説明

短縮型ヒトRNASET2の大腸菌における効率的発現

本発明は、短縮型ヒトRNASET2、細菌におけるその効率的発現のための方法およびその使用に関し、具体的には、短縮型ヒトRNASET2のアクチン結合性ならびに抗腫瘍性および抗血管形成性に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載される発明は、短縮型ヒトRNASET2、細菌におけるその効率的発現のための方法およびその使用に関し、具体的には、短縮型ヒトRNASET2のアクチン結合性ならびに抗腫瘍性および抗血管形成性に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトRNASET2は、第6染色体(6q27)に位置するRNASET2遺伝子によってコードされる、腫瘍抑制遺伝子として知られているT−RNase糖タンパク質である(Trubia他、1997、Genomics、42:342〜344;Acquati他、2001、Meth Mol Biol、160:87〜101)。RNASET2の変異および機能の喪失が、卵巣、乳房、子宮、胃、肝臓、結腸/直腸および腎臓のガン腫、ならびに、血液学的悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫および急性リンパ芽球性白血病など)を含めて、増大した腫瘍形成性およびガンに関連している(Smirnoff他、Cancer、2006、107:2760〜69)。RNASE6PLのcDNAの腫瘍細胞株における発現により、好適な宿主に注入されたガン細胞の腫瘍形成性および転移能が抑制された。
【0003】
RNASET2遺伝子が以前に酵母のピキア・パストリスにクローン化され、これにより、ヒト組換えRNASET2が産生された。このヒト組換えRNASET2(hrRNASET2)は、動物モデルにおける腫瘍および血管形成的血管の発達を阻害することにおいて効果的であることが判明した(Smirnoff他、2006、Cancer、107(12)、2760〜2769)。
【0004】
ヒトRNASET2の腫瘍抑制的かつ抗血管形成的な効果はそのリボヌクレアーゼ活性によって媒介されない。Acquati他(Int.J.Onc.、2005、26:1159〜68)は、ヒスチジンをフェニルアラニンで置換する二重点変異(H65/118F)により、リボ核酸分解活性の著しい喪失が生じたが、腫瘍形成性および転移のRNASET2媒介による抑制は影響を受けなかったことを明らかにした。Smirnoff他(Cancer、2006、107:2760〜2769)は、P.pastorisで発現させたヒト組換えRNASET2をオートクレーブ処理し、これにより、この酵素のリボ核酸分解活性を効果的に不活性化したが、アクチン結合性および抗血管形成性は損なわれなかった。
【0005】
Human Genome Sciencesによる米国特許第6590075号(Ruben他)は、ヒトRNASET2に対する相同性を有する遺伝子(これは「遺伝子47」として同定される)を含めて、分泌型タンパク質の70個のヒト遺伝子についてのヌクレオチド配列の単離およびクローニングを開示する。
【0006】
米国特許出願公開第2009074830号(Hunter他)は、広範囲の様々な血管形成関連疾患を治療するための、ミクロスフェアにカプセル化および調製されるいくつかの抗血管形成性の微小管破壊剤(例えば、パクリタキセルなど)の使用を開示する。
【0007】
PCT国際公開WO2006/035439(Roiz他)は、腫瘍抑制活性および抗血管形成活性をインビボおよびインビトロで有し、同様にまた、強いアクチン結合性を有するヒトRNASET2のクローニングおよびP.pastorisにおける発現を開示する。これらの特性はどれも、このタンパク質のリボ核酸分解性と関連しなかった。
【発明の概要】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する単離されたヒト短縮型RNASET2が提供される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有するヒト短縮型RNASET2の精製された調製物が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態のさらに別の局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有するヒト短縮型RNASET2と、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態のなおさらに別の局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号12または配列番号13に示される核酸配列を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む発現可能な核酸構築物が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細菌における上記核酸構築物の発現は、1リットルの細菌培養物あたり少なくとも50mgのヒト短縮型RNASET2を産生させる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む発現可能な核酸構築物により形質転換された細胞が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、上記細胞はE.coli細菌細胞である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む発現可能な核酸構築物により形質転換された複数の細胞を含み、かつ、1リットルの培養物あたり少なくとも50mgの短縮型ヒトRNASET2を発現する細菌培養物が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2の、血管形成をその必要性のある対象において阻害するための使用が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの局面によれば、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2の、血管形成をその必要性のある対象において阻害するための医薬品を製造するための使用が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、血管形成を阻害することは、腫瘍の血管形成を阻害することである。腫瘍は良性腫瘍または悪性腫瘍であり得る。腫瘍は原発性腫瘍であり得る。腫瘍は転移腫瘍であり得る。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態のさらに別の局面によれば、配列番号2、配列番号3、配列番号14または配列番号15に示されるアミノ酸配列を有するヒト短縮型RNASET2ポリペプチドを認識する抗体が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型T2RNaseは、配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基32に対応するアミノ酸配列が欠落している。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、または、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基49に対応するアミノ酸配列が欠落している。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基52に対応するアミノ酸配列が欠落している。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号3と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、または、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基69に対応するアミノ酸配列が欠落している。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基25、アミノ酸残基32またはアミノ酸残基52に対応するアミノ酸座標の少なくとも1つにおけるシステイン残基が欠落している。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基25およびアミノ酸残基32に対応するアミノ酸座標におけるシステイン残基が欠落している。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基25、アミノ酸残基32およびアミノ酸残基52に対応するアミノ酸座標におけるシステイン残基が欠落している。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、ヒト組換え短縮型RNASET2はさらに、認識実体ペプチド配列(recognition entity peptide sequence)を含む。認識実体ペプチド配列はHisタグであり得る。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2はアクチン結合活性を有する。
【0033】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0035】
【図1】図1は、RNASET2の完全なタンパク質配列(配列番号1)を示す。短縮型形態のヒト組換え短縮型RNASE(hrtrRNASE)T2−50(配列番号2)およびhrtrRNASET2−70(配列番号3)の開始点をそれぞれ構成するGlu50残基およびMet70残基には、一重下線が付される。RNase触媒作用部位には、二重下線が付される。システイン残基(灰色)がジスルフィド結合によって連結される。
【0036】
【図2A−2B】図2Aおよび2Bは、大腸菌における短縮型ヒトRNASET2のクローニングおよび発現の概略図を示す。hrtrRNASET2−50をコードする短縮型cDNA配列(cys6 573bp、配列番号4)、および、hrtrRNASET2−70をコードする短縮型cDNA配列(cys5 513bp、配列番号5)を、大腸菌における発現のために最適化されて調製し、ベクターpHis3Parallel(図2B、配列番号6)にクローン化し、大腸菌において発現させた。
【0037】
【図3】図3は、大腸菌において封入体として産生されるヒト組換えRNASET2の両方の短縮型形態およびそのインサート非含有pHis3parallelベクター(モック)のSDS−PAGE分析の写真である。各レーンが10μlの粗細胞溶解物を表す。レーン1−分子マーカー;レーン2−モック;レーン3−hrtrRNASET2−50(配列番号14);レーン4−hrtrRNASET2−70(配列番号15)。レーン3およびレーン4における濃いバンドに留意すること。
【0038】
【図4】図4は、AKTA−FPLC(商標)分離システムを使用する固定化金属(HisTrap(商標))アフィニティーカラムの後における精製されたhrtrRNASET2タンパク質のSDS−PAGE分析の写真である。各レーンが溶出画分の10μlを表す。組換えタンパク質が平衡化緩衝液におけるイミダゾールグラジエントにより溶出された。レーン1−分子マーカー;レーン2−モック;レーン3−hrtrRNASET2−50(配列番号14);レーン4−hrtrRNASET2−70(配列番号15)。
【0039】
【図5A−5B】図5Aおよび5Bは、hrtrRNASET2のアクチン結合能を示す。図5Aは、溶液でのアクチン結合の後におけるhrtrRNASET2のSDS−PAGE分離を示す写真である。アクチン(10μg)を20μlの緩衝液Gにおいて10μgのhrtrRNASET2−50(配列番号14)と混合した。EDCにより架橋した後、それぞれの混合物(18μl)をSDA−PAGEによって分析し、タンパク質を可視化するためにクーマシーブルーで染色し、あるいは、1μlのサンプル混合物を負荷し、hrtrRNASET2−50またはアクチンの免疫検出のためにウサギ抗hrtrRNASET2−50またはウサギ抗アクチンにそれぞれさらした。矢印は63kDaの結合している複合体形成を示す。レーン1、分子マーカー;レーン2、3、4:タンパク質についてのクーマシーブルー染色;レーン5、6、7:抗hrtrRNASET2−50を一次抗体として使用する免疫染色;レーン8、9、10:抗アクチンを一次抗体として使用する免疫染色。レーン2、5、8:アクチン;レーン3、6、9:hrtrRNASET2−50(配列番号14);レーン4、7、10:アクチン−hrtrRNASET2複合体。図5Bは、固相ELISAイムノアッセイにおけるhrtrRNASET2のアクチン結合のグラフ表示である。96マイクロタイタープレートの各ウエルを50mM炭酸塩緩衝液(pH9.5)におけるG−アクチン(500ng/100μl/ウエル)により1時間被覆し、その後、TBSにより洗浄した。被覆されたウエルを200μlのTBSにおける3%BSAにより1時間ブロッキング処理し、その後、TBSにより洗浄した。hrtrRNASET2−アクチン結合を、100μlのTBSにおける125ng/ウエルのタンパク質から始まる1:2の連続希釈を使用して1時間行った。ウエルをTBSTにより3回洗浄し、抗体とのインキュベーションを、ポリクローナルウサギ抗hrtrRNASET2−50抗体(100μl/ウエルのTBSにおいて1:500、1時間放置後、TBSTによる3回の洗浄)、次いで、ヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート(100μl/ウエルのTBSにおいて1:10000、1時間放置後、TBSTによる3回の洗浄)を用いて行った。アクチン結合を、1−Step(商標)Ultra TMB−ELISAを使用して検出し、655nmにおける吸収を測定した。
【0040】
【図6A−6B】図6Aおよび6Bは、結腸ガンHT29細胞におけるクローン形成能に対するRNASET2の短縮型形態(それぞれ1μM)の影響を示す。図6Aは、hrtrRNASET2−50、hrtrRNASET2−70、モックの存在下、または、添加タンパク質の非存在下(PBS)の培地で培養されたHT29細胞の結果を例示するヒストグラムである。コロニーの数(コントロールのパーセント)が、hrtrRNASET2−50(配列番号14)およびhrtrRNASET2−70(配列番号15)では、コントロールおよびモックと比較して著しくより低いこと(P<0.01)に留意すること(それぞれの処理についてN=5)。図6Bは、hrtrRNASET2−50(配列番号14)、hrtrRNASET2−70(配列番号15)、コントロールおよびモックの存在下におけるHT29コロニーの成長を示す顕微鏡写真である。細胞を5日間成長させ、ホルムアルデヒドにおいて固定処理し、メチレンブルーで染色した。
【0041】
【図7A−7L】図7A−7Lは、Matrigel(商標)アッセイにおけるインビトロHUVEC管形成に対するヒト短縮型RNASET2の影響を例示する写真である。96ウエルマイクロタイタープレートでのMatrigel(商標)におけるHUVEC(14×10細胞/ウエル)の管形成を、アンギオゲニン(図7A〜図7D)、bFGF(図7E〜図7H)またはVEGF(図7I〜図7L)によって誘導した(それぞれ1μg/ml)。加えて、細胞を、hrtrRNASET2−50(配列番号14)(図7D、図7Hおよび図7L)、hrtrRNASET2−70(配列番号15)(図7C、図7Gおよび図7K)またはインサート非含有ベクター抽出物(モック、図7B、図7Fおよび図7J)(200μg/mlの各タンパク質)、あるいは、PBS(コントロール、図7A、図7Eおよび図7I)により処理した。PBSまたはモックによって処理されたウエルでは、HUVEC管形成が明白であること、しかしながら、hrtrRNASRE2−50(配列番号14)またはhrtrRNASRE2−70(配列番号15)にさらされたウエルでは、管形成が阻害されることに留意すること(それぞれの処理についてN=5)。
【0042】
【図8A−8O】図8A−8Oは、Matrigel(商標)アッセイにおけるインビトロHUVEC管形成に対する種々の用量のhrtrRNASET2−50(配列番号14)の影響を例示する写真である。実験を、0.5μM(図8D〜図8F)、2.5μM(図8G〜図8I)、5μM(図8J〜図8L)および10μM(図8M〜図8O)の濃度でのhrtrRNASET2−50、ならびに、増殖因子のアンギオゲニン(図8A、図8D、図8G、図8Jおよび図8M)、bFGF(図8B、図8E、図8H、図8Kおよび図8N)およびVEGF(図8C、図8F、図8I、図8Lおよび図8O)(200μg/mlの各タンパク質)を使用して、図7に記載されるように行った。PBSをコントロールとして使用した(図8A〜図8C)。すべての増殖因子において、hrtrRNASET2−50はHUVEC管形成を用量依存的様式で阻害した。アンギオゲニンでは、インビトロ管形成が0.5μMのhrtrRNASET2−50において阻害された。bFGFおよびVEGFでは、インビトロ阻害が2.5μMのhrtrRNASET2−50において観測された。
【0043】
【図9】図9は、hrtrRNASET2−50(配列番号14)による腫瘍成長のインビボ阻害を例示するグラフである。ヌードマウスに埋め込まれたHT−29由来結腸ガン細胞の腫瘍成長に対する5mg/kgのhrtrRNASET2−50の全身投与の影響を、埋め込み後5週間にわたって測定される相対的腫瘍体積として表した(相対的腫瘍体積(RTV)=V/V、式中、Vはいずれかの所与時間における腫瘍体積であり、Vは最初の処置の時における腫瘍体積である)。それぞれの棒が平均の標準誤差を表す。
【0044】
【図10A−10F】図10A−10Fは、全身的hrtrRNASET2−50(配列番号14)投与による腫瘍成長のインビボ阻害を例示する組織学的切片の写真である。HT−29由来の異種移植片をヌードマウスにおいて成長させ、パラフィンにおいて固定処理し、ヘマトキシリンおよびエオシンによる染色の後で切片化した。(モック)処理腫瘍(図10C、図10D)、hrtrRNASET2−50(配列番号14)処理腫瘍(図10E、図10F)。コントロール処理マウス(図10A)およびインサート非含有ベクター抽出物(モック)処理マウス(図10C)において、低倍率の観察により、広範囲の血管形成的成長が付随する、HT−29ガン細胞の浸襲性成長の広い領域が明らかにされる。血管の高倍率では、内皮細胞の中に広がるガン細胞が示される(図10B、図10D)。hrtrRNASET2−50(配列番号14)により全身処置されたマウスにおいて、低倍率の観察(図10E)により、壊死性組織によって取り囲まれるクラスターで集まるガン細胞、および、低下した血管形成が明らかにされる。高倍率では、血管から剥離した腫瘍細胞および内皮構造の破壊が示される(図10F)。スケールバー=75μm(図10A、図10C、図10E);15μm(図10B、図10D、図10F)。
【0045】
【図11】図11は、ヌードマウスに埋め込まれたHT−29由来結腸ガン細胞に対する全身的hrtrRNASET2−70(配列番号15)投与のインビボ影響を示すグラフ表示である。ガン細胞の埋め込みおよび腫瘍の確立の後、マウスに、5mg/kgのhrtrRNASET2−70(黒三角)、インサート非含有ベクター抽出物(モック、黒四角)またはタンパク質非添加(PBS、黒丸)を投与した。それぞれの棒が平均の標準誤差を表す。相対的腫瘍体積(RTV)=V/V、式中、Vはいずれかの所与時間における腫瘍体積であり、Vは最初の処置の時における腫瘍体積である)(Fujii T他、Cancer Reserach(2003)、23:2405〜2412)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書中に記載される発明は、そのいくつかの実施形態において、抗腫瘍性および抗血管形成性を有する短縮型ヒトT2RNaseの効率的な細菌発現の方法に関し、さらに、本発明の組換え短縮型ヒトT2RNaseの治療的使用に関する。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0048】
組換えヒトRNASET2は、P.pastoris発現システムで産生された場合、そのリボヌクレアーゼ活性によって媒介されない著しい腫瘍抑制効果および抗血管形成効果を有することが示されている(国際公開WO2006/035439を参照のこと。これは本明細書によりその全体が組み込まれる)。
【0049】
発現タンパク質の発現レベルを増大させ、かつ、そのグリコシル化を回避するために、hrRNASET2が大腸菌において発現させられた。
【0050】
本発明者らは、大腸菌における全長RNASET2遺伝子の発現が微量の組換えタンパク質をもたらしたか、または、組換えタンパク質を全くもたらさなかったことを見出した。このことを改善するために、この遺伝子の2つの短縮型、すなわち、Glu50から始まるRNASET2ペプチド(hrtrRNASET2−50)(配列番号2)をコードする短縮型、および、Met70から始まるRNASET2ペプチド(hrtrRNASET2−70)(配列番号3)をコードする短縮型を構築し、大腸菌において発現させた(それぞれ、配列番号14および配列番号15)。これらの短縮型ヒト組換えRNASET2タンパク質は、A.niger B1真菌のT2RNaseおよび全長型の酵母産生されたヒトRNASET2の治療特性およびアクチン結合性を保持していた。
【0051】
したがって、本発明の1つの局面によれば、単離されたヒト短縮型RNASET2が提供される。本発明のRNASET2は、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する。
【0052】
本明細書中で使用される用語「RNASET2」は、以前には「RNase6PI」または「ヒトT2RNase」として知られている、RNaseのT2ファミリーのヒト型メンバーに関連する。「RNASET2」(配列番号1)が、ヒトゲノムの6q27領域に位置するRNASET2遺伝子によってコードされる(Campomenosi他、Arch Biochem Biophys、2006、449:17〜26を参照のこと)。
【0053】
本明細書中で使用される用語「単離された」は、その通常の生理学的状況から取り出されたタンパク質またはポリペプチドを示す。
【0054】
本明細書中で使用される用語「短縮型(の)(短縮された/される)」は、いくつかのアミノ酸を欠くRNASET2タンパク質またはRNASET2ポリペプチドを示し、通常的にはポリペプチド鎖の一部分を欠くRNASET2タンパク質またはRNASET2ポリペプチドを示す。短縮型タンパク質は、N末端領域またはC末端領域において、あるいは、それらの間の任意の点(1つまたは複数)において短縮され得る(ポリペプチド鎖の一部分が欠失し得る)。
【0055】
本発明のヒト短縮型RNASET2は、リボ核酸分解活性がなく、それにもかかわらず、抗血管形成性を保持するRNASET2ポリペプチドをもたらすいずれの領域においても短縮され得る。ヒトRNASET2は、ポリペプチドの機能的性質と何らかの関わりがあると考えられる4対(合計で8個)のシステイン残基(これらは、アミノ酸座標25、32、52、98、161、179、190および208に位置する)を含むことが認められる。1つの実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2はN末端側の仮想的なリボヌクレアーゼ触媒作用ドメインにおいて短縮される。別の実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2は、配列番号1(全長RNASET2)のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基32に対応するアミノ酸配列を有しておらず、したがって、アミノ酸座標25およびアミノ酸座標32におけるシステイン残基を有していない。なおさらに別の実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2は、配列番号1(全長RNASET2)のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基52に対応するアミノ酸配列を有しておらず、したがって、アミノ酸座標25、アミノ酸座標32およびアミノ酸座標52におけるシステイン残基を有していない。別の実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2は、全長RNASET2のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基49に対応するアミノ酸配列を有していない。なおさらに別の実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2は、配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基69に対応するアミノ酸配列を有していない。例示的なヒト短縮型RNASET2タンパク質が配列番号2および配列番号3において示される。さらに別の実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2は、認識実体ペプチド(例えば、Hisタグ)をポリペプチドのC末端またはN末端においてさらに含む融合タンパク質である。必要な場合には、別の実施形態において、ヒト短縮型RNASET2融合タンパク質はさらに、認識実体ペプチドと、RNASET2アミノ酸配列との間に配置されたペプチドリンカーを含み、例えば、プロテアーゼ切断部位(例えば、エキソキナーゼ切断部位およびトロンビン切断部位など)を含む。認識実体ペプチドおよびプロテアーゼ切断部位リンカーを有する例示的なヒト短縮型RNASET2融合タンパク質が配列番号14および配列番号15において示される。
【0056】
したがって、1つの実施形態において、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する本発明の短縮型RNASET2タンパク質は、少なくとも75%の相同性、少なくとも80%の相同性、少なくとも85%の相同性、好ましくは88%の相同性、より好ましくは90%の相同性、さらにより好ましくは93%の相同性、なおさらにより好ましくは95%の相同性、さらにより好ましくは98%の相同性、最も好ましくは100%の相同性を配列番号2または配列番号3に対して有する。さらにさらなる実施形態において、本発明のRNASET2タンパク質は、配列番号2、配列番号3、配列番号14および配列番号15において示される通りである。
【0057】
T2ファミリーのリボヌクレアーゼが、植物および動物の様々な生物種と同様に、数多くの微生物において同定されており、それらの独特の分子的特徴によって特徴づけられる(T2RNaseの詳細な総説については、Deshpande他、Crit Rev Microbiol、2002、28:79〜122、および、国際公開WO2006/035439を参照のこと。これらは全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。抗血管形成性、抗腫瘍性および抗転移性を有するヒト以外のT2RNaseもまた、リボ核酸分解活性を除き、かつ、細菌発現システムおよび他の発現システムにおける組換え発現を高めるために、本明細書中に記載されるように短縮され得ることが理解される。
【0058】
本明細書中で使用される用語「血管形成」は、血管のデノボ形成を示し、例えば、脈管形成から生じる血管、同様にまた、既存の血管、毛細血管および細静脈の枝分かれおよび新芽形成から生じる血管などを示す。血管形成を、例えば、組織サンプルの組織学的分析によって、また、典型的な血管形成関連遺伝子(例えば、内皮特異的遺伝子)の発現をモニターすることによって、また、インビトロアッセイ(例えば、本明細書中下記において詳しく記載されるHUVE細胞(HUVEC)−Matrigel(商標)アッセイなど)によって評価することができる。「腫瘍血管形成」は、腫瘍成長に伴う血管の形成を示す。「抗血管形成」は、血管形成プロセスの阻害、低下、防止または制限を示す。
【0059】
本明細書中で使用される用語「リボ核酸分解活性」は、エンドリボヌクレアーゼ活性およびエキソリボヌクレアーゼ活性の両方を示す。「リボ核酸分解活性がない」短縮型RNASET2は、リボヌクレアーゼ活性を本質的に欠いているRNASET2を示すが、微量の残存RNase活性がアッセイ時に検出されることがある。
【0060】
1つの実施形態によれば、ヒト短縮型RNASET2はアクチン結合活性を有する。さらに別の実施形態によれば、T2RNaseのアクチン結合活性は熱安定性である。T2RNaseのいくつかの治療特性がアクチン結合と相関している(国際公開WO2006/035439を参照のこと)。本発明は何らかの理論によって限定されないが、T2リボヌクレアーゼがアクチンに結合できることにより、そのようなT2リボヌクレアーゼは、抗増殖活性、抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有することが暗示されるのではないかと考えられる。
【0061】
アクチン結合を様々なアッセイによって評価することができ、これらには、溶液結合アッセイ(例えば、本明細書中で詳述されるEDCアッセイ)、(本明細書中で詳述されような)PAGE分離およびウエスタンブロッティング、フィルター型アッセイおよびELISA型アッセイが含まれるが、これらに限定されない。アクチン結合アッセイキットが、例えば、Cytoskeleton,Inc.(Denver、CO、米国)から市販されている。
【0062】
ヒト短縮型RNASET2タンパク質は、好適な発現ベクターシステムを使用して、ヒト短縮型RNASET2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって組換え産生することができる。したがって、1つの実施形態によれば、本発明のヒト短縮型RNASET2にはリボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有するヒト短縮型RNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0063】
リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有するヒト短縮型RNASET2をコードする例示的なポリヌクレオチドには、hrtrRNASET2−50およびhrtrRNASET2−70をコードするポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも75%の相同性、少なくとも80%の相同性、少なくとも85%の相同性、好ましくは88%の相同性、より好ましくは90%の相同性、さらにより好ましくは93%の相同性、なおさらにより好ましくは95%の相同性、さらにより好ましくは98%の相同性、最も好ましくは100%の相同性を配列番号4または配列番号5に対して有する。さらにさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号12または配列番号13において示される通りである。
【0064】
従って、用語「ポリヌクレオチド」は、一般に短縮型RNASET2に関して、あるいはいずれかの特定の短縮型RNASET2に関して本明細書中で用いる場合、リボ核酸分解活性を欠き、かつ血管形成を予防し、阻害しおよび/または逆行させることにおいて活性なRNASET2ポリペプチドをコードするいずれのポリヌクレオチド配列もいう。
【0065】
用語「核酸」は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)および適する場合にはリボ核酸(RNA)またはそれらの模倣体などを示す。この用語はまた、均等物として、ヌクレオチドアナログから作製されたRNAまたはDNAのいずれかのアナログ、ならびに、記載されている実施形態に対して適用可能として、一本鎖(センスまたはアンチセンス)ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを包含することを理解しなければならない。この用語には、天然に存在する核酸塩基、糖および共有結合のヌクレオシド間(骨格)連結から構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに、同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような修飾オリゴヌクレオチドまたは置換オリゴヌクレオチドは、多くの場合、望ましい性質(例えば、増強された細胞取り込み、核酸標的に対する増強された親和性、および、ヌクレアーゼの存在下での増大した安定性など)のために、天然の形態よりも好ましい。
【0066】
ヒト短縮型RNASET2をコードするDNAは、従来の手順を使用して容易に単離および配列決定される。単離されると、DNAは発現ベクターに連結することができ、その後、発現ベクターは細菌宿主細胞にトランスフェクションされる。
【0067】
ヒト短縮型RNASET2をコードするDNA配列は、どのようなベクターであってもよい、組換えDNA手順に都合よく供され得る組換えベクターに挿入される。ベクターの選定は、多くの場合、ベクターが導入されることになる宿主細胞に依存する。
【0068】
1つの実施形態において、発現システムは細菌の異種発現システムである。好適な発現ベクターシステムは、バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAにより形質転換される細菌を含む。ベクターの発現制御エレメントは、利用される宿主−ベクターシステムに依存して、その強さおよび仕様が異なる。多数の好適な転写エレメントおよび翻訳エレメントのうちのいずれか1つを使用することができる。
【0069】
ベクター成分には一般に、下記の1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されない:プロモーター、複製起点、1つまたは複数の選択マーカー、および、転写終結配列。したがって、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、その複製が染色体の複製に依存しない、染色体外の実体として存在するベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、ベクターが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。
【0070】
ベクターは好ましくは、RNASET2ポリペプチドをコードするDNA配列が、DNAの転写のために要求されるさらなるセグメントに機能的に連結される発現ベクターである。一般に、発現ベクターはプラスミドDNAまたはウイルスDNAに由来するか、あるいは、両者のエレメントを含有することができる。用語「機能的に連結される」は、セグメントが、それらの意図された目的のために協調して機能するように、例えば、転写がプロモーターにおいて始まり、ポリペプチドをコードするDNA配列を介して進行するように配置されることを示す。
【0071】
組換えタンパク質(すなわち、RNASET2)を封入体(すなわち、染色可能な物質の核凝集物または細胞質凝集物)として産生することができる細菌宿主が選択される。
【0072】
本発明の具体的な実施形態によれば、宿主細胞が、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌から選択される。本発明の教示に従って使用することができるグラム陰性細菌の例には、大腸菌、シュードモナス属、エルウィニア属およびセラチア属が含まれるが、これらに限定されない。本教示に従って使用することができるグラム陽性細菌の例には、エンテロコッカス属、メリッソコッカス属、ペプトコッカス属、サッカロコッカス属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属およびバゴコックス属の細菌が含まれるが、これらに限定されない。宿主の選定が、最大の産生物収量を妥当な費用で提供するために、操作費用を考慮して、また、細胞培養密度の最適化とともになされる。
【0073】
ポリペプチド、プロモーター(例えば、構成的または誘導可能型)、ならびに、必要な場合にはターミネーター、認識実体ペプチドおよび/またはプロテアーゼ切断部位配列をそれぞれコードするDNA配列を連結するために、また、それらを、複製のために必要な情報を含有する好適なベクターに挿入するために使用される手順が、当業者には広く知られている(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)を参照のこと)。プロテアーゼ切断部位を有する短縮型ヒトRNASET2をコードする例示的なポリヌクレオチド配列が配列番号12および配列番号13において示される。
【0074】
本発明の教示に従った使用のために好適である細菌発現ベクターの例には、pET(商標)システム、T7システムおよびpBAD(商標)システムが含まれるが、これらに限定されない。これらのシステムはこの技術分野において広く知られている。1つの実施形態において、細菌発現システムがpHis3Parallelであり、これは、Hisタグの認識実体ペプチド配列を有する融合タンパク質の発現のために最適化されるpET型ベクターである(Sheffield他、Prot Expr Purif、1999、15:34〜39)。別の実施形態において、プロテアーゼ切断部位配列を、タンパク質精製の後におけるHisタグ認識配列の除去を容易にするために含むことができる。Hisタグの除去における使用のために好適である十分に明らかにされている切断部位を有するプロテアーゼの非限定例には、エンテロキナーゼ(軽鎖、New England Biolabs(MA、米国)から入手可能)、トロンビン(Novagen,Inc.(WI、米国)から入手可能)、HRV3Cプロテアーゼ(Novagen,Inc.(WI、米国)から入手可能)およびタバコエッチウイルス(TEV)(Nacalai USA(San Diego、CA)から入手可能)が含まれる。必要な場合には、この技術分野では広く知られている溶解性ドメインもまた、組換えタンパク質の回収を助けるために含むことができる。
【0075】
発現ベクターを細菌宿主細胞に導入する様々な方法がこの技術分野では広く知られており、これらは主として、使用される宿主システムによって決まる。これらには、電気穿孔法、化学的形質転換、接合および形質導入などが含まれるが、これらに限定されない。組換えDNAを、本来的に受容能を有する宿主細胞に形質転換によって容易に導入することができる。
【0076】
宿主細胞が、多量のヒト短縮型RNASET2の発現を可能にする効果的な条件のもとで培養される。効果的な培養条件には、組換えタンパク質の産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、これらに限定されない。効果的な培地は、細菌が、本発明の組換えタンパク質を産生するように培養されるあらゆる培地を示す。そのような培地には典型的には、同化可能な炭素源、窒素源およびリン酸源、ならびに、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分(例えば、ビタミンなど)を有する水溶液が含まれる。本発明の細菌宿主は、所望される量に応じて、従来の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ板において培養することができる。培養を、組換え宿主のために適切である温度、pHおよび酸素含有量で行うことができる。そのような培養条件は当業者の専門的知識の範囲内である。
【0077】
組換え短縮型RNASET2の適切な発現レベルが得られると、ポリペプチドが封入体から回収される。組換えタンパク質を細菌の封入体から回収する様々な方法がこの技術分野では広く知られており、典型的には、細菌溶解後の変性剤による可溶化などがある[例えば、De Bernardez−ClarkおよびGeorgiou、「封入体および凝集状態からのタンパク質の回収」、Protein Refolding Chapter 1:1〜20(1991)。同様にまた、下記の実施例の節、実施例I:「hrtrRNASET2−50(配列番号2)およびhrtrRNASET2−70(配列番号3)のクローニング、発現および精製」を参照のこと]。
【0078】
簡単に記載すると、封入体を、効果的な精製戦略となる簡単な遠心分離法によって細胞質タンパク質の大部分から分離することができる。その後、封入体を、尿素(例えば、8M)またはグアニジニウム塩酸塩のような強い変性剤によって、また、時には極限状態のpHまたは温度で可溶化することができる。変性剤濃度、暴露時間および暴露温度は、それぞれのタンパク質について規格化しなければならない。完全な可溶化の前に、封入体は、混入タンパク質の一部を除くために、変性剤および界面活性剤の希釈液により洗浄することができる。
【0079】
最後に、可溶化された封入体は、変性剤の除去前または除去後において、クロマトグラフィー技術によるさらなる精製に直接に供することができる。タンパク質の回収、分離および精製のための例示的な方法が本明細書中下記において詳述される。
【0080】
短縮型RNASET2の分離を、ポリペプチドを細菌および培養培地のタンパク質および他の成分から精製するために行うことができる。組換えタンパク質の精製は、例えば、治療用途のためには特に重要であり、望ましい。したがって、1つの実施形態によれば、抗血管形成性を有し、リボ核酸分解活性がないヒト短縮型RNASET2の精製された調製物が提供される。本発明のRNASET2ポリペプチドは、様々な標準的なタンパク質精製技術を使用して精製することができ、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、サイズろ過および示差的可溶化(これらに限定されない)などを使用して精製することができる。1つの実施形態において、短縮型RNASET2は認識実体ペプチド配列を含み、精製が、所望される認識実体保有ポリペプチドを、例えば、細菌溶解物のタンパク質から単離するためにアフィニティークロマトグラフィーによって行われる。認識実体ペプチドは必要な場合には、組換えタンパク質のアミノ末端領域またはカルボキシ末端領域のどちらかにおいて操作することができる。有用な認識実体配列には、ポリヒスチジン区画(HHHHHH)、プロテインAのIgG結合ドメイン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチドおよびビオチンなどが含まれるが、これらに限定されない。組換えタンパク質は、例えば、金属キレート化(例えば、Ni−アガロース)カラムクロマトグラフィー、プロテインA−セファロースカラムクロマトグラフィーおよびグルタチオン−セファロースカラムクロマトグラフィーを使用する1工程プロセスで容易に精製することができる。N末端またはC末端のシグナル配列および認識実体配列は、プロテアーゼ切断部位を組み込むことによって容易に除くことができる。
【0081】
したがって、本発明の1つの実施形態によれば、認識実体は、6個〜10個のヒスチジン残基の連続区域(HHHHHH)である。6アミノ酸残基のポリヒスチジン配列は、免疫原性が十分でないことが示されており、また、タンパク質の機能および構造にほとんど影響を及ぼさない。ポリヒスチジン認識実体ペプチドはタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらかにおいて操作することができる。したがって、他の実施形態において、認識実体ペプチド配列がHisタグであり、精製が、本明細書中の実施例Iで詳しく記載されるように、ニッケルアフィニティー媒体に対する可逆的なニッケル−ヒスチジン結合によって行われる。認識実体ペプチドを、タンパク質の精製および/または機能研究のために、タンパク質にC末端またはN末端で融合されるポリヒスチジン残基(いわゆる「Hisタグ」)の形態で使用することが記載されている(Janknecht他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:8972〜8976、1991;Hoffmann他、Nucleic Acids Res、19:6337〜6338、1991;欧州特許EP0282042)。
【0082】
1つの実施形態において、精製後、短縮型RNASET2タンパク質は、無傷である認識実体配列(例えば、Hisタグ)を伴ったままであり、融合タンパク質として使用される。別の実施形態において、また、必要な場合には、組換えRNASET2は、認識実体ペプチドに隣接するプロテアーゼ切断部位を含んで発現され、精製後、組換えRNASET2−切断部位−認識実体ペプチドが、認識実体配列を精製された組換えRNASET2から除くために、1つのプロテアーゼまたは種々のプロテアーゼの組合せにより処理される。好適な切断部位がこの技術分野では広く知られており、これらには、エンテロキナーゼ切断部位、トロンビン切断部位、HRV3Cプロテアーゼ切断部位、タバコエッチウイルス(TEV)切断部位が含まれるが、これらに限定されない。組換えタンパク質の発現および精製におけるそのようなプロテアーゼ切断部位の構築および使用はこの技術分野では広く知られている。さらなる実施形態において、認識実体ペプチドが、1つのエキソペプチダーゼまたは種々のエキソペプチダーゼの組合せを使用して除かれ、例えば、ジペプチジルアミノペプチダーゼ、グルタミンシクロトランスフェラーゼおよびピログルタミルアミノペプチダーゼ(TAGZyme、Qiagene(CA、米国))などを使用して除かれる。プロテアーゼ切断部位リンカーおよび認識実体ペプチドを有する例示的な短縮型ヒトRNASET2ポリペプチドが配列番号14および配列番号15において示される。
【0083】
上記の方法論は、抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有する高度に精製された先例のない収量の組換えヒトRNASET2を原核生物細胞から得るために効率的である。RNASET2タンパク質の正確な発現を機能的および構造的に調べることができる。活性をアッセイする様々な方法が下記の実施例の節で詳しく記載される(例えば、PAGE分離、アクチン結合アッセイ、免疫検出、インビトロ血管形成アッセイおよびインビボ血管形成アッセイ、抗原認識)。
【0084】
本発明の教示は、リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2を、誘導時の細菌培養物の1リットルあたり、少なくとも50mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも75mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも100mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも120mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも150mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも200mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも300mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも500mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも750mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で、場合により少なくとも1000mgの精製されたヒト短縮型RNASET2分子の収量で提供する。
【0085】
したがって、本発明の実施形態は、細菌調製残物と、少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のヒト短縮型RNASET2とを含む組成物を提供する。細菌調製残物はさらに、この技術分野では広く知られている方法を使用して臨床用途(インビボ)のために除くことができる。
【0086】
短縮型ヒトRNASET2は、適切な医薬的に許容されるキャリアおよび/または賦形剤の添加とともに、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、閉じ込めまたは凍結乾燥の従来のプロセスによって本発明に従って医薬品を調製するために使用することができ、あるいは、代替において、短縮型ヒトRNASET2は、本明細書中上記で記載されるような適切な送達ビヒクルに連結することができる。
【0087】
本発明を実施に移しているとき、短縮型ヒトRNASET2が、腫瘍成長、転移増殖および血管形成をインビトロおよびインビボで効果的に阻害することが示された(実施例III〜実施例IVを参照のこと)。したがって、本発明の短縮型RNASET2、および、本発明の短縮型RNASET2を含む組成物は、ガン(例えば、腫瘍の血管形成および転移)、免疫調節、神経変性疾患および炎症性疾患を含めて、運動性に関連づけられる細胞障害を抑制するための治療剤として使用することができる。
【0088】
したがって、本発明の1つの実施形態によれば、血管形成をその必要性のある対象において阻害する方法が提供される。この方法は、抗血管形成活性を有し、好ましくは、配列番号2または配列番号3に対して少なくとも95%相同的であるアミノ酸配列を有する短縮型ヒトRNASET2タンパク質を提供することによって達成される。
【0089】
短縮型ヒトRNASET2は、アクチンに特異的に結合することが示された。アクチンの集合および分解の中断は、細胞の運動性、発達、成長、増殖および再生に影響を及ぼす。したがって、本発明の組成物および方法は、細胞の異常な蓄積によって特徴づけられる状態、症候群または疾患を処置するために使用することができる。細胞の異常な蓄積によって特徴づけられる疾患または状態には、炎症性疾患、神経変性疾患およびガンが含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明の組成物および方法は、細胞または組織におけるアクチンフィラメントの集合および分解を阻害するために使用することができ、これは、短縮型ヒトRNASET2タンパク質(例えば、RNASET2−50またはRNASET2−70、あるいは、抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有するその短縮型ホモログ)を細胞または組織に提供することによって達成される。
【0090】
かくして、本発明は、限定されるものではないが、胆管癌、脳癌、乳癌、頸部癌;絨毛癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;表皮内新生物;リンパ腫;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);メラノーマ;神経芽細胞腫;眼癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、ならびに他の癌腫および肉腫、乳頭腫、神経膠芽細胞腫、カポシ肉腫、扁平細胞癌腫、神経星状細胞腫、頭部癌、首部癌、膀胱癌、結直腸癌、甲状腺癌、膵臓癌、胃癌、肝細胞癌腫、白血病、リンパ腫、ホジキン病、バーキット病、関節炎、関節リウマチ、糖尿病性網膜障害、脈管形成、再狭窄、イン・ステント再狭窄、血管移植片再狭窄、増殖性硝子体網膜障害、慢性炎症性増殖性病、皮膚線維腫および乾癬を含めた悪性癌または非悪性癌等の癌性細胞または他の細胞のごとき異常に増殖する細胞によって特徴付けられる疾患、症候群または疾患を治療するのに用いることができる。
【0091】
本明細書において、用語「癌」または「腫瘍」は臨床的に記載される用語であり、これらは、異常な細胞増殖を呈する細胞によって特徴付けられる膨大な疾患を含む。用語「腫瘍」は、組織に適用される場合、一般には、過剰かつ異常な細胞増殖に特徴付けられる、いずれの異常な組織成長もいう。腫瘍は「良性」であり得、その元の病巣から拡大できず、または「悪性」または「転移性」であり得、その解剖学的部位を超えて宿主身体全体の他の領域に拡大することができる。腫瘍は、それが発生される器官に存在しかつ転移成長でない「原発性腫瘍」であることができ、またはそれは原発性腫瘍の器官以外の器官で発生する転移腫瘍であることができる。用語「癌」は、一般には、悪性腫瘍、またはそれから生起する疾患状態を記載するのに用いられるより古い用語である。別法として、該用語は新生物としての異常な成長、および悪性新生物としての悪性異常成長をいう。
【0092】
本発明の短縮型ヒトRNASET2は、ガンを有する危険性がある対象の予防的処置において使用することができる。本明細書中で使用される「ガンを有する危険性がある対象」は、ガンを発症する確率が高い対象である。これらの対象には、例えば、遺伝子異常を有し、その存在が、ガンを発症することのより大きい可能性に対する相関関係を有することが明らかにされている対象、および、ガンの原因となる作用因(例えば、タバコ、アスベストまたは他の化学的毒素など)にさらされる対象、または、以前にガンのために処置されたことがあり、今は見かけ上の寛解状態にある対象が含まれる。ガンを発症する危険性がある対象が本発明のRNASET2にさらされるとき、その対象は、転移性になることから生じるどのようなガンも防止できるかもしれない。
【0093】
本発明のRNASET2は、対象において炎症に関連する障害を治療および/または予防するのにも有用である。アクチン結合活性を有するRNASET2に暴露された免疫または造血細胞は、移動する能力が低いであろう。かくして、アクチン結合活性を有するRNASET2は、免疫細胞移動に関連した炎症を妨げるのに、ならびに炎症障害および虚血性病を治療し、予防するのに有用である。
【0094】
炎症障害および虚血症病は、損傷した、あるいはそうでなければ好中球の移動および活性化を誘導してしまった局所組織領域への好中球の移動に関連する炎症によって特徴付けられる。いずれかの特定の理論に拘束されるつもりはないが、負傷の部位への好中球移動に由来する好中球の過剰な蓄積は、周囲の組織を損傷する毒性因子の放出を引き起こすと考えられる。炎症病が急性発作である場合、好中球刺激によってしばしば損傷される組織は脳である。活性な好中球は脳に蓄積するので、梗塞が発症する。
【0095】
本明細書において、「炎症疾患または状態」は、負傷または感染の部位における局所的炎症によって特徴付けられるいずれの状態もいい、自己免疫疾患、感染性炎症性状態のある種の形態、器官移植または他のインプラントに特徴的な望ましくない好中球活性、および局所組織部位における望まない好中球蓄積において特徴付けられる実質的にいずれの他の状態も含む。これらの状態としては、限定されるものではないが、髄膜炎、大脳浮腫、関節炎、腎炎、成人呼吸逼迫症候群、膵臓炎、筋炎、神経炎、結合組織病、静脈炎、動脈炎、血管炎、アレルギー、アナフィラキシー、エールリヒア症、痛風、器官移植および/または潰瘍性結腸炎が挙げられる。
【0096】
本明細書において「虚血性の疾患または状態」とは、心筋または脳梗塞で見られるように、組織へ血液を供給することを担う血管のブロックまたは出血による、組織への血液供給の中断に由来する局所的炎症によって特徴付けられる疾患をいう。脳虚血性発作または脳虚血症は、脳への血液供給がブロックされた虚血性疾患の形態である。脳への血液供給のこの中断は、血管それ自体の固有のブロックまたは閉塞、閉塞の遠くで由来する源、不適切な大脳血流をもたらす減少した灌流圧もしくは増加した血液粘度、またはクモ膜下空間もしくは大脳内組織における破裂した血管を含めた、種々の原因に由来し得る。
【0097】
本発明のいくつかの態様において、本発明のRNASET2は、バリアーを横切っての腫瘍細胞の移動を妨げるのに十分な量で供される。癌の侵入および転移は、形質転換された細胞が、細胞外マトリックス(ECM)を通って侵入し、移動し、そして繋留−独立性成長特性を獲得するのを可能とする細胞接着特性の変化を含む複雑なプロセスである(Liotta,L.A.ら、Cell 1991 64;327−336)。これらの変化のいくつかは、膜関連細胞骨格、および細胞内シグナリング分子を含有する細胞/ECM接触点である病巣接着において起こる。転移性疾患は、腫瘍細胞の播種性病巣が、それらの成長および繁殖を支える組織に播かれた場合に起こり、腫瘍細胞のこの第2の拡大は、癌の大部分に関連する罹病率および死亡率を担う。かくして、本明細書で用いる用語「転移」とは、原発性腫瘍部位から離れた腫瘍細胞の侵入および移動をいう。
【0098】
さらに別の実施形態では、本発明のRNASET2またはそれをコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、バリアーを横切るそれらの能力のテストにおいて、細胞運動性の阻害に対する感受性について細胞をアッセイすることができる。好ましくは、腫瘍細胞はバリアーを横切ることが妨げられる。腫瘍細胞に対するバリアーは、イン・ビトロ人工バリアー、またはイン・ビボ天然バリアーであり得る。イン・ビトロバリアーとして、限定されるものではないが、Matrigel(登録商標)等の細胞外マトリックス被覆膜が挙げられる。かくして、RNASET2を細胞に供することができ、該細胞は、次いで、Matrigel侵入アッセイシステムにおいて腫瘍細胞侵入を阻害するそれらの能力についてテストすることができる。転移についての他のイン・ビトロおよびイン・ビボアッセイは、先行技術に記載されている。例えば、ここに引用して援用する、米国特許第5935850号参照。イン・ビボバリアーとは、対象の身体に存在する細胞バリアーをいう。
【0099】
本発明の一態様による短縮型ヒトRNASET2は、それ自体、あるいはそれが適当な担体または賦形剤と混合された医薬組成物において、ヒトまたはいずれかの他の哺乳動物等の生物に投与することができる。
【0100】
本明細書中で使用される「医薬組成物」または「医薬」は、本明細書中に記載される短縮型ヒトRNASET2リボヌクレアーゼの1以上と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、治療される対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0101】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0102】
医薬組成物はまた、限定されない、炎症性薬剤、抗菌剤、麻酔、癌治療剤などの1以上のさらなる有効成分を、主要な有効成分に加えて含むことができる。本発明の組成物と一緒に使用するのに好適な一般的に使用される追加の薬剤の詳細な説明は、以下に示される。
【0103】
本発明の医薬組成物は、当該分野でよく知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0104】
本発明に従って使用するための医薬組成物は有効成分を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む一つ以上の生理学的に許容される担体を使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0105】
T2ファミリーのリボヌクレアーゼの有意な治療効果は、異常な細胞増殖および蓄積血管形成、転移増殖および腫瘍成長の多様なモデル(ここに完全に引用して援用するWO2006/035439参照)において、広く種々の投与手段を用いて明らかにされた。RNaseの迅速な全身摂取および分配をもたらす腹腔内投与は、ヌードマウスにおける皮下腫瘍および腹腔内腫瘍において、腫瘍成長および発生を抑制するにおいて効果的であることが判明した。T2 RNaseのなおより迅速な全身摂取をもたらす静脈内投与もまた、皮下異種移植片(以下の実施例IV参照)、および静脈内腫瘍の遠隔(肺)転移拡大を抑制し、治療するにおいて効果的なことが判明した。T2 RNaseでの細胞の直接的投与、およびプレインキュベーションは、乳房癌腫、大腸癌腫、メラノーマ、イン・ビボでの脈管形成因子誘導脈管形成および微小血管密度、およびイン・ビトロでの植物およびヒトHUVE細胞双方における細胞管形成での腫瘍成長の防止において効果的なことが判明した。T2 RNaseの経口投与は、マイクロカプセルの形態では、結腸腫瘍(DMHモデル)誘導において初期に投与した場合、腫瘍成長、増殖、腫瘍サイズ、腫瘍血管形成および異常な陰窩病巣の数を低下させるのに効果的なことが判明した。既によく発生した腫瘍を保有する動物へのT2 RNaseの同様な経口投与は、消化プロセスおよび腸内送達されたと推定される低用量へのRNaseの暴露にかかわらず、ラットにおける結腸癌腫瘍の血管形成および悪性の度合いを低下させた。組成物の効果的な腸放出をもたらすカプセル化方法は当該分野で良く知られており、それの使用は、既に確立された腫瘍の場合には短縮型ヒトRNASET2の経口投与の有効性を増加させると予測されることが認識されよう。
【0106】
かくして、投与を行うためには、本発明の医薬組成物は適当な医薬担体、および有効量の抗血管形成活性を有する短縮型ヒトRNASET2を含み、例えば、局所、眼内、非経口、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、または当該分野で良く知られた方法を介するいずれかの他の効果的な手段によって投与される。
【0107】
静脈内、筋肉内または皮下注射のためには、短縮型ヒトRNASET2は、水性溶液、好ましくは、ハンクスの溶液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液等の生理学的に適合する緩衝液中に処方することができる。例えば、短縮型ヒトRNASET2の有効量を含有する生理学的に適当な溶液を血液循環中に全身投与して、直接的に到達または解剖学的に摘出することができない癌または腫瘍を治療することができる。有効量の短縮型ヒトRNASET2を含有する生理学的に適当な溶液は、標的組織の腫瘍細胞を治療するのに有効な量にて針によって標的癌または腫瘍組織に直接的に注射することができる。
【0108】
経粘膜投与の場合、浸透される障壁に適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤は当該分野では一般に知られている。
【0109】
経口投与の場合、本発明の医薬組成物は、短縮型ヒトRNASET2を、当該分野でよく知られている医薬上許容される担体と組み合わせることによって容易に配合することができる。そのような担体により、短縮型ヒトRNASET2は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0110】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0111】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された短縮型ヒトRNASET2を含有し得る。軟カプセルでは、短縮型ヒトRNASET2を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0112】
本発明の医薬組成物の経口送達は、胃腸管に存在するpHおよび酵素分解のため、成功しないであろう。かくして、そのような医薬組成物は、望ましくない環境を回避するように処方されなければならない。例えば、腸溶コーティングを経口固体処方に適用することができる。セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびアクリル樹脂等の酸性耐性特性を持つ物質は、ミクロカプセル化のための錠剤または顆粒をコーティングするのに最も一般に用いられる。好ましくは、湿式造粒を用いて腸溶被覆顆粒を調製し、有効成分およびコーティングの間の反応を回避する(Lin,S.Y.およびKawashima,Y.1987,Pharmaceutical Res.4:70−74)。溶媒蒸発方法を用いることもできる。溶媒蒸発方法を用いて、糖尿病ラットに投与されるインスリンをカプセル化し、血中グルコース濃度を維持した(Lin,S.Y.ら、1986,Biomater,Medicine Device,Artificial Organ 13:187−201およびLin,S.Y.ら、1988,Biochemical Artificial Cells Artificial Organ 16:815−828)。また、それを用いて、ウイルス抗原およびコンカナバリンA等の高分子量の生体物質をカプセル化した(Maharaj,I.ら、1984,J.Phamac.Sci.73:39−42)。
【0113】
口内投与の場合、1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0114】
吸入による投与の場合、本発明の1つの実施形態に従って使用される短縮型ヒトRNASET2は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、短縮型ヒトRNASET2と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0115】
別の実施形態によれば、本発明の医薬組成物はまた、非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための組成物は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0116】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な調製物の水溶液が含まれる。さらに、短縮型ヒトRNASET2の懸濁物を、適切なオイル状注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするために短縮型ヒトRNASET2の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0117】
あるいは、短縮型ヒトRNASET2は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0118】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0119】
加えて、目、胃腸管、生殖泌尿器系管(例えば、泌尿器系膀胱)、肺および気管支系等のような、体腔に存在する癌または腫瘍は、針での直接的注射を介して、あるいは癌または腫瘍に罹患した中空器官に入れられたカテーテルまたは他の送達チューブを介して、有効量の短縮型ヒトRNASET2を含有する生理学的に適当な組成物(例えば、滅菌された、生理食塩水またはリン酸緩衝液、懸濁液、またはエマルジョン等の溶液)を受けることができる。X線、ソノグラム、またはファイバー光学可視化システムの等のいずれかの効果的なイメージングデバイスを用いて、標的組織を突き止め、それに近接する針またはカテーテルチューブをガイドすることができる。
【0120】
本発明の医薬組成物は浸透圧ミクロポンプによって送達することもできる。浸透圧ミクロポンプは体腔の1つに移植し、薬物は治療すべき組織に一定に放出される。この方法は、医薬組成物に対する免疫応答が経験された場合に特に有利である。この方法は、ONCONASEで用いられてきた(Vasandani V.M.ら、1996,Cancer Res.15;56(18):4180−6)。
【0121】
別法として、かつ本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、医薬上許容される担体は、短縮型ヒトRNASET2を対象の哺乳動物細胞に送達することができる送達ビヒクルを含む。
【0122】
蛋白質または核酸を腫瘍または癌細胞へ、またはその上へ標的化するための多数の送達ビヒクルおよび方法は当該分野で公知である。例えば、リポソームは、蛋白質または核酸を標的細胞へ送達するのに利用できる人工膜小胞である(Newton,A.C.およびHuestis,W.H.,Biochemistry,1988,27:4655−4659;Tanswell,A.K.ら、1990,Biochmica et Biophysica Acta,1044:269−274;ならびにCeccoll,J.ら、Journal of Investigative Dermatology,1989,93:190−194)。かくして、T2−RNaseまたはそれをコードするポリヌクレオチドは、リポソーム小胞で高い効率にてカプセル化し、哺乳動物細胞に送達することができる。加えて、T2−RNase蛋白質または核酸を、例えば、ここに引用して援用するLeeに対する米国特許第5925628号に記載されたように、ミセルを介して腫瘍または癌細胞を標的化するように送達することもできる。
【0123】
短縮型ヒトRNASET2をカプセル化したリポソームまたはミセルは、標的組織の異常に増殖する細胞を治療するのに有効な用量で、局所、眼内、非経口、鼻腔内、気管内、気管支内、筋肉内、皮下、またはいずれかの他の効果的な手段によって投与することができる。リポソームは、有効量のカプセル化された短縮型ヒトRNASET2を含有するいずれかの生理学的に適当な組成物にて投与することができる。
【0124】
別法として、かつ本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、送達ビヒクルは、限定されるものではないが、特異的細胞受容体またはマーカーに結合することができる抗体またはリガンドであり得る。抗体またはリガンドは適当なリンカーを介して短縮型ヒトRNASET2蛋白質に直接的に連結させることができ、あるいは別法として、そのような抗体またはリガンドは、短縮型ヒトRNASET2をカプセル化するリポソームの表面に供することができる。
【0125】
例えば、短縮型ヒトRNASET2は、当該分野で従前に記載されたように、特異的組織または細胞に標的化するために特異的膜蛋白質抗体またはリガンドと融合させることができる。この点に関し、リボヌクレアーゼAスーパーファミリーのRNaseと、トランスフェリン受容体に対する、またはT細胞抗原CD5に対する抗体との融合は、前記トキシンの各々に対する特異的受容体を保有する腫瘍細胞における蛋白質合成の阻害をもたらすことが認識される(Rydak,M.ら、1991,J.Biol.Chem.266:21202−21207およびNewton DL,ら、1997,Protein Eng.10(4):463−70)。
【0126】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている対象の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的な有効成分の量を意味する。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0128】
治療効果がある量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の範囲内である。
【0129】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法、例えば、対象の有効成分に対するIC50およびLC50(試験された動物の50%における死亡を引き起こす致死量)を決定することによって、明らかにすることができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0130】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は徐放性組成物の単回投与が可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0131】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0132】
本発明のさらに別の態様によると、癌の治療的措置を増強する方法が提供される。該方法は、治療的措置と組み合わせて、短縮型ヒトRNASET2を、それを必要とする対象に投与することによって行われる。さらなる治療方法または組成物との短縮型ヒトRNASET2のそのような相乗活性は、そのような治療の有効臨床用量を大幅に低下させる能力を有し、それにより、しばしば破壊的な負の副作用および治療の高いコストを低下させることが認識されよう。
【0133】
本発明の短縮型ヒトRNASET2との組み合わせに適した癌の治療のための治療的養生法として、限定されるものではないが、化学療法、放射線療法、光療法および光動的療法、外科的処置、栄養療法、切除療法、組み合わせた放射線療法および化学療法、近接照射療法、プロトンビーム療法、免疫療法、細胞療法およびフォトンビーム放射線外科的療法が挙げられる。
【0134】
本発明の化合物と共投与することができる抗癌薬物として、限定されるものではないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタニン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビスアントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;ドゥアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン塩酸塩;エルサニトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾル;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イフォスファミド;イルモフォシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアゾゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲストロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ニチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペール;マイトタン;マイトキサントロン塩酸塩;ニコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィメールナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;タリソマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフエンクエン酸;トレストロン酢酸塩;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキサート;トリメトレキサートグルクロン酸塩;トリプトレシン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ベロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩が挙げられる。さらなる抗新生物剤として、GoodmanおよびGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Eighth Edition,1990、McGraw−Hill,Inc.(Health Brofessions Division)のChapter 52,Antineoplastic Agents(Paul CalabresiおよびBruce A.Chabner)、およびそれに対する緒言、1202−1263に開示されたものが挙げられる。
【0135】
本発明のT2 RNaseまたはそれをコードするポリヌクレオチドと組み合わせて投与することができる抗炎症薬物として、限定されるものではないが、アルクロフェナック;アルクロメタゾンジプロピオン酸塩;アルゲストンアセトニド;アルファアミラーゼ;アムシナファール;アムシナフィド;アムフェナックナトリウム;アミプリローズ塩酸塩;アナキンラ;アニロラック;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;ベンジダミン塩酸塩;ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;クロベタゾールプロピオン酸塩;クロベタゾン酪酸塩;クロピラック;クロチカゾンプロピオン酸塩;コルメタゾン酢酸塩;コルトドキソン;デフラザコルト;デソニド;デソキシメタゾン;デキサメタゾン二プロピオン酸塩;ジクロフェナックカリウム;ジクロフェナックナトリウム;ジフロラゾン二酢酸塩;ジフルミドンナトリウム;ジフルニザール;ジフルプレドネート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリゾン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラック;エトフェナメート;フェルビナック;フェナモール;フェンブフェン;フェンクロフェナック;フェンクロラック;フェンドザール;フェンピパロン;フェンチアザック;フラザロン;フルアザコルト;フルフェナム酸;フルミゾール;フルニゾリド酢酸塩;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;フルオロメトロン酢酸塩;フルクアゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;フルチカゾンプロピオン酸塩;フラプロフェン;フルブフェン;ハルシノニド;ハロベタゾールプロピオン酸塩;ハロプレドン酢酸塩;イブフェナック;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダップ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;ヨードプロフェン;インドキソール;イントラゾール;イソフルプレドン酢酸塩;イソキセパック;イソキシカム;ケトプロフェン;ロフェミゾール塩酸塩;ロモキシカム;ロテプレドノールエタボネート;メクロフェナメートナトリウム;メクロフェナム酸;メクロリゾン二酪酸塩;メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;メチルプレドニゾロンスレプタネート;モミフルメート;ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;パラニリン塩酸塩;ペントザンポリサルフェートナトリウム;フェンブタゾンナトリウムグリセレート;ピルフェニドン;ピロキシカム;ピロキシカムシンナメート;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナゼート;プリフェロン;プロドリン酸;プロカゾン;プロキサゾール;プロキサゾールクエン酸塩;リメキソロン;ロマザリット;サルコレックス;サルナセジン;サルサレート;サンギナリウム塩化物;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダック;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサレート;テブフェロン;テニダップ;テニダップナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナック;チキソコルトールピバリン酸塩;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミデート;ジドメタシン;ゾメピラックナトリウムが挙げられる。
【0136】
本発明のさらに別の実施形態では、短縮型ヒトRNASET2での遺伝子治療が考えられる。本発明のこの態様によると、短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドは医薬上許容される担体と共に哺乳動物細胞に導入され、その導入の結果、この細胞は遺伝子的に修飾され、短縮型ヒトRNASET2のそこでの発現が可能となる。
【0137】
最近、Acquatiらは、HEY4およびSG10G卵巣腫瘍細胞系へのRNase 6PL cDNAのトランスフェクションはヌードマウスにおいて腫瘍形成性を抑制し、さらに、RNase 6PL cDNAでトランスフェクトされた、HEY4クローン、および色素性乾皮症DV40−不死化細胞系のクローンは、イン・ビトロでの成長の間に顕著な老化プロセスを発生することを示しており(Aquatiら、Oncogene.2001 22;20(8):980−8)、かくして、T2 RNaseでのそのような遺伝的修飾の実現可能性を示す。
【0138】
本明細書中、および後の請求の範囲のセクションにおいて、用語「遺伝的修飾」とは、核酸を細胞に挿入するプロセスをいう。該挿入は、例えば、ウイルス感染、注入、トランスフェクション、粒子衝撃、あるいは核酸を細胞に導入するにおいて効果的ないずれかの他の手段によって行うことができ、そのうちいくつかは後にさらに詳細する。遺伝的修飾に続き、核酸は全てが、または部分的に細胞のゲノム(DNA)に組み込まれるか、あるいは細胞のゲノムに対して外部に留まり、それにより、安定に修飾された、または一過的に修飾された細胞を供する。
【0139】
本明細書において、用語「遺伝子治療」または「遺伝的治療」は相互交換的に用いられ、癌細胞等の増殖性細胞の安定なまたは一過的な遺伝的修飾がこの細胞の増殖の阻害をもたらす療法の方法をいう。短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号4、5、12および13)はいずれも、本発明に従って、短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドとして使用することができる。加えて、配列番号4、5、12および13に対して相同であるポリヌクレオチドも、短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドとして使用することができ、但し、それによりコードされる蛋白質は短縮型ヒトRNASET2として特徴付けられ、所望の抗血管形成活性を呈するものとする。さらに、そのようなポリヌクレオチドの部分、突然変異体キメラまたは対立遺伝子もまた、本発明の一実施形態による短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドとして使用することもできることが認識され、また、但し、そのようなポリヌクレオチドのそのような部分、突然変異体キメラまたは対立遺伝子は、所望の活性を呈する短縮型ヒトRNASET2をコードするものとする。
【0140】
別の実施形態では、本発明によるポリヌクレオチドは、当該分野で良く知られた方法を用い、ポリペプチドをコードするいずれかの他の蛋白質にイン・フレームで融合させて、融合された蛋白質をコードさせることができる。一つの実施形態では、短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドは、認識実体ペプチド(例えばHisタグ)をコードするポリヌクレオチドに融合される。なおさらなる実施形態では、プロテアーゼ切断部位(例えばTEV切断部位、エンテロキナーゼ切断部位、トロンビン切断部位など)をコードする任意のポリヌクレオチド配列が、短縮型ヒトRNASET2をコードするポリヌクレオチドと認識実体ペプチドをコードするポリヌクレオチドとの間に挿入され、RNASET2−切断部位−認識実体ペプチドの融合タンパク質をコードする。切断部位および認識実体配列は、短縮型ヒトRNASET2ポリペプチドのN末端またはC末端に融合されることができる。
【0141】
短縮型ヒトRNASET2蛋白質は、当該分野で良く知られた方法を用い、他の蛋白質に融合(結合)させることができる。多くの方法は、蛋白質を含め、異なるタイプの分子を結合させる、または縮合(カップリング)させることが当該分野で知られている。これらの方法は本発明に従って用い、短縮型ヒトRNASET2をリガンドまたは抗体等の他の分子にカップリングさせ、それにより、特異的細胞型へのT2−RNaseの標的化および結合を助けることができる。蛋白質のいずれかの対を、当業者に知られたいずれかの結合方法を用い、一緒に結合または融合させることができる。蛋白質は、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジルとも呼ばれる)(「SDPD」)(Sigma,カタログ番号P−3415)、グルタルアルデヒド結合手法、またはカルボジイミド結合手法を用いて結合することができる。
【0142】
腫瘍または癌細胞の遺伝子治療で用いられる哺乳動物宿主細胞に適合する発現ベクターとして、限定されるものではないが、例えば、米国特許第5174993号によって開示された、プラスミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、および非複製アビポックスウイルスが挙げられる。
【0143】
いくつかの方法を用いて、本発明のこの態様による発現ベクターを標的哺乳動物細胞に送達することができる。
【0144】
本発明のさらに別の局面によれば、ヒト短縮型RNASET2と特異的に結合することができる抗ヒト短縮型RNASET2抗体が提供される。好ましくは、抗体は、ヒト短縮型RNASET2の少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する。本明細書中で使用される用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する抗原表面のいずれかの抗原性決定基を示す。
【0145】
エピトープ決定基は通常、分子の化学的に活性な表面グループ化(例えば、アミノ酸または炭水化物側鎖など)からなり、通常、特異的な三次元構造特徴、ならびに、特異的な電荷特徴を有する。
【0146】
本発明で使用される用語「抗体」は、無傷の分子並びにその機能的なフラグメント、例えば、マクロファージに結合することができるFab、F(ab’)およびFvなどを意味する。これらの機能的な抗体フラグメントは次のように定義される:(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な抗体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって作製することができる;(ii)Fab’は、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメントである;2つのFab’フラグメントが1つの抗体分子あたり得られる;(iii)(Fab’)は、その後の還元を行うことなく、完全な抗体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである;F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によって一緒にされた2つのFab’フラグメントのダイマーである;(iv)Fvは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;そして(v)単鎖抗体(「SCA」)は、遺伝子的に融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結されて、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である。
【0147】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに、そのフラグメントを産生する様々な方法がこの技術分野では広く知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。1つの実施形態において、抗ヒト短縮型RNASET2抗体は、hrtrRNASET2−50全体またはhrtrRNASET2−70全体に対してウサギにおいて惹起されるポリクローナル抗体である。
【0148】
ヒト短縮型RNASET2、および、ヒト短縮型RNASET2を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、診断用途および治療用途において使用することができ、また、そのようなものとして、治療キットまたは診断キットにおいて含むことができる。
【0149】
したがって、本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分(すなわち、ヒト短縮型ヒトRNASET2)を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイル、例えばブリスターパックを含むことができる(例えば、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)など)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本発明の化合物を含む組成物もまた、上で詳述されたように、示された状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0150】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0151】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0152】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0153】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0154】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0155】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0156】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0157】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0158】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0159】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0160】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0161】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0162】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994)、第3版;「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1,2,317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0163】
(実施例I)
hrtrRNASET2−50(配列番号2)およびhrtrRNASET2−70(配列番号3)のクローニング、発現および精製
構築物:ヒトRNASET2遺伝子を、RNASET2の短縮型形態のためのDNAテンプレートとして使用するためにGENEARTによって合成し、大腸菌のために最適化した(配列番号11)。RNASET2−50コード配列の短縮型形態(cys6 573bp、配列番号4)、および、RNASET2−70コード配列の短縮型形態(cys5 513bp、配列番号5)を、pHis3Parallelのための好適なプライマーを用いてPCRによって、そして、Hisタグと、RNASET2配列との間に挿入されるエンテロキナーゼ切断部位をコードするリンカー配列を含むことによって構築した:
RNASET2−50フォワード:
5’−CCATGGGTCACGATGATAAAATGCGCGCGTATTGGCCGGATG−3’(配列番号7)および
リバース:5’−GCGGCCGCAAGCTTGGATCCTTAG−3’(配列番号8)
RNASET2−70フォワード:
5’−CCATGGGGTGACGATGATAAAGAAGGCTGTAATCGTAGCTGGCCGTTC−3’(配列番号9)および
リバース:5’−GCGGCCGCAAGCTTGGATCCTTAG−3’(配列番号10)。
【0164】
PCRミックスは、10ngのDNAテンプレート、dNTPミックス(0.2mMの各ヌクレオチド)、0.4pmolの各プライマー、1ユニットのImax Taqポリメラーゼ、5μlの10×Taqポリメラーゼ緩衝液、および、50μlの最終体積にするための2回蒸留HOを含有した。PCRを下記の条件のもとで行った:94℃での2分間の変性、94℃での10秒間の変性、58℃での5秒間のアニーリング、72℃での20秒間の伸長からなる35サイクル、その後、72℃での4分間の伸張、および、10℃での10分間の終結。573bpおよび513bpの得られた増幅フラグメントを、配列決定、ならびに、hrtrRNASET2−50およびhrtrRNASET2−70の翻訳によってそれぞれ確認した(図1)。
【0165】
形質転換:上記PCRフラグメントを、制限酵素としてNcoIおよびBamHIを使用してpHis3Parallelベクター(図2Bを参照のこと、配列番号6)に連結し、増幅のために大腸菌DH5αにサブクローニングした。タンパク質発現のために、上記インサートのそれぞれを含有するベクターを、同じ手順を使用して大腸菌BL21(DE3)にクローニングした(図2)。インサート非含有の「モック」では、インサートを含まない同じpHis3Parallelベクターが使用され、これを大腸菌DH5αにおいて増幅し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。
【0166】
細菌培養:
タンパク質発現のために、形質転換された細菌を、0.6〜1のODが得られるまで(2時間〜3時間)、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培養液において、37℃、250RPMで成長させた。組換えタンパク質の発現を1mMのIPTGにより誘導し、上記条件でのインキュベーションを4時間続けた。
【0167】
hrtrRNASET2の回収、抽出および精製:
細菌細胞を、10000gで10分間、遠心分離した。ペレットを使用まで−80℃で保った。その後、ペレットを、2mg/mlの完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics、Mannheim、ドイツ)を含有する溶解緩衝液(20mMのリン酸塩緩衝液、8Mの尿素、100mMのNaCl、1mMのEDTA、pH8.0)に再懸濁し、4℃で2時間撹拌することによって、細胞を溶解した。細胞破片を4℃における12000gでの50分間の遠心分離によって除き、上清を0.2μmのフィルターでろ過した。
【0168】
組換え短縮型タンパク質を、AKTAprime+FPLCシステム(GE Healthcare)を使用する固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用して精製した。溶解された細菌ペレットを、5ml/分の流速で、5mlのHisTrap Niカラム(GE Healthcare)に負荷し、平衡化緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム(pH8.0)、1MのNaCl、8Mの尿素および5mMのβ−メルカプトエタノール)における5mM〜500mMのイミダゾールグラジエントにより溶出した。Hisタグ配列およびエンテロキナーゼ切断配列が精製タンパク質において無傷のままであった。ピーク領域からの回収された分画物をSDS−PAGEによって分析した。
【0169】
結果:
完全なRNASET2配列(Kurihara他、1992、FEBS letters、306(2,3):189〜192;Matsuura他、2001、J Biol Chem、276(48):45261〜9)における4つのジスルフィド結合を形成する8個のシステイン残基のうち、短縮型のhrtrRNASET2−50(配列番号2)およびhrtrRNASET2−70(配列番号3)は6個および5個のシステイン残基をそれぞれ含有した(図1)。
【0170】
SDS−PAGE分析では、細菌溶解物から得られるhrtrRNASET2−50(配列番号14)およびhrtrRNASET2−70(配列番号15)が、短縮部分を欠く全長のヒトRNASET2の移動に対応する19kDaおよび21kDaでそれぞれ移動したことが示された(図3)。インサート非含有ベクター(モック)を含有する細菌から得られる溶解物は短縮型形態のどちらも含有しなかった。全長のヒトRNASET2により形質転換された細菌から得られる溶解物は、ヒトRNASET2、または、ヒトRNASET2に対応する著量のタンパク質のどちらも含有しなかった(結果は示されず)。
【0171】
細菌溶解物(それぞれの短縮型タンパク質またはモックに由来する1200mlの最初の培養物から得られる300mlの溶解物)をHisTrap(商標)アフィニティーカラムに負荷し、イミダゾールグラジエント(5mM〜500mM)により溶出した。溶出画分のSDS−PAGEでは、hrtrRNASET2−50(配列番号14)およびhrtrRNASET2−70(配列番号15)の両方の高純度精製(>98%)(図4)が得られたことが示された。精製されたhrtrRNASEの収量が、精製された組換えタンパク質の凍結乾燥の後で測定されたとき、1リットルの細菌培養物あたり100mg〜200mgのタンパク質の範囲であり、典型的には1リットルの細菌培養物あたり120mgであった。したがって、ヒトRNASET2の短縮型形態をコードする構築物は細菌に正確かつ効率的に形質転換され、発現され、これにより、高収量の組換えRNASET2タンパク質を生じさせることができる。
【0172】
(実施例II)
ヒト短縮型RNASET2はアクチンと効率よく結合する
精製されたヒト組換え短縮型RNASET2−50のアクチン結合活性を下記のように調べた。
【0173】
アクチン結合アッセイ:
A.溶液アクチン結合アッセイ:溶液アクチン結合アッセイは以前に記載される通りであった(PCT国際公開WO2006/035439;Smirnoff他、2006、Cancer、107(12)、2760〜2769)。アクチン(10μg)を、10μgの精製されたhrtrRNASET2−50および20μLの緩衝液G(2mMのTris(pH8.0)、0.2mMのCaCl、0.2mMのATP)と混合した。混合物を室温で30分間インキュベーションし、その後、架橋剤の1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボイミドメチオジド(EDC)を50mMの最終濃度に加え、さらに30分間インキュベーションした。反応を等体積のサンプル緩衝液により停止させ、架橋された複合体を、上記で記載されるようにSDS−PAGEで分離した。それぞれの反応混合物から、18μl(9μgの各タンパク質)のサンプルを分離し、タンパク質を可視化するためにクーマシーブルーで染色し、また、1μlの2つのサンプル(250ngの各タンパク質)を、ウサギ抗hrtrRNASET2−50(ポリクローナルウサギ抗hrtrRNASET2−50がAnilab(Rehovot、イスラエル)において調製された)、あるいは、RNASET2またはアクチンの免疫検出のためのウサギ抗アクチン(Sigma−Aldrich Company、St.Louis、MO.;カタログA2066)にそれぞれさらした。ブロッティング後のメンブランを、0.25%のTween20を含有するTBS(TBST)における5%(重量/体積)のスキムミルクにより4℃で一晩ブロッキング処理し、そして、TBSTによりそれぞれ10分間、2回洗浄した。その後、メンブランを、ポリクローナルウサギ抗hrtrRNASET2−50(TBSにおける1:1000の希釈)またはウサギ抗アクチン−IgG(TBSにける12μg/ml)に対して1時間半それぞれプローブし、そして、TBSにおける5μg/mlのアルカリホスファターゼヤギ抗ウサギIgG(Chemicon Int.、Temecula、CA;カタログAP132A)に対して室温で1時間反応させた。シグナルを、1.7mgのBCIP(5−ブロモ−4 クロロ−3−インドリルホスファートp−トルイジン塩、Sigma−Aldrich Company、St.Louis、MO.;カタログB8503)および4.1mgのNBT(ニトロブルーテトラゾリウム塩、Sigma−Aldrich Company、St.Louis、MO.;カタログN6876)を基質として含有するアルカリホスファターゼ用の10mlの発色緩衝液(pH9.5)との暗条件での5分間のインキュベーションによって検出した。
【0174】
B.固相アクチン結合アッセイ:固相アクチン結合アッセイはMejean他(1987;1992)からの改変である。簡単に記載すると、96マイクロタイタープレートの各ウエルを50mMの炭酸塩緩衝液(pH9.5)におけるG−アクチン(500ng/100μl/ウエル)により1時間被覆し、その後、TBSにより洗浄した。被覆されたウエルを200μlのTBSにおける3%BSAにより1時間ブロッキング処理し、その後、TBSにより洗浄した。hrtrRNASET2結合を、125ng/ウエルのタンパク質から出発する1:2の連続希釈物を使用して行った。結合を100μlのTBSにおいて1時間行った。ウエルをTBSTにより3回洗浄し、ウサギ抗hrtrRNASET2−50一次抗体とインキュベーションし(100μl/ウエルのTBSにおいて1:500、1時間放置後、TBSTによる3回の洗浄)、その後、コンジュゲート化ヤギ抗ウサギHRP二次抗体(Pierce、米国)とインキュベーションした(100μl/ウエルのTBSにおいて1:10000、1時間放置後、TBSTによる3回の洗浄)。アクチン結合が、655nmにおける吸収を、1−Step(商標)Ultra TMB−ELISA(Thermo Scientific、米国)を使用して検出することによって明らかにされた。
【0175】
結果
hrtrRNASET2のアクチン結合。図5Aに示されるように、hrtrRNASET2−50は、溶液アッセイにおけるアクチンに対する強い特異的な結合を明らかにした。EDCによる架橋およびSDS−PAGEの分離の後、分離されたタンパク質のクーマシー染色では、アクチンに対する短縮型hrtrRNASET2−50の高結合活性が明らかにされた(図5、レーン4を参照のこと)。架橋された反応生成物の、抗アクチンおよび抗hrtrRNASET2による免疫検出でもまた、hrtrRNASET2−50によるアクチン結合が確認された(図5A、レーン7およびレーン10)。SDS−PAGEのクーマシーブルー染色および免疫染色ではともに、hrtrRNASET2−50−アクチン複合体を表す63kDaのバンドが明らかにされた(図5A、レーン4、レーン7、レーン10)。
【0176】
固相ELISAアッセイを使用した場合、短縮型hrtrRNASET2が、広い濃度範囲(20ng/ml〜300ng/ml)にわたって、かなり直線的な濃度依存的様式でアクチンと結合することが示された(図5B)。
【0177】
したがって、組換えヒト短縮型RNASET2は全長のヒトRNASET2の特異的かつ高親和性のアクチン結合能を保持する。
【0178】
(実施例III)
ヒト短縮型RNASET2はガン細胞の成長および血管形成をインビトロで効果的に阻害する
真菌T2RNASEの抗血管形成治療および抗ガン治療の可能性と類似する、全長ヒト組換えRNASET2の抗血管形成治療および抗ガン治療の可能性が明らかにされている(PCT国際公開WO2006/035439を参照のこと。これは本明細書によりその全体が組み込まれる)。細菌由来の精製された短縮型形態のhrtrRNASET2の抗ガン活性および抗血管形成活性を下記のように調べた。
【0179】
コロニー形成アッセイ:
ヒト結腸(HT−29)ガン細胞を50mlのフラスコで成長させた(10細胞/フラスコ)。培地は、1μMのhrtrRNASET2−50(配列番号14)、hrtrRNASET2−70(配列番号15)または組換えインサート非含有ベクター細菌溶解物(モック)の存在下または非存在下、10%のウシ胎児血清(FCS)、1%のグルタミンおよび1%の抗生物質−抗真菌剤溶液が補充された7mlのDMEMを含有した。細胞を、5%のCOを含有する加湿雰囲気において37℃でインキュベーションした。48時間後、10細胞/ウエルを、1μMのhrtrRNASET2−50(配列番号14)、hrtrRNASET2−70(配列番号15)または組換えインサート非含有ベクター細菌溶解物(モック)の存在下または非存在下、200μlの培地において96ウエルプレートに接種した。5日後、細胞を4%ホルアルデヒドにおいて固定処理し、メチレンブルーで染色した。コロニーの数を計数した。
【0180】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)血管形成アッセイ:
新しく単離されたHUVECを、20%のFCS、1%のグルタミン、1%の抗生物質−抗真菌剤溶液、0.02%のECGFおよび50ユニット/100mlのヘパリンが補充されたM199培地において維持した。その後、HUVECを、5%のFCSおよび0.005%のECGFを含有するM199培地において、増殖因子欠乏のMatrigel(商標)(BD Biosciences)により事前に被覆された96ウエルプレートに置床した(14×10細胞/ウエル)。ウエルは、それぞれ200μg/mlのhrtrRNASET2−50(配列番号14)、hrtrRNASET2−70(配列番号15)、組換えインサート非含有ベクター細菌溶解物(モック)またはPBSが、それぞれの血管形成増殖因子(1μg/mlのアンギオゲニン、bFGFまたはVEGF)とともに、120μlの最終体積にまで補充された。37℃での一晩のインキュベーションの後、プレートを写真撮影し、管形成(血管形成)の程度を評価した。
【0181】
結果
RNASET2の両方の短縮型形態(RNASET2−50およびRNASET2−70)は、コントロール(PBS)と比較して、結腸ガン細胞コロニー形成に対する著しい阻害効果を有し、一方、インサート非含有ベクター細菌溶解物(モック)は実際にはガン細胞コロニー形成を誘導した(図6A〜図6B)。HUVECのMatrigel(商標)アッセイで評価されたとき、RNASET2の両方の短縮型形態は、アンギオゲニン、bFGFおよびVEGFにより誘導されるHUVEC管形成を阻害した(図7A〜図7L)。コントロールまたはモックでは影響が何ら認められなかった。
【0182】
血管形成に対する短縮型RNASET2の異なる用量の影響をさらに調べるために、さらなるHUVEC管形成アッセイを、0.5μM、2.5μM、5μMおよび10μMの濃度でのhrtrRNASET2−50を用いて、同じプロトコルを使用して行った。PBSをコントロールとして使用した(図8A〜図8O)。
【0183】
hrtrRNASET2−50は、HUVEC管形成を、調べられた増殖因子のそれぞれの存在下において用量依存的様式で阻害した(図8A〜図8O)。管形成が0.5μMのhrtrRNASET2−50濃度で著しく阻害され、5μM以上のhrtrRNASET2濃度によって完全に防止されたことには留意すること。アンギオゲニンにより誘導される管形成が0.5μMのhrtrRNASET2−50において阻害され、一方、bFGFおよびVEGFにより誘導される管形成が2.5μMのhrtrRNASET2−50において阻害された。
【0184】
したがって、これらの結果は短縮型hrRNASET2の抗ガン性および抗血管形成性を明瞭に明らかにする。
【0185】
(実施例IV)
ヒト短縮型RNASET2はガンの腫瘍成長および血管形成をインビボで効果的に阻害する
hrtrRNASET2−50(配列番号14)およびhrtrRNASET2−70(配列番号15)の抗ガン効果および抗血管形成効果がインビボ治療モデルで明らかにされた。本研究を、HT−29由来異種移植片の腫瘍発達アッセイで、無胸腺(balb c、nu/nuマウス)の6週齢〜7週齢の雌性マウスにおいて行った。
【0186】
異種移植片モデル:
hrtrRNASET2−50(配列番号14):HT−29ガン細胞(0.5×10個/マウス)を無胸腺マウスの左臀部に皮下注入した。腫瘍が触診可能となったとき(HT29細胞注入後10日〜13日)、PBSにおけるそれぞれ5mg/kgのhrtrRNASET2−50(配列番号14)またはインサート非含有ベクター細菌溶解物(モック)あるいはPBSだけを尾静脈に1日おきに(週に3回)注射した(合計で9回の注射)。実験期間中、腫瘍を週に2回測定した。21日後、マウスを屠殺し、腫瘍または注入領域をサイズ測定および組織病理学的検査のために切除した。5匹のマウスをそれぞれの処置のために使用した。腫瘍体積を、(長さ×幅)/2の式を使用して計算した。
【0187】
hrtrRNASET2−70:類似するHT−29由来異種移植片モデルを、HT−29ガン細胞(マウスあたり1×10/細胞)の左臀部への皮下注入によって誘導される腫瘍を有するマウスにhrtrRNASET2−70(配列番号15)(PBSにおける5mg/kg)をIV投与して実施した。8匹〜10匹のマウスをそれぞれの処置のために使用した。
【0188】
血管分析:
血管形成に対するhrtrRNASET2−50(配列番号14)の影響を腫瘍断面積中央値で求めた。それぞれの断面において、血管形成をMatsuzaki他(2007、Calcif Tissue Int、80:391〜399)に従ってスコア化した。画像解析ソフトウエア(Image J;NIH、Bethesda、MD)を使用して、2値画像を、バックグランド(白色)と、血管(黒色)との間における中間の閾値を使用して作製した。サイズにおいて10画素を越える完全な黒色物体(血管)の数およびサイズを、Image Jの粒子解析機能を使用して求めた。血管数、総血管面積および相対面積(総血管面積と、腫瘍切片面積との比率)をこれらのデータから求めた。それぞれの腫瘍切片から、2つ〜4つの異なる視野領域を決定した。平均を、分散分析を使用することによって比較した。差は、P<0.0005において統計学的に有意であると見なした。
【0189】
結果
hrtrRNASET2−50(配列番号14)で処置されたマウスにおいて、腫瘍重量が、モック処置マウスおよびコントロールより有意に減少した(60%〜67%)ことが認められた(図9)。hrtrRNASET2−70(配列番号15)で処置されたマウスにおいて、腫瘍重量が、コントロールおよびモック注入マウスより有意に減少した(50%)ことが認められた(図11)。
【0190】
腫瘍および周囲組織の組織学的分析では、腫瘍細胞および腫瘍血管形成に対するhrtrRNASET2の阻害効果が明らかにされた(図10A〜図10F)。コントロールおよびモック処置マウスにおいて、大量のHT−29ガン細胞を有する広い浸襲領域が認められ、これに伴い、血管形成性が高まったことを示す証拠が得られた(数多くの血管に留意すること)(それぞれ、図10Aおよび図10C)。内皮細胞は無傷であり、腫瘍細胞が明白であり、血管に付着していた(それぞれ、図10Bおよび図10D)。hrtrRNASET2−50(配列番号2)でIV処置されたマウス(図10E)において、腫瘍細胞が、大量の壊死性組織によって取り囲まれるクラスターに集中していた。高倍率(図10F)により、腫瘍細胞が血管から剥がれるとき、内皮構造の実質的な喪失が認められることが示される(図10F)。腫瘍血管パラメーターの分析では、コントロールおよびモック処置マウスと比較して、腫瘍血管数、総血管面積および相対面積に対するhrtrRNASET2−50(配列番号14)の阻害効果が有意に大きいことが示された(P<0.0005、表1、下記)。血管の数がモック処置マウスおよびコントロールマウスからの腫瘍において類似していた。しかしながら、インビトロで認められるガン細胞コロニー促進効果に反映して(図6Aを参照のこと)、血管形成(総血管面積)が、モック処置マウスでは、コントロール(PBS)由来の腫瘍の場合よりも有意に大きかった。
【0191】

【0192】
したがって、短縮型hrRNASET2の生物学的活性のインビトロ評価およびインビボ評価の両方の結果は、短縮型hrRNASET2の存在が、腫瘍血管形成および結腸ガン腫瘍成長を効果的に阻害するために十分であることを示す。さらに、インビボアッセイでは、静脈内投与された治療量の短縮型hrRNASET2が、ガン性腫瘍に行き渡り、その腫瘍の成長および血管形成を効果的に阻害し得ることが明らかにされた。したがって、短縮型hrRNASET2の抗ガンおよび抗血管形成の生物学的活性は、全長RNASET2のそのような生物学的活性と同一でないとしても、全長RNASET2のそのような生物学的効果と類似している。
【0193】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0194】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【配列表フリーテキスト】
【0195】
配列番号1は、hrRNASET2(全長)の配列である。
配列番号2は、hrtrRNASET2−50の配列である。
配列番号3は、hrtrRNASET2−70の配列である。
配列番号4は、ヒトtrT2−50 RNASET2変異体(E.coli配列について最適化されたもの)の配列である。
配列番号5は、ヒトtrT2−70 RNASET2変異体(E.coli配列について最適化されたもの)の配列である。
配列番号6は、pHIS−Parallel3の配列である。
配列番号7〜10は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。
配列番号11は、E.coli配列について最適化された組み換えヒトRNASET2の配列である。
配列番号12は、pHiS−parallel3中へクローニングされるべきEK認識部位を付加されたtrT2−50を含む組み換えDNAの配列である。
配列番号13は、pHiS−parallel3中へクローニングされるべきEK認識部位を付加されたtrT2−70を含む組み換えDNAの配列である。
配列番号14は、hrtrRNASET2−50−HIS−EK翻訳生成物の推断されたアミノ酸配列である。
配列番号15は、hrtrRNASET2−70−HIS−EK翻訳生成物の推断されたアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボ核酸分解活性がなく、抗血管形成活性を有する単離されたヒト短縮型RNASET2。
【請求項2】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基32に対応するアミノ酸配列が欠落している、請求項1に記載のヒト短縮型T2RNase。
【請求項3】
配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項4】
配列番号2または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項5】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基49に対応するアミノ酸配列が欠落している、請求項1に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項6】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基52に対応するアミノ酸配列が欠落している、請求項1に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項7】
配列番号3または配列番号15と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項8】
配列番号3または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項9】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基1〜アミノ酸残基69に対応するアミノ酸配列が欠落している、請求項1に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項10】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基25、アミノ酸残基32またはアミノ酸残基52に対応するアミノ酸座標の少なくとも1つにおけるシステイン残基が欠落している、請求項1に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項11】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基25およびアミノ酸残基32に対応するアミノ酸座標におけるシステイン残基が欠落している、請求項10に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項12】
配列番号1のN末端のアミノ酸残基25、アミノ酸残基32およびアミノ酸残基52に対応するアミノ酸座標におけるシステイン残基が欠落している、請求項10に記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項13】
認識実体ペプチド配列をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載のヒト組換え短縮型RNASET2。
【請求項14】
前記認識実体ペプチド配列はHisタグである、請求項13に記載のヒト組換え短縮型RNASET2。
【請求項15】
アクチン結合活性を有する、請求項1〜14のいずれかに記載のヒト短縮型RNASET2。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のヒト短縮型RNASET2の精製された調製物。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載のヒト短縮型RNASET2と、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の短縮型ヒトRNASET2をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号4または配列番号5に示される核酸配列を含む、請求項18に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、発現可能な核酸構築物。
【請求項21】
細菌における核酸構築物の発現は、1リットルの細菌培養物あたり少なくとも50mgのヒト短縮型RNASET2を産生させる、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の核酸構築物により形質転換された細胞。
【請求項23】
前記細胞はE.coli細菌細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
請求項23に記載の細胞を複数含み、かつ、1リットルの培養物あたり少なくとも50mgの短縮型ヒトRNASET2を発現する細菌培養物。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれかに記載の短縮型ヒトRNASET2の、血管形成をその必要性のある対象において阻害するための使用。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれかに記載の短縮型ヒトRNASET2の、血管形成をその必要性のある対象において阻害するための医薬品を製造するための使用。
【請求項27】
前記血管形成を阻害することは、腫瘍の血管形成を阻害することである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記腫瘍は良性腫瘍または悪性腫瘍である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記腫瘍は原発性腫瘍である、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記腫瘍は転移腫瘍である、請求項27に記載の使用。
【請求項31】
配列番号2、配列番号3、配列番号14または配列番号15のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するヒト短縮型RNASET2ポリペプチドを認識する抗体。

【図1】
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【図2A−2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−5B】
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【図6A−6B】
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【図7A−7L】
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【図8A−8O】
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【図9】
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【図10A−10F】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−507278(P2012−507278A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533932(P2011−533932)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001012
【国際公開番号】WO2010/049933
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(309038764)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド (6)
【Fターム(参考)】