説明

短尺対応サージ抑制ユニット

【課題】20m以下の短い電動機駆動用電線長において、サージ電圧抑制効果が低下せず、設置に小さなスペースのサージ抑制ユニットを提供する。
【解決手段】電動機駆動用電線長が短い場合でも、サージ電圧抑制効果を発揮するように、負荷側に駆動線路とサージ抑制線の反射影響を小さくするために並列に接続された整合回路と、前記整合回路と直列に接続されたサージ抑制体とからなり、前記サージ抑制体の終端を高インピーダンスにした構造を持ち、整合回路とサージ抑制体を組合せた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は,インピーダンスミスマッチにより生じるサージ電圧(不整合反射による不要高電圧波形)を抑制し,伝送品質劣化の改善は勿論のこと,電線,接続機器等の絶縁劣化による寿命低下及びサージ電圧によるノイズの発生を低減化し,経済性,操作性,生産性および実用性に優れた短尺対応サージ抑制ユニットで,特に,設置スペースのないところでサージ電圧抑制効果を上げたいという要望に適する。
【背景技術】
【0002】

従来のサージ電圧対策品は、ケーブルの特性インピーダンスを駆動回路の出力インピーダンス及び負荷のインピーダンスに整合させることによりサージ電圧の発生を抑制することになるが、使用機器、システムにより負荷のインピーダンスは千差万別であること、更に、同一インピーダンスで整合させたつもりでも整合部品或いはケーブルのインピーダンス偏差、周波数依存性からサージ電圧やリンギング(スイッチング回路において、動作又は復旧時に漂遊容量と残留インダクタンス又は反射等によって発生する振動現象)が発生し、信号品質を著しく劣化させる原因となっている。このような問題は伝送系だけでなく、駆動系においても高速化に伴い同様な問題が発生している。特に、負荷が電動機の場合は、通常の伝送系からみると掛け離れた大きなインピーダンス(500Ω以上)になることから、整合させたケーブルの作製は困難を極めている。
これに対して、先に出願した下記の公報に示すように、上記従来技術の課題を殆ど解決することが可能になった。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−032663号公報
【特許文献2】特開2005−184983号公報
【特許文献3】特開2007−074811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

従来のサージ抑制ケーブル(例えば,特許文献1参照)は,サージ電圧を抑制線のみで熱に変換して消失させるため20m以下の短い電動機駆動用電線長において,サージ電圧抑制効果の低下という課題があった。また,従来のサージ抑制ユニット(例えば,特許文献2参照)は,20m以下の短尺用途では設置に大きなスペースを必要とするという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の短尺対応サージ抑制ユニットは,電動機駆動用電線の長さに係わらずサージ電圧抑制効果を発揮するように,電動機駆動用電線の特性インダーダンスと高インピーダンス負荷のインピーダンスミスマッチによりサージが発生する電動機駆動用電線において,高インピーダンス負荷ユニット側に,整合回路の一方の端子が並列に接続され、前記整合回路の他方の端子はサージ抑制体と直列に接続され、さらにはサージ抑制体の終端を高インピーダンスにした構造である。整合回路とサージ抑制体の組合せにより,サージ電圧の抑制効果を高め,小型化をはかった短尺対応サージ抑制ユニットを提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の短尺対応サージ抑制ユニットは,整合回路を具備することにより,短い長さの電動機駆動用電線においても簡単にサージ電圧抑制効果を上げることができ,更にはサージ抑制体を小型にすることにより設置スペースの制約を受け難い短尺対応サージ抑制ユニットを提供することが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】短尺対応サージ抑制ユニット実施例1
【図2】短尺対応サージ抑制ユニット実施例2
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】

第1の実施の形態例を図1に示す。
駆動回路1と,電動機駆動用電線2と,高インピーダンス負荷3と,により構成されるシステムにおいて,前記電動機駆動用電線の前記高インピーダンス負荷側に,並列に接続された整合回路5と,前記整合回路5と直列に接続された第1のサージ抑制体9とからなり,さらには終端を高インピーダンスとする短尺対応サージ抑制ユニット4。前記整合回路は,前記電動機駆動用電線の前記高インピーダンス負荷側と,前記サージ抑制体との間に,U,V,Wの相毎に第1の抵抗6,第2の抵抗7,第3の抵抗8を直列に接続して構成される。
【実施例2】
【0009】
第2の実施の形態例を図2に示す。
駆動回路1と,電動機駆動用電線2と,高インピーダンス負荷3と,により構成されるシステムにおいて,前記電動機駆動用電線の前記高インピーダンス負荷側に,並列に接続された整合回路5と,前記整合回路5と直列に接続された第1のサージ抑制体9と第2のサージ抑制体のサージ抑制ユニット組み合せ体14からなり,さらには終端を高インピーダンスとする短尺対応サージ抑制ユニット4。前記整合回路は,前記電動機駆動用電線の前記高インピーダンス負荷側と,前記サージ抑制体との間に,U,V,Wの相毎に第1の抵抗6と第1のインダクタ11の第1の直列回路,第2の抵抗7と第2のインダクタ12の第2の直列回路,第3の抵抗8とインダクタ13の第3の直列回路と,を接続して構成される。
【符号の説明】
【0010】
1 駆動回路
2 電動機駆動用電線
3 高インピーダンス負荷
4 短尺対応サージ抑制ユニット
5 整合回路
6 第1の抵抗
7 第2の抵抗
8 第3の抵抗
9 第1のサージ抑制体
10 第2のサージ抑制体
11 第1のインダクタ
12 第2のインダクタ
13 第3のインダクタ
14 サージ抑制ユニット組み合わせ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機駆動用電線の特性インダーダンスと前記電線と比較して相対的に高いインピーダンスを持つ負荷とのインピーダンスミスマッチによりサージ電圧が発生する駆動用電線において,高インピーダンス負荷側に,整合回路の一方の端子が並列に接続された整合回路と,前記整合回路の他方の端子はサージ抑制体と直接に接続され,さらにはサージ抑制体の終端を高インピーダンスにしたことを特徴とする短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項2】
サージ抑制体にサージ抑制ケーブル(例えば,特許文献1参照)を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項3】
サージ抑制体にサージ抑制ユニット(例えば,特許文献2参照)を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項4】
サージ抑制体にサージ抑制ユニット組み合わせ体(例えば,特許文献3参照)を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項5】
抵抗器で構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項6】
整合回路を構成する抵抗器に巻き線抵抗器を使用したことを特徴とする請求項5に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項7】
インダクタで構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項8】
コンデンサで構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項9】
抵抗器とインダクタで構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項10】
抵抗器とコンデンサで構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。
【請求項11】
抵抗器とインダクタおよびコンデンサで構成される整合回路を使用したことを特徴とする請求項1に記載した短尺対応サージ抑制ユニット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−105493(P2012−105493A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253434(P2010−253434)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(390002598)沖電線株式会社 (45)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】