説明

短絡アーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法及びシステム

アーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加するための方法及びシステム。前進する溶接電極(191)と金属ワークピース(199)との間に、電気アークパルスを発生させるように電気溶接波形(100)を生成することが可能な電気アーク溶接システムを使用して、1連の電気アークパルスが発せられる。電気溶接波形のサイクルは、上昇するピンチ電流レベル(121)を供給するピンチ電流段階(120)、ピーク電流レベル(130)を供給するピーク電流段階、低下する導出電流レベル(141)を供給する導出電流段階(140)、及びバックグラウンド電流段階(111)を供給するバックグラウンド電流レベル(110)を含む。そのサイクルの少なくとも1つの加熱電流段階(150)が生成され、加熱電流レベル(151)をバックグラウンド電流段階の間に供給し、その加熱電流レベルは、バックグラウンド電流レベルの上にある。該少なくとも1つの電流パルスを持つ電気溶接波形のサイクルは、アーク溶接プロセスが完了するまで、繰り返されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1990年11月20日に発行された米国特許第4,792,064号は、全体として参照することによって本書に組み込まれる。2000年4月18日に発行された米国特許第6,051,810号は、全体として参照することによって本書に組み込まれる。2002年12月24日に発行された米国特許第6,498,321号は、全体として参照することによって本書に組み込まれる。2007年9月26日に出願された米国特許出願公開第11/861,379号は、全体として参照することによって本書に組み込まれる。
【0002】
特定の実施形態は、アーク溶接に関する。さらに具体的に、特定の実施形態は、溶接入熱を増加する方法及びシステムに関し、特にガスメタル・アーク溶接(GMAW)短絡アーク・プロセスの間に該入熱を増加する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
オープンルート溶接は、材料の両面からの溶接を除いた状況におけるパイプ及び片面プレート溶接に使用される。この種の溶接は、石油化学及びプロセス配管工業において一般的である。長年間、パイプ製作者は、片面オープンルート溶接を作成するための、より速くより簡単な方法を探している。オープンルート・パイプの溶接は、技術を持つ溶接工にとってさえ困難である。柔軟性の無い位置決めは、パイプライン溶接をさらに困難にし、時間をかけ費用も高くする。さらに高強度のパイプスチールは、低水素の溶接金属物を達成する必要条件を推進している。ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)プロセスは、側壁の溶融及び貫通の欠如の問題が原因で回避されている。
【0004】
従来の定電圧(CV)GMAW溶接プロセスは、ビードが溶接パドル(puddle)の高温が原因でビードがルートに収縮し、平らな内部ビード又は「サックバック(suck back)」を生成する。GTAW溶接は、良いパイプ溶接を生成するが、移動速度は遅く、入熱は高い。セルロース電極を用いた手棒溶接は、良い溶融特性を供給するが、深いワゴンの跡(さらに研削の作業を必要とする)、かなり凸状の溶接ルート部及び多くの水素堆積物を残す。
【0005】
表面張力移動(STT)プロセスは、例えば、パイプ状で片面ルート接合部を作成するために開発されている。STTは、少ない水素溶接堆積物を生成し、質の高いルート接合部をすべての位置に作成することをより簡単にする、制御された短絡移動GMAWプロセスである。STTは、従来型の短絡アークGMAWプロセスを使用する場合に直面する貫通の欠陥及び質の低い側壁溶融の問題を除去する。
【0006】
STTプロセスは、オープンルート結合部において、他のプロセスよりも簡単な操作、良いバックビード、良い側壁溶融、及びより少ないスパッター及びヒュームを生成する。STTは、アーク電流がワイヤー・フィード速度とは独立して正確に制御されるという点において、従来型のGMAW短絡アーク溶接プロセスとは異なる。また、アーク電流は、溶接パドルを減らすため及び従来の短絡アークGMAWプロセスの間に起こる激しい「爆発」を無くすために慎重に調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,792,064号明細書
【特許文献2】米国特許第6,051,810号明細書
【特許文献3】米国特許第6,498,321号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第11/861,379号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現代のSTTプロセスは、特にルート溶接の応用において、従来の短絡GMAWプロセスよりもかなり良いにもかかわらず、さらに良い貫通を得るためには溶接パドルの流動性を増加させずに溶接入熱をより良く制御する能力が望まれる。本発明の1つの目的は従って、入熱をより適切に制御することを可能にする方法及びシステムを提供することである。
【0009】
従来型、伝統的及び提案されるアプローチは、図を参照して本出願の残りの部分で説明されるように本発明の実施形態と該アプローチとを比較することを通して当業者に明確になることであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1実施形態は、アーク溶接プロセスの間に、前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に電気アークパルスを発生させるように電気溶接波形を生成することが可能なアーク溶接システムを使用し、一連の電気アークパルスを発することによって溶接入熱を増加する方法を含む。該方法は:
(a)電極とワークピースとの間の電気アークを維持するためにその波形の出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルに調節し、溶融金属球を電極の遠位端に生成する。
(b)ワークピースにより短絡し、電気アークを消滅させる溶融金属球に反応し、出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルに落とし、その溶融金属球がそのワークピース上の溶接パドルの中に浸るようにする。
(c)出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルよりも上に自動的に増加させ、溶融金属球が電極の遠位端からピンチオフするように誘導する。
(d)溶融金属球が電極の遠位端からワークピースにピンチオフすると、出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルよりも下に減少させ、該電極とワークピースとの間に電気アークを再設立する。
(e)出力電流レベルを該波形のピーク電流レベルに増加させ、次の溶融金属球を電極の遠位端に生成する。
(f)その出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルに向かって減少させ、次の溶融金属球を電極の遠位端に生成する。
(g)該次の溶融金属球とワークピースとの間で次の短絡が生じるまで、バックグラウンド電流レベルと、該バックグラウンド電流レベルとピーク電流レベルとの間の中間電流レベルとの間で、出力電流レベルを所定のパルス率でパルス化する。
(h)ステップ(a)から(g)までをアーク溶接が完了するまで繰り返す。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、電気アークパルスを発するように電気溶接波形を生成することが可能なアーク溶接システムを使用し、前進している溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の電気アークパルスを発することによって、アーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法を含む。該方法は:
(a)バックグラウンド電流レベルを供給するバックグラウンド電流段階、ピーク電流レベルを供給するピーク電流段階及び単調に低下する導出電流レベルを供給する導出電流段階を有する電気溶接波形の基盤サイクルを生成する。
(b)バックグラウンド電流段階とピーク電流段階との間に該電気溶接波形のピンチ電流段階を生成し、単調に上昇するピンチ電流レベルを供給する。
(c)該電気溶接波形の少なくとも1つの加熱電流パルスをバックグラウンド電流段階の間に生成し、該バックグラウンド電流レベルとピーク電流レベルとの間の中間電流レベルを供給する。
【0012】
該方法は、バックグラウンド電流段階、ピンチ電流段階、ピーク電流段階、及び導出電流段階を、そのバックグラウンド電流段階が少なくとも1つの加熱電流段階を含むように連続して定期的に繰り返すステップをさらに含んでもよい。該方法は、また、電気溶接波形の電流レベルをバックグラウンド電流段階の最後にそのバックグラウンド電流レベルの下に低下させるステップ及び電気溶接波形の電流レベルをピンチ電流段階の最後にバックグラウンド電流レベルの下に低下させるステップを含んでもよい。
【0013】
本発明のさらなる実施形態は、アーク溶接プロセスの間に、前進している溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の電気アークパルスを発するように電気溶接波形を生成することによって溶接入熱を増加するためのシステムを含む。そのシステムは、該電気溶接波形のバックグラウンド電流段階、ピーク電流段階及び導出電流段階を生成するように第1構成の電子部品を含み、そのバックグラウンド電流段階は、バックグラウンド電流レベルを供給し、ピーク電流段階はピーク電流レベルを供給し、導出電流段階は単調に低下する導出電流レベルを供給する。そのシステムは、また、該電気溶接波形のピンチ電流段階を生成するために第2構成の電子部品を含み、そのピンチ電流段階は、単調に上昇するピンチ電流レベルを供給する。そのシステムは、さらに、電気溶接波形の少なくとも1つの加熱電流パルスをバックグラウンド電流段階の間に含み、該少なくとも1つの加熱電流パルスは、バックグラウンド電流レベルとピーク電流レベルとの間の中間電流レベルを供給する。該システムは、さらに、ワークピースにより短絡する電極に反応し、バックグラウンド電流段階の最後に、該電気溶接波形の電流レベルがそのバックグラウンド電流レベルの下に低下するように第4構成の電子部品を含んでもよい。該システムは、また、電極のワークピースによる短絡が終わることを予測してピンチ電流段階の最後に、該電気溶接波形の電流レベルがバックグラウンド電流レベルの下に低下するように第5構成の電子部品を含んでもよい。
【0014】
本発明のもう1つの実施形態は、前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の電気アークパルスを発するように電気溶接波形を生成することによって、アーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加するシステムを含む。該システムは、該電気溶接波形のバックグラウンド電流段階、ピーク電流段階及び導出電流段階を生成するための手段を含み、そのバックグラウンド電流段階は、バックグラウンド電流レベルを供給し、ピーク電流段階はピーク電流レベルを供給し、導出電流段階は減少する導出電流レベルを供給する。該システムはさらに、該電気溶接波形のピンチ電流段階を生成するための手段を含み、そのピンチ電流段階は、増加するピンチ電流レベルを供給する。該システムはまた、該電気溶接波形の少なくとも1つの加熱電流パルスを、バックグラウンド電流段階の間に発するための手段を含み、該少なくとも1つの加熱電流パルスは、バックグラウンド電流レベルとピーク電流レベルとの間の中間電流レベルを供給する。該システムはさらに、バックグラウンド電流段階が少なくとも1つの加熱電流パルスを含むように、バックグラウンド電流段階、ピンチ電流段階、ピーク電流段階、及び導出電流段階を連続して定期的に再調節するための手段を含む。該システムはまた、ワークピースにより短絡している電極に反応し、バックグラウンド電流段階の最後に、該電気溶接波形の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に低下させるための手段を含んでもよい。該システムは、さらに、その電極のワークピースからの短絡が終わることを見込んでピンチ電流段階の最後に、該電気溶接波形の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に低下させる手段を含んでもよい。
【0015】
本発明の実施形態に従って、アーク溶接プロセスは、例えば、アルゴン及びCO2をシールドガスとして使用した、又はCO2だけを使用したガスメタル・アーク溶接(GMAW)プロセスであってもよい。その溶接電極はスチール又はステンレス・スチールを含んでもよい。本発明の実施形態に従って、バックグラウンド電流レベルは約70アンペア、ピーク電流レベルは約330アンペア、及び中間電流レベルは約210アンペアであってもよい。本発明の実施形態に従って、加熱電流の所定のパルス速度は、約333Hzであってもよく、アーク溶接プロセスのワイヤ・フィード速度は毎分約150インチであってもよい。
【0016】
請求項に記載の発明のこれら及び他の特徴及び実施形態は、例示される実施形態の詳細とともに、以下の記載、図及び請求項からより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】溶接入熱を増加するためのアーク溶接プロセスにおいて使用される電気溶接波形のサイクルの模範的実施形態を描く図である。
【図1B】図1Aの電気溶接波形を使用し、図1Aのサイクルを通してアーク溶接プロセスの様々な段階を描く図である。
【図2】図1の電気溶接波形を生成するためのシステムの第1模範的実施形態の機能的ブロック図である。
【図3A】図2のシステムの様々な機能によって生成されるような変調波形の部分の模範的実施形態を描く図である。
【図3B】図2のシステムの様々な機能によって生成されるような変調波形の部分の模範的実施形態を描く図である。
【図3C】図2のシステムの様々な機能によって生成されるような変調波形の部分の模範的実施形態を描く図である。
【図3D】図2のシステムの様々な機能によって生成されるような変調波形の部分の模範的実施形態を描く図である。
【図4】図1の電気溶接波形を生成するためのシステムの第2模範的実施形態の機能的ブロック図を説明する図である。
【図5】図1の電気溶接波形及び図2のシステム又は図4のシステムを使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法の第1模範的実施形態のフローチャートである。
【図6A】図4のシステムを使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法の第2模範的実施形態のフローチャートである。
【図6B】図4のシステムを使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法の結果生じる第2模範的実施形態の電気溶接波形である。
【図7】図1の電気溶接波形又は図6Bの電気溶接波形及び図2のシステム又は図4のシステムを使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法の第3模範的実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
図1Aは、溶接入熱を増やすためにアーク溶接において使用される電気溶接波形100のサイクル101の模範的実施形態を説明する。図1Bは、図1Aの電気溶接波形を使用してサイクル101の間のアーク溶接プロセスの様々な段階(A-E)を説明し、溶接電極191と金属ワークピース199との間の関係を示す。アーク溶接プロセスの間に、電気アークパルスを発することが可能な電気アーク溶接システムを使用し、前進している電極191と金属ワークピース199との間に一連の電気アークパルスが発せられる。一般的に、サイクル101は、結果として生じる接合部を生成するためにアーク溶接プロセスの間に繰り返す。しかし、サイクル101は、短絡の状態が起こらない場合は、同じ数の加熱パルス150を使用せずに、及び場合によってはピンチ電流段階120無しで繰り返されてもよい。
【0019】
電気溶接波形100のサイクル101は、バックグラウンド電流レベル111を供給するバックグラウンド電流段階110、単調に上昇するピンチ電流レベル121を供給するピンチ電流段階120、ピーク電流レベル131を供給するピーク電流段階130、及び単調に低下する導出電流レベル140を供給する導出電流段階141を含む。
【0020】
バックグラウンド電流段階110の間に、電気アーク195が電極191とワークピース199との間に維持され、電極191の遠位端に溶融金属球192を生成する(図1Bの段階A参照)。段階Bでは、溶融金属球192は、まだ電極191に接続されており、ワークピース199により短絡する。その短絡が生じるとき、アーク195は消滅し、波形100の電流レベルは、バックグラウンド電流レベル111の下の電流レベル112に低下し、溶融球192がワークピース199上の溶接パドルの中に浸る。
【0021】
ピンチ電流段階120の間に、波形100の電流レベルは、バックグラウンド電流レベル111の上で単調に上昇(例えば、上方に傾斜)し、図1Bの段階Cにおいて示されるように短絡した溶融金属球192が電極191の遠位端からワークピース199の溶接パドルの中へピンチオフを開始させる増加するピンチ電流レベル121を供給する。溶融金属球192が電極191からピンチオフしそうな場合、波形100の電流レベルは、スパッターを避けるために再びバックグラウンド電流レベル111の下の電流レベル112へと低下し、アーク196が電極191とワークピース199との間に再設立する。
【0022】
一度アーク196が再設立すると、波形100はピーク電流段階130に入る。ピーク電流段階130の間に、波形100の電流レベルは、ピーク電流レベル131に上昇し、そこで保持される。実施形態に従って、ピーク電流レベル131は波形100において最も高い電流レベルであり、電極191と十分な強度のワークピース199との間にアーク197を設立し、電極191の遠位端で次の溶融金属球198を形成し始める。
【0023】
ピーク電流段階130の後に、波形100は、導出電流段階140に入る。導出電流段階140の間に、波形100の電流レベルは、単調に(指数関数的に)バックグラウンド電流レベル111に向かって低下し、低下する導出電流レベル141を供給する。波形100の電流は溶接入熱を加える。導出電流段階140は、波形100に対する熱の粗調整段階として作動する。しかし、一定のアーク溶接の応用においては、追加の入熱制御を供給することが望ましい。
【0024】
導出電流段階140の後に、バックグラウンド電流段階110に再び入り、バックグラウンド電流レベル111を供給し、電極191の遠位端に実質的に均等な次の溶融金属球198を生成する(段階A)。バックグラウンド電流段階110の間に、少なくとも1つの加熱電流段階150が生成され、バックグラウンド電流レベル111とピーク電流レベル131との間の中間電流レベル151を供給する。その加熱電流段階150は、溶融金属球198とワークピース199との間で次の短絡が生じるまでバックグラウンド電流段階110内において定期的に繰り返されてもよく、次の短絡が生じるときには、アーク195が消滅し、波形100の電流レベルはバックグラウンド電流レベル111の下の電流レベル112に減少し、次の溶融球198がワークピース199上の溶接パドルの中に浸るようにする(段階B)。
【0025】
加熱電流段階150は、貫通を増加させるために溶接パドル及び周りの領域を再加熱するように働く。加熱電流パルス150によって供給されるそのような熱の増加は、例えば、その溶接パドルの流動性を増加させずにより良い貫通を供給するためにオープンルート結合部の溶接において望まれてもよい。その温度上昇段階は、アークを横切って液滴を移送するほど振幅は大きくなく、短絡アーク転移の上の溶接システムをグロビュール移行へ強制するほどパルス幅は広くない。また、一般的に、サイクル101は、アーク溶接プロセスの間に結果として生じる溶接部を生成するために定期的に繰り返される。しかし、サイクル101は、短絡が生じない場合、同じ数の加熱パルス151を使用せずに、及び場合によってはピンチ電流段階120無しで繰り返されても良い。ここで使用されるように、「電流レベル」という用語は、実質的に一定しているが、電気溶接波形を生成する点においていくらか不正確である特質が原因でいくらか変動がある電流振幅のことを呼ぶ。
【0026】
一例として、本発明の実施形態に従って、アーク溶接プロセスは、アルゴン及び二酸化炭素をシールドガスとして使用したガスメタル・アーク溶接(GMAW)プロセスである。バックグラウンド電流レベル111が約70アンペアである場合、ピーク電流レベル131は約330アンペアであり、中間電流レベル151は約210アンペアである。単一の加熱パルス150のパルス幅は約1ミリ秒であり、バックグラウンド電流段階110の間におよそ3ミリ秒毎に3から6パルスまで繰り返してもよい。サイクル101の周期は15ミリ秒である。
【0027】
図2は、図1の電気溶接波形100を生成するためのシステム200の第1模範的実施形態の機能的ブロック図である。システム200は、電力発生機能210及び変調波形発生及び形成機能220を、変調波形100’を作成するために供給する。システム200は、また、短絡検出及び予告検出(短絡が終わるという予側)機能230を提供し、電極191とワークピース199との間に短絡状態が生じると検出し、溶融金属球(例えば192)がワークピース199の溶接パドルの中へピンチオフすると、短絡状態が終了しそうである(短絡終了状態)ことを予側する。
【0028】
変調波形生成及び形成機能220によって生成される変調波形100’は、電極191及びワークピース199に電気溶接波形100の形で電流を供給する電力発生機能210を変調するために使用される。その変調波形生成及び形成機能220は、定期的な基盤波形生成機能221を含む。図3A‐3Dは、図2のシステム200の様々な機能によって生成されるような変調波形100’の部分の模範的実施形態を示す。図3Aは、定期的な基盤波形生成機能221によって生成される定期的な基盤波形部分310を説明する。その定期的な基盤波形発生機能221は、バックグラウンド電流段階110、ピーク電流段階130及び変調波形100’の導出電流段階140の生成を定期的な方法で供給する。
【0029】
変調波形生成及び形成機能220は、また、ピンチ電流段階生成機能222を含む。図3Bは、ピンチ電流段階120が追加された図3Aの定期的な基盤波形部分を表わす。本発明の実施形態に従って、ピンチ電流段階120は、変調波形生成及び形成機能220の信号加算機能223を使用して定期的な基盤波形部分310に加算されてもよい。
【0030】
変調波形生成及び形成機能220は、加熱パルス生成機能224をさらに含む。図3Cは、図3Bのピンチ電流段階120を有し、バックグラウンド電流段階110の間にスイッチが入る加熱パルス150を有する図3Aの定期的な基盤波形部分310を描く。本発明の実施形態に従って、加熱電流パルス150は、変調波形生成及び形成機能220の信号スイッチ機能225を使用してバックグラウンド電流段階110の間にスイッチが入れられても良い。
【0031】
変調波形生成及び形成機能220は、また、サブバックグラウンド電流レベル生成(電流低減)機能226を含む。図3Dは、図3Bのピンチ電流段階120を有する図3Aの基盤波形部分310、図3Cに示されるように加熱電流パルス150を有し、追加されたサブバックグラウンド電流部分112’を有するバックグラウンド電流段階110を説明する。本発明の実施形態に従って、サブバックグラウンド電流部分112’は、波形生成及び形成機能220の信号加算機能223を使用して定期的な基盤波形部分310及びピンチ電流段階120に加算されても良い。
【0032】
図3Dの結果として生じる変調波形100’は、図1及び図2に示されるように電極191及びワークピース199に電気溶接波形100の様々な部分の実際の電流レベル(111、112、121、131、141、151)を供給するために電力発生機能210を変調するように使用されても良い。
【0033】
システム200を使用した溶接プロセスの間には、短絡検出及び短絡終了予側機能230が、電極191及びワークピース199における電流及び電圧を監視し、その電極191とワークピース199との間に短絡状態が生じると検出し、その短絡状態が終了しそうになること(短絡終了状態)の予測もする。短絡状態が生じるとき、サブバックグラウンド電流レベル機能226は、検出された短絡状態に反応してすぐに波形100の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下の電流レベル112に落とし、以前記載されたように溶融金属球がワークピース199上の溶接パドルの中に浸るようにする。そして、ピンチ電流段階生成機能222は、単調に上昇するピンチ電流レベル121を波形100に適用する。
【0034】
短絡終了状態が予測されるとき(すなわち、溶融金属球が電極の遠位端からピンチオフしそうであるとき)、サブバックグラウンド電流レベル機能226は、再び、予測されている短絡終了状態に反応してスパッターを避けるために波形100の電流レベルをバックグラウンド電流レベル110よりも低い電流レベル112に引き下げる。さらに、波形生成及び形成機能220のタイミング機能227がトリガーされる。そのタイミング機能227は、波形100がバックグラウンド電流段階110に到達するまで、ピーク電流段階130及び導出電流段階140によって占められる時間領域をカウントダウンする。
【0035】
本発明の実施形態に従って、タイミング機能が短絡終了状態とバックグラウンド電流段階110との間に起こる時間の量で前もってプログラムされている。一度タイミング機能227が数え終え、バックグラウンド電流段階110に入ったことを示すと、信号スイッチ機能225がトリガーされ、温度上昇生成機能224からの加熱パルス150におけるスイッチがトリガーされる。その加熱パルス150は、次の短絡状態が検出されるまでバックグラウンド電流段階110の間に波形100に切り替えられる。
【0036】
図2のシステム200の様々な機能が、アナログ及び/又はデジタル電子部品を含みうる電子部品の構成を使用して実施されてもよい。そのような電子部品の構成は、例えば、パルス生成器、タイマー、カウンター、整流器、トランジスタ、インバーター、オシレータ、スイッチ、変換器、波形成器、増幅器、状態機械、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、及びマイクロ制御器を含んでもよい。そのような構成の部分は、実施における柔軟性を提供するようにプログラム可能であってもよい。そのような電子部品の構成の様々な例は、米国特許第4,972,064号明細書、米国特許第6,051,810号明細書、米国特許第6,498,321号明細書、及び米国特許出願第11/861,379号明細書において閲覧でき、各文献は、全体として参照することによって本文書に組み込まれる。
【0037】
本発明の実施形態に従って、システム200は、第1構成の電子部品を含み、電気溶接波形100のバックグラウンド電流段階110、ピーク電流段階130及び導出電流段階140を含む。システム200は、電気溶接波形100のピンチ電流段階120を生成するように第2構成の電子部品をさらに含む。システム200はまた、電極のワークピースによる短絡の終了を見込んで、ピンチ電流段階120の最後に電気溶接波形100の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に低下させるための第5構成の電子部品をさらに含む。
【0038】
本発明の実施形態に従って、システム200は、また、電極のワークピースによる短絡に反応してバックグラウンド電流段階110の最後に、電気溶接波形100の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に低下させるための第4構成の電子部品も含む。システム200は、その電極のワークピースによる短絡が終わることを見込んで、ピンチ電流段階120の最後に、電気溶接波形100の電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に低下させるための第5構成の電子部品を含む。
【0039】
第1乃至第5構成の電子部品は、必ずしもお互いに独立していなくてもよいが、ある一定の電子部品を共有する。例えば、本発明の実施形態に従って、第1構成の電子部品の多くは、第3構成の電子部品の多くと同じであってもよい。同様に、第4構成の電子部品の多くは、第5構成の電子部品の多くと同じであってもよい。他の部品が共有されることも、本発明の様々な実施形態に従って可能である。
【0040】
図2に示されている機能的な実施は、1つの模範的実施形態を説明する。他の実施形態もまた可能である。例えば、もう1つの実施形態に従って、ピンチ電流段階120が、信号加算機能223を通して加算される代わりに、信号スイッチ機能225を通して変形波形100’にスイッチされてもよい。同様に、加熱パルス150が、信号スイッチ機能225を通してスイッチされる代わりに、信号加算機能223を通して変形波形100’に加算されてもよい。もう1つの実施形態に従って、サブバックグラウンド電流レベル生成機能226は、存在していなくてもよく、又は選択的であってもよく、電流レベル部分112’を含まない変形波形の生成を可能にする。他の修正された実施形態も可能であり、図1の電気溶接波形100又はバックグラウンド電流段階の間に少なくとも1つの加熱電流パルスを有する類似の波形をもたらす。
【0041】
図4は、図1の電気溶接波形100を生成するためのシステム400の第2実施形態の機能的ブロック図を表わす。システム400は、ここに記載されるようなシステムの状態機械のタイプである。Licoln Electric Power WaveTM 450システムは、溶接システムの状態機械のタイプの一例である。
【0042】
システム400は、状態に基づく機能生成器420に負荷される溶接プログラム410を含む。本発明の実施形態に従って、状態に基づく機能生成器420は、プログラム可能なマイクロプロセッサ装置を含む。溶接プログラム410は、電気溶接波形を生成するためのソフトウェア・インストラクションを含む。そのシステムは、状態に基づく機能生成器420に操作的に結合されているデジタル信号プロセッサ(DSP)430をさらに含む。そのシステムは、また、DSP430に操作的に結合している高速増幅インバーター440を含む。
【0043】
DSP430は、状態に基づく機能生成器420からインストラクションを取り、高速増幅インバーター440を制御する。その高速増幅インバーター440は、高電圧入力電力441をDSP430からの制御信号435に従って低電圧溶接出力電力に転換する。例えば、本発明の実施形態に従って、DSP430は、様々な段階の電気溶接波形を生成するための高速増幅インバーター440に対する発射角度(スイッチ起動のタイミング)を決定する制御信号435を供給する。
【0044】
高速増幅インバーター440の出力442及び443は、溶接電極450及びワークピース460にそれぞれ接続され、電極450とワークピース460との間に電気アークを形成する溶接電流を供給する。システム400は、また、電極450とワークピース460との間の電圧を感知し、電極450、ワークピース460及び高速増幅インバーター440を通って流れる電流を感知する電圧及び電流フィードバック機能470も含む。感知された電流及び電圧は、状態に基づく機能生成器420によって使用され、電極450のワークピース460による短絡(すなわち、短絡状態)を検出し、溶融金属球が電極450からピンチオフするとき(すなわち、短絡終了状態)を検出する。
【0045】
システム400は、電流レデューサー480及びダイオード490をさらに含む。その電流レデューサー480及びダイオード490は、高速増幅インバーター440の出力442と443との間で操作的に接続されている。電流レデューサー480は、また、DSP430に操作的に結合している。電極450とワークピース460との間に短絡状態が生じるとき、DSP430は、制御信号436を通して電流レデューサー480に命令を下し、溶接回路を通る電流レベルを所定のバックグラウンド電流レベルの下に引き下げる。同様に、短絡終了状態が起こるとき(すなわち、溶融金属球が電極450の遠位端からピンチオフするとき)、DSP430は電流レデューサー480に命令を下し、溶接回路を通る電流レベルを所定のバックグラウンド電流レベルの下に引き下げる。本発明の実施形態に従って、電流レデューサー480は、ダーリントン・スイッチ、抵抗器及びスナバを含む。
【0046】
図5は、図1の電気溶接波形100、図2のシステム200及び図4のシステム400を使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法500の第1模範的実施形態のフローチャートを説明する。ステップ510では、波形100の出力電流レベルをバックグラウンド電流レベル111に調節し、電極(例えば、191又は450)とワークピース(例えば、199又は460)との間の電気アーク195を維持し、電極(例えば、191又は450)の遠位端において溶融金属球192を生成する。ステップ520では、ワークピース(例えば、199又は460)によって短絡している溶融金属球192に反応し、バックグラウンド電流レベル111の下に出力電流レベルを落とし、電気アーク195を消滅させ、溶融金属球192がワークピース(例えば、199又は460)上の溶接パドルに浸るようにする。ステップ530では、出力電流レベルをバックグラウンド電流レベル111の上に自動的に増加させ、溶融金属球192が電極(例えば、191又は450)の遠位端からピンチオフするように誘導する。
【0047】
ステップ540では、溶融金属球192が電極(例えば、191又は450)の遠位端からワークピース(例えば、199又は460)上にピンチオフすると出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルの下に下げ、電極(例えば、191又は450)とワークピース(例えば、199又は460)との間に電気アークを再設立する。ステップ560では、出力電流レベルをバックグラウンド電流レベル111に向かって下げ、電極(例えば、191又は450)の遠位端に次の溶融金属球198を生成する。ステップ570では、次の短絡が該次の溶融金属球198とワークピース(例えば、199又は460)との間で設立するまで、バックグラウンド電流レベル111と該バックグラウンド電流レベル111とピーク電流レベル131との間にある中間電流レベル151との間で、出力電流レベルを所定のパルス率でパルス化する。ステップ580では、アーク溶接プロセスが完了しない場合、ステップ520に戻るか、あるいは終了する。
【0048】
図6A‐6Bは、図4のシステム400を使用したアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法600の第2模範的実施形態のフローチャート及び生じる電気溶接波形650を表わす。ステップ601では、電気溶接波形650の出力電流レベルをバックグラウンド電流レベル602に調節する。短絡状態が検出される場合、ステップ603において、出力電流レベルを、電流レデューサー480をトリガーすることによってバックグラウンド電流レベル602の下にあるサブレベル604に落とす。ステップ605では、出力電流レベルをピンチ電流ランプ606に従ってランプさせ始める。短絡終了(ピンチオフ)状態が検出される場合、ステップ607において、出力電流レベルを、電流レデューサー480をトリガーすることによって再びサブレベル604に落とす。
【0049】
ステップ608では、電極450とワークピース460との間にアークを再設立することに反応して、出力電流レベルをピーク電流レベル609に調節する。ステップ610では、単調に低下している導出電流ランプ611に従って、出力電流レベルをピーク電流レベル609からバックグラウンド電流レベル602に低下させる。ステップ612では、加熱電流パルス615を形成する第1パルス期間614の間に出力電流レベルを加熱電流レベル613に調節する。
【0050】
方法600は、所定の回数、又は次の短絡状態が検出されるまで、ステップ601とステップ612との間で行ったり戻ったりしてもよい(すなわち、出力電流が、加熱電流レベル613とバックグラウンド電流レベル602との間で行ったり戻ったりし、その後に続く加熱電流パルスを形成する)。さらに、本発明の実施形態に従って、連続する加熱電流パルス615’のパルス幅及び振幅は、溶接操作の詳細(例えば、溶接金属、シールドガス、その他)に依存し、第1加熱電流パルス615のパルス幅及び振幅と同一でよく、あるいは異なってもよい。
【0051】
図7は、図1の電気溶接波形100又は図6Bの電気溶接波形650及び図2のシステム200又は図4のシステム400を使用してアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法700の第3模範的実施形態のフローチャートを表わす。ステップ710では、バックグラウンド電流レベル(例えば111)を供給するバックグラウンド電流段階(例えば310)を有する電気溶接波形(例えば100)の基盤サイクル(例えば310)、ピーク電流レベル(例えば131)を供給するピーク電流段階(例えば130)、及び、低下する導出電流レベル(例えば141)を供給する導出電流段階(例えば140)を生成する。ステップ720では、バックグラウンド電流段階(例えば110)とピーク電流段階(例えば130)との間に電気溶接波形(例えば100)のピンチ電流段階(例えば120)を生成し、上昇するピンチ電流レベル(例えば121)を供給する。ステップ730では、バックグラウンド電流パルス(例えば110)の間に、電気溶接波形(例えば100)の少なくとも1つの加熱電流パルス(例えば150)を生成し、バックグラウンド電流レベル(例えば111)とピーク電流レベル(例えば131)との間にある中間電流レベル(例えば151)を供給する。
【0052】
要約すると、アーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加する方法及びシステムが開示されている。一連の電気アークパルスが、電気アークパルスを生成するように電気溶接波形を生成することが可能な電気アーク溶接システムを使用して、前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に生成される。電気溶接波形のサイクルは、上昇するピンチ電流レベルを供給するピンチ電流段階、ピーク電流レベルを供給するピーク電流段階、導出電流レベルを供給する導出電流段階、及びバックグラウンド電流レベルを供給するバックグラウンド電流段階を含む。バックグラウンド電流段階の間に、そのサイクルの少なくとも1つの加熱電流パルスが生成され、加熱電流レベルを供給し、該加熱電流レベルは、バックグラウンド電流レベルの上にある。該少なくとも1つの加熱電流パルスを持つ電気溶接波形のサイクルは、アーク溶接プロセスが完了するまで繰り返しても良い。その加熱電流パルスは、貫通を増加させるように溶接パドル及び周りの領域を再加熱する働きをする。そのような加熱電流パルスによって供給される熱の増加は、例えば、溶接パドルの流動性を増加させずに貫通をより良くするためにオープンルート結合部の溶接において望まれる。加熱パルスは、アークを交差して液滴を移送するほど振幅が大きくなく、短絡アーク転移の上の溶接システムをグロビュール移行へ強制するほどパルス幅は広くない。
【0053】
本発明は、一定の実施形態を参照して記載されている一方、本発明の範囲から外れずに様々な変形が作成され、均等物と置き換えられても良いことが、当業者によって理解されるであろう。また、多くの修正が、本発明の範囲から外れずに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合するように、作成されてもよい。従って、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されないことを目的とするが、添付の請求項の範囲内に該当する全ての実施形態を含む。
【図1A−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶接プロセスの間に、電気アークパルスを発生させるように電気アーク溶接波形を生成することが可能な電気アーク溶接システムを使用して、前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の該電気アークパルスを発することによって、溶接入熱を増加する方法であり:
(a)バックグラウンド電流レベルを供給するバックグラウンド電流段階、ピーク電流レベルを供給するピーク電流段階及び低下する導出電流レベルを供給する導出電流段階を有する前記電気アーク溶接波形の基盤サイクルを生成するステップ;
(b)前記バックグラウンド電流段階と前記ピーク電流段階との間に前記電気溶接波形のピンチ電流段階を生成し、上昇するピンチ電流レベルを供給するステップ;及び
(c)前記バックグラウンド電流段階の間に電気溶接波形の少なくとも1つの加熱電流パルスを生成し、前記バックグラウンド電流レベルの上にある加熱電流レベルを供給するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
前記バックグラウンド電流段階が前記少なくとも1つの加熱電流パルスを含むように、前記バックグラウンド電流段階、前記ピンチ電流段階、前記ピーク電流段階、及び前記導出電流段階を連続して定期的に繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気溶接波形の電流レベルを前記バックグラウンド電流段階の最後に前記バックグラウンド電流レベルの下に低下させるステップをさらに含む、請求項1又は2にきさいの方法。
【請求項4】
前記電気溶接波形の電流レベルを前記ピンチ電流段階の最後に前記バックグラウンド電流レベルの下に低下させるステップをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アーク溶接プロセスの間に、電気アークパルスを発生させるように電気溶接波形を生成することが可能な電気アーク溶接システムを使用して、前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の該電気アークパルスを生成することによって、溶接入熱を増加する方法であり:
(a)前記電極と前記ワークピースとの間で電気アークを維持するように、前記波形の出力電流レベルをバックグラウンド電流レベルに調節し、前記電極の遠位端に溶融金属球を生成するステップ;
(b)前記ワークピースにより短絡し、前記電気アークを消滅させる前記溶融金属球に反応し、前記出力電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルの下に低下させ、前記溶融金属球が前記ワークピース上の溶接パドルの中に浸るようにするステップ;
(c)前記溶融金属球が前記電極の前記遠位端からピンチオフするように導くために、前記出力電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルの上に自動的に上昇させるステップ;
(d)前記溶融金属球が前記電極の前記遠位端から前記ワークピース上へとピンチオフすると、前記出力電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルの下に減少させ、前記電極と前記ワークピースとの間に電気アークを再設立するステップ;
(e)前記電気アークの再設立に反応し、前記出力電流レベルを前記波形のピーク電流レベルに上昇させるステップ;
(f)前記出力電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルに向けて低下させ、前記電極の前記遠位端に次の溶融金属球を生成するステップ;
(g)次の短絡が前記次の溶融金属球と前記ワークピースとの間に生じるまで、前記出力電流レベルを、前記バックグラウンド電流レベルと、該バックグラウンド電流レベルと前記ピーク電流レベルとの間の中間電流レベルとの間で、所定のパルス率でパルス化するステップ;及び
(h)前記アーク溶接プロセスが完了するまでステップ(b)から(g)までを繰り返すステップ;
を含む方法。
【請求項6】
前記バックグラウンド電流レベル約70アンペアであり、前記ピーク電流レベルは約330アンペアであり、及び/又は前記中間電流レベルは約210アンペアであり、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定のパルス率は約330Hzである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アーク溶接プロセスのワイヤ・フィード速度が、毎分約150インチである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アーク溶接プロセスは、ガスメタル・アーク溶接(GMAW)プロセスである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記GMAWプロセスは、アルゴン及びCO2をシールドガスとして使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前進する溶接電極と金属ワークピースとの間に一連の電気アークパルスを発生させるように電気溶接波形を生成することによってアーク溶接プロセスの間に溶接入熱を増加するシステムであり:
前記電気溶接波形のバックグラウンド電流段階、ピーク電流段階及び導出電流段階を生成するための第1構成の電子部品又は手段であり、前記バックグラウンド電流段階は、バックグラウンド電流レベルを供給し、前記ピーク電流段階は、ピーク電流レベルを供給し、前記導出電流段階は、低下する導出電流レベルを供給する、第1構成の電子部品又は手段;
前記電気溶接波形のピンチ電流段階を生成するための第2構成の電子部品又は手段であり、該ピンチ電流段階は上昇するピンチ電流レベルを供給する、第2構成の電子部品又は手段;及び
前記バックグラウンド電流段階の間に、前記電気溶接波形の少なくとも1つの加熱電流パルスを生成するための第3構成の電子部品又は手段であり、該少なくとも1つの加熱電流パルスは、前記バックグラウンド電流レベルと前記ピーク電流レベルとの間にある中間電流レベルを供給する、第3構成の電子部品又は手段;
を含む、システム。
【請求項12】
前記バックグラウンド電流段階、前記ピンチ電流段階、前記ピーク電流段階、及び前記導出電流段階を、該バックグラウンド電流段階が前記少なくとも1つの加熱電流パルスを含むように、連続して定期的に再生するための第4構成の電子部品又はシステムをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ワークピースにより短絡している前記電極に反応し、前記バックグラウンド電流段階の最後に、前記電気溶接波形の電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルの下に低下させるための第5構成の電子部品又は手段をさらに含む、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電極の前記ワークピースによる短絡が終わることを予測して、前記ピンチ電流段階の最後に前記電気溶接波形の電流レベルを前記バックグラウンド電流レベルの下に低下させるための第6構成の電子部品又は手段をさらに含む、請求項11乃至13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記導出電流段階が、単調に低下する導出電流レベルを供給し;前記ピンチ電流段階は、単調に上昇するピンチ電流レベルを供給する、請求項11乃至14のいずれか1項に記載のシステム。

【図2】
image rotate

【図3A−3D】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−516270(P2011−516270A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502459(P2011−502459)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006084
【国際公開番号】WO2009/156845
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510202156)リンカーン グローバル,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】