説明

短鎖のカチオン性ポリアミノ酸およびその使用

【課題】siRNAのような小分子核酸と生理的条件下で安定な複合体を形成し、かつ、細胞内で好適に該小分子核酸を放出し得るキャリアを提供すること。
【解決手段】側鎖にカチオン性基を有するカチオン性アミノ酸残基と側鎖に疎水性基を有する疎水性アミノ酸残基とを含み、核酸との会合能を有する、カチオン性ポリアミノ酸であって、該カチオン性アミノ酸残基を1〜20個含む、カチオン性ポリアミノ酸;および、該カチオン性アミノ酸と親水性ポリマーとを含む、ブロックコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短鎖のカチオン性ポリアミノ酸、該ポリアミノ酸を有するブロックコポリマー、ならびに、これらを用いたポリマー粒子組成物および複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
siRNAは、標的mRNAを特異的かつ効果的にノックダウンできることから、その医療応用に対する期待が高まっているが、siRNAを医療に応用するには効果的なデリバリーシステムの開発が必要不可欠である。近年、臨床治験中であるnaked siRNAの眼球内投与による加齢黄斑変性(CNV)の治療効果が、siRNAによる配列特異的な遺伝子ノックダウン効果によるものではなく、細胞表面のToll様受容体−3(TLR−3)による認識を介した配列非特異的な効果によることが明らかにされ、いかなるsiRNAのin vivo応用においても、細胞外では安定であるが細胞内に的確にsiRNAを送達できるキャリアの開発が重要であると考えられている。
【0003】
これまでに、DNAとポリイオンコンプレックス(PIC)を形成して真核細胞に該核酸を導入し、発現させるキャリアとして、種々のカチオン性ポリマーが提供されている。例えば、ポリ(L−リシン)のε−アミノ基を介して親水性基(例えば、ポリエチレングリコール)と疎水性基(例えば、パルミトイル)が導入されたポリ(L−リシン)誘導体は、水性媒体中においてコレステロールの存在下でベシクルを形成し、該ベシクルは遺伝子の組み込まれたプラスミドDNAを凝集し、安定な複合体を形成することが知られている(特許文献1)。また、ポリ(L−リシン)−ポリ(エチレングリコール)のコポリマーであって、ポリ(L−リシン)のε−アミノ基をチオレート化することによりカチオン荷電とジスルフィド架橋密度を調節したコポリマー誘導体とプラスミドDNAとのPICは細胞外媒体中での高い安定性と細胞内コンパートメント内での効果的な該DNAの放出を示すことが知られている(非特許文献1)。また、側鎖にエチレンジアミン構造を有するポリ(N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]アスパルタミド(pAsp(DET))および該pAsp(DET)をブロックコポリマーの一ブロック成分として含むコポリマーを製造したところ、このようなポリマーは、低い細胞毒性を示し、しかも、プラスミドDNAを高効率で細胞内に導入し、該DNA中に組み込まれた遺伝子を効率よく発現することが確認されている(非特許文献2、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
上記のとおり、DNA等の高分子核酸に対する有効なキャリアは開発されているが、siRNAのような小分子核酸と生理的条件下で安定なPICのような複合体を形成し、かつ、細胞内で好適に該小分子核酸を放出し得るキャリアは未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 99/61512
【特許文献2】WO 2006/085664 A1
【特許文献3】WO 2007/099660 A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.Mihata et al.,J.Am.Chem.Soc. 2004,126,2355−2361
【非特許文献2】K.Miyata et al.,J.Am.Chem.Soc. 2008,130,16287−16294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、siRNAのような小分子核酸と生理的条件下で安定な複合体を形成し、かつ、細胞内で好適に該小分子核酸を放出し得るキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、カチオン性ポリアミノ酸が提供される。該カチオン性ポリアミノ酸は、側鎖にカチオン性基を有するカチオン性アミノ酸残基と側鎖に疎水性基を有する疎水性アミノ酸残基とを含み、核酸との会合能を有する、カチオン性ポリアミノ酸であって、該カチオン性アミノ酸残基を1〜20個含む。
本発明の別の局面によれば、ブロックコポリマーが提供される。該ブロックコポリマーは、上記カチオン性ポリアミノ酸鎖セグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、ポリマー粒子組成物が提供される。該ポリマー粒子組成物は、上記カチオン性ポリアミノ酸および/またはブロックコポリマーを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、複合体が提供される。該複合体は、上記カチオン性ポリアミノ酸および/またはブロックコポリマーと核酸とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、siRNAのような小分子核酸と生理的条件下で安定な複合体を形成し、かつ、細胞内で好適に該小分子核酸を放出し得るキャリアが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物を電気泳動した後のゲル像である。
【図2】siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物を電気泳動した後のゲル像である。
【図3】比較例のsiRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物のMDA−MB−231細胞に対する活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0012】
A.カチオン性ポリアミノ酸
本発明のカチオン性ポリアミノ酸は、側鎖にカチオン性基を有するカチオン性アミノ酸残基と側鎖に疎水性基を有する疎水性アミノ酸残基とを含み、核酸との会合能を有する。ここで、「核酸との会合能を有する」とは、生理条件であるpH7.4において核酸と相互作用することにより複合体(例えば、ポリイオンコンプレックス(PIC))を形成し得ることを意味する。また、核酸とは、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、およびリン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味する。また、上記アミノ酸残基が由来するアミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基との両方の官能基を有し、アミド結合(ペプチド結合)を介してポリアミノ酸を形成し得る範囲において、任意の化合物であり得る。
【0013】
本発明のカチオン性ポリアミノ酸が含むカチオン性アミノ酸残基の数は、1〜20、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。該カチオン性ポリアミノ酸が含む疎水性アミノ酸残基の数は、好ましくは1〜80、さらに好ましくは5〜70、特に好ましくは10〜60である。本発明のカチオン性ポリアミノ酸によれば、カチオン性アミノ酸残基を有することにより、アニオン性分子である核酸と静電的に結合し得、さらには、該アミノ酸残基の個数が20個以下とされているので、該結合が過度に強くなることを回避し得る。その結果、核酸の適切な放出が可能となる。すなわち、1つの実施形態において、本発明は、側鎖にカチオン性基を有するカチオン性アミノ酸残基と側鎖に疎水性基を有する疎水性アミノ酸残基とを含み、核酸との会合能を有するカチオン性ポリアミノ酸基材であって、該カチオン性アミノ酸残基の個数が1〜20個の範囲に制限されていることによって、基材からの核酸の脱離(放出)が促進される、カチオン性ポリアミノ酸基材に関する。カチオン性ポリアミノ酸が含むカチオン性アミノ酸残基の数が2個以上であれば複合体の安定性を向上できる。また、本発明のカチオン性ポリアミノ酸によれば、疎水性アミノ酸残基を有することにより、疎水性相互作用が働き、その結果、核酸との複合体の安定性が向上して、小分子量の核酸とも安定な複合体を形成し得る。さらに、疎水性アミノ酸残基が細胞膜の疎水性部分に突き刺さり、基材を細胞膜に固定するアンカーとして機能し得るので、核酸の細胞内への導入率が向上し得る。
【0014】
上記カチオン性アミノ酸残基が由来するアミノ酸としては、アミノ酸の主要骨格以外の側鎖構造におけるアミノ基に由来して規定されるpKa値が例えば3〜13、好ましくは4〜12、より好ましくは5〜11であるアミノ酸が挙げられる。
【0015】
上記疎水性アミノ酸残基が由来するアミノ酸としては、好ましくは25℃の水100gに対する溶解度が5g以下、さらに好ましくは4g以下であるアミノ酸が挙げられる。このようなアミノ酸としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等の非極性天然アミノ酸や、側鎖に疎水性基が導入されたアミノ酸の疎水性誘導体が挙げられる。アミノ酸の疎水性誘導体としては、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸の疎水性誘導体が挙げられる。
【0016】
上記導入される疎水性基としては、炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基が好ましく例示され得る。
【0017】
本発明のカチオン性ポリアミノ酸は、必要に応じて、上記カチオン性アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基以外の他のアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基等の酸性アミノ酸残基)を含んでもよい。
【0018】
本発明のカチオン性ポリアミノ酸1gに含まれるアミノ基のモル数としては、例えば0.1mmol〜10mmol、また例えば0.2mmol〜5mmol、また例えば0.4mmol〜3mmolであってよい。
【0019】
本発明のカチオン性ポリアミノ酸は、好ましくは下記式(1)で表され得る:
【化1】

上記式中、
は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基あるいは炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル置換イミノ基を表し、
は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基を表し、
3a、R3b、R4aおよびR4bは、相互に独立して、メチレン基またはエチレン基を表し、
5aおよびR5bは、相互に独立して、−O−または−NH−を表し、
6aおよびR6bは、相互に独立して、炭素数6〜27の飽和もしくは不飽和の直鎖または分枝状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基あるいはステリル基を表し、
7aおよびR7bは、相互に独立して、下記の基:
−NH−(CHp1−〔NH−(CHq1−〕r1NH (i);
−NH−(CHp2−N〔−(CHq2−NH (ii);
−NH−(CHp3−N{〔−(CHq3−NH〕〔−(CHq4−NH−〕r2H} (iii);および
−NH−(CHp4−N{−(CHq5−N〔−(CHq6−NH (iv)
よりなる群の同一もしくは異なる基から選ばれ、
ここで、p1〜p4、q1〜6、およびr1〜2は、それぞれ相互に独立して、1〜5の整数であり、
は、リシン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニン、およびヒスチジンからなる群より選択されるアミノ酸の側鎖を表し、
mは、5〜80の整数であり、
nは、0〜mの整数であり、
xは、0〜20の整数であり、
yは、0〜xの整数であり、
zは、0〜20の整数であり、
但し、xとzとの和は1以上20以下であり、上記各反復単位の結合順は任意であり、R6a、R6b、R7a、R7bおよびRは1つのポリアミノ酸内の各アミノ酸残基において任意に選択可能である。
【0020】
上記式(1)において、RおよびRの基で定義する、炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、アルキル置換イミノ基、およびアルキル基のアルキル部分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、デシル基、およびウンデシル基等を挙げることができる。炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基または炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基における、アルケニルまたはアルキニル部分は、炭素数が2以上の上記に例示したアルキル基中に二重結合または三重結合を含むものを挙げることができる。
【0021】
このような基または部分について、「置換された」場合の置換基としては、限定されるものでないが、C1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−7アシルアミド基、トリ−C1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基を示すか、またはアセタール化ホルミル基、ホルミル基、塩素またはフッ素等のハロゲン原子を挙げることができる。ここで、例えば、C1−6のごとき表示は、炭素数1〜6を意味し、以下同様な意味を表すものとして使用する。さらに、炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基の内の炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル部分は上述した例示を参考にでき、炭素数13以上のアルキル部分は、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、ドコサニル基およびテトラコシル基等を挙げることができる。
【0022】
3a、R3b、R4a、およびR4bの基を有する反復単位の結合順は任意であり、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。R3aおよびR3bの両者がエチレン基を表す場合には、代表的には、nが整数0であるか、またはm−nが整数0であるポリアミノ酸を表すことになる。前者は、例えば、グルタミン酸γ−ベンジルエステルのN−カルボン酸無水物の重合により得られるポリ−α−グルタミン酸を表し、後者は、例えば、納豆菌をはじめとする細菌バチルス(Bacillus)属の菌株が生産するポリ−γ−グルタミン酸を表す。一方、R3aおよびR3bの両者ともメチレン基を表す場合には、これらの基を有するそれぞれの反復単位は共存し得るものと理解されている。R4aおよびR4bについても同様である。製造効率の観点からは、好ましくはR3aおよびR3bがエチレン基であり、R4aおよびR4bがメチレン基である。
【0023】
6aおよびR6bの基について定義する、脂肪族炭化水素基が飽和である場合は、炭素数6〜27のアルキル基に等価であり、上記アルキル基に加えてペンタコシル基、ヘキサコシル基、へプタコシル基等が例示される。不飽和の脂肪族炭化水素基は、該アルキル基の鎖中の炭素−炭素単結合の1〜5個が炭素−炭素二重結合となっている基に該当する。このような基が由来する不飽和の脂肪族炭化水素の例としては、限定されるものでないが、ラウリン酸(またはドデカン酸)、ミリスチン酸(またはテトラデカン酸)、パルミチン酸(またはヘキサデカン酸)、パルミトオレイン酸(または9−ヘキサデセン酸)、ステアリン酸(またはオクタデカン酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸(または9,11,13−オクタデカトリエン酸)、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸等を挙げることができる。
【0024】
6aおよびR6bの基について定義する、炭素数6〜27の芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。これらの好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0025】
6aおよびR6bの基について定義する、ステリル基が由来するステロールとは、シクロペンタノンヒドロフェナントレン環(C1728)をベースとする天然、半合成または合成の化合物、さらにはそれらの誘導体を意味し、例えば、天然のステロールとしては、限定されるものではないが、コレステロール、コレスタノール、ジヒドロコレステロール、コール酸、カンペステロール、シストステロール等が挙げられ、その半合成または合成の化合物としては、これら天然物の例えば、合成前駆体(必要により、存在する場合には、一定の官能基、ヒドロキシ基の一部もしくは全部が当該技術分野で既知のヒドロキシ保護基により保護されているか、またはカルボキシル基がカルボキシル保護により保護されている化合物を包含する)であることができる。また、ステロール誘導体とは、本発明の目的に悪影響を及ぼさない範囲内で、シクロペンタノンヒドロフェナントレン環にC1−12アルキル基、ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素、フッ素、が導入されていてもよく、該環系は飽和、部分不飽和、であることができること等を意味する。上記ステリル基が由来するステロールとしては、好ましくはコレステロール、コレスタノール、ジヒドロコレステロール、コール酸、カンペステロール、シストステロール等の動植物油起源のステロールであり、さらに好ましくはコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロールであり、特に好ましくはコレステロールである。
【0026】
7aおよびR7bの基について定義する、
−NH−(CHp1−〔NH−(CHq1−〕r1NH (i);
−NH−(CHp2−N〔−(CHq2−NH (ii);
−NH−(CHp3−N{〔−(CHq3−NH〕〔−(CHq4−NH−〕r2H} (iii);および
−NH−(CHp4−N{−(CHq5−N〔−(CHq6−NH (iv)
よりなる群から選ばれる基は、同一の基であることが好ましく、式(i)の基であることがさらに好ましい。また、p1〜p4およびq1〜6は、それぞれ相互に独立して2または3であることが好ましく、より好ましくは2である。一方、r1およびr2は、それぞれ相互に独立して、1〜3の整数であることが好ましい。
【0027】
m−nおよびnは、疎水性アミノ酸残基の繰り返し数を表し、x−y、y、およびzは、カチオン性アミノ酸残基の繰り返し数を表す。xは、好ましくは1〜20、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。xが1以上である場合、本発明のポリアミノ酸は、少なくとも上記R7aまたはR7bの基を有することとなる。上記R7aまたはR7bの基は、異なる複数のアミン官能基を有するので、pKaが複数段階を示し、生理条件であるpH7.4においては複数のアミン官能基は部分的にプロトン化状態にあり核酸と相互作用することにより複合体(例えば、PIC)を好適に形成することができる。また、こうして形成された複合体がエンドソーム内(pH5.5)へ取り込まれてpHが下がると、カチオン性ポリアミノ酸のプロトン化がさらに進行し、バッファー効果(またはプロトンスポンジ効果)によりエンドソームエスケープを促進させ得る。その結果、細胞に対するダメージを軽減し得る。
【0028】
式(1)中の各反復単位の結合順は任意であり、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。カチオン性ポリアミノ酸が上記カチオン性アミノ酸残基からなるセグメントと疎水性アミノ酸残基からなるセグメントとを含むブロック型であることにより、該ブロック型カチオン性ポリアミノ酸を基材として核酸との複合体を形成した場合に、核酸の細胞内への導入が促進されると共に、基材からの核酸の脱離を促進しつつ基材への核酸の保持力が確保され得る。
【0029】
式(1)で表されるカチオン性ポリアミノ酸は、例えば、それ自体公知のβ−ベンジル−L−アスパルテート、γ−ベンジル−L−グルタメート、Nε−Z−L−リシン等の保護されたアミノ酸のN−カルボン酸無水物(NCA)の重合によりポリアミノ酸エステルを製造し、次いで、R7a、R7b、およびのR基に対応するポリアミンを用いてアミノリシスを行うことによりポリアミノ酸の側鎖にカチオン性基を導入することによって、製造することができる。
【0030】
1つの実施形態においては、γ−ベンジル−L−グルタメートを重合した後にβ−ベンジル−L−アスパルテートを重合し、次いで、ジエチレントリアミン(DET)等のアミン化合物と反応させることにより、ポリ(β−ベンジル−L−アスパルテート)に対して優先的にエステルアミド交換反応が生じ、アスパラギン酸側鎖にDET基等のアミン残基が導入される。その結果、側鎖にカチオン性基が導入されたアスパラギン酸由来のカチオン性アミノ酸残基セグメントと側鎖にベンジル基が導入されたグルタミン酸由来の疎水性アミノ酸残基セグメントとから構成されるブロック型のカチオン性ポリアミノ酸が得られ得る。一方、β−ベンジル−L−アスパルテートとγ−ベンジル−L−グルタメートとを同時に重合させ、次いで、ジエチレントリアミン(DET)等のアミン化合物と反応させると、側鎖にカチオン性基が導入されたアスパラギン酸由来のカチオン性アミノ酸残基と側鎖にベンジル基が導入されたグルタミン酸由来の疎水性アミノ酸残基とが任意に配置されたランダム型のカチオン性ポリアミノ酸が得られ得る。
【0031】
なお、上記合成の過程でアミノ酸エステル残基の一部にアミンの求核攻撃に起因した構造変化(例えば、アミノ酸エステル残基の脱アルコールによるイミド環の形成)が生じる場合があるが、本明細書ではこのような構造変化を経た残基をさらに含むカチオン性ポリアミノ酸についても、上記一般式(1)に含めて取り扱うこととする。この場合、上記構造変化を経た残基の数は、カチオン性アミノ酸残基の数および疎水性アミノ酸残基の数には含めないものとする。また、カチオン性アミノ酸残基における一部のNH基およびNH基が合成過程での酸(主に塩酸)の使用に起因して塩(主に塩酸塩)になる場合があるが、本明細書ではこうした構造を含むカチオン性ポリアミノ酸についても、上記一般式(1)に含めて取り扱うこととする。すなわち、R7a、R7b、およびのRの基における一部のNH基およびNH基は塩(例えば、塩酸塩)となっていてもよい。
【0032】
B.ブロックコポリマー
本発明のブロックコポリマーは、A項に記載のカチオン性ポリアミノ酸からなるセグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとを含む。このような構成をとることにより、本発明のブロックコポリマーは、上記カチオン性ポリアミノ酸自体が有する上記の特性を少なくとも保持したまま、循環血液中における良好な滞留性を示すポリマー粒子(例えば、ポリマーミセル)を形成することができる。
【0033】
上記親水性ポリマーとしては、任意の適切な親水性ポリマーが採用され得る。該親水性ポリマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリサッカライド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリアミノ酸、ポリ(リンゴ酸)、またはこれらの誘導体が挙げられる。ポリサッカライドの具体例としては、デンプン、デキストラン、フルクタン、ガラクタン等が挙げられる。これらのなかでも、ポリ(エチレングリコール)は、末端に種々の官能基を有する末端反応性ポリエチレングリコールが市販されており、また、種々の分子量のものが市販されており、容易に入手できることから、好ましく用いられ得る。
【0034】
本発明のブロックコポリマーは、好ましくは下記式(2)または(3)で表され得る:
【化2】


上記各式中、
〜R、m−n、n、x−y、y、およびzについては、上記式(1)について定義したのと同義であり、
およびLは、相互に独立して、−S−S−または原子価結合であり、
は、−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOであり、
は、−OCO−(CHp2−CO−、−NHCO−(CHp3−CO−、または−L4a−(CHq2−CO−であり、ここで、p2、p3、およびq2は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L4aは、OCONH、−CHNHCO−、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、
およびR10は、相互に独立して、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基であり、
kは、30〜20,000の整数を表す。
【0035】
上記LおよびLは、相互に独立して、−S−S−または原子価結合である。一方、Lは、−NH−、−O−、−O(CHp1−NH−、または−L2a−(CHq1−L2b−であり、ここで、p1およびq1は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L2aはOCO、OCONH、NHCO、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOであり、L2bはNHまたはOである。また、Lは、−OCO−(CHp2−CO−、−NHCO−(CHp3−CO−、または−L4a−(CHq2−CO−であり、ここで、p2、p3、およびq2は、相互に独立して、1〜5の整数であり、L4aは、OCONH、−CHNHCO−、NHCOO、NHCONH、CONHまたはCOOである。上記定義において、LおよびLの組み合わせ、ならびに、LおよびLの組み合わせは、一緒になって一つの連結基となり得るように組み合わされる必要がある。例えば、Lが−NH−である場合、Lは−S−S−でなく、原子価結合である。上記組み合わせとしては、LまたはLが−S−S−である場合の連結基を形成する組み合わせが好ましい。
【0036】
およびR10の基で定義する炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基としては、上記式(1)においてRおよびRの基で定義する、炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、アルキル置換イミノ基、およびアルキル基のアルキル部分と同様の基が挙げられる。また、その置換基も同様である。
【0037】
エチレングリコール(またはオキシエチレン)の繰り返し数を表すkは、30〜20,000、好ましくは40〜2,000、さらに好ましくは50〜1,000の整数を表す。
【0038】
本発明のブロックコポリマーは、例えば、上記カチオン性ポリアミノ酸と親水性ポリマーとをそのまま、または必要により分子量分布を狭くするように精製した後、公知の方法によりカップリングすることによって形成できる。また、例えば、一般式(2)のブロックコポリマーは、Rを付与できる開始剤を用いてアニオンリビング重合を行うことによりポリエチレングリコール鎖を形成した後、成長末端側にアミノ基を導入し、そのアミノ末端からβ−ベンジル−L−アスパルテート、γ−ベンジル−L−グルタメート、Nε−Z−L−リシンといった保護されたアミノ酸のN−カルボン酸無水物(NCA)を重合させ、得られたポリアミノ酸の側鎖にカチオン性基を導入することによって、製造することができる。なお、上記のとおり、カチオン性ポリアミノ酸の合成の過程でアミノ酸エステル残基の一部にポリアミンの求核攻撃に起因した構造変化(例えば、アミノ酸エステル残基の脱アルコールによるイミド環の形成)が生じる場合があるが、本明細書ではこのような構造変化を経た残基を含むブロックコポリマーについても、上記一般式(2)および(3)に含めて取り扱うこととする。また、カチオン性アミノ酸残基における一部のNH基およびNH基が合成過程での酸(主に塩酸)の使用に起因して塩(主に塩酸塩)になる場合があるが、本明細書ではこうした構造を含むブロックコポリマーについても、上記一般式(2)および(3)に含めて取り扱うこととする。
【0039】
C.ポリマー粒子組成物
本発明のポリマー粒子組成物は、上記A項に記載のカチオン性ポリアミノ酸および/またはB項に記載のブロックコポリマーを含む。上記カチオン性ポリアミノ酸(ブロック型/ランダム型)およびブロックコポリマーは、カチオン性ポリアミノ酸中の疎水性アミノ酸残基の割合が高くなると、水溶液中で会合して好適にポリマー粒子を形成し得る。なお、本発明においては、複数の分子が粒子状に集合した集合体も粒子に含めるものとし、このようなポリマーの集合体もポリマー粒子と称する。該ポリマー粒子の平均粒子径は、例えば、5nm〜5μm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜300nmである。
【0040】
本発明のポリマー粒子組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、上記カチオン性ポリアミノ酸およびブロックコポリマー以外の他のポリマーを含み得る。このような他のポリマーとしては、例えば、親水性ポリマー鎖セグメントと疎水性ポリマー鎖セグメントとを有するブロックコポリマーが挙げられる。このようなブロックコポリマーは、水溶液中で好適に会合して安定なポリマー粒子(例えば、ポリマーミセル)を形成し得るので、これらを共存させることにより安定性に優れたポリマー粒子組成物が得られ得る。このような効果は親水性ポリマー鎖セグメントを有さないカチオン性ポリアミノ酸を含むポリマー粒子組成物において、特に好適に奏され得る。上記他のブロックコポリマーとしては、例えば、WO2004/082718に記載のポリマーが挙げられる。
【0041】
本発明のポリマー粒子組成物中における上記カチオン性ポリアミノ酸およびブロックコポリマーと上記他のポリマーとの重量比は、ポリマーの種類等に応じて適切に設定され得る。該重量比は、例えば20:1〜1:20であり得、好ましくは10:1〜1:10であり、さらに好ましくは1:5〜5:1である。
【0042】
本発明のポリマー粒子組成物は、特にその方法は限定されないが、例えば、目的のポリマーに水または緩衝液等の水性媒体を加えて攪拌し、超音波、圧力、剪断力またはそれらを組み合わせた物理的エネルギーを与えること、目的のポリマーを揮発性の有機溶媒に溶解後、有機溶媒を揮発させて乾固し、そこに上記水性媒体を加えて、上記のような物理的エネルギーを与えること等によって調製することができる。あるいは、目的のポリマーに該ポリマーを溶解可能な水溶性有機溶媒を加えて溶解し、上記の水性媒体に対して透析することによっても調製することができる。ここで、上記揮発性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を挙げることができる。また、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0043】
D.複合体
本発明の複合体は、上記A項に記載のカチオン性ポリアミノ酸および/またはB項に記載のブロックコポリマーと核酸とを含む。上記カチオン性ポリアミノ酸およびブロックコポリマーは、カチオン性基を有するので、生理的条件下で、アニオン荷電性化合物と複合体(例えば、PIC)を形成し得る。該アニオン荷電性化合物としては、タンパク質、脂質、ペプチド、核酸等が挙げられ、なかでも、上記カチオン性ポリアミノ酸およびブロックコポリマーは核酸と好適に複合体を形成し得る。後述する実施例において示されるように、上記カチオン性ポリアミノ酸またはブロックコポリマーと核酸とから形成される複合体は、カチオン性ポリアミノ酸の構造がブロック型であるかランダム型であるかによって、FBS処理時の核酸のリリース形態が異なるので、目的に応じて、適切な構造のポリマーが選択され得る。
【0044】
上述したとおり、上記カチオン性ポリアミノ酸が側鎖に疎水性基を有することにより、該カチオン性ポリアミノ酸および該ポリアミノ酸を有するブロックコポリマーは小分子量の核酸との複合体であっても生理的条件下で安定なベシクルまたは会合体を提供できる。上記カチオン性ポリアミノ酸またはブロックコポリマーとの複合体を提供できる核酸は、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味し、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNAおよびオリゴもしくはポリ一本鎖RNAを挙げることができる。また、同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ2本鎖核酸、オリゴもしくはポリ1本鎖核酸も含まれる。また核酸に含有されるヌクレオチドは天然型であっても、化学修飾された非天然型のものであっても良く、またアミノ基、チオール基、蛍光化合物などの分子が付加されたものであっても良い。限定されるものでないが、該核酸は、4〜20,000塩基、好ましくは10〜10,000塩基、さらに好ましくは18〜30塩基からなるものであることができる。また、機能もしくは作用を考慮すると、プラスミドDNA、siRNA、micro RNA、shRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムを挙げることができる。
【0045】
上記siRNAとしては、例えば、標的とする遺伝子またはポリヌクレオチドに対し、公知の方法で設計されたすべてのものを用いることができる。siRNAの鎖長は、二重鎖を構成する部分の長さが好ましくは15〜50塩基、より好ましくは18〜30塩基であることができ、当該技術分野で公知の化合物、また、それらと同様な作用または機能を有するすべてのヌクレオチドを包含する。限定されるものでないが、siRNAの具体例は、遺伝子療法の対象となりうる遺伝子を参照して設計することができる。このような遺伝子としては、限定されるものでないが、非小細胞肺癌等に関係のあるPKCα、悪性黒色腫等に関係のあるBCL−2、クローン病に関係のあるICAM−1、C型肝炎に関係のあるHCV、関節リュウマチもしくは乾癬に関係のあるTNFα、喘息に関係のあるアデノシンAI受容体、卵巣癌等に関係のあるc−raf kinase、膵臓癌等に関係のあるH−ras、冠動脈疾患に関係のあるc−myc、大腸癌に関係のあるPKA Ria、エイズに関係のあるHIV、固形癌に関係のあるDNAメチルトランスフェラーゼ、癌に関係のあるVEGF受容体、腎臓癌に関係のあるリボヌクレオチド還元酵素、CMV性網膜炎に関係のあるCMV IE2、前立腺癌に関係のあるMMP−9、悪性グリオーマに関係のあるTGFβ2、多発性硬化症に関係のあるCD49d、糖尿病に関係のあるPTP−1B、癌に関係のあるc−myb、乳癌等に関係のあるEGFR、癌に関係のあるmdr1、autotaxin及びGLUT−1の遺伝子を挙げることができる。アンチセンス核酸についても同様に、当該術分野で公知ものまたはそれらと同様の機能または作用を有するすべてのものを本発明に従い複合体を形成する対象とすることができる。
【0046】
核酸がsiRNAである場合の本発明の複合体は、生理的条件下での安定性を向上させる観点からはN/P比が2以上であることが好ましく、ポリマーによる毒性を抑制する観点からはN/P比が200以下であることが好ましい。なお、N/P比の意味については後述する。
【0047】
上記カチオン性ポリアミノ酸を用いてsiRNAとの複合体を得る場合、至適のN/P比は総アミノ基中に占める疎水性基の割合によって変動するので特定できないが、N/P比は、一般的には5以上、好ましくは7以上である。このようなN/P比でsiRNAとの複合体を形成すると、循環血液中等の生理的条件下で平均粒径が約5nm〜約300nmの範囲にある安定な会合体を提供できる。このような複合体は必要により緩衝化された水溶液中で上記カチオン性ポリアミノ酸とsiRNAとを上記のN/P比となるように混合することにより調製できる。また、上記C項に記載のカチオン性ポリアミノ酸を含むポリマー粒子組成物とsiRNAとを所望のN/P比となるように混合および静置して、ポリマー粒子にsiRNAを内包させること等により調製できる。
【0048】
上記ブロックコポリマーを用いてsiRNAとの複合体を得る場合、特に、カチオン性ポリアミノ酸セグメント中の疎水性アミノ酸残基の割合が高くなると、このようなコポリマーのみでも水溶液中で自立的に会合してポリマー粒子(例えば、ポリマーミセル)を形成する傾向があるので、上記カチオン性ポリアミノ酸そのものを用いる場合より、より広範なN/P比の下で安定な複合体を形成することができる。このような複合体は上記C項に記載のブロックコポリマーを含むポリマー粒子組成物とsiRNAとを所望のN/P比となるように混合および静置して、ポリマー粒子にsiRNAを内包させること等により調製できる。
【0049】
上記複合体は、そのままの状態で使用してもよく、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアとして使用され得る任意の適切なキャリアに内包された状態で使用してもよい。このようなキャリアの代表例としては、ポリマーミセル、リポソーム等が挙げられる。DDSキャリアに内包されることにより、例えば、血中成分の複合体周囲での凝集が防止されて、核酸の適切な放出が好適に行われ得る。このような効果は、上記カチオン性ポリアミノ酸と核酸とを含む複合体において特に好適に奏され得る。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。以下の実施例においては、PEGの分子量(kMw)、PBLGの重合度、およびPBLAまたはその誘導体の重合度の順序でポリマー構造を記す。例えば、PEGの分子量が10,000、PBLGの重合度が35およびPBLAの重合度が5の場合は、「PEG−PBLG−PBLA 10−35−5」と略記する。ここで、各アミノ酸残基の重合度は、統計的な値であって範囲を有し得るので、上記のように略記された値は、実際の測定値との間に数個(例えば、±2個程度)の変動を有し得るものとする。また、PBLGの重合後にPBLAを重合することで、ポリアミノ酸内のアミノ酸残基配列が規則的であるポリマーを、その構造からBlock polymerと略記する。また、PBLGとPBLAとを同時に添加して重合することで、ポリアミノ酸内のアミノ酸残基配列が順不同であるポリマーを、そのポリマー構造からRandom polymerと略記する。なお、実施例における各特性の分析方法は、特に記載がない限り、以下の通りである。
【0051】
(1)核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)
核磁気共鳴装置(日本電子製、JEOL AL300 (300MHz))を用い、溶媒:DMSO−d6、測定温度:25℃で行った。
(2)アミノ酸分析
ポリマー中のポリ(β−ベンジル−L−グルタメート)(PBLG)およびポリ(N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]アスパルタミド(pAsp(DET))濃度は、以下のとおり、ポリマーを酸加水分解し、グルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)として、Waters AccQ・TagTMアミノ酸分析法のマニュアル(日本ウォーターズ)に従って測定した。
(2−1)酸加水分解
ポリマーをねじ口栓付きガラス製試験管に10mg分取し、6N 塩酸をポリマー濃度として5mg/mLになるように加えた。この溶液を105℃、19時間加熱処理することで、ポリマーを酸加水分解した。次いで、1.5mL容マイクロチューブに4N NaOH 300μL、超純水 500μLおよび得られた酸加水分解溶液 200μLを加えて中和し、0.22μmのフィルター(日本ミリポア、登録商標「Millex」 GV 13mmφ)でろ過した。次いで超純水にて50倍希釈し、サンプル溶液とした。
(2−2)アミノ酸分析
1.5mL容マイクロチューブに、AccQ・Fluor Borate Buffer 70μLおよび(2−1)で得られたサンプル溶液 10μLを加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。次いで、AccQ・Fluor Reagent 20μLを加えて直ちにボルテックスミキサーで15秒間攪拌し、HPLC測定サンプルとした。HPLC条件は以下の通りである。また特に記載がない場合、HPLC分析はすべて同条件で行った。
[HPLC条件]
システム:Waters HPLCシステム(Waters Alliance System, 2695, 2475, 2996)
カラム:AccQ・TagTM Column for hydrolysate amino acid analysis(φ3.9×150mm,Waters)
移動相:AccQ・TagTM Eluent A/Acetonitrile = Gradient
流速:1mL/min
温度:37℃
インジェクション体積:10μL
検出:蛍光(250/395nm)
定量用標準物質:アミノ酸混合標準,H型(和光純薬)
【0052】
《試験群A:ポリマーの合成》
[実施例A−1]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−35−5 Block polymerの合成
(1)PEG−PBLG−PBLA 10−35−5 Block polymerの合成
アルゴン下、反応容器に片末端アミノプロピルのポリエチレングリコール(MeO−PEG10K−NH、平均分子量10,000) 2g(0.2mmol)および脱水ジメチルスルホキシド(DMSO) 25mLを加えて溶解した。MeO−PEG10K−NHのモル数に対して38.5倍量のβ−ベンジル−L−グルタメート N−カルボン酸無水物(BLG−NCA、Mw=263.25) 2.03g(7.7mmol)を加えて40℃で一昼夜反応させた。室温まで放冷後、6倍量のβ−ベンジル−L−アスパルテート N−カルボン酸無水物(BLA−NCA、Mw=249.22) 0.3g(1.2mmol)を加えて40℃で一昼夜反応させた。反応後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 20mLを用いて桐山ろ紙(φ40mm、5B)にて吸引ろ過を行い、ろ液をヘキサン/酢酸エチル(6/4)混合溶液500mLに滴下し、晶析を行った。析出したポリマーを桐山ろ紙(φ60mm、5C)にて吸引ろ過を行い、さらに清浄なヘキサン/酢酸エチル(5/5)溶液500mLを加えて、同様の洗浄操作を2回繰り返した後、減圧乾燥を経てポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。中間化合物であるポリマー(PEG−PBLG−PBLA)では、H−NMRスペクトルでPEG鎖の積分値を基準としてベンジルエステルの総数が算出される。アミノ酸分析によって得られたポリマー中のグルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)のモル分率より、PBLGおよびPBLAの重合度を算出した。その結果、PBLGの重合度は36であり、PBLAの重合度は5であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−PBLA Block polymerの分子量は約18,700であった(収量3.53g、収率94%)。
【0053】
(2)PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−35−5 Block polymerの合成
アルゴン下、PEG−PBLG−PBLA 10−35−5 Block polymer 1.5g(0.080mmol)に脱水DMF 15mLを加えて溶解した。アルゴン下、別の反応容器にPBLAに対し50倍量(250当量)のジエチレントリアミン(DET) 2.18mL(20.1mmol)を加えた。各々の反応溶液を氷水浴で10℃以下に冷却した。冷却後、DET溶液に対してポリマー溶液を脱水DMF 5mLを用いて洗い入れ、5℃で1時間反応させた。別の容器にDETに対し2倍量の6N 塩酸 6.7mL(40.1mmol)を加え、予め−20℃にて冷却した。反応後、反応溶液を氷水浴で冷却しながら、−20℃に冷却した塩酸溶液中に10℃を超えないように加えた。次いで、透析膜(MWCO:3,500)に移し、5℃下で0.01N 塩酸3Lに対して1日間(外液を2回交換)、さらに5℃下で水3Lに対して1日間(外液を5回交換)透析を行った(透析外液はすべて予め5℃に冷却した)。透析後、フィルター(日本ミリポア社、SterivexTM GP 0.22μm)にて処理後、凍結乾燥を経てポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。中間化合物であるポリマー(PEG−PBLG−PBLA)のようにポリマー構造中にアミノ酸のベンジルエステル誘導体であるPBLGとPBLAの両者が存在する場合、アミン化合物であるジエチレントリアミン(DET)と反応させると、PBLAに対して優先的にエステルアミド交換反応が生じ、アスパラギン酸側鎖にDET基が導入される。PEG−PBLG−pAsp(DET)のポリマーでは、H−NMRスペクトルよりポリマー中のPBLGのベンジルエステル数が算出され、すなわちPBLGの重合度に相当する。アミノ酸分析によって得られたポリマー中のグルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)のモル分率より、pAsp(DET)の重合度を算出した。その結果、PBLGの重合度は36、pAsp(DET)の重合度は5であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−35−5 Block polymerの分子量は約19,000であった(収量1.4g、収率92%)。
【0054】
[実施例A−2]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−25−5 Block polymerの合成
MeO−PEG10K−NH 2g(0.2mmol)のモル数に対して27.5倍量のBLG−NCA 1.45g(5.5mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.3g(1.2mmol)を用いたこと、および、最初の晶析に用いた貧溶媒をジエチルエーテルとしたこと以外は、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は24、pAsp(DET)の重合度は5であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−25−5 Block polymerの分子量は約16,800であった(収量1.43g、収率94%)。
【0055】
[実施例A−3]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−20−10 Block polymerの合成
MeO−PEG10K−NH 2g(0.2mmol)のモル数に対して22倍量のBLG−NCA 1.16g(4.4mmol)および12倍量のBLA−NCA 0.6g(2.4mmol)を用いたこと、および、最初の晶析に用いた貧溶媒をジエチルエーテルとしたこと以外は、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は19、pAsp(DET)の重合度は11であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−20−10 Block polymerの分子量は約17,100であった(収量1.41g、収率90%)。
【0056】
[実施例A−4]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−35−5 Random polymerの合成
MeO−PEG10K−NH 2g(0.2mmol)のモル数に対して38.5倍量のBLG−NCA 2.03g(7.7mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.3g(1.2mmol)を同時に加えて40℃で一昼夜反応させたこと以外は、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は36、pAsp(DET)の重合度は5であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−35−5 Random polymerの分子量は約19,000であった(収量1.4g、収率92%)。
【0057】
[実施例A−5]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−25−5 Random polymerの合成
MeO−PEG10K−NH2g(0.2mmol)のモル数に対して27.5倍量のBLG−NCA 1.45g(5.5mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.3g(1.2mmol)を用いたこと以外は、実施例A−4と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は26、pAsp(DET)の重合度は5であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−25−5 Random polymerの分子量は約16,800であった(収量1.37g、収率90%)。
【0058】
[実施例A−6]PEG−PBLG−pAsp(DET) 10−20−10 Random polymerの合成
MeO−PEG10K−NH2g(0.2mmol)のモル数に対して22倍量のBLG−NCA 1.16g(4.4mmol)および12倍量のBLA−NCA 0.6g(2.4mmol)を用いたこと以外は、実施例A−4と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は18、pAsp(DET)の重合度は10であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−pAsp(DET) 10−20−10 Random polymerの分子量は約17,100であった(収量1.42g、収率91%)。
【0059】
[実施例A−7]PBLG−pAsp(DET) 35−5 Block polymerの合成
(1)PBLG−PBLA 35−5 Block polymerの合成
アルゴン下、脱水DMSO 15mLにn−ブチルアミン 40μL(0.40mmol)を加えて溶解した。n−ブチルアミンのモル数に対して38.5倍量のBLG−NCA 4.1g(15.6mmol)を加えて40℃で一昼夜反応させた。室温まで放冷後、6倍量のBLA−NCA 0.61g(2.43mmol)を加えて40℃で一昼夜反応させた。反応後、DMF 20mLを用いて桐山ろ紙(φ40mm、 5B)にて吸引ろ過を行い、ろ液をジエチルエーテル 1Lに滴下し、晶析を行った。析出したポリマーを桐山ろ紙(φ60mm、 5B)にて吸引ろ過を行い、さらに清浄なヘキサン/酢酸エチル(8/2)溶液1Lを加えて、同様の洗浄操作を2回繰り返した後、減圧乾燥を経てポリマー粉体(PBLG−PBLA 35−5 Block polymer)を得た。
【0060】
(2)PBLG−pAsp(DET) 35−5 Block polymerの合成
PBLG−PBLA 35−5 Block polymer 1.5g(0.171mmol)および透析膜(MWCO:1,000)を用い、透析精製後はフィルター処理をしないこと以外は、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様に、H−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は35、pAsp(DET)の重合度は6であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 35−5 Block polymerの分子量は約9,110であった(収量1.22g、収率78%)。
【0061】
[実施例A−8]PBLG−pAsp(DET) 30−10 Block polymerの合成
n−ブチルアミン 40μL(0.41mmol)のモル数に対して33倍量のBLG−NCA 3.52g(13.4mmol)および12倍量のBLA−NCA 1.21g(4.9mmol)を用いたこと以外は、実施例A−7と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は29、pAsp(DET)の重合度は12であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 30−10 Block polymerの分子量は約9,380であった(収量1.19g、収率74%)。
【0062】
[実施例A−9]PBLG−pAsp(DET) 25−5 Block polymerの合成
n−ブチルアミン 50μL(0.51mmol)のモル数に対して27.5倍量のBLG−NCA 3.66g(13.9mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.76g(3.0mmol)を用いたこと以外は、実施例A−7と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は25、pAsp(DET)の重合度は6であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 25−5 Block polymerの分子量は約6,920であった(収量1.23g、収率78%)。
【0063】
[実施例A−10]PBLG−pAsp(DET) 20−10 Block polymerの合成
n−ブチルアミン 50μL(0.51mmol)のモル数に対して22倍量のBLG−NCA 2.93g(11.1mmol)および12倍量のBLA−NCA 1.51g(6.1mmol)を用いたこと以外は、実施例A−7と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は19、pAsp(DET)の重合度は10であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 20−10 Block polymerの分子量は約7,190であった(収量1.26g、収率76%)。
【0064】
[実施例A−11]PBLG−pAsp(DET) 35−5 Random polymerの合成
n−ブチルアミン 40μL(0.41mmol)のモル数に対して38.5倍量のBLG−NCA 4.1g(15.6mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.61g(2.43mmol)を同時に加えて40℃で一昼夜反応させたこと以外は、実施例A−7と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は34、pAsp(DET)の重合度は5であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 35−5 Random polymerの分子量は約9,110であった(収量1.26g、収率81%)。
【0065】
[実施例A−12]PBLG−pAsp(DET) 30−10 Random polymerの合成
n−ブチルアミン 40μL(0.41mmol)のモル数に対して33倍量のBLG−NCA 3.52g(13.4mmol)および12倍量のBLA−NCA 1.21g(4.9mmol)を用いたこと以外は、実施例A−11と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は28、pAsp(DET)の重合度は10であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 30−10 Random polymerの分子量は約9,380であった(収量1.08g、収率67%)。
【0066】
[実施例A−13]PBLG−pAsp(DET) 25−5 Random polymerの合成
n−ブチルアミン 50μL(0.51mmol)のモル数に対して27.5倍量のBLG−NCA 3.66g(13.9mmol)および6倍量のBLA−NCA 0.76g(3.0mmol)を用いたこと以外は、実施例A−11と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は26、pAsp(DET)の重合度は5である。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 25−5 Random polymerの分子量は約6,920であった(収量1.08g、収率68%)。
【0067】
[実施例A−14]PBLG−pAsp(DET) 20−10 Random polymerの合成
n-ブチルアミン 50μL(0.51mmol)のモル数に対して22倍量のBLG-NCA 2.93g(11.1mmol)および12倍量のBLA-NCA 1.51g(6.1mmol)を用いたこと以外は、実施例A−11と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH-NMRおよびアミノ酸分析より確認した。その結果、PBLGの重合度は20、pAsp(DET)の重合度は11であった。なお、こうして合成したPBLG−pAsp(DET) 20−10 Random polymerの分子量は約7,190であった(収量1.11g、収率67%)。
【0068】
[参考例A−1]PEG−PBLG−Ac 10−40の合成
アルゴン下、片末端アミノプロピルのポリエチレングリコール(MeO−PEG10K−NH、平均分子量10,000)18g(1.8mmol)に、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mLを加えて溶解した。MeO−PEG10K−NHのモル数に対して42倍量のBLG−NCA 19.89g(75.6mmol)を加えて40℃で一昼夜反応させた。この反応液にMeO−PEG10K−NHのモル数に対し10倍量の無水酢酸 1.7mL(18mmol)を加え、さらに40℃で6時間反応させた。反応後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 20mLを用いて桐山ろ紙(φ60mm、 5B)にて吸引ろ過を行い、ヘキサン/酢酸エチル(1/1)混合溶液2.5Lに滴下し、晶析を行った。析出したポリマーを桐山ろ紙(φ95mm、 5B)にて吸引ろ過を行い、さらに清浄なヘキサン/酢酸エチル(1/1)溶液2.5Lにて同様の洗浄操作を2回繰り返した後、減圧乾燥を行ってポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることは実施例A−1と同様にH−NMRより確認した。その結果、PBLGの重合度は40であった。なお、こうして合成したPEG−PBLG−Ac 10−40の分子量は約18,800であった(収量33.18g、収率98%)。
【0069】
[比較例A−1]長鎖型PEG−pAsp(DET ST20%)の合成
(1)Stearyl−NHSの合成
アルゴン下、ステアリン酸 3g(10.55mmol)、ステアリン酸に対して1.2倍量のN−ヒドロキシこはく酸イミド 1.456g(12.65mmol)、1.2倍量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩(EDC) 2.426g(12.65mmol)、および脱水クロロホルム40mLを加えて溶解し、室温で一昼夜反応させた。反応後、エバポレーターにてクロロホルムを留去し、ジエチルエーテルに溶解した。蒸留水と共に分液ロートで数回に分けて抽出を行い、水層を除去後、ジエチルエーテル層を回収した。回収したジエチルエーテル層に無水硫酸マグネシウムを加えて30分程度攪拌後、桐山ろ紙(φ40mm、5B)にて吸引ろ過を行った。エバポレーターにてろ液からジエチルエーテルを留去し、クロロホルム30mLに溶解した。得られた溶液をEtOH 300mLへ滴下し、晶析を行った後に吸引ろ過を行った。次いで、EtOH 300mLで約10分間攪拌後、桐山ろ紙(φ40mm、5B)にて吸引ろ過を行い、減圧乾燥を経て結晶を回収した。得られた化合物が目的物であることは、H−NMR(CDCl−d、T=20℃)より確認した。活性エステル化率は、ステアリン酸由来ピーク(R−CH−COOH:2.4ppm)とStearyl−NHS由来ピーク(R−CH−NHS:2.6ppm)より算出したところ、86%であった。なお、反応に用いる際、添加量は活性エステル化率より換算し、目的の添加量の1.16倍量を加えた。こうして合成したStearyl−NHSの分子量は約381.55であった(収量1.9g、収率47%)。
【0070】
(2)PEG−PBLA 10−100の合成
アルゴン下、PEG10K−NH 1g(0.1mmol)に、脱水ジクロロメタン(CHCl) 15mLを加えて溶解した。アルゴン下、別の容器にPEG10K−NHのモル数に対して110倍量のBLA−NCA 2.74g(11mmol)、脱水DMF 6mL、および脱水CHCl 30mLを加えて溶解した。BLA−NCA溶液に対してPEG10K−NH溶液を脱水CHCl 15mLを用いて洗い入れ(最終CHCl/DMF=10/1)、35℃で2日間反応させた。反応後、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DMSO−d,T=60℃)より確認した(収量2.73g、収率90%)。
【0071】
(3)PEG−pAsp(DET) 10−100の合成
アルゴン下、PEG−PBLA 10−100 1.21g(0.0397mmol)に脱水N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP) 50mLを加えて溶解した。アルゴン下、別の反応容器にPBLAのモル数に対し50倍量のジエチレントリアミン(DET) 21.5mL(198.4mmol)および脱水NMP 10mLを加えた。これ以外は、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DO、T=70℃)より確認した(収量1.0g、収率68%)。
【0072】
(4)PEG−pAsp(DET ST 20%) 10−100の合成
アルゴン下、PEG−pAsp(DET) 10−100 400mg(0.0107mmol)にメタノール 15mL、DETのモル数に対して10倍量のトリエチルアミン(TEA) 1.49mL(10.72mmol)を加えて溶解した。アルゴン下、別の容器にアスパラギン酸のモル数に対して0.2倍量のStearyl−NHS 95.1mg(0.214mmol)を加え、CHCl 5mLで溶解した。各々の溶液を氷水浴で冷却し、ポリマー溶液に対してStearyl−NHS溶液をCHCl 10mLを用いて洗い入れ(最終:MeOH 15mL/CHCl 15mL)、5℃にて一昼夜反応した。反応後、ジエチルエーテル270mLに滴下し、晶析を行った。遠心分離操作(2,380G、10min、4℃)を行い、ポリマーを回収した。清浄なジエチルエーテル90mLにて、同様の遠心操作による洗浄を2回繰り返し、上清を除去した。次いで、50% MeOH水溶液 40mLに溶解して透析膜(MWCO:3,500)に移し、5℃下で0.01N 塩酸3Lに対して1日間(外液を2回交換)、さらに5℃下で水3Lに対して1日間(外液を2回交換)透析を行った(透析外液はすべて予め5℃に冷却した)。透析後、フィルター(ミリポア社、SterivexTM GP 0.22μm)にて処理後、凍結乾燥を経てポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DO、T=70℃)より確認した。その結果、pAsp(DET)の重合度は99、ステアロイル(ST)基導入率は21%であった。こうして合成したPEG−pAsp(DET ST 20%) 10−100の分子量は約42,700であった(収量432mg、収率95%)。
【0073】
[比較例A−2]長鎖型pAsp(DET ST20%)の合成
(1)PBLA 100の合成
アルゴン下、n−ブチルアミンに対し110倍量のBLA−NCA 2.77g(11.13mmol)へ脱水DMF 4mLおよび脱水CHCl 30mLを加えて溶解した。アルゴン下、別の容器にn−ブチルアミン 10μL(0.101mmol)およびCHCl 1mLを加えた。BLA−NCA溶液に対してn−ブチルアミン溶液を脱水CHCl 9mLを用いて洗い入れ(最終CHCl/DMF=10/1)、35℃で2日間反応させた。反応後、実施例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DMSO−d,T=60℃)より確認した(収量1.78g、収率86%)。
【0074】
(2)pAsp(DET)100の合成
アルゴン下、PEG−PBLA 10−100の代わりにPBLA 100を1.2g(0.0585mmol)用いたこと以外は、比較例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DO、T=70℃)より確認した(収量1.29g、収率81%)。
【0075】
(3)pAsp(DET ST 20%)100の合成
アルゴン下、PEG−pAsp(DET) 10−100の代わりにpAsp(DET) 100を400mg(0.0147mmol)用いたこと以外は、比較例A−1と同様にして、ポリマー粉体を得た。得られた化合物が目的物であることはH−NMR(DO、T=70℃)より確認した。ステアロイル(ST)基導入率は21%であった。こうして合成したpAsp(DET ST 20%) 100の分子量は約32,700であった(収量471mg、収率98%)。
【0076】
《試験群B:ポリマー粒子組成物の調製》
[実施例B−1〜B−10、比較例B−1〜2]
表1に記載のポリマー 30mgに10mMのHEPESバッファー(pH7.4) 2mLを加え、1時間4℃で攪拌して懸濁させた。この懸濁液を超音波処理(130W、1秒パルス、5分間)することで、15mg/mLのポリマー濃度でポリマー成分を含有するポリマー粒子組成物1〜10およびC1〜C2を得た。
【0077】
[実施例B−11〜14]
表1に記載のポリマー各40mgにジメチルスルホキシド2mLを加え、溶解させた。この溶液を透析膜(MWCO:3,500)へ移し、外液として10mM HEPESバッファー(pH7.4)500mLを用い、室温で2時間透析した。その後、外液を交換して5℃で12時間、さらにもう一度外液を交換して5℃で2時間の透析を行った。透析後の溶液を回収し、10mM HEPESバッファー(pH7.4)により溶液の全量を5.3mLに調製することで、15mg/mLのポリマー濃度でポリマー成分を含有するポリマー粒子組成物11〜14を得た。
【0078】
[実施例B−15〜17]
表1に記載のポリマー各20mgにアセトン2mLおよびメタノール2mLを加え、溶解させた。この溶液に窒素ガスを吹き付け、溶媒を揮発させた後、さらに真空ポンプで6時間減圧乾燥を行った。得られたポリマーフィルムに10mMのHEPESバッファー(pH7.4)2.7mLを加え、1時間4℃で攪拌して懸濁させた。この懸濁液を超音波処理(130W、1秒パルス、5分間)することで、15mg/mLのポリマー濃度でポリマー成分を含有するポリマー粒子組成物15〜17を得た。
【0079】
<ポリマー粒子組成物の粒子径評価>
上記で得られたポリマー粒子組成物1〜17およびC1〜2 各50μLに10mMのHEPESバッファー(pH7.4) 700μLを加えて、サンプルを調製した。これらのサンプルについて、光散乱粒子径測定装置(Malvern Instruments、Zetasizer Nano ZS)を用い、動的光散乱法によりキュムラント平均粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
《試験群C:複合体の調製》
後述する複合体の調製に用いたsiRNAは、以下のとおりである。これらsiRNAは、株式会社日本イージーティーを通じて入手できる。
(1)siRNA(Luc):ウミホタルルシフェラーゼ遺伝子を標的として設計され、センス鎖として5’−CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT−3’(配列番号1)、アンチセンス鎖として5’−UCGAAGUACUCAGCGUAAGdTdT−3’(配列番号2)を用い、常法により2重鎖を形成させたsiRNAである。
(2)siRNA(Plk1):ヒトPlk1(Polo−like kinase 1)遺伝子を標的として設計され、センス鎖として5’−CCAUUAACGAGCUGCUUAAdTdT−3’(配列番号3)、アンチセンス鎖として5’−UUAAGCAGCUCGUUAAUGGdTdT−3’(配列番号4)を用い、常法により2重鎖を形成させたsiRNAである。Plk1遺伝子は、細胞分裂のM期において重要なキナーゼである。siRNA(Plk1)は、細胞内に導入された場合にアポトーシスを誘導する。
【0082】
[実施例C−1]siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物
siRNA(Luc)を10mMのHEPESバッファー(pH7.4)に溶解させ、80μMのsiRNA溶液を調製した。このsiRNA溶液12.5μLに、N/P比が16となるように濃度を調製したポリマー粒子組成物1〜17およびC1〜2を87.5μL添加し、混合した後に4℃で2時間静置することにより、ポリマー粒子へのsiRNAの内包処理を行った。これにより、ポリマーとsiRNAとの複合体としてのsiRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物1〜17およびC1〜2を得た。ここで、「N/P比」とは、[ポリマー粒子組成物に含有されるポリマー中のポリアミノ酸側鎖のアミノ基濃度]/[核酸中のリン酸基濃度]を意味する。
【0083】
<粒子径評価>
上記で得られたsiRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物1〜17およびC1〜2の各々について、該組成物70μLに10mMのHEPESバッファー(pH7.4) 630μLを加えて、1μMのsiRNAを含有するサンプルを調製した。これらのサンプルについて、光散乱粒子径測定装置(Malvern Instruments、Zetasizer Nano ZS)を用い、動的光散乱法によりキュムラント平均粒径を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
<siRNAリリース率の評価>
上記で得られたsiRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物1〜6、11〜17、およびC1〜C2の各々について、該組成物 5μL(siRNA濃度 10μM)に、ウシ胎児血清(FBS) 90μLおよび0.5M EDTA 5μLを添加し、37℃で24時間静置した(FBS処理)。対照として、FBSおよび0.5M EDTAに代えて10mMのHEPESバッファー(pH7.4) 95μLを用いて同様の処理を行った(対照処理)。
【0086】
FBS処理または対照処理後の各組成物におけるsiRNAのリリース率を、次のようにして電気泳動法により分析した。ポリアクリルアミドゲル(Novex 20%TBE Gel、Invitrogen)に、100ngのsiRNAを含有する各組成物をロードし、TBE溶液を泳動バッファーとして用い、引加電圧100V、泳動時間1時間の条件で泳動を行った。泳動後、ゲルはエチジウムブロマイドにより染色し、UVトランスイルミネーター上にてゲル像を撮影した。その後、バンド強度を画像解析ソフトウェア(Image J、NIH)により解析し、siRNAリリース率を定量化した。siRNAリリース率を定量化した結果を表3および表4に示す。各組成物のsiRNAリリース率は、siRNA単体を評価した場合のバンド強度を100%とし、バンド強度の相対値から算出した。
【0087】
また、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物1〜6およびC1について得られた電気泳動後のゲル像を図1に、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物11〜17およびC2について得られた電気泳動後のゲル像を図2に示す。図1および2中、(A)はFBS処理したサンプルの結果であり、(B)は対照処理をしたサンプルの結果を意味する。
【0088】
【表3】

【0089】
表3に示すように、PEG鎖を有する短鎖型ポリマー基材から形成した各組成物では、4%以上のsiRNAリリースがあった。そして、random型のカチオン性ポリアミノ酸鎖セグメントを有するポリマー基材から形成した実施例の組成物では、70%以上のsiRNAリリースがあった。また、block型のカチオン性ポリアミノ酸鎖セグメントを有するポリマー基材から形成した実施例の組成物では、siRNAリリース率を15%以下に抑えることができた。このことから、block型ポリマー基材は、その後の放出に向けて残りのsiRNAを基材に保持することが可能であり、random型ポリマー基材に比べて長期徐放型の基材として適していることがわかる。
【0090】
【表4】

【0091】
表4に示すように、PEG鎖を有さない短鎖型ポリマー基材から形成した各組成物でも4%以上のsiRNAリリースがあった。そして、random型ポリマー基材から形成した実施例の組成物では、40%以上のsiRNAリリースがあった。また、block型ポリマー基材から形成した実施例の組成物では、siRNAリリース率を30%以下に抑えることができた。このことから、block型ポリマー基材は、その後の放出に向けて残りのsiRNAを基材に保持することが可能であり、PEG鎖の有無にかかわらず、やはりrandom型ポリマー基材に比べ長期徐放型の基材として適していることがわかる。
【0092】
[実施例C−2]siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物
siRNAとしてsiRNA(Plk1)を用いたこと、および、N/P比が4、8、16、および32となるように濃度を調製したポリマー粒子組成物7〜10およびC2を用いたこと以外は実施例C−1と同様にして、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物7〜10およびC2を得た。
【0093】
<MDA−MB−231細胞に対する活性評価>
上記で得られたsiRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物7〜10およびC2の各々に、10mMのHEPESバッファー(pH7.4)を加え、siRNA濃度を1μM/mlに調整した。ヒト乳癌由来のMDA−MB−231細胞を、1ウェル当たり細胞2000個の割合で96ウェルのディッシュに播き、24時間後に各組成物を培地に添加した。siRNAの培地中での最終濃度は100nMとなるように調整した。96時間さらに培養した後、細胞の生存率を細胞数測定キットCell Counting Kit−8(同仁堂)を用いて評価した。なお、不活性なコントロール配列としてsiRNA(Luc)を用い、同様の実験を行った。
【0094】
評価の結果、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物7〜10は、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物7〜10に比べて細胞数の減少が顕著であった。具体的には、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物7では、N/P比が4、8、16、および32場合の細胞生存率(%)がそれぞれ48.2(s.d.=1.1)、26.5(s.d.=1.2)、12.4(s.d.=1.6)、および6.7(s.d.=0.8)であったのに対し、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物7ではそれぞれ、67.1(s.d.=3.6)、45.5(s.d.=1.9)、33.8(s.d.=1.6)、および36.1(s.d.=0.7)であった。また、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物8では、N/P比が4、8、16、および32場合の細胞生存率(%)がそれぞれ60.0(s.d.=9.0)、23.2(s.d.=5.0)、2.6(s.d.=0.3)、および3.3(s.d.=1.2)であったのに対し、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物8ではそれぞれ、88.3(s.d.=2.2)、66.4(s.d.=1.7)、24.9(s.d.=1.8)、および29.4(s.d.=1.5)であった。また、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物9では、N/P比が8および16の場合の細胞生存率(%)がそれぞれ48.8(s.d.=8.5)および0.9(s.d.=1.5)であったのに対し、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物9ではそれぞれ、79.0(s.d.=11.6)および16.9(s.d.=3.9)であった。また、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物10では、N/P比が16の場合の細胞生存率が13.9(s.d.=10.7)であったのに対し、siRNA(Luc)内包ポリマー粒子組成物10では52.8(s.d.=3.9)であった。これらの結果は、siRNA(Plk1)内包ポリマー粒子組成物7〜10が正常に機能したことを意味する。これに対し、図3に示すように、ポリマー粒子組成物C2では、siRNA(Plk1)を内包する場合と、siRNA(Luc)を内包する場合とで顕著な差は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のカチオン性ポリアミノ酸およびブロックコポリマーは、製薬、医療等の分野で好適に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にカチオン性基を有するカチオン性アミノ酸残基と側鎖に疎水性基を有する疎水性アミノ酸残基とを含み、核酸との会合能を有する、カチオン性ポリアミノ酸であって、該カチオン性アミノ酸残基を1〜20個含む、カチオン性ポリアミノ酸。
【請求項2】
前記疎水性アミノ酸残基として、25℃の水100gに対する溶解度が5g以下であるアミノ酸に由来する残基を含む、請求項1に記載のカチオン性ポリアミノ酸。
【請求項3】
前記カチオン性アミノ酸残基からなるセグメントと疎水性アミノ酸残基からなるセグメントとから構成されるブロック型のポリアミノ酸である、請求項1または2に記載のカチオン性ポリアミノ酸。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のカチオン性ポリアミノ酸鎖セグメントと親水性ポリマー鎖セグメントとを含む、ブロックコポリマー。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のカチオン性ポリアミノ酸および/または請求項4に記載のブロックコポリマーを含む、ポリマー粒子組成物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載のカチオン性ポリアミノ酸および/または請求項4に記載のブロックコポリマーと核酸とを含む、複合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−173802(P2011−173802A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37014(P2010−37014)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【特許番号】特許第4655298号(P4655298)
【特許公報発行日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(597144679)ナノキャリア株式会社 (8)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】