説明

知的財産情報交換支援システム

【課題】大学等からは保有する知的財産情報を登録し、企業等からは技術ニーズを登録することにより、相互の知的財産にかかわる情報交換を一元的に実現するための知的財産情報交換支援システムを提供する。
【解決手段】知的財産情報交換支援システム100を管理するコンソーシアム情報管理会社と、提携大学・研究機関群と、契約企業群によりコンソーシアムを形成し、知的財産情報交換支援システム100は、情報処理手段として、会員情報管理部104、情報受付部105、情報登録部107、及び情報提供部108を含み、記憶手段として、会員情報データベース103、一時保存メモリ106、オープン型知的財産情報データベース102、及びクローズド型知的財産情報データベース101を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、知的財産にかかわる情報の活用を支援するためのシステムに関し、さらに詳細には、大学等からは保有する知的財産情報を登録し、企業等からは技術ニーズを登録することにより、相互の知的財産にかかわる情報交換を一元的に実現するための知的財産情報交換支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大学等の保有する知的財産情報を収録するデータベースヘアクセスし閲覧させることにより、企業等に利用可能な知的財産情報を紹介し、当該知的財産情報の利用に興味を持った企業からの打診を得た後に、詳細な技術情報の説明や研究者との交流をプロモートする技術移転機関(TLO)、科学技術振興機構(JST)、大学等が運営する産学連携組織のマッチングサービス業務は多数活動中である。
【0003】
このような活動を実施するため、研究者の保有する知的財産情報の活用を支援するシステムとして、インターネット等を利用して知的財産権の評価および利用を行う知的財産権流通システム等の開発が行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、研究テーマ等の技術ニーズ情報を収録するデータベースヘアクセスし閲覧させることにより、研究者等に技術ニーズを紹介し、当該研究テーマに興味を持った大学等の連携コーディネータあるいは研究者からの打診を得た後に、企業との交流をプロモートする産学連携機構や、個別の技術ニーズを有する企業からのクローズドな依頼を受けた後に技術シーズを探索し、得られた情報を依頼元の企業へ提供する技術情報サービス企業も多数活動中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−186490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のTLO、JST、大学等の産学連携組織、技術情報サービス企業の活動は相応の成果を上げている状況にあるが、基本は介添えする人間計のパワー(資質と人数)に依存するため、マッチング効率は企業が求めるオープンイノベーションのニーズに対応出来ていないのが現状である。
【0007】
また、個別のTLOや連携型の情報公開システムなど、大学等と企業等を結ぶ多数のマッチングシステムが存在するが、情報量や従事するコーディネータなどの規模的問題、あるいは企業等から見た秘密保持体制が不十分と感じられる形態であるなどの事情により、十分な情報交換が行われず、結果的に大都市圏での特定分野や特定参加者(具体的には研究者個人の活動範囲内)に限定された情報交換が限定的に成立しているに過ぎない。
【0008】
この原因は、TLO、JST、大学等が運営するマッチングサービス業務に使われるデータベースの質ならびに企業が提出するニーズ情報の質が共に低く、経済活動の本質から乖離しているためである。
【0009】
一方、技術情報サービス企業は依頼を受けた企業の最新のニーズ情報を持ちながら、そのニーズに合致する研究者情報の確保が不十分であり、特定の大学等との連携が進むという効率の悪い運営となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンソーシアムを形成する会員である提携大学・研究機関群と契約企業群のそれぞれに設置された情報端末と、通信網により接続されたコンソーシアム情報管理会社に設置された知的財産情報交換支援システムであって、会員の会員情報を保存する会員情報データベースと、会員の情報端末から送信される知的財産情報を一時的に保存する一時保存メモリと、知的財産情報のうち、会員の全てに公開する情報を記録するオープン型知的財産情報データベースと、知的財産情報のうち、会員の特定会員にのみ公開する情報を記録するクローズド型知的財産情報データベースとを具備し、会員情報データベースに接続され、会員情報の保存と更新を行う会員情報管理部と、一時保存メモリに接続され、会員の情報端末から送信される知的財産情報を受信した会員情報管理部により起動され、知的財産情報を一時保存メモリに保存する情報受付部と、一時保存メモリと、オープン型知的財産情報データベースと、クローズド型知的財産情報データベースとに接続され、一時保存メモリに保存された知的財産情報に分類・評価データが付与されると、当該分類・評価データとともに知的財産情報をオープン型知的財産情報データベースまたはクローズド型知的財産情報データベースに記録する情報登録部と、オープン型知的財産情報データベースとクローズド型知的財産情報データベースに接続され、契約企業群の情報端末から情報提供要求を受信した会員情報管理部により起動され、契約企業群の会員情報に設定された契約レベルにより許容された範囲内で、オープン型知的財産情報データベース及びクローズド型知的財産情報データベースに記録された知的財産情報を情報端末に送信する情報提供部とを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、情報交換機能により、企業等は自社が必要とする研究情報の存在を、体系的かつ時系列的に、即座に全国の大学等の情報から得ることで、最新の研究状況(何処の誰が、何を、どの程度まで)について把握できる他、類似技術の体系的な情報収集も可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、大学等(研究者)はもっとも自分の研究に興味を持つと思われる企業の最新のニーズ情報を得ることで、技術ニーズを研究成果に盛り込んだ上での提示が可能となり、類似研究や連携相手の探索が容易となり、類似研究や連携相手の進捗について体系的かつ時系列的に確認する事ができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、従来は個別企業を支援する形態での情報提供サービスが出来ない条件や企業側が求める守秘性の担保が出来なかった環境が取り払われ、大学等の持つ知的財産情報と企業の技術ニーズのマッチングが改善され、国内での産業活性化が促進される。
【0014】
また、本発明によれば、大学経営者あるいは小規模TLOにとっては特許案件の目利きサービスおよびシェイプアップ作業のサービスを受けることで、大学としての研究方針や特許出願戦略の効率的な取組が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の概略図
【図2】知的財産情報交換支援システムの構成図
【図3】企業会員情報の構成図
【図4】大学等会員情報および研究者情報の構成図
【図5】知的財産情報データの構成図
【図6】知的財産情報登録から契約までのシステム全体のシーケンス図
【図7】技術ニーズ登録から契約までのシステム全体のシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するために、本発明の知的財産情報交換支援システム100を管理するコンソーシアム情報管理会社10と、提携大学・研究機関群(以下、大学等という)30と、契約企業群(以下、企業等という)20によりコンソーシアムを形成し、図1に示すように、それぞれに設置されたコンピュータまたは情報端末をインターネット等の通信網40により接続する。
【0017】
コンソーシアム情報管理会社10は、大学等30の出資により設立され、本発明の知的財産情報交換支援システム100を維持・管理するとともに、各種サービスを提供する。
【0018】
大学等30には、図1に示すように、大学A、大学B、研究機関C等、コンソーシアム情報管理会社10と契約を結ぶ複数の大学や研究機関が含まれる。
【0019】
ここで、図1に示すように、大学Aには、研究者A−1、研究者A−2、及び研究者A−3、大学Bには、研究者B−1、研究者B−2、及び研究者B−3、研究機関Cには、研究者C−1、研究者C−2、及び研究者C−3のように複数の研究者が在籍しており、各研究者が知的財産情報交換支援システム100を利用できる。
【0020】
企業等20には、図1に示すように、企業A、企業B、企業C等、コンソーシアム情報管理会社10と契約を結ぶ複数の企業が含まれる。企業等20には、製造関連企業のみならず、情報サービス企業を含んでも構わない。
【0021】
各企業がコンソーシアム情報管理会社10と契約を結ぶ際は、アクセス可能な知的財産情報を限定するために、当該企業の契約レベルが決められる。図1では、企業Aがレベル1、企業Bと企業Cがレベル2となっていることを例示している。
【0022】
企業の契約レベルは、知的財産情報交換支援システム100の利用を開始する時点では、契約を結ぶ際の会費の額で決定されるが、利用開始後は、年度ごと等の一定期間ごとに、実際に開始された大学等30との連携実績から決定される仕組みを導入し、コンソーシアムへの貢献度を反映させる。
【0023】
また、知的財産情報交換支援システム100の利用にあたっては、コンソーシアムの円滑な運営と推進のために、コンソーシアムへの貢献度に応じた報酬を与えるインセンティブ制度を導入する。
【0024】
具体的は、一般市場で行われている、購入金額や使用回数に応じてポイントを付与するサービスポイント制度やマイレージ制度と同様に、登録した知的財産情報の件数や、実際に利用契約が成立した件数等に応じて報酬(以下、マイルという)を研究者に与える。
【0025】
企業等20は、支払う会費等によりマイルを購入しておき、登録された知的財産情報を閲覧したり、契約を行ったりする際に、情報交換サービス利用の代価としてマイルを支払うことになる。
【0026】
企業等20から差し引かれるマイルは、その全量あるいは一部が研究者に付与される。研究者は常時付与されたマイル数を、登録した知的財産情報毎に確認することが可能であり、かつ常時、現金化する事が可能である。この金額は研究者個人の収入として処理することができる。また、研究者は蓄積されたマイルを用いて自身の発明の海外を含む特許出願費用に充てることや研究推進費用に使用することも可能である。
【0027】
知的財産情報は、図1に示す知的財産情報交換支援システム100に含まれるオープン型知的財産情報データベース102とクローズド型知的財産情報データベース101に記録されて管理され、例えば、レベル1の企業はオープン型知的財産情報データベース102の情報のみを閲覧でき、レベル2の企業はクローズド型知的財産情報データベース101の情報も閲覧できる等、企業の契約レベルは閲覧条件を設定するために利用される。
【0028】
ここで言う知的財産情報とは、大学等30から提出される研究報告書や論文、出願前発明情報、公開前特許出願情報、公開特許情報、研究提案書、成果有体物、ノウハウ説明書などと、企業等20から提出される技術ニーズである。
【0029】
大学等30から提出される知的財産情報は、一般への公開前と公開後では著しくその財産価値が変わるので、閲覧できる資格を契約レベルによって厳重に管理する。
【0030】
また、企業等20から提出される技術ニーズは、各企業の経営戦略を現す重要情報であるため、大学等30からは閲覧可能とする一方、コンソ−シアムの企業等20であっても、他企業には永久に公開されることは無い。
【0031】
(システム構成)
本発明の知的財産情報交換支援システム100は、図2に示すように、情報処理手段として、会員情報管理部104、情報受付部105、情報登録部107、及び情報提供部108を含み、記憶手段として、会員情報データベース103、一時保存メモリ106、オープン型知的財産情報データベース102、及びクローズド型知的財産情報データベース101を含む。
【0032】
会員情報管理部104は、契約した大学等30や企業等20の会員に関する会員情報を会員情報データベース103に登録し、既に登録済みの会員情報の更新をする。また、インターネット等40を介してアクセスがある際に、パスワードをチェックして認証を行い、要求が知的財産情報の登録か閲覧かによって、情報受付部105か情報提供部108を起動する。
【0033】
情報受付部105は、大学等30や企業等20から登録するために送信されてくる知的財産情報を受信し、分類と評価を行なった後に正式に登録するために、受信した知的財産情報を一時保存メモリ106に保存する。この時、情報受付部105は、管理端末に表示するなどして、分類と評価を行なうように管理者に通知するが好ましい。
【0034】
通知を受けた管理者は、コンソーシアム情報管理会社10内に在籍している多数の産業分野別の分類担当者(目利き)や特許種分け担当者に、分類と評価を依頼する。
【0035】
情報登録部107は、管理端末からのアクセスにより、一時保存メモリ106に保存された知的財産情報を管理端末に表示し、担当者による分類と評価が完了すると、分類データと評価データとともに、当該知的財産情報が既に一般に公開されている場合はオープン型知的財産情報データベース102に、まだ秘密状態として管理する必要のある場合はクローズド型知的財産情報データベース101に記録する。
【0036】
また、情報登録部107は、管理端末からのアクセスにより、一時保存メモリ106に保存された技術ニーズを管理端末に表示し、担当者による分類が完了すると、分類データとともに、クローズド型知的財産情報データベース101に記録する。
【0037】
情報提供部108は、企業等20から情報の閲覧要求があると、会員情報管理部104を経由して当該企業の契約レベルを判定し、そのレベルに対応した閲覧範囲に限定して、オープン型知的財産情報データベース102及びクローズド型知的財産情報データベース101に登録された知的財産情報を当該企業のコンピュータや情報端末に表示する。
【0038】
また、情報提供部108は、大学等30から情報の閲覧要求があると、クローズド型知的財産情報データベース101に登録された技術ニーズを大学等30のコンピュータや情報端末に表示する。
【0039】
(データ構成)
会員情報データベース103に登録されるデータは、図3に例示する企業等20の企業会員情報200と、図4に例示する大学等30の会員情報である。
【0040】
企業会員情報200には、図3に例示するように、各企業を識別するための企業会員番号と、アクセス時に認証を実施する際に入力するパスワードと、連絡先となるメールアドレスと、契約レベルと、保有しているマイル数が含まれる。
【0041】
また、図示していないが、企業の住所や電話番号などの情報も登録するのが好ましい。
【0042】
一方、大学等30の会員情報は、図4に例示するように2段テーブル構成をとり、第1段目テーブルは、大学自体の会員情報で、大学等会員情報201という。さらに第2段目テーブルは、各大学に在籍する研究者の情報で、研究者情報202a、202b、202cという。
【0043】
第1段目テーブルの大学等会員情報201には、各大学等30を識別するための大学等会員番号と、大学等30の代表者がアクセス時に認証を実施する際に入力するパスワードが含まれる。また、図示していないが、大学等30の住所や電話番号などの情報も登録するのが好ましい。
【0044】
第2段目テーブルは、大学01、大学02、大学03等の大学等会員番号をキーとして、第1段目テーブルの各大学等会員情報201にリンクさせておく。
【0045】
第2段目テーブルの研究者情報202a、202b、202cには、各研究者を識別するための研究者番号(登録情報番号ともいう)と、アクセス時に認証を実施する際に入力するパスワードと、連絡先となるメールアドレスと、保有しているマイル数が含まれる。
【0046】
さらに、各研究者が登録している知的財産情報を、研究者ごとに容易に索引できるように、知的財産情報の登録時に付与される登録情報番号を、研究者情報202a、202b、202cの1要素として含ませるのが好ましい。
【0047】
オープン型知的財産情報データベース102及びクローズド型知的財産情報データベース101に登録される知的財産情報は、図5に例示するように、面的知的財産情報マップ300、分野・研究別情報一覧データ301、及び登録情報詳細データ302の3段構成となっている。
【0048】
面的知的財産情報マップ300は、知的財産情報を分野及び研究種別ごとにマトリックス分類し、該当するジャンルに分類された知的財産情報の件数や新しさが、一目してわかるように表示できるような構成をとる。また評価値を同時に表示できるようにしても構わない。
【0049】
図5では、分野は、分野A、分野B、分野C、分野D、および分野Eに分類され、研究種別は、基礎研究、適応研究、効能確認、周辺技術、量産研究に分類されている。
【0050】
また、図5では、各ジャンルに登録されている知的財産情報について、「●」印で現時点より3箇月以内に登録された情報があることを示し、「○」印で登録された知的財産情報が1件あることを示し、「◎」印で登録された知的財産情報が複数件あることを示している。
【0051】
さらに、分類を細分化したり、記号を増やして、各ジャンルにどのような知的財産情報が登録されたかをより詳細に表示したり、各ジャンルに登録された知的財産情報の件数を、評価値ごとにマトリックス表の各カラム内に表示したりすることも可能である。
【0052】
また、1つの知的財産情報が複数の分野に重複して分類されることもあり、その場合、次に説明する分野・研究別情報一覧データ301では、別々の分野の一覧データに同じ知的財産情報が表示される。
【0053】
企業等20は、面的知的財産情報マップ300を見て、自己(情報サービス企業の場合はクライアント)が実施する主な事業分野に該当するカラムをクリックするのみで、第1段階の情報の絞り込みを行うことができる。
【0054】
また、分類に際して、企業等20の要望や業界の動向に則したキーワード群を使用し、類似研究も各分野に含まれるようにすることで、面的知的財産情報マップ300により、大量に登録される知的財産情報を面的に整理された形で提供される。
【0055】
分野・研究別情報一覧データ301は、面的知的財産情報マップ300のマトリックス表のカラムごとに関連付けられて作成され、登録された知的財産情報の登録情報を一覧テーブルとして記録したものである。
【0056】
知的財産情報の登録情報には、登録情報番号、登録日、評価値、必要マイル数、概要(テーマ)、閲覧可否などが設定される。
【0057】
ここで、登録情報番号は、知的財産情報を管理するために付与されるユニークな番号であり、会員情報データベース103の研究者情報202a、202b、202cにも設定され、当該知的財産情報がどの研究者に属するか索引できるようにしておく。
【0058】
登録日は、知的財産情報がオープン型知的財産情報データベース102またはクローズド型知的財産情報データベース101に登録された日である。
【0059】
評価値は、コンソーシアム情報管理会社10に在籍する担当者により付与された知的財産情報の評価尺度であり、「SSS」は極めて優秀、「SS」は優秀、「S」は良を示す。
【0060】
必要マイル数は、その知的財産情報を閲覧または利用する際に保有しているマイルから差し引かれるマイル数を示している。
【0061】
概要(テーマ)は、知的財産情報の内容を要約したものであり、この内容により閲覧者はさらに詳細な情報を閲覧するかどうかを判断できる。
【0062】
閲覧可否は、登録した知的財産情報が現在閲覧可能な状態かを示すものであり、不可となっているデータは、閲覧者の情報端末には表示されないようにする。
【0063】
この他に、図5には示していないが、知的財産情報が研究報告書や論文、出願前発明情報、公開前特許出願情報、公開特許情報、研究提案書、成果有体物、ノウハウ説明書のいずれに該当するかを示すデータを含ませることが好ましい。この情報により、当該知的財産情報をオープン型知的財産情報データベース102またはクローズド型知的財産情報データベース101のいずれに記録するかを自動的に判断することも可能である。
【0064】
最後に、登録情報詳細データ302は、研究者から提出された知的財産情報自体であり、登録情報番号が付与されて記録される。
【0065】
当初は秘密状態として管理する必要のあるものとしてクローズド型知的財産情報データベース101に記録される登録情報詳細データ302は、一定期間が経過した時点で、オープン型知的財産情報データベース102に転送される。
【0066】
最終的に企業と利用契約が決定した登録情報詳細データ302は、オープン型知的財産情報データベース102またはクローズド型知的財産情報データベース101から削除され、同時に分野・研究別情報一覧データ301に設定されている登録情報も削除され、面的知的財産情報マップ300の情報は更新される。
【0067】
図示していないが、クローズド型知的財産情報データベース101には、分野・研究別情報一覧データ301と同様の分野・研究別技術ニーズ一覧データが記録される。
【0068】
(システムのシーケンス)
図6と図7を参照しながら、コンソーシアム内での、コンソーシアム情報管理会社10の知的財産情報交換支援システム100、大学等30、及び企業等20の間での処理シーケンスについて説明する。
【0069】
なお、以下の各工程において、知的財産情報交換支援システム100にアクセスする際は、常にパスワードを入力し、会員情報管理部104による認証が行われる。
【0070】
(1)知的財産情報登録工程
図6に示すように、大学等30は、在籍する研究者の保有する知的財産情報を知的財産情報交換支援システム100に送信する(S1)。知的財産情報の送信は、大学の代表者が一括して行っても良いし、各研究者が個々に自分の知的財産情報のみを送信してもよい。
【0071】
大学等30から送信された知的財産情報は、情報受付部105により受信され、一時保存メモリ106に保存される(S2)。
【0072】
次に、情報登録部107を介して、コンソーシアム情報管理会社10の担当者が、一時保存メモリ106に保存された知的財産情報の内容を精査して、どの分野のどのような研究情報であるか分類すると同時に、内容について評価値、情報の公開性(一般に公開可能か、秘密状態にすべきか)を設定し、いわゆるポートフォリオを作成入力する(S3)。
【0073】
情報登録部107は、入力されたポートフォリオに従って、大学等30から送信された知的財産情報を、オープン型知的財産情報データベース102、またはクローズド型知的財産情報データベース101に正式に登録する(S4)。
【0074】
情報登録部107は、知的財産情報を正式に登録する際に、当該知的財産情報の保有者である研究者に対して情報提供のインセンティブとしてマイルを付与する場合、会員情報管理部104を経由して、会員情報データベース103の研究者情報202a、202b、202cに設定されたマイル数に加算する。
【0075】
(2)知的財産情報閲覧工程
図6に示すように、企業等20は、知的財産情報交換支援システム100にアクセスし、情報の検索を要求すると(S5)、情報提供部108により契約レベルに応じた範囲内で知的財産情報の提供を受ける(S6、S7)。
【0076】
詳細には、情報提供部108は、会員情報管理部104を介して会員情報の契約レベルを取得し、契約レベルによって提供できる情報の範囲を絞り込み。具体的には、オープン型知的財産情報データベース102内の知的財産情報のみなのか、またはクローズド型知的財産情報データベース101内の知的財産情報も含めるのかを決定する。
【0077】
次に、情報提供部108は、提供可能な範囲について、面的知的財産情報マップ300を企業等20の情報端末に表示する。
【0078】
企業等20は、表示された面的知的財産情報マップ300から、知的財産情報の登録状況を把握し、閲覧したいカラムをクリックする。
【0079】
情報提供部108は、クリックされたカラムに関連付けられた分野・研究別情報一覧データ301を企業等20の情報端末に表示する。
【0080】
企業等20は、表示された分野・研究別情報一覧データ301から、さらに詳細情報を閲覧したい情報の登録情報番号をクリックする。
【0081】
情報提供部108は、クリックされた登録情報番号の登録情報詳細データ302を企業等20の情報端末に表示する。このとき、情報提供部108は、情報閲覧サービス利用の代価として、分野・研究別情報一覧データ301に設定されている必要マイル数を、会員情報管理部104を経由して会員情報のマイルから差し引くと同時に、研究者情報202a、202b、202cのマイルにそのマイル分を加算する。
【0082】
また、情報提供部108は、登録情報詳細データ302を提供すると、当該登録情報詳細データ302の閲覧を一定期間できないようにするため、分野・研究別情報一覧データ301の閲覧可否に「不可」と設定する。同じ手順で他の企業が次に閲覧しようとした時は、この登録情報詳細データ302の登録情報は企業等20の情報端末に表示されない。
【0083】
さらに、情報提供部108は、情報を登録した研究者に対し、登録情報へのアクセスがあった旨を、研究者情報202a、202b、202cに設定されているメールアドレス宛てにメールを送信する等して、企業等20の名称を示さずに通知する。
【0084】
(3)知的財産情報利用契約工程
企業等20は、閲覧した知的財産情報を利用したい場合、一定期間内に知的財産情報交換支援システム100を介して、「共同研究・特許活用申請」をコンソーシアム情報管理会社10へ提出する(S8)。
【0085】
コンソーシアム情報管理会社10は申請を受けた後に(S9)、速やかに企業と交渉を開始する(S10、S11)。その結果、追加情報の提供や技術指導の要請があれば研究者へ繋ぐなどの対応を行う。交渉中、当該知的財産情報は引き続き閉鎖状態となっている。
【0086】
企業からの追加情報提供の依頼や技術指導の依頼は、コンソーシアム情報管理会社10が研究者との調整により、その必要金額を調整すると共に契約書案を企業へ示すことで、双方の了承の元に技術移転を開始する。
【0087】
交渉の結果、共同研究や実施許諾などが締結されると、契約が完了した知的財産情報は、情報登録部107により、オープン型知的財産情報データベース102、またはクローズド型知的財産情報データベース101から削除されるとともに、面的知的財産情報マップ300が最新の状態に更新される。
【0088】
企業との折衝により開始された技術指導や共同研究、あるいは実施許諾契約は企業と大学等30の2者間の契約として形成され、企業から料金(契約額)の全額が研究者を擁する大学等30に納付される。
【0089】
また、コンソーシアム情報管理会社10が提供した契約書類作成や交渉サービスに対する手数料を、契約成立後に徴収する場合がある(S12)。
【0090】
(4)技術ニーズ登録工程
次に、図7に示すように、企業等20は、技術ニーズとして、研究してほしいテーマを送信する(S21)。
【0091】
企業等20から送信された技術ニーズは、情報受付部105により受信され、一時保存メモリ106に保存される(S22)。
【0092】
次に、情報登録部107を介して、コンソーシアム情報管理会社10の担当者が、一時保存メモリ106に保存された技術ニーズの内容を精査して、どの分野のどのような研究であるか分類し(S23)、情報登録部107は、入力された分類に従って、クローズド型知的財産情報データベース101に正式に登録する(S24)。
【0093】
(5)技術ニーズ閲覧工程
図7に示すように、研究者は、知的財産情報交換支援システム100にアクセスし、情報の検索を要求すると(S25)、情報提供部108により技術ニーズの提供を受ける(S26、S27)。
【0094】
詳細には、情報提供部108は、面的知的財産情報マップ300を研究者の情報端末に表示する。
【0095】
研究者は、表示された面的知的財産情報マップ300から、技術ニーズの登録状況を把握し、閲覧したいカラムをクリックする。
【0096】
情報提供部108は、クリックされたカラムに関連付けられた分野・研究別技術ニーズ一覧データを研究者の情報端末に表示する。
【0097】
研究者は、表示された分野・研究別技術ニーズ一覧データから、さらに詳細情報を閲覧したい技術ニーズの登録情報番号をクリックする。
【0098】
情報提供部108は、クリックされた登録情報番号の登録情報詳細データ302を研究者の情報端末に表示する。
【0099】
情報提供部108は、登録情報詳細データ302を提供すると、当該登録情報詳細データ302の閲覧を一定期間できないようにするため、分野・研究別技術ニーズ一覧データの閲覧可否に「不可」と設定する。同じ手順で他の大学が次に閲覧しようとした時は、この登録情報詳細データ302の登録情報は大学等30の情報端末に表示されない。
【0100】
さらに、情報提供部108は、技術ニーズを登録した企業に対し、登録情報へのアクセスがあった旨を、企業会員情報200に設定されているメールアドレス宛てにメールを送信する等して、研究者の名称を示さずに通知する。
【0101】
(6)研究受託契約工程
研究者は、閲覧した技術ニーズの研究テーマについて研究を行いたい場合、一定期間内に知的財産情報交換支援システム100を介して、「研究受託申請」をコンソーシアム情報管理会社10へ提出する(S28)。
【0102】
知的財産情報交換支援システム100は、「研究受託申請」を受けた後に(S29)、企業に対して申請大学情報を通知するとともに(S30)、研究者または大学に依頼元企業情報を通知する(S31)。交渉中、当該技術ニーズは引き続き閉鎖状態となっている。
【0103】
大学と企業の2者間で交渉の結果(S32)、共同研究が締結され、契約成立報告がされると(S33)、契約が完了した技術ニーズは、情報登録部107により、クローズド型知的財産情報データベース101から削除されるとともに、面的知的財産情報マップ300が最新の状態に更新される。
【0104】
共同研究は、企業と大学の2者間の契約として形成され、企業から料金(契約額)の全額が研究者を擁する大学に納付される。
【0105】
また、コンソーシアム情報管理会社10が提供した契約書類作成や交渉サービスに対する手数料を、契約成立後に徴収する場合がある(S34)。
【0106】
なお、大学等30は、年会費をコンソーシアム情報管理会社10へ支払うが、その額は前年度に確保された技術指導契約や共同研究契約、実施許諾契約、ロイヤリティー契約などの合計金額から算出する方法と、成果の有無に関係無く定額制とする方法から選択される。
【0107】
(その他の運用)
コンソーシアム情報管理会社10は別途、大学等30の要望により特許出願、権利確保、権利維持の代行サービス等も行う。
【0108】
また、コンソーシアム情報管理会社10は、国内の大学等30の知的財産情報を図5に示す様に情報化するが、必要に応じて株主である大学等30による株主総会の承認を得た後に、海外の企業等への情報提供も行う。
【0109】
図6と図7に示したように、企業等20と研究者との間で共同研究、技術(ノウハウ)指導、特許実施許諾、成果有体物移転などの有償型契約が締結される際に、一定割合の手数料(サービス料)を企業等、大学等30から得る。その代価を原資に、研究者により登録された出願前の発明について特許出願(海外を含め)サービスも行う。それ以外に、徴収された代価は、コンソーシアム情報管理会社10の人件費処理、プロジェクト経費として使用される。
【符号の説明】
【0110】
10 コンソーシアム情報管理会社
20 契約企業群(企業等)
30 提携大学・研究機関群(大学等)
40 インターネット等の通信網
100 知的財産情報交換支援システム
101 クローズド型知的財産情報データベース
102 オープン型知的財産情報データベース
103 会員情報データベース
104 会員情報管理部
105 情報受付部
106 一時保存メモリ
107 情報登録部
108 情報提供部
200 企業会員情報
201 大学等会員情報
202a、202b、202c 研究者情報
300 面的知的財産情報マップ
301 分野・研究別情報一覧データ
302 登録情報詳細データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンソーシアムを形成する会員である提携大学・研究機関群と契約企業群のそれぞれに設置された情報端末と、通信網により接続されたコンソーシアム情報管理会社に設置された知的財産情報交換支援システムであって、
前記会員の会員情報を保存する会員情報データベースと、
前記会員の前記情報端末から送信される知的財産情報を一時的に保存する一時保存メモリと、
前記知的財産情報のうち、前記会員の全てに公開する情報を記録するオープン型知的財産情報データベースと、
前記知的財産情報のうち、前記会員の特定会員にのみ公開する情報を記録するクローズド型知的財産情報データベース
とを具備し、
前記会員情報データベースに接続され、前記会員情報の保存と更新を行う会員情報管理部と、
前記一時保存メモリに接続され、前記会員の前記情報端末から送信される前記知的財産情報を受信した前記会員情報管理部により起動され、前記知的財産情報を前記一時保存メモリに保存する情報受付部と、
前記一時保存メモリと、前記オープン型知的財産情報データベースと、前記クローズド型知的財産情報データベースとに接続され、前記一時保存メモリに保存された前記知的財産情報に分類・評価データが付与されると、当該分類・評価データとともに前記知的財産情報を前記オープン型知的財産情報データベースまたは前記クローズド型知的財産情報データベースに記録する情報登録部と、
前記オープン型知的財産情報データベースと前記クローズド型知的財産情報データベースに接続され、前記契約企業群の前記情報端末から情報提供要求を受信した前記会員情報管理部により起動され、前記契約企業群の前記会員情報に設定された契約レベルにより許容された範囲内で、前記オープン型知的財産情報データベース及び前記クローズド型知的財産情報データベースに記録された前記知的財産情報を前記情報端末に送信する情報提供部
とを含むことを特徴とする知的財産情報交換支援システム。
【請求項2】
前記情報登録部は、前記知的財産情報を記録する際に、当該知的財産情報を保有する前記提携大学・研究機関群の研究者に、前記会員情報に含まれる当該研究者の研究者情報にマイル数を設定することで、マイルを付与し、
前記情報提供部は、前記知的財産情報を送信する際に、当該知的財産情報の送信先である企業の前記会員情報に設定されたマイル数から所定のマイル数を差し引き、当該知的財産情報を保有する前記研究者の前記研究者情報に設定されたマイル数に前記所定のマイル数を加算する
ことを特徴とする請求項1に記載の知的財産情報交換支援システム。
【請求項3】
前記情報提供部は、前記知的財産情報を面的知的財産情報マップにより、前記契約企業群の前記情報端末に表示することを特徴とする請求項1または2に記載の知的財産情報交換支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−232892(P2011−232892A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101426(P2010−101426)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)