説明

睫毛を伸長させるのに有用な化粧品用組成物

【課題】睫毛に適用した場合に睫毛を長くする効果を有し、睫毛に付着した皮膜の均質性及び大いなる柔軟性、改善された分離性、より長い帯着性等の利点を有するマスカラを提供する。
【解決手段】水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを含有するマスカラ組成物。当該コポリマーは、90〜110nmの重量平均径、屋80nmの数平均径、及び−60℃〜+100℃の範囲のガラス転移温度を有する粒子で水性分散液の形態を有する。構造化剤としては両末端エステル化ポリアミドからなるポリマーロウを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
化粧品産業では、睫毛の長さ及びボリューム又は太さを増大させ、長時間にわたって帯着するマスカラに関して多くの試みが集中している。
【0002】
米国特許第6375941号では、皮膜形成ポリウレタン粒子の水性分散液を含有し、25℃、200s−1の剪断速度で測定して、5Pa.s〜18Pa.sの範囲の粘度を有するロウ非含有マスカラ組成物が教示されている。
【0003】
米国特許第6482400号では、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、及びポリウレタン水性分散液を含有する、ケラチン繊維をコートするための化粧品用組成物が教示されている。また米国特許第6534047号では、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、及びC-Cアルキル(メタ)アクリラートの水性分散液を含有する、ケラチン繊維をコートするための化粧品用組成物が教示されている。それらの特許では、組成物により、良好な睫毛被覆、長さ延長及びカーリング特性、並びに良好な保持力を有する均一なメークアップ結果に素早く至ることが教示されている。
【0004】
米国特許第6726917号では、繊維、顔料、及び少なくとも二種の皮膜形成剤を含有し;少なくとも一が、水素化ポリイソブテン類、アジピン酸/ジエチレングリコール/グリセリンの架橋ポリマー、ポリエチレン類、及びポリビニルラウラート類から選択される油に可溶性の粘着性のある皮膜形成剤であり、少なくとも一が水に可溶性又は分散性で粘着性のある皮膜形成剤である、睫毛を伸長させ及び/又はボリュームを出すためのマスカラが教示されている。
【0005】
(発明の概要)
本発明の第一の態様は、水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを含有するマスカラ組成物に関する。また、マスカラの製造方法も提供する。
【0006】
本発明の第二の態様は、水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを含有するマスカラ組成物を睫毛に適用することを含む、睫毛を伸長させる方法に関する。
【0007】
本出願人は、本発明のマスカラが、睫毛に適用した場合に睫毛を長くすることを発見した。本発明の組成物は、睫毛に付着した皮膜の均質性及び大なる柔軟性、改善された分離性、より長い帯着性のような一又は複数のさらなる利点をもたらすであろう。
【0008】
(発明の詳細な記載)
マスカラは、洗って落とせるか又は耐水性のものとして調製することができる。ここで使用される場合、洗って落とせるマスカラなる用語は、水及び/又は石鹸で除去できる組成物を意味する。これらの調製物は典型的にはエマルション(例えば水にロウが入ったもの)、例えばクリーム、あるいはある場合ではゲル又はケーキである。除去に油の使用を必要とする耐水性のマスカラは、一般には、イソドデカン及び石油蒸留物等の有機溶媒中にロウを分散させた形態で提供される。
【0009】
ポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーは、また、ポリウレタンとポリ(メタ)アクリラートの相互貫入型ポリマー網目構造(IPN)と称することもできる。ここで使用される場合、「相互貫入型ポリマー網目構造」なる表現は、2種類のモノマーを同時に重合及び/又は架橋することにより得られる2つの織交ポリマーの混合物で、単一のガラス転移温度を有する混合物を意味する。このようなIPNは、特にハイブリデュア(Hybridur)の名称でエアー・プロダクツ(Air Products)社から市販されているものである。特に好ましいIPNは、例えば90〜110nmの重量平均径と、約80nmの数平均径を有する粒子の水性分散液の形態をしている。このIPNは、好ましくは約−60℃〜+100℃の範囲のガラス転移温度Tgを有している。この種のIPNはハイブリデュア875(INCI名:ポリウレタン-2(及び)ポリメチルメタクリラート)の商品名で、エアー・プロダクツ社から入手可能である。ハイブリデュアX-01602及びX18693-21の名称でエアー・プロダクツ社から入手可能なポリウレタン/ポリ(メタ)アクリルもまた米国公開第2003/0215476号及び同第2004/0136937号に開示されている。
【0010】
本発明のIPNは、次の一般式:
【化1】


[ここで、Aは:
【化2】

であり;
Dは:
【化3】

であり;
Gは:
【化4】

である]
の構造を有するポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーである。これらの式において、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して脂肪族炭化水素を表し;mは0又は正の整数を表し;Rは水素又はメチルを表し;x、y及びzは互いに独立して、正の整数を表す。グラフトコポリマーは水性分散液の形態で提供されうる。また、グラフトコポリマーはパウダー形態のマスカラの他の成分に添加されうる。
【0011】
ポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのIPN(又はポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマー)は、組成物の全重量に対して、一般に約0.01〜約20重量%のコポリマー、好ましくは約0.5重量%〜約15重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%の範囲の量で、本発明のマスカラに存在している。
【0012】
本発明の組成物は、化粧品的に許容可能な担体を含んでいる。担体は脂肪相及び水相を含む。脂肪相は、典型的には、油、有機溶媒、構造化剤、例えばロウ、構造化ポリマー、ペースト状の脂肪物質、及びそれらの混合物から選択される一又は複数の脂肪物質を含む。
【0013】
ここで開示したように、「液状脂肪相」なる用語は、室温(25℃)、大気圧(760mmHg、すなわち105Pa)で液状で、一般に互いに融和性である少なくとも油又は油性液体を含む非水性媒体を意味する。油性(油溶性)液体は、所望される感触、展伸性、及び/又は他の所望される特性をもたらすために本発明の組成物に配合される。本発明の組成物は、均質で安定した混合物を形成し、意図する用途に適応する条件で、特に炭素ベース油、炭化水素ベース油、フルオロ及び/又はシリコーン油で、鉱物性、動物性、植物性又は合成由来のものの単独物又は混合物として選択される任意の化粧品的又は皮膚科学的に許容可能な油を含有していてもよい。
【0014】
「炭化水素ベース油」なる用語は、主として炭素と水素原子、場合によっては、ヒドロキシル、エステル、エーテル及びカルボキシル官能基から選択される少なくとも一の官能基を有する油を意味する。例えば、油は0.5〜300000センチポアズ(cps)、さらに例えば50〜50000cps、さらに好ましくは100〜100000cpsの範囲の粘度を有していてもよい。炭化水素ベース油の例には、動物由来の炭化水素ベース油、例えばペルヒドロスクワレン;炭化水素ベースの植物性油、例えば4〜24の炭素原子を有する脂肪酸の液状トリグリセリド、特にヘプタン又はオクタン酸トリグリセリド、又はヒマワリ油、コーン油、大豆油、ゼニアオイ油、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル/カプリン酸トリグリセリド類、例えばステアリネリーズ・デュボア社(Stearineries Dubois)から販売されているもの、又はダイナミット・ノーベル社(Dynamit Nobel)からミグリオール(Miglyol)810、812及び818の名称で販売されているもの、ホホバ油、及びシアバター;鉱物又は合成由来で直鎖状及び分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン及びその誘導体、ワセリン、ポリデセン類、ポリブテン類及び水素化ポリイソブテン、例えばパーリーム(Parleam)TM;ラノリン酸、オレイン酸、ラウリル酸又はステアリン酸のエステル;脂肪エステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル又は乳酸2-オクチルドデシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、コハク酸ビス(2-エチルヘキシル)、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセリル又はジイソステアリン酸ジグリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、及びトリメリト酸トリデシル;高級脂肪酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸又はイソステアリン酸;高級脂肪アルコール(例えば10−26の炭素原子を有するもの)、例えばケタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イソステアリルアルコール、又はオクチルドデカノール;ヒドロキシル化エステル、例えば乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、及び脂肪アルキルのヘプタノアート、オクタノアート及びデカノアート;ポリオールエステル、例えばプロピレングリコールジオクタノアート、ネオペンチルグリコールジヘプタノアート及びジエチレングリコールジイソノナノアート;及びペンタエリトリトールエステル、例えばテトライソステアリン酸ペンタエリトリチルが含まれる。
【0015】
油には、揮発性又は非揮発性油が含まれていてもよい。溶媒/油の揮発度は、米国特許第6338839号に説明されているように、蒸発速度を使用して測定することができる。本発明の組成物は、一又は複数の揮発性シリコーン油を含有していてもよい。このような揮発性シリコーン油の例には、室温で6センチストーク(cSt)以下の粘度を有し、2〜7個のケイ素原子を有する直鎖状又は環状のシリコーン油が含まれ、これらのシリコーン類は場合によっては1〜10の炭素原子のアルキル又はアルコキシ基で置換されていてもよい。本発明で使用することができる特定の油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びそれらの混合物が含まれる。使用できる他の揮発性油には、6cStの粘度のKF96Aで、94℃の引火点を有し、信越社(Shin Etsu)からの市販品であるジメチルポリシロキサンが含まれる。好ましくは、揮発性シリコーン油は少なくとも40℃の引火点を有する。揮発性シリコーン油の非限定的例を、次の表1に列挙する。
【0016】
【表1】

【0017】
本発明で使用できる他のシリコーン油の例には、室温で液状であり、非揮発性の直鎖状ポリジメチルシロキサン類(PDMS);フルオロ基、例えばヒドロキシル、チオール又はアミン基のような官能基、脂肪族(例えばアルキル)基又は芳香族(例えばフェニル)基であって、それぞれ2〜24の炭素原子を含む、シリコーン鎖の末端及び/又はペンダント鎖であるもので置換されていてもよいポリジメチルシロキサン類;フェニルシリコーン類、例えばフェニルトリメチコーン類、フェニルジメチコーン類、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキシ類(例えば、ダウ・コーニング社(Dow Corning)のDC555)、ジフェニルジメチコーン類、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン類、及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート類が含まれる。シリコーン油の他の例には、脂肪酸、脂肪アルコール又はポリオキシアルキレン類で変性されたポリシロキサン類、フルオロシリケート類及びペルフルオロ油が含まれる。
【0018】
さらに、揮発性で直鎖状のシリコーン油を、本発明の組成物に使用してもよい。適した揮発性で直鎖状のシリコーン油には、米国特許第6338839号及び国際特許出願公開第03/042221号に記載されているものが含まれる。他の例はデカメチルテトラシロキサンである。
【0019】
組成物は、一又は複数の非シリコーン性の揮発性油、例えば揮発性の炭化水素油、アルコール、揮発性エステル及び揮発性エーテルを含有していてもよい。このような揮発性の非シリコーン油の例には、8〜16個の炭素原子を有する揮発性の炭化水素油、及びそれらの混合物、特に分枝状のCないしC16アルカン類、例えばCないしC16イソアルカン類(イソパラフィン類としても知られている)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、例えばアイソパー(Isopar)又はパーメチル(Permethyl)の商品名で販売されている油、分枝状のCないしC16エステル、例えばイソヘキシル又はイソデシルのネオペンタノアート、及びそれらの混合物が含まれる。ある実施態様では、揮発性の非シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有している。
【0020】
揮発性の非シリコーン油の非限定的例を、次の表2にまとめる。
【表2】

【0021】
本発明で使用され得る他のシリコーン油の例には、室温で液状であり、非揮発性で直鎖状のポリジメチルシロキシ(PDMS)、フルオロ基、例えばヒドロキシル、チオール又はアミン基のような官能基、脂肪族(例えばアルキル)基又は芳香族(例えばフェニル)基であって、それぞれ2〜24の炭素原子を含む、シリコーン鎖の末端及び/又はペンダント鎖であるもので置換されていてもよいポリジメチルシロキサン類、フェニルシリコーン類、例えばフェニルトリメチコーン類、フェニルジメチコーン類、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキシ類(例えば、ダウ・コーニング社(Dow Corning)のDC555)、ジフェニルジメチコーン類、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン類、及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート類が含まれる。シリコーン油の他の例には、脂肪酸、脂肪アルコール又はポリオキシアルキレン類で変性されたポリシロキシ類、フルオロシリケート類及びペルフルオロ油が含まれる。
【0022】
低粘度の油(一般的に、25℃で約5又は10センチポアズ(cps)から約100cps、好ましくは25℃で約50cpsまで)、高粘度の油(少なくとも約100cps、好ましくは少なくとも約150cps(25℃)から、約10000まで、好ましくは約1000cps(25℃)まで)、及びそれらの混合物を使用することができる。代表的な低粘度の油(25℃で5〜15cpsの範囲の粘度)には、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸オクチル、マレイン酸ジオクチル、オクチルドデカノール、ジヘプタン酸PEG-4、ノナン酸イソノニル、ココ-ジカプリラート/カプラート、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、セチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、酢酸セチル、アセチル化ラノリンアルコール等が含まれる。高粘度の油(25℃で100−1000cpsの範囲の粘度)の例には、ラノリン油、ゴマ油、トリオクタン酸グリセリル、トリメリト酸トリデシル、ヒマシ油、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、コーン油、鉱物性油、水素化ポリイソブテン、ポリブテンポリビニルピロリドン(PVP)/ヘキサデセン、ジラノリン酸ジイソアラキジル、(リンゴ酸ジイソプロピル)(DISM)及びクエン酸トリオクチルドデシルが含まれる。
【0023】
本発明の化粧品用組成物における油の量は、一般的に約1.0〜約40重量%の範囲であり、ある実施態様では約5.0〜約20重量%である。
【0024】
本発明の組成物は構造化剤を含有していてもよい。ここで使用される場合、「構造化剤」なる用語は、油ではなく、むしろ固体又は半固体(室温で)である(又は含む)薬剤を意味し、好ましい実施態様では、液状脂肪相を少なくとも増粘させるロウ又は非ロウポリマーである。
【0025】
ある実施態様では、構造化剤は少なくとも一種のロウを含む。本発明の目的において、「ロウ」なる用語は、室温(25℃)、大気圧(760mmHg、すなわち10Pa)で固体状であり、固/液の可逆的状態変化を受け、30℃を超え、ある実施態様では55℃〜120℃、又は200℃程と高い融点を有する親油性脂肪化合物を意味する。
【0026】
本発明の目的では、ロウは化粧品及び皮膚科学において一般的に使用されているものである。多様なロウが有用であり、動物由来のロウ、植物由来のロウ、鉱物由来のロウ、及び合成由来のロウが含まれる。動物由来のロウの例には、ミツロウ、ラノリンロウ、及びイボタロウ(Chinese insect wax)が含まれる。植物由来のロウの例には、ライスワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、及びオーリクリーロウ(ouricurry wax)、コルク繊維ロウ、サトウキビロウ、モクロウ、ハゼロウ(sumach wax)及び綿ロウが含まれる。鉱物由来のロウの例には、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、モンタンロウ、及びオゾケライトが含まれる。合成由来のロウの例には、ポリオレフィンロウ、例えばポリエチレンロウ、フィッシャー-トロプシュ合成法により得られたロウ、ロウ質コポリマー及びそれらのエステル、及びシリコーン及びフルオロワックスが含まれる。また、動物又は植物由来の水素化油を使用してもよい。具体例には、水素化ホホバロウ、及び直鎖状又は非直鎖状のC-C32脂肪鎖からなる脂肪の接触水素化により得られた水素化油、水素化ヒマワリロウ、硬化ヒマシ油、水素化コプラ油、水素化ラノリン、及び水素化パーム油が含まれる。ある実施態様では、組成物は少なくとも二種のロウを含有する。
【0027】
ある実施態様では、ロウは、一般的に約35−70℃の範囲の低融点を有するが、そのような低MPのロウとは異なり、高融点を有するロウに伴う硬度(例えばASTM-D1321に従い測定して、一般的に約7−10mm/10)を有する。このようなロウは、ミネラル・アンド・ピグメント・ソリューションズ・インク(Mineral and Pigment Solutions, Inc.)又はコスター・コイネン社(Koster Keunen)から、BK、例えばBK-42(INCI名:テトラデシル-オクタデカニル-ベヘナート;CAS番号:231627-84-2;C54108)及びBK-60(INCI名:ヘキサデシル-コサニル-ヘカコサナート;C62124)の名称で市販されている。
【0028】
ロウは、組成物の全重量に対して、一般的には約0.1重量%〜約40重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約10重量%の範囲の量で組成物中に存在しうる。
【0029】
本発明の組成物は、ロウではないポリマーを含む構造化剤を含有していてもよい。適切な構造化ポリマーの例は、米国特許第5783657号及び同第6402408号に開示されている。すなわち、その開示ポリマーは、次の式(II):
【化5】

[上式中:
nは、構造化ポリマーに存在するエステル基の数が、構造化ポリマーに含まれる全エステル基及び全アミド基の全数の10%〜50%の範囲になるアミド単位の数を表す整数であり(例えば、nは1〜5の範囲の整数、例えば3〜5の範囲の整数であってよい);
は同一又は異なっており、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル基、及び少なくとも4個の炭素原子を有するアルケニル基からそれぞれ選択され(例えば、それぞれC12ないしC22アルキル基、例えばC16ないしC22アルキル基から選択することができる);
は同一又は異なっており、CないしC42炭化水素ベース基からそれぞれ選択され、但しRの少なくとも50%はC30ないしC42炭化水素ベース基から選択され;
は同一又は異なっており、炭素原子、水素原子、酸素原子、及び窒素原子から選択される原子を有する有機基からそれぞれ選択され、但しRは少なくとも2個の炭素原子を含み;
は同一又は異なっており、水素原子、CないしC10アルキル基、及びR及び他のRから選択される基への直接結合からそれぞれ選択され、少なくとも1の基が他のRから選択される場合、R及びRの双方が結合する窒素原子は、R--N--Rにより部分的に定まる複素環構造の一部を形成し、但し全Rの少なくとも50%は水素原子から選択される]
により表されるエステル末端ポリアミド類である。
【0030】
一実施態様では、式(II)の少なくとも一の末端脂肪鎖は、ポリアミド骨格の最後のヘテロ原子、この場合は窒素に結合している。さらなる実施態様では、末端鎖は官能化されている。他の実施態様では、式(II)のエステル基は末端及び/又はペンダント脂肪鎖に結合しており、エステル及びアミド基の全数に対して15%〜40%、例えば20%〜35%である。
【0031】
本発明において、Rは同一又は異なっており、例えばC10ないしC42アルキル基からそれぞれ選択可能である。全Rの少なくとも50%は同一又は異なっており、例えば30〜42個の炭素原子を有する基からそれぞれ選択可能である。全Rの少なくとも75%は同一又は異なっており、例えば30〜42個の炭素原子を有する基からそれぞれ選択可能である。2つの上述した実施態様では、残りのRは同一又は異なっており、例えばCないしC19基、例えばCないしC12基からそれぞれ選択可能である。
【0032】
は同一でも異なっていてもよく、例えばCないしC36炭化水素ベース基及びポリオキシアルキレン基からそれぞれ選択可能である。他の例では、Rは同一でも異なっていてもよく、CないしC12炭化水素ベース基からそれぞれ選択可能である。他の実施態様では、Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子からそれぞれ選択可能である。ここで使用される場合、炭化水素ベース基は直鎖状、環状及び分枝状の飽和及び不飽和基から選択されてよい。炭化水素ベース基は脂肪族及び芳香族基から選択可能である。一実施例において、炭化水素ベース基は脂肪族基から選択される。アルキル及びアルキレン基は、直鎖状、環状及び分枝状の飽和及び不飽和基から選択されてよい。
【0033】
一般的に、ペンダント及び末端脂肪鎖は、直鎖状、環状及び分枝状の飽和及び不飽和基から選択されてよい。ペンダント及び末端脂肪鎖は、脂肪族及び芳香族基から選択可能である。一例では、ペンダント及び末端脂肪鎖は脂肪族基から選択される。
【0034】
本発明において、液状脂肪相の構造化は、少なくとも一の構造化ポリマー、例えば少なくとも一の式(II)のポリマーにより得られる。式(II)の少なくとも一のポリアミドポリマーは、例えばポリマーの混合物の形態であってよく、この混合物は、nが0に等しい式(II)の化合物、すなわちジエステルを含んでもよい。
【0035】
本発明の組成物に使用され得る少なくとも一のポリアミドポリマーの非限定的例には、ユニクリア(UNICLEAR)80及びユニクリア100の名称でアリゾナ・ケミカル(Arizona Chemical)社から販売されている市販品が含まれる。これらは、それぞれ鉱物性油に80%(活性物質として)のゲル、及び100%(活性物質に関して)のゲルの形態で販売されている。これらのポリマーは、88℃〜94℃の範囲の軟化点を有し、(i)C36二酸及び(ii)エチレンジアミンのモノマーから誘導されるコポリマーの混合物であってよく、約6000の重量平均分子量を有する。末端エステル基は、残存する酸末端基と、セチルアルコール及びステアリルアルコールから選択される少なくとも一のアルコールのエステル化に由来する。セチル及びステアリルアルコールの混合物はしばしばセチルステアリルアルコールとも称される。他の例の式IIで表されるエステル末端ポリアミド類は、ユニクリアVG(INCI名:エチレンジアミン/ステアリルダイマージリノレアートのコポリマー)の名称でアリゾナ・ケミカル社から商業的に入手可能である。
【0036】
構造化剤(例えばロウではないポリマー)は、組成物の全重量に対して、一般的に約0.1重量%〜約40重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約10重量%の範囲の量で存在していてよい。
【0037】
本発明の組成物は、室温でペースト状の少なくとも一の脂肪化合物をさらに含有してよい。本発明の目的において、「ペースト状の脂肪物質」なる表現は、25〜60℃、好ましくは30〜45℃の範囲の融点、及び/又は0.001〜0.5MPa、好ましくは0.005〜0.4MPaの範囲の硬度を有する化合物を意味する。
【0038】
融点値は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTAインストゥルメンツ社(TA Instruments)からDSC2920の名称で販売されている熱量計を使用して、毎分5又は10℃の温度上昇で測定した融点に相当する(考慮される融点は、サーモグラムにおける最大の吸熱ピーク温度に対応する点である)。
【0039】
硬度は、直径2mmのステンレス鋼製シリンダーを具備するテクスチャーアナライザー(例えばレオ社(Rheo)のTA-XT2i)を特に使用し、化合物のサンプル中へプローブを貫通させる方法によって測定される。硬度測定は、5つのサンプルの中心で20℃にて実施される。シリンダーは1mm/secの前速度と、続く0.1mm/secの測定速度で各サンプル中に導入され、貫通深さは0.3mmである。記録される硬度の値は、加えられる力の最大ピークのものである。
【0040】
ペースト状の脂肪物質には、炭化水素ベースの化合物、場合によっては重合型のものが含まれる;それらはまた炭化水素ベース化合物、シリコーン化合物、及び/又はフルオロ化合物、及びそれらの混合物から選択されてもよい。ペースト状の化合物としては、ラノリン類及びラノリン誘導体、例えばアセチル化ラノリン又はオキシプロピレン化ラノリンで、18〜21Pa.s、好ましくは19〜20.5Pa.sの粘度、及び/又は30〜45℃の融点を有するもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。脂肪酸又は脂肪アルコールのエステル、特に20〜65の炭素原子を有する(及び約20〜35℃の融点、及び/又は40℃で0.1〜40Pa.sの範囲の粘度を有する)もの、例えばトリイソステアリル又はセチルシトラート;プロピオン酸アラキジル;ラウリン酸ポリビニル;コレステロールエステル、例えば水素化植物性油のような植物由来のトリグリセリド類、粘度のあるポリエステル、例えばポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)、及びそれらの混合物を使用してもよい。使用されうる植物由来のトリグリセリド類には、硬化ヒマシ油誘導体、例えばレオックス(Rheox)社の「チキシン(Thixin)R」が含まれる。また、ペースト状のシリコーン脂肪物質、例えば8〜24個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシ型のペンダント鎖を有し、20−55℃の融点を有するポリジメチルシロキサン類(PDMS)、特にステアリルジメチコーン類、中でもDC2503及びDC2-5514の商品名でダウ・コーニング社から販売されているもの、及びそれらの混合物を挙げることもできる。
【0041】
ペースト状の脂肪物質は、組成物の重量に基づき0.1〜10重量%の量で存在しうる。
【0042】
水に加えて、水相は、水と混和性のある溶媒(水との混和性が25℃で50重量%を超える)、例えば1〜5個の炭素原子を有する低級モノ-アルコール類、特にエタノール又はイソプロパノール、2〜8個の炭素原子を有するグリコール類、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール又はジプロピレングリコール、C3-C4ケトン類及びC2-C4アルデヒド類を含有していてもよい。水相は、組成物の全重量に対して約1重量%〜約95重量%、ある実施態様では約3重量%〜約70重量%、より好ましくは約5重量%〜約45重量%、50重量%、55重量%又は60重量%の範囲の含有量で存在していてもよい。
【0043】
本発明の組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。本発明の組成物に典型的に使用される界面活性剤には、アニオン性、非イオン性及びカチオン性界面活性剤が含まれる。例えば、界面活性剤の特性及び(乳化)機能の定義については、化学技術百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology), KIRK-OTHMER, 第22巻, 333-432頁, 第3版, 1979, Wileyを挙げることができ、特にアニオン性及び非イオン性界面活性剤に関してはその文献の347−377頁を参照のこと。本発明の組成物に有用な界面活性剤に例には、非イオン性界面活性剤として、脂肪酸、脂肪アルコール、ポリエトキシル化脂肪アルコール、又はポリグリセロール化脂肪アルコール、例えばポリエトキシル化ステアリルアルコール又はセチルステアリルアルコール、脂肪酸とスクロースのエステル、及びグルコースアルキルエステル、特にポリオキシエチレン化C-Cアルキルグルコース脂肪エステル、アニオン性界面活性剤として、アミン類、アンモニア又はそのアルカリ金属塩で中和されたC16-C30脂肪酸が含まれる。カチオン性界面活性剤の例には、第4級アミン類、アミンオキシド及びアミン類、例えばアルキルアミン類、アルキルイミダゾリン類、エトキシル化アミン類、第4級化合物、及び第4級エステルが含まれる。またカチオン性界面活性剤はコンディショニング効果ももたらしうる。
【0044】
界面活性剤は、組成物の全重量に対して、一般には約1〜約30重量%、所定の他の実施態様では、約3重量%〜約15重量%の範囲の量で存在している。
【0045】
本発明の組成物の種類に応じて、粘度のコントロールが、均一な被覆のみならず、組成物の素早く容易な適用の観点からも重要でありうる。洗って落とせる及び耐水性のマスカラの場合、例えば洗って落とせるマスカラの粘度は、一般に約10〜約60Pa.s、好ましくは約20〜約40Pa.sの範囲にあり、これに対し、耐水性のマスカラの粘度は、一般的に約10〜約70Pa.s、好ましくは約10〜約40Pa.sの範囲である。粘度は4番ローターを取付けたレオマット(Rheomat)RM180粘度計を用いて、25℃で測定したものであり、ここで測定は、200s−1の剪断速度で、10分間、ローターを回転させた後(粘度及びローターの回転速度の安定が観察された後)に実施する。
【0046】
粘度は、増粘剤を添加することにより調節することができる。代表的な例には、セルロースベースの増粘剤、例えば水溶性のセルロースベースの増粘剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。これらの増粘剤の中でも、特定の例には、アルギナート類、マルトデキストリン、多糖類樹脂、例えばデンプンとその誘導体、ヒアルロン酸とその塩、クレー類、特にモンモリロナイト類、ヘクトライト類及びラポナイト類(laponites)、架橋したポリアクリル酸、例えばグッドリッチ社(Goodrich)の製品「カルボポール(Carbopol)」、ヒスパノ・キミカ社(Hispano Quimica)又はガーディアン社(Guardian)から「ヒスパゲル(Hispagel)」又は「ルブラゲル(Lubragel)」の名称で販売されているポリグリセリル(メタ)アクリラートポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、架橋アクリルアミドのポリマー及びコポリマー、例えばヘキスト社(Hoechst)から「ボゼポール(Bozepol)C」又は「PAS5161」、セピック社(SEPPIC)から「セピゲル(Sepigel)305」の名称で販売されているもの、アライド・コロイド社(Allied Colloid)から「サルケア(Salcare)SC95」の名称で販売されている、架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドのホモポリマー、及び会合性ポリマー、特に会合性ポリウレタン類が含まれる。脂溶性増粘剤を使用することもできる。例えば、米国特許公報第2003/0215413号、同第2005/0065046号及び同第2002/0028226号を参照のこと。
【0047】
増粘剤は、一般には約0.05重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の範囲の量で存在している。
【0048】
組成物は、水に対する皮膜の感度を損なうことのない量で、ポリマー又はポリマー類と融和性のあるように選択される少なくとも一の親水性又は疎水性可塑剤(又は流動化剤)をさらに含有していてもよい。この薬剤は水溶性又は水に不溶性であってもよく、水性分散液の形態で存在していてもよい。
【0049】
単独又は混合物として、通常の可塑剤、例えば:
− グリコール類とその誘導体、例えばジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、又はジエチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、
− グリセロールのエステル、
− プロピレングリコール誘導体、特にプロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、及びジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、
− 酸のエステル、特にカルボン酸のもの、例えばクエン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、炭酸エステル、酒石酸エステル、リン酸エステル、セバシン酸エステル、及び
− オキシエチレン誘導体、例えばオキシエチレン油、特に植物性油、例えばヒマシ油;及びシリコーン油、
を挙げることができる。
【0050】
可塑剤の量は、組成物の化粧品的に許容可能な特性を保持しながら、所望の機械的特性を有する皮膜が得られるように、当業者が自身の一般的知識に基づいて選択することができる。
【0051】
本発明の組成物は、少なくとも一の適切な(例えば化粧品的又は皮膚科学的に許容可能な)添加剤又はアジュバントをさらに含有していてよく、これらには、限定されるものではないが、保湿剤、着色剤、フィラー、防腐剤、キレート剤、例えばEDTA及びその塩、酸化防止剤(例えばBHT、トコフェロール)、精油、中和剤、消泡剤、エモリエント、ビタミン類、微量元素及び必須脂肪酸が含まれる。これらの成分は、水相又は脂肪相に可溶性又は分散性でありうる。
【0052】
保湿剤の例には、乳酸ナトリウム、マンニトール、アミノ酸、ヒアルロン酸、ラノリン、尿素、ワセリン及びそれらの混合物が含まれる。他の例には、ポリオール類、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール及びソルビトールが含まれる。好ましい保湿剤はグリセリンである。保湿剤は組成物の重量に対して、一般に約1.0重量%〜15重量%、ある場合には約2.0重量%〜約10重量%の範囲の量で、本発明の組成物に存在しうる。
【0053】
本発明で有用な着色剤にて、典型的には、親油性染料、親水性染料、伝統的な顔料、及び真珠光沢顔料、及びそれらの混合物が含まれる。着色剤は、任意の形状、例えば球状、卵形、板状(platelet)、不規則な形状、及びそれらが混合した形状を有するものであってよい。顔料は、場合によっては例えばシリコーン類、過フッ化化合物、レシチン、及びアミノ酸で表面処理されていてもよい。
【0054】
脂溶性染料には、例えばスーダンレッド、D&Cレッド17、D&Cグリーン6、β-カロテン、大豆油、スーダンブラウン、D&Cイエロー11、D&Cバイオレット2、D&Cオレンジ5、キノリンイエロー及びアナトーが含まれる。水溶性染料は、例えばビート根汁又はメチレンブルーである。
【0055】
顔料は、白色顔料、有色顔料、無機顔料、有機顔料、被覆顔料、非被覆顔料、ミクロンサイズの顔料、及びミクロンサイズではない顔料から選択され得る。無機顔料としては、二酸化チタン、表面処理されていてもよい酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、水和クロム、及びフェリックブルーを挙げることができる。有機顔料としては、カーボンブラック、D&C型の顔料、コチニールカルミンベースのレーキ類、バリウムベースのレーキ類、ストロンチウムベースのレーキ類、カルシウムベースのレーキ類、及びアルミニウムベースのレーキ類を挙げることができる。
【0056】
真珠光沢顔料は、例えば、白色真珠光沢顔料、例えばチタン被覆マイカ、及びオキシ塩化ビスマス被覆マイカ、有色真珠光沢顔料、例えば酸化鉄を含むチタンマイカ、例えばフェリックブルー及び/又は酸化クロムを含むチタンマイカ、上述のタイプの有機顔料を含むチタンマイカ、並びにオキシ塩化ビスマスベースの真珠光沢顔料、干渉性顔料、及びゴニオクロマティック(goniochromatic)顔料から選択されうる。
【0057】
着色剤は、組成物の全重量に対して、一般に約0.01%〜約30%、ある実施態様では、約5%〜10%の範囲の量で存在しうる。
【0058】
本発明の組成物は、分散促進剤、例えば多糖類樹脂、特にKAMAインターナショナルコープ(International Corp)(Duluth, GA)から入手可能なKM13をさらに含有してもよい。分散促進剤は有色生成物において特に好ましい。
【0059】
フィラー及び真珠母をまた、例えば組成物のテクスチャー、及びマット/光沢効果を変化させるために、調製物に添加することができる。フィラーは、ラメラ状又は非ラメラ状、無機又は合成で、無色又は白色の粒子を意味するものと理解されるべきである。真珠母は、特にある種の軟体動物により貝殻の内部に生成されるか合成等される真珠光沢のある粒子を意味するものと理解されるべきである。本発明の実施に使用されうる真珠光沢剤には、マイカ、酸化鉄、二酸化チタン、及び化粧品の分野で公知の任意の他の真珠光沢剤が含まれる。
【0060】
例えば、フィラーは、当業者によく知られており、化粧品用組成物に通常使用されているものから選択することができる。具体例には、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミドパウダー、例えばナイロン(登録商標)(アトケム社(Atochem)のオルガソール(Orgasol)、ポリ-β-アラニンパウダー、及びポリエチレンパウダー、テトラフルオロエチレンポリマーパウダー、例えばテフロン(登録商標)、ラウロイルリジン;スターチ、窒化ホウ素、 中空ポリマーのミクロスフィア、例えば塩化ポリビニリデン/アクリロニトリルのもの、例えばエクスパンセル(Expancel(登録商標))(ノーベルインダストリー社(Nobel Industrie))、アクリル酸ポリマー、例えばポリトラップ(登録商標)(ダウ・コーニング社)、ポリメチルメタクリラート粒子及びシリコーン樹脂のマイクロビーズ(例えば東芝(Toshiba)のトスパール(Tospearls(登録商標))、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカのミクロスフィア(マプレコス社(Maprecos)のシリカビーズ(登録商標))、ガラス又はセラミックのマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、例えば12〜18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸から誘導される金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛及びミリスチン酸マグネシウム、及びそれらの混合物、チョーク、フラー土(Fuller's earth)、絹雲母、モスコバイト(muscovite)、金雲母、鱗雲母、黒雲母、蛭石、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、スメクタイト粘土、アルキル及び/又はトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学変性ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機変性モンモリロナイトクレー、含水ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、アルミニウムスターチオクテニルスクシナート、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン金属、マグネシウム、アルミナ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼き石こう)、リン酸カルシウム、コロイド状二酸化シリコーン、窒化ホウ素、シクロデキストリン、及びベンゾグアナミン樹脂パウダーが含まれる。
【0061】
フィラー(類)は、組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約25重量%、例えば約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在しうる。
【0062】
防腐剤の代表的な例には、アルキル基が1、2、3、4、5又は6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するパラ-ヒドロキシ安息香酸アルキル、例えばパラ-ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラ-ヒドロキシ安息香酸エチル(エチルパラベン)、パラ-ヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)、パラ-ヒドロキシ安息香酸ブチル(ブチルパラベン)、及びパラ-ヒドロキシ安息香酸イソブチル(イソブチルパラベン)、イミダゾリジニル尿素、及びフェノキシエタノールが含まれる。もちろん、防腐剤の混合物、例えばニパ社(Nipa)からニパスタット(Nipastat)の名称で販売されている、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンの混合物、及びニパ社からフェノニプ(Phenonip)の名称で販売されているフェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンの混合物を使用してもよい。防腐剤は、組成物の重量に対して、一般的に約0.01重量%〜約5重量%の範囲の量で存在しうる。
【0063】
次の実施例は、本発明をさらに例示するためのものである。これらは決して本発明を制限することを意図するものではない。別段の定義を示さない限りは、全ての部は重量基準である。
【実施例】
【0064】
実施例1−伸長用マスカラ
【表3】

【0065】
マスカラを製造すべく、主ビーカーにA1相の成分を85−90℃で加熱しながら添加し、続いてA2相を添加し、1時間均質化した。第2ビーカーに水を添加し、続いてヒドロキシエチルセルロースを混合して加水分解を可能にさせながら、ヒドロキシエチルセルロースを(室温で)添加した。この混合物を約40−45℃まで加熱し、分散するまで混合しながら、PVP K-30を添加した。第3ビーカーにおいて、約40−45℃まで加熱しながら、メチルパラベンをブチレングリコールと混合し、メチルパラベンを溶解させた。透明になったところで、混合しながら、この溶液を第2ビーカーに添加した。第2ビーカー中の得られた混合物を約85−90℃まで加熱し、続いてトリエタノールアミンとシメチコーンを添加し、約5分混合し、ついで20gの水をさらに添加した。均質化しながら、第2ビーカーの成分を主ビーカーに添加した。それらを互いに混合したとき、双方の混合物の温度は85−90℃であった。温度を維持しつつ、約20分の間、乳化を続けた後、ゆっくりした速度でスイープミキサーを使用して冷却を開始した。C相の成分を前もって混合し、ついで、約50−55℃で主バッチに添加した後、約45−50℃でD相をゆっくりと添加した。40℃でE相を添加し、続いて約30−35℃でアルコール(F相)を添加し、ついで、30−32℃までバッチの温度を僅かに低下させた。
【0066】
実施例2−比較例
請求項1の本発明組成物を、種々のレオロジー特性の観点から、次の市販されている伸長用マスカラと比較した。これらの実験は、マスカラにより睫毛上に形成される皮膜の、破損することなく伸長し、予め定められた時間、付加された長さを保持する能力を測定するためのものである。実験には、限界降伏応力(すなわち、皮膜が破れ降伏する限界応力を測定する動ひずみの振幅スイープ)、線形粘弾性領域における弾性率(G1)、及び変形の周波数又は割合の関数としての弾性率(すなわち、動的周波数スイープ)の測定が含まれる。
【0067】
【表4】

【0068】
結果を次の表3に示す。
【表5】

【0069】
上記結果は、限界降伏応力では約4倍の差、線形粘弾性領域の弾性率ではほぼ3倍の差、種々の周波数での弾性率では2倍よりわずかに少ないか又は多い差を示している。まとめると、これらの結果は、本発明のマスカラ組成物の伸長効果が、市販されている処方物よりも優れていることを示していると考えられる。
【0070】
明細書において引用した全ての文献は、この発明が関連する当業者の技量の水準を示す。これら全ての文献は、個々の文献が出典明示により特にかつ個々に援用されるかの如く、同程度で出典明示によりここに援用される。
【0071】
ここでは本発明を特定の実施態様を参照しながら説明したが、これらの実施態様は、本発明の原理と応用を単に例証しているものであることが理解されなければならない。よって、多くの変更が、例示的実施態様についてなされ得、他の構成が、添付する特許請求の範囲に定められる本発明の要旨及び範囲から逸脱しない範囲で案出されてもよいものと理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを含有する、睫毛への適用のための化粧品用組成物。
【請求項2】
前記コポリマーが粒子の水性分散液として存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子が90〜110nmの重量平均径、約80nmの数平均径、及び約−60℃〜+100℃の範囲のガラス転移温度Tgを有している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリラートがポリメチルメタクリラートを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリマーが、組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約20重量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コポリマーが、組成物の全重量に対して約0.5重量%〜約25重量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記コポリマーが、組成物の全重量に対して約1重量%〜約10重量%の量で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
構造化剤が少なくとも一種のロウを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ロウが、テトラデシル-オクタデカニル-ベヘナート又はヘキサデシル-コサニル-ヘキサコサナートである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ロウが、組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約40重量%の量で存在している、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ロウが、組成物の全重量に対して約0.5重量%〜約20重量%の量で存在している、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ロウが、組成物の全重量に対して約1重量%〜約10重量%の量で存在している、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも二種のロウを含有している、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記構造化剤がロウではないポリマーを含む、請求項1又は9に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが、次の式:
【化1】

[上式中:
nは、構造化ポリマーに存在するエステル基の数が、構造化ポリマーに含まれる全エステル基及び全アミド基の全数の10%〜50%の範囲になるアミド単位の数を表す整数であり;
は同一又は異なっており、少なくとも4の炭素原子を有するアルキル基、及び少なくとも4の炭素原子を有するアルケニル基からそれぞれ選択され;
は同一又は異なっており、CないしC42炭化水素ベース基からそれぞれ選択され、但しRの少なくとも50%はC30ないしC42炭化水素ベース基から選択され;
は同一又は異なっており、炭素原子、水素原子、酸素原子、及び窒素原子から選択される原子を有する有機基からそれぞれ選択され、但しRは少なくとも2個の炭素原子を含み;
は同一又は異なっており、水素原子、CないしC10アルキル基、及びR及び他のRから選択される基への直接結合からそれぞれ選択され、少なくとも1の基が他のRから選択される場合、R及びRの双方が結合する窒素原子は、R--N--Rにより部分的に定まる複素環構造の一部を形成し、但し全Rの少なくとも50%が水素原子から選択される]
により表されるエステル末端ポリアミドを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、エチレンジアミン/ステアリルダイマージリノレアートコポリマーを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
着色剤をさらに含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記着色剤が、組成物の全重量に対して約5重量%〜約10重量%の量で存在している、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
フィラーをさらに含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを含有するマスカラ組成物を睫毛に適用することを含む、睫毛の伸長方法。
【請求項21】
水相、脂肪相、構造化剤、及びポリウレタン/ポリ(メタ)アクリラートのグラフトコポリマーを処方し、よってマスカラを調製することを含む、マスカラ組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−45827(P2007−45827A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−219772(P2006−219772)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】