説明

短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法

【課題】 規則的な模様でなく、規則性がなくランダムで興味深い模様が付与されてなるスパンレース不織布を提供する。
【解決手段】 高圧水流の作用により構成繊維同士が交絡してなるスパンレース不織布を得る方法であって、(1)多孔支持体上に、複数の単繊維が収束することにより形成されるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、前記スパンボンド不織布上に短繊維ウェブを載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施して短繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡させる工程、(2)繊維同士が交絡した短繊維ウェブをマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布から剥ぎ取る工程、(3)繊維同士が交絡した短繊維ウェブより余分な水分を除去する乾燥工程を有する短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水流の作用により構成繊維同士が交絡させて一体化してなる短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧水流の作用により繊維同士を交絡してなる不織布(スパンレース不織布)は、構成繊維同士が交絡によってのみ形態保持しているため、柔軟性に優れるという特徴がある。このため、直接、肌に触れる用途、すなわち、対人向けのウェットワイパーやパンティーライナー等の用途として多く用いられている。また、スパンレース不織布に美観性をもたらすために表面に模様が付与することが行われている。模様を付与する方法としては、プリントによる方法が挙げられるが、スパンレース不織布の風合いの一部を損ねることになる。
【0003】
スパンレース不織布の風合いを維持し、かつ模様が付与されてなるものとしては、高圧水流による処理の際に、凹凸もしくは開孔を有する支持体に載置して高圧水流を作用させることにより、水流のエネルギーにより繊維を移動させて、支持体の凹凸に対応した開孔模様が付与されたスパンレース不織布は知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第2817057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1による開孔模様は、支持体の凹凸もしくは開孔に対応した開孔模様がスパンレース不織布に付与されたものであるが、支持体の有する凹凸もしくは開孔は規則的なものである。本発明では、規則的な模様でなく、規則性がなくランダムで興味深い模様が付与されてなるスパンレース不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を達成するために検討した結果、規則的に繊維を配置することが全く不可能なスパンボンド法による不織布を支持体として使用し、かつ、スパンボンド不織布の表面形態に対応した模様をスパンレース不織布に付与できないかと検討したところ、特定のスパンボンド不織布を支持体に使用することにより、規則性がなく興味深い模様を付与することができることを見出し本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、高圧水流の作用により構成繊維同士が交絡してなるスパンレース不織布を得る方法であって、(1)多孔支持体上に、複数の単繊維が収束することにより形成されるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、前記スパンボンド不織布上に短繊維ウェブを載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施して短繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡させる工程、(2)繊維同士が交絡した短繊維ウェブをマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布から剥ぎ取る工程、(3)繊維同士が交絡した短繊維ウェブより余分な水分を除去する乾燥工程を有することを特徴とする短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明の製造方法に係るスパンレース不織布は、短繊維を構成繊維とする。短繊維を用いる理由は、高圧水流を施した際に、水流によるエネルギーによって動きやすく、支持体上に載置するスパンボンド不織布の表面形態に対応して移動して模様が付与しやすいためである。本発明に用いる短繊維の種類は、特に限定されず、コットンやレーヨン,リヨセル等のセルロース系繊維、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性繊維等が挙げられる。短繊維の繊維長および繊度は特に限定されず、繊維長としては5〜70mm程度、繊度は1〜10デシテックス程度であればよい。
【0009】
本発明のスパンレース不織布の製造方法においては、まず、上記した短繊維からなる短繊維ウェブを用意する。短繊維ウェブとしては、カード法や湿式抄造法等により得られるウェブが挙げられる。短繊維ウェブの目付は、得られるスパンレース不織布の用途に応じて適宜選択すればよいが、目付の上限は150g/m2程度がよい。150g/m2を超えると、多孔支持体上に載置するマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布の表面形態に応じて付与する模様が明瞭になりにくい傾向となるためである。短繊維ウェブの目付を150g/m2以下とすることにより、得られるスパンレース不織布に繊維の存在比率の違いによる濃淡差や透かし調の模様が付与しやすく、好ましい。
【0010】
用意した短繊維ウェブは、多孔支持体の上に載置したマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布の上に載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施すことにより、高圧水流の作用により、スパンボンド不織布の表面形状に応じて短繊維が移動し、また、短繊維同士が交絡する。ここで、短繊維ウェブを載置する多孔支持体およびマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布について説明する。
【0011】
多孔支持体は、高圧水流処理の際に、短繊維ウェブを担持できるものであれば、特に限定されない。多孔支持体としては、例えば、金属製もしくはプラスチック製の板状物に水を抜くための小孔が施されたもの、あるいは、金属製もしくはプラスチック製のメッシュ織物が挙げられる。
【0012】
前記多孔支持体上に、複数の単繊維が収束することにより形成されるマルチフィラメント糸により構成されるスパンボンド不織布を載置する。一般に、スパンボンド不織布とは、その構成単繊維同士は、それぞれ一本一本が個々にばらばらに堆積されているものであるが、本発明で用いるスパンボンド不織布は、単繊維が個々にばらばらに堆積されているのではなく、複数の単繊維が収束することにより形成されるマルチフィラメント糸を堆積させて形成したものである。このようにマルチフィラメント糸によって形成されるスパンボンド不織布は、単繊維が収束していることにより単繊維が重なって存在することから、一定面積中に繊維が存在しない箇所の比率、すなわち二次元的に見たときに繊維が存在しない面積比率が大きく、かつ繊維が存在しない箇所の個々の面積が大きくなる。また、繊維が存在する箇所は、繊維が収束して特定の総繊度を有するマルチフィラメント糸が堆積していることから、適度の厚みを有する。したがって、繊維が存在しない箇所とマルチフィラメント糸が存在する箇所との厚み差が大きい。また、マルチフィラメント糸はランダムに堆積していることから、マルチフィラメント糸が存在する箇所においても、厚み差は部分的にランダムに異なる。このように、繊維が存在しない箇所およびマルチフィラメント糸が存在する箇所とに適度の厚み差を有し、また、マルチフィラメント糸が存在する箇所においても部分的にランダムに異なる厚み差を有することにより、マルチフィラメント糸により構成されるスパンボンド不織布の上に短繊維ウェブが載置されて、高圧水流が施されると、スパンボンド不織布の表面形態すなわち、凹凸差に応じて短繊維が移動するため、スパンボンド不織布の表面形態に応じた模様が短繊維ウェブの表面に付与されることとなる。すなわち、マルチフィラメント糸が多く重なる箇所はスパンボンド不織布の表面形態において凸の箇所となり、短繊維はその箇所に存在しにくく移動するため、得られるスパンレース不織布においては、短繊維の存在比率が小さくなり(場合によっては、短繊維が存在しない箇所ともなる。)、一方、マルチフィラメント糸が存在しない箇所はスパンボンド不織布の表面形態において空隙箇所(凹の箇所)となり、短繊維はその箇所に移動集中し、得られるスパンレース不織布においては、短繊維の存在比率が大きくなる。また、マルチフィラメント糸が存在しているが多く重ならない箇所は、スパンボンド不織布の表面形態において適度な凹の箇所となり、適度に短繊維が移動し、得られるスパンレース不織布において、短繊維が適度に存在する部分となる。スパンボンド不織布においては、マルチフィラメント糸がランダムに存在し、上記したようにスパンボンド不織布の表面形態において、凸の箇所と空隙箇所と適度な凹の箇所とが、全くランダムに入り混じって存在するため、これに応じて短繊維の存在比率の多い箇所と少ない箇所と短繊維が存在しない箇所とが適宜入り混じった表面形態のスパンレース不織布となる。
【0013】
図1は、本発明に用いるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布の一例の平面図である。図1の平面図において、白色もしくは薄いグレー色を呈する区域はマルチフィラメント糸あるいは単繊維が存在する箇所であり、黒色を呈する区域は繊維が存在しない箇所(空隙)である。図2は、本発明の製造方法によって得られるスパンレース不織布に係る一例の平面写真である。図2において、白色の領域は繊維が存在する領域であり、黒色の領域は繊維が存在していない、あるいは繊維の存在比率が非常に低い領域である。
【0014】
本発明に用いるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布について以下に説明するが、基本的には、本件出願人が提案している特許第3970625号に記載されているスパンボンド不織布を用いるとよい。
【0015】
スパンボンド不織布を構成するマルチフィラメント糸は、複数の単繊維が容易にばらばらにならないように収束されているものであるが、マルチフィラメント糸が撚りを有することによって収束していてもよく、また、マルチフィラメント糸を構成する単繊維同士が、単繊維を構成している熱可塑性重合体の表面の一部が溶融または軟化することにより融着していることによって収束していてもよい。
【0016】
マルチフィラメント糸を構成する素材は、特に限定されないが、ポリエステル系重合体、生分解性のポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体等の熱可塑性重合体が好ましく用いることができる。なかでも、ポリエステル系重合体であるとマルチフィラメント糸は剛性を有するため好ましい。また、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の形態としては、1種の重合体からなる単相形態であっても、2種以上の重合体からなる複合形態であってもよい。
【0017】
スパンボンド不織布を構成するマルチフィラメント糸の総繊度は、100デシテックス以上であることが好ましく、より好ましくは150デシテックス以上である。マルチフィラメント糸の総繊度が100デシテックス以上であると、スパンボンド不織布において、表面形態に適度な凹凸差(マルチフィラメント糸の存在する箇所と繊維が存在しない箇所との差)を設けることができるため、得られるスパンレース不織布にスパンボンド不織布の表面形態に応じた模様を明瞭に付与することができるためである。そして、このマルチフィラメント糸の存在する箇所と繊維が存在しない箇所とに適度な凹凸差を有するためには、スパンボンド不織布が適度の厚みを有することが好ましく、JIS L 1906に準じて、加圧子の直径35.7mm、荷重10kPaにて測定した際、10箇所の平均値(スパンボンド不織布の厚み)が、200μm以上であると表面形態に適度な凹凸差を有するといえ、さらには250μm以上であるとより好ましい。
【0018】
スパンボンド不織布の目付は、特に限定されないが、その下限は10g/m2以上であることが好ましい。10g/m2未満であると、スパンボンド不織布中に繊維が存在しない比率および存在しない箇所の個々の面積が大きくなり過ぎて、スパンレース不織布に付与される表面形態の模様がマクロ的に付与される傾向にある。一方、目付の上限は、繊維が存在しない箇所が保持されるものであれば限定されず、マルチフィラメント糸の総繊度に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
本発明において、多孔支持体上に、上記したマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、このスパンボンド不織布上に短繊維ウェブを載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施して短繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡させる。高圧水流は、例えば、孔径0.05〜2.0mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.05〜10mmで一列又は複数列配置されている噴射装置を用い、水を噴射孔から1〜40MPaの圧力で噴射して得られるものである。そうすると、高圧水流は短繊維ウェブに衝突して、構成短繊維に運動エネルギーを与える。この運動エネルギーにより、短繊維同士は相互に交絡し、また、スパンボンド不織布の表面形態(凹凸)に応じて移動し、短繊維が多く存在する箇所、少ない箇所、存在しない箇所をランダムに形成される。
【0020】
なお、本発明においては、まず、多孔支持体上に短繊維ウェブを載置し、1〜2MPa程度の高圧水流を施して短繊維同士を予備的に交絡させた後、多孔支持体上にマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、このスパンボンド不織布上に予備的に交絡させた短繊維ウェブを載置し、1〜40MPaの高圧水流を施して、スパンボンド不織布の表面形態に応じて繊維を移動させると共に短繊維同士を交絡させて、スパンレース不織布の表面に模様を施してもよい。
【0021】
また、多孔支持体上にマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、短繊維ウェブ側より1〜40MPaの高圧水流を施して短繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡させた後、スパンボンド不織布上に繊維同士が交絡してなる短繊維ウェブを載せた状態で反転させ(多孔支持体/短繊維ウェブ/スパンボンド不織布の順に積層)、スパンボンド不織布側より高圧水流を施して短繊維ウェブの他面の繊維同士を交絡させてもよい。これにより、得られるスパンレース不織布において、表裏とも、より良好に短繊維同士が交絡することとなる。
【0022】
高圧水流を施して、繊維同士が交絡した短繊維ウェブは、マルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布より剥ぎ取り、短繊維ウェブが含む余分な水分をマングルロール等に通すことにより除去し乾燥させて、模様が付与された短繊維からなるスパンレース不織布を得る。なお、乾燥工程を経てから、マルチフィラメント糸からなるスパンボンド不織布より、繊維同士が交絡した短繊維ウェブを剥ぎ取り、スパンレース不織布を得てもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造方法により得られるスパンレース不織布は、短繊維ウェブをマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布に載置して、短繊維ウェブ側より高圧水流を施すことにより、スパンボンド不織布の表面形態(マルチフィラメント糸の存在形態)に応じた凹凸模様が付与されることとなる。本発明によれば、スパンボンド不織布を構成するマルチフィラメント糸が規則的でなくランダムに堆積していることから、スパンボンド不織布の表面形態に対応するスパンレース不織布においては、規則性なくランダムに短繊維の存在比率が変化するため、従来にない趣のある透かし模様調を呈するスパンレース不織布を提供できる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例における各物性値は以下により求めた。
(1)ポリエステルの極限粘度[η]:フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し測定した。
【0025】
(2)融点(℃):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
【0026】
(3)厚み(μm):JIS L 1906に準じて測定した。加圧子の直径35.7mm、荷重10kPaとし、10箇所の平均値をスパンボンド不織布の厚みとした
【0027】
(4)引張強力(N/5cm幅)JIS L 1906に準じ、試料長が20cm、試料幅が5cmの試料片を、定速伸張型引張試験機(東洋ボールドウイン社製 テンシロンRTM−500型)を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分の条件で最大荷重時の強さを測定し、試料10点の平均値を引張強力(N/5cm幅)とした。なお、不織布のMD方向(機械方向)およびCD方向(MD方向に直行する方向)のいずれも求めた。
【0028】
(5)引裂強力(N):JIS L 1906 引裂強さ ペンジュラム法により不織布のMD方向について測定した。
【0029】
(6)マルチフィラメント糸の総繊度(デシテックス):温度20℃、湿度60%の環境下に一昼夜保管した長さ1.8mの試料(マルチフィラメント糸)5点の質量を上皿天秤(Mettler AE50)を用いて測定し、その平均値を総繊度とした。
【0030】
[マルチフィラメント糸からなるスパンボンド不織布]
芯部には、融点260℃、極限粘度[η]0.68のポリエチレンテレフタレート、鞘部には、酸成分がテレフタル酸/イソフタル酸のモル比が92/8で、グリコール成分がエチレングリコールである融点235℃の共重合ポリエステルを準備した。公知の芯鞘型複合溶融紡糸装置を用いて、繊維断面が芯鞘型となる複合紡糸口金より、芯部にポリエチレンテレフタレートを、鞘部に共重合ポリエステルが配されるようにして、質量比を1/1の割合で、紡糸温度280℃で溶融紡出した。紡糸口金とエアーサッカーまでの距離は60cmに設定し、紡出糸条は、エアーサッカーの導入口が小さくなっている(直径5mm)エアーサッカーに導入した。このとき、ひとつのエアーサッカーに13本の単繊維を導入した。そして、エアーサッカーにて、紡糸速度3000m/分となるよう牽引すると同時に、エアーサッカー内で単繊維同士の密着により融着させて、13本の単繊維が融着により収束したマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出させた。エアーサッカーより排出したマルチフィラメント糸は、左右よりエアを吹付ける横振り装置にて、螺旋状に回転させながら、コンベアネット上に捕集・堆積させて、マルチフィラメント糸からなるウエブとした。マルチフィラメントの総繊度は160デシテックスであった。
【0031】
このウエブを、エンボスロール(エンボスロールの凸部の面積0.82mm2、面積率17%)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、両ロールの表面温度160℃、線圧500N/cmの条件下で熱圧接処理を施し、目付50g/m2のマルチフィラメント糸からなるスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の厚みは、310μm、引張強力は、MD方向が52.4N/5cm幅、CD方向が47.3N/5cm幅、引裂強力は6.8Nであった。
【0032】
実施例1
精錬漂白した木綿繊維(平均繊維長約25mm)を用いて、大和機工株式会社製のサンプルローラーカード機にて目付40g/m2の短繊維ウェブを作成した。次いで、100メッシュのステンレス製メッシュ織物からなる多孔支持体上に上記にて得られたマルチフィラメント糸からなるスパンボンド不織布を載置し、このスパンボンド不織布上に短繊維ウェブを載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施した。高圧水流は、ノズル孔径0.13mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.6mmで一列配置され、かつその列を三列備えた高圧水流噴射装置を用い、各々4.0MPaの圧力で水を噴射した。次いで、スパンボンド不織布上に交絡させた短繊維ウェブを載せた状態にて反転させ、多孔支持体/短繊維ウェブ/スパンボンド不織布の順に積層した状態とし、スパンボンド不織布側より高圧水流を施した。このとき高圧水流は、ノズル孔径0.13mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.6mmで一列配置され、かつその列を三列備えた高圧水流噴射装置を用い、各々8.2MPaの圧力で水を噴射した。
【0033】
次いで、短繊維同士が交絡した短繊維ウェブをスパンボンド不織布より剥ぎ取り、短繊維ウェブより余剰の水分をマングルロールにて除去し、乾燥機による乾燥工程を通して、スパンレース不織布を得た。得られたスパンレース不織布は、スパンボンド不織布を構成するマルチフィラメント糸の存在形態に応じ、透かし模様調を呈するものであった。また、得られたスパンレース不織布の引張強力は、MD方向が25.8N/5cm、CD方向が6.2N/5cm、引裂強力が1.7Nであった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に用いるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布の一例の平面図である。
【図2】本発明の製造方法によって得られるスパンレース不織布に係る一例の平面写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水流の作用により構成繊維同士が交絡してなるスパンレース不織布を得る方法であって、(1)多孔支持体上に、複数の単繊維が収束することにより形成されるマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布を載置し、前記スパンボンド不織布上に短繊維ウェブを載置し、短繊維ウェブ側より高圧水流を施して短繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡させる工程、(2)繊維同士が交絡した短繊維ウェブをマルチフィラメント糸から構成されるスパンボンド不織布から剥ぎ取る工程、(3)繊維同士が交絡した短繊維ウェブより余分な水分を除去する乾燥工程を有することを特徴とする短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法。
【請求項2】
スパンボンド不織布を構成するマルチフィラメント糸の総繊度が100デシテックス以上であることを特徴とする請求請1記載の短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法。
【請求項3】
スパンボンド不織布の厚みが200μm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の短繊維からなるスパンレース不織布の製造方法。


【図1】
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【図2】
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