説明

短期間デポ調剤

【課題】有益な薬剤を被験者に移植することにより全身的または局部的に投与するための方法および組成物の提供。
【解決手段】所望する位置に注入することができ且つ短期間にわたる有益な薬剤の調節された放出を与えうるデポ剤ゲル組成物を包含する。これらの組成物は、低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、重合体と共に粘性ゲルを生成し且つ移植片による水吸収を制限する低い水混和性を有する生体適合性溶媒、並びに有益な薬剤を含んでなる注入可能なデポ剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年6月24日に出願された米国暫定出願第60/391,867号の権利を主張する。
【0002】
本発明は、所望する位置に注入することができそして短期間にわたる有益な薬剤の調節された放出を与えうるデポ剤(depot)ゲル組成物に関する。本発明はまた、組成物の製造および投与方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
生分解可能な重合体は長年にわたり医学用途で使用されてきた。生分解可能な重合体から構成される例示機器は、縫合糸、手術クリップ、ステープル、移植片、および薬品送達システムを包含する。これらの生分解可能な重合体の大多数は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、およびそれらの共重合体をベースとしていた。
【0004】
生分解可能な重合体は熱可塑性物質であることができ、それらは加熱されそして例えば繊維、クリップ、ステープル、ピン、フィルムなどの如き種々の形状に成形されうることを意味する。或いは、それらは架橋結合反応により製造される熱硬化性物質であることもでき、それらは高温で溶融しないかまたは流動性液体を形成する高分子量物質をもたらす。熱可塑性および熱硬化性の生分解可能な重合体は多くの有用な生医学用途を有するが、人間、動物、鳥、魚、および爬虫類を包含する種々の動物の体内でのそれらの使用には数種の重要な制限がある。
【0005】
熱可塑性または熱硬化性の生分解可能な重合体の中に加えられた薬品を含有する固体の移植片薬品送達システムは成功裡に広く使用されてきた。そのような移植片は、時には医学専門家により所望されるものより大きく且つ場合によりそのような移植片または薬品送達システムを受容するために患者の抵抗を引き起こす切開により体内に挿入しなければならない。特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17は、そのような薬品送達システムの代表であると信じられており、そしてそれらは引用することにより本発明の内容となる。これらの特許は、有益な薬剤(beneficial agent)を送達するための受器装置、浸透送達装置および拍動送達装置を開示している。
【0006】
小粒子、微球、またはマイクロカプセルのような注入薬品送達システムは、薬品送達システムを移植するために必要な切開を回避する。しかしながら、これらの物質は生分解可能な移植片に関する要望を必ずしも常に満たすものでない。これらの物質は、性質においては粒状であり、ある種の補填用に必要な構造的一体性を有する連続膜または固体移植片を形成せず、粒子は集塊化する傾向がなく、それ故、それらの性質は予測するのが難しい。かなりの流体が流れている例えば口、眼窩、目、または膣の如きある種の体腔内に挿入される時には、これらの小粒子、微球、またはマイクロカプセルはそれらの小さい寸法および不連続性のために不充分にしか保持されない。さらに、合併症がある場合には、広範な手術介入なしでの身体からのマイクロカプセルまたは小粒子システムの除去は固体移植片を用いる場合よりかなり難しい。さらに、これらの重合体から製造されそして体内への放出用の薬品を含有する微球またはマイクロカプセルの製造、貯蔵および注入能力も問題である。
【0007】
当該技術は上記の問題に応答して種々の薬品送達システムを開発した。特許文献18、
19、20、21、22、23、24、25、26および27は代表的なものであると信じられており、そしてそれらは引用することにより本発明の内容となる。これらの特許は、溶媒および/または可塑剤を用いる注入可能な移植片のための重合体組成物を開示している。
【0008】
注入可能な移植片のための上記の重合体組成物は、移植片部位における重合体の急速な固化を促進し且つ移植片からの薬品の拡散を促進するために水性体液の中で非常にまたは比較的可溶性である溶媒/可塑剤を使用していた。移植片が体内に置かれそして水性体液に露呈される時に水溶性重合体溶媒を利用するそのような重合体移植片中への水の急速な泳動が重大な問題となる。急速な水の吸収はしばしば、寸法および形状において不均一性である孔構造を有する移植片を生ずる。典型的には、表面の孔が移植片表面から移植片中への1/3ミリメートルもしくはそれ以上の程度まで伸びる指のような孔構造の上に生じ、そしてそのような指のような孔は移植片の表面で使用環境に対して開いている。内部の孔はそれより小さく且つ使用環境中に存在する流体に対する到達がより少ない傾向がある。急速な水の吸収特性はしばしば、移植片から放出される有益な薬剤の「バースト」に相当する重合体組成物からの有益な薬剤の初期の急速放出により現れる有益な薬剤の調節されない放出をもたらす。バーストはしばしば、有益な薬剤の全部ではないがかなりの部分の非常に短い時間での、例えば数時間もしくは1−2日間での、放出を生ずる。そのような効果は、特に調節された送達、すなわち、3日間以上もしくは1ヶ月までの期間にわたる調節された方式での有益な薬剤の放出が所望される場合、または狭い治療窓があり且つ過剰の有益な薬剤の放出が処置される被験者に対する悪影響をもたらしうる場合、または例えばホルモンなどの如き有益な薬剤の自然に生ずる毎日の特徴を処置される被験者の体内で模する必要がある場合のような環境では、許容できない。
【0009】
従って、そのような装置が移植される時には、指のような孔が移植片内部への水性体液の非常に急速な吸収を可能にして、その後の有意量の有益な薬剤の即座且つ急速な溶解および使用環境中への有益な薬剤の妨げられない拡散をもたらし、上記のバースト効果を生ずる。
【0010】
さらに、急速な水吸収は硬化した移植片または硬化した表面を有するものが製造されるような時期尚早な重合体沈殿をもたらしうる。内部の孔および有益な薬剤を含有する重合体の内部の大部分が体液との接触を遮断されそして有益な薬剤の放出における有意な減少が些細ではない期間(「ラグ時間」)にわたり生じうる。このラグ時間は、処置される被験者に対する有益な薬剤の調節された持続性放出を示す観点から望ましくない。観察される事象は、すると、移植直後に短期間で放出される有益な薬剤のバースト、有益な薬剤が全く放出されないかもしくは非常に少しだけ放出されるラグ時間、および有益な薬剤の供給量が消費されるまでの有益な薬剤のその後の連続的送達(有益な薬剤はバースト後に残ると推定する)である。
【0011】
バーストを調節し且つ有益な薬剤の送達を調整しそして安定化させるための種々の方式が記載された。特許文献28、29、30、31、32、33、34、35および36は代表的なものであると信じられておりそしてそれらは引用することにより本発明の内容となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,456,679号明細書
【特許文献2】米国特許第5,336,057号明細書
【特許文献3】米国特許第5,308,348号明細書
【特許文献4】米国特許第5,279,608号明細書
【特許文献5】米国特許第5,234,693号明細書
【特許文献6】米国特許第5,234,692号明細書
【特許文献7】米国特許第5,209,746号明細書
【特許文献8】米国特許第5,151,093号明細書
【特許文献9】米国特許第5,137,727号明細書
【特許文献10】米国特許第5,112,614号明細書
【特許文献11】米国特許第5,085,866号明細書
【特許文献12】米国特許第5,059,423号明細書
【特許文献13】米国特許第5,057,318号明細書
【特許文献14】米国特許第4,865,845号明細書
【特許文献15】米国特許第4,008,719号明細書
【特許文献16】米国特許第3,987,790号明細書
【特許文献17】米国特許第3,797,492号明細書
【特許文献18】米国特許第5,990,194号明細書
【特許文献19】米国特許第5,780,044号明細書
【特許文献20】米国特許第5,733,950号明細書
【特許文献21】米国特許第5,620,700号明細書
【特許文献22】米国特許第5,599,552号明細書
【特許文献23】米国特許第5,556,905号明細書
【特許文献24】米国特許第5,278,201号明細書
【特許文献25】米国特許第5,242,910号明細書
【特許文献26】米国特許第4,938,763号明細書
【特許文献27】国際公開第98/27962号パンフレット
【特許文献28】米国特許第6,130,200号明細書
【特許文献29】米国特許第5,990,194号明細書
【特許文献30】米国特許第5,780,044号明細書
【特許文献31】米国特許第5,733,950号明細書
【特許文献32】米国特許第5,656,297号明細書
【特許文献33】米国特許第5,654,010号明細書
【特許文献34】米国特許第4,985,404号明細書
【特許文献35】米国特許第4,853,218号明細書
【特許文献36】国際公開第98/27962号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一部の成功にもかかわらず、これらの方法は移植片により効果的に送達されるであろう多数の有益な薬剤に関しては完全に満足のいくものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、短期間にわたる被験者に対する有益な薬剤の全身的および局部的な送達のための方法および注入可能(injectable)なデポ剤ゲル組成物を提供する。特に、本発明は処置される被験者に対する有益な薬剤の調節された放出を提供し、放出は投与後2週間以内、好ましくは約3〜約7日間の期間、にわたり調節される。さらに、本発明は注入可能なデポ剤ゲル組成物の製造方法も提供する。
【0015】
一面では、本発明は低分子量の生腐食性(bioerodible)の生体適合性重合体、重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びにゲル中に溶解または分散した有益な薬剤を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物に関する。好ましくは、溶媒は7重量%より少ない、より好ましくは5重量%より少ない、そしてより好ましくは3重量%より少ない、水中混和性
を有する。
【0016】
別の面では、本発明は低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びにゲル中に溶解または分散した有益な薬剤を含んでなる、有益な薬剤を被験者に調節された方法で2週間以内の期間にわたり全身的に送達させるための注入可能なデポ剤組成物に関する。
【0017】
他の面では、本発明は低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びにゲル中に溶解または分散した有益な薬剤を含んでなる、有益な薬剤を被験者に持続的に送達するための注入可能なデポ剤組成物であって、有益な薬剤は調節された方法(controlled manner)で2週間以内、好ましくは約24時間〜約2週間、好ましくは約10日間以内、好ましくは約7日間以内、より好ましくは約3日間〜約7日間、の期間にわたり全身的に送達される組成物に関する。
【0018】
他の面では、本発明は低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びにゲル中に溶解または分散した有益な薬剤を含んでなる、有益な薬剤を被験者に持続的に送達するための注入可能なデポ剤組成物であって、有益な薬剤が調節された方法で2週間以内、好ましくは約24時間〜約2週間、好ましくは約10日間以内、好ましくは約7日間以内、より好ましくは約3日間〜約7日間、の期間にわたり局部的に送達される組成物に関する。
【0019】
別の面では、本発明は下記のもの:孔形成剤、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および浸透剤、の少なくとも1種をさらに包含し、そして場合により乳化剤および/またはチキソトロピー剤を包含する、上記の注入可能なデポ剤組成物に関する。
【0020】
別の面では、本発明は低分子量重合体が約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の平均分子量を有し、そしてより好ましくは低分子量重合体が約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の平均分子量を有する、上記の注入可能なデポ剤組成物に関する。
【0021】
別の面では、本発明は重合体がポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、並びにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物よりなる群から選択される、上記の注入可能なデポ剤組成物に関する。好ましい態様では、重合体は乳酸−ベース重合体であり、好ましくは重合体は乳酸およびグリコール酸の共重合体である。
【0022】
別の面では、本発明は溶媒が構造式(I)
Ar−(L)n−OH (I)
[式中、Arは置換されたもしくは未置換のアリールまたはヘテロアリールであり、nは0または1であり、そしてLは結合部分である]
を有する芳香族アルコール、並びに芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒から選択される、上記の注入可能なデポ剤組成物に関する。
【0023】
好ましい態様では、溶媒は芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル;アリール、アラルキルおよび低級アルキルケトン;並びにクエン酸の低級アルキルエステルから選択される。好ましくは、溶媒はベンジルアルコール、安息香酸ベンジルおよび安息香酸エチルから選択される。好ましい態様では、組成物は25℃における7重量%より大きい水中混和性を有する溶媒を含まない。
【0024】
別の面では、本発明は上記の注入可能なデポ剤組成物を投与することを含んでなる有益な薬剤を被験者に調節された方法で2週間以内の期間にわたり投与する方法に関する。ある種の態様では、有益な薬剤は全身的に調節された方法で2週間以内の期間にわたり送達される。別の態様では、有益な薬剤は局部的に調節された方法で2週間以内の期間にわたり送達される。好ましい態様では、有益な薬剤は約24時間〜約2週間の、好ましくは約10日間以内の、好ましくは7日間以内の、より好ましくは約3日間〜約7日間の、期間にわたり送達される。
【0025】
別の面では、本発明は
(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)重合体を可塑化し且つ粘性ゲルを生成するのに適する、25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、
(c)有益な薬剤
並びに、下記のもの:
(d)乳化剤、
(e)孔形成剤、
(f)場合により有益な薬剤と会合されていてもよい、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および
(g)浸透剤
の1種もしくはそれ以上
を含んでなる、有益な薬剤を被験者に投与するためのキットであって、ここで少なくとも有益な薬剤は、場合により溶解度調節剤と会合されて、被験者に対する有益な薬剤の投与時間までは溶媒から分離されて保たれているようなキットに関する。
【0026】
別の面では、本発明は有益な薬剤が薬品、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、化学療法剤、免疫阻害剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、フィブリン溶解剤、成長因子、抗体、目薬、並びにこれらの種の代謝産物、同族体、誘導体、断片、および精製され単離された組み換え体および化学的に合成された変種から選択される、上記の注入可能なデポ剤組成物およびそのような組成物の投与方法に関する。好ましい態様では、有益な薬剤はヒト成長ホルモン、メチオニン−ヒト成長ホルモン、デス−フェニルアラニンヒト成長ホルモン、アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−インターフェロン、エリトロポイエチン、グルガコン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、因子VIII、因子IX、黄体ホルモン、レラキシン、小胞−刺激ホルモン、心房ナトリウム排泄増加因子、フィルグラスチム(filgrastim)表皮成長因子(EGF)、血小板−由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞−成長因子(FGF)、変態−成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)、コロニー−刺激因子(CSF、MCF、GCSF、GMCSF)、インターフェロン(IFN)、内皮成長因子(VEGF、EGF)、エリトロポイエチン(EPO)、アンギオポイエチン(ANG)、胎盤−由来成長因子(PIGF)、および低酸素症誘発転写調節剤(HIF)である。好ましくは、有益な薬剤は重合体、溶媒および有益な薬剤の合計量の0.1〜50重量%の量で存在する。好ましい態様では、有益な薬剤は粘性ゲル中に分散
または溶解した粒子の形態であり、ここで有益な薬剤は0.1〜250ミクロンの平均粒子径を有する粒子の形態である。ある種の好ましい態様では、有益な薬剤は粒子が安定剤、増量剤、キレート化剤および緩衝剤よりなる群から選択される成分をさらに含んでなる粒子の形態である。
【0027】
本発明のこれらのおよび他の態様はこの開示を鑑みて当業者は容易に見出すであろう。
【0028】
本発明の前記の並びに他の目的、特徴および利点は以下の詳細な記述を下記の図面と一緒に読むとさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明のデポ調剤(調剤1−2)から得られたブピバカイン塩酸塩のインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図2】図2は本発明のデポ調剤(調剤3−4)から得られたブピバカイン塩基のインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図3】図3は本発明のデポ調剤(調剤4)から得られたブピバカイン塩基のインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図4】図4は本発明のデポ調剤(調剤5−6)から得られたヒト成長ホルモン(hGH)のインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図5】図5は本発明のデポ調剤(調剤6)から得られたhGHのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図6】図6は本発明のデポ調剤(調剤6−7)から得られたhGHのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図7】図7は本発明のデポ調剤(調剤8−9)から得られたブピバカインのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図8】図8は本発明のデポ調剤(調剤9−10)から得られたブピバカインのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図9】図9は本発明のデポ調剤(調剤10−11)から得られたブピバカインのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図10】図10は本発明のデポ調剤(調剤11−12)から得られたブピバカインのインビボ放出特徴を示すグラフである。
【図11】図11は本発明の種々の調剤(調剤2、4、6、7、11、および12)を製造するために使用されたエステル末端基を有する低分子量PLGAのDSC図である。
【図12】図12は本発明の種々の調剤(調剤8、9、および10)を製造するために使用されたカルボキシル末端基を有する低分子量PLGAのDSC図である。
【図13】図13は種々の末端基を有する種々の分子量のPLGA重合体のインビトロ変性特徴を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な記述
本発明は、患者の体内への移植後に移植された持続放出性の有益な薬剤の送達システムとして作用する注入可能なデポ剤組成物に関する。組成物は、低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びにゲル中に溶解または分散した有益な薬剤から製造されるゲルである。本発明はまた、被験者に上記の注入可能なデポ剤組成物を移植することにより有益な薬剤を被験者に全身的にまたは局部的に投与する方法にも関する。溶媒の適切な選択により、移植片システム周囲の水性環境からの水の泳動が制限され、そして有益な薬剤は被験者に対してある期間にわたり放出され、それにより有益な薬剤のバーストが阻害された有益な薬剤の送達およびその後の持続性放出を与える。有益な薬
剤の放出の期間および速度は、低分子量の生分解可能な重合体の適切な選択により調節される。移植片システム周囲の水性環境からの水の泳動を制限し、それにより有益な薬剤を短期間、好ましくは2週間以内の期間、好ましくは約24時間〜約2週間、好ましくは約10日間以内、好ましくは約7日間以内、より好ましくは約3日間〜約7日間、にわたり送達させることにより、組成物は有益な薬剤の調節された持続性放出を与える。組成物の重合体が生腐食性であるため、有益な薬剤が移植片から消費された後に移植片システムを外科的に除去しなくてもよい。
【0031】
一般に、本発明の組成物はゲル状でありそして移植時および薬品送達中に、それが硬化する際でも、移植片に全体にわたり実質的に均一な非有孔性構造の形状である。さらに、重合体ゲル移植片は水性環境に露呈される時にはゆっくり硬化するであろうが、硬化した移植片は37℃より下のガラス転移温度Tgを有するゴム状(非硬質)組成物を保つことができる。
【0032】
水中で7重量%より小さい水中溶解度を有する溶媒がシステム中に存在する場合には、有益な薬剤の溶解度調節剤がシステム中に存在するかまたはしないかにかかわらず、有益な薬剤の適切なバースト調節および持続性送達が達成される。典型的には、本発明で有用な移植片システムでは、移植後の最初の24時間で、移植片システムから被験者に送達される有益な薬剤の合計量の40%以下、好ましくは30%以下そしてより好ましくは20%以下、を放出するであろう。ある種の態様では、移植後24時間以内に、システムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の20重量%以下を放出し、ここで送達期間は2週間である。別の態様では、移植後24時間以内に、システムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の40重量%以下を放出し、ここで送達期間は1週間である。別の態様では、移植後24時間以内に、システムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の50重量%以下を放出し、ここで送達期間は3日間である。
【0033】
組成物が注入による移植を意図する場合には、ゲル組成物の針内の通過を可能にするのに充分なほど低い粘度を有するゲル組成物を得るために粘度を場合により乳化剤および/またはチキソトロピー剤により変えうる。また、移植片システムからの所望する放出特徴を与えるために、孔形成剤および有益な薬剤の溶解度調節剤を、本発明の有益な薬剤を変化させない典型的な賦形剤および他の添加剤と共に、移植片システムに加えることもできる。移植片システムに対する溶解度調節剤の添加により、特定環境下における最少バーストおよび持続性送達の移植片システム中で7%以下の溶解度を有する溶媒の使用が可能になる。しかしながら、溶媒が単独でまたは溶媒混合物の一部として存在するいずれの場合でも、移植片システムが7重量%より小さい水中溶解度を有する少なくとも1種の溶媒を使用することが好ましい。7重量%以下の水中溶解度を有する溶媒および1種もしくはそれ以上の場合によりそれより大きい溶解度を有する混和性溶媒を包含する溶媒の混合物が使用される場合には、制限された水吸収並びに最少のバーストおよび持続的送達特性を示す移植片システムが得られることも発見された。
【0034】
定義
本発明の記述および請求の範囲では、下記の用語は以下に示された定義に従い使用されるであろう。
【0035】
単数形「a」、「an」および「the」は、概念が明らかに他のものを記述しない限り、複数指示対象を包含する。それ故、例えば、「溶媒」の指示対象は単一溶媒並びに2種もしくはそれ以上の異なる溶媒の混合物を包含し、「有益な薬剤」の指示対象は単一の有益な薬剤並びに組み合わせられた2種もしくはそれ以上の異なる有益な薬剤を包含するなど、以下同様である。
【0036】
用語「有益な薬剤」は、単独でまたは他の製薬学的賦形剤もしくは不活性成分と組み合わされたいずれの場合でも、人間または動物に対する投与時に所望する有利な、しばしば薬理学的な、効果をもたらす剤を意味する。
【0037】
ここで使用される用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのどちらでもいずれかの長さを有するヌクレオチドの重合体状の形態をさし、そして二重−および単一−ストランドDNAおよびRNAを包含する。それは既知のタイプの修飾、置換、およびヌクレオチド内修飾も包含し、それらは当該技術で既知である。
【0038】
ここで使用される用語「組み換えポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドをさし、それはその起源または操作により、それが天然で会合するポリヌクレオチドの全部または一部と会合しないか、それが天然に結合されるもの以外のポリヌクレオチドに結合されるか、或いは天然には生じない。
【0039】
ここで使用される用語「ポリペプチド」はアミノ酸の重合体をさし、例えば、ペプチド、糖ペプチド、および蛋白質、並びにそれらの誘導体、同族体および断片、並びに天然産出および天然非産出の両方の当該技術で既知である他の修飾物質を包含する。
【0040】
ここで使用される用語「精製された」および「単離された」は、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列をさす場合には、指示された分子が同じタイプの他の生物学的高分子の実質的な不存在下で存在することを意味する。ここで使用される用語「精製された」は好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同じタイプの生物学的高分子が存在することを意味する。
【0041】
用語「AUC」は、被験者内の有益な薬剤の血漿濃度を組成物の移植時から測定される時間に対してプロットすることにより移植後の時間「t」に対する被験者におけるインビボ検定から得られた曲線下の領域を意味する。時間tは被験者に対する有益な薬剤の送達期間に相当するであろう。
【0042】
用語「バースト指数」は、有益な薬剤の全身的送達を意図した特定組成物に関しては、(i)第一期間(t)における時間数により割り算された被験者内への組成物の移植後の第一期間に関して計算されたAUCを(ii)送達期間の全期間(t)の時間数により割り算された有益な薬剤の送達期間に関して計算されたAUCにより割り算することにより生じた商を意味する。例えば、24時間におけるバースト指数は(i)数24により割り算された被験者内への組成物の移植後の最初の24時間に関して計算されたAUCを(ii)送達期間の全期間(t)中の時間数により割り算された有益な薬剤の送達期間に関して計算されたAUCにより割り算することにより生じた商である。
【0043】
句「溶解したまたは分散した」はゲル組成物中の有益な薬剤の存在を規定する全ての意味を包括し、そして溶解、分散、懸濁などを包含する。
【0044】
用語「全身的」は、被験者に対する有益な薬剤の送達または投与に関しては、有益な薬剤が被験者の血漿中で生物学的に有意な水準で検出可能であることを意味する。
【0045】
用語「局部的」は、被験者に対する有益な薬剤の送達または投与に関しては、有益な薬剤が被験者内で局在化部位に送達されるが被験者の血漿中で生物学的に有意な水準で検出可能でないことを意味する。
【0046】
用語「短期」または「短期間」は互換的に使用され、そして本発明のデポ剤ゲル組成物からの有益な薬剤の放出が起きる期間をさし、それは一般に2週間以内、好ましくは約24時間〜約2週間、好ましくは約10日間以内、好ましくは約7日間以内、より好ましくは約3日間〜約7日間であろう。
【0047】
用語「ゲル賦形剤」は、有益な薬剤の不存在下で重合体および溶媒の混合物により製造される組成物を意味する。
【0048】
用語「初期バースト」は、本発明の特定組成物に関して、(i)移植後の予め決められた初期の期間において組成物から放出された有益な薬剤の重量を(ii)移植された組成物から送達されるはずの有益な薬剤の合計量により割り算することにより得られた商を意味する。初期バーストは移植片の形状および表面積に依存して変動しうることは理解される。従って、ここで記載される所期バーストに関連する百分率およびバースト指数は標準的注入器からの組成物の送達から生ずる形態で試験される組成物に適用することが意図される。
【0049】
用語「溶解度調節剤」は、有益な薬剤に関しては、重合体溶媒または水に関する有益な薬剤の溶解度を調節剤の不存在下での有益な薬剤の溶解度から変更させる剤を意味する。調節剤は、溶媒または水中の有益な薬剤の溶解を促進または遅延させうるであろう。しかしながら、高度に水溶性である有益な薬剤の場合には、溶解度調節剤は一般には水中の有益な薬剤の溶解を遅らせる剤であろう。有益な薬剤の溶解度調節剤の効果は、溶解度調節剤と溶媒との、または複合体の生成によるような有益な薬剤自体との、または両者との相互作用から生じうる。この目的のためには、溶解度調節剤が有益な薬剤と「会合する」場合には、全てのそのような相互作用または生成は起きうる限り考えられる。溶解度調節剤は、適宜、有益な薬剤と粘性ゲルとの組み合わせ前に剤と混合することができ、或いは有益な薬剤の添加前に粘性ゲルに加えることができる。
【0050】
用語「被験者」および「患者」は、本発明の組成物の投与に関しては、動物または人間を意味する。
【0051】
全ての溶媒は、少なくとも分子水準では、水中に非常に限定された程度まで可溶性(すなわち、水と混和性)であるため、ここで使用される用語「非混和性」は溶媒の7重量%以下、好ましくは5%以下、が水中に可溶性であるかまたはそれと混和性であることを意味する。本開示の目的のためには、溶媒の水中溶解度値は25℃で測定されると考えられる。報告される溶解度値は必ずしも常に同じ条件下で実施されないことが一般に認識されるため、範囲の一部または上限としての水との混和性または可溶性重量百分率としてここに引用されている溶解度限度は絶対的なものではありえない。例えば、水中の溶媒溶解度に関する上限がここで「7重量%」として挙げられそして溶媒に関するさらなる限定が与えられない場合には、100mlの水中での7.17グラムの報告された水中溶解度を有する溶媒「トリアセチン」は7%の限度内に含まれると考えられる。ここで使用される7重量%より小さい水中溶解度限度は溶媒トリアセチンまたはトリアセチン以上の水中溶解度を有する溶媒を包含しない。
【0052】
用語「生腐食性」は、その部位で徐々に分解し、溶解し、加水分解しおよび/または腐食する物質をさす。一般に、ここでの「生腐食性」重合体は加水分解可能でありそしてその部位で主として加水分解により生腐食する重合体である。
【0053】
用語「チキソトロピー」はその一般的意味では、例えば剪断力の如き機械力の適用時に液化するかまたは少なくとも見掛け粘度における減少を示しうるゲル組成物をさす。減少の程度は、部分的には、剪断力を受けたときのゲルの剪断速度の関数である。剪断力が除
かれる時に、チキソトロピーゲルの粘度はそれが剪断力を受ける前に示した程度またはその近くの粘度に戻る。従って、チキソトロピーゲルは、注入工程中にその粘度を一時的に減少させる注入器からの注入時に剪断力を受けうる。注入工程が完了した時に、剪断力が除かれそしてゲルはその前の状態の非常に近くまで戻る。
【0054】
ここで使用される「チキソトロピー剤」はそれが含有される組成物のチキソトロピーを増加させるものであり、剪断薄肉化を促進させそして減じられた注入力の使用を可能にする。
【0055】
用語「低分子量(LMW)重合体」は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の範囲の重量平均分子量を有する生腐食性重合体をさし、そしてより好ましくは低分子量重合体は約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の分子量を有する。
【0056】
用語「高分子量(HMW)重合体」は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した10,000より大きい重量平均分子量を有する生腐食性重合体をさす。
【0057】
本発明の重合体、溶媒および他の剤は「生体適合性」でなければならず、すなわちそれらは使用環境で刺激、炎症または壊死を生じてはならない。使用環境は流体環境であり、そして人間または動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または脳内部分、外傷部位、締め付け関節空間または体腔を含んでなることができる。
【0058】
下記の定義がここに記載された分子構造に適用される:ここで使用される句「式を有する」または「構造を有する」は限定することを意図せずそして用語「含んでなる」が普通使用されるのと同じ方法で使用される。
【0059】
ここで使用される用語「アルキル」は、必ずしも必要ではないが典型的には1〜約30個の炭素原子を含有する飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなど、並びにシクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルなど、をさす。一般的には、これも必ずしも必要ではないが、アルキル基はここでは1〜約12個の炭素原子を含有する。用語「低級アルキル」は炭素数1〜6の、好ましくは炭素数1〜4の、アルキル基を意図する。「置換されたアルキル」は1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたアルキルをさし、そして用語「ヘテロ原子−含有アルキル」および「ヘテロアルキル」は少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキルをさす。断らない限り、用語「アルキル」および「低級アルキル」は線状、分枝鎖状、環式、未置換、置換された、および/またはへテロ原子−含有アルキルまたは低級アルキルを包含する。
【0060】
ここで使用される用語「アリール」は、断らない限り、単一の芳香族環或いは一緒に縮合されているか、共有結合されているか、または例えばメチレンもしくはエチレン部分の如き普遍的な基と結合されている複数の芳香族環を含有する芳香族置換基をさす。好ましいアリール基は1個の芳香族環または2個の縮合もしくは結合された芳香族環、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどを含有し、そして持っても好ましいアリール基は単環式である。「置換されたアリール」は1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたアリール部分をさし、そして用語「ヘテロ原子−含有アリール」および「ヘテロアリール」は少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたアリールをさす。断らない限り、用語「アリール」はヘテロアリール、置換されたアリール、および置換されたヘテロアリール基を包含する。
【0061】
用語「アラルキル」はアリール基で置換されたアルキル基をさし、ここでアルキルおよびアリールは以上で定義された通りである。用語「ヘテロアラルキル」はヘテロアリール基で置換されたアルキル基をさす。断らない限り、用語「アラルキル」はヘテロアラルキルおよび置換されたアラルキル並びに未置換のアラルキル基を包含する。一般的に、用語「アラルキル」はここではアルキル−置換された低級アルキル基、好ましくはフェニル置換された低級アルキル基、例えばベンジル、フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピルなどをさす。
【0062】
「ヘテロ原子−含有ヒドロカルビル基」中のような用語「ヘテロ原子−含有」は、1個もしくはそれ以上の炭素原子が炭素以外の原子、例えば窒素、酸素、硫黄、燐または珪素、で置換された分子または分子断片をさす。同様に、用語「複素環式」はヘテロ原子−含有性である環式置換基をさし、用語「ヘテロアリール」はヘテロ原子−含有性である環式置換基をさすなどである。
【0063】
「置換されたアルキル」、「置換されたアリール」などの中のような「置換された」は、アルキルまたはアリール部分が、それぞれ、炭素原子に結合された少なくとも1個の水素原子が1個もしくはそれ以上の非障害置換基、例えばヒドロキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロなど、で置換されていることを意味する。
【0064】
I.注入可能なデポ剤組成物:
上記のように、有益な薬剤の短期間にわたる送達のための注入可能なデポ剤組成物は被験者へのデポ剤の注入前に粘性ゲルとして製造することができる。粘性ゲル担体が有益な薬剤を分散させて適切な送達特徴を与え、それは有益な薬剤がデポ剤から時間が経つにつれて放出されるため、有益な薬剤の低い初期バーストを有する特徴を包含する。
【0065】
本発明の重合体、溶媒および他の剤は生体適合性でなければならず、すなわちそれらは使用環境で刺激または壊死を引き起こしてはならない。使用環境は流体環境であり、そして人間または動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または脳内部分、外傷部位、締め付け関節空間または体腔を含んでなることができる。ある種の態様では、有益な薬剤を局部的に投与して全身的な部位効果を回避するかまたは最少にすることができる。有益な薬剤を含有する本発明のゲルは所望する位置、例えば人間または動物の皮下、筋肉内、血管内、心筋内、外膜、腫瘍内、または脳内部分、外傷部位、締め付け関節空間または体腔、に直接注入/移植するかまたはコーティングとして適用することができる。
【0066】
典型的には、デポ剤として有益な薬剤−粘性ゲル組成物が予め充填された標準的皮下注入器、カテーテルまたはトロカールから粘性ゲルは注入されるであろう。注入は最小寸法(すなわち、最小直径)の針またはカテーテルを用いて行って、注入が人間または動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または脳内部分、外傷部位、締め付け関節空間または体腔内である場合には被験者に対する不快感を減ずることがしばしば好ましい。16ゲージ以上、好ましくは20ゲージ以上、より好ましくは22ゲージ以上、さらにより好ましくは24ゲージ以上の範囲にわたる針またはカテーテルを通してゲルを注入しうることが好ましい。高度に粘性であるゲル、すなわち約100ポイズ以上の粘度を有するゲル、では、ゲルを20−30ゲージ範囲の針を有する注入器から送達させる注入力は、手動で注入を行うのが難しいかまたはかなり不可能にするほど高くてもよい。同時に、ゲルの高い粘度は注入後および送達期間中のデポ剤の一体性を維持しそしてゲル中の有益な薬剤の所望する懸濁特性を促進させるためにも望ましい。
【0067】
重合体溶媒および重合体により製造される粘性ゲルにチキソトロピー特性を与える剤を場合により含んでいてもよい重合体および重合体溶媒の組成物はある種の利点を与える。
チキソトロピーゲルは剪断力を受ける時に減じられた粘度を示す。減少の程度は、部分的には、剪断力を受けた時のゲルの剪断速度の関数である。剪断力が除かれる時に、チキソトロピーゲルの粘度は剪断力を受ける前に示した程度またはその近くに戻る。従って、チキソトロピーゲルは注入器またはカテーテルから注入される時に剪断力を受けることができ、それはその粘度を注入工程中に一時的に減少させる。注入工程が完了した時に、剪断力が除かれそしてゲルはその前の状態の非常に近くまで戻る。
【0068】
注入可能な組成物の有意な剪断薄肉化性質が、身体の外および/または内表面上での種々の部位に対する、針またはカテーテルを介した、有益な薬剤の最少の侵襲性送達を可能にする。さらに、針または注入カテーテルを通す注入は投与部位からの有益な薬剤の持続性送達を与えながら送達部位におけるデポ剤ゲル組成物の有意な保持を伴う所望量の組成物の所望位置への正確な投与を可能にする。ある種の態様では、組成物の正確な送達を助けるために、注入カテーテルは計量装置または追加装置を含むことができる。
【0069】
A.生腐食性の生体適合性重合体:
本発明の方法および組成物と組み合わせて使用される重合体は生腐食性であり、すなわちそれらは患者の身体の水性流体内で徐々に例えば酵素により変性または加水分解し、溶解し、物理的に腐食し、或いは他の方法で崩壊する。一般には、重合体は加水分解または物理的腐食の結果として生腐食するが、主な生腐食工程は典型的には加水分解または酵素による変性である。
【0070】
そのような重合体はポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル類、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、並びにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物を包含するが、それらに限定されない。
【0071】
低分子量生腐食性重合体は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の範囲にわたる重量平均分子量を有し、そしてより好ましくは低分子量重合体は約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の分子量を有する。ここで好ましい重合体はポリラクチド類、すなわち、乳酸だけをベースとしてもよくまたは少量の本発明に従い得られうる有利な結果に実質的に影響しない他の共単量体を包含しうる乳酸およびグリコール酸をベースとしてもよい乳酸−ベース重合体、である。ここで使用される用語「乳酸」は異性体であるL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸およびラクチドを包含し、用語「グリコール酸」はグリコリドを包含する。PLGAと一般に称するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)共重合体が最も好ましい。重合体は約100:0〜約15:85、好ましくは約60:40〜約75:25、の乳酸/グリコール酸の単量体比を有することができ、そして特に有用な共重合体は約50:50の乳酸/グリコール酸の単量体比を有する。
【0072】
乳酸−ベース重合体は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の範囲にわたる重量平均分子量を有し、そしてより好ましくは低分子量重合体は約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の分子量を有する。上記の米国特許第5,242,910号明細書に示されているように、重合体は米国特許第4,443,340号明細書の教示に従い製造することができる。或いは、乳酸−ベース重合体は米国特許第5,310,865号明細書に示された教示に従い乳
酸または乳酸およびグリコール酸の混合物から(別の共単量体を用いてまたは用いずに)直接製造することができる。これらの特許の全ての内容は引用することにより本発明の内容となる。適する乳酸−ベース重合体は市販されている。例えば、約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の範囲にわたる重量平均分子量を有する50:50乳酸:グリコール酸共重合体、そしてより好ましくは約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の分子量並びに加水分解およびその後の重合体連鎖の分解に対する感受性を変更させるための広範囲の末端基を有する低分子量重合体はベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer Ingelheim)(ピータースブルグ、バージニア州)から入手可能である。
【0073】
重合体の例はポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)50:50レソマー(Resomer)(R)RG502、コード0000366、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)50:50レソマー(R)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリD,Lラクチド(レソマー(R)R202、レソマー(R)R203);ポリジオキサノン(レソマー(R)X210)(ベーリンガー・インゲルハイム・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Boehringer Ingelheim Chemicals,Inc.)、ピーターズブルグ、バージニア州)を包含するが、それらに限定されない。
【0074】
別の例はDL−ラクチド/グリコリド100:0(メディソルブ(MEDISORB)(R)ポリマー100DL・ハイ(High)、メディソルブ(R)ポリマー100DL・ロウ(Low));DL−ラクチド/グリコリド85/15(メディソルブ(R)ポリマー8515DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー8515DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド75/25(メディソルブ(R)ポリマー7525DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー7525DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド65/35(メディソルブ(R)ポリマー6535DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー6535DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド54/46(メディソルブ(R)ポリマー5050DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー5050DL・ロウ);およびDL−ラクチド/グリコリド54/46(メディソルブ(R)ポリマー5050DL2A(3)、メディソルブ(R)ポリマー5050DL3A(3)、メディソルブ(R)ポリマー5050DL4A(3));(メディソルブ・テクノロジーズ・インターナショナル・L.P.(Medisorb Technologies International L.P.),シンシナティ、オハイオ州);並びにポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコリド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−グリコリド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガム・ポリマーズ・インコーポレーテッド(Birmingham Polymers,Inc.)、バーミンガム、アラバマ州)を包含するが、それらに限定されない。
【0075】
低分子量重合体を含んでなる本発明の注入可能なデポ剤ゲル調剤は2週間以内の短期間にわたる有益な薬剤の調節された持続性放出を与える。放出速度特徴は、低分子量重合体、水非混和性溶媒、重合体/溶媒比、乳化剤、チキソトロピー剤、孔形成剤、有益な薬剤のための溶解度調節剤、浸透剤などの適切な選択により調節することができる。
【0076】
生体適合性重合体はゲル組成物中に粘性ゲルの約5〜約90重量%、好ましくは約10〜約85重量%、好ましくは約15〜約80重量%、好ましくは約20〜約75重量%、好ましくは約30〜約70重量%そして典型的には約35〜約65%、そしてしばしば約
40〜60重量%の範囲の量で存在し、粘性ゲルは生体適合性重合体および溶媒の合計量を含んでなる。注入可能なデポ剤ゲル組成物を与えるために、溶媒が重合体に下記の量で加えられるであろう。
【0077】
B.溶媒および剤:
本発明の注入可能なデポ剤組成物は生腐食性重合体および有益な薬剤の他に水−非混和性溶媒を含有する。好ましい態様では、ここに記載される組成物は25℃における7重量%より大きい水中混和性を有する溶媒を含まない。
【0078】
溶媒は生体適合性でなければならず、重合体と共に粘性ゲルを形成しなければならず、そして移植片中への水吸収を制限しなければならない。溶媒は前記の性質を示す単独溶媒または溶媒の混合物でありうる。用語「溶媒」は、断らない限り、単独溶媒または溶媒の混合物を意味する。適する溶媒は移植片による水の吸収を実質的に制限しそして水中非混和性であると、すなわち7重量%より小さい水中溶解度を有すると、同定されうる。好ましくは、溶媒は5重量%もしくはそれより少なく、より好ましくは3重量%もしくはそれより少なく、そしてさらに好ましくは1重量%もしくはそれより少なく、水中可溶性である。最も好ましくは、溶媒の水中溶解度は0.5重量%もしくはそれより少ない。
【0079】
水混和性は実験で下記の通りにして測定することができる:水(1−5g)を風袋測定された透明容器の中に約20℃の調節された温度で入れ、そして重量測定し、そして候補溶媒を滴下する。溶液を攪拌して相分離を観察する。相分離の観察により測定して飽和点が出現した時に、溶液を一晩放置しそして翌日に再検査する。相分離の観察により測定さして溶液が依然として飽和している場合には、加えられた溶媒の百分率(w/w)を測定する。或いは、さらに溶媒を加えそして工程を繰り返す。加えられた溶媒の合計重量を溶媒/水混合物の最終重量により割り算することにより、溶解度または混和度を測定する。溶媒混合物、例えば20%のトリアセチンおよび80%の安息香酸ベンジル、が使用される場合には、それらを水に加える前に予め混合する。
【0080】
本発明で有用な溶媒は一般的に上記のように7重量%より少なく水溶性である。上記の溶解度パラメーターを有する溶媒は、芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル、例えば安息香酸、フタル酸、サリチル酸、クエン酸の低級アルキルエステル、例えばクエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチルなど、並びにアリール、アラルキルおよび低級アルキルケトンから選択することができる。とりわけ好ましい溶媒は下記の構造式(I)、(II)および(III)を有する化合物から選択される前期範囲内の溶解度を有するものである。芳香族アルコールは構造式(I)
Ar−(L)n−OH (I)
[式中、Arは置換されたもしくは未置換のアリールまたはヘテロアリール基であり、nは0または1であり、そしてLは結合部分である]
を有する。好ましくは、Arは場合により1個もしくはそれ以上の非障害置換基、例えばヒドロキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロなど、で置換されていてもよい単環式アリールまたはヘテロアリール基である。より好ましくは、Arは未置換の5−もしくは6−員のアリールまたはヘテロアリール基、例えばフェニル、シクロペンタジエニル、ピリジニル、ピリマジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリルなど、である。下付き文字「n」は0または1であり、結合部分Lが存在してもまたは存在しなくてもよいことを意味する。好ましくは、nは1でありそしてLは一般的に低級アルキレン結合、例えばメチレンもしくはエチレンであり、ここで結合はヘテロ原子、例えばO、NまたはS、を含んでもよい。最も好ましくは、Arはフェニルであり、nは1でありそしてLはメチレンであり、その結果として、芳香族アルコールはベンジルアルコールである。
【0081】
芳香族酸エステルまたはケトンは、芳香族酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル、並びにアリールおよびアラルキルケトンから選択することができる。必ずしも必要ではないが一般には、芳香族酸エステルおよびケトンはそれぞれ構造式(II)または(III)
【0082】
【化1】

【0083】
を有する。
【0084】
式(II)のエステルでは、Rは置換されたもしくは未置換のアリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル、好ましくは置換されたもしくは未置換のアリールまたはヘテロアリール、より好ましくは場合により1個もしくはそれ以上の非障害置換基、例えばヒドロキシル、カルボキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロなどで置換されていてもよい単環式もしくは二環式アリールまたはヘテロアリール、さらにより好ましくは5−もしくは6−員のアリールまたはヘテロアリール基、例えばフェニル、シクロペンタジエニル、ピリジニル、ピリマジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、そして最も好ましくは5−もしくは6−員のアリールである。Rはヒドロカルビルまたはヘテロ原子−置換されたヒドロカルビル、典型的には低級アルキル或いは置換されたもしくは未置換のアリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル、好ましくは低級アルキル或いは置換されたもしくは未置換のアラルキルまたはヘテロアラルキル、より好ましくは場合により例えばヒドロキシル、カルボキシル、アルコキシ、チオ、アミノ、ハロなどの如き1個もしくはそれ以上の非障害置換基で置換されていてもよい低級アルキル或いは単環式もしくは二環式アラルキルまたはヘテロアラルキル、さらにより好ましくは低級アルキル或いは5−もしくは6−員のアラルキルまたはヘテロアラルキル、そして最も好ましくは場合により構造−O−(CO)−Rを有する1個もしくはそれ以上の追加置換基で置換されていてもよい低級アルキルまたは5−もしくは6−員のアリールである。最も好ましいエステルは安息香酸およびフタル酸誘導体である。
【0085】
式(III)のケトンでは、RおよびRは以上で同定されたRおよびR基のいずれかから選択できる。
【0086】
必要な溶解度を有する溶媒をそこから選択できることが当該技術で認められた安息香酸誘導体は二安息香酸1,4−シクロヘキサンジメタノール、二安息香酸ジエチレングリコール、二安息香酸ジプロピレングリコール、二安息香酸ポリプロピレングリコール、二安息香酸プロピレングリコール、安息香酸ジエチレングリコールおよび安息香酸ジブロプレングリコール配合物、二安息香酸ポリエチレングリコール(200)、安息香酸イソデシル、二安息香酸ネオペンチルグリコール、三安息香酸グリセリル、四安息香酸ペンタエリトリトール、安息香酸クミルフェニル、二安息香酸トリメチルペンタンジオールを包含するが、それらに限定されない。
【0087】
必要な溶解度を有する溶媒をそこから選択できる当該技術で認められたフタル酸誘導体
はフタル酸アルキルベンジル、イソフタル酸ビス−クミル−フェニル、フタル酸ジブトキシエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ノニルウンデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−イソオクチル、フタル酸ジカプリル、混合フタル酸アルコール、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸線状ヘプチル、ノニル、フタル酸線状ヘプチル、ノニル、ウンデシル、フタル酸線状ノニル、フタル酸線状ノニルウンデシル、フタル酸線状ジノニル、ジデシル(フタル酸ジイソデシル)、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ウンデシルドデシル、フタル酸デシルトリデシル、フタル酸ジオクチルおよびジデシルの配合物(50/50)、フタル酸ブチルベンジル、並びにフタル酸ジシクロヘキシルを包含するが、それらに限定されない。
【0088】
本発明で有用な溶媒の多くは市販されているか(アルドリッヒ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)、シグマ・ケミカルズ(Sigma Chemicals))或いは例えば引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,556,905号明細書に記載されている如き酸ハライドおよび場合によりエステル化触媒を用いるそれぞれのアリールアルカン酸の従来のエステル化によりそしてケトンの場合にはそれらのそれぞれの第二級アルコール前駆体の酸化により製造することができる。
【0089】
好ましい溶媒は、上記の芳香族アルコール類、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル類を包含する。代表的な酸は安息香酸およびフタル酸類、例えばフタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸である。最も好ましい溶媒はベンジルアルコールおよび安息香酸の誘導体であり、そして安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミルおよび安息香酸ベンジルを包含するがそれらに限定されず、安息香酸ベンジルが最も特に好ましい。
【0090】
組成物は、1種もしくは複数の水−非混和性溶媒の他に、1種もしくはそれ以上の追加の混和性溶媒(「成分溶媒」)を、そのような追加溶媒のいずれかが低級アルカノール以外であるという条件下では、含むことができる。1種もしくは複数の主要溶媒と相容性であり且つ混和性である成分溶媒は水とのより高い混和性を有してもよくそして生じた混合物は移植片中への水吸収の有意な制限を依然として示すことができる。そのような混合物は「成分溶媒混合物」と称されるであろう。有用な成分溶媒混合物は、本発明の移植片により示される水吸収の制限に有害な影響を与えずに、主要溶媒自体より高い水中溶解度、典型的には0.1重量%から50重量%までの、好ましくは30重量%までの、そして最も好ましくは10重量%までの、間の水中溶解度を示すことができる。
【0091】
成分溶媒混合物中で有用な成分溶媒は主要溶媒または溶媒混合物と混和性である溶媒であり、そしてトリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド類、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱油、ポリブテン、シリコーン流体、グリルセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタン、乳酸エチル、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、並びにそれらの混合物を包含するが、それらに限定されない。
【0092】
好ましい溶媒混合物は、安息香酸ベンジルが主要溶媒であるもの、並びに安息香酸ベン
ジルおよびトリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルまたはN−メチル−2−ピロリドンのいずれかから製造される混合物である。好ましい混合物は、存在する溶媒の合計量の50重量%もしくはそれより多い、より好ましくは60重量%もしくは80重量%またはそれより多い量で安息香酸ベンジルが存在するものである。特に好ましい混合物は、安息香酸ベンジル/トリアセチンおよび安息香酸ベンジル/N−メチル−2−ピロリドンの80/20混合物のものである。別の態様では、好ましい溶媒はベンジルアルコール、並びにベンジルアルコールおよび安息香酸ベンジルまたは安息香酸エチルのいずれかから製造された混合物である。ベンジルアルコール/安息香酸ベンジルおよびベンジルアルコール/安息香酸エチルの好ましい混合物は1/99重量混合物、20/80重量混合物、30/70重量混合物、50/50重量混合物、70/30重量混合物、80/20重量混合物、99/1重量混合物である。ベンジルアルコール/安息香酸ベンジルおよびベンジルアルコール/安息香酸エチルの特に好ましい混合物は25/75重量混合物および75/25重量混合物である。
【0093】
特に好ましい態様では、主要溶媒は芳香族アルコール並びに安息香酸並びに安息香酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル類から選択され、そして重合体は約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000、の範囲にわたる重量平均分子量を有する乳酸−ベース重合体、最も好ましくはPLGA、であり、そしてより好ましくは低分子量重合体は約7000、約6000、約5000、約4000および約3000の分子量を有する。現在では、最も好ましい溶媒はベンジルアルコール、安息香酸ベンジルおよび安息香酸の低級アルキルエステル類、例えば安息香酸エチル、である。主要溶媒、例えば芳香族アルコールおよび安息香酸エステル、は単独でまたはここに記載されているような他の混和性溶媒、例えばトリアセチン、と混合して使用することができる。
【0094】
溶媒または溶媒混合物は、重合体を溶解させて、放出前に使用環境から単離される溶解または分散した有益な薬剤の粒子を維持しうる粘性ゲルを形成することが可能である。本発明の組成物は有益な薬剤の全身的および局部的投与の両方に有用な移植片を与え、移植片は低いバースト指数を有する。水吸収は、重合体を溶解または可塑化するが移植片中への水の吸収を実質的に制限する溶媒または成分溶媒混合物の使用により、調節される。さらに、好ましい組成物は37℃より低いガラス転移温度を有する粘性ゲルを与えることができ、例えばゲルは移植後24時間もしくはそれ以上の期間にわたり非硬質のままである。
【0095】
水吸収制限の重要性並びに短期間にわたる調節された持続性送達のための低分子量重合体および水非混和性溶媒の適切な選択は、種々の組成物に関するインビボ放出速度特徴を時間の関数として示す図1−10の参照により認識できる。
【0096】
溶媒または溶媒混合物は典型的には、粘性ゲルの重量、すなわち、重合体および溶媒の合計量、の約95〜約10重量%、好ましくは約80〜約20重量%、好ましくは約75〜約15重量%、好ましくは約70〜約20重量%、好ましくは約65〜約20重量%、好ましくは約65〜約30重量%そしてしばしば約60〜約40重量%、の量で存在する。重合体対溶媒の比は、重量により、約30:70〜約90:10、好ましくは約40:60〜約80:20、好ましくは約50:50〜約75:25、そしてより好ましくは約55:45〜約65:35の範囲にわたる。
【0097】
溶媒の選択による水吸収の調節および関連する初期バーストの他に、有益な薬剤の水溶解度を調節する剤を好ましい溶媒と一緒に使用して移植片からの有益な薬剤のバーストを阻害することもできる。移植後の最初の24時間内に放出される有益な薬剤のバースト指数および百分率は、有益な薬剤と会合した溶解度調節剤の使用により1/3ないし2/3
に減少させることができる。そのような調節剤は典型的には、コーティング、錯体を形成するかまたはそうでなければ有益な薬剤と会合するかもしくは安定化させる物質、例えば代謝産物、他の安定剤、ワックス、脂質、油、非極性乳化液などである。そのような溶解度調節剤の使用は、より高度に水溶性の溶媒または混合物の使用を可能にし、そして全身的適用に関しては8もしくはそれより低いバースト指数を達成し、或いは局部的適用に関しては移植後24時間に投与された有益な薬剤の40%より多くない有益な薬剤の放出を可能にする。好ましくはその放出は30%より多くなくそしてより好ましくは20%より多くない。
【0098】
本発明の組成物による制限された水吸収はしばしば例えば調節剤の如き他の組成物が必要であるような場合に溶解度調節剤なしに組成物を製造する機会を与える。
【0099】
溶媒および重合体の選択がそれら自体による水吸収を厳しく制限する組成物を生ずる場合には、浸透剤または他の剤および水吸収を所望水準まで促進させる吸水剤を加えることが望ましいことがある。そのような剤は、例えば、糖などであり、そして当該技術で既知である。
【0100】
本発明の溶媒−重合体組成物による制限された水吸収が、先行技術方法を用いて製造される移植片の表面内の指のような孔を含まずに製造される移植片組成物を生ずる。典型的には、本発明の組成物は実質的に均一なスポンジ様ゲルの形態をとり、移植片の内部にある孔は移植片の表面上の孔と同じくらい多い。本発明の組成物はゲル様コンシステンシーを保有しそして有益な薬剤を調節された方法で持続された速度で先行技術の装置より短期間にわたり投与する。これは低分子量重合体および水非混和性溶媒の適切な選択で、そしてさらに本発明の注入可能なデポ剤組成物は一般に被験者の体温、例えば人間に関しては37℃、より低いガラス転移温度、Tg、を有するため、可能となる。本発明で有用な溶媒と水との非混和性のために、移植片による水吸収は制限されそして生ずる孔は閉鎖セル構造を模する傾向があり、有意数の比較的大きい孔または移植片の表面で開放する表面から移植片の内部へ伸びる孔がない。さらに、表面の孔は体液からの水が移植片に移植直後に入る機会を限定された数だけしか与えず、バースト効果を阻害する。組成物はしばしば移植前に非常に粘性であるため、組成物の注入による移植を意図する場合には、粘度−低下性の混和性溶媒の使用もしくは乳化剤の使用により、またはゲル組成物の針内の通過を可能にするのに充分なほど低い粘度もしくは剪断耐性を有するゲル組成物を得るために加熱することにより、粘度を場合により変えることもできる。
【0101】
所望されるかまたは要求される最初の24時間内に放出される有益な薬剤の量に関する制限は、環境、例えば送達期間の全期間、有益な薬剤のための治療窓、過剰投薬による起こりうる悪影響、有益な薬剤の価格、および所望する効果のタイプ、例えば全身的もしくは局部的、に依存するであろう。好ましくは、有益な薬剤の40%もしくはそれより少ない量が最初の24時間以内に放出され、ここで百分率は送達期間にわたり送達される有益な薬剤の合計量を基準とする。典型的には、送達期間が比較的短い、例えば、2週間もしくはそれより短い、好ましくは約10日間もしくはそれより短い、好ましくは約7日間もしくはそれより短い、より好ましくは約3日間ないし約7日間である場合、または有益な薬剤が副作用がほとんどない広い治療窓を有する場合、または有益な薬剤が局部的に作用する場合には、それより高い最初の24時間における放出率が許容されうる。ある種の態様では、移植後24時間以内に、システムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の20重量%またはそれより少ない量を放出し、ここで送達期間は2週間である。別の態様では、移植後24時間以内にシステムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の40重量%またはそれより少ない量を放出し、ここで送達期間は1週間である。別の態様では、移植後24時間以内にシステムは送達期間にわたり送達される有益な薬剤の量の50重量%またはそれより少ない量を放出し、ここで送達期間は3日間である。
【0102】
選択される特定溶媒または溶媒混合物、重合体および有益な薬剤、並びに場合により存在する有益な薬剤の溶解度調節剤によるが、全身的送達を意図する本発明の組成物は8またはそれより低い、好ましくは6またはそれより低い、より好ましくは4またはそれより低いそして最も好ましくは2またはそれより低い、バースト指数を有するゲル組成物を与えうる。10またはそれより低い、好ましくは7またはそれより低い、より好ましくは5またはそれより低いそして最も好ましくは3またはそれより低いバースト指数を有する有益な薬剤の全身的送達を意図する移植片を与えるための、約3000〜約10,000、好ましくは約3000〜約9,000、より好ましくは約4000〜約8,000の範囲にわたるPLGA重量平均分子量、そしてより好ましくは約7000、約6000、約5000、約4000そして約3000の分子量、を有する低分子量重合体と、7重量%より低い水中混和性を有する溶媒との、場合により他の溶媒と組み合わされていてもよい、組成物が特に有利である。ここで論じたような溶媒混合物の使用は、粘性ゲル形成を得そして同時に本発明の組成物の所望するバースト指数および放出目的に合致するのに充分な可塑化を与える手段として、特に有利である。
【0103】
有益な薬剤の局部的送達を意図する組成物は全身的使用を意図するものと同じ方法で製造される。しかしながら、被験者に対する有益な薬剤の局部的投与は有益な薬剤の検出可能な血漿水準をもたらさないであろうし、そのようなシステムはここで定義されたようなバースト指数でなくむしろ予め決められた初期の期間に放出される有益な薬剤の百分率により同定されるべきである。最も典型的には、その期間は移植後の最初の24時間であろうし、そして百分率は送達期間に送達されることが意図される有益な薬剤の重量により割り算されたその期間(例えば24時間)内に放出された有益な薬剤の重量を100の数で掛け算したものに等しいであろう。本発明の組成物はほとんどの用途のためには40%またはそれより低い、好ましくは30%またはそれより低い、最も好ましくは20%またはそれより低い、初期バーストを有するであろう。
【0104】
多くの場合、悪影響を防ぐために局部的投与中に有益な薬剤の初期バーストを低下させることが望ましい。例えば、化学療法剤を含有する本発明の移植片は腫瘍内への直接注入に適する。しかしながら、多くの化学療法剤は全身的に投与される場合には有害な副作用を示すことがある。従って、腫瘍内への局部的投与が選択される処置方法でありうる。しかしながら、化学療法剤が副作用を示すかもしれない血管またはリンパ系統に入りうる場合には大きいバーストのある化学療法剤の投与を回避することが必要である。従って、そのような場合にはここで記載されているような制限されたバーストを有する本発明の移植可能システムが有利である。
【0105】
重合体および溶媒を混合することにより製造されるゲルは典型的には、1.0秒−1剪断速度および25℃においてハーク・レオメーター(Haake Rheometer)を用いて混合が完了した後の約1−2日に測定した約100〜約50,000ポイズ、好ましくは約500〜約30,000ポイズ、より好ましくは約500〜約10,000ポイズの粘度を示す。重合体と溶媒の混合は、従来の低剪断装置、例えばロス(Ross)二重遊星歯車ミキサー、を用いて約10分間〜約1時間にわたり行うことができるが、製造する組成物の特定の物理的特性により当業者はそれより短いおよび長い期間を選択することができる。本発明のデポ剤ゲル組成物は注入可能な組成物として投与されるため、粘性ゲルであるデポ剤ゲル組成物を生成する際の相殺性である考慮点は、重合体/溶媒/有益な薬剤の組成物はそれを小さい直径、例えば、18−20ゲージ針の中に強制加入することを可能にするために充分なほど低い粘度を有することである。必要なら、注入用ゲルの粘度調節はここに記載された乳化剤またはチキソトロピー剤を用いて行うことができる。なお、局在化を維持し且つ必要に応じて取り出し可能であるようにするためにそのような組成物は適切な寸法安定性を有していなければならない。本発明の特定のゲルまたはゲ
ル様組成物はそのような条件を満たす。
【0106】
重合体組成物を注入可能なゲルとして投与する場合には、粘性ゲルを針から送達させるためのちょうどよい力および有効なバースト効果を可能にするためには重合体溶解水準を生じたゲル粘度と均衡させる必要があるであろう。高粘性ゲルは有意なバースト効果を示さずに有益な薬剤を送達させることを可能にするが、ゲルを針の中に送達させることを難しくするかもしれない。それらの場合には、場合により乳化剤を組成物に加えてもよい。また、組成物の温度が上昇するにつれて粘度は一般的に低下しうるため、ある種の適用では加熱によりゲルの粘度を下げてより容易に注入可能な組成物を与えることが有利となりうる。本発明のデポ剤ゲル組成物の剪断薄肉化特性により、それらは人間を包含する動物内に標準ゲージ針を用いて過度の送達圧力を必要とせずに容易に注入可能になる。
【0107】
従来の静止または機械的混合装置、例えばオリフィスミキサー、を用いて重合体および溶媒から製造される粘性ゲルに乳化剤が混合される場合には、乳化剤は典型的には約100ミクロンより小さい平均直径を有する微小寸法の分散された小滴からなる別個の相を形成する。重合体および溶媒の連続層が形成される。有益な薬剤の粒子は連続相または小滴相のいずれかに溶解または分散させうる。生じたチキソトロピー組成物では、乳化剤の小滴が剪断方向に伸びそして重合体および溶媒から製造された粘性ゲルの粘度を実質的に下げる。例えば、1.0秒−1で25℃において測定した約5,000〜約50,000ポイズの粘度を有する粘性ゲルでは、25℃の10%エタノール/水溶液で乳化される場合には、ハーク・レオメーターにより測定して100ポイズより少ない値への粘度減少を得ることができる。
【0108】
使用時には、注入可能なデポ剤ゲル組成物の量、すなわち重合体、溶媒、乳化剤および有益な薬剤の合計量を基準として、乳化剤は典型的には約5〜約80重量%、好ましくは約20〜約60重量%そしてしばしば30〜50重量%の範囲にわたる量で存在する。乳化剤は、例えば、重合体溶媒または溶媒混合物と完全には混和性でない溶媒を包含する。例示乳化剤は、水、アルコール類、ポリオール類、エステル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類およびそれらの混合物である。好ましい乳化剤は、アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、水、並びにそれらの溶液および混合物である。水、エタノール、およびイソプロピルアルコール、並びにそれらの溶液および混合物が特に好ましい。乳化剤のタイプは、分散される小滴の寸法に影響を与える。例えば、エタノールは0.9重量%の塩化ナトリウムを含有する等張性食塩水溶液を用いて得られた小滴より21℃において10倍ほど大きい平均直径を有する小滴を与えるであろう。
【0109】
チキソトロピー剤、すなわち重合体ゲルにチキソトロピー性質を与える剤、は低級アルカノール類から選択される。低級アルカノールは炭素数2−6のアルコールを意味しそして直鎖状もしくは分枝鎖状である。そのようなアルコール類はエタノール、イソプロパノールなどにより例示されうる。重要なことに、そのようなチキソトロピー剤は重合体溶媒でない。(例えば、Development of an in situ forming bidegradable poly−lactide−co−glycolide system for controlled release of proteins,Lambert,W.J.,and Peck,K.D.,Journal of Controlled Release, 33(1995) 189−195参照)。使用時には、チキソトロピー剤は溶媒およびチキソトロピー剤の合計重量の0.01〜15重量%の量で、好ましくは0.1〜5重量%の量で、そしてしばしば0.5〜5重量%の量で存在しうる。
【0110】
乳化剤および/またはチキソトロピー剤は単なる希釈剤または単に組成物の成分の濃度
を低下させることにより粘度を低下させる重合体−溶媒でないことを理解すべきである。一般的希釈剤の使用は粘度を下げうるが、希釈された組成物が注入される時に前記のバースト効果も引き起こしうる。対照的に、適切な低分子量重合体、溶媒および乳化剤を選択して、位置に注入された乳化剤が元のシステムの放出性質にほとんど影響を与えないようにすることにより、本発明の注入可能なデポ剤組成物を調合してバースト効果を回避することができる。
【0111】
本発明の注入可能なデポ剤ゲル組成物は好ましくは粘性ゲルとして製造され、移植片の投与手段は注入に限定されないが、その送達方式がしばしば好ましい。注入可能なデポ剤ゲル組成物が残留製品(leave−behind product)として投与される場合には、手術の完了後に存在する体腔内に適合するようにそれを形成することができ、またはゲルを残存組織もしくは骨の上に塗るかもしくは載せることによりそれを流動可能ゲルとして適用することもできる。そのような適用は、注入可能な組成物の場合に典型的に存在する濃度より高いゲル中への有益な薬剤の充填を可能にする。
【0112】
有益な薬剤:
有益な薬剤は、場合により製薬学的に許容可能な担体並びに本発明により得られうる有利な結果に実質的に悪影響を与えない追加成分、例えば酸化防止剤、安定剤、透過促進剤などと組み合わされていてもよい、1種もしくは複数の生理学的もしくは薬理学的に活性である物質でありうる。有益な薬剤は、人間または動物の体に送達されることが知られておりそして重合体を溶解する溶媒中より水中に優先的に可溶性であるいずれかの薬剤でありうる。これらの薬剤(agent)は、薬品(drug)、医薬、ビタミン、栄養剤などを包含する。この記述に合致する剤のタイプの中には、低分子量化合物、蛋白質、ペプチド、遺伝物質、栄養剤、ビタミン、食品補助剤、性不能化剤(sex sterilants)、避妊剤および妊娠促進剤が包含される。
【0113】
本発明により送達できる薬剤は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、共通部位(synoptic sites)、神経効果器接合部位(neuroeffector junctional sites)、エンドクリンおよびホルモン系、免疫系、再生系、骨格系、オータコイド系、食事および排泄系、ヒスタミン系並びに中枢神経系に作用する薬品を包含する。適する剤は、例えば、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、化学療法剤、免疫阻害剤、抗炎症性コルチコステロイドを包含する抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、フィブリン溶解剤、成長因子、抗体、目薬、並びに代謝産物、これらの種の同族体(合成および置換された同族体を包含する)、誘導体(他の高分子物質との集合共役体/融合体および当該技術で既知の手段による無関係の化学部分との共有結合共役体を包含する)断片、並びに精製された、単離された、組み換えおよび化学合成変種から選択することができる。
【0114】
本発明の組成物により送達されうる薬品の例は、プロカイン、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、コカイン、コカイン塩酸塩、クロロプロカイン、クロロプロカイン塩酸塩、プロパラカイン、プロパラカイン塩酸塩、ピペロカイン、ピペロカイン塩酸塩、ヘキシルカイン、ヘキシルカイン塩酸塩、ナエパイン、ナエパイン塩酸塩、ベンゾキシネート、ベンゾキシネート塩酸塩、シクロメチルカイン、シクロメチルカイン塩酸塩、シクロメチルカイン硫酸塩、リドカイン、リドカイン塩酸塩、ブピビカイン、ブピビカイン塩酸塩、メピビカイン、メピバカイン塩酸塩、プリロカイン、プリロカイン塩酸塩、ジブカインおよびジブカイン塩酸塩、エチドカイン、ベンゾカイン、プロポキシカイン、ジクロニン、プラモキシン、オキシブプロカイン、プロクロルペルジン・エジシレート、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、メカミルアミン塩酸塩、プロカインアミド塩酸塩、
硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン塩酸塩、ベンズアンフェタミン塩酸塩、硫酸イソプロテレノール、フェンメトラジン塩酸塩、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、ピロカルピン塩酸塩、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、フェンホルミン塩酸塩、メチルフェニデート塩酸塩、コール酸テオフィリン、セファレキシン塩酸塩、ジフェニドール、メクリジン塩酸塩、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンズアミン、マレイン酸チエルペルジン、アニシンドン、四硝酸ジフェナジオンエリスリチル、ジゴキシン、イソフルオロフェート、アセトアゾールアミン、メタゾールアミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド、トラザミド、酢酸クロルマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アルミニウムアスピリン、メトトレキサート、アセチル・スルフィソキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチソン、酢酸ヒドロコルチコステロン、酢酸コルチソン、デキサメタソン並びにその誘導体、例えばベタメタソン、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17−S−エストラジオール、エチニル・エストラジオール、エチニル・エストラジオール3−メチルエーテル、プレドニソロン、酢酸17α−ヒドロキシプロゲステロン、19−ノル−プロゲステロン、ノルゲステレル、ノレシンドロン、ノレシステロン、ノレチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノレシノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドーパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第一鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンズアミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、クアンベンズ、ヒドロクロロチアジド、ランチジン、フルルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック、フルフェナミック、ジフイナル、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノルプリル、エナラプリル、エナラプリラト、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルフェート、エチンチジン、テトラトトール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンを包含するが、それらに限定されない。別の例は、骨形態発生蛋白質、インスリン、コルチシン、グルカゴン、甲状刺激ホルモン、甲状腺旁および下垂体ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロフィン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛膜ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、牛ソマトトロピン、豚ソマトトロピン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレッシン、パンクレオジミン、黄体ホルモン、LHRH、LHRH作用物質および拮抗物質、ロイプロリド、インターフェロン類、例えばインターフェロン・アルファ−2a、インターフェロン・アルファ−2b、および交感インターフェロン、インターロイキン類、成長因子、例えば表皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽増殖因子(FGF)、トランスフォーシング増殖因子−α(TGF−α)、トランスフォーシング増殖因子−β(TGF−β)、エリトロポイエチン(EPO)、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−6、インターロイキン−8、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、腫瘍壊死因子−β(TNF−β)、インターフェロン−α(INF−α)、インターフェロン−β(INF−β)、インターフェロン−γ(INF−γ)、インターフェロン−ω(INF−ω)、コロニー刺激因子(CGF)、脈管細胞成長因子(VEGF)、トロンボポイエチン(TPO)、ストローマ細胞−由来因子(SDF)、胎盤成長因子(PIGF)、肝細胞成長因子(HGF)、顆粒球大食細胞コロニー刺激因子(GM−CSF)、神経膠−由来ニューロトロピン因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、線毛向神経性因子(CNTF)、骨形態発生蛋白質(BMP)、凝固因子、ヒト脾臓ホルモン放出因子、これらの化合物の同族体および誘導体、並びにこれらの化合物の製
薬学的に許容可能な塩類、またはそれらの同族体もしくは誘導体を包含するがそれらに限定されない蛋白質およびペプチド類である。
【0115】
本発明の組成物により送達されうる薬品の追加例は、天然製品、例えばビンカアルカロイド類(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン類(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラシクリン類、ミトキサントロン、ブレオマイシン類、プリカマイシン(ミスラマイシン)およびミトマイシン、酵素(L−アスパラギンを系統的に代謝しそしてそれら自体のアスパルギンを合成する能力を有していない細胞を取奪するL−アスパラギナーゼ)を包含する抗増殖/抗有糸分裂剤;抗血小板剤、例えばG(GP)IIIII阻害剤およびビトロネクチン受容体拮抗物質;抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤、例えば窒素マスタード類(メクロレタミン、シクロフォスファミドおよび同族体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミン類およびメチルメラミン類(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア類(カルムスチン(BCNU)および同族体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC);抗増殖性/抗有糸分裂性抗代謝産物、例えば葉酸同族体(メスロトレキセート)、ピリミジン同族体(フルオロウラシル、フロクスリジン、およびシタラビン)、プリン同族体および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン類(すなわち、エストロゲン);抗精神病剤(例えば、フェノチアジン類、チオキサンテン類、ブチロフェノン類、ジベンゾキサゼピン類、ジベンゾジアゼピン類およびジフェニルブチルピペリジン類を包含するがそれらに限定されない、抗精神病薬、神経弛緩薬、精神安定剤、並びにドーパミン、ヒスタミン、ムスカリン様コリン、アドレナリンおよびセロトニン受容体に結合する抗精神病剤);中枢神経系(CNS)剤;抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビンの阻害剤);線維芽溶解剤(例えば、組織プラスミノゲン活性化剤、ステレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブラベルジン);抗炎症剤:例えば副腎皮質ステロイド類(コルチゾル、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニソン、プレドニソロン、6α−メチルプレドニソロン、トリアンシノロン、ベータメタソン、およびデキサメタソン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラ−アミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン);インドールおよびインデン酢酸類(インドメタシン、スリンダック、およびエトダラック)、ヘテロアリール酢酸類(トルメチン、ジクロフェナック、およびケトロラック)、アリールプロピオン酸類(イブプロフェンおよび誘導体)、アントラニル酸類(メフェナミン酸、およびメクロフェナミン酸)、エノール酸類(enolic acids)(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(オーラノフリン、オーロチオグルコース、チオマレイン酸金ナトリウム);免疫阻害剤:(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノレート・モフェチル);脈管形成剤:脈管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽増殖因子(FGF);アンギオテンシン受容体遮断剤;酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド類およびそれらの組み合わせ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、および成長因子情報伝達キナーゼ阻害剤、これらの化合物の同族体および誘導体、並びにこれらの化合物の製薬学的に許容可能な塩類、またはそれらの同族体もしくは誘導体を包含するがそれらに限定されない。
【0116】
ある種の好ましい態様では、有益な薬剤は化学走性増殖因子、増殖成長因子、刺激成長因子、並びに遺伝子、前躯体、翻訳後変種、代謝産物、結合−蛋白質、受容体、下記の増殖因子族:表皮増殖因子(EGF)、血小板−由来増殖因子(PDGF)、インスリン様
増殖因子(IGF)、線維芽増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、インターロイキン類(IL)、コロニー刺激因子(CSF、MCF、GCSF、GMCSF)、インターフェロン類(IFN)、内皮増殖因子(VEGF、EGF)、エリスロポイエチン類(EPO)、アンギオポイエチン類(ANG)、副腎皮質由来増殖因子(PIGF)および低酸素症誘発性転写調節剤(HIF)の受容体作用物質および拮抗物質を含むトランスフォーミングペプチド増殖因子を包含する。
【0117】
本発明は、全身的副作用を回避するかまたは最少にするためのそのような剤の局部適用のための化学療法剤と一緒の適用も見出した。化学療法剤を含有する本発明のゲル剤は経時的な化学療法剤の持続性送達のために腫瘍組織内に直接注入することができる。ある場合には、特に腫瘍の切除後には、生じた空洞内にゲル剤を直接移植することができ或いは残存組織にコーティングとして適用することもできる。ゲル剤が手術後に移植される場合には、比較的高い粘度を有するゲル剤は小直径針の中を通過しないためそれらを利用することが可能である。本発明の実施に従い送達できる代表的な化学療法剤は、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、BCNU、ビンクリスチン、カムプトテシン、エトプシド、シトキン類、リボザイム類、インターフェロン類、腫瘍遺伝子の翻訳または転写を阻害するオリゴヌクレオチド類およびオリゴヌクレオチド配列、前記のものの官能性誘導体、並びに例えば米国特許第5,651,986号明細書に記載されたものの如き一般的に既知である化学療法剤を包含する。本出願は、水溶性化学療法剤、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン並びにパクリタキセルの水溶性誘導体、の持続性送達において特に有用である。バースト効果を最少にする本発明のこれらの特性は、全種類の水溶性の有益な薬剤、特に臨床的に有用であり有効であるが悪い副作用を有する化合物、の投与において有利である。
【0118】
以上で挙げられている程度までではないが、上記の米国特許第5,242,910号明細書に記載された有益な薬剤を使用することもできる。本発明の1つの特別な利点は、酵素リゾチーム、並びにcDNA、およびマイクロカプセル化もしくは微球への加工が難しいビールスおよび非ビールスの両者のベクター中に導入されたDNAにより例示される例えば蛋白質の如き物質を、他の処理技術においてしばしば存在する高温および変性溶媒への露呈により引き起こされる水準低下なしに、本発明の組成物の中に導入しうることである。
【0119】
有益な薬剤は好ましくは、重合体および溶媒から製造される粘性ゲル剤の中に、典型的には約0.1〜約250ミクロン、好ましくは約1〜約200ミクロンそしてしばしば30〜125ミクロン、の平均粒子径を有する粒子の形態で導入される。例えば、50%のスクロースおよび50%の鶏リゾチーム(乾燥重量基準)並びに10−20%のhGHおよび15−30mMの酢酸亜鉛の混合物を含有する水性混合物を噴霧乾燥または凍結乾燥することにより、約5ミクロンの平均粒子径を有する粒子が製造された。そのような粒子は図面に示されたある種の例で使用された。従来の凍結乾燥法を利用して適切な凍結および乾燥サイクルを用いて種々の寸法の有益な薬剤の粒子を製造することもできる。
【0120】
重合体および溶媒から製造される粘性ゲル剤中の有益な薬剤の粒子の懸濁液または分散液を製造するためには、いずれかの従来の低剪断装置、例えばロス二重遊星歯車ミキサー、を周囲条件において使用することができる。この方法で、有益な薬剤を実質的に変性させずに有益な薬剤の効果的な分布を得ることができる。
【0121】
有益な薬剤は典型的には組成物の中に、重合体、溶媒、および有益な薬剤の合計量の、約0.1〜約50重量%の量で、好ましくは約1〜約40重量%の量で、より好ましくは約2〜約30%の量で、そしてしばしば2〜20重量%で、溶解または分散する。組成物中の有益な薬剤の量により、種々の放出特徴およびバースト指数を得ることができる。よ
り具体的には、特定の重合体および溶媒に関しては、これらの組成物の量および有益な薬剤の量を調節することにより、組成物からの有益な薬剤の拡散よりむしろ重合体の変性に依存するかあるいは逆の放出特徴を得ることができる。これに関しては、有益な薬剤の比較的低い充填速度では、一般に放出速度が時間につれて増加するような重合体の変性を反映する放出特徴が得られる。比較的高い充填速度では、一般に放出速度が時間につれて低下するような有益な薬剤の拡散により引き起こされる放出特徴が得られる。中間的充填速度では、組み合わせ放出特徴が得られるため所望するなら実質的に一定の放出速度を得ることができる。バーストを最少にするためには、全ゲル組成物、すなわち、重合体、溶媒および有益な薬剤、の重量の30%もしくはそれより少ない程度の有益な薬剤の充填が好ましく、そして20%もしくはそれより少ない充填が好ましい。
【0122】
有益な薬剤の放出速度および充填を調節して、意図する持続性送達期間にわたる有益な薬剤の治療的に有効な送達を与えるであろう。好ましくは、有益な薬剤は重合体ゲル剤の中では有益な薬剤の水中飽和濃度より高い濃度で存在して、有益な薬剤がそこから送達される薬品受器を与えるであろう。有益な薬剤の放出速度は特定の環境、例えば投与される有益な薬剤、に依存するが、約0.1〜約100マイクログラム/日、好ましくは約1〜約10マイクログラム/日の程度の放出速度が約3日間〜約2週間の期間にわたり得られうる。送達がより短い期間にわたり起きる場合には、より多い量を送達することができる。一般に、より大きいバーストに耐えうる場合にはより多い量を送達することができる。ゲル組成物が手術により移植されるかまたは疾病状態もしくは他の症状を処置するための手術が同時に行われる場合には、移植片が拒絶されるなら通常投与されるであろうものより高い薬用量を与えることが可能である。さらに、移植されたゲル剤または注入された注入可能なゲル剤の容量を調節することにより、有益な薬剤の薬用量を調節することもできる。
【0123】
図1−9は、本発明の好ましい組成物からラットで得られた種々の有益な薬剤の代表的な放出特徴を示す。図面に示されているように、低分子量重合体を含んでなる本発明の注入可能なデポ剤ゲル調剤は2週間以内の短期間にわたる有益な薬剤の調節された持続性放出を与える。
【0124】
場合により存在する追加成分:
他の成分、例えばポリエチレングリコール、ハイドロスコープ剤(hydroscopic agents)、安定剤、孔形成剤など、を注入可能なデポ剤ゲル組成物の中に、それらが所望されるかまたは組成物に有用な性質を与える程度まで、存在しうる。組成物が水性環境中に可溶性であるかもしくはその中で不安定であるペプチドまたは蛋白質を包含する場合には、溶解度調節剤、例えば安定剤、を組成物の中に含むことが非常に望ましい。種々の調節剤は引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,654,010号および第5,656,297号明細書に記載されている。例えば、hGHの場合には、ある量の2価金属、好ましくは亜鉛、の塩を含むことが好ましい。有益な薬剤との錯体を生成するかまたは安定性もしくは調節された放出効果を与えるために会合しうるそのような調節剤および安定剤の例は、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、他の制酸薬などのような組成物中に存在する、好ましくは2価の、金属カチオンを包含する。そのような剤の使用量は、あるとしたら生成する錯体の性質、または有益な薬剤と剤との間の会合の性質に依存するであろう。約100:1〜1:1、好ましくは10:1〜1:1の、溶解度調節剤または安定剤対有益な薬剤のモル比を典型的に利用することができる。
【0125】
孔形成剤は、体液と接触した時に溶解、分散または崩壊して重合体マトリックス中に孔または溝を作成する生体適合性物質を包含する。代表的には、水溶性である有機および非
有機物質、例えば糖(例えば、スクロース、デキストロース)、水溶性塩(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、および炭酸ナトリウム)、水溶性溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコール並びに水溶性重合体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)を孔形成剤として簡便に使用することができる。そのような物質は重合体の重量の約0.1〜約100重量%の量で存在しうるが、典型的には重合体の重量の50%より少なくそしてより典型的には10−20%より少ないであろう。
【0126】
効用および投与:
デポ剤ゲル組成物の投与手段は注入に限定されないが、この送達方式がしばしば好ましい。デポ剤ゲル組成物が残留製品として投与される場合には、それは手術の完了後に存在する体腔内に適合するように製造することができ或いはゲル剤を残存組織もしくは骨の上に塗るかまたは載せることにより流動性ゲル剤として適用することができる。そのような適用は、注入可能な組成物の場合に典型的に存在する濃度より高いゲル中での有益な薬剤の充填を可能にしうる。
【0127】
有益な薬剤を含まない本発明の組成物は、外傷治癒、骨修復および他の構造支持目的のために有用である。
【0128】
本発明の種々の面をさらに理解するために、前記の図面に示された結果が以下の実施例に従い得られた。
【0129】
実施例
【実施例1】
【0130】
デポ剤ゲル製造
組成物の注入可能なデポ剤中での使用のためのゲル賦形剤は下記の通りにして製造された。ガラス容器をメトラー(Mettler)PJ3000トップ・ローダー・バランス上で風袋を測った。0.15のインヘレント粘度を有する5:50DL−PLG(PLGA−BPI、バーミンガム・ポリマーズ・インコーポレーテッド、バーミンガム、アラバマ州)および50:50レソマー(R)RG502(PLGA RG 502)として入手可能なポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)をガラス容器中で重量測定した。重合体を含有するガラス容器の風袋を測りそして対応する溶媒を加えた。種々の重合体/溶媒組み合わせに関する百分率で表示された量を以下の表1に示す。重合体/溶媒混合物を250±50rpm(IKA電気スタラー、IKH・ウェルケ・GmbH・アンド・カンパニー(IKH Werke GmbH and Co.)、スタフェン、ドイツ)で約5−10分間にわたり攪拌して、重合体粒子を含有する粘性のペースト様物質を生じた。重合体/溶媒混合物を含有する容器を密封しそして37℃に平衡化した温度調節インキュベーターの中に、溶媒および重合体タイプ並びに重合体比により、1〜4日間にわたり、間欠的に攪拌しながら入れた。重合体/溶媒混合物が透明な琥珀色の均質溶液であると見えた時に、それをインキュベーターから除去した。その後、混合物をオーブン(65℃)の中に30分間にわたり入れた。オーブンからの除去時にPLGAが混合物中に溶解していたことが示された。
【0131】
別のデポ剤ゲル賦形剤は下記の溶媒または溶媒の混合物を用いて製造される:安息香酸ベンジル(「BB」)、ベンジルアルコール(「BA」)、安息香酸エチル(「EB」)、BB/BA、BB/エタノール、BB/EB並びに下記の重合体:ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)50:50レソマー(R)RG502、コード0000366、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)50:50レソマー(R)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリD,Lラクチド(レソマー(R)R2
02、レソマー(R)R203);ポリジオキサノン(レソマー(R)X210)(ベーリンガー・インゲルハイム・ケミカルズ・インコーポレーテッド、ピーターズブルグ、バージニア州);DL−ラクチド/グリコリド100:0(メディソルブ(R)ポリマー100DL・ハイ)、メディソルブ(R)ポリマー100DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド85/15(メディソルブ(R)ポリマー8515DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー8515DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド75/25(メディソルブ(R)ポリマー7525DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー7525DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド65/35(メディソルブ(R)ポリマー6535DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー6535DL・ロウ);DL−ラクチド/グリコリド54/46(メディソルブ(R)ポリマー5050DL・ハイ、メディソルブ(R)ポリマー5050DL・ロウ);およびDL−ラクチド/グリコリド54/46(メディソルブ(R)ポリマー5050DL2A(3)、メディソルブ(R)ポリマー5050DL3A(3)、メディソルブ(R)ポリマー5050DL4A(3));(メディソルブ・テクノロジーズ・インターナショナル・L.P.、シンシナティ、オハイオ州);並びにポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコリド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガム・ポリマーズ・インコーポレーテッド、バーミンガム、アラバマ州)。
【実施例2】
【0132】
hGH粒子製造
ヒト成長ホルモン(hGH)粒子(場合により酢酸亜鉛を含有)は下記の通りにして製造された:hGH(5mg/ml)水溶液(ブレサゲン・コーポレーション(BresaGen Corporation)、アデレイド、オーストラリア)を濃度/透析選択ダイアフィルタリング(diafiltering)装置を用いて10mg/mlに濃縮した。ダイアフィルター処理されたhGH溶液を5倍容量のトリスまたはリン酸塩緩衝溶液(pH7.6)で洗浄した。hGHの粒子を次に従来技術を用いる噴霧乾燥または凍結乾燥により製造した。hGH(5mg/ml)を含有するリン酸塩緩衝溶液(5または50mM)(およびZn複合粒子が製造される時には場合により種々の水準の酢酸亜鉛(0〜30mM))を下記のパラメ−ターに設定されたヤマト・ミニ・スプレー(Yamato
Mini Spray)乾燥機を用いて噴霧乾燥した。
【0133】
【表1】

【0134】
2−100ミクロンの間の寸法範囲を有するhGH粒子が得られた。凍結乾燥された粒子はhGH(5mg/mL)を含有するトリス緩衝溶液からデュラストップ(Durastop)μP凍結乾燥機を用いて下記の凍結および乾燥サイクルで製造した:
【0135】
【表2】

【0136】
2−100ミクロンの間の寸法範囲を有するhGH粒子が得られた。
【実施例3】
【0137】
hGH−ステアリン酸粒子製造
ヒト成長ホルモン(hGH)粒子は下記の通りにして製造された:凍結乾燥されたhGH(3.22グラム、ファーマシア−アップジョン(Pharmacia−Upjohn)、ストックホルム、スウェーデン)およびステアリン酸(3.22グラム、95%純度、シグマ−アルドリッヒ・コーポレーション(Sigma−Aldrich Corporation)、セントルイス、ミズーリ州)を配合しそして粉砕した。粉砕された物質を13mm丸型ダイの中で、10,000ポンドの力で5分間にわたり、圧縮した。圧縮錠剤を粉砕しそして70メッシュスクリーンを通して、引き続き400メッシュスクリーンを通して、ふるいかけして、38−212ミクロンの間の寸法範囲を有する粒子を得た。
【実施例4】
【0138】
ブピバカイン塩基製造
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッヒ・コーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)を脱イオン(DI)水の中に40mg/mlの濃度(飽和)で溶解させた。計算された量の水酸化ナトリウム(1N溶液)を溶液に加えそして最終混合物のpHを10に調節してBP塩基を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過し、そしてDI水で少なくとも3回洗浄した。沈殿した生成物を約40℃で真空中で24時間にわたり乾燥した。
【実施例5】
【0139】
ブピバカイン粒子製造
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッヒ・コーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)または実施例4に従い製造されたブピバカイン塩基および塩酸塩を使用するブピバカイン薬品粒子は下記の通りにして製造された。ブピビカインを粉砕しそして次に3”ステンレス鋼ふるいを用いてふるいかけして一定範囲とした。典型的範囲は、25μm〜38μm、38μm〜63μm、および63μm〜125μmを包含する。
【実施例6】
【0140】
ブピバカイン−ステアリン酸粒子製造
ブピバカイン粒子は下記の通りにして製造された:ブピバカイン塩酸塩(100g、シグマ−アルドリッヒ・コーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)を粉砕しそして63−125ミクロンふるいを通してふるいかけした。ブピバカイン粒子およびステアリン酸(100g、95%純度、シグマ−アルドリッヒ・コーポレーション、セントルイス、ミズーリ州)を配合しそして粉砕した。粉砕された物質を13mm丸型ダイの中で、5,000ポンドの力で5分間にわたり、圧縮した。圧縮錠剤を粉砕しそして120メッシュスクリーンを通して、引き続き230メッシュスクリーンを通して、ふるいかけして、63−125ミクロンの間の寸法範囲を有する粒子を得た。
【実施例7】
【0141】
薬品充填
有益な薬剤を上記の通りにして製造されたステアリン酸と共にまたはなしに含んでなる粒子を賦形剤に10−30重量%の量で加えそして乾燥粉末が完全に湿るまで手動的に配合した。次に、乳状の淡黄色粒子/ゲル混合物を四角い先端の金属スパチュラを装備したカフラモ(Caframo)機械的スタラーを用いて従来法で混合することにより充分に配合した。生じた調剤を以下の表1、2および3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
代表的な数の移植可能なデポ剤ゲル組成物を前記工程に従い製造し、そして有益な薬剤のインビトロ放出を時間の関数として試験しそしてインビボ試験ではラットにおいて有益な薬剤の血漿濃度により測定される有益な薬剤の放出を時間の関数として測定するために試験した。
【実施例8】
【0146】
ブピバカイン・インビボ試験
ラットにおけるインビボ試験(1群当り4または5)を本発明の移植片システムによるブピバカインの全身的投与時のブピバカインの血漿水準を測定するためのオープン・プロトコル(open protocol)に従い行った。デポ剤ゲルブピバカイン調剤を注文製作した0.5ccの使い捨て注入器に充填した。使い捨て18ゲージ針を注入器に取り付けそして循環浴を用いて37℃に加熱した。デポ剤ゲルブピバカイン調剤をラットに注入しそして血液を指定された時間間隔(1時間、4時間並びに1、2、5、7、9、14、21および28日)で吸引しそしてLC/MSを用いてブピバカインに関して分析した。
【0147】
図1、2および3は、本発明のものを包含する種々のデポ調剤からラットで得られたブピバカイン塩酸塩およびブピバカイン塩基のインビボ放出特徴を図式的に示す。低分子量PLGAを有するデポ調剤のインビボ放出特徴(図1、2および3中の調剤2および4)は、対照調剤(高分子量PLGAを有する)と比べて、約7日間にわたる短い放出期間を示した。それ故、低分子量重合体を含んでなる本発明の注入可能なデポ剤ゲル調剤は、2週間以内の短期間にわたり有益な薬剤の調節された持続性放出を与える。
【実施例9】
【0148】
hGHインビボ試験
ラットにおけるインビボhGH試験を本発明の移植片システムによるhGHの全身的投
与時のhGHの血清水準を測定するためのオープン・プロトコルに従い行った。デポ剤ゲルhGH調剤を注文製作した0.5ccの使い捨て注入器に充填した。使い捨て16ゲージ針を注入器に取り付けそして循環浴を用いて37℃に加熱した。デポ剤ゲルhGH調剤を免疫阻害されたラットに注入しそして血液を指定された時間間隔で吸引した。全ての血清試料を分析前に4℃で貯蔵した。試料を放射免疫検定(RIA)を用いて無傷のhGH含有量に関して分析した。
【0149】
図4、5および6は、本発明のものを包含する種々のデポ調剤からラットで得られたヒト成長ホルモン(「hGH」)のインビボ放出特徴を図式的に示す。低分子量PLGAを有するデポ調剤のインビボ放出特徴(図4、5および6中の調剤6および7)は、対照調剤(高分子量PLGAを有する)と比べて、約7−14日間にわたる短い放出期間を示した。それ故、低分子量重合体を含んでなる本発明の注入可能なデポ剤ゲル調剤は、2週間以内の短期間にわたり有益な薬剤の調節された持続性放出を与える。
【実施例10】
【0150】
ブピバカイン・デポ調剤に関するインビボ試験
表3に示されているように、種々のデポ調剤はエステル末端基またはカルボキシル末端基のいずれかを有する低分子量PLGAから例えば安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、安息香酸エチル(EB)、BB/エタノール、BB/BA、BB/EBなどの混合物の如き種々の溶媒を、種々の重合体/溶媒比で、用いて製造することができる。薬品粒子は例えばステアリン酸(SA)の如き疎水性賦形剤を用いてまたはなしのいずれかで製造することができる。
【0151】
図7は、BBまたはBAのいずれかの中で低分子量PLGAから製造されたデポ調剤からラットにおいて得られたブピバカインのインビボ放出特徴を図式的に示す。図8は、低分子量PLGAからBAの中で種々の重合体/溶媒比で製造されたデポ調剤からラットにおいて得られたブピバカインのインビボ放出特徴を図式的に示す。図9は、種々の末端基を有する低分子量PLGAからBAの中で製造されたデポ調剤からラットにおいて得られたブピバカインのインビボ放出特徴を図式的に示す。図10は、SAと共にまたはなしのいずれかで調合された薬品粒子と共に低分子量PLGAからBAの中で製造されたデポ調剤からラットにおいて得られたブピバカインのインビボ放出特徴を図式的に示す。
【0152】
この実施例に示されているように、エステルまたはカルボキシル基で末端が覆われた低分子量PLGAを用いることにより、デポ剤からの活性剤の短期放出が達成されうる。調剤は種々の溶媒または溶媒混合物の中で種々の重合体/溶媒比で製造できる。従ってデポ剤からの活性剤の放出特徴は変えられうる。
【実施例11】
【0153】
PLGA重合体に関する示差走査熱量計(DSC)測定
本発明で使用される種々の低分子量PLGA重合体のガラス転移温度を示差走査熱量計(DSC)(パーキン・エルマー・ピリス(Perkin Elmer Pyris)1、シェルトン、コネチカット州)を用いて測定した。DSC試料パンをメトラーPJ3000トップ・ローダー・バランス上で風袋を測った。少なくとも20mgの重合体試料をパンの中に入れた。試料の重量を記録した。DSCパンの蓋をパンの上に置きそしてプレッサーを用いてパンを密封した。温度を10℃増分で−50℃から90℃に走査させた。
【0154】
図11および12は、エステル基またはカルボキシル端部で末端が覆われた本発明で示された調剤中で使用される低分子量PLGAのDSC図における差異を示す。これらのデータは、本発明で使用される低分子量PLGA重合体が30℃より上のガラス転移温度(「Tg」)を有することを示す。
【実施例12】
【0155】
PLGA重合体のインビトロ変性
本発明で使用される低分子量PLGA重合体の変性特徴をインビトロで37℃においてPBS緩衝液の中で行ってPLGA重合体の質量損失速度を時間の関数として測定した。共重合体の各々は1つの試料セットを含んでなっていた。約25ディスク(それぞれ100±5mg)を13mmステンレス鋼ダイを用いて圧縮した。試料を10トンの力で約10分間にわたりカルバー・プレス(Carver Press)を用いて圧縮した。ディスクを真空オーブン内のガラス瓶の中に周囲温度および25mmHgにおいて、変性浴の中で使用できるようになるまで保った。この工程は試験した各重合体に関して繰り返された。ナトリウムアジド(0.1N)を有するリン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液(50mM、pH7.4)を製造した。1個の試料ディスクを風袋測定された瓶の中で重量測定しそして初期重量(Minitial)として記録した。PBS(10mL)をピペットで各瓶に加えた。瓶に確実に蓋をしそして37℃の揺動水浴の中に入れた。緩衝液を週に2回交換し、その前に溶液のpHを記録した。予め指定された時点で、試料を緩衝浴から取り出し、脱イオン化されたミリ−Q(Milli−Q)水ですすぎ、表面的に乾燥し、そして重量測定した。試料重量を湿潤重量(Mwet)として記録した。試料を10mLの凍結乾燥瓶に入れそして凍結乾燥前に冷凍機(−20℃)に入れた。凍結乾燥後に、試料を再び重量測定しそして乾燥重量(Mlyophilized)として記録した。質量損失率は{(Mlyophilized−Minitial)/Minitial}×100として定義された。
【0156】
図13は、上記の調剤中で使用された3種のPLGAの質量損失特徴を示す。これから、使用された3種の重合体の各々が有意に異なる変性速度を有することがわかる。エステル末端基またはカルボキシル末端基のいずれかを有する低分子量PLGAはそれより高い分子量を有するものより有意に速い変性速度を有する。これは、活性剤がデポ剤から放出されるやいなや重合体が変性しやすい短期デポ剤にとってはより好ましい。本発明の種々の面によると、1つもしくはそれ以上の有意な利点が得られうる。より具体的には、簡単な処理段階を用いて、動物内に手術せずに標準針を通して低い配分力を用いて注入できるデポ剤ゲル組成物を得ることができる。定位置になると、組成物は急速にその元の粘度に戻りそして急速な硬化を示してバースト効果を実質的に回避しそして所望する有益な薬剤の放出特徴を与えうるであろう。さらに、有益な薬剤が完全に投与されると、組成物は完全に生分解性であるためそれを除去する必要はない。さらに別の利点として、本発明はペプチドおよび核酸−ベース薬品のようなある種の有益な薬剤を変性させ且つその微粒子およびマイクロカプセルを使用環境から除去することが多分難しいであろう微粒子またはマイクロカプセル化技術の使用を回避する。水、極限温度、または他の溶媒を必要とせずに粘性ゲルが製造されるため、有益な薬剤の懸濁粒子は乾いたままであり且つそれらの元の配置のままであり、それはその安定性に寄与する。さらに、塊が形成されるため、注入可能なデポ剤ゲル組成物は所望するなら使用環境から回収することができる。
【0157】
上記の例示態様は全ての面において本発明を限定するよりむしろ説明することを意図する。それ故、本発明は細目にわたる実施においてここに含まれた記述から当業者により誘導されうる多くの変更を可能とする。全てのそのような変更および改良は本発明の範囲および精神内にあると考えられる。
【0158】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0159】
1.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の、芳香族アルコールである25℃における7%以下の水中混和性を有する溶媒、並びに
(c)有益な薬剤(beneficial agent)
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0160】
2.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0161】
3.芳香族アルコールが構造式(I)
Ar−(L)n−OH
[式中、Arはアリールまたはヘテロアリールであり、nは0または1であり、そしてLは結合部分である]
を有する、1.または2.の注入可能なデポ剤組成物。
【0162】
4.Arが単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが1であり、そしてLが場合により少なくとも1個のヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、3.の注入可能なデポ剤組成物。
【0163】
5.Arが単環式アリールでありそしてLが低級アルキレンである、4.の注入可能なデポ剤組成物。
【0164】
6.ArがフェニルでありそしてLがメチレンである、5.の注入可能なデポ剤組成物。
【0165】
7.溶媒が芳香族アルコールおよび芳香族酸のエステルの混合物である、前記2−6.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0166】
8.芳香族アルコールがベンジルアルコールでありそして芳香族酸のエステルが安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、7.の注入可能なデポ剤組成物。
【0167】
9.芳香族酸のエステルが安息香酸ベンジルでありそして芳香族酸の低級アルキルエステルが安息香酸エチルである、8.の注入可能なデポ剤組成物。
【0168】
10.低分子量重合体が約3000〜約10,000の範囲にわたる分子量を有する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0169】
11.重合体が、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、並びにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物よりなる群から選択される、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0170】
12.重合体が乳酸−ベース重合体である、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0171】
13.重合体が乳酸およびグリコール酸の共重合体である、12.の注入可能なデポ剤組
成物。
【0172】
14.約5重量%〜約90重量%の生腐食性の生体適合性の乳酸−ベース重合体を含んでなる、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0173】
15.(a)約5重量%〜約90重量%の、約3,000〜約10,000の範囲内の重量平均分子量を有する低分子量の生腐食性の生体適合性の乳酸−ベース重合体、
(b)重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の、構造式(I)
Ar−(L)n−OH (I)
[式中、Arは置換されたもしくは未置換のアリールまたはヘテロアリール基であり、nは0または1であり、そしてLは結合部分である]
を有する25℃における7%以下の水中混和性を有する芳香族アルコール、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0174】
16.(a)約5重量%〜約90重量%の、約3,000〜約10,000の範囲内の重量平均分子量を有する低分子量の生腐食性の生体適合性の乳酸−ベース重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒であって、芳香族アルコールが構造式(I)
Ar−(L)n−OH (I)
[式中、Arは置換されたもしくは未置換のアリールまたはヘテロアリール基であり、nは0または1であり、そしてLは結合部分である]
を有する溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0175】
17.重合体が乳酸−ベース重合体である、15.または16.の注入可能なデポ剤組成物。
【0176】
18.重合体が乳酸およびグリコール酸の共重合体である、17.の注入可能なデポ剤組成物。
【0177】
19.Arが単環式アリールまたはヘテロアリールであり、nが1であり、そしてLが場合により少なくとも1個のヘテロ原子を含有してもよい低級アルキレンである、15−18.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0178】
20.Arが単環式アリールでありそしてLが低級アルキレンである、19.の注入可能なデポ剤組成物。
【0179】
21.ArがフェニルでありそしてLがメチレンである、20.の注入可能なデポ剤組成物。
【0180】
22.芳香族アルコールがベンジルアルコールである、15−21.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0181】
23.溶媒が芳香族アルコールおよび芳香族酸のエステルの混合物である、前記16−22.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0182】
24.芳香族アルコールがベンジルアルコールでありそして芳香族酸のエステルが安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、23.の注入可能なデポ剤組成物。
【0183】
25.芳香族酸のエステルが安息香酸ベンジルでありそして芳香族酸の低級アルキルエステルが安息香酸エチルである、24.の注入可能なデポ剤組成物。
【0184】
26.芳香族アルコール対芳香族酸のエステルの比が約1重量%〜約99重量%の範囲内である、24.または25.の注入可能なデポ剤組成物。
【0185】
27.芳香族アルコール対芳香族酸のエステルの比が約20重量%〜約80重量%の範囲内である、26.の注入可能なデポ剤組成物。
【0186】
28.(a)約5重量%〜約90重量%の、約3,000〜約10,000の範囲内の重量平均分子量を有する低分子量ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)共重合体、
(b)重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量の、約5重量%〜約90重量%の25℃における7%以下の水中混和性を有する芳香族アルコール溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0187】
29.芳香族アルコールがベンジルアルコールである、28.の注入可能なデポ剤組成物。
【0188】
30.(a)約5重量%〜約90重量%の、約3,000〜約10,000の範囲内の重量平均分子量を有する低分子量ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)共重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。
【0189】
31.芳香族アルコールがベンジルアルコールでありそして芳香族酸のエステルが安息香酸ベンジルである、30.の注入可能なデポ剤組成物。
【0190】
32.低分子量重合体が約3000〜約8,000の範囲にわたる分子量を有する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0191】
33.低分子量重合体が約4000〜約6,000の範囲にわたる分子量を有する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0192】
34.低分子量重合体が約5000の分子量を有する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0193】
35.重合体が組成物の約10重量%〜約85重量%に相当する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0194】
36.重合体が組成物の約35重量%〜約65重量%に相当する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0195】
37.下記のもの:孔形成剤、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および浸透剤、の少なくとも1種をさらに包含する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0196】
38.有益な薬剤が、薬品、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、化学療法剤、免疫阻害剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、フィブリン溶解剤、成長因子、抗体、目薬、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0197】
39.有益な薬剤が、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、抗炎症剤、抗精神病薬、抗凝血剤、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、38.の注入可能なデポ剤組成物。
【0198】
40.有益な薬剤が、重合体、溶媒および有益な薬剤の合計量の0.1〜50重量%の量で存在する、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0199】
41.有益な薬剤が粘性ゲル中に分散または溶解した粒子の形態である、前記いずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0200】
42.有益な薬剤が0.1〜250ミクロンの平均粒子径を有する粒子の形態である、41.の注入可能なデポ剤組成物。
【0201】
43.有益な薬剤が、粒子が安定剤、増量剤、キレート化剤および緩衝剤よりなる群から選択される成分をさらに含んでなる粒子の形態である、41.または42.の注入可能なデポ剤組成物。
【0202】
44.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、被験者への有益な薬剤の持続性送達用の注入可能なデポ剤組成物であって、有益な薬剤が調節された方法で2週間以内の期間にわたり全身的に送達されるような組成物。
【0203】
45.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、被験者への有益な薬剤の持続性送達用の注入可能なデポ剤組成物であって、有益な薬剤が調節された方法で2週間以内の期間にわたり局部的に送達される組成物。
【0204】
46.低分子量重合体が約3000〜約10,000の範囲にわたる分子量を有する、44.または45.の注入可能なデポ剤組成物。
【0205】
47.低分子量重合体が約3000〜約8,000の範囲にわたる分子量を有する、前記44−46.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0206】
48.低分子量重合体が約4000〜約6,000の範囲にわたる分子量を有する、前記44−47.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0207】
49.低分子量重合体が約5000の分子量を有する、前記44−48.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0208】
50.重合体が、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、並びにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物よりなる群から選択される、前記44−49.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0209】
51.重合体が乳酸−ベース重合体である、前記44−50.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0210】
52.重合体が乳酸およびグリコール酸の共重合体である、51.の注入可能なデポ剤組成物。
【0211】
53.約5重量%〜約90重量%の、約3,000〜約10,000の範囲内の重量平均分子量を有す生腐食性の生体適合性の乳酸−ベース重合体を含んでなる、前記44−52.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0212】
54.重合体が組成物の約10重量%〜約85重量%に相当する、前記44−53.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0213】
55.重合体が組成物の約35重量%〜約65重量%に相当する、前記44−54.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0214】
56.芳香族アルコールがベンジルアルコールでありそして芳香族酸のエステルが安息香酸の低級アルキルエステルまたはアラルキルエステルである、前記44−55.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0215】
57.芳香族酸のエステルが安息香酸ベンジルでありそして芳香族酸の低級アルキルエステルが安息香酸エチルである、56.の注入可能なデポ剤組成物。
【0216】
58.溶媒が芳香族アルコールおよび芳香族酸のエステルの混合物である、前記44−57.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0217】
59.芳香族アルコール対芳香族酸のエステルの比が約1重量%〜約99重量%の範囲内である、58.の注入可能なデポ剤組成物。
【0218】
60.芳香族アルコール対芳香族酸のエステルの比が約20重量%〜約80重量%の範囲内である、60.の注入可能なデポ剤組成物。
【0219】
61.下記のもの:孔形成剤、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および浸透剤、の少なくとも1種をさらに包含する、前記44−60.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0220】
62.有益な薬剤が、薬品、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、化学療法剤、免疫阻害剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、フィブリン溶解剤、成長因子、抗体、目薬、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、前記44−61.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0221】
63.有益な薬剤が、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、抗炎症剤、抗精神病薬、抗凝血剤、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、79.の注入可能なデポ剤組成物。
【0222】
64.有益な薬剤が、重合体、溶媒および有益な薬剤の合計量の0.1〜50重量%の量で存在する、前記44−62.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0223】
65.有益な薬剤が粘性ゲル中に分散または溶解した粒子の形態である、前記44−64.のいずれか1項の注入可能なデポ剤組成物。
【0224】
66.有益な薬剤が0.1〜250ミクロンの平均粒子径を有する粒子の形態である、65.の注入可能なデポ剤組成物。
【0225】
67.有益な薬剤が、粒子が安定剤、増量剤、キレート化剤および緩衝剤よりなる群から選択される成分をさらに含んでなる粒子の形態である、65.の注入可能なデポ剤組成物。
【0226】
68.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる注入可能なデポ剤組成物を投与することを含んでなる、有益な薬剤を被験者に対して調節された方法で2週間以内の期間にわたり投与する方法。
【0227】
69.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる注入可能なデポ剤組成物を投与することを含んでなる、有益な薬剤を被験者に投与する方法であって、有益な薬剤が調節された方法で2週間以内の期間にわたり全身的に送達される方法。
【0228】
70.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる注入可能なデポ剤組成物を投与することを含んでなる、有益な薬剤を被験者に調節された方法で2週間以内の期間にわたり局部的に投与する方法であって、システムが移植後24時間以内に有益な薬剤の量の20重量%以下を送達期間にわたり送達させ、ここで送達期間が2週間である方法。
【0229】
71.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる注入可能なデポ剤組成物を投与することを含んでなる、有益な薬剤を被験者に投与する方法であって、有益な薬剤が調節された方法で2週間以内の期間にわたり局部的に送達される方法。
【0230】
72.低分子量重合体が約3000〜約10,000の範囲にわたる分子量を有する、前記68−71.のいずれか1項の方法。
【0231】
73.低分子量重合体が約3000〜約8,000の範囲にわたる分子量を有する、前記68−72.のいずれか1項の方法。
【0232】
74.低分子量重合体が約4000〜約6,000の範囲にわたる分子量を有する、前記68−73.のいずれか1項の方法。
【0233】
75.低分子量重合体が約5000の分子量を有する、前記68−74.のいずれか1項の方法。
【0234】
76.重合体が、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリ無水物、ポリアミン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリホスホエステル類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、スクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、並びにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物よりなる群から選択される、前記68−75.のいずれか1項の方法。
【0235】
77.重合体が乳酸−ベース重合体である、前記68−76.のいずれか1項の方法。
【0236】
78.重合体が乳酸およびグリコール酸の共重合体である、68−77.のいずれか1項の方法。
【0237】
79.重合体が組成物の約5重量%〜約90重量%に相当する、前記68−78.のいずれか1項の方法。
【0238】
80.重合体が組成物の約10重量%〜約85重量%に相当する、前記68−79.のいずれか1項の方法。
【0239】
81.下記のもの:孔形成剤、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および浸透剤、の少なくとも1種をさらに包含する、前記68−80.のいずれか1項の方法。
【0240】
82.有益な薬剤が、薬品、蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、化学療法剤、免疫阻害剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、脈管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、フィブリン溶解剤、成長因子、抗体、目薬、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、前記68−81.のいずれか1項の方法。
【0241】
83.有益な薬剤が、鎮痛薬、局部麻酔薬、抗生物質剤、抗炎症剤、抗精神病薬、抗凝血剤、並びにそれらの代謝産物、同族体、誘導体、および断片から選択される、82.の方法。
【0242】
84.有益な薬剤が、重合体、溶媒および有益な薬剤の合計量の0.1〜50重量%の量で存在する、前記68−83.のいずれか1項の方法。
【0243】
85.有益な薬剤が粘性ゲル中に分散または溶解した粒子の形態である、前記68−84.のいずれか1項の方法。
【0244】
86.有益な薬剤が0.1〜250ミクロンの平均粒子径を有する粒子の形態である、85.の方法。
【0245】
87.有益な薬剤が、粒子が安定剤、増量剤、キレート化剤および緩衝剤よりなる群から選択される成分をさらに含んでなる粒子の形態である、85.または86.の方法。
【0246】
88.(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、および
(c)有益な薬剤、
並びに、下記のもの:
(d)乳化剤、
(e)孔形成剤、
(f)場合により有益な薬剤と会合されていてもよい、有益な薬剤のための溶解度調節剤、および
(g)浸透剤
の1種もしくはそれ以上
を含んでなる、有益な薬剤を被験者に投与するためのキットであって、ここで少なくとも有益な薬剤は、場合により溶解度調節剤と会合されて、被験者に対する有益な薬剤の投与時間までは溶媒から分離されて保たれているようなキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)低分子量の生腐食性の生体適合性重合体、
(b)25℃における7%以下の水中混和性を有し、そして重合体を可塑化し且つそれと共にゲルを生成するのに有効な量で存在する、芳香族アルコール、芳香族酸のエステル、芳香族ケトン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶媒、並びに
(c)有益な薬剤
を含んでなる、注入可能なデポ剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−68670(P2011−68670A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270394(P2010−270394)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2004−516150(P2004−516150)の分割
【原出願日】平成15年6月25日(2003.6.25)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】