説明

睫用化粧料

【課題】化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性に優れた睫用化粧料を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)、(B):(A)平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックス、(B)平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックス、を配合することを特徴とする睫用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックスと平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックスを配合することを特徴とする睫用化粧料に関し、より詳しくは、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性に優れた睫用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、睫用化粧料は、睫を上にカールさせたり、睫を太くみせたり(ボリューム効果)、長く見せる(ロングラッシュ効果)ことで、目元をはっきりさせる化粧効果を持つものとして使用されている。睫用化粧料は、すばやく化粧膜を形成することが要求されるため、主に、ワックス等の固形状油分、粉体、皮膜形成剤及び揮発性化合物から構成されることが多く、様々な使用性及び機能性をもたせるために、種々の剤型、及び成分の配合検討が行われてきた。例えば、特定量の高融点ワックスと被膜形成性樹脂、被膜形成性のポリマーエマルション及び無水ケイ酸を用いることにより、睫のカール力の持続性を向上させるとともに使用性も良好にした技術(例えば、特許文献1参照)が挙げられる。また、ボリューム感とカールの柔軟性を向上させた技術としては、揮発性シリコーンに重合体が分散された非水系ポリマーディスパージョンと中空粉末とを含有するものが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
一方、睫用化粧料に一般的に使用されるワックスを、界面活性剤を用いることなく水相に分散することにより、界面活性剤の持つベタツキや化粧持続性の低下をなくした技術も検討されてきた(特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−268841号公報
【特許文献2】特開2004−315420号公報
【特許文献3】特許第3479916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術ではボリューム感やカール力は得られるものの、睫への付着量を増加させボリューム感を付与すると、膜の均一性が失われ、重さで部分的にカールが下がることがあった。通常の化粧料であれば、不揮発性の液状油を用いることで膜の均一性や密着性を改良できるが、睫用化粧料においては、揮発せずいつまでもべたべたしてしまうため、効果的に均一性を改善できる方法ではない。そのため、密着性が良く均一に伸び広がることでボリューム感が得られ、しかも、化粧膜が均一であることにより部分的に重さでカールが下がることのない技術は開発されていなかった。
【0005】
従って、睫に均一に伸び広がり、密着性が良いことによりボリューム感だけでなく十分なカール効果も付与し、その持続性にも優れた睫用化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究した結果、平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックスと平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックスを配合する、つまり、成分(B)の軟らかいが、融点が高い性質のワックスと成分(A)の高融点で硬いワックスを組み合わせることで密着性が向上し、均一に伸び広がることを見出し、それにより、ボリューム効果だけではなく高いカール力も付与し、その化粧持続性にも優れ、さらに塗布後はべたべたしない化粧膜を形成することができる睫用化粧料が得られ、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の成分(A)及び(B):
(A)平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックス
(B)平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックス
を配合することを特徴とする睫用化粧料を提供するものである。
また、前記成分(A)と(B)の配合量が質量比で(A)/(B)として0.3〜2.5であることを特徴とする睫用化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の睫用化粧料は、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性に優れた化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される成分(A)平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックスは、化粧膜にある程度の硬さを与え、カール効果などの化粧効果の持続性を高めるために配合する。成分(A)は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができ、その一種又は二種以上を用いることができる。例えば、市販品として、PERFORMALENE655(平均分子量655、融点95〜105℃、針入度1〜3dmm)、PERFORMALENE 500(平均分子量500、融点83〜92℃、針入度3.5〜9.5dmm)(ニューフェーズテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0010】
成分(A)の配合量は、0.1〜20質量%(以下単に「%」で示す。)が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。この範囲であれば、カール効果とその持続性の点で満足のいくものが得られる
【0011】
尚、本発明において、平均分子量は、試料のテトラヒドロフラン(THF)可溶分をGPC(Gel Permeation Chromatography)法(カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)、THF)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を測定することにより求めたものである。
成分(A)の平均分子量が500〜800の範囲であれば、成分(B)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
【0012】
融点は、医薬部外品規格一般試験法融点測定法の第4報に記載の方法により求めたものである。
成分(A)の融点が83〜120℃の温度範囲であれば、成分(B)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
【0013】
針入度は、ASTM標準規格に記載の測定方法により求めたものである。
試料を加熱溶融して試料容器に採り、放冷した後、恒温水浴中で25℃に保ち、質量の合計を100gにした規定の針を試料中に垂直に5秒間進入させる。試料の針入度は、針の進入した深さを0.1mmまで測定し、これを10倍した数値で表す。
成分(A)の針入度が1.0〜9.5dmmの範囲であれば、成分(B)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
【0014】
本発明に使用される成分(B)平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックスは、成分(A)との併用により睫にボリューム効果だけでなく、カール効果を付与するために配合する。
成分(B)は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができ、その一種又は二種以上を用いることができる。例えば、市販品として、ASENSA PR200(平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmm)(ハネウェル社製)が挙げられる。
成分(B)の平均分子量が900〜1000の範囲であれば、成分(A)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
成分(B)の融点が88〜95℃の温度範囲であれば、成分(A)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
成分(B)の針入度が75〜120dmmの範囲であれば、成分(A)との併用により睫に十分なボリューム効果とカール効果を付与し、長時間持続させることができる。
【0015】
成分(B)の配合量は、0.1〜20%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。この範囲であれば、カール効果及びボリューム効果の点で満足のいくものが得られる。
【0016】
また、成分(A)と(B)の配合量が質量比で(A)/(B)として0.3〜2.5が好ましく、さらに0.8〜2がより好ましい。両者を併用することでより高いボリューム感が得られるが、0.3より小さい範囲では、ボリューム効果には優れるが、カール効果の点で満足のいくものが得られない場合がある。
また、2.5より大きい範囲では、カール効果には優れるが、ボリューム効果の点で満足のいくものが得られない場合がある。
【0017】
また、成分(A)と成分(B)を予め混合して用いると、製造工程において、成分(B)の秤量時に取り扱いがしやすくなり好ましい。例えば、成分(A)と成分(B)を所望の割合で加熱溶解し混合物を作成して、化粧料の製造時にはその混合物を使用することも可能である。成分(A)と成分(B)の混合物の市販品として、合成ワックスP−200(日本ナチュラルプロダクツ社製)が挙げられる。
【0018】
本発明に使用される必須成分の他に、通常化粧料に使用される成分、例えば、成分(A)、(B)以外の油性成分、粉体成分、繊維、皮膜形成性ポリマーエマルション、界面活性剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料、などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0019】
成分(A)、(B)以外の油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、および固形油、半固形油、液体油等の性状を問わず、揮発性油剤、炭化水素類、油溶性の皮膜形成樹脂類、油脂類、硬化油類、エステル油類、高級アルコール類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。
油性成分で挙げられる揮発性油剤は、特に、成分(A)、(B)を配合する油性型や油中水型の睫用化粧料において、成分(A)、(B)を含む本発明に用いる油性成分の溶媒として用いられ、具体的には、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン等のシリコーン油等を挙げることができる。
その他油性成分として具体的には、エチレン・プロピレンコポリマー、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、ロジン酸ペンタエリスリット等のテルペン系樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、キャンデリラレジン(ここで、キャンデリラレジンとは、キャンデリラワックスを有機溶剤にて分別抽出して得られる樹脂分で、樹脂分が好ましくは65%以上、更に好ましくは85%以上の割合で含有されるものである。)、アクリル酸アルキルジメチコン共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレン等の油溶性の皮膜形成樹脂類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0020】
粉体成分としては、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、無水ケイ酸被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は一種又は二種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0021】
繊維としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられ、これらは特に限定されるものではなく、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。これらの繊維は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンを層状に重ねた複合繊維のように、一種又は二種以上の複合化したものを用いても良く、また、本発明の効果を妨げない範囲で、一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。本発明品は繊維を配合しなくても、優れたロングラッシュ効果を発揮するものであるが、さらにロングラッシュ効果を得たい場合は上記繊維を配合し、具現化することができる。
【0022】
皮膜形成性ポリマーエマルションとしては、水性溶媒中に高分子の微粒子が安定に分散した系で、界面活性剤で乳化させたモノマーを重合することによって得られる液や自然界に存在する乳状の樹液を含むもので、通常化粧料に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができる。例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション等が挙げられ、市販品としては、ヨドゾール32A707、ヨドゾール GH810F、ヨドゾール GH800F(日本エヌエスシー社製)、プレキシトール B−500(ROHM GMBH社製)、リカボンドET−F527(中央理科工業社製)、ビニブラン1080、ビニブラン1128C,ビニブラン1080M,ビニブラン1080T、ビニブランGV−5651、ビニブラン1108S/W(日信化学工業株式会社)、ANTARA430(ISP社製)が挙げられる。これらのポリマーエマルションは、必要に応じ、一種又は二種以上を使用することができる。
【0023】
界面活性剤としては、通常化粧料に用いられている界面活性剤であれば何れでもよく、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。特に油中水型を形成する場合は、非イオン性界面活性剤の中でもシリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキルエーテル共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。シリコーン系以外の非イオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられる。両性界面活性剤としては、レシチン等が挙げられる。
【0024】
水性成分としては、水又は、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、でんぷん糖、ラクチトール等の糖類、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ、ウィッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等及び精製水、海洋深層水、温泉水等の水が挙げられる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0026】
本発明の睫用化粧料としては、油性、油中水、水中油型のマスカラ、マスカラオーバーコート、マスカラ下地等が挙げられ、油性型では付着性の良さがより顕著に現れ化粧効果の持続性につながり、水中油型ではカール効果を持続する点がより顕著に現れるため好ましい。形状としては乳液状、クリーム状等が挙げられる。本発明における油性型とは、液状、半固形状又は固形状の油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする化粧料で、実質的に水を含まないものである。
【0027】
本発明の睫用化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、成分(A)、(B)を含む油性成分と粉体を110℃程度で加熱混合したものを混練後、容器に充填することにより得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0029】
実施例1〜12及び比較例1〜4 油性型マスカラ(クリーム状)
表1及び表2に示す処方のマスカラを調製し、睫に塗布し、化粧効果として、ボリューム効果、カール効果、その化粧効果の持続性、使用性として伸び広がりの均一性について下記の方法により官能評価を行った。その結果もあわせて表1、2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
*1:合成ワックスP−200(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*2:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
*3:ASENSA PR−200(ハネウェル社製)
*4:MULTIWAX W−835 MYCROCRYSTALLINEWAX
(SONNEBORN社製)
*5:PERFORMALENE 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
*6:BENTONE 38V BC(エレメンティス社製)
*7:AEROSIL 300(日本アエロジル社製)
*8:タロックスブラックBL−100(チタン工業社製)
*9:3%パーフルオロアルキルシラン処理タルク
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を110℃に加熱溶解し、成分(11)〜(14)を加えて均一に混合する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0033】
(評価項目)
(a)ボリューム効果
(b)カール効果
(c)化粧効果の持続性
(d)伸び広がりの均一性
【0034】
(評価方法)
化粧歴10年以上の官能検査パネル20名により、各試料を上記a〜dについて、下記(A)絶対評価を用いて7段階に評価し、各試料ごとの評点の平均値を(B)4段階判定基準を用いて判定した。
尚、評価項目cについては、試料を使用後、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後の化粧効果について、密着性がよく化粧膜が均一に維持できているかどうか、特にカール効果については、部分的に睫が下がっていないかどうかを基準に評価した。
【0035】
(A)絶対評価
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
(B)4段階判定基準
(評点の平均値) (判定)
5点を超える :◎
3点を超えて5点以下 :○
1.5点を超えて3点以下 :△
1.5点以下 :×
【0036】
本結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜12の油性型クリーム状マスカラは、密着性が良く均一に伸び広がることで、ボリュームのある均一な膜が形成され、しかも、しっかりとしたカール効果が得られ、これらの効果が持続するという点で優れた特性を有していた。
成分(A)と成分(B)の予備混合物を用いた実施例1と別々に配合した実施例4では、化粧料としての評価は同程度であったが、実施例1の方が製造時の作業性の点で、優れるものであった。
成分(A)と成分(B)の配合量の比が(A)/(B)=0.11で成分(A)の配合量が成分(B)よりかなり少ない実施例5は、実施例1〜4に比べ、化粧膜の強度が多少弱くなり、化粧膜のカール効果及びその持続性に影響した。
また、逆に、(A)/(B)=9で、成分(A)の配合量が成分(B)よりかなり多い実施例10は、実施例1〜4に比べ、密着力が多少低下するため、ボリューム効果及びその持続性に影響した。
一方、成分(A)と成分(B)を配合しない比較例1は、滑らかに付着せず、密着力としても不十分なため、ボリューム効果も得られず、均一な化粧膜も得られないため、部分的に睫が下がりカール効果の持続性の点においても不十分であった。
成分(B)を配合しない比較例2は、滑らかに伸び広がる密着力という点で不十分なため、ボリューム効果が得られなかった。
成分(A)を配合しない比較例3は、化粧膜の強度が不十分になるため、化粧膜のカール効果及びその持続性に満足のいくものが得られなかった。
さらに、成分(B)の代わりに、針入度は75〜120dmmであるが、融点が約74℃であるマイクロクリスタリンワックスを使用している比較例4は、化粧膜の強度が不十分になるため、化粧膜のカール効果及びその持続性に満足のいくものが得られなかった。
【0037】
実施例13 油性型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ロジン酸ペンタエリスリトール 9
(2)ポリイソブチレン*10 7
(3)軽質流動イソパラフィン 残量
(4)成分(A)と成分(B)の予備混合物*1 8
(5)カルナウバワックス 1
(6)セレシン 2
(7)デキストリン脂肪酸エステル*11 5
(8)ポリプロピレン繊維*12 4
(9)ベンガラ 5
(10)タルク 5
(11)オランダカラシエキス 0.5
(12)フェノキシエタノール 0.5
(13)香料 0.1
*10:分子量10万
*11:レオパールKL2(千葉製粉社製)
*12:5.6T−2mm
(製法)
A.成分(1)〜(7)を100℃に加熱溶解し、成分(8)〜(13)を加えて均一に混合する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0038】
以上のようにして得られた油性型マスカラについて、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。
【0039】
実施例14 油中水型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)トリメチルシロキシケイ酸 20
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 残量
(3)ポリエチレンワックス*2 2
(4)ポリエチレンワックス*3 2
(5)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体*13 5
(6)天然ビタミンE 0.5
(7)パラオキシ安息香酸エチル 0.5
(8)精製水 13
(9)ポリプロピレン繊維*14 2
(10)チタン・酸化チタン焼結物 10
(11)ベンガラ被覆雲母チタン 5
(12)ポリビニルピロリドン 0.1
*13:シリコンKF−6017(信越化学工業社製)
*14:10T、3mm、未処理
(製法)
A.成分(1)〜(7)を100℃に加熱溶解し、常温になるまで冷却する。その後、成分(8)〜(12)を加えて乳化する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0040】
以上のようにして得られた油中水型マスカラについて、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。
【0041】
実施例15 油中水型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ロジン酸ペンタエリスリトール 5
(2)キャンデリラレジン*15 10
(3)軽質流動イソパラフィン 残量
(4)成分(A)と成分(B)の予備混合物*1 3
(5)デキストリン脂肪酸エステル*16 7
(6)煙霧状無水ケイ酸*17 8
(7)有機変性粘土鉱物*18 2
(8)ベンガラ 5
(9)タルク*19 5
(10)1,3−ブチレングリコール 8
(11)精製水 3
(12)香料 0.1
*15:キャンデリラ樹脂E−1(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*16:レオパールTL2(千葉製粉社製)
*17:AEROSIL R974(日本アエロジル社製)
*18:BENTONE 27V(ELEMENTIS社製)
*19:2%ジメチルポリシロキサン処理
(製法)
A.成分(1)〜(5)を110℃に加熱溶解し、(6)〜(9)を加え、均一に混合する。その後、成分(10)〜(12)を加え、均一に混合する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0042】
以上のようにして得られた油中水型マスカラについて、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。
【0043】
実施例16 水中油型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 3
(2)キャンデリラレジン*15 1
(3)ミツロウ 1
(4)ポリエチレンワックス*2 2
(5)ポリエチレンワックス*3 2
(6)モノステアリン酸グリセリル 1
(7)ショ糖脂肪酸エステル 2
(8)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンン(20E.O) 1.3
(9)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(10)ベンガラ 5
(11)雲母チタン 2
(12)ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末 0.5
(13)無水ケイ酸 0.1
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)ナイロンファイバー*20 3
(16)1,3−ブチレングリコール 8
(17)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(18)アクリル酸アルキルコポリマーエマルション*21 10
(19)酢酸ビニル重合体エマルション*22 0.5
(20)シャクヤクエキス 0.03
(21)精製水 残量
*20:ナイロンファイバー6.3T−2MM(中部パイル社製)
*21:ヨドゾールGH800F(固形分45%)(日本エヌエスシー社製)
*22:ビニブランGV−5651(固形分36%)(日信化学工業社製)
(製法)
A.成分(1)〜(9)を110℃に加熱溶解し、成分(10)〜(12)を加え、均一に混合する。
B.成分(13)〜(21)を均一に混合する。
C.AにBを加え、80℃で乳化する。
D.Cを冷却後、容器に充填して水中油乳化型マスカラを得た。
【0044】
以上のようにして得られた水中油型マスカラについて、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。
【0045】
実施例17 水中油型マスカラ(クリーム状)
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2
(2)ロジン酸ペンタエリスリトール 1
(3)カルナウバワックス 5
(4)成分(A)と成分(B)の予備混合物*1 2
(5)キャンデリラロウエステルズ*23 5
(6)モノステアリン酸グリセリル 1
(7)セトステアリルアルコール 0.5
(8)ショ糖脂肪酸エステル 2
(9)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンン(20E.O) 1.5
(10)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(11)黒酸化鉄 5
(12)無水ケイ酸 0.1
(13)トリエタノールアミン 1.2
(14)1,3−ブチレングリコール 8
(15)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(16)アクリル酸アルキルコポリマーエマルション*21 10
(17)酢酸ビニル重合体エマルション*22 0.5
(18)シャクヤクエキス 0.03
(19)精製水 残量
*23:高融点キャンデリラワックスFR100(日本ナチュラルプロダクツ社製)
(製法)
A.成分(1)〜(10)を110℃に加熱溶解し、成分(11)を加え、均一に混合する。
B.成分(12)〜(19)を均一に混合する。
C.AにBを加え、80℃で乳化する。
D.Cを冷却後、容器に充填して水中油乳化型マスカラを得た。
【0046】
以上のようにして得られた水中油型マスカラについて、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。
【0047】
実施例18:油中水型マスカラ下地(乳液状)
(成分) (%)
(1)キャンデリラレジン*15 5
(2)ポリエチレンワックス*1 1
(3)軽質流動イソパラフィン 残量
(4)有機変性粘土鉱物*18 5
(5)煙霧状無水ケイ酸 *24 3
(6)マイカ 5
(7)雲母チタン 2
(8)精製水 7
(9)酢酸ビニル重合体エマルション*22 4
(10)大豆リン脂質 0.5
(11)エチルアルコール 2
(12)表面処理ナイロン繊維 *25 1
*24:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
*25:10%パーフルオロアルキルシラン処理(7T−2mm)
(製法)
A.成分(1)〜(3)を110℃で均一に加熱溶解し、成分(4)〜(7)を加えて均一に混合する。その後、成分(8)〜(12)を加えて均一に混合する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0048】
以上のようにして得られた油中水型マスカラ下地について、実施例1〜12で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、化粧膜が均一に伸び広がり密着性が良いことにより、睫のカール・ボリューム効果に優れ、その持続性にも優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)平均分子量500〜800、融点83〜120℃、針入度1.0〜9.5dmmのポリエチレンワックス
(B)平均分子量900〜1000、融点88〜95℃、針入度75〜120dmmのポリエチレンワックス
を配合することを特徴とする睫用化粧料。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の配合量が質量比で(A)/(B)=0.3〜2.5であることを特徴とする請求項1に記載の睫用化粧料。

【公開番号】特開2009−256322(P2009−256322A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57206(P2009−57206)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】