説明

睡眠/覚醒サイクルの正規化のための化合物

【課題】シトシン含有化合物、シチジン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物の治療上有効な量を投与することにより、哺乳類の睡眠/覚醒サイクルを正規化するための方法の提供。
【解決手段】シチコリンは覚醒状態を高め、昼間の疲労感または倦怠感を緩和し、睡眠の質を向上させることができる。また、不眠症、睡眠時無呼吸症、周期性四肢運動、不穏下肢症候群、睡眠発作、および問題となる眠気のような睡眠障害の治療において、または睡眠不足の個体において認知機能を増加させるのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、睡眠/覚醒サイクルの正規化のための方法および睡眠障害の治療のための方法に関する。
【0002】
睡眠時無呼吸症、不眠症、睡眠発作、不穏下肢症候群、周期性四肢運動(periodic limb movement)、および問題となる眠気(problem sleepiness)のような睡眠障害は、全年齢層の多くの人々に影響を及ぼしている。さらに、ある種の化合物は、使用すると、または乱用すると、正常な睡眠パターンを妨げる可能性がある。そのような化合物としては、興奮剤、例えば、カフェインおよびコカイン、ならびに抑制剤、例えば、アルコールが挙げられる。睡眠障害で苦しむ個体は、集中することのまたは起きたままでいることの問題を経験しうり、この問題は、仕事および社会活動を妨げうり、罹患者が自動車または他の機械類を操縦する能力を制限しうる。十分な睡眠の欠如は同様に、免疫系を弱体化させるかまたは他の正常な身体機能を変化しうり、このことが他の症状または疾患をもたらしうる。
【0003】
従って、睡眠/覚醒サイクルの正規化および睡眠障害の治療のため、高齢者および小児を含む、全ての人々への投与に適した薬物療法を提供することは有益でありうる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は概して、シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、クレアチン含有化合物、ウリジン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物の治療上有効な量を哺乳類に投与することによる、哺乳類の睡眠/覚醒サイクルの正規化方法を特徴とする。この方法は、例えば、倦怠感もしくは疲労感を緩和するために、昼間の覚醒状態を高めるために、または哺乳類の睡眠の質を向上させるために使用することができる。
【0005】
関連する局面において、本発明は、シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、クレアチン含有化合物、ウリジン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物の治療上有効な量を哺乳類に投与することによる、睡眠障害の治療方法を特徴とする。典型的な睡眠障害としては、不眠症、構造性もしくは閉塞性の睡眠時無呼吸症、不穏下肢症候群、周期性四肢運動、問題となる眠気、または睡眠発作が挙げられる。睡眠障害で苦しむ哺乳類は同様に、物質乱用障害、例えば、アルコール、カフェイン、またはコカインの依存または使用で苦しんでいることもある。
【0006】
本発明は、シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、クレアチン含有化合物、ウリジン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物の治療上有効な量を哺乳類に投与することによる、断眠(sleep deprivation)で苦しむ哺乳類の認知機能の増加方法を特徴とする。
【0007】
本発明のシチジン含有化合物、シトシン含有化合物、クレアチン含有化合物、ウリジン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物のいずれかを別々にまたは他の物質と併用して投与することができる。好ましい態様として、シチジン含有化合物はシチジン、CDP、またはCDP-コリンであり; シチジン含有化合物はコリンを含み; および哺乳類がヒト小児、青年、成人、または高齢者である。他の好ましい態様として、CDP-コリンは経口的に投与され、および投与は長期的である。例えば、治療は1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、30日、60日、90日、または180日を超える期間にわたって、場合によっては1年を超える期間にわたって行われる。
【0008】
他の好ましい態様において、脳リン脂質(例えば、レシチン)または脳リン脂質の前駆物質(例えば、脂肪酸または脂質)が同様に、哺乳類に投与される。他の好ましい態様として、抗うつ剤が同様に、哺乳類に投与される。
【0009】
「睡眠障害」とは、睡眠パターンの質、持続期間、またはタイミングに影響を及ぼす障害を意味する。
【0010】
「睡眠/覚醒サイクル」とは、被験者が眠っている時間および被験者が起きている時間のサイクルを意味する。正常な睡眠/覚醒サイクルは、夜に眠ることおよび昼間に起きていることを伴うが、他の睡眠/覚醒サイクル、例えば、昼間に眠ることおよび夜に働くことが可能である。
【0011】
「断眠」とは、正常な量の睡眠の不足を意味する。例えば、成人は平均して一晩あたり約8時間眠っており、睡眠時間が8時間未満の成人は従って、平均して睡眠不足(sleep deprived)である。
【0012】
「睡眠の質」とは、哺乳類が眠っている時間の長さとは対照的に、睡眠から得られる実際の休息の尺度を意味する。
【0013】
「乱用」とは、物質、特に身体機能を変え得るものの過剰使用を意味する。
【0014】
「依存」または「依存性」とは、少なくとも部分的に、物質の使用から生ずる決断能の変化または低下を示す任意の行動形態を意味する。依存性の行動の典型的な形態は、反社会的な、または不適当な行動となって現れる可能性があり、物質に対する欲求、設計、獲得、および使用に向けられる行動が含まれる。この用語には同様に、生理的依存性の随伴を問わない、物質に対する精神的渇望、ならびに物質を継続的にまたは定期的に、その精神的作用を経験するためにまたはその欠乏による不快感を回避するために、使用したいという衝動に駆られた状態が含まれる。依存性の形態としては、習慣性、すなわち、緊張および感情的な不快感からの解放を得るための物質に対する感情的なまたは精神的な依存; 耐性、すなわち、所望の作用を達成かつ維持するために用量を増加させる漸進的な必要性; 耽溺性、すなわち、随意制御できない身体的または生理的依存; ならびに禁断症状を抑えるための物質の使用が挙げられる。依存性は、使用者の身体的特徴(例えば、遺伝的素因、年齢、性別、または体重)、性格、または社会経済的要因を含む、多くの要因に影響される可能性がある。
【0015】
「治療」とは、疾患、病的状態、または障害の治療、改善、安定化、または予防に帰着することを目的とした患者の医学的管理を意味する。この用語には、積極的治療、すなわち、特に疾患、病的状態、または障害の改善を対象とする治療が含まれ、および同様に、原因治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の原因の除去を対象とする治療も含まれる。さらに、この用語には、待機的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の治療というよりむしろ症状の緩和のために計画される治療; 予防的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の予防を対象とする治療; および補助的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の改善を対象とする別の特異的療法を補完するために採用される治療が含まれる。「治療」という用語には同様に、対症療法、すなわち、疾患、病的状態、または障害の全身症状を対象とする治療も含まれる。
【0016】
「治療上有効な量」とは、睡眠障害、異常な睡眠/覚醒サイクル、または睡眠遮断で苦しむ哺乳類において、治癒効果、治療効果、予防効果、安定効果、または改善効果をもたらすのに十分なシチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物の量を意味する。
【0017】
「シチジン含有化合物」とは、構成成分として、シチジン、CMP、CDP、CTP、dCMP、dCDP、またはdCTPを含む任意の化合物を意味する。シチジン含有化合物は、シチジンの類似体を含むことができる。好ましいシチジン含有化合物としては、以下に限定されることはないが、CDP-コリンならびに多くの場合、シチジン5'-ジホスホコリン[ナトリウム塩]として調製され、シチコリンとしても知られる、シチジン5'-ジホスホコリンが挙げられる。
【0018】
「シトシン含有化合物」とは、構成成分として、シトシンを含む任意の化合物を意味する。シトシン含有化合物は、シトシンの類似体を含むことができる。
【0019】
「アデノシン含有化合物」とは、構成成分として、アデノシンを含む任意の化合物を意味する。アデノシン含有化合物は、アデノシンの類似体を含むことができる。
【0020】
「アデノシン上昇性の化合物」とは、脳のアデノシンレベルを上昇させる任意の化合物、例えば、アデノシンの輸送または代謝を阻害するまたは変化させる化合物(例えば、ジピリダモールまたはS-アデノシルメチオニン)を意味する。
【0021】
「ウリジン含有化合物」とは、構成成分として、ウリジンまたはUTPを含む任意の化合物を意味する。ウリジン含有化合物は、ウリジンの類似体、例えば、トリアセチルウリジンを含むことができる。
【0022】
「クレアチン含有化合物」とは、構成成分として、クレアチンを含む任意の化合物を意味する。クレアチン含有化合物は、クレアチンの類似体を含むことができる。
【0023】
「リン脂質」とは、リンを含有する脂質、例えば、ホスファチジン酸(例えば、レシチン)、ホスホグリセリド、スフィンゴミエリン、およびプラズマロゲンを意味する。「リン脂質の前駆物質」とは、リン脂質の合成の間にリン脂質に組み込まれる物質、例えば、脂肪酸、グリセロール、またはスフィンゴシンを意味する。
【0024】
「小児または青年」とは、完全な成長および成熟を遂げてはいない個体を意味する。一般に、小児または青年は21歳未満である。
【0025】
「高齢者」とは、人生の後期にある個体を意味する。一般に、高齢者は60歳を超える。
【0026】
本明細書で使用される化合物は比較的毒性がなく、CDP-コリン、ウリジン、およびトリアセチルウリジンは、特に、薬物動態学的に理解されており、哺乳類により十分に寛容されることが知られている。従って、本発明は、副作用が少ない可能性が高い治療を提供し、小児および青年、ならびに高齢者、または既存の体調のせいで健康状態が損なわれている者に施すことができる。
【0027】
他の特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】睡眠の質および気分に対するシチコリンの効果のグラフである。
【図2】図2Aおよび図2Bは、シチコリン治療なし(A)およびあり(B)での時刻に応じた活動レベルのグラフである。A、B、およびCはそれぞれ、アルコール、カフェイン、およびコカインの使用を示す。数値は、10点満点制に基づく、コカインに対する渇望を示す。灰色の点は、シチコリンの摂取を示す。
【図3】CDP-コリンの分子構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書に記載される本発明は、睡眠/覚醒サイクルの正規化のための方法、睡眠障害の治療のための方法、および睡眠不足の哺乳類で認知機能を増加させるための方法を特徴とする。そのような正規化の効果により、個体が知覚する「睡眠の質」の改善がもたらされる可能性がある。このために、本発明は、望ましい結果をもたらすためのシチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物の使用を特徴とする。好ましいシチジン含有化合物はCDP-コリン(シチコリンまたはCDPコリン[ナトリウム塩]とも呼ばれる)であり、好ましいアデノシン含有化合物はS-アデノシルメチオニン(SAMe)であり、および好ましいウリジン含有化合物はトリアセチルウリジンである。
【0030】
シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、またはアデノシン上昇性の化合物は、脳リン脂質の合成のための前駆物質、例えば、脂肪酸、脂質、またはレシチンのような、他の化合物と同時に投与することができる。
【0031】
睡眠/覚醒サイクル
驚いたことに、本発明者らは、シチコリン(CDP-コリン)が睡眠/覚醒サイクルの正規化に有用であることを発見した。シチコリン治療の2週間〜4週間後、睡眠の質が改善されて、睡眠/覚醒サイクルが正規化される。この睡眠/覚醒サイクルの正規化によりさらに、覚醒状態の高まりを促進するかまたは昼間の倦怠感もしくは疲労感を緩和することができる。シチコリンの投与は同様に、不眠症、睡眠時無呼吸症(中枢性または閉塞性)、問題となる眠気、不穏下肢症候群、周期性四肢運動、および睡眠発作のような睡眠障害に関与する恒常性プロセスを安定化させる可能性が高いものと思われる。さらに、シチコリンは認知機能を増加させることができ(Alvarez et al. Methods Find Exp Clin Pharmacol 21:633-44, 1999; Fioravanti et al. Cochrane Database Syst. Rev. 4: CD000269, 2000)、睡眠不足の個体、例えば、パイロット、医師、学生、または不眠のまま長い時間を経験し得る他の者において認知動作を高めるのに使用することができる。図1のデータは、10点満点制で被験者により判断した場合、シチコリンの投与が、偽薬を投与された被験者と比べて、ヒト被験者の睡眠の質および気分を高めていることを示している。CDP-コリンは投与後、シチジンおよびコリンに素早く代謝されて、シチジンはウリジンに変換されるので、これらの化合物のいずれかを投与することは、有益な効果を有する可能性がある。
【0032】
CDP-コリンおよび関連化合物は同様に、アルコール、コカイン、アヘン剤、オピオイド、ニコチン、またはタバコの使用または依存のような、物質乱用障害の治療にも有用である(米国特許第5,958,896号および米国特許第6,103,703号ならびに2002年11月8日付で出願した米国特許仮出願弟60/424,972号)。物質乱用障害は睡眠の質または睡眠/覚醒サイクルの乱れを引き起こす可能性があるので、本発明の方法は、物質乱用障害を抱える患者において、睡眠/覚醒サイクルを正規化するのにまたは睡眠障害を治療するのに使用することができる。さらに、物質乱用障害および異常な睡眠/覚醒サイクルまたは睡眠障害は、本明細書に記載の方法で同時に治療することができる。図2Aおよび2Bは、治療なしの5日間(図2A)のおよびCDP-コリンで治療後5日間(図2B、監視は治療から4日後に開始した)のコカイン使用者の活動レベルに関するデータを示している。被験者の睡眠/覚醒サイクルが、治療後には昼行性パターンに正規化されて、この被験者は昼間にいっそう活動的となった。さらに、被験者のコカインの使用(Cで示される)が治療によってなくなり、アルコールの使用(Aで示される)が減った。コカインに対する渇望が同様に、治療後には、強烈に低下した(数値で示される)。
【0033】
シチジン含有化合物およびシトシン含有化合物
有用なシチジン含有化合物またはシトシン含有化合物としては、以下のうちの一つを含んだ任意の化合物を挙げることができる: シトシン、シチジン、CMP、CDP、CTP、dCMP、dCDP、およびdCTP。好ましいシチジン含有化合物としては、CDP-コリンおよびシチジン5'-ジホスホコリン[ナトリウム塩]が挙げられる。このシチジン含有化合物およびシトシン含有化合物の羅列は、本発明を限定するためではなく、説明するために示されており、上記の化合物は、例えば、Sigma Chemical社(St. Louis, MO)から入手することができる。
【0034】
CDP-コリンは、インビボでその構成成分のシチジンおよびコリンに加水分解される天然由来の化合物である。CDP-コリンはシチジン-5'-三リン酸およびホスホコリンから、酵素CTP:ホスホコリンシチジリルトランスフェラーゼが触媒する可逆反応において無機ピロリン酸の副生成を伴って合成される(Weiss, Life Sciences 56:637-660, 1995)。CDP-コリンは、500 mgの長方形の錠剤として経口投与に利用できる。各錠剤には、500 mgのCDP-コリンに等価な、522.5 mgのCDP-コリンナトリウムが含まれる。対応する偽薬錠剤を同様に利用できる。活性および不活性(偽薬)双方の錠剤に含まれる賦形剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、水素化ヒマシ油、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および微結晶性セルロースである。CDP-コリン[ナトリウム塩]の分子構造は、図3に示されている。
【0035】
睡眠障害の治療のための他の製剤は、薬学的に許容される希釈剤、担体、安定剤、または賦形剤と組み合わせたシトシン含有化合物またはシチジン含有化合物の形態とすることができる。
【0036】
アデノシン含有化合物およびアデノシン上昇性の化合物
アデノシン含有化合物またはアデノシン上昇性の化合物により同様に、有用な治療法が提供される。動物実験のデータから、アデノシン類似体の投与により、徐波睡眠の量が増加することが示されている(Radulovacki M et al. J Pharmacol Exp Ther 228:268-74, 1984; Satoh S et al. Eur J Pharmacol 351:155-62, 1998; Scammell TE et al. Neuroscience 107:653-63, 2001)。さらに、磁気共鳴データから、断眠によりアデノシンの蓄積が起こることが示唆されている。この蓄積は「睡眠の圧力」に関する神経生物学的な根拠であるとすることができ、このアデノシンの蓄積により回復睡眠を可能とすることができる。従って、これらの化合物は、睡眠の恒常性の維持に不可欠な役割を果たすことができる。
【0037】
有用なアデノシン含有化合物またはアデノシン上昇性の化合物としては、次のアデノシン、ATP、ADP、またはAMPのうちの一つを含んだ任意の化合物が挙げられるがこれに限定されることはない。一つの好ましいアデノシン含有化合物は、S-アデノシルメチオニン(SAMe)である。
【0038】
さらに、他の機構によりアデノシンレベルを増加できる化合物が知られている。例えば、アデノシンの取込みは、プロペントフィリン(米国特許第5,919,789号に記載)を含む多数の既知化合物により阻害されることができる。アデノシンの取込みを阻害する別の既知化合物は、EHNAである。
【0039】
脳のアデノシンレベルを増加させるのに使用できる他の有用な化合物は、アデノシンを分解する酵素(例えば、アデノシンデアミナーゼおよびアデノシンキナーゼ)を阻害するものである。最後に、アデノシンまたはインビボでアデノシンとして放出されるアデノシンの前駆物質を含む化合物の投与を利用することもできる。
【0040】
ウリジン含有化合物
ウリジンおよびウリジン含有化合物は、PC生合成の律速因子であるCTPに変換されることができるので、有用な治療法を与える(Wurtman et al., Biochemical Pharmacology 60:989-992, 2000)。有用なウリジン含有化合物としては、ウリジン、UTP、UDP、またはUMPを含んだ任意の化合物が挙げられるがこれに限定されることはない。好ましいウリジン含有化合物は、トリアセチルウリジンである。ウリジンおよびウリジン含有化合物ならびに類似体は、ヒトにおいて耐用性良好である。
【0041】
クレアチン含有化合物
クレアチンおよびクレアチン含有化合物は、脳のリン脂質レベルを増加させることにより、ATPのレベルを上昇させることができるので、有用な治療法を与える。クレアチンおよびクレアチン含有化合物は、ヒトにおいて比較的高用量で耐用性良好であることが知られている。
【0042】
投与
患者への投与に適した製剤または組成物を提供するため、従来の製薬学的実践を採用する。経口投与が好ましいが、任意の他の適当な投与経路、例えば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、眼窩内投与、眼投与、脳室内投与、関節内投与、髄腔内投与、嚢内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、またはエアロゾル投与を採用することができる。治療用製剤は溶剤または懸濁剤の形態とすることができる(例えば、静脈内投与の場合); 経口投与の場合、製剤は液剤、錠剤、またはカプセル剤の形態とすることができる; および鼻腔内投与の場合、散剤、点鼻薬、または煙霧剤の形態とすることができる。
【0043】
製剤を作製するために当技術分野においてよく知られている方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.) ed. A.R. Gennaro, 2000, Lippincott, Philadelphia, PAに記述されている。非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物性の油、または水素化ナフタレンを含むことができる。
【0044】
必要に応じて、徐放性(slow release)または長期間放出性(extended release)の送達系を利用することができる。生体適合性かつ生体分解性のラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を使用して、化合物の放出を制御することができる。他の潜在的に有用な非経口送達系としては、エチレン-ビニルアセテート共重合体の粒子、浸透圧ポンプ、埋込み型の注入系、およびリポソームが挙げられる。吸入用の製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含むことができる、または例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含有する水溶液とすることができる、または点鼻薬の形態で、もしくはゲルとして投与するための油性溶液とすることができる。
【0045】
CDP-コリンのような、本発明の化合物は、経口投与により1日2回、少なくとも500 mgの用量で投与されることが好ましい。経口投与されるCDP-コリンは生物学的に利用可能であり、99%を超えるCDP-コリンおよび/またはその代謝産物が吸収されて、1%未満が糞便に排泄される。経口的にまたは経静脈的に投与されるCDP-コリンは、二つの主要な循環性代謝産物、つまりコリンおよびシチジンに素早く変換される。主要な排泄経路は、肺(12.9%)および尿(2.4%)であり; 残りの投与量(83.9%)は、明らかに組織内で代謝されて保持される。
【0046】
一般に、CDP-コリン、ウリジン、UTP、クレアチン、またはSAMeのような、本発明の化合物は、達成すべき効果に適した用量で投与され、通常、投与単位剤形で投与される。用量は1日あたり50 mgから1日あたり2000 mgの範囲であることが好ましい。化合物の正確な用量は、例えば、受容者の年齢および体重、投与経路、ならびに治療される症状の重症度および性質に依存する可能性がある。一般に、選択の用量は、著しい毒性作用または望ましくない副作用をもたらすことなく、睡眠障害、または一つもしくは複数のその症状を治療するのに十分とすべきである。前述のように、大部分の適応に好ましい投与経路は、経口である。
【0047】
CDP-コリンの場合、過剰摂取の症例は報告されていない。CDP-コリンの毒性は概して自己限定性であり、前臨床試験における大量の摂取では、一般的なコリン作動性の症状(唾液分泌、涙液分泌、排尿、排便、および嘔吐)が現れている。
【0048】
他の治療法との併用
本発明のシチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物は、単剤療法として、お互いと併用して、または異常な睡眠/覚醒サイクルもしくは睡眠障害または他の関連する生理的症状もしくは精神的症状を治療するための他の化合物と併用して投与することができる。
【0049】
本発明の化合物は、これらの障害に対する現行の治療(抗うつ剤を含む)を少ない用量で併せて投与することができる。例えば、本発明の化合物は、リン脂質、例えば、レシチンとともに、もしくは脳リン脂質の前駆物質、例えば、脂肪酸もしくは脂質とともに投与することができる、または標準的治療の補助として投与することができる。
【0050】
一つの特定の例として、本発明の化合物は、抗うつ剤、抗けいれん剤、抗不安剤、抗躁剤、抗精神病剤、抗強迫障害剤、鎮痛・睡眠剤、または降圧剤と併用して投与することができる。これらの薬剤の例としては、以下に限定されることはないが、抗不安剤のアルプラゾラム、塩酸ブスピロン、クロルジアゼポキシド、塩酸クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸二カリウム、塩酸デシプラミン、ジアゼパム、ハラゼパム、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、ロラゼパム、メプロバメート、オキサゼパム、プラゼパム、マレイン酸プロクロルペラジン、プロクロルペラジン、エジシル酸プロクロルペラジン、およびマレイン酸トリミプラミン; 抗けいれん剤のアモバルビタール、アモバルビタールナトリウム、カルバマゼピン、クロルジアゼポキシド、塩酸クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、ジバルプロックスナトリウム、エトサクシミド、エトトイン、ガバペンチン、ラモトリジン、硫酸マグネシウム、メフェニトイン、メフォバルビタール、メトスクシミド、パラメタジオン、ペントバルビタールナトリウム、フェナセミド、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、フェンスクシミド、フェニトイン、フェニトインナトリウム、プリミドン、セコバルビタールナトリウム、トリメタジオン、バルプロ酸、およびクロナゼパム; 抗うつ剤の塩酸アミトリプチリン、アモキサピン、塩酸ビュープロピオン、塩酸クロミプラミン、塩酸デシプラミン、塩酸ドキセピン、フルオキセチン、フルボキサミン、塩酸イミプラミン、パモ酸イミプラミン、イソカルボキサジド、ラモトリジン、塩酸マプロチリン、塩酸ノルトリプチリン、塩酸パロキセチン、硫酸フェネルジン、塩酸プロトリプチリン、塩酸セルトラリン、硫酸トラニルシプロミン、塩酸トラゾドン、マレイン酸トリミプラミン、および塩酸ベンラファクシン; 抗躁剤の炭酸リチウムおよびクエン酸リチウム; 抗強迫障害剤のフルボキサミン、および塩酸クロミプラミン; 抗精神病剤のマレイン酸アセトフェナジン、塩酸クロルプロマジン、クロルプロチキセン、塩酸クロルプロチキセン、クロザピン、デカン酸フルフェナジン、フルフェナジンエナント酸、塩酸フルフェナジン、デカン酸ハロペリドール、ハロペリドール、乳酸ハロペリドール、炭酸リチウム、クエン酸リチウム、塩酸ロキサピン、コハク酸ロキサピン、メソリダジンベシレート、塩酸モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、マレイン酸プロクロルペラジン、プロクロルペラジン、エジシル酸プロクロルペラジン、塩酸プロマジン、リスペリドン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、塩酸チオチキセン、および塩酸トリフルオペリジン; 鎮痛・睡眠剤のアモバルビタール、アモバルビタールナトリウム、アプロバルビタール、ブタバルビタール、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、塩酸クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、ジフェンヒドラミン、エスタゾラム、エスクロルビノール、塩酸フルラゼパム、グルテチミド、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、ロラゼパム、塩酸メトトリメプラジン、塩酸ミダゾラム、処方なし、オキサゼパム、ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、クアゼパム、セコバルビタールナトリウム、テマゼパム、トリアゾラム、および酒石酸ゾルピデム; ならびに降圧剤のクロニジンが挙げられる。
【0051】
他の態様
本明細書に記載される全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照として組み入れられると示されるかのごとく、参照として本明細書に組み入れられる。
【0052】
本発明をその特定の態様に関連して記述してきたが、さらなる変更が可能であること、ならびに、本出願が概して、本発明の原理に従いかつ本発明が関係する技術分野の範囲内の慣行に入り且つ本明細書の上文に記載される本質的特徴に当てはまり得るような本開示からの逸脱を含む、本発明のあらゆる変法、使用、または適応を網羅することが意図され、添付の特許請求の範囲の目的に従うことが理解されるであろう。
【0053】
他の態様は添付の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物からなる群より選択される化合物の治療上有効な量を哺乳類に投与する段階、それにより該哺乳類の睡眠/覚醒サイクルを正規化する段階を含む、哺乳類の睡眠/覚醒サイクルの正規化方法。
【請求項2】
投与により、倦怠感もしくは疲労感が減少するか、覚醒状態が高まるか、または昼間の哺乳類の睡眠の質が向上する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
シチジン含有化合物がシチジンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
シチジン含有化合物がコリンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
シチジン含有化合物がCDP-コリンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
CDP-コリンが経口的に投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
シチジン含有化合物がCDPである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
投与段階が長期的である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
哺乳類がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ヒトが小児または青年である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ヒトが高齢者である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物からなる群より選択される化合物の治療上有効な量を哺乳類に投与する段階を含む、睡眠障害の治療方法。
【請求項13】
睡眠障害が物質乱用障害により引き起こされる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
物質乱用障害はアルコール、カフェイン、またはコカインの使用または依存である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
睡眠障害は不眠症、構造性もしくは閉塞性の睡眠時無呼吸症、不穏下肢症候群、周期性四肢運動(periodic limb movement)、問題となる眠気(problem sleepiness)、または睡眠発作である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
シチジン含有化合物がCDP-コリンである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
シチジン含有化合物、シトシン含有化合物、ウリジン含有化合物、クレアチン含有化合物、アデノシン含有化合物、およびアデノシン上昇性の化合物からなる群より選択される化合物の治療上有効な量を、睡眠遮断(sleep deprivation)で苦しむ哺乳類に投与する段階、それにより該哺乳類の認知機能を増加させる段階を含む、認知機能の増加方法。
【請求項18】
シチジン含有化合物はCDP-コリンである、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−102319(P2011−102319A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6614(P2011−6614)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2004−563786(P2004−563786)の分割
【原出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【出願人】(594185673)ザ マクレーン ホスピタル コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】