説明

短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプおよび照明装置

【課題】
折り返し湾曲部間近傍における板面輝度分布の均整度が良好になるとともに、製造工数が削減され、しかも従来の1箇所加熱の製造設備を流用することができるので、安価な短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】
上記蛍光ランプFLは、少なくとも1個の折り返し湾曲部1aおよびその両端から平行に直線状に延在する一対の直管部1bを備え、折り返し湾曲部は一対の直管部間のピッチの1/2より大きい曲げRの凸状湾曲部1a1ならびに凸状湾曲部および一対の直管部の間に位置して上記一対の直管部間のピッチの1/2より小さい曲げRを有する一対の肩部1a2を有しているガラスバルブ1と、ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体層と、ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と、ガラスバルブの内部に放電媒体の放電を生起する電極とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り返し湾曲部を有する短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、液晶用のバックライトは、低消費電力およびコスト削減を目的として、短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプを用いた背面照射形が主流になっている。従来、一般に用いられている短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプは、折り返し湾曲部が一対の直管部間におけるピッチの1/2を曲げRとする半円形状をなしている(例えば、特許文献1参照。)。この種の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプは、折り返し湾曲部全体を1箇所加熱で湾曲させている。したがって、折り返し湾曲部を形成する際の曲げ工程が単一となり、製造設備も比較的簡単である。そのため、短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプを安価に得ることができる。
【0003】
これに対して、折り返し湾曲部がほぼ矩形状をなしている短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプが提案されている(特許文献2参照。)。この短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプは、折り返し湾曲部が直線部を中心としてその両端部に曲げRの小さい直角湾曲部が形成されることによって構成されている。この短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプにおいて、折り返し湾曲部を形成するには、折り返し湾曲部の直線部となる部位の中央を固定チャックで把持し、一対の直管部となる部位をローラからなる従動チャックで移動可能に把持し、曲げRの小さい直角湾曲部となる2箇所の部位の周面に一対の可とう性のヒータを配設して2箇所をそれぞれ別個に加熱するように製造設備を構成する。そして、直管ランプの上記2箇所を2個のヒータで加熱軟化させ、従動チャックを3次元方向に移動させながら折り返し湾曲部を形成する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−036703号公報
【特許文献2】特開2005−317522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されている1箇所加熱の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプは、これを背面照射形のバックライトに用いると、隣接する一対の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプの折り返し湾曲部間に対向する板面に比較的大きな非発光部が形成されてしまう。そのために、折り返し湾曲部間近傍の板面輝度分布の均整度が低下してしまうという問題がある。したがって、板面輝度分布の均整度を向上させるには、折り返し湾曲部近傍の発光を利用しないようにバックライトを構成する必要があり、その結果省電力にならないとともに、板面の有効面積の割りにバックライトが大型化してしまう。
【0006】
他方、特許文献2に開示されている2箇所加熱の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプは、隣接する一対の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプの折り返し湾曲部間に対向する板面における輝度分布の均整度が低下する問題はかなり改善されるものの、2箇所加熱のために製造工数が増加するという問題がある。また、製造設備が特殊になるために、従来の1箇所加熱の製造設備を流用することができないという問題もある。したがって、得られる短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプが高価になってしまう。
【0007】
本発明は、折り返し湾曲部間近傍における板面輝度分布の均整度が良好になるとともに、製造工数が削減され、しかも従来の1箇所加熱の製造設備を流用することができるので、安価な短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプは、少なくとも1個の折り返し湾曲部および折り返し湾曲部の両端から平行に直線状に延在する一対の直管部を備え、折り返し湾曲部は上記一対の直管部間のピッチの1/2より大きい曲げRの凸状湾曲部ならびに凸状湾曲部および一対の直管部の間に位置して上記一対の直管部間のピッチの1/2より小さい曲げRを有する一対の肩部を有しているガラスバルブと;ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体層と;ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;ガラスバルブの内部に放電媒体の放電を生起する電極と;を具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隣接する折り返し湾曲部の形状を改善したことにより、折り返し湾曲部間近傍における板面輝度分布の均整度が良好になるとともに、1箇所加熱で折り返し湾曲部を形成できるために製造工数が削減できて、しかも従来の1箇所加熱の製造設備を流用することができるので、安価な短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
図1および図2は、本発明の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプを実施するための一形態を示し、図1は折り返し湾曲部を示す要部正面図、図2は展開状態における内部構造を示す一部切欠拡大断面図である。
【0012】
図2に示すように、本形態においてピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFLは、主要な構成要素としてガラスバルブ1、蛍光体層2、放電媒体および電極3を具備している。また、その他の構成要素として保護膜4、および電流導入導体5を具備している。
【0013】
ガラスバルブ1は、少なくとも1個の折り返し湾曲部1aおよび一対の直管部1b、1bを備えているのであるが、それらの内部が互いに連通していて、1本の放電路を形成する。
【0014】
図1に示すように、折り返し湾曲部1aは、ガラスバルブ1の一対の直管部1b、1bの間に形成されて放電路が折り返す部位を構成している。そして、本発明において、凸状湾曲部1a1および一対の肩部1a2、1a2を有している。
【0015】
凸状湾曲部1a1は、ガラスバルブ1が外側へ緩やかに突出しながら折り返す部分であり、折り返し湾曲部1aの中央に位置していて、折り返し湾曲部1aの主要部を構成している。
【0016】
一対の肩部1a2、1a2は、凸状湾曲部1a1と折り返し湾曲部1aに隣接する一対の直管部1b、1bとの間を連続的な曲面で連絡する部分であり、したがって凸状湾曲部1a1の両端に位置している。
【0017】
また、ガラスバルブ1は、所望により折り返し湾曲部1aを複数個備えていることを許容する。この場合、直管部1bは、折り返し湾曲部の数より1個多く備えていればよい。例えば、ガラスバルブ1が2個の折り返し湾曲部1aと3個の直管部1bを備えた構造や3個の折り返し湾曲部1aと4個の直管部1bを備えた構造などであってもよい。
【0018】
さらに、ガラスバルブ1の内径、外径、全長およびガラス材質などは、本発明において特段限定されない。しかし、本発明は、バックライトの薄形化ために、ガラスバルブ1の内径が2mm以下、例えば1mm程度のガラスバルブ1を用いる場合に好適である。また、ガラス材質としては、例えば半硬質ガラス、硬質ガラスおよび軟質ガラスなどを選択的に採用することができる。さらに、ガラスバルブの全長は、照明装置の要求に応じて任意で多様な長さに設定することができる。
【0019】
図2に示すように、蛍光体層2は、放電により放射された紫外線により励起されて主として可視光を発光させる手段であり、ガラスバルブ1の内面に直接接触して形成してもよいし、後述する保護膜4や反射膜などを介して間接的に形成することもできる。使用する蛍光体は、本発明において特段限定されないが、3波長発光形蛍光体が好適である。また、蛍光体層は、ガラスバルブ1の全周にわたり形成してもよいし、所望によりアパーチャの部分を残して形成するのであってもよい。
【0020】
放電媒体は、その放電により紫外線が放射する媒体であり、既知の構成、例えば水銀および始動ガスからなる構成や希ガスを主体とする構成などのいずれであってもよい。また、始動ガスとしては、アルゴンおよびネオンの混合ガスやアルゴン、ネオンおよびヘリウムの混合ガスなどを用いることもできる。混合ガスを用いれば、ペニング効果による始動性の改善も得られる。
【0021】
水銀を気密容器内に封入するには、純水銀を直接封入してもよいし、水銀合金すなわちアマルガムの形で封入してもよい。所定のアマルガム例えばチタン・水銀アマルガムにして封入する場合に、電極の中に中空部を形成して、その中空部内に所定のアマルガムを収納した状態で気密容器に導入することもできる。
【0022】
一方、希ガスを主体とする構成の場合、キセノンなどを用いることができる。
【0023】
図2に示すように、電極3は、ガラスバルブの内部に放電媒体の放電を生起させるための手段であり、内部電極配置、外部電極配置および内外電極配置のいずれであってもよい。内部電極配置は、ガラスバルブ1の内部にその一対が封装される電極配置であり、電極は冷陰極および熱陰極のいずれであってもよい。しかし、蛍光ランプの細管化のためには、冷陰極が好適である。
【0024】
外部電極配置および内外電極配置は、一対の電極の少なくとも一方がガラスバルブ1の外面にほぼ密着して配設され、ガラスバルブの壁面を誘電体とする誘電体バリア放電を行う電極配置である。他方の電極もガラスバルブ1の外面に配設される場合が外部電極である。他方の電極がガラスバルブ1の内部に封装される場合が内外電極配置である。
【0025】
保護膜4は、ガラスバルブ1の内面と蛍光体層2との間に形成されて、放電媒体に水銀が用いられる場合に、水銀によってガラスバルブ1が変色したりするのを抑制する。そして、アルミナ、例えばγアルミナやシリカなどの金属酸化物の微粒子膜からなる。
【0026】
電流導入導体5は、電極3から導出されて当該電極3を点灯回路に接続する。
【0027】
本発明において、ガラスバルブ1を所定の形状に成形するプロセスは特段限定されないが、好ましくは以下の手順による。
【0028】
すなわち、直管状に展開されたガラスバルブ1を準備して、その内面側に蛍光体層2を形成し、ガラスバルブ1の両端に一対の内部電極3、3、例えば冷陰極を封着し、ガラスバルブ1の内部を排気してから放電媒体を封入して直管状の蛍光ランプFLを得る。
【0029】
次に、直管状の蛍光ランプFLの折り返し湾曲部1aの形成予定部位に1個のヒータを配設して一箇所加熱を行う。そして、ガラスバルブ1の加熱部が軟化したら凸状湾曲部1a1および一対の肩部1a2、1a2が所定の形状になるように成形する。
【0030】
本発明において、短ピッチU字状部分とは、折り返し湾曲部1aに隣接する一対の直管部1b、1b間のピッチPが直管部の長さ寸法より小さい値のU字状部分をいう。ピッチPは、好適にはガラスバルブ1の外径の5〜12倍、より好適には7〜10倍の範囲である。
【0031】
また、本発明において、折り返し湾曲部1aの凸状湾曲部1a1の曲げアールR1は、数式:P/2<R1を満足する範囲である。しかし、曲げアールR1の値が無限大になると、凸状湾曲部1a1の部分が最早凸状でなくて直線状になり、このような場合には1箇所の加熱で折り返し湾曲部1aを形成できなくなるので、不可である。
【0032】
さらに、本発明において、折り返し湾曲部1aにおける一対の肩部1a2、1a2は、凸状湾曲部1a1と折り返し湾曲部1aに隣接する一対の直管部1b、1bとの間に位置して両者間を連続した曲面で結ぶ部分である。そして、肩部1a2の部分の曲げアールR2は、数式:R2<P/2を満足する範囲である。
【0033】
なお、上記曲げアールR1、R2は、そのいずれも本来はガラスバルブ1の中心軸の位置で計測されるべきであるが、便宜上折り返し湾曲部1aの湾曲の内周面における曲げアールで代替することが許容される。
【0034】
図3は、本発明の照明装置における第1の形態としてのバックライトを、その前面拡散板を除去して示す正面図および要部拡大正面図である。
【0035】
図において、バックライトすなわち照明装置BLは、照明装置本体11、例えばケースの内部に複数の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFLを整列配置して構成されている。そして、蛍光ランプFLの折り返し湾曲部1aの部分も図示を省略している全面拡散板の背面に位置している。すなわち、照明装置本体11は、照明装置BLから短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFLを除いた残余の部分であり、蛍光ランプFLの点灯回路(図示しない。)、例えばインバータを主体とする高周波点灯回路を含んでいる。
【0036】
なお、点灯回路は、照明装置本体11から離間した位置に配置されていてもよい。また、照明装置は、短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFLの発光を利用する全ての装置を含む概念であり、したがってバックライトに限定されない。例えば、エレベータ内の照明装置、パソコンライトスタンドなどの一般照明用の照明装置や標識灯、表示灯などが含まれる。
【0037】
さらに、図3は、短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFLが隣接して配置されている状態において、隣接する一対の折り返し湾曲部1a、1a近傍における板面輝度分布の均整度に与える影響を説明している。すなわち、図は、複数の短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプFLを直管部1bのピッチが折り返し湾曲部1aに接続する一対の直管部1b、1bならびに隣接する短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプFL、Flの間のピッチがともに等しくなるように配列された照明装置BLとしてのバックライトを示している。そして、本発明の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプFL、FLが隣接する場合には、それぞれの折り返し湾曲部1a、1aの間に形成される隙間(点線の三角形状部T)が小さくなるので、照明装置BLとしての板面輝度分布に与える影響が小さくなる。換言すれば、板面輝度分布の均整度が良好になる。
【0038】
図4は、図3に示すバックライトにおける隣接する一対の折り返し湾曲部による板面輝度分布の影響の程度を比較例のそれと対比して示すグラフである。図において、横軸は測定ポイントを、縦軸は図中の構造略図に矢印で示すように複数の折り返し湾曲部に沿って輝度計を走査して得られた板面輝度を、それぞれ示す。また、図中の曲線は、実線(B)が本発明、点線(A)が比較例、の輝度分布である。なお、比較例は、折り返し湾曲部が特許文献1に示すような従来既知の形状を有する短ピッチU字形冷陰極蛍光ランプである。
【0039】
以上を要約すれば、本発明においては、図3の三角形状部Tの面積が小さくなるために、板面輝度分布の均整度が図4に示すように比較例のそれに比較して明らかに良好である。
【0040】
図5は、本発明の照明装置における第2の形態としてのバックライトを、その前面拡散板を除去して示す正面図である。なお、図において図3と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0041】
本形態は、第1の形態のバックライトに比較して隣接する一対の直管分1a、1a間のピッチが大きくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプを実施するための一形態における折り返し湾曲部を示す要部正面図
【図2】同じく展開状態における内部構造を示す一部切欠拡大断面図
【図3】本発明の照明装置における第1の形態としてのバックライトを、その前面拡散板を除去して示す正面図および要部拡大正面図
【図4】図3に示すバックライトにおける隣接する一対の折り返し湾曲部による板面輝度分布の影響の程度を比較例のそれと対比して示すグラフ
【図5】本発明の照明装置における第2の形態としてのバックライトを、その前面拡散板を除去して示す正面図
【符号の説明】
【0043】
1…ガラスバルブ、1a…折り返し湾曲部、1b…直管部、11…照明装置本体、T…三角形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の折り返し湾曲部および折り返し湾曲部の両端から平行に直線状に延在する一対の直管部を備え、折り返し湾曲部は上記一対の直管部間のピッチの1/2より大きい曲げRの凸状湾曲部ならびに凸状湾曲部および一対の直管部の間に位置して上記一対の直管部間のピッチの1/2より小さい曲げRを有する一対の肩部を有しているガラスバルブと;
ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体層と;
ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;
ガラスバルブの内部に放電媒体の放電を生起する電極と;
を具備していることを特徴とする短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプ。
【請求項2】
照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1記載の短ピッチU字状部分を備えた蛍光ランプと;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−47318(P2008−47318A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219355(P2006−219355)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】