睡眠時呼吸状態判定装置
【課題】睡眠時の呼吸に同期した腹部形状変化によるインピーダンス変動に基づく、睡眠時無呼吸低呼吸症候群及び肥満度に関する判定から、睡眠時の呼吸状態を改善するためのアドバイスをする睡眠時呼吸状態判定装置を提供する。
【解決手段】睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定し、前記生体インピーダンスに基づいて無呼吸低呼吸状態と肥満度とを判定し、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスすることから、睡眠時無呼吸症候群の傾向と、それに対し肥満が影響しているか否かを知ることができ、呼吸状態を改善するためにどの程度のダイエットが必要か、又は適切な医療機関による診断が必要かなど、睡眠時の呼吸状態に関する適切な対処法を知ることができる。
【解決手段】睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定し、前記生体インピーダンスに基づいて無呼吸低呼吸状態と肥満度とを判定し、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスすることから、睡眠時無呼吸症候群の傾向と、それに対し肥満が影響しているか否かを知ることができ、呼吸状態を改善するためにどの程度のダイエットが必要か、又は適切な医療機関による診断が必要かなど、睡眠時の呼吸状態に関する適切な対処法を知ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時の呼吸状態を判定する睡眠時呼吸状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体インピーダンスを連続して測定することにより得られる生体インピーダンス変動から、所定のディジタル処理を施すことにより呼吸成分を抽出し、呼吸変動のモニタリングに適用可能とする装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、呼吸による肺容積変化を、胸部に配した電極を用いてインピーダンスを連続測定することにより、睡眠時無呼吸症候群の検出に適用可能とする装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−116806号公報
【特許文献2】特表2000−517199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、睡眠時無呼吸症候群の検出においては、その原因の大半が肥満によるものであると広く認識されているにもかかわらず、肥満度合いとの関係から、睡眠時無呼吸症候群を改善するためのアドバイスを提供できる装置がなかった。
【0005】
従って本発明は呼吸に同期した腹部形状変化によるインピーダンス変動を検出し、肥満に関するデータと呼吸に関するデータとを得ることにより、睡眠時無呼吸低呼吸症候群の判定及び肥満度から、睡眠時の呼吸状態を改善するためのアドバイスをする睡眠時呼吸状態判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有する睡眠時呼吸状態判定装置を提供する。
【0007】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定する。
【0008】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の睡眠時呼吸状態判定装置は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有することから、睡眠時無呼吸症候群の傾向と、それに対し肥満が影響しているか否かを知ることができ、呼吸状態を改善するためにどの程度のダイエットが必要か、又は適切な医療機関による診断が必要かなど、睡眠時の呼吸状態に関する適切な対処法を知ることができる。
【0010】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定することから、測定時に変形を生じやすい腹部の大きさを特定する物理量、例えば、全断面積、断面積の外周長、断面の横又は縦幅等をパラメータとする必要がなく腹部変形による誤差を生じにくい。また、わざわざ前記物理量の測定及び入力等必要ないため測定を簡略化することが可能である。
【0011】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有することから、腹部の適切な位置で測定可能であり、連続したインピーダンス測定における測定誤差を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の睡眠時呼吸状態判定装置は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有して構成する。
【0013】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定するものである。
【0014】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有して構成する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1は、睡眠時、腹部前面において所定のサンプリング周期で連続してインピーダンスを測定し、前記インピーダンスに基づいて呼吸状態及び体脂肪率を各々演算し、無呼吸症候群とそれに影響する肥満度との関係から、睡眠状態に関してアドバイスする睡眠時呼吸状態判定装置の一例である。
【0016】
図1乃至図3を用いて、実施例1の睡眠時呼吸状態判定装置の構成を説明する。図1は睡眠時呼吸状態判定装置の使用時を示す図であり、図2は図1に示した睡眠時呼吸状態判定装置のA−A断面図であり、図3は電気ブロック図である。
【0017】
図1及び図2において、睡眠時呼吸状態判定装置1は、本体部2と本体部2を腹部前面に固定するために腹部外周上に巻きつけるベルト型固定部3とから成り、前記本体部2は、測定のガイダンスや測定及び判定結果等を表示する表示部4、電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ5、UP/DOWNキー及び設定キーを備え、測定の開始や個人データの設定等を行なうための設定スイッチ6を備えて成り、腹部前面に接触する面の所定の位置にインピーダンス測定のための電圧測定電極8a及び8bを備えて成る。また、前記ベルト型固定部3は、腹部前面に接触する面の所定位置にインピーダンス測定のための電流印加電極7a及び7bを備えて成る。
【0018】
ここでは、電極間距離の一例として、前記電流印加電極7a及び7b間距離、前記電流印加電極7a及び前記電圧測定電極8a間距離、前記電流印加電極7b及び前記電圧測定電極8b間距離を各々8cmとする。
【0019】
また、前記電流印加電極7a及び7bと前記電圧測定電極8a及び8bとを、各々身体の臍位置を通る垂直線に対して左右対称に接触させるために、図示しないが、前記臍位置を通る垂直線上に本体部2の中心を合わせるように、前記本体部2の中心位置を示すマークを備えていても良い。
【0020】
図3の電気ブロック図によれば、睡眠時呼吸状態判定装置1は、主に制御及び演算を行なうブロック1とインピーダンス測定を行なうブロック2に大別される。前記ブロック1は、前述の表示部4、電源スイッチ5及び設定スイッチ6が制御部11に接続されて成る。また、制御部11は記憶部12、演算部15及び判定部16を各々接続して成り、前記記憶部12は測定又は判定データを一時的に記憶しておくRAM13と演算式や判定基準等を予め記憶しておくROMとを備えて成る。前記演算部15はインピーダンスから呼吸及び体脂肪に関する演算を行なうものであり、前記判定部16は、前記演算部15での演算結果に基づいて、睡眠時無呼吸・低呼吸状態の判定を行なう呼吸状態判定部17と肥満度合いを判定する肥満判定部18とからなり、前記睡眠時無呼吸・低呼吸状態と、肥満度合いとの判定結果に基づいて、睡眠時の呼吸状態に関するアドバイスを設定するアドバイス設定部19が制御部11に接続して成る。更に、制御部11は時間を計測する計時部10と、睡眠時呼吸状態判定装置1に電力を供給する電源20を備えて成る。
【0021】
また、前記ブロック2は、電流印加電極7a及び7bがインピーダンス測定用電流を印加する電流印加部21に接続されて成り、電圧測定電極8a及び8bが電圧測定部22を介してA/Dコンバータ23に接続され、測定された電圧がディジタル信号に変換される。前記電流印加部21及び前記A/Dコンバータが前記ブロック1内の制御部11に接続されて構成する。
【0022】
次に、図4乃至図9のフローチャートを用いて、前記睡眠時呼吸状態判定装置1の動作を説明する。図4はメインフローチャートであり、図5は判定基準となる体脂肪率及び自然呼吸状態の測定時の動作を示すサブルーチンであり、図6は睡眠時の呼吸状態測定の動作を示すサブルーチンであり、図7及び図8は、前記図6の睡眠時呼吸状態測定時のインピーダンス測定の動作及び無呼吸状態カウント時の動作を示すサブルーチンである。また、図9は睡眠時呼吸状態の判定時の動作を示すサブルーチンである。
【0023】
まず図4を用いて睡眠時呼吸状態判定装置1のメイン動作を説明する。
【0024】
前記睡眠時呼吸状態判定装置1の電源スイッチ5をオンすると、ステップS1においてインピーダンス測定状態及び各判定状態が初期化される。ステップS2において、個人データが登録済みかどうか判断される。ここで、本実施例1では予め体脂肪率算出用回帰式を性別年齢別に区分してROM14に記憶してあるものとし、その性別及び年齢に、予定計測時間を加えたものが前記個人データであるものとする。ここで、前記予定計測時間は、睡眠中のインピーダンスを測定する時間であるため、予定している睡眠時間よりも短い時間を設定しておくのが望ましい。
【0025】
前記個人データがRAM13内に記憶されていなければ、ステップS3に進み、まず性別及び年齢を入力するよう促す表示が表示部4に成される。前記表示にしたがい前記設定スイッチ6を操作して性別及び年齢が入力されるとRAM13に記憶され、ステップS4に進み、同様に予定計測時間の入力を促し、前記設定スイッチにより入力されるとRAM13に記憶され、ステップS5に進み、前記入力した個人データが表示部4に表示される。また、前記ステップS2においてRAM13内に前記個人データが記憶されており、個人データ登録済みであると判断されると、前記ステップS5に進み、RAM13内の個人データを表示部4に表示する。続くステップS6において、前記個人データを変更するかどうか判断される。変更があれば前記設定スイッチ6のUP/DOWNキー及び設定キーを用いて再入力し、変更が無ければ前記設定スイッチ6の設定キーを押してステップS7に進む。
【0026】
ステップS7においては、前記睡眠時呼吸状態判定装置1を腹部に装着し睡眠姿勢に入ったら、前記設定スイッチ6の設定キーを押して測定をスタートするようにガイダンスが表示部4に表示される。続くステップS8において、前記設定キーが押されたかどうか判断される。押されていない間はNOに進み、ステップS7の表示を続け、前記設定キーが押されるとYESに進み、ステップS9以降の測定が開始される。
【0027】
ステップS9は、図5に示すサブルーチンを用いて後述するが、睡眠状態判定の基準となる基準状態測定であり、所定時間のインピーダンスを連続測定することにより、自然呼吸時の1呼吸におけるインピーダンス変動の最大値と最小値の差の平均値(以下、基準振幅:t1とする)と、測定された全インピーダンスデータの平均値に基づいて算出される全身脂肪率とをRAM13にメモリしてステップS10に進む。
【0028】
ステップS10は、図6、図7及び図8に示すサブルーチンを用いて後述するが、睡眠時の呼吸状態の測定を行ない、前記基準振幅:t1を基準として無呼吸及び低呼吸状態を検出し、一般的に臨床において用いられる無呼吸低呼吸指数(以下、AHIという)を求め、RAM13にメモリしてステップS11に進む。
【0029】
ステップS11は、図9に示すサブルーチンを用いて後述するが、前記全身脂肪率より肥満度を求め、前記AHIより無呼吸症候群の症状の度合いを求め、前記肥満度と無呼吸症候群の症状の度合いとの関係から、睡眠状態改善に適するアドバイスを選択してステップS12に進む。
【0030】
ステップS12は、前記RAM13にメモリされた各結果を表示部13に表示する。前記表示はステップS13において前記電源スイッチ5が押されて電源オフされるまで表示し続け、電源スイッチ13が押されると、電源オフして終了する。
【0031】
以下、前記ステップS9、ステップS10及びステップS11における各動作を、前述した各サブルーチンを示す図を用いて説明する。
【0032】
まず、前記ステップS9の基準状態測定の動作を図5に示すサブルーチンを用いて説明する。前記ステップS8で測定開始を指示する設定キーが押されステップS9に進むと、図5のステップS21において、制御部11により前記計時部10がオンされ測定時間の計測を開始する。
【0033】
続くステップS22において、予め設定してある一定のサンプリング周期によりインピーダンス測定が行なわれる。ここで、前記インピーダンス測定は呼吸に同期した腹部形状変化によるインピーダンス変動を検出するものであるため、サンプリング周期を次のように定めた。すなわち、最も早い呼吸が1秒間に1回されるものとし、呼吸の周波数帯f(Hz)≦1として定義すると、サンプリング定理より、サンプリング周波数fs(Hz)≧2Hz、となる。したがって、0.5(sec)に1回以上サンプリングすることにより、前記定義した呼吸を捉えることが可能である。よって、本実施例においては、0.2(sec)に1回サンプリングされるものとした。これにより、例えば1回のサンプリングデータが何らかの理由で取得できなかった場合でも、次のサンプリングデータが正常であれば、0.4(sec)で1回測定されることになる。したがって、前記サンプリング周波数によって定められたように、0.5(sec)に1回以上サンプリングされていることになるため、妥当なサンプリングが成されている事になる。
【0034】
前記サンプリングが一回なされるとステップS23に進み、前記インピーダンス値:Z(Ω)が、人体のインピーダンスを正常に測定したものかどうか判定する。例えば、予め、Z<100の範囲であれば正常であるとして正常範囲を設定し、前記測定したインピーダンス値を判定する。Z<100、すなわち正常範囲であればYESに進み、ステップS24において、前記測定したインピーダンス値の時系列データを前記RAM13内に設けたデータ蓄積領域に記憶してから、ステップS25に進む。またZ≧100、すなわち、何らかの原因でインピーダンスが正常範囲でないと判断されるとNOに進み、ステップS26において、一つ前のサンプリングデータがRAM13のデータ蓄積領域内にあるかどうか判断される。サンプリングデータがある場合、前述したように、解析に足る妥当なサンプリングがなされていると判断しYESに進み、ステップS25に移行する。一つ前のサンプリングデータがない場合、すなわち、連続して2つのサンプリングが正常範囲外であった場合、サンプリング間隔は0.6(sec)経ってしまったことになり、前記サンプリング条件を満たさない。よって、NOに進み、前記表示部4に測定不能を示すエラー表示し、電源を自動でオフする。
【0035】
このとき、エラー表示と同時に音や振動などで被験者に測定不能を報知しても良い。これにより、測定者は睡眠時呼吸状態判定装置1を装着し直し、すぐさま測定を再開させることができる。
【0036】
前記ステップS25においては、基準状態を測定するための所定時間が経過したかどうか判断される。本実施例においては、前記所定時間を前記ステップS21においてタイマーがオンされてから30(sec)とする。よって、30(sec)経過していなければNOに進み、ステップS22に戻りインピーダンス測定を繰り返し、30(sec)経過するとYESに進み、前記タイマーをオフすると共にステップS27以降の基準データの演算及びRAM13へのメモリ手順に移行する。このとき、前記サンプリングが正常に行なわれていることから、前記睡眠時呼吸状態判定装置1は正しく装着されていると判断される。
【0037】
ステップS27において、前記RAM13内の全てのサンプリングデータのインピーダンス平均値を演算部15において演算し、続くステップS28において、前記インピーダンス平均値に基づいて体幹部の体脂肪率を演算する。
【0038】
ここで、本実施例においては、前記体幹部脂肪率の演算において、予め設定してあるインピーダンス値のみをパラメータとする回帰式を前記ROM14より読み込んで演算するものであり、前記回帰式は例えば、体幹部脂肪率=α×(1/Z)(ここで、αは定数である)で表されるものであり、性別及び年齢別にROM14内に格納されているものとし、前記登録してある個人データに基づいて、制御部11によりROM14から適する回帰式が読み込まれるものとし、前記回帰式と前記インピーダンス平均値とから体幹部脂肪率を求め、RAM13のデータ格納領域に格納する。
【0039】
ここで、発明者が見出した、前記回帰式の導出に至る体幹部脂肪率と腹部インピーダンスとの関係を図10乃至図12を用いて説明する。まず、図10に示す腹部体組成を考慮しない腹部インピーダンス測定モデルにおいては、腹部前面に接触させた電流印加電極7a及び7b間を腹部を介して流れる電流は、腹部前面から背中に向かうほど流れにくくなっていくことから、前記電圧測定電極8a及び8b間において正常にインピーダンス測定可能な腹部前面から背中への距離をxcmとする。xは電流印加電極7a及び7b間距離によって定められる定数であるとする。このとき、前記電圧測定電極8a及び8b間距離:Lを8cmとし、電極の長さKを2cmとして、腹部前面において正常にインピーダンス測定可能な範囲を、前記電極配置及び距離xで表される直方体と見なす。更に、前記直方体の抵抗率をρとすると、インピーダンスZとの関係は、Z=ρ×L/K×xとして表される。ここで、体幹部脂肪率(%FAT)=ρであることから、体幹部脂肪率(%FAT)=Z×K×x/L、前述の数値を代入すると、体幹部脂肪率(%FAT)=(x/4)×Zとなり、xは前述したように定数であるとしたため、理論上、体幹部脂肪率(%FAT)はインピーダンスZに比例する。
【0040】
しかしながら、前記距離xは腹部の体組成を反映する変数である。すなわち、実際には腹部前面の等価回路は、図11に示すように、皮膚表面及び皮下脂肪は抵抗として考えられ、インピーダンス測定の際、皮下脂肪は接触インピーダンスとして作用してしまい、皮下脂肪の多い人ほど皮膚表面に流れる電流が多くなり、図12に示すようにインピーダンスZと公知のDXA測定を用いて算出した体幹部脂肪率との関係においては曲線のグラフが形成される。この補正のため、1/Zをパラメータとして、1/Zと前記DXA測定を用いて算出した体幹部脂肪率との関係を示したものが図13に示すグラフであり、相関係数R=−0.93の直線性を持つ関係で表すことが可能である。
【0041】
前記ステップS28において体幹部脂肪率が算出されると、ステップS29において、前記体幹部脂肪率に基づいて全身脂肪率を算出する公知の回帰式を予め記憶してあるROM14より読み込んで、全身脂肪率を算出してRAM13に格納する。ここで、全身脂肪率を算出する前記回帰式は例えば、DXA測定により求めた全身及び体幹部脂肪率との相関より、図14に示すような関係にあり、全身脂肪率(%FAT)=0.77×体幹部脂肪率(%FAT)+3.2で表される。
【0042】
ステップS30において、前記RAM13のデータ蓄積領域内のデータの移動平均を取ることにより、図15に示すような、呼吸に同期した腹部形状の変形によるインピーダンス変動波形が得られる。続くステップS31において、前記波形の周波数分析より呼吸成分を抽出する。呼吸の周波数f(Hz)として、呼吸の周波数帯域を0.1≦f≦1と定め、適する公知のディジタルフィルタ処理により呼吸成分波形を求める。ステップS32において、前記形成された呼吸成分波形において、前述の基準振幅:t1を演算するものである。具体的には、サンプリング毎に前回のデータとの差を取り、符号がプラスからマイナスに変わった時点のデータを極大値とし、逆に符号がマイナスからプラスに変わった時点のデータを極小値とする。30(sec)間の前記極大値の平均値及び極小値の平均値を求め、この差を求めることにより前記基準振幅:t1とするものであり、前記t1をRAM13に記憶する。
【0043】
次に、図4のステップS10の睡眠時呼吸状態測定時の動作を図6、図7及び図8を用いて説明する。図6は睡眠時呼吸状態測定の一連の動作を示すサブルーチンであり、図7は前記図6中のインピーダンス測定を示すサブルーチンであり、図8は同じく図6中の無呼吸状態検出動作を示すサブルーチンである。
【0044】
前記図4のステップS10で睡眠時呼吸状態測定に入ると、図6のステップS41において、睡眠時の無呼吸状態の回数をカウントする回数カウンタをn=0、無呼吸状態が連続している状態をカウントする連続カウンタをi=0として初期化すると共に、前記制御部11により計時部10のタイマーをオンし、ステップS42において、図8を用いて後述するインピーダンス測定を行ない、ステップS43において、前記インピーダンス測定の結果に基づいて、図9を用いて後述する無呼吸状態の検出を行なう。ステップS44において、前記個人データ登録時に入力した計測予定時間が経過したかどうか判断される。経過していなければNOに進み、ステップS42のインピーダンス測定に戻る。また、経過した場合YESに進み、ステップS45において、前記無呼吸状態検出の結果に基づいて、次式よりAHIを算出してRAM13に記憶し、図4のメインルーチンに戻る。
【0045】
ここで、前記AHI算出式は、AHI=無呼吸低呼吸回数n(回)/予定計測時間(h)で表されるものであり、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示すものである。
【0046】
ここで、前記ステップS42のインピーダンス測定を図7を用いて説明する。インピーダンス測定に入ると、ステップS61において、前記設定された所定のサンプリング周期によりインピーダンス値:Z(Ω)が測定される。このとき、図5の基準状態測定において前述したように、前記睡眠時呼吸状態判定装置1は、正しく装着されており、サンプリングが正常に行なわれることが確認されているため、続くステップS62において、サンプリングされたインピーダンス値の時系列データを前記RAM13内に設けたデータ蓄積領域に記憶する。
【0047】
ステップS63において、前記RAM13内のデータ蓄積領域に、最新のサンプリングデータを含む10秒間のデータが蓄積されているかどうか判断される。蓄積されていなければNOに進み、再びステップS61においてインピーダンス測定を繰り返し、蓄積されていればYESに進み、図6の睡眠時呼吸状態測定サブルーチンへ戻り、ステップS43の無呼吸状態カウントに進む。
【0048】
図8を用いて、前記ステップS43の無呼吸状態カウントサブルーチンを説明する。前述したようにインピーダンス値が測定されると、ステップS81において、最新の前記時系列データを含む過去10秒間のインピーダンス値の時系列にデータに基づいて、順次移動平均を取ることにより、呼吸に同期した腹部形状変化によりインピーダンス変動波形が得られる。続くステップS82において、前記波形の周波数分析より呼吸成分波形を抽出する。ここでも図5のステップS31と同様にして、呼吸の周波数f(Hz)を、0.1≦f≦1として、適するディジタルフィルタをかけることにより求められるものである。ステップS82において、前記形成された10秒間の呼吸成分波形において、呼吸成分波形の最大値及び最小値を検出し、この差を睡眠時呼吸振幅:t2とする。
【0049】
続くステップS84において、呼吸状態を判別する。一般的に無呼吸状態とは10秒以上呼吸が休止している状態を表し、低呼吸状態とは1回の換気量が自然呼吸時の半分以下になる状態とされている。よって、ここでは、図5のステップS32において求めた基準振幅:t1に対してt2が半分以下になった状態が10秒間検出された場合を無呼吸低呼吸状態として定義する。すなわち、ステップS84において、t2>t1/2ならば自然呼吸状態とし、t2≦t1/2ならば無呼吸低呼吸状態として判別する。
【0050】
t2≦t1/2であった場合NOに進み、ステップS85において、前記無呼吸低呼吸状態が10(sec)以上連続しているかどうかをカウントする連続カウンタをi=i+1として、図6睡眠時無呼吸状態測定サブルーチンへ戻り、インピーダンス測定から繰り返す。また、t2>t1/2であった場合YESに進み、ステップS86において、前記連続カウンタがi=0かどうか判断される。i=0の場合YESに進み、図6の睡眠時無呼吸状態測定サブルーチンへ戻る。i=0でない場合NOに進み、ステップS87において、10(sec)以上の無呼吸低呼吸状態が検出されてから再び自然呼吸状態に戻ったものと判断し、無呼吸低呼吸カウンタをn=n+1としてカウントを進め、ステップS88において、連続カウンタをi=0に戻した後、図6の無呼吸低呼吸状態測定サブルーチンへ戻る。
【0051】
最後に図4のステップS11に示した睡眠時呼吸状態判定の動作を図9を用いて説明する。
【0052】
ステップS101において、前記RAM13に記憶したAHIを読み込み、前記AHIに基づき、睡眠時無呼吸症候群の判定を行なう。すなわち、AHI<5のとき正常を示し、5≦AHI<15のとき軽度の睡眠時無呼吸症候群であることを示し、15≦AHI<30のときを中等度、30≦AHIのときを重度の睡眠時無呼吸症候群であることを示す。
【0053】
ステップS102において、前記RAM13に記憶した全身脂肪率に基づいて、公知の肥満度の判定を行なう。例えば、予めROM14に記憶してある図16に示すような判定表を用い肥満度を判定する。前記判定表によると、肥満度は性別及び年齢別に、全身脂肪率によって痩せ、標準、軽肥満及び肥満の4つに区分されており、個人データとして入力した性別及び年齢と、前記算出された全身脂肪率とから、該当する肥満度が選定されるものである。例えば、30歳男性で全身脂肪率が23%FATであった場合には肥満度は軽肥満と判定される。このように判定された肥満度はRAM13に記憶され、続くステップS103において、前記判定された肥満度が標準であるか否かが判断される。標準でない場合、すなわち痩せ、軽肥満又は肥満の内何れかであった場合NOに進み、ステップS104において、肥満度を判定した前記全身体脂肪率から標準域までの差分を算出し、目標減量値としてRAM13に記憶する。前述した30歳男性の場合、21%FATが標準域であるため、全身脂肪率2%を目標減量値とするものである。この後、ステップS105に移行する。また、ステップS103において、肥満度が標準であると判断されるとYESに進み、前記ステップS105に移行する。
【0054】
ステップS105において、前記ステップS101及びステップS102において各々判定された睡眠時無呼吸症候群と肥満度との判定結果より、睡眠時の呼吸状態に関するアドバイスを選択する。例えば図17に一例を示すように、前記睡眠時無呼吸症候群と肥満度とをマトリクス状に配した判定表を用いるものであり、前記判定表は、予めROM14の中に記憶されているものである。
【0055】
前記判定表は、縦軸を肥満度別に、痩せ、標準、軽肥満及び肥満として4つに区分し、横軸を睡眠時無呼吸症候群の症状別に、正常(AHI<5)、軽度(5≦AHI<15)、中等度(15≦AHI<30)及び重度(30≦AHI)として4つに区分したものであり、肥満度と睡眠時無呼吸症候群とが各々適合するマトリクス上に各々予め設定されたアドバイスを読み込むものである。
【0056】
前記図17に示したアドバイスは、大きく分類すると、睡眠時無呼吸症候群が重度と判定された場合には、昼間無意識の内に眠ってしまい重大な事故に繋がるなど、日常生活における危険性を伴うものであるため、前記肥満度にかかわらず、然るべき医療機関における専門的な治療を勧めるアドバイスを示すものである。
【0057】
また、睡眠時無呼吸症候群が軽度又は中等度の場合であって、肥満度が痩せ又は標準であった場合、無呼吸及び低呼吸の発生原因は肥満以外の何らかの疾病であると考えられるため、医師への相談を勧めるアドバイスを示すものである。同じく、睡眠時無呼吸症候群が軽度又は中等度の場合であって、肥満度が軽肥満又は肥満と判定された場合、無呼吸及び低呼吸の発生原因は肥満であると考えられるため、肥満を解消することにより睡眠時の呼吸状態が改善され快適な睡眠を得られる可能性が高いことから、肥満を解消するよう促すアドバイスを示すものである。
【0058】
更に、睡眠時無呼吸症候群が正常であると判定された場合には、肥満度を標準に近づけるようアドバイスするものであり、特に、軽肥満又は肥満であった場合には、無呼吸症候群にかかる危険性が高い状態であることから減量するようアドバイスするものである。
【0059】
前述のようにアドバイスを選択すると、図4のメインフローチャートに戻り、測定結果、判定結果及び前記アドバイスを表示するものである。
【0060】
なお、本実施例では、肥満度と睡眠時無呼吸症候群の重症度とのマトリクスにより、呼吸状態の改善に関するアドバイスを選択したが、全身脂肪率とAHIの値をマトリクス状に展開して各々にアドバイスを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施例の睡眠時呼吸状態判定装置の使用時の正面図である。
【図2】図1のA−A断面である。
【図3】本実施例の睡眠時呼吸状態判定装置の電気ブロック図である。
【図4】本実施例のメイン動作を示すメインフローチャートである。
【図5】基準状態測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図6】睡眠時呼吸状態測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図7】図6のサブルーチンにおけるインピーダンス測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図8】図6のサブルーチンにおける無呼吸状態カウント時の動作を示すサブルーチンである。
【図9】睡眠時呼吸状態判定時の動作を示すサブルーチンである。
【図10】腹部前面の電流経路モデルである。
【図11】腹部前面の等価回路モデルである。
【図12】体幹部脂肪率と生体インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【図13】体幹部脂肪率と生態インピーダンスの逆数との関係を示すグラフである。
【図14】全身脂肪率と体幹部脂肪率との関係を示す図である。
【図15】呼吸によるインピーダンス変動を示す図である。
【図16】性別及び年齢別肥満度判定を示す図である。
【図17】睡眠時無呼吸症候群判定と肥満度判定とをマトリクス状に配した判定表である。
【符号の説明】
【0062】
1 睡眠時呼吸状態判定装置
2 本体部
3 ベルト型固定部
4 表示部
5 電源スイッチ
6 設定スイッチ
7a,7b 電流印加電極
8a,8b 電圧測定電極
10 計時部
11 制御部
12 記憶部
13 RAM
14 ROM
15 演算部
16 判定部
17 呼吸状態判定部
18 肥満判定部
19 アドバイス設定部
20 電源
21 電流印加部
22 電圧測定部
23 A/D変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時の呼吸状態を判定する睡眠時呼吸状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体インピーダンスを連続して測定することにより得られる生体インピーダンス変動から、所定のディジタル処理を施すことにより呼吸成分を抽出し、呼吸変動のモニタリングに適用可能とする装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、呼吸による肺容積変化を、胸部に配した電極を用いてインピーダンスを連続測定することにより、睡眠時無呼吸症候群の検出に適用可能とする装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−116806号公報
【特許文献2】特表2000−517199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、睡眠時無呼吸症候群の検出においては、その原因の大半が肥満によるものであると広く認識されているにもかかわらず、肥満度合いとの関係から、睡眠時無呼吸症候群を改善するためのアドバイスを提供できる装置がなかった。
【0005】
従って本発明は呼吸に同期した腹部形状変化によるインピーダンス変動を検出し、肥満に関するデータと呼吸に関するデータとを得ることにより、睡眠時無呼吸低呼吸症候群の判定及び肥満度から、睡眠時の呼吸状態を改善するためのアドバイスをする睡眠時呼吸状態判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有する睡眠時呼吸状態判定装置を提供する。
【0007】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定する。
【0008】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の睡眠時呼吸状態判定装置は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有することから、睡眠時無呼吸症候群の傾向と、それに対し肥満が影響しているか否かを知ることができ、呼吸状態を改善するためにどの程度のダイエットが必要か、又は適切な医療機関による診断が必要かなど、睡眠時の呼吸状態に関する適切な対処法を知ることができる。
【0010】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定することから、測定時に変形を生じやすい腹部の大きさを特定する物理量、例えば、全断面積、断面積の外周長、断面の横又は縦幅等をパラメータとする必要がなく腹部変形による誤差を生じにくい。また、わざわざ前記物理量の測定及び入力等必要ないため測定を簡略化することが可能である。
【0011】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有することから、腹部の適切な位置で測定可能であり、連続したインピーダンス測定における測定誤差を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の睡眠時呼吸状態判定装置は、睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有して構成する。
【0013】
また、前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定するものである。
【0014】
また、前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有して構成する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1は、睡眠時、腹部前面において所定のサンプリング周期で連続してインピーダンスを測定し、前記インピーダンスに基づいて呼吸状態及び体脂肪率を各々演算し、無呼吸症候群とそれに影響する肥満度との関係から、睡眠状態に関してアドバイスする睡眠時呼吸状態判定装置の一例である。
【0016】
図1乃至図3を用いて、実施例1の睡眠時呼吸状態判定装置の構成を説明する。図1は睡眠時呼吸状態判定装置の使用時を示す図であり、図2は図1に示した睡眠時呼吸状態判定装置のA−A断面図であり、図3は電気ブロック図である。
【0017】
図1及び図2において、睡眠時呼吸状態判定装置1は、本体部2と本体部2を腹部前面に固定するために腹部外周上に巻きつけるベルト型固定部3とから成り、前記本体部2は、測定のガイダンスや測定及び判定結果等を表示する表示部4、電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ5、UP/DOWNキー及び設定キーを備え、測定の開始や個人データの設定等を行なうための設定スイッチ6を備えて成り、腹部前面に接触する面の所定の位置にインピーダンス測定のための電圧測定電極8a及び8bを備えて成る。また、前記ベルト型固定部3は、腹部前面に接触する面の所定位置にインピーダンス測定のための電流印加電極7a及び7bを備えて成る。
【0018】
ここでは、電極間距離の一例として、前記電流印加電極7a及び7b間距離、前記電流印加電極7a及び前記電圧測定電極8a間距離、前記電流印加電極7b及び前記電圧測定電極8b間距離を各々8cmとする。
【0019】
また、前記電流印加電極7a及び7bと前記電圧測定電極8a及び8bとを、各々身体の臍位置を通る垂直線に対して左右対称に接触させるために、図示しないが、前記臍位置を通る垂直線上に本体部2の中心を合わせるように、前記本体部2の中心位置を示すマークを備えていても良い。
【0020】
図3の電気ブロック図によれば、睡眠時呼吸状態判定装置1は、主に制御及び演算を行なうブロック1とインピーダンス測定を行なうブロック2に大別される。前記ブロック1は、前述の表示部4、電源スイッチ5及び設定スイッチ6が制御部11に接続されて成る。また、制御部11は記憶部12、演算部15及び判定部16を各々接続して成り、前記記憶部12は測定又は判定データを一時的に記憶しておくRAM13と演算式や判定基準等を予め記憶しておくROMとを備えて成る。前記演算部15はインピーダンスから呼吸及び体脂肪に関する演算を行なうものであり、前記判定部16は、前記演算部15での演算結果に基づいて、睡眠時無呼吸・低呼吸状態の判定を行なう呼吸状態判定部17と肥満度合いを判定する肥満判定部18とからなり、前記睡眠時無呼吸・低呼吸状態と、肥満度合いとの判定結果に基づいて、睡眠時の呼吸状態に関するアドバイスを設定するアドバイス設定部19が制御部11に接続して成る。更に、制御部11は時間を計測する計時部10と、睡眠時呼吸状態判定装置1に電力を供給する電源20を備えて成る。
【0021】
また、前記ブロック2は、電流印加電極7a及び7bがインピーダンス測定用電流を印加する電流印加部21に接続されて成り、電圧測定電極8a及び8bが電圧測定部22を介してA/Dコンバータ23に接続され、測定された電圧がディジタル信号に変換される。前記電流印加部21及び前記A/Dコンバータが前記ブロック1内の制御部11に接続されて構成する。
【0022】
次に、図4乃至図9のフローチャートを用いて、前記睡眠時呼吸状態判定装置1の動作を説明する。図4はメインフローチャートであり、図5は判定基準となる体脂肪率及び自然呼吸状態の測定時の動作を示すサブルーチンであり、図6は睡眠時の呼吸状態測定の動作を示すサブルーチンであり、図7及び図8は、前記図6の睡眠時呼吸状態測定時のインピーダンス測定の動作及び無呼吸状態カウント時の動作を示すサブルーチンである。また、図9は睡眠時呼吸状態の判定時の動作を示すサブルーチンである。
【0023】
まず図4を用いて睡眠時呼吸状態判定装置1のメイン動作を説明する。
【0024】
前記睡眠時呼吸状態判定装置1の電源スイッチ5をオンすると、ステップS1においてインピーダンス測定状態及び各判定状態が初期化される。ステップS2において、個人データが登録済みかどうか判断される。ここで、本実施例1では予め体脂肪率算出用回帰式を性別年齢別に区分してROM14に記憶してあるものとし、その性別及び年齢に、予定計測時間を加えたものが前記個人データであるものとする。ここで、前記予定計測時間は、睡眠中のインピーダンスを測定する時間であるため、予定している睡眠時間よりも短い時間を設定しておくのが望ましい。
【0025】
前記個人データがRAM13内に記憶されていなければ、ステップS3に進み、まず性別及び年齢を入力するよう促す表示が表示部4に成される。前記表示にしたがい前記設定スイッチ6を操作して性別及び年齢が入力されるとRAM13に記憶され、ステップS4に進み、同様に予定計測時間の入力を促し、前記設定スイッチにより入力されるとRAM13に記憶され、ステップS5に進み、前記入力した個人データが表示部4に表示される。また、前記ステップS2においてRAM13内に前記個人データが記憶されており、個人データ登録済みであると判断されると、前記ステップS5に進み、RAM13内の個人データを表示部4に表示する。続くステップS6において、前記個人データを変更するかどうか判断される。変更があれば前記設定スイッチ6のUP/DOWNキー及び設定キーを用いて再入力し、変更が無ければ前記設定スイッチ6の設定キーを押してステップS7に進む。
【0026】
ステップS7においては、前記睡眠時呼吸状態判定装置1を腹部に装着し睡眠姿勢に入ったら、前記設定スイッチ6の設定キーを押して測定をスタートするようにガイダンスが表示部4に表示される。続くステップS8において、前記設定キーが押されたかどうか判断される。押されていない間はNOに進み、ステップS7の表示を続け、前記設定キーが押されるとYESに進み、ステップS9以降の測定が開始される。
【0027】
ステップS9は、図5に示すサブルーチンを用いて後述するが、睡眠状態判定の基準となる基準状態測定であり、所定時間のインピーダンスを連続測定することにより、自然呼吸時の1呼吸におけるインピーダンス変動の最大値と最小値の差の平均値(以下、基準振幅:t1とする)と、測定された全インピーダンスデータの平均値に基づいて算出される全身脂肪率とをRAM13にメモリしてステップS10に進む。
【0028】
ステップS10は、図6、図7及び図8に示すサブルーチンを用いて後述するが、睡眠時の呼吸状態の測定を行ない、前記基準振幅:t1を基準として無呼吸及び低呼吸状態を検出し、一般的に臨床において用いられる無呼吸低呼吸指数(以下、AHIという)を求め、RAM13にメモリしてステップS11に進む。
【0029】
ステップS11は、図9に示すサブルーチンを用いて後述するが、前記全身脂肪率より肥満度を求め、前記AHIより無呼吸症候群の症状の度合いを求め、前記肥満度と無呼吸症候群の症状の度合いとの関係から、睡眠状態改善に適するアドバイスを選択してステップS12に進む。
【0030】
ステップS12は、前記RAM13にメモリされた各結果を表示部13に表示する。前記表示はステップS13において前記電源スイッチ5が押されて電源オフされるまで表示し続け、電源スイッチ13が押されると、電源オフして終了する。
【0031】
以下、前記ステップS9、ステップS10及びステップS11における各動作を、前述した各サブルーチンを示す図を用いて説明する。
【0032】
まず、前記ステップS9の基準状態測定の動作を図5に示すサブルーチンを用いて説明する。前記ステップS8で測定開始を指示する設定キーが押されステップS9に進むと、図5のステップS21において、制御部11により前記計時部10がオンされ測定時間の計測を開始する。
【0033】
続くステップS22において、予め設定してある一定のサンプリング周期によりインピーダンス測定が行なわれる。ここで、前記インピーダンス測定は呼吸に同期した腹部形状変化によるインピーダンス変動を検出するものであるため、サンプリング周期を次のように定めた。すなわち、最も早い呼吸が1秒間に1回されるものとし、呼吸の周波数帯f(Hz)≦1として定義すると、サンプリング定理より、サンプリング周波数fs(Hz)≧2Hz、となる。したがって、0.5(sec)に1回以上サンプリングすることにより、前記定義した呼吸を捉えることが可能である。よって、本実施例においては、0.2(sec)に1回サンプリングされるものとした。これにより、例えば1回のサンプリングデータが何らかの理由で取得できなかった場合でも、次のサンプリングデータが正常であれば、0.4(sec)で1回測定されることになる。したがって、前記サンプリング周波数によって定められたように、0.5(sec)に1回以上サンプリングされていることになるため、妥当なサンプリングが成されている事になる。
【0034】
前記サンプリングが一回なされるとステップS23に進み、前記インピーダンス値:Z(Ω)が、人体のインピーダンスを正常に測定したものかどうか判定する。例えば、予め、Z<100の範囲であれば正常であるとして正常範囲を設定し、前記測定したインピーダンス値を判定する。Z<100、すなわち正常範囲であればYESに進み、ステップS24において、前記測定したインピーダンス値の時系列データを前記RAM13内に設けたデータ蓄積領域に記憶してから、ステップS25に進む。またZ≧100、すなわち、何らかの原因でインピーダンスが正常範囲でないと判断されるとNOに進み、ステップS26において、一つ前のサンプリングデータがRAM13のデータ蓄積領域内にあるかどうか判断される。サンプリングデータがある場合、前述したように、解析に足る妥当なサンプリングがなされていると判断しYESに進み、ステップS25に移行する。一つ前のサンプリングデータがない場合、すなわち、連続して2つのサンプリングが正常範囲外であった場合、サンプリング間隔は0.6(sec)経ってしまったことになり、前記サンプリング条件を満たさない。よって、NOに進み、前記表示部4に測定不能を示すエラー表示し、電源を自動でオフする。
【0035】
このとき、エラー表示と同時に音や振動などで被験者に測定不能を報知しても良い。これにより、測定者は睡眠時呼吸状態判定装置1を装着し直し、すぐさま測定を再開させることができる。
【0036】
前記ステップS25においては、基準状態を測定するための所定時間が経過したかどうか判断される。本実施例においては、前記所定時間を前記ステップS21においてタイマーがオンされてから30(sec)とする。よって、30(sec)経過していなければNOに進み、ステップS22に戻りインピーダンス測定を繰り返し、30(sec)経過するとYESに進み、前記タイマーをオフすると共にステップS27以降の基準データの演算及びRAM13へのメモリ手順に移行する。このとき、前記サンプリングが正常に行なわれていることから、前記睡眠時呼吸状態判定装置1は正しく装着されていると判断される。
【0037】
ステップS27において、前記RAM13内の全てのサンプリングデータのインピーダンス平均値を演算部15において演算し、続くステップS28において、前記インピーダンス平均値に基づいて体幹部の体脂肪率を演算する。
【0038】
ここで、本実施例においては、前記体幹部脂肪率の演算において、予め設定してあるインピーダンス値のみをパラメータとする回帰式を前記ROM14より読み込んで演算するものであり、前記回帰式は例えば、体幹部脂肪率=α×(1/Z)(ここで、αは定数である)で表されるものであり、性別及び年齢別にROM14内に格納されているものとし、前記登録してある個人データに基づいて、制御部11によりROM14から適する回帰式が読み込まれるものとし、前記回帰式と前記インピーダンス平均値とから体幹部脂肪率を求め、RAM13のデータ格納領域に格納する。
【0039】
ここで、発明者が見出した、前記回帰式の導出に至る体幹部脂肪率と腹部インピーダンスとの関係を図10乃至図12を用いて説明する。まず、図10に示す腹部体組成を考慮しない腹部インピーダンス測定モデルにおいては、腹部前面に接触させた電流印加電極7a及び7b間を腹部を介して流れる電流は、腹部前面から背中に向かうほど流れにくくなっていくことから、前記電圧測定電極8a及び8b間において正常にインピーダンス測定可能な腹部前面から背中への距離をxcmとする。xは電流印加電極7a及び7b間距離によって定められる定数であるとする。このとき、前記電圧測定電極8a及び8b間距離:Lを8cmとし、電極の長さKを2cmとして、腹部前面において正常にインピーダンス測定可能な範囲を、前記電極配置及び距離xで表される直方体と見なす。更に、前記直方体の抵抗率をρとすると、インピーダンスZとの関係は、Z=ρ×L/K×xとして表される。ここで、体幹部脂肪率(%FAT)=ρであることから、体幹部脂肪率(%FAT)=Z×K×x/L、前述の数値を代入すると、体幹部脂肪率(%FAT)=(x/4)×Zとなり、xは前述したように定数であるとしたため、理論上、体幹部脂肪率(%FAT)はインピーダンスZに比例する。
【0040】
しかしながら、前記距離xは腹部の体組成を反映する変数である。すなわち、実際には腹部前面の等価回路は、図11に示すように、皮膚表面及び皮下脂肪は抵抗として考えられ、インピーダンス測定の際、皮下脂肪は接触インピーダンスとして作用してしまい、皮下脂肪の多い人ほど皮膚表面に流れる電流が多くなり、図12に示すようにインピーダンスZと公知のDXA測定を用いて算出した体幹部脂肪率との関係においては曲線のグラフが形成される。この補正のため、1/Zをパラメータとして、1/Zと前記DXA測定を用いて算出した体幹部脂肪率との関係を示したものが図13に示すグラフであり、相関係数R=−0.93の直線性を持つ関係で表すことが可能である。
【0041】
前記ステップS28において体幹部脂肪率が算出されると、ステップS29において、前記体幹部脂肪率に基づいて全身脂肪率を算出する公知の回帰式を予め記憶してあるROM14より読み込んで、全身脂肪率を算出してRAM13に格納する。ここで、全身脂肪率を算出する前記回帰式は例えば、DXA測定により求めた全身及び体幹部脂肪率との相関より、図14に示すような関係にあり、全身脂肪率(%FAT)=0.77×体幹部脂肪率(%FAT)+3.2で表される。
【0042】
ステップS30において、前記RAM13のデータ蓄積領域内のデータの移動平均を取ることにより、図15に示すような、呼吸に同期した腹部形状の変形によるインピーダンス変動波形が得られる。続くステップS31において、前記波形の周波数分析より呼吸成分を抽出する。呼吸の周波数f(Hz)として、呼吸の周波数帯域を0.1≦f≦1と定め、適する公知のディジタルフィルタ処理により呼吸成分波形を求める。ステップS32において、前記形成された呼吸成分波形において、前述の基準振幅:t1を演算するものである。具体的には、サンプリング毎に前回のデータとの差を取り、符号がプラスからマイナスに変わった時点のデータを極大値とし、逆に符号がマイナスからプラスに変わった時点のデータを極小値とする。30(sec)間の前記極大値の平均値及び極小値の平均値を求め、この差を求めることにより前記基準振幅:t1とするものであり、前記t1をRAM13に記憶する。
【0043】
次に、図4のステップS10の睡眠時呼吸状態測定時の動作を図6、図7及び図8を用いて説明する。図6は睡眠時呼吸状態測定の一連の動作を示すサブルーチンであり、図7は前記図6中のインピーダンス測定を示すサブルーチンであり、図8は同じく図6中の無呼吸状態検出動作を示すサブルーチンである。
【0044】
前記図4のステップS10で睡眠時呼吸状態測定に入ると、図6のステップS41において、睡眠時の無呼吸状態の回数をカウントする回数カウンタをn=0、無呼吸状態が連続している状態をカウントする連続カウンタをi=0として初期化すると共に、前記制御部11により計時部10のタイマーをオンし、ステップS42において、図8を用いて後述するインピーダンス測定を行ない、ステップS43において、前記インピーダンス測定の結果に基づいて、図9を用いて後述する無呼吸状態の検出を行なう。ステップS44において、前記個人データ登録時に入力した計測予定時間が経過したかどうか判断される。経過していなければNOに進み、ステップS42のインピーダンス測定に戻る。また、経過した場合YESに進み、ステップS45において、前記無呼吸状態検出の結果に基づいて、次式よりAHIを算出してRAM13に記憶し、図4のメインルーチンに戻る。
【0045】
ここで、前記AHI算出式は、AHI=無呼吸低呼吸回数n(回)/予定計測時間(h)で表されるものであり、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示すものである。
【0046】
ここで、前記ステップS42のインピーダンス測定を図7を用いて説明する。インピーダンス測定に入ると、ステップS61において、前記設定された所定のサンプリング周期によりインピーダンス値:Z(Ω)が測定される。このとき、図5の基準状態測定において前述したように、前記睡眠時呼吸状態判定装置1は、正しく装着されており、サンプリングが正常に行なわれることが確認されているため、続くステップS62において、サンプリングされたインピーダンス値の時系列データを前記RAM13内に設けたデータ蓄積領域に記憶する。
【0047】
ステップS63において、前記RAM13内のデータ蓄積領域に、最新のサンプリングデータを含む10秒間のデータが蓄積されているかどうか判断される。蓄積されていなければNOに進み、再びステップS61においてインピーダンス測定を繰り返し、蓄積されていればYESに進み、図6の睡眠時呼吸状態測定サブルーチンへ戻り、ステップS43の無呼吸状態カウントに進む。
【0048】
図8を用いて、前記ステップS43の無呼吸状態カウントサブルーチンを説明する。前述したようにインピーダンス値が測定されると、ステップS81において、最新の前記時系列データを含む過去10秒間のインピーダンス値の時系列にデータに基づいて、順次移動平均を取ることにより、呼吸に同期した腹部形状変化によりインピーダンス変動波形が得られる。続くステップS82において、前記波形の周波数分析より呼吸成分波形を抽出する。ここでも図5のステップS31と同様にして、呼吸の周波数f(Hz)を、0.1≦f≦1として、適するディジタルフィルタをかけることにより求められるものである。ステップS82において、前記形成された10秒間の呼吸成分波形において、呼吸成分波形の最大値及び最小値を検出し、この差を睡眠時呼吸振幅:t2とする。
【0049】
続くステップS84において、呼吸状態を判別する。一般的に無呼吸状態とは10秒以上呼吸が休止している状態を表し、低呼吸状態とは1回の換気量が自然呼吸時の半分以下になる状態とされている。よって、ここでは、図5のステップS32において求めた基準振幅:t1に対してt2が半分以下になった状態が10秒間検出された場合を無呼吸低呼吸状態として定義する。すなわち、ステップS84において、t2>t1/2ならば自然呼吸状態とし、t2≦t1/2ならば無呼吸低呼吸状態として判別する。
【0050】
t2≦t1/2であった場合NOに進み、ステップS85において、前記無呼吸低呼吸状態が10(sec)以上連続しているかどうかをカウントする連続カウンタをi=i+1として、図6睡眠時無呼吸状態測定サブルーチンへ戻り、インピーダンス測定から繰り返す。また、t2>t1/2であった場合YESに進み、ステップS86において、前記連続カウンタがi=0かどうか判断される。i=0の場合YESに進み、図6の睡眠時無呼吸状態測定サブルーチンへ戻る。i=0でない場合NOに進み、ステップS87において、10(sec)以上の無呼吸低呼吸状態が検出されてから再び自然呼吸状態に戻ったものと判断し、無呼吸低呼吸カウンタをn=n+1としてカウントを進め、ステップS88において、連続カウンタをi=0に戻した後、図6の無呼吸低呼吸状態測定サブルーチンへ戻る。
【0051】
最後に図4のステップS11に示した睡眠時呼吸状態判定の動作を図9を用いて説明する。
【0052】
ステップS101において、前記RAM13に記憶したAHIを読み込み、前記AHIに基づき、睡眠時無呼吸症候群の判定を行なう。すなわち、AHI<5のとき正常を示し、5≦AHI<15のとき軽度の睡眠時無呼吸症候群であることを示し、15≦AHI<30のときを中等度、30≦AHIのときを重度の睡眠時無呼吸症候群であることを示す。
【0053】
ステップS102において、前記RAM13に記憶した全身脂肪率に基づいて、公知の肥満度の判定を行なう。例えば、予めROM14に記憶してある図16に示すような判定表を用い肥満度を判定する。前記判定表によると、肥満度は性別及び年齢別に、全身脂肪率によって痩せ、標準、軽肥満及び肥満の4つに区分されており、個人データとして入力した性別及び年齢と、前記算出された全身脂肪率とから、該当する肥満度が選定されるものである。例えば、30歳男性で全身脂肪率が23%FATであった場合には肥満度は軽肥満と判定される。このように判定された肥満度はRAM13に記憶され、続くステップS103において、前記判定された肥満度が標準であるか否かが判断される。標準でない場合、すなわち痩せ、軽肥満又は肥満の内何れかであった場合NOに進み、ステップS104において、肥満度を判定した前記全身体脂肪率から標準域までの差分を算出し、目標減量値としてRAM13に記憶する。前述した30歳男性の場合、21%FATが標準域であるため、全身脂肪率2%を目標減量値とするものである。この後、ステップS105に移行する。また、ステップS103において、肥満度が標準であると判断されるとYESに進み、前記ステップS105に移行する。
【0054】
ステップS105において、前記ステップS101及びステップS102において各々判定された睡眠時無呼吸症候群と肥満度との判定結果より、睡眠時の呼吸状態に関するアドバイスを選択する。例えば図17に一例を示すように、前記睡眠時無呼吸症候群と肥満度とをマトリクス状に配した判定表を用いるものであり、前記判定表は、予めROM14の中に記憶されているものである。
【0055】
前記判定表は、縦軸を肥満度別に、痩せ、標準、軽肥満及び肥満として4つに区分し、横軸を睡眠時無呼吸症候群の症状別に、正常(AHI<5)、軽度(5≦AHI<15)、中等度(15≦AHI<30)及び重度(30≦AHI)として4つに区分したものであり、肥満度と睡眠時無呼吸症候群とが各々適合するマトリクス上に各々予め設定されたアドバイスを読み込むものである。
【0056】
前記図17に示したアドバイスは、大きく分類すると、睡眠時無呼吸症候群が重度と判定された場合には、昼間無意識の内に眠ってしまい重大な事故に繋がるなど、日常生活における危険性を伴うものであるため、前記肥満度にかかわらず、然るべき医療機関における専門的な治療を勧めるアドバイスを示すものである。
【0057】
また、睡眠時無呼吸症候群が軽度又は中等度の場合であって、肥満度が痩せ又は標準であった場合、無呼吸及び低呼吸の発生原因は肥満以外の何らかの疾病であると考えられるため、医師への相談を勧めるアドバイスを示すものである。同じく、睡眠時無呼吸症候群が軽度又は中等度の場合であって、肥満度が軽肥満又は肥満と判定された場合、無呼吸及び低呼吸の発生原因は肥満であると考えられるため、肥満を解消することにより睡眠時の呼吸状態が改善され快適な睡眠を得られる可能性が高いことから、肥満を解消するよう促すアドバイスを示すものである。
【0058】
更に、睡眠時無呼吸症候群が正常であると判定された場合には、肥満度を標準に近づけるようアドバイスするものであり、特に、軽肥満又は肥満であった場合には、無呼吸症候群にかかる危険性が高い状態であることから減量するようアドバイスするものである。
【0059】
前述のようにアドバイスを選択すると、図4のメインフローチャートに戻り、測定結果、判定結果及び前記アドバイスを表示するものである。
【0060】
なお、本実施例では、肥満度と睡眠時無呼吸症候群の重症度とのマトリクスにより、呼吸状態の改善に関するアドバイスを選択したが、全身脂肪率とAHIの値をマトリクス状に展開して各々にアドバイスを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施例の睡眠時呼吸状態判定装置の使用時の正面図である。
【図2】図1のA−A断面である。
【図3】本実施例の睡眠時呼吸状態判定装置の電気ブロック図である。
【図4】本実施例のメイン動作を示すメインフローチャートである。
【図5】基準状態測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図6】睡眠時呼吸状態測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図7】図6のサブルーチンにおけるインピーダンス測定時の動作を示すサブルーチンである。
【図8】図6のサブルーチンにおける無呼吸状態カウント時の動作を示すサブルーチンである。
【図9】睡眠時呼吸状態判定時の動作を示すサブルーチンである。
【図10】腹部前面の電流経路モデルである。
【図11】腹部前面の等価回路モデルである。
【図12】体幹部脂肪率と生体インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【図13】体幹部脂肪率と生態インピーダンスの逆数との関係を示すグラフである。
【図14】全身脂肪率と体幹部脂肪率との関係を示す図である。
【図15】呼吸によるインピーダンス変動を示す図である。
【図16】性別及び年齢別肥満度判定を示す図である。
【図17】睡眠時無呼吸症候群判定と肥満度判定とをマトリクス状に配した判定表である。
【符号の説明】
【0062】
1 睡眠時呼吸状態判定装置
2 本体部
3 ベルト型固定部
4 表示部
5 電源スイッチ
6 設定スイッチ
7a,7b 電流印加電極
8a,8b 電圧測定電極
10 計時部
11 制御部
12 記憶部
13 RAM
14 ROM
15 演算部
16 判定部
17 呼吸状態判定部
18 肥満判定部
19 アドバイス設定部
20 電源
21 電流印加部
22 電圧測定部
23 A/D変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、
前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、
前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、
前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、
前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有することを特徴とする睡眠時呼吸状態判定装置。
【請求項2】
前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定することを特徴とする請求項1記載の睡眠時呼吸状態判定装置。
【請求項3】
前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠時呼吸状態判定装置。
【請求項1】
睡眠時の呼吸に同期して変形する腹部の生体インピーダンスを連続測定する腹部生体インピーダンス測定手段と、
前記生体インピーダンスに基づいて呼吸状態を検出する呼吸状態検出手段と、
前記呼吸状態から無呼吸状態及び低呼吸状態を判定する無呼吸低呼吸状態判定手段と、
前記生体インピーダンスに基づいて肥満度を判定する肥満度判定手段と、
前記無呼吸低呼吸状態と肥満度とから、睡眠時の呼吸状態の改善に関してアドバイスするアドバイス手段とを有することを特徴とする睡眠時呼吸状態判定装置。
【請求項2】
前記肥満度判定手段は、前記連続測定された生体インピーダンスの平均値の逆数に基づいて算出された体脂肪率を用いて肥満度を判定することを特徴とする請求項1記載の睡眠時呼吸状態判定装置。
【請求項3】
前記腹部生体インピーダンス測定手段は、インピーダンスを測定するための電極を腹部に接触させて固定する固定部を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠時呼吸状態判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−34598(P2006−34598A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218877(P2004−218877)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
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