説明

睡眠治療装置と、その脳波誘導方法を用いた脳波賦活方式、及び、サブリミナル学習システム。

【課題】脳波誘導のための脳波誘導方式及びそのシステムを提供する。
【解決手段】脳波誘導装置の実効率を高めるための脳波誘導方式であって、脳波誘導のための周波数に対して、休止間隔を加味するための1秒から60秒の波長を有する周波数帯域を複合したとともに、前記休止間隔と脳波誘導のための周波数は、さらに、特定の周波数帯域において、経過時間に応じて比較的大きく推移するとともに、反復し、前記特定の周波数帯域は、さらに、反復毎においても比較的小さく推移したことを特徴とした脳波誘導方式。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脳波誘導方式、に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠障害、又は自律神経失調症、又は鬱病に効果があるものとして、睡眠を誘導する装置がある。光刺激、及びリラクゼーションによる様々な誘導方法があり、生体の緊張をある程度解きほぐすことで、安眠可能な状態へ誘導するシステムであるが、直接的に脳波を矯正し、誘導することはできなかった。
また、近代の精神病院では、これらの誘導装置を有効利用している場合が少なく、睡眠障害には睡眠薬等の神経系薬物の服用が主流であり、又は刺激装置においては鬱病、又は統合失調症における電気ショック療法しか一般的に行われていないため、結果的に先端科学を精神医療に齎すことはできなかった。そのため、睡眠中の脳波に関しては、脳波を長時間刺激して、効果的に誘導する方法、及びその技術が必要であった。
また、人間工学的な知識として、自然環境や人間のリズムに影響すると言われる1/fゆらぎ理論がある。これは規則的なリズムの中に微妙な変化やズレが生じていることにより、癒し効果があるとされている。

【特許文献1】特開2005-292215号公報 高速学習システム及び学習用記憶媒体
【特許文献2】特開2004-133362号公報 学習システム
【特許文献3】特開2003-135767号公報 遊技機
【特許文献4】特公H06-85804号公報 リフレッシュ装置
【特許文献5】特公H06-042908 脳波誘導装置
【特許文献6】特公H07-012376 脳波誘導装置
【特許文献7】特公H06-026593 低周波治療器
【特許文献8】特開H04-347171 脳波誘導装置
【特許文献9】特公H07-90019 睡眠ステージ監視装置
【特許文献10】特開2003-339674 睡眠段階推定装置及び睡眠段階推定装置から出力される信号を利用した装置
【特許文献11】特開H02-98368 睡眠誘導装置
【特許文献12】特公H05-056902 睡眠の状態変化検出装置および睡眠状態制御装置
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生体電気刺激装置、及び低周波治療装置は、単調で機械的なパターンやリズムが不快感や疲労感をもたらす場合があるため、長時間使用した場合には効果が得られなくなる場合がある。
【0004】
この問題は、人間の知覚に干渉するシステムと装置全般に関係すると思われるが、特に装置の仕組みと、人間の脳波と干渉する0.4Hz-48Hzまでの周波数が影響していると思われる。
【0005】
また、1/fゆらぎ理論を当該装置に用いることにより、上記の問題を軽減する必要があったが、一般的に研究段階であり、未完成の理論であると思われる。
【0006】
ところで、脳波誘導装置では、検出された脳波をバイオフィードバックするとともに、特定の周波数帯域をフィルタすることで上記問題を解決している。
【0007】
また、サブリミナル学習システムにおいては、様々な脳波への刺激によって学習意欲や集中力を高めるような工夫が必要であった。睡眠導入装置も同様である。そのため、精神と神経に関わる諸々の治療装置の実用化は難しいと考えられていた。
【0008】
つまり、従来の方法では、脳波を直接的に誘導して矯正することができないので、そのため装置等に様々な工夫を施して、脳波誘導の完成度を高くしなければならなかった。
【0009】
したがって、本発明では脳波誘導のための脳波誘導方式、及びそのシステム、とを提供する。
本発明者は、意外にも、脳波誘導方式を脳波誘導装置に用いることで、睡眠時の脳波を長時間誘導する方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、
脳波誘導装置の実効率を高めるための脳波誘導方式であって、
脳波誘導のための周波数に対して、休止間隔を加味するための1秒から60秒の波長を有する周波数帯域を複合したとともに、
前記休止間隔と脳波誘導のための周波数は、さらに、特定の周波数帯域において、経過時間に応じて比較的大きく推移するとともに、反復し、
前記特定の周波数帯域は、さらに、反復毎においても比較的小さく推移した
ことを特徴とした脳波誘導方式
に関する。
【発明の効果】
【0011】
・生体電気刺激装置や低周波治療装置の治療効果を頭部に長時間適用できる。
・脳波誘導装置においては、実効率が長時間持続させることができる。また、睡眠状態の脳波を矯正することにより、精神と神経に関わる病気全般が治療可能になる。
・脳波誘導を脳波帯域全体に実施することによって、結果的に脳を賦活させることが可能である。
・従来の1/fゆらぎ効果の代わりとして適用することも可能である。
・サブリミナルシステムにおいて、サブリミナル効果を増幅することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の具体例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1では、知覚に関係するための時間間隔を要するシステム等において用いた例である。各工程a-eと休止時間fにおいて、脳波を賦活させるために徐徐に間隔を広げていることが示されている。この方法による効果は1/fゆらぎ理論に類似するものであるが、時間間隔のみでなく、さまざまな場面で取り入れることにより、従来の単調な刺激と比べ、ストレスを軽減させることが可能である。例えば、脳波誘導装置においてα波に応用した場合、通常10Hzのみを繰り返し用いるところを、8から13Hzまでの帯域内で推移変化させることにより、脳波誘導の実効率は高くなると思われる。さらに、脳波誘導を脳波帯域全体に実施することによって、結果的に脳を賦活させることが可能である。
【0014】
また、休止間隔は、脳波に応じて予測される呼吸数以下が好ましく、平常時においては一般的に毎分の呼吸数が12から20であるので、複合波は1/5Hzから1/3Hz以下を用いる。映像等においては、連続したサブリミナル効果を増幅するためにも有効であると思われる。具体例としては、学習システムにおける学習工程で、休止時間fが学習工程a-eのサブリミナル効果(増幅)のために5回連続した場合でも、実効率は持続すると思われる。さらに、前述した脳波誘導を実施することで、脳波誘導、サブリミナル効果、1/fゆらぎ効果(脳波誘導方式)の3つの相乗効果が期待できる。(実施例3参照)
【実施例2】
【0015】
図1に示す20秒程度の工程は、さらに90分間連続して繰り返す場合においても同様に、毎回相違する変化を有するのが望ましい。
【0016】
例えば、20%の効果を引き出すためには、最初が20秒(20秒は脳波誘導方式において最大値であるため)であれば、90分後には16秒というように、時間経過と比例して微妙に変化することで脳波を賦活するような効果が得られる。最も適切な効果の量としては、変化し過ぎず、かつ単調で飽きない程度の意識されにくいものが条件となる。(実施例7参照)また、図3と図6では、周波数帯域が反復毎に推移変化しているのが示されている。
【実施例3】
【0017】
次に、脳波誘導方式をサブリミナル学習システムに用いた具体例を説明する。
例えば、英単語学習を目的とした場合、図1で示される学習工程a-eにおいては、a-bが翻訳文、cが英単語、dが用例であり、eはa-dまでに表示した全イメージの表示を行う。英単語が「speed」の場合、a,bは「速さ、速度、迅速」、cは「speed」、dは「speed up 速度が増す」、であり、eはこの全部になる。
【0018】
このとき、a-bは連想元イメージを表示する第1段階であり、c-dは連想先イメージとその付加情報を表示する第2段階であり、eは復習するための表示であり、さらにこれらの各工程は、休止時間fを設けたことによりサブリミナル効果を増幅するものである。
【0019】
さらに、学習工程a-dにおいて、イメージの表示とともに背景を光点滅することにより脳波誘導を行う。
【0020】
イメージの形式は表現可能なものであれば、文字列のほかに画像でも良いし、音声を加えることも可能であり、連想元イメージ、又は連想先イメージが1件の学習イメージについて複数の場合には、脳波誘導周波数と同調して連続表示すれば良い。
【0021】
以上による学習システムは、一般的な方法でも可能である。しかしながら、これらの学習工程を繰り返すだけでは単調なリズムにより飽きやすいため、a-fの時間と、脳波周波数に、微妙な変化を少しづつ与える必要がある。それは1/fゆらぎ理論でも可能だが、脳波誘導方式においては特に、学習工程a-bはイメージを認識するためであり、学習工程c-dは学習するためであるから、そのときどきに応じて脳波の周波数帯域を決定すべきである。すなわち、1件の学習イメージの工程a-eの順番に関わらず、学習工程c-dは最も波長の高いα波中域以上であり、学習工程a-bはそれよりも低い波長に推移するためのものであれば、より学習効果として適切であると思われる。この時、各工程と周波数の関係式はc>d>e>a>bになるが、特にeについては復習のための工程であるので無視しても良いと思われる。
【0022】
また、脳波誘導のための周波数を決定する際においては、θ波を用いると眠くなることがある。そのため、δ波、又はα波低域を代わりに用いることも可能であるが、利用者が十分に睡眠を取っておけば、この問題を回避することもできる。また、表示端末の仕様によってはチラツキが生じる問題があるが、具体的には実施例6で解説する。
【0023】
図2は、脳波誘導方式の波形の例であり、脳波と、脳波誘導の実施時間との複合波を示している。また、サブリミナル学習システムにおいては、脳波誘導の非実施時間はサブリミナル効果の増幅を兼ねるものである。
【実施例4】
【0024】
以下は睡眠時において脳波誘導を行う際の問題点と、脳波誘導方式について説明したものである。
【0025】
入眠時から起床時までの睡眠中の脳波の状態は、深い眠りと浅い眠りを5回前後反復するステージがあり、さらに1回のステージは90分前後を要し、浅い眠りのためのレム睡眠と深い眠りのためのノンレム睡眠を約1:4の割合で構成されており、ステージ反復時に現れるレム睡眠の段階では、体内活動が急激に上昇し、脳波とともに呼吸数も高くなることが一般的に知られている。
【0026】
また、精神疾患においては、睡眠状態が悪いために回復が遅れたり、あるいは悪化する場合があり、病因の一因となっていると思われる場合があるが、この精神疾患に対しては脳波誘導装置を用いて、睡眠中の脳波の推移を正常な範囲内に矯正することにより治療することができると考えられる。
【0027】
具体的には、脳波誘導のためのパルス波は、脳波を刺激するための周波数のみを用いるだけでなく、人間工学的なリズムを用いるように工夫する必要がある。
【0028】
では、人間工学的なリズムについて具体例に示す。
【0029】
まず、脳波誘導の実施時間においては、仮に休止時間を固定したり、あるいは休止時間が無かった場合、脳波誘導が始まってからすぐに耐えがたいリズムとして知覚され得るだろうし、1/fゆらぎ理論を用いたとしても、そもそも理論的に未完成であるため、理想的な睡眠誘導に必要とされる効果は得ることはできない。
【0030】
そこで、脳波周波数に対して関係性を有する呼吸数の近似値以下の周波数を複合することで、脳波誘導の休止間隔を決定する。脳波誘導の実施時間は、脳波のための周波数が高くなるほど疲労しやすくなるため、実施間隔は前述の呼吸数以下という条件に加えて、連続的な刺激にならないように決定すべきである。また、睡眠中の呼吸数は、ノンレム睡眠時には約0.2Hz、レム睡眠時には約0.4Hzであるが、脳波誘導の実施時間と休止時間のそれぞれに適用することを考慮すれば、さらに1/2でも良い。(実施例7参照)
【0031】
次に、ノンレム睡眠時の問題点を示す。
【0032】
一般的に、レム睡眠とノンレム睡眠の平均的な割合は約1:4であるが、レム睡眠においてはノンレム睡眠の最も深い眠りの状態から突然始まるため、シミュレートされた脳波誘導においては、レム睡眠の誘発時間が実際には前後しなければならない。むしろ、ノンレム睡眠においては脳波誘導の効果量を最低値にして長めに取り、レム睡眠を自然誘発させることが望ましい。
【0033】
また、レム睡眠の脳波誘導開始時においては、無造作なタイミングによる睡眠妨害になる可能性がある。そのため、直前の脳波周波数の推移を、休止間隔、又は複合波にそのまま継承することによって、人間工学的に軽減することが可能である。つまり、レム睡眠直前の脳波が約0.5Hz(δ波低域)であるので、レム睡眠直後の複合波のための周波数は約0.5Hz、ないし、約0.25Hzから始まるのが好ましい。
【0034】
よって、実質レム睡眠時の脳波誘導は前半のラグを想定して、1:7±2でも良いと考えることができる。
【0035】
また、睡眠時間の経過に伴い、覚醒レベルは徐々に高くなるので、脳波周波数、呼吸周波数、の推移は、全体的に上昇しなければならない。
図3は、実際に睡眠中の脳波を誘導するための優勢脳波と、休止間隔の推移であり、休止間隔の帯域は約0.01-0.3Hzが用いられている。
【実施例5】
【0036】
脳波治療装置は、あまり頻繁に使用することにより特有の疲労を伴う場合がある。これは、音楽でも同じであり、毎日同じ音楽を聴くと飽きるのと同じである。
【0037】
そのため、睡眠効果が著しく低下することを防ぐ目的で、日によって微妙に違う変化を取り入れるとともに、毎日の使用は控えるべきである。
【0038】
次の表1と表2は、7日間で反復する場合において、1日目と7日目の各ステージにおける脳波始点周波数、脳波到達周波数、休止間隔始点周波数、休止間隔終点周波数、ステージ時間(レム睡眠時間)を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【実施例6】
【0041】
脳波誘導は、脳波誘導方式によって決定された周波数を用いるが、その手段においては、電気刺激、光刺激、音波刺激、のいずれかを特定すべきではない。
例えば、脳波治療装置において、脳波誘導媒体と人体への実施部位は、脳波誘導装置の有効範囲内で症状や疾患部位に応じて判断すべきであり、必ずしも頭部や光刺激誘導が適しているものではなく、慢性疾患や神経症状の場合を考慮して、最も適した生体の部位の周辺に実施することにより、異常状態から回復させることができるものと思われる。
【0042】
また、光刺激の効果は、それに対する生体の反応が遅いため、β波のような高域の周波数になると実効率は著しく低下するものと思われる。
【0043】
ところで、覚醒時の脳波には、α波、β波、γ波があるが、このうちα波はリラックスや集中している状態、β波は普通の生活状態や殺伐とした状態、γ波は興奮・イライラした状態であることが一般的に知られている。
【0044】
このうち、覚醒レベルが最も高いのはγ波であるから、起床時においてはγ波−α波までを万遍に刺激することで、結果的に脳波を賦活させることが可能である。図6は、脳波が約47.8Hz-7.4Hz、呼吸数のための周波数が約0.4-0.1Hzで推移することで、脳波を賦活させるための実施間隔である。(また、反復毎に全体的な周波数は下がっており、3分後で最も高くなっているのは、周波数の推移変化を反復しているためである。)
【0045】
実際の脳波誘導装置においては、各手段の特性や使用電圧が相違するため、コンピューターから脳波誘導装置をパルス波で直接制御するような場合には波形、又はパルス幅を工夫する必要がある。
【0046】
次に、それぞれの手段を用いる場合の留意点を説明する。
【0047】
1.電気刺激を脳波誘導に用いる場合の処置部位は、首筋〜背中、又は鼻骨とその周囲、に効果があると思われる。人体に導子を左右対称に取り付けたことによる効果は比較的低い。電気刺激の有効電圧は、40ボルト±20ボルトであるから、20ボルト程度のバイアス電圧を付加するか、あるいは波形の高さに最大出力時の1/3を付加する。パルス幅は、100±50μ秒である。脳波誘導の実効率は最も高い。
【0048】
2.光刺激は、β波以上の高周波数は、点滅しているのが解らないため、効果が低い場合がある。また、低周波においては、光点灯時間が一定の場合には効果が殆ど消えてしまうため、点灯時間は休止時間との比率から決定しなければならない。LEDを使用する場合は、有効電圧が4±2ボルト程度であるため、2ボルト程度のバイアス電圧を付加するか、あるいは波形の高さに最大出力時の1/3を付加する。脳波誘導の実効率は、β波以下であれば2番目に高い。
【0049】
3.音波刺激を脳波誘導に用いる場合は、1回のパルス波は2回分の音波波形に相当するため、1/2のパルス波か、あるいはノコゴリ波を用いる。それ以外では、2つの相違する比較的高い周波数を干渉させることにより、脳波誘導有効範囲内の干渉周波数を発生させる方法がある。この方法は、汎用コンピューターのプログラムソフトウェアでも実現可能である。また、音量は環境音程度にするのが適切である。
【0050】
4.表示端末を用いた光点滅刺激は、一般的に表示更新のための周波数は60Hz前後が仕様であるので、背景で点滅するための周波数によっては、チラツキが生じる不具合がある。この問題を解決するためには、更新周波数から割り切れる周波数リスト(60Hzの場合30,20,15,12,10..)の中から、もっとも必要な脳波誘導のための周波数と近いものを選択する方法がある。そのほかの方法としては、実施例9のように更新周波数そのものを同調するか、あるいは脳波誘導装置を別に設ける必要がある。
【実施例7】
【0051】
(下記に示す人工知能システム(拡張)とは、データ分析・算出を行う媒体であり、コンピューター上で再現可能な構築方法であるから、実際には下記手順を踏むことにより人工知能システムが無くても実現可能である。)
【0052】
図4は、脳波誘導における生体に必要な優勢脳波の変化から、実際に有効な脳波誘導を算出する方法であって、人工知能システムに学習させる際に、実際に分かりやすく脳波と時間軸の関係で各工程を示したものである。
【0053】
まず、時間経過における優勢脳波の変化aを一般的知識から分かる範囲で入力し、不明瞭な部分は、前後の優勢脳波同士を曲線で滑らかに結んで補い、脳波誘導パターンのプロトタイプbを作成する。
【0054】
次に、脳波誘導装置を睡眠中に試行し、このとき不快感や中途覚醒があった時は、失敗情報dとして時刻d1を記録するとともに、その時刻における波長を変更して一旦終了する。さらに、次回の試行による失敗情報d2が発生した時は、失敗情報d1より以前であればd1を、以降であればd2に対して、波長を適切に変更する。この方法を繰り返すことで、生体に最低必要となる優勢脳波の変化を長時間導くことができる。
【0055】
また、起床直後の脳波は、まだ眠っている状態であり、適切な覚醒状態を促すために、α波より高い波長レベルによる最終的な誘導段階を設けるべきである。最終的な誘導段階では、γ波、β波、α波が満遍に刺激されるのが望ましい。
【0056】
また、脳波誘導装置による脳波への連続的な刺激は、神経的な負担となり不快感を与えるため、あまりストレスにならないように呼吸動作の間隔と同調して休止時間を設けることにより、この問題を回避する必要がある。さらに厳密には、呼吸動作が予測できない状況であれば呼吸数以下の間隔を用いる。図6は、起床時において脳波誘導を万遍に行うことにより、脳波を賦活させるための実施間隔である。睡眠時においては、レム睡眠時とノンレム睡眠時には呼吸、心拍数ともに大きく変化することも考慮しなければならない。図7は実際にこの方法を用いて導いた脳波と休止間隔の推移である。
【0057】
以上の方法を用いて人工知能システムを利用する場合においては、基本型システムの段階で、被験者から睡眠時の優勢脳波とその時刻を学習したのち、人工知能システム拡張型へ移行し、実際に脳波誘導装置を使って誘導を行いながら、被験者が不快に感じたり中途覚醒した場合には、(脳波観測と脳波誘導における作用誤差であると考えられる)誘導失敗情報として押しボタン等のスイッチを拡張型側の観測装置に備えて、自己補正しなければならない。また、予測に十分な学習が完了することによって、長時間の理想的な脳波誘導パターンとして1通り以上をシミュレーションすることが可能であり、システムを簡略化した小型コンピューターへ移行することができる。
【0058】
また、より誘導精度を高めるためには、例えば年齢別、平均睡眠時間、使用頻度などの被験者ごとの属性情報を学習要素に付加することで、予め個人差による実効率の格差を調整する方法がある。
【実施例8】
【0059】
脳波誘導の適切な休止間隔は、本来は人体のバイオリズムと同期するのが最も適切であるから、呼吸周波数と脳波推移をシミュレートするのではなく、呼吸数(又は呼吸動作)を検知する手段を用いて最も適切な脳波を予測することがより望ましい。また、検知された呼吸数からレム睡眠の始まるタイミングを予測することも可能であるから、これを脳波治療装置に組み込むことで、例えば実施例4のラグを有さない方法も可能であると考えられる。
【実施例9】
【0060】
マルチメディアにおいては、人間が知覚できる程度の周波数を元に製作されている。例えば、映画フィルムであれば24Hz、音楽の場合であれば4分音符を1秒とした場合、32分音符は8Hzである。
【0061】
しかしながら、脳波に近い周波数であると耐え難いチラツキや疲労を伴うために、実際の更新間隔は知覚できる範囲を少し超える程度が用いられていると言ってよい。脳波と干渉することで、一時的に脳波が矯正されるが更新周波数が一定であるので、結果的に疲労してしまうからである。
【0062】
脳波への干渉を予防する別の方法としては、優勢脳波を検出(脳波フィルタ)したものと同期(フィードバック)することでも可能である。例えば、テレビの場合には現状60Hzで更新されるところを、優勢脳波を検出して同期することで省電力化や高輝度化を図ることができる。また、音楽でも特にクラシックの場合には、適切にテンポを変えて脳波に変化をもたらすことで、リラクゼーション効果があると思われる。
【0063】
また、低域周波数を完全に脳波と同期(バイオフィードバック)することは理論的に難しいという問題がある。そこで、例えば1分おきに優勢脳波が検出された場合、ここに脳波誘導方式を用いたことにより周波数帯域を広めに取ることで、人間の知覚と理論的な同期を包容した中間的な技術的方法である。例えば優勢脳波が10Hzである場合には、脳波誘導方式を用いて11−9Hzで変化する更新周波数を有する。
【0064】
この技術的方法を用いる装置は、更新周波数を有する表示端末だけでなく、音楽の再生装置などで優勢脳波を検出して再生速度を変化させることにも有用である。また、映像を聴覚から得るための音波に変換する人工視覚装置にも用いることができる。
【実施例10】
【0065】
人工知覚装置は、映像画面の「変換元情報」を入力し、「周波数帯域に変換」処理し、「音波波形」を出力したことにより、聴覚から映像情報が得られるものである。
【0066】
この発明の特徴は、主に変換処理方法であって、コンピューターの内部プログラムに適用したことによる人工視覚装置、及び、当該処理の流れを逆転したことにより、視覚から音波情報を得られる人工聴覚装置がある。
【0067】
よって本発明は、映像画面を取得して低域−高域の周波数(式A−C)に変換出力することにより発明の効果を有する波形変換アルゴリズム、及びその装置である。具体的には、図10の色情報に対応した高域の周波数による波形(1/20ミリ秒=20kHz、1ミリ秒=1kHz)を生成・出力し、さらに図9の前記色情報の個数に対応して、図11の音程(16-1.6kHz)を想定した中域の周波数(0.1/12秒の場合、約120Hz)で連続処理することであり、実際に人工視覚装置に適用して知覚するための更新間隔を低域の周波数(0.1秒=10Hz)として有する。

(式A) 低域周波数≒知覚のための脳波帯域(0.5-48Hz、好ましくは4-23Hz)
(式B) 中域周波数≒音程のための帯域(16-1.6kHz)
(式C) 高域周波数<可聴帯域(20-20KHz)
【0068】
また、図10で示す高域周波数における単色に対する波形変換には、彩度を波の回数、色相を波の高低(強弱)として生成し、さらに波形高さの最初の部分には明度に応じて強弱の変化をさらに有することで行うが、特定の彩度、又は色相だけでも生成可能であり、さらには波形変換のための3つの要素は、色情報や色空間を特定すべきではなく、人間工学的に決定されるべきであり、また、色空間に関しては完成された研究段階にあるとは言えないためである。この波形変換は、シンセサイザーにおいてオシレーターによる波形合成とそのフィルター、又はピアノのペダル部分に相当する。
【0069】
なお、中域周波数が音程としての変化を有する帯域である理由は、色情報(特に横軸位置)を特徴づけて知覚しやすくするための工夫であり、また、低域周波数は単なる更新間隔であるから、本発明の核心的部分は高域周波数において色情報を波形に変換する波形変換方法にあると言える。
【実施例11】
【0070】
人工視覚装置における波形変換は、例えば色情報が左右ともに12個とすれば、中域の周波数は12階調となる。このときの偏移差を2倍とすれば、ちょうど鍵盤のように1オクターブ分の12音階になる。
【0071】
ところで、シンセサイザーには12音階に対応した音程の周波数を合成して出力する装置であるが、自動演奏や音の強弱のほかに音色の加工を行うことができる機能がある。具体的には、音色の要素となる波形を音程の周波数に合成することで音色は決定される。つまり、音程のために用いられる16-1.6kHzの周波数に任意の波形を合成しても、音程には影響しないように工夫することができるのである。このような音色の加工は、ピアノのペダルを踏むことでも同様に得られるものである。
【0072】
さて、人工視覚装置では、このように音程と音色を聞き分けられることを利用して、可聴域の音波への変換を行っている。例えば、映像画面の8ドット分の色情報を音に変換する場合には、ドの音から(黒鍵盤は無視するとして)1オクターブ上のドまでを、順番に弾く。
【0073】
このときのドレミファソラシドが、8個分の色情報に対応する。さらに、音の強弱は色相に応じて変化し、青であればピアニシモのように小さく、白や黄色であればアクセントのように強くすることで表現することができる。前述した音色の加工は、明度や彩度などを表現するために用いることができる。具体的には、音色として合成可能な波形を高域周波数によって生成し、音程のための周波数に基づいて波形出力を行っている。つまり、中域周波数の出力は単にSin波やパルス波のことではなく、高域周波数により生成された波形の出力間隔である。(例えば色相や色調ではなく単に白黒画像のような明度のみを変換するのであれば波形を高域周波数によって生成する必要はない。)
【0074】
また、低域周波数においても同様に前述の変換処理に対する更新間隔を意味する。例えばテレビなどのように60Hzの更新間隔を設けることにより、映像から音波への変換を連続的に行うための周波数である。
よって、各周波数の時間軸の関係式1−2が理論的に成立する。例えば、中域周波数が12階調(12個)の鍵盤である場合、低域周波数は1回の音程を聞き分けられる最低必要な長さx12回分が必要であり、これを周波数(ヘルツ)に換算すると必然的に式1が成立する。中域周波数に対して高域周波数との関係式は、式2で示すことができる。

(式1) 低域周波数≦中域周波数の平均値÷色情報の個数
(式2) 中域周波数の最高値≦高域周波数÷明度の最大値(分解能)
【0075】
つまり、低域周波数や分解能を下げることで色情報の個数は追加することが可能である。実際には、可聴域を考慮して、より多くの色情報を変換するために更新間隔を低く設定する必要があり、脳波のα波低域までが人工知覚装置として適切であると思われる。また、そのため、状況に応じて自動的に増減することで利便性は高くなります。将来的な場合、利用者が能力的に(音楽家のように)音階を聞き分けることが備わるため、鍵盤が1オクターブ分増えるように、変換範囲を縦軸方向も含めて拡大することにより、より大量の視覚情報を認識できるようになると予想することができる。
【実施例12】
【0076】
人工聴覚装置は、本発明の波形変換アルゴリズムを逆算的に応用したものである。すなわち、光から音波に変換する法則が人工知能推論に基づくような人間工学的なものであれば、別の利用法においても可逆的に適応できるからである。
また、声紋を分析するためのフォルマント周波数に特化した人工聴覚装置であれば、視覚から得た情報で人間の声を聞き分けることができると考えられる。
【0077】
例えば、12個のフルカラーLEDを表示するために、入力された音波から12階調の音程を分析する。このとき、人間の知覚は低周波なので、やはり低域の周波数で更新し、さらにこれを左右の音波に対応することにより、まったく聞こえなかった次元の情報が目の前に現れることになる。眼鏡の縁に計24個のフルカラーLEDを付けるなどすれば、より実用化に近づくと予想されるが、カラー液晶画面のようなものでも良い。(波形分析精度が低いCPU媒体においては、高域周波数による波形分析を省略し、中域周波数の色相を明度に置き換える必要がある。)
なお、波形分析にはスペクトラムアナライザやオシロスコープを用いる方法の他に、コンピューターを用いて音声データから算出することにより前記分析方法を実現する方法がある。例えば、一定時間内に含まれる波の回数、平均値、合計値から波長成分として算出できる。また、色の出力段階においては人間工学的な色空間に変換することが望ましく、一例としてはマンセル色空間がある。
【実施例13】
【0078】
実施例11−12で示された更新間隔のための低域周波数は、脳波に基づくものであるから、優勢脳波を検出して同期するために低域周波数を変調すれば、利用者の脳波に応じて最も適切な低域周波数を導くことができる。
【0079】
また、この関連技術としては、検出された脳波をα波のために特定の周波数でフィルタし、光変換してバイオフィードバックする脳波誘導装置がある。つまり、人工視覚装置、人工聴覚装置、の更新間隔にバイオフィードバックの技術や、脳波を賦活するための脳波誘導方式を応用することは技術的に可能と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
脳波誘導方式は、知覚に関係するための時間間隔を要するシステムと装置に用いることで、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】サブリミナル学習システムにおける要素の概念図である。
【図2】脳波周波数と呼吸周波数の複合波形図である。
【図3】睡眠治療装置における脳波と、複合波による休止間隔の推移図である。
【図4】睡眠時脳波誘導算出方法を示した折れ線図である。
【図5】サブリミナル学習システムにおける要素の概念図である。
【図6】脳波を賦活させるための実施間隔である。
【図7】人工視覚装置の想像図である。
【図8】ハンディータイプの人工視覚装置の想像図である。
【図9】映像画面における変換範囲の状態を示した図である。
【図10】色情報を高周波帯域の波形に変換する図である。
【図11】左右に振り分けられた中域の変調周波数の図である。
【符号の説明】
【0082】
10 サブリミナル学習システム
11 辞書データベース
12 脳波誘導(及び脳波賦活方法)
13 サブリミナル効果
14 1/fゆらぎ効果(及び脳波賦活方法)
20 イメージ学習(サブリミナル表示、及び脳波誘導装置による)
21 データ選択(学習済み入力、及びリセット、及び分割された辞書データベースによる)
1 本体
2 小型カメラ
3 小型スピーカー
4 ポインティングデバイス
5 パッド
6 小型端末装置
010 映像画面
011 波形変換範囲
012 波形変換範囲の中央
A-C 左側に並ぶ色情報
a-c 右側に並ぶ色情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の知覚に作用する装置において、
使用者の任意の脳波帯域を賦活するために内部周期に適用される脳波賦活方式であって、
脳波誘導の周波数は、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくとも1種以上の脳波帯域を推移して反復する手段、
推移経路を反復毎に相違すべくして前記脳波帯域に対しても推移変化を加味する手段、
前記脳波誘導に対して、人体への親和性を維持すべく対応した呼吸周期、乃至、それ以下の周期を用いて休止時間を加味する手段、
を備えたことを特徴とした脳波賦活方式。
【請求項2】
前記脳波誘導手段は、知覚に作用する情報出力端末を含むととともに、
前記情報出力端末の内容と、前記休止時間と、は、同調すべく成された
ことを特徴とした請求項2に記載の脳波賦活方式。
【請求項3】
脳波誘導装置、及び、知覚に作用する情報出力端末において、
使用者の任意の脳波帯域を賦活するために内部周期に適用される脳波誘導方法であって、
脳波誘導の周波数は、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくとも1種以上の脳波帯域を推移して反復するステップと、
推移経路を反復毎に相違すべくして前記脳波帯域に対しても推移変化を加味するステップと、
前記脳波誘導に対して、前記情報出力端末の内容と同調する呼吸周期、乃至、それ以下の休止時間を加味するステップと、
を有する脳波誘導方法。
【請求項4】
情報出力端末と、脳波誘導手段を備えたサブリミナルイメージ学習システムであって、
脳波誘導の周波数は、δ波、θ波、α波、β波、γ波、から少なくとも1種以上の脳波帯域を推移して反復する手段、
推移経路を反復毎に相違すべくして前記脳波帯域に対しても推移変化を加味する手段、
前記脳波誘導に対して、前記情報出力端末の内容と同調すべく対応した呼吸周期、乃至、それ以下の周期を用いて休止時間を加味する手段、
を備えたことを特徴としたサブリミナル学習システム。
【請求項5】
脳波誘導装置において、全睡眠ステージの脳波を矯正する睡眠治療装置であって、
脳波誘導の周波数は、睡眠ステージに対応したβ−δ波帯域を推移して反復する手段、
推移経路を反復毎に相違すべくして前記脳波帯域に対しても推移変化を加味する手段、
前記脳波誘導に対して、人体への親和性を維持すべく対応した呼吸周期を用いて休止時間を加味するとともに、前記休止時間は、ノンレム睡眠−δ波誘導時において使用者のレム睡眠誘発を促すためのタイムラグとして呼吸周期以下を含み、且つ、脳波誘導周波数の推移終点と、レム睡眠−α・β波誘導の呼吸周期の推移始点と、は、近似して成された手段、
を備えたことを特徴とした睡眠治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−200507(P2008−200507A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65037(P2008−65037)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願2006−113054(P2006−113054)の分割
【原出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(305049399)