説明

矯正用下着

【課題】姿勢の悪化による腰痛や肩こりを防止、治療するため、背部をサポートする機能を持たせるとともに、腹部をサポートする機能を持たせて、姿勢を矯正する下着を提供する。
【解決手段】ボディシェイパー1の前身頃2に第1の強緊締部21と第2の強緊締部22を設けて、腹直筋をリフトアップし、後身頃に第3の強緊締部と第4の強緊締部を設けて、背部をサポートすることにより、姿勢を矯正して、腰痛や肩こりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢を正すための矯正用下着に関する。
【背景技術】
【0002】
姿勢の悪化による腰痛や肩こりを防止、治療するため、特許文献1及び特許文献2に記載の、背部をサポートする機能を持たせた下着があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−160924
【特許文献2】特許第3115816号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2記載の矯正用下着では、背部をサポートする機能はあるが、腹部をサポートする機能がない。このため、重力の負担が腰にかかってしまい、十分な腰痛の予防、治療はできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
伸縮性素材からなる身生地と強緊締部を有する下着において、
前記下着の左胸部近傍から裾近傍にかけて第1の強緊締部を設け、前記第1の強緊締部は、裾近傍が他の部分に比べて幅広となっており、前記下着の右胸部近傍から裾近傍にかけて第2の強緊締部を設け、前記第2の強緊締部は、裾近傍が他の部分に比べて幅広となっており、前記第1の強緊締部と前記第2の強緊締部は、前記下着の下部において交差して重合部を設け、前記下着の背側において、右肩下方の僧帽筋から脊柱起立筋の一部を通って左腰近傍に至る、第3の強緊締部を設け、左肩下方の僧帽筋から脊柱起立筋の一部を通って右腰近傍に至る、第4の強緊締部を設け、前記第3の強緊締部と前記第四の強緊締部は、背中の略中央で交差する、姿勢矯正用下着を提供する。
【0006】
また、前記第1の強緊締部と前記第2の強緊締部、前記第3の強緊締部、前記第4の強緊締部は、いずれも前記矯正用下着の身生地と同一の素材を身生地に縫着して設けられている矯正用下着を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、腹直筋を押さえて、その力を腹直筋の上にある上半身の筋肉に働かせるとともに、背部の僧帽筋と脊柱起立筋をサポートして負担を軽減し、腰痛と肩痛の防止、治療ができる。請求項2の発明によれば、身生地と強緊締部に同一素材を用いているので、安価なコストで容易に製造でき、緊締力の調整も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例の正面図である。
【図2】本発明の第1実施例の背面図である。
【図3】本発明の作用を表す簡略側面図である。
【図4】人体前側から見た筋肉の一部を示した部分筋肉図である。
【図5】人体後側から見た筋肉の一部を示した部分筋肉図である。
【図6】人体後側から見た筋肉と骨格の一部を示した部分筋肉骨格図である。
【図7】本発明の第2実施例の正面図である。
【図8】従来例の作用を表す簡略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例を説明する前に、強緊締部の位置の説明に使用する筋肉の人体の位置を説明する。
【0010】
腹直筋は、図4の101で示された箇所であり、腹部の筋肉のうち前腹壁の中を走る前腹筋の一つである。上半身を支える筋肉であり、体幹部の屈曲や回旋、側屈に関与し、呼吸にも寄与している。図4では、体の左側の腹直筋が示されているが、体の右側の対称位置にも同様に存在する。僧帽筋は、図5の102で示された箇所であり、人間の背中の一番表層にある筋肉である。図5では、体の左側の僧帽筋が示されているが、体の右側の対称位置にも同様に存在する。脊柱起立筋は、図6の103で示された箇所であり、長背筋のうち、脊柱の背側に位置する筋肉である。図6では、体の左側の脊柱起立筋が示されているが、体の右側の対称位置にも同様に存在する。
【実施例1】
【0011】
図1に示されているのは、本発明の実施例であるボディシェイパー1である。ボディシェイパー1は、同一の伸縮性素材からなる前身頃2と後身頃3を側部で縫い合わせてあり、身生地部分12,13と、各強緊締部(21,22,31,32)、一対のカップ部4、一対のストラップ5からなる。
【0012】
前身頃2には、第1の強緊締部21と第2の強緊締部22が設けられている。第1の強緊締部21と第2の強緊締部22は、前身頃2の身生地部分12より緊締力が強い。
【0013】
第1の強緊締部21は、左胸(着用時、図1の右側のカップ部4に当たる箇所)近傍から裾6近傍にかけて、前身頃2と同一の素材を前身頃2の裏側(肌側)に縫着することによって設けられている。第1の強緊締部21は、図1に示されているように、裾6に近づくに従って幅広となっている。
【0014】
ここで、近傍とは、その位置、或いは若干位置がずれていても、本発明の目的を達成することができ、本発明の作用効果を奏することができる範囲をいうものとする。
【0015】
第2の強緊締部22は、右胸(着用時、図1の左側のカップ部4に当たる箇所)近傍から裾6近傍にかけて、前身頃2と同一の素材を前身頃2の裏側(肌側)に縫着することによって設けられている。第2の強緊締部22は、第1の強緊締部21と略左右対称の形状となっており、ボディイシェイパー1の下部において第1の強緊締部21と重ね合わせて縫着されて、重合部23を成している。図1のように、前身頃2に設けられた強緊締部は、略V字状となっている。
【0016】
重合部23は、着用時に腹直筋101の近傍に位置する。さらに、重合部23は、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22の、重合部23以外の箇所に比べて緊締力が強くなっており、腹直筋101を押さえて、上半身をリフトアップする作用がある。この作用について、図3及び図8を用いて説明する。腹直筋101を重合部23が押すと、その力が押される方向以外の各方向に向かって働く。風船の一箇所を押すと、押された以外の箇所が膨らむ原理と同じである。これにより、腹直筋101を押す力が腹直筋の上にある上半身の筋肉にも働き、背骨への重力による負担を軽減できる。一方、図8に示されている従来の下着では、腹直筋を押さえる作用がなく、腰に負担がかかっていた。
【0017】
図2のように、後身頃3には、第3の強緊締部31と第4の強緊締部32が設けられている。第3の強緊締部31と第4の強緊締部32は、後身頃3の身生地部分13より緊締力が強い。
【0018】
第3の強緊締部31は、右肩下方の僧帽筋102から脊柱起立筋103の一部を通って左腰近傍に至る、同一幅の直線形状を成し、後身頃3と同一の伸縮性生地を後身頃3の後側(肌側)に縫着することにより設けられている。なお、本実施例においては、前述のように、前身頃2と後身頃3は同一の伸縮性素材からなる。
【0019】
第4の強緊締部32は、左肩下方の僧帽筋102から脊柱起立筋103の一部を通って右腰近傍に至る、同一幅の直線形状を成し、後身頃3と同一の伸縮性生地を後身頃3の後側(肌側)に縫着することにより設けられている。
【0020】
姿勢を正しく保つには、脊柱起立筋103と僧帽筋102の働きが重要である。前かがみの姿勢となり、いわゆる猫背になると、脊柱起立筋103が伸びて緊張した状態となり、疲労が蓄積し、背骨や骨盤を痛めて肩こりや腰痛の原因となる。僧帽筋102は、後頭部に始まり鎖骨から背中の表層にある筋肉で、背筋を伸ばすだけでなく正しい姿勢を保つ役割がある。また、僧帽筋102は、肩こりに最も深くかかわる筋肉である。姿勢が崩れると、肩の位置が前に行き、僧帽筋102に疲労が蓄積して肩こりがおき易くなる。
【0021】
第3の強緊締部31と第4の強緊締部32は背中の略中央で交差し、略X字形状となっている。これによって、僧帽筋102と脊柱起立筋103を適切にサポートし、前かがみの姿勢となることを防いでいる。従って、腰痛や肩こりの防止、治療につながる。
【0022】
以上のように、本発明においては、背部の筋肉をサポートするだけでなく、腹部の筋肉(腹直筋)のリフトアップと背部の筋肉(僧帽筋と脊柱起立筋)のサポートの相乗作用によって姿勢の矯正を図るので、従来の下着に比べて一層の姿勢矯正の効果が得られる。
【0023】
また、本発明においては、前身頃2と後身頃3の伸縮性素材と、第1の強緊締部21、第2の強緊締部22、第3の強緊締部31、第4の強緊締部32にそれぞれ縫着する伸縮性素材が、全て同一の素材なので、安価に製造でき緊締力の調整も容易である。
【0024】
なお、本実施例においては、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22の幅は、 おおよそ3cmから13cmの間であり、第3の強緊締部31と第4の強緊締部32の幅はおおよそ6cmであるが、これに限られるものではなく、本発明と同様の作用効果を奏する範囲であればよい。
【0025】
本実施例においては、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22は、裾6に近づくに従って幅広となっているが、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22の形状は、これに限定されるものではない。裾6近傍において、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22の他の部分より、幅広となっていれば良い。例えば、第1の強緊締部21において、左胸部近傍から裾6の真中付近まで同一幅で、そこから裾6にかけて幅広となっていても良い。すなわち、着用時に、重合部23が腹直筋101近傍に位置して、腹直筋101を押さえ、上半身をリフトアップするのであれば、第1の強緊締部21及び第2の強緊締部22の形状は、如何様にもし得る。
【0026】
さらに、本実施例においては、第3の強緊締部31及び第4の強緊締部32は、同一幅の直線形状であるが、この形状に限定されるものではない。背部の筋肉(僧帽筋と脊柱起立筋)をサポートするのであれば、一部或いは全部が曲線形状であってもよい。
【実施例2】
【0027】
上記実施例は、ボディシェイパー1に基づいて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の下着においても適用できる。たとえば、図7に示されているシャツタイプの下着においても適用できる。7は伸縮性素材からなるシャツであり、前身頃8には第1の強緊締部81と第2の強緊締部82、重合部83が設けられている。第1の強緊締部81と第2の強緊締部82は、前身頃8の裏側(肌側)に前身頃8と同じ伸縮性素材を縫着することによって、設けられている。シャツ7の背面図は省略するが、後身頃に図2に示されたX字状の強緊締部31,32と同様の強緊締部が同様の方法で設けてある。
【0028】
実施例2の第1の強緊締部81と第2の強緊締部82、重合部83及び不図示の第3の強緊締部と第4の強緊締部は、実施例1のボディシェイパー1の各強緊締部と同様の形状で同じ機能なので、説明は省略するが、シャツ7においても、ボディシェイパー1と同様の作用、効果を奏することができる。
【0029】
上記の実施例においては、ボディシェイパーとシャツについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、それ以外の下着にも適用できるのは当然である。また、上記実施例では、前身頃と後身頃を同じ素材で製造しているが、異なる素材で製造してもよい。さらに、第1の強緊締部と第2の強緊締部は、前身頃と同じ素材を縫着することにより設けているが、異なる素材を縫着してもよいのはもちろんである。第3の強緊締部と第4の強緊締部は、後身頃と同じ素材を縫着することにより設けているが、異なる素材を縫着してもよいのは同様ある。
【0030】
上記の実施例においては、前身頃と後身頃の身生地に伸縮性生地を縫着することによって強緊締部を設けているが、編みを変えて緊締力を強くしてもよい。
【0031】
本発明において用いられる伸縮性素材は、特に限定されるものではないが、好ましくは、伸縮性を有するポリウレタン繊維含有ラッセル編物であるポリウレタン繊維含有パワーネットや、ポリウレタン繊維含有トリコット編物であるポリウレタン繊維含有ツーウェイトリコット編物がよい。パワーネットの種類としては、プレーンパワーネット、サテンパワーネット、ツーウェイラッセル、トリスキン(登録商標)等がある。
【符号の説明】
【0032】
1 ボディシェイパー
2 前身頃
3 後身頃
4 カップ部
5 ストラップ
6 裾
7 シャツ
8 前身頃
12 前身頃の身生地部分
13 後身頃の身生地部分
21 第1の強緊締部
22 第2の強緊締部
23 重合部
31 第3の強緊締部
32 第4の強緊締部
81 第1の強緊締部
82 第2の強緊締部
83 重合
101 腹直筋
102 僧帽筋
103 脊柱起立筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性素材からなる身生地と強緊締部を有する下着において、
前記下着の左胸部近傍から裾近傍にかけて第1の強緊締部を設け、
前記第1の強緊締部は、裾近傍が他の部分に比べて幅広となっており、
前記下着の右胸部近傍から裾近傍にかけて第2の強緊締部を設け、
前記第2の強緊締部は、裾近傍が他の部分に比べて幅広となっており、
前記第1の強緊締部と前記第2の強緊締部は、前記下着の下部において交差して重合部を設け、
前記下着の背側において、
右肩下方の僧帽筋から脊柱起立筋の一部を通って左腰近傍に至る、第3の強緊締部を設け、
左肩下方の僧帽筋から脊柱起立筋の一部を通って右腰近傍に至る、第4の強緊締部を設け、
前記第3の強緊締部と前記第4の強緊締部は背中の略中央で交差する、
姿勢矯正用下着。
【請求項2】
前記第1の強緊締部と前記第2の強緊締部、前記第3の強緊締部、前記第4の強緊締部は、いずれも前記矯正用下着の身生地と同一の素材を身生地に縫着して設けられていることを特徴とする、請求項1記載の矯正用下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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