説明

短光パルスの光ファイバ伝送装置および光ファイバ伝送方法

【課題】高ピークパワーの短光パルスを、光学装置の所望の位置で高ピークパワーの短光パルスが得られるように効率良く伝送でき、且つ、高い配置の自由度を有する短光パルスの光ファイバ伝送装置および光ファイバ伝送方法を提供する。
【解決手段】短光パルスの光ファイバ伝送装置は、高ピークパワーを持つアップチャープした短光パルスを出射するチャープパルス源10と、チャープパルス源10から出射された、短光パルスを伝送する光導波手段20と、光導波手段20から出射される短光パルスに負の群速度分散を与える負群速度分散発生手段30と、負群速度分散発生手段30から出射される短光パルスを所望の距離に渡って伝送する光ファイバ40とを有し、チャープパルス源10から出射した短光パルスを、光ファイバ40から実質的に高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短光パルスの光ファイバ伝送装置および光ファイバ伝送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生物学、医学、医療、加工、計測、通信などの様々な分野において、高ピークパワーを持ち、複数の波長成分を含むピコ秒以下の短光パルスが利用されるようになってきている。特に、生物学分野や医学分野では、多光子蛍光顕微鏡、高調波顕微鏡、コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering:CARS)顕微鏡などの非線形光学効果を利用した顕微鏡や、光応力波を用いた遺伝子導入装置、拡散光トモグラフィ装置などに、チタン:サファイアレーザやファイバレーザなどの、短光パルスを発生する光パルス源が活発に利用されている。
【0003】
これらの光パルス源から出射される高ピークパワーの短光パルスは、反射ミラーや光ファイバなどを用いて、上述の顕微鏡などの光学装置まで伝送されるが、操作性や安定性の観点から、短光パルスの伝送には、光ファイバの利用が強く望まれる。
【0004】
ところが、光ファイバを用いると、高ピークパワーの短光パルスは、光ファイバ中を伝搬する過程において、光ファイバ中の群速度分散(Group-velocity dispersion:GVD)効果、自己位相変調(Self-phase modulation:SPM)効果などの非線形光学効果、およびその相互作用の影響を受けて、時間幅が広がることが知られている。この光パルス時間幅の広がりは、多くの応用で問題となる。
【0005】
たとえば、加工分野においては、金属の切断などでは金属の熱変性が同時に起きるため、微細な加工においてシャープなエッジを形成させることができない。また、通信分野においては、光パルスの時間幅が広がることにより、通信速度の低下や符号誤り率が上がってしまう。さらに、多光子蛍光顕微鏡などの非線形光学顕微鏡では、高いピークパワーの超短光パルスが要求されるが、光ファイバ中でパルス時間幅が広がると、それに伴って光パルスのピークパワーが低下して、顕微鏡画像の明度が低下してしまう。
【0006】
多光子蛍光顕微鏡では、多光子蛍光強度をI、光パルスのピークパワーをPとすると、IおよびPは、それぞれ下記の(1)および(2)式で表される。
【0007】
【数1】

【0008】
上記(1)および(2)において、nは自然数で、二光子蛍光、三光子蛍光、そしてk光子蛍光の場合には、それぞれn=2,3,そしてkになる。また、CおよびCは定数、Tは光パルスのパルス時間幅、frepは光パルスの繰り返し周波数、Pavは光パルスの平均パワーを示す。(2)式を用いて、(1)式を書き直すと、多光子蛍光強度Iは、下記の(3)式のようになる。
【0009】
【数2】

【0010】
上記(3)式から、光パルス時間幅Tが広くなると、多光子蛍光強度Iは低下し、光パルス時間幅Tが狭くなる程、多光子蛍光強度Iは高くなることがわかる。
【0011】
このような光パルス時間幅の広がりを防止するようにした短光パルスの光ファイバ伝送装置として、例えば、図11に示すように、光導波手段120と光ファイバ140との間に、回折格子対やプリズム対などの負群速度分散発生手段130を配置し、この負群速度分散発生手段130により、光導波手段120と光ファイバ140で光パルスが受けるGVD効果とSPM効果の相互作用を補償するようにして短光パルスを伝送するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0012】
また、光ファイバ中でのSPM効果などの非線形光学効果を回避するために、あらかじめ短光パルスに大きなGVD効果を与えて、そのピークパワーを低下させて光ファイバを用いて伝送するものも知られている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−268589号公報
【特許文献2】米国特許第6249630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の特許文献1に開示の光ファイバ伝送装置によると、光ファイバ伝送装置の後段に配置される顕微鏡などの光学装置は正常分散を持つため、光ファイバ伝送装置からの出射光パルスをダウンチャープ(レッドシフトチャープ)した短光パルスとすることで、光学装置内の所望の位置で高ピークパワーを有する所望の時間幅の短光パルスを得られる。
【0015】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところによると、この光ファイバ伝送装置にピークパワーの高い短光パルスが入射した場合、3次以上の高次の分散によりパルス波形に歪が生じ、光学装置内でのピークパワーが低下することが判明した。
【0016】
図12は、ピークパワーの高い短光パルスが入射したと想定した場合の図11の短光パルスの光ファイバ伝送装置の各部((A)〜(E))における光パルスの時間波形(上段)およびスペクトル波形(下段)を示す図である。上段の時間波形上には、破線によりチャープを示している。図12に示すように、光導波手段120にピークパワーの高い短光パルスが入射すると(図12(A))、光導波路内での正のGVD効果とSPM効果との相互作用により短光パルスのスペクトル幅が広がったアップチャープ(ブルーシフトチャープ)パルスとなる(図12(B))。一般に、ピークパワーが高い短光パルスほどSPM効果を大きく受け、短光パルスのスペクトル幅はより広がる。
【0017】
スペクトル幅が広がった光パルスが、回折格子対などの負群速度分散発生手段130に入射すると、負群速度分散発生手段130の負のGVD効果によって、ダウンチャープパルスとなる(図12(C))。一般に、光パルスが回折格子対などの負群速度分散発生手段から受けるGVD効果はスペクトル幅が広いほど大きく、スペクトル幅が広いと、3次以上の高次の分散による影響が無視できなくなる。
【0018】
負群速度分散発生手段130を出射したダウンチャープパルス(図12(C))は、3次以上の高次の分散による波形の歪がない場合は、光ファイバ140を透過させることにより、光ファイバ140の正のGVD効果とSPM効果との相互作用によってパルス時間幅およびスペクトル幅が狭いダウンチャープパルスとなるが、高次の分散による無視できない大きさの波形の歪みを含む場合は、時間波形にリンギング等の複雑な歪が生じる(図12(D))。
【0019】
このため、光学装置150に入射し、光学装置150内でGVD効果を受けた後も、リンギング等の波形の歪により、高次分散が含まれない場合と比較して、高いピークパワーを得ることができない(図12(E))。この高次の分散による波形歪みを補償することは、その補償方法の複雑さ、コスト上昇などの面から難しい。
【0020】
また、上記の特許文献2に開示の光ファイバ伝送装置によると、光ファイバ中でのSPM効果がほとんど無視できるまで、あらかじめ短光パルスに大きなGVD効果を与え、短光パルスのピークパワーを低下させておき、そのピークパワーが低下した光パルスを光ファイバに入射させる。
【0021】
しかしながら、光ファイバ中でのSPM効果がほとんど無視できる程度までピークパワーを落とすには、非常に大きなGVD効果を短光パルスに与えなければならず、GVD効果を与える光学素子のサイズが大きくなってしまうなど物理的な配置の面で不都合がある。更に、該GVD効果を与える光学素子を光ファイバの前段・後段にそれぞれ配置しなければならず、光ファイバの長所である配置の自由度が著しく損なわれてしまう。
【0022】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、高ピークパワーの短光パルスを、高次の分散による波形歪みの影響を低減し、この短光パルスを利用する光学装置の所望の位置で高ピークパワーの短光パルスが得られるように効率良く伝送でき、且つ、高い配置の自由度を有する短光パルスの光ファイバ伝送装置および光ファイバ伝送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成する第1の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置の発明は、
高ピークパワーを持つアップチャープした短光パルスを出射するチャープパルス源と、
該チャープパルス源から出射された、前記短光パルスを伝送する光導波手段と、
該光導波手段から出射される短光パルスに負の群速度分散を与える負群速度分散発生手段と、
該負群速度分散発生手段から出射される短光パルスを所望の距離に渡って伝送する光ファイバと、
を有し、
前記チャープパルス源から出射した前記短光パルスを、前記光ファイバから実質的に高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させるように構成したことを特徴とするものである。
【0024】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記チャープパルス源は、超短光パルスを出射する超短光パルス源と、該超短光パルス源から出射された超短光パルスに正の群速度分散を与え、該超短光パルスよりもピークパワーの小さい前記アップチャープした短光パルスとして出射させる正群速度分散発生手段とを備える、ことを特徴とするものである。
【0025】
第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記光導波手段は、正の群速度分散値を有する、ことを特徴とするものである。
【0026】
第4の観点に係る発明は、第1〜第3の観点のいずれかに係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記光ファイバは、正の群速度分散値を有する、ことを特徴とするものである。
【0027】
第5の観点に係る発明は、第1〜第4の観点のいずれかに係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記光ファイバの後段に、該光ファイバから出射される短光パルスに正の群速度分散を与えて、該短光パルスよりも瞬時周波数変化の緩やかなダウンチャープパルスとして出射させる正群速度分散付加手段を設けた、ことを特徴とするものである。
【0028】
第6の観点に係る発明は、第1の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記負群速度分散発生手段は、負の群速度分散量を調整する負群速度分散量調整機構を有する、ことを特徴とするものである。
【0029】
第7の観点に係る発明は、第2の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記正群速度分散発生手段は、正の群速度分散量を調整する正群速度分散量調整機構を有する、ことを特徴とするものである。
【0030】
第8の観点に係る発明は、第5の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置において、
前記正群速度分散付加手段は、正の群速度分散量を調整する正群速度分散付加量調整機構を有する、ことを特徴とするものである。
【0031】
上記目的を達成する第9の観点に係る短光パルスの光ファイバ伝送方法の発明は、
高ピークパワーを持つアップチャープした短光パルスを光導波手段に入射させ、
該短光パルスを、光導波手段を用いて伝送し、
該光導波手段から出射される前記短光パルスに、負群速度分散発生手段を用いて負の群速度分散を与え、
該負群速度分散発生手段から出射される短光パルスを、光ファイバを用いて所望の距離に渡って伝送し、
前記光ファイバから、実質的に高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、チャープパルス源から出射したアップチャープした短光パルスを、光導波手段、負群速度分散発生手段を経て、光ファイバから実質的に高次分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させるように構成したので、高ピークパワーの短光パルスを、高次の分散による波形歪みの影響を低減し、この短光パルスを利用する光学装置の所望の位置で高ピークパワーの短光パルスが得られるように効率良く伝送でき、且つ、高い配置の自由度を有する短光パルスの光ファイバ伝送装置および光ファイバ伝送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の各部における光パルスの時間波形(上段)およびスペクトル波形(下段)を示す図である。
【図3】図1の短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの具体的構成例を示す図である。
【図4】図3の光学システムにおけるガラスロッドのGVD量に対する顕微鏡標本面での2光子蛍光強度を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの概略構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の正群速度分散付加手段の具体例を説明する図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。
【図10】第5実施形態に係る超短光パルス源の具体例を示す図である。
【図11】従来技術に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの概略構成を示すブロック図である。
【図12】ピークパワーの高い短光パルスが入射したと想定した場合の図11の各部における光パルスの時間波形(上段)およびスペクトル波形(下段)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態を示すもので、図1は短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの概略構成を示すブロック図、図2は、図1の(A)〜(E)の各部における光パルスの時間波形(上段)およびスペクトル波形(下段)を示す図である。なお、図2の上段の時間波形上の破線はチャープを示している。
【0036】
本実施形態に係る光学システムは、チャープパルス源10と、光導波手段20と、負群速度分散発生手段30と、光ファイバ40と、短光パルスを利用する正のGVDを有する光学装置50とを有している。
【0037】
チャープパルス源10は、超短光パルス源11と正群速度分散発生手段60とから構成される。超短光パルス源11としては、高ピークパワーの変換限界(TL)に近い超短光パルスを射出する、チタン:サファイアレーザ、モード同期希土類添加光ファイバレーザ、モード同期半導体レーザ、あるいは利得スイッチ半導体レーザ等の光源を用いる。さらに、光増幅器を組み合わせて構成して、例えば、100ピコ秒未満のパルス幅を持つ超短光パルスを発生させる。正群速度発生手段60は、例えば、正の群速度分散(GVD)を有するガラスロッドなどの光透過基板、レンズ、音響光学変調素子、電気光学変調素子、回折格子、プリズムを含んで構成される。
【0038】
図2の(A)に示す、超短光パルス源11からの高ピークパワーの超短光パルスは、正群速度発生手段60を通過することによって、図2(B)に示すようにパルスの時間幅が広がるとともにピークパワーが低下したアップチャープした短光パルスとして、チャープパルス源10から出射される。
【0039】
光導波手段20は、例えば、光パルスの波長において正のGVD値を有する単一モード光ファイバ、多モード光ファイバ、分散補償ファイバ、フォトニック結晶ファイバ(Photonic crystal fiber:PCF)、増幅光ファイバ、導波路型半導体光増幅器、平面光導波路、屈折率分布型レンズのいずれか一つを含んで構成される。
【0040】
図2(B)に示す光チャープパルス源10からのアップチャープした短光パルスは、この光導波手段20を透過することにより、光導波手段20の正のGVD効果とSPM効果との相互作用によって、図2(C)に示すように、パルス時間幅およびスペクトル幅がそれぞれ広がり、ピークパワーがさらに低下し、且つ、瞬時周波数変化がより急なアップチャープパルスとなる。ここで、光導波手段20に入射するアップチャープした短光パルスは、変換限界(TL)に近いパルスに比べピークパワーが低いので、光導波手段20から出射されるアップチャープパルスは、TLパルスが入射した場合と比べ、非線形効果によるスペクトル幅の広がりが抑えられる。
【0041】
光導波手段20から出射されるアップチャープの光パルスは、次に、負群速度分散発生手段30へ入射する。負群速度分散発生手段30は、例えば、光パルスの波長において負のGVD量を与える、一対の回折格子、一対のプリズム、チャープド・ファイバ・ブラッグ・グレーティング(Chirped fiber Bragg grating:CFBG)、GT(Gires-Tournois)干渉計、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)型分散補償器、アレイ導波路格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)、空間液晶光変調器、中空光ファイバ、フォトニック液晶のいずれか一つを含んで構成される。
【0042】
光導波手段20からのアップチャープパルスは、この負群速度分散発生手段30を透過することにより、負群速度分散発生手段30の負のGVD効果によって、図2(D)に示すように、ダウンチャープパルスとなる。ここで、負群速度分散発生手段30に入射するアップチャープパルスのスペクトル幅が狭く抑えられているので、3次以上の高次の分散による影響は無視できる程度に抑えられる。なお、この負群速度分散発生手段30により光パルスに与えられる負のGVD量は、光学装置50内の所望の地点において、光パルスが十分に再圧縮されるように、調整される。
【0043】
負群速度分散発生手段30から出射されるダウンチャープの光パルスは、次に、光ファイバ40へ入射する。光ファイバ40は、光パルスを所望の距離に渡って伝送するもので、例えば、光パルスの波長において正のGVD値を有する、単一モード光ファイバ、多モード光ファイバ、分散補償ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、増幅光ファイバのいずれか一つを用いて構成する。ここで、光ファイバ40に入射する光パワーは、種々の光損失を受けているため、光導波手段20に入射する光パワーよりも、通常は低くなっている。そのため、光ファイバ40のGVD値に対する非線形光学定数の比は、光導波手段20のそれと同じか、それよりも大きな値とするのが好ましい場合が多い。
【0044】
負GVD発生手段30からのダウンチャープパルスは、この光ファイバ40を透過させることにより、光ファイバ40の正のGVD効果とSPM効果との相互作用によって、図2(E)に示すように、パルス時間幅およびスペクトル幅が、図2(D)に示す入射パルスにおけるよりもそれぞれ狭くなり、ピークパワーが高くチャープの少ないダウンチャープパルスとなる。すなわち、光ファイバ40からは、負群速度分散発生手段30から入射したダウンチャープパルスよりも、瞬時周波数変化が緩やかなダウンチャープパルスを出射する。また、図2(D)のダウンチャープパルスは、3次以上の高次の分散による影響を実質的に受けていないので、図2(E)のダウンチャープパルスには、リンギング等の波形の歪が生じないか極めて小さな歪みのみが生じる。なお、高次の分散による影響を実質的に受けていないとは、短光パルスの時間幅を圧縮した際に、短光パルスの時間波形に高次の分散の影響によるリンギング等の極大・極小値が現れないような状態、あるいは、高次分散による後段の光学装置に対する影響が無視できる程度である状態を意味する。
【0045】
光ファイバ40から出射される光パルスは、最後に、光学装置50へ入射する。光学装置50は、例えば、生物標本観察用のレーザ走査型顕微鏡(Laser-scanning microscope:LSM)や内視鏡等である。
【0046】
これにより、光ファイバ40からのダウンチャープパルスは、光学装置50の光学系によるGVD効果によって、図2(F)に示すように、スペクトル幅は殆ど変わらず、光パルス時間幅がさらに狭くなり、所望の位置である、例えば、生物標本上において、超短光パルス源11から出射された超短光パルスと同程度かそれ以上に時間幅が圧縮され、ピークパワーも高くなる。また、その際、3次以上の高次の分散によるリンギング等の波形の歪みも実質的に生じない。したがって、生物標本の深い部位を、充分な明度で観察することが可能となる。
【0047】
図3は、図1の短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムを顕微鏡に適用した場合の具体的構成例を示す図である。この光学システムでは、超短光パルス源11として、発振波長約800nm、パルス幅約100fs(フェムト秒)、繰り返し周波数80MHz、スペクトル幅約9.4nm、平均光出力約2Wの超短光パルスを発生する、チタン:サファイアモード同期レーザ12を用いる。
【0048】
また、正群速度分散発生手段60は、長さ60mmの硝材(SF10)より形成された、GVD値約1.55×10−4psmm−1、GVD量約0.01psのガラスロッド61を用いる。ここで、ガラスロッド61として適切なGVD量を有するものを用いることによって、顕微鏡標本上での短光パルスのピークパワーを最大にすることができる。
【0049】
図4は、図3の光学システムにおけるガラスロッド61のGVD量に対する顕微鏡標本面での2光子蛍光強度を示す図であり、横軸にガラスロッド61のGVD量、縦軸に2光子蛍光強度をとっている。この図によれば、GVD量が0.01psの場合に、2光子蛍光強度が最大となる。ガラスロッド61のGVD量は、例えば、ガラスロッドの長さを変えることによって調整することができる。
【0050】
また、光導波手段20は、波長800nm帯で、36pskm−1程度のGVD値を有し、非線形光学定数が約1.7W−1km−1、長さ1mのラージモードエリアフォトニック結晶ファイバ(LMA−PCF)21より構成される。
【0051】
負群速度分散発生手段30は、ミラー31a、回折格子31b,31c、矩形ミラー31dおよびミラー31eを有して構成され、LMA−PCF21から出射される短光パルスを、ミラー31aで偏向させ、回折格子31bおよび回折格子31cで順次回折させた後、矩形ミラー31dで光路を切り替えて、回折格子31c、回折格子31bおよびミラー31eを経て出射させるように構成する。これによって、−0.16ps程度のGVD量および0.00033ps程度のGVDS量を与える。なお、GVDS量とは3次の分散を示す量である。また、回折格子31cの位置は調整可能であり、これによって、GVD量を変化させることができる。したがって、負群速度分散量調整機構は、回折格子31cを含んで構成される。
【0052】
光ファイバ40は、波長800nm帯で、36pskm−1程度のGVD値を有し、非線形光学定数が約1.7W−1km−1、長さ3mのラージモードエリアフォトニック結晶ファイバ(LMA−PCF)41を用いて構成する。さらに、光学装置50としては、0.01ps程度のGVD量を有する顕微鏡51を用いる。
【0053】
以上説明した光学システムの構成により、顕微鏡の標本上で、波長約800nmの帯域内で、3次以上の高次の分散による波形歪みの影響が実質的に無視できる程度に低減された、光パルス時間幅が約100fs以下の超短光パルスが得られる。また、LMA−PCF21を通過する際に、GVD効果とSPM効果との相互作用で受けたパルス幅とスペクトル幅の変化を、LMA−PCF41を通過する際に、同様にGVD効果とSPM効果との相互作用を利用して補償し、パルス幅とスペクトル幅をほぼ元に戻しているので、非線形効果を回避するために大きなGVD効果を与える大きな光学素子をLMA−PCF41の前後に配置する必要が無い。したがって、LMA−PCF41を高い自由度で配置することができる。
【0054】
以上説明したように本実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置によれば、アップチャープした短光パルスを射出するチャープパルス源10を用いて、LMA−PCF21、負群速度分散発生手段30を介して、実質的に3次以上の高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスを、LMA−PCF41から顕微鏡51に出射させるように構成したので、高ピークパワーの短光パルスを、高次の分散による波形歪みの影響を低減し、光学装置の所望の位置へ効率良く伝送でき、且つ、高い配置の自由度を有することができる。
【0055】
(第2実施形態)
図5は、本発明第2実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1実施形態の光ファイバ40と光学装置50との間に、正のGVD効果を与える正群速度分散付加手段70を設けて、光学装置50に入射させる短光パルスのダウンチャープを調整し、これにより、光学装置50内の所望の位置において、高ピークパワーを持つ所望の時間幅の超短光パルスを得るようにしたものである。ここで、正群速度分散付加手段70は、例えば、ガラスロッドなどの光透過基板、レンズ、音響光学変調素子、回折格子、プリズムの何れかを含んで構成される。
【0056】
正群速度分散付加手段70を設けることによって、顕微鏡や内視鏡の標本面等の所望の位置で高ピークパワーのパルスが得られるように、光学装置50に入射する短光パルスのチャープを調整することができる。これによって、標本面で2光子蛍光などの非線形効果が起こる効率を上げることができ、明るい画像が得られる。
【0057】
さらに、正群速度分散付加手段70は、調整機構を有することができる。例えば、本実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を、像倍率に応じて複数の対物レンズを切り替えて使用する顕微鏡に適用した場合、対物レンズに使用される硝材やその厚さが異なるために、対物レンズを切り替えるとGVD量が変わってしまう。このため、顕微鏡対物レンズの分散量に応じて、正群速度分散付加手段70の分散量を調整できると好ましい。
【0058】
図6は、図5の正群速度分散付加手段の具体例を説明する図である。本実施形態の短光パルスの光ファイバ伝送装置は、顕微鏡81に適用されており、光ファイバ40を出射したダウンチャープパルスは顕微鏡本体81aに導光される。顕微鏡81は複数の対物レンズ51a,51b,51cを備え、レボルバ51dにより顕微鏡観察に使用する対物レンズ51a,51b,51cを切り替えられるように構成されている。
【0059】
また、対物レンズ51b,51cの短光パルスの入射側には、51b,51cを使用する場合も対物レンズ51aを用いた場合とGVD量が変化しないように、適切なGVD量を付加する長さの異なるガラスロッド71b,71cがそれぞれ組み込まれている。すなわち、図6において、ガラスロッド71b,71cおよびレボルバ51dは、正群速度分散付加手段70を構成する。また、レボルバ51dは、対物レンズ51a,51b,51cの切り替え機構と同時に、正群速度分散付加量調整機構としても機能している。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、光ファイバと対物レンズとの間に、正のGVD効果を与えるガラスロッド71b、71cを設けたので、第1実施形態の効果に加え、入射する短光パルスのダウンチャープを調整し、これにより、所望の位置すなわち顕微鏡の標本面において、高ピークパワーを持つ所望の時間幅の超短光パルスを得ることができる。さらに、レボルバ51dによりガラスロッド無しまたはガラスロッド71b,71cを切り替えられるようにしたので、対物レンズ51a,51b,51cのそれぞれの分散量に応じて適切なGVD量を付加することができ、いずれの対物レンズを用いる場合も標本面で高ピークパワーの短光パルスが得られる。
【0061】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。本実施形態は、図5に示した短光パルスの光ファイバ伝送装置を、内視鏡に適用したものである。この光学システムでは、超短光パルス源11として、発振波長約980nm、パルス幅約120fs、繰り返し周波数90MHz、平均光出力約0.8Wの光パルスを発生する、チタン:サファイアモード同期レーザ12を用いる。
【0062】
また、正群速度分散発生手段60としては、音響光学素子(AOM)62を用いる。AOM62は、超短光パルス源11から出射された超短光パルスをアップチャープした短光パルスにするとともに、出力強度を変調することができる。
【0063】
光導波手段20としては、波長980nm帯で、23pskm−1程度のGVD値を有し、非線形光学定数が約1.4W−1km−1、長さ0.2mのLMA−PCF21を用いて構成する。
【0064】
また、負群速度分散発生手段30は、ミラー32a、プリズム32b,32c、矩形ミラー31dおよびミラー31eを有し、LMA−PCF21から出射される短光パルスをミラー32aで偏向させた後、プリズム32a,32bで屈折させた後、矩形ミラー32dで光路を切り替えて、プリズム32c,32bおよびミラー31eを経て出射させるように構成する。これによって、−0.04ps程度のGVD量および−0.0001ps程度のGVDS量を与える。
【0065】
光ファイバ40は、波長980nm帯で、23pskm−1程度のGVD値を有し、非線形光学定数が約1.4W−1km−1、長さ1mのLMA−PCF41を用いる。
【0066】
さらに、光学装置50としての内視鏡対物レンズ52の前段に、正群速度分散付加手段70であるガラスロッド72を設ける。ガラスロッド72は硝材(SF10)により構成される、GVD値1.14×10−4psmm−1、長さ18mm、GVD量0.002psの部材である。ガラスロッド72を入れる理由は、内視鏡対物レンズ52のGVD量(0.003ps)が小さいので、LMA−PCF41から出射するダウンチャープした光パルスのチャープの補償のために必要なGVD量を確保するためである。チタン:サファイアモード同期レーザ12から、内視鏡対物レンズ52までのGVD量の和は、略ゼロとなっている。
【0067】
なお、LMA−PCF41,ガラスロッド72および内視鏡対物レンズ52は、可撓性の内視鏡82の挿入部に配置される。
【0068】
本実施形態によれば、ガラスロッド72をLMA−PCF41と内視鏡対物レンズ52との間に設けたので、内視鏡対物レンズ52のGVD量が小さい場合でも、必要なGVD量を確保してピークパワーの高い短光パルスを得ることができる。また、正群速度分散発生手段60として、AOM62を用いたので、チタン:サファイアモード同期レーザ12を出射した超短光パルスをアップチャープパルスにすることに加え、強度変調により短光パルスを適切な出力に設定することができる。
【0069】
(第4実施形態)
図8は、発明の第4実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。本実施形態は、図3に示した第1実施形態の具体的構成において、ガラスロッド61およびLMA−PCF21を、それぞれ、回折格子対64b,64eを含む正群速度分散発生手段60およびシングルモードファイバ(SMF)22に置き換えたものである。
【0070】
正群速度発生手段60は、ミラー64a、回折格子64b、正のパワーを有するレンズ64c,64d、回折格子64e、矩形ミラー64fおよびミラー64gを有し、チタン:サファイアモード同期レーザ12から出射される超短光パルスを、ミラー31aで偏向させ、回折格子64bで回折し、レンズ64c,64dを介して、回折格子31eでさらに回折させた後、矩形ミラー31dで光路を切り替えて、回折格子31e、レンズ64d,64cおよび回折格子31bおよびミラー31eを経て出射させるように構成する。ここで、レンズ64c,64dは、回折格子による分散の向きを変えるように配置される。さらに、回折格子64eの位置を調整することにより、正群速度発生手段60は、0.008〜0.012psのGVD量と、0.000011〜0.000017psのGVDS量とを与えるように構成される。すなわち、正群速度分散発生手段60の正群速度分散量調整機構は回折格子64eを含んで構成される。
【0071】
また、SMF22は、波長800nm帯で、非線形光学定数が約5W−1km−1、GVD値が40pskm−1で、1mの長さを有する。
【0072】
また、チタン:サファイアモード同期レーザ12、負群速度分散発生手段30、LMA−PCF41および顕微鏡対物レンズ51は、以下のように詳細な仕様が第1実施形態の具体的構成例とは異なっている。
【0073】
すなわち、チタン:サファイアモード同期レーザ12は、発振波長約800nm、パルス幅約70fs、繰り返し周波数約80MHz、スペクトル幅約13.4nm、平均光出力約2Wの超短光パルスを発生する。また、LMA−PCF41は、波長800nm帯で、36pskm−1程度のGVD値を有し、非線形光学定数が約1.7W−1km−1であり、長さは3mである。さらに、顕微鏡51はGVD量0.008〜0.012psの範囲の複数の交換可能な対物レンズを有して構成される。
【0074】
以上のように構成することによって、本実施形態では、顕微鏡対物レンズを交換してGVD量が変化した場合でも、正群速度分散発生手段60の発生する正のGVD量を調整して、高ピークパワーの短光パルスを、光学装置の所望の位置へ効率良く伝送することができる。
【0075】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る短光パルスの光ファイバ伝送装置を有する光学システムの構成を示す図である。本実施形態は、図1の光学システムの概略構成において、光ファイバ40と光学装置50との間に、波長変換手段91を設けている。各構成要素の具体的な構成を以下に説明する。
【0076】
まず、超短光パルス源11として、図10に示すパルス源を使用する。超短光パルス源11は、モード同期Yb添加ファイバレーザ13と、ファイバ型光増幅器14とを備える。ファイバ型光増幅器14は、アイソレータ14aと半導体レーザ14bと光合波器14cと単一モードYb添加ファイバ14dと、アイソレータ14eとを含んで構成される。半導体レーザ14bは、波長978nmのレーザ光を射出し、光合波器14cを介して単一モードYb添加ファイバ14dを励起する。モード同期Yb添加ファイバレーザ13から出射した波長1060nmの光パルスは、アイソレータ14a、光合波器14cを経て、半導体レーザ14bからのレーザ光により励起された単一モードYb添加ファイバ14dにおいて増幅され、アイソレータ14eから出射される。
【0077】
また、図9のように、正群速度分散発生手段60として、長さ46mm、GVD値約1.3×10−4psmm−1、GVD量約0.06psのガラスロッド65(硝材:SF6)を使用する。さらに、光導波手段20としては、波長1060nm帯で、非線形光学定数が約5W−1km−1、GVD値が17pskm−1であり、1mの長さを有するSMF22を使用する。
【0078】
また、本実施形態の光学システムは、光サーキュレータ33aとファイバブラッググレーティング(FBG)33bとかなる、負群速度分散発生手段30を使用する。光サーキュレータ33aは、SMF22からの光パルスをFBG33bに出力し、FBG33bからの光パルスを後段のSMF42に出力するよう構成される。SMF22から出射されたアップチャープした短光パルスは、光サーキュレータ33aを経てFBG33bに入射し、FBG33b内で反射され、再び光サーキュレータ33aを経てSMF42に出力される。短光パルスは、FBG33b内の波長に応じた位置で反射されることにより負のGVDを与えられ、ダウンチャープパルスとなる。FBG33bのGVD量は、−0.08ps、GVDS量は、−0.0002psである。
【0079】
さらに、光ファイバ40としては、波長1060nm帯で、非線形光学定数が約5W−1km−1、GVD値が17psで、3mの長さを有するSMF42を使用する。
【0080】
また、波長変換手段91として周期分極ニオブ酸リチウム(Periodically Poled Lithium Niobate:PPLN)を用いる。波長変換手段91は、第2次高調波発生により、SMF42から入射した光パルスの波長を1060nmから530nmに変換して、光学装置50であるGDV量が0.006psの顕微鏡51に出射する。
【0081】
本実施形態では、波長変換手段91を用いることにより、より短波長の第2高調波の光パルスを顕微鏡51に出射させることができる。さらに、波長変換手段91内での光パルスのピークパワーを高くするように、SMF42を出射する短光パルスのチャープを調整することによって、高い第2高調波変換効率が得られる。また、FBGを使用したので、構成が単純となり、複雑な光学系の調整を必要とせず配置が容易となる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、本発明は、顕微鏡や内視鏡に限らず、パルス加工機など、超短光パルスを利用する種々の分野に適用することができる。
【0083】
また、正群速度発生手段、負群速度発生手段および正群速度付加手段のいずれか2つ以上が、それぞれ群速度分散量の調整機構を有し、それら複数の調整機構を調整することによって、顕微鏡や内視鏡の標本面等の所望の位置で高ピークパワーの短光パルスを得るようにしても良い。そのようにすることによって、標本面で2光子蛍光などの非線形効果が起きる効率を上げることができ、より明るい画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 チャープパルス源
11 超短光パルス源
20 光導波手段
30 負群速度分散発生手段
40 光ファイバ
50 光学装置
51 顕微鏡
52 内視鏡対物レンズ
60 正群速度分散発生手段
70 正群速度分散付加手段
81 顕微鏡
82 内視鏡
91 波長変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高ピークパワーを持つアップチャープした短光パルスを出射するチャープパルス源と、
該チャープパルス源から出射された、前記短光パルスを伝送する光導波手段と、
該光導波手段から出射される短光パルスに負の群速度分散を与える負群速度分散発生手段と、
該負群速度分散発生手段から出射される短光パルスを所望の距離に渡って伝送する光ファイバと、
を有し、
前記チャープパルス源から出射した前記短光パルスを、前記光ファイバから実質的に高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させるように構成したことを特徴とする短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項2】
前記チャープパルス源は、超短光パルスを出射する超短光パルス源と、該超短光パルス源から出射された超短光パルスに正の群速度分散を与え、該超短光パルスよりもピークパワーの小さい前記アップチャープした短光パルスとして出射させる正群速度分散発生手段とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項3】
前記光導波手段は、正の群速度分散値を有することを特徴とする請求項1または2に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項4】
前記光ファイバは、正の群速度分散値を有する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項5】
前記光ファイバの後段に、該光ファイバから出射される短光パルスに正の群速度分散を与えて、該短光パルスよりも瞬時周波数変化の緩やかなダウンチャープパルスとして出射させる正群速度分散付加手段を設けた、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項6】
前記負群速度分散発生手段は、負の群速度分散量を調整する負群速度分散量調整機構を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項7】
前記正群速度分散発生手段は、正の群速度分散量を調整する正群速度分散量調整機構を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項8】
前記正群速度分散付加手段は、正の群速度分散量を調整する正群速度分散付加量調整機構を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の短光パルスの光ファイバ伝送装置。
【請求項9】
高ピークパワーを持つアップチャープした短光パルスを光導波手段に入射させ、
該短光パルスを、前記光導波手段を用いて伝送し、
該光導波手段から出射される前記短光パルスに、負群速度分散発生手段を用いて負の群速度分散を与え、
該負群速度分散発生手段から出射される短光パルスを、光ファイバを用いて所望の距離に渡って伝送し、
前記光ファイバから、実質的に高次の分散による波形歪みを含まないダウンチャープした短光パルスとして出射させる短光パルスの光ファイバ伝送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−118270(P2012−118270A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267519(P2010−267519)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】