説明

矯正用履物

5層の実質的に平べったい積層体を形成するよう低密度ポリウレタンの第1の成形要素を高密度ポリウレタンの第2の成形要素の上に重ね合わせて構成した履物用ソール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正用履物、特に矯正用器具を備えた履物用ソールに関する。
【背景技術】
【0002】
足療医は、足部疾患の治療の際、履物中への矯正器具の使用を推奨する場合が多い。矯正器具は、足の物理的屈曲特性及び耐力特性を向上させるために用いられる成形ゴム又はプラスチック製インサートである。足療医は又、品質不良及び不適切な履物を足に関する多くの生体力学的問題の原因としている。フリップフロップ(flip flop)又はジャンダル(jandal)と呼ばれる場合のあるぞうりは、本質的にトウストラップによって足に当てて保持される平べったいゴム又はプラスチック製ソールを有する非常に普及している履物である。ぞうりは、安価であり、入手し易くしかもカジュアルなファッション品として見られる。かくして、ぞうりは、世界中で人気がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、残念なことには、ぞうりは、足療医が履物から得ることが必要とする矯正的支持をもたらさない。さらに、そうりは、ファッション品として見られるので、ぞうり中への矯正器具の組み込みにより、実質的に、これらの商業的魅力が損なわれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものである。
【0005】
本発明の一観点によれば、履物用ソールであって、様々な密度の重ね合わされた成形要素から成る積層体を含むことを特徴とする履物用ソールが提供される。
【0006】
本明細書で用いられる「ソール」という用語は、履物のソール全体又は履物のソールのコンポーネント層を含むものと理解されたい。この用語は又、履物の内部に配置可能なインサートを含む。
【0007】
好ましくは、所与の密度の第1の成形要素が異なる密度の第2の成形要素の上に重ね合わされて実質的に平べったい積層体が形成される。好ましい実施形態では、これら要素は、製造中、互いに融着される。好ましくは、要素のうちの一方は、高密度ポリウレタンで作られ、他方の要素は、低密度ポリウレタンで作られる。これら要素は、種々のタイプの矯正支持をもたらすような輪郭形状のものである。
【0008】
好ましい実施形態では、ソールは、特定の患者の問題に特有ではなく、一般使用向きに設計される。他の実施形態では、ソールは、種々の足の問題への足療医による解決策を提供するよう特注可能である。
【0009】
好ましくは、ソールは、トウストラップを支持する穴を備えたぞうりのソールである。
【0010】
他の実施形態では、ソールは、オープンサンダルやスポーツシューズを含む種々の履物中に組み込み可能である。
【0011】
次に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、これは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のソールを有するぞうりの斜視図である。
【図2】ソールを構成する積層体の一部をなす第1の下側要素の斜視図である。
【図3】積層体の他の部分を形成する第2の上側要素の斜視図である。
【図4a】本発明の一実施形態であるソールの平面図である。
【図4b】図4aのAA線に沿ったソールの断面図である。
【図4c】図4aのBB線に沿ったソールの断面図である。
【図4d】図4aのCC線に沿ったソールの断面図である。
【図4e】図4aのDD線に沿ったソールの断面図である。
【図5a】ソールの別の平面図である。
【図5b】図5aのEE線に沿った断面図である。
【図5c】図5aのFF線に沿った断面図である。
【図5d】図5aのGG線に沿った断面図である。
【図5e】図5aのHH線に沿った断面図である。
【図5f】図5aのII線に沿った断面図である。
【図5g】図5aのJJ線に沿った断面図である。
【図5h】図5aのKK線に沿った断面図である。
【図5i】図5aのLL線に沿った断面図である。
【図6】後ろから見た足回内運動を示す図である。
【図7】後ろから見た足回外運動を示す図である。
【図8】中立位置にある足の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面の図1及び図2は、フリップフロップ又はジャンダルと呼ばれる場合のあるぞうり10を示している。ぞうり10は、履物の非常に人気のある形態であり、通常、ゴム又はプラスチック製の実質的に平べったいソール11を有し、トウストラップ20が、ソール11の前部に設けられた単一の穴16を貫通し、次にソール11の長手方向の長さに沿ってほぼ真ん中に設けられた一対の互いに間隔を置いた穴17,18を貫通することによりソールに固定されている。ぞうり10は、非常に人気のある一カジュアルウェアになっており、ぞうりは、世界中において多量に販売されている。
【0014】
残念ながら、足療医は、生体力学的支持の観点でぞうりの備えている特性が標準以下であると考えている。
【0015】
添付の図面に示されているぞうり10のソール11は、図3に示されている下側要素12と図4に示されている上側要素13の積層体として形成されている。各要素12,13は、或る程度の矯正支持度を提供するが、これら2つの要素が製造中、互いに重ね合わされて融着されると、これら要素は、ソール11が従来型ぞうりのソールのように見えるような図1及び図2に示された実質的に平べったい輪郭形状を取る。しかしながら、ソール11の矯正的特性は、要素12,13の輪郭形状及びこれらの製造の際の互いに異なる密度のプラスチックの使用により生じる。
【0016】
かくして、下側要素12は、隆起したヒール制御領域15を有するような輪郭形状のものであり、高密度ポリウレタンで作られている。上側要素13は、これとは異なる輪郭形状の表面を有し、低密度ポリウレタンで作られている。
【0017】
高密度ポリウレタンは、65度〜70度の剛性を有し、他方、低密度ポリウレタンは、45度〜50度の剛性を有する。2つの要素12,13を互いに融着させると、これら要素は、図1及び図2に示された実質的に平べったい積層構造体11を形成する。要素12,13は、あらかじめ位置決めされた固定穴、即ち、ソールの前部寄りの中央穴16及びソール11の長手方向長さの中間部に隣接して設けられた2つの互いに間隔を置いた穴17,18を備えている。これら穴16,17,18は図1及び図2に示されているようにトウストラップ20を受け入れる。
【0018】
図6及び図7では、従来型ソールSが使用状態で示されている。図6は、足首Aが内側部M上で内方に傾いた典型的な回内運動の問題を示している。図7は、この場合も又、足首Aが外側部L上で外方に傾いている回外運動の問題を示している。図8に示されたソール11、即ち、本願の矯正用ソールを用いると、足首Aは、内側部M又は外側部Lのいずれにも傾かないで中立位置を取る。このソール11は、適度の生体力学的矯正支持を保証すると共にぞうりの全体的外観を変えないで専門家の必要とする矯正支持作用を従来型ぞうりに提供する足病学的品質を提供する。
【0019】
本発明のソール11の要素12,13の輪郭形状は、不安定位置における足の回内運動/回外運動の傾向を減少させるだけでなく歩行の際に足の安定性及び制御具合の向上を容易にする。これは、歩行の踏み出し段階の際、中足根関節及び距骨下関節の「ロック(係止)」状態を生じさせ、支持組織、例えば筋肉や靱帯に加わる応力を最小限に抑えることによって達成される。かくして、生体力学的異常、例えば回内運動/回外運動の発生の恐れ及びこれらの後遺症の恐れが減少する。
【0020】
これは、図4及び図5に示されているように密度が高い下層起伏要素12の以下の特性によって達成される。
・後側足支持部(a)の10°に近い内反角度(図5b及び図5c)。
・距骨領域(b1)の内側足底領域の下に位置していて、中足領域(b2)中に延びて足の距骨内反が最小限になるように抑えると共に内側縦足弓(b)を支持する盛り上がり輪郭形状(図4e)。
・内側弓支持部から前方に延びていて、前(横足)弓支持を形成する盛り上がり輪郭形状(図4d)。
・外側中足骨(立方根)及び第5中足骨の下に位置していて、歩行の踏み出し段階の際、中足根関節及び距骨下関節を「ロック(係止)」する(踵骨からの)延長盛り上がり(〜5mm)輪郭形状(c)(図4b)。
・この延長外側輪郭形状は、外側中足骨領域中に十分に延びて足の距骨外反が最小限になるように抑えると共に外側弓を支持する(図4c)。
【0021】
支持輪郭形状を備えた高密度下側要素12は、ソールの全体サイズにわたって延びる。この場合、下側要素は、下側要素と重ね合わせることができる逆向き合同の輪郭形状を有する低密度上側要素13により覆われると共に互いに成形され又は糊付けされる。この技術的思想により、制御用の下側要素上への足の十分な調節作用を備えた平べったく見えるソールが提供される。換言すると、平べったいソール11を備えたぞうり10は、矯正用支持層を有する。
【0022】
更に、上側低密度層13は、下側高密度層12と一緒になって、独特の二重衝撃吸収効果をもたらす。上側層は、体重をより堅固な下側層上に伝達させているとき、分散性の衝撃吸収効果を生じさせ、下側高密度層を通る力は、標準の垂直状態に差し向けられる。
【0023】
好ましい実施形態はぞうりに関するが、本発明は、スポーツ用履物を含む広範な履物に使用できるインサートを備えた広範なソールに利用できることは言うまでもない。
【0024】
上述のソールは、目に見えない内蔵三重弓部、即ち、内側及び外側のインサート並びにソールの横方向の弓部を介して回内運動と回外運動の両方に対する支持作用をもたらす。下側ソール要素のヒールの幅方向の傾斜により、後側足制御が得られる。このソールは又、中足領域のロック(係止)状態をもたらすと共に上側及び下側ソール要素の互いに異なる衝撃吸収性能により得られる二重衝撃吸収作用をもたらす。これら特徴の全ては、1つの実質的に平べったいソール中に提供される。
【0025】
ソールの生体力学的及び矯正学的品質は、これらが広範な足病学的問題の矯正手段による改善を提供するよう一般的な意味で設計されている。しかしながら、ソールは、特定の問題を取り扱うよう特注可能であると共にかかるソールの特注は、プラスチックの密度の選択及び要素の輪郭形状作りに係わることは言うまでもない。
【0026】
原文特許請求の範囲及び本発明の原文明細書において言語及び必要な示唆の表現に起因して文脈上必要とする以外、“comprise”(翻訳文では、「〜を有する」又は「〜を含む」と訳されている場合が多い)という用語又は変形語、例えば“comprises”又は“comprising”という用語は、非排他的に用いられており、即ち、記載した特徴の存在を特定するが、本発明の種々の実施形態における別の特徴の存在又は追加を排除するものではないように用いられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた様々な密度の成形要素から成る積層体を含む、履物用ソール。
【請求項2】
所与の密度の第1の成形要素が異なる密度の第2の成形要素の上に重ね合わされて実質的に平らな積層体を形成する、請求項1記載の履物用ソール。
【請求項3】
前記要素のうちの一方は、高密度ポリウレタンで作られ、他方の要素は、低密度ポリウレタンで作られている、請求項2記載の履物用ソール。
【請求項4】
前記低密度ポリウレタン要素は、前記高密度ポリウレタン要素の上方に位置決めされている、請求項3記載の履物用ソール。
【請求項5】
前記要素は、互いに接合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の履物用ソール。
【請求項6】
前記高密度ポリウレタンは、65度から70度までの範囲にある剛性を有し、前記低密度ポリウレタンは、45度から50度までの範囲にある剛性を有する、請求項3記載の履物用ソール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のソールを有する、ぞうり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図5g】
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【図5h】
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【図5i】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−509206(P2013−509206A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535541(P2012−535541)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000069
【国際公開番号】WO2011/050389
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512112714)
【Fターム(参考)】