについて下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。尚、睡眠改善度については、官能検査及び体動を測定して評価した。
【0021】
【表1】

【0022】
(製法)
A.成分(1)〜(4)を均一に混合する。
B.Aに(5)を添加して均一に混合する。
C.Bを室温にてアトマイザー付の容器に充填しオードトワレを得た。
【0023】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
イ.睡眠改善度
ロ.香り立ちのバランス
ハ.香りの持続性
ニ.香りの嗜好性
【0024】
(イ.睡眠改善度A官能検査)
イの睡眠改善度は、実施例1〜4及び比較例1及び2のオードトワレについて、官能評価パネル20名により、各試料につき7日間ずつ使用して評価を行った。
・睡眠改善度の評価方法
評価用ツールは、ヴィジュアルアナログスケール法(10cmのスケール)を用いて、評価用スケールの左端をまったく眠れなかった、右端を大変ぐっすり眠れたとし、その日の朝目覚めた時の睡眠状態について評価用スケール上に印を記入してもらった。左端からの距離を測定して値を求めた。
・試験方法
各試料については、ブラインドで官能評価パネルに評価してもらった。
試験方法は、最初に普段の睡眠状態を評価用スケールに記入してもらい、基準値とした。
次に、就寝前に、試料を手首にアトマイザーでワンプッシュ(約0.02g)噴霧して、朝目覚めたときに、その日の睡眠状態を評価用スケールに記入してもらい、試験値とした。
各試料(6品)につき7日間ずつ上記方法で使用して、試験値を求め、計42日間試験を行った。
・不眠パネルの選定方法
官能評価パネル20名の基準値(普段の睡眠状態の左端からの距離)の平均を算出し、平均以下のパネルを睡眠状態の悪いパネルとし、20名の中から睡眠状態の悪い9名を、不眠パネルとして選出した。
・睡眠改善度の判定方法
各官能評価パネルの1つの試料に対し得られた7日間の試験値の平均を算出して試験値の平均値とした。該試験値の平均値が基準値とどれくらい変化したのか(変化率)を算出した。変化率=(試験値の平均値−基準値)/基準値×100
次に、前記不眠パネル9名の変化率の平均値について、下記判定基準を用いて判定し、その結果を表1に示した。
判定基準
判定 : 変化率の平均
◎ : 15%以上改善された
○ : 0〜15%改善された
△ : −15〜0%悪化した
× : −15%以上悪化した
【0025】
(イ.睡眠改善度B体動の測定)
腕時計型加速度センサーである「アクティグラフ」(A.M.I社製)を用いて就寝中の体動を測定することにより、入眠時間、覚醒回数、覚醒時間の評価を行った。
・試験方法
睡眠改善度A官能検査において不眠パネルとして選出した評価パネルにアクティグラフ(腕時計型)を、生活に支障のない限り左腕につけて通常の生活をしてもらい、体動を測定し、その結果を分析した。
最初に7日間、普段の生活及び睡眠状態における体動を測定した。
次に、就寝前に、試料を手首にアトマイザーでワンプッシュ(約0.02g)噴霧して、生活及び睡眠状態における体動を測定した。
試料(実施例1、比較例2)につき7日間上記方法で使用して、生活及び睡眠状態における体動を測定した。
・睡眠改善度の判定方法
体動を測定し、各評価パネルの1つの試料に対し得られた7日間の入眠時間の平均を算出して入眠時間とした。更に各評価パネルの入眠時間の平均を算出しその平均値を1つの試料に対する入眠時間とした。
その結果を図1に示した。
【0026】
(ロ.香り立ちのバランス、ハ.香りの持続性)
各試料を、15cm×2cmの匂い紙に0.05gずつ塗布し、25℃に放置し、10分後の香りについて、香り立ちのバランス、4時間後の香り立ちの強さについて、香りの持続性を、香りの専門パネル7名により、下記の各々の評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から平均値を算出し、下記4段階の判定基準により判定した。その結果を表1に示した。尚、通常トップノートは約30分香りが持続し、ミドルノートは約2〜3時間香りが持続するため、入眠時の香りが気になる10分の時点と、4時間後の香り立ちの強さについて評価を行った。尚、香り立ちのバランスとは、サイプレス油、ラベンダー油がうまくマッチし、個々の香りが強く出すぎることなく、お互いの香りをうまく引き立たせている状態を指す。
【0027】
(ロ.香り立ちのバランス)
(評価基準)
評価結果 :評点
非常にバランスがよい:5点
バランスがよい :4点
普通 :3点
バランスが悪い :2点
非常にバランスが悪い:1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0028】
(ハ.香りの持続性)
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に香り立ちがよい:5点
香り立ちがよい :4点
普通 :3点
香り立ちが悪い :2点
非常に香り立ちが悪い:1点
(判定基準)
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0029】
(ニ.香りの嗜好性)
各試料を匂い紙にアトマイザーにてワンプッシュ(約0.02g)塗布し、官能パネル20名に香りの嗜好性を下記の各々の評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から平均値を算出し、下記4段階の判定基準により判定した。またフリーアンサーにて香りについてコメントしてもらった。
【0030】
(ニ.香りの嗜好性)
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に好き :5点
好き :4点
普通 :3点
嫌い :2点
非常に嫌い :1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0031】
表1の結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1〜4のオードトワレは気持ちよく眠りにつけた、寝つきが良かった、起きることなく朝まで眠れた、目覚めが良かった、普段より長く眠れたなど、睡眠改善効果に優れ、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性が良好な特性を有していた。更にはナチュラル感を感じることができるものであった。
各官能パネルのコメントからも実施例のオードトワレは優位性が得られた。例えば、パネルAよく眠れたかも、パネルB寝つきはよくその後もあまり起きることなく眠れた、睡眠の質は良かった。パネルC気持ちよく眠りにつけた。パネルD目覚めのよさを感じた。パネルE寝つきが悪いほうでしたが、わりと早く寝られた気がする。パネルFいつもより早く目覚めても満足できた。もともと4〜5時間くらいの短時間しか寝られない体質だったが、8〜9時間寝られた。
実施例1ではつんとしたところがなく香り立ちのバランスに優れ、香りの持続性にも優れていた。また、森のような香りでナチュラルな香りが心地よいと嗜好性も高いものだった。
実施例2ではサイプレスの香りを生かしながらラベンダーがきれいに香り立ち、バランス、持続性に優れ、気持ちを落ち着けて心地よい香りと嗜好性も良好であった。
実施例3ではウッディな香りが強くなりすぎずにラベンダーの香りがマッチして香り立ちのバランスがよく、香りの持続性に優れ、自然を想像させる木の香りが落ち着くと嗜好性に優れていた。
実施例4ではフレッシュなラベンダーの中にウッディな香りがマッチして香り立ちのバランスに優れていた。香りの持続性にも優れ、ハーバルで癒される香りと嗜好性も高かった。
これに比べ、サイプレス油のみを配合した比較例1ではウッディな香りが強く出てしまい、香り立ちのバランスが悪く、持続性に劣るものであった。また、森林を感じる香りであるが少しつんとしたところがあり嗜好性はやや落ちるものであった。
ラベンダー油のみを配合した比較例2ではハーバルな香りがやや刺激が強く、香り立ちのバランスが悪くなっていた。香りの持続性にも劣り、草原やラベンダー畑を連想させるものの、やや刺激が強くきつい印象の香りで嗜好性に劣るものであった。
睡眠改善効果については、不眠パネルの改善度を評価したが、普段からよく眠れると感じているパネルに対しても、実施例のオードトワレは、眠りを阻害するものではないことがわかった。
特にコメントより寝つきがよかった、気持ちよく眠りにつけたなど、実感として入眠にかかる時間を減少させ入眠障害を改善したり、あまり起きることなく眠れた、睡眠の質は良かったなど、実感として睡眠中の覚醒回数を減少させて熟睡障害を改善する効果に優れることがわかった。
【0032】
図1に示したように、アクティグラフを使用して体動を測定した結果より、入眠時間については、実施例1の香料を用いたときは、比較例2の香料を用いたときに比べ19分から11分に短縮されることがわかった。
【0033】
実施例6
下記本発明品1及び2について官能検査により睡眠改善度を評価した。
【0034】
本発明品1:アロマオイル
(成分) (%)
1.レモン油 10
2.サイプレス油 60
3.ラベンダー油 20
4.パチュリ油 10
(製法)
A.成分(1)〜(4)を均一に混合する。
B.Aを減圧下にて脱泡後、容器に充填しアロマオイルを得た。
就寝時、本発明品1のアロマオイルを試料として、ディフューザーに設置し、就寝中室内に拡散させた。
【0035】
本発明品2:オードトワレ
(成分) (%)
1.本発明品1のアロマオイル 10
2.エチルアルコール 残量
3.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1
4.精製水 7
(製法)
A.成分(1)〜(3)を均一に混合する。
B.Aに(4)を添加して均一に混合する。
C.Bを室温にてアトマイザー付の容器に充填しオードトワレを得た。
就寝時、本発明品2のオードトワレを、手首にアトマイザーでワンプッシュ(約0.02g)噴霧した。
【0036】
睡眠改善度の評価方法及び試験方法については、本発明品1のアロマオイルをディフューザーで用いる以外は、前記(イ.睡眠改善度A官能検査)と同様に、評価用ツールとしてヴィジュアルアナログスケール法を用いて評価した。
試験対象は不眠パネルとし、試験期間はそれぞれ7日間行った。
睡眠改善度の判定方法は、前記イ.睡眠改善度A官能検査と同様に行ったが、基準値は、実施例1〜4で得られた結果を準用した。
本発明品1ディフューザー使用及び手首使用の両者共に、睡眠改善度の判定は「◎」となり、よく改善されたことがわかった。
更に、ディフューザー使用と手首使用で、違いがあるか下記式により変化率を求めた。
変化率=(ディフューザー使用の平均値−手首使用の平均値)/手首使用の平均値×100
この結果より、手首使用に比べディフュザー使用の方が、睡眠は18%改善されたことがわかった。
【0037】
また、ディフューザー使用のコメントより、気持ちよく眠りにつけた、寝つきが良かった、起きることなく朝まで眠れた、普段より長く眠れたなど、特に入眠にかかる時間を減少させ入眠障害を改善したり、睡眠中の覚醒回数を減少させて熟睡障害を改善する効果に優れることがわかった。
実施例6の本発明品1及び2は、睡眠改善効果に優れ、ナチュラル感、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性に優れたものであった。
【0038】
実施例7:オーデコロン
(成分) (%)
1.エチルアルコール 残量
2.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1
3.サイプレス油 3
4.ラベンダー油 6
5.カモミールロマン油 1
6.ネロリ油 1
7.精製水 8
8.赤色227号 0.004
9.青色1号 0.002
【0039】
(製法)
A.成分(1)〜(6)を均一に混合する。
B.Aに(7)〜(9)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、室温で容器に充填しオーデコロンを得た。
以上のようにして得られたオーデコロンを、睡眠改善度、香りについて実施例1〜4で使用した方法と同様に評価した結果、睡眠改善効果に優れ、ナチュラル感、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性に優れたものであった。
【0040】
実施例8:アロマオイル
(成分) (%)
1.オリーブ油 99
2.サイプレス油 0.6
3.ラベンダー油 0.37
4.アルモアゼ油 0.01
5.ローズウッド油 0.01
6.コリアンダー油 0.01
【0041】
(製法)
A.成分(1)〜(6)を均一に混合する。
B.Aを減圧下にて脱泡後、容器に充填しアロマオイルを得た。
以上のようにして得られたアロマオイルを、睡眠改善度については、実施例1〜4の試験方法において手首に噴霧する代わりに、足に塗布して評価した。また香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性については、実施例1〜4で使用した方法と同様に評価した結果、睡眠改善効果に優れ、ナチュラル感、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性に優れたものであった。
【0042】
実施例9:乳液(成分) (%)
1.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
2.エチルアルコール 10
3.モノステアリン酸ポリエチレングリコール 2
4.イソノナン酸イソトリデシル 8
5.セトステアリルアルコール 2
6.重質流動イソパラフィン 5
7.サイプレス油 0.02
8.ラベンダー油 0.05
9.グリセリン 3
10.ジプロピレングリコール 4
11.精製水 残量
12.防腐剤 適量
【0043】
(製法)
A.成分(1)〜(8)を80℃に加熱し、混合溶解する。
B.成分(9)〜(12)を80℃に加熱し、混合溶解する。
C.BにAを添加し乳化し、乳液を得る。
D.Cを減圧下にて脱泡後、室温で容器に充填し乳液を得た。
以上のようにして得られた乳液を、睡眠改善度については、実施例1〜4の試験方法において手首に噴霧する代わりに、顔に塗布して評価した。また香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性については、実施例1〜4で使用した方法と同様に評価した結果、睡眠改善効果に優れ、ナチュラル感、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性に優れたものであった。
【0044】
実施例10:室内芳香剤
(成分) (%)
1.エチルアルコール 残量
2.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1
3.サイプレス油 3
4.ラベンダー油 6
5.ベルガモット油 1
6.オレンジ油 1
7.プチグレン油 1
8.精製水 8
9.赤色227号 0.004
【0045】
(製法)
A.成分(1)〜(7)を均一に混合する。
B.Aに(8)〜(9)を添加して均一に混合する。
C.Bを減圧下にて脱泡後、室温で、香り吸い上げ用のスティック付の容器に充填し室内芳香剤を得た。
以上のようにして得られた室内芳香剤を、睡眠改善度については、実施例1〜4の試験方法において手首に噴霧する代わりに、寝室に置いて、容器にスティックを挿して香りを広げることにより、香りを嗅いで評価した。また香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性については、実施例1〜4で使用した方法と同様に評価した結果、睡眠改善効果に優れ、香り立ちのバランス、香りの持続性、香りの嗜好性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイプレス油およびラベンダー油を含有することを特徴とする睡眠改善用香料組成物。
【請求項2】
サイプレス油とラベンダー油の比が質量比で1:5〜9:1であることを特徴とする請求項1記載の睡眠改善用香料組成物。
【請求項3】
サイプレス油およびラベンダー油の含有量の合計が組成物中25〜100質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の睡眠改善用香料組成物。
【請求項4】
前記睡眠改善用香料組成物が入眠時間を短縮する睡眠改善用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の睡眠改善用香料組成物。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の睡眠改善用香料組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項6】
前記化粧料が、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、またはオーデコロンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料。
【請求項7】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の睡眠改善用香料組成物を含有することを特徴とする睡眠改善用室内芳香料。
【請求項8】
就寝中のヒトにサイプレス油とラベンダー油との香りを一緒に嗅がせることにより、ヒトの睡眠を改善する方法。
【請求項9】
サイプレス油とラベンダー油の比が質量比で1:5〜9:1の香料組成物を用いて、ヒトに嗅がせることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記香料組成物が化粧料であること特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヒトの身体の一部に香料組成物を塗布または噴霧することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
拡散器(ディフューザー)を用いて、香りを散布、拡散してヒトに嗅がせることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−51970(P2011−51970A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141140(P2010−141140)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年12月22日 化学工業日報社発行の「化学工業日報」に発表
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】