説明

石材投入ホッパー

【課題】石材の投入作業における施工位置管理の容易化と作業の効率化を両立させた石材投入ホッパーを提供する。
【解決手段】吊り下げワイヤ26とゲート開閉ワイヤ44という2種類のワイヤを用いて遠隔操作が可能な石材投入ホッパー10を基礎捨石マウンド80の施工箇所に接近させた状態で石材60を投入する。石材投入ホッパー10は、石材60を一時的に貯留するホッパー本体部12と、ホッパー本体部12を吊り下げるための吊り下げワイヤ26を装着する吊り下げワイヤ装着部24と、石材排出口20を開閉する一対の能動ゲート14と受動ゲート16を備えている。能動ゲート14と受動ゲート16はリンク部材50で連結され、ゲート開閉ワイヤ44の操作により互いに離れる方向に回動し、石材排出口20を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎捨石工において捨石となる石材を基礎捨石マウンドの施工箇所に正確に投入するための石材投入ホッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソンやL型ブロックなど大型の構造物を海底に設置するに際しては、先ず海底に基礎捨石マウンドを構築し、その上に構造物が据え付けられている。基礎捨石マウンドの構築には1個が数十キロ〜数百キロにもおよぶ石材が多数必要であり、これらをグラブなどを用いて海底に投入し、所定の高さまで積み上げた後、構造物の据え付け面を平坦に均す作業が行われる。
【0003】
近年の港湾土木工事においては施工箇所の大水深化が顕著である。その結果、工事用船舶と施工箇所との距離が長くなり、グラブなど施工用機材の位置決め精度が低下し、施工位置管理が格段に難しくなってきている。このことは基礎捨石工においても例外ではなく、グラブ等の位置ずれや潮流によって予定のコースから外れた石材が施工箇所の周辺に散乱するという事態を引き起こしている。
【0004】
従来、このような石材の散乱防止を目的とした施工技術が提案されている。例えば特許文献1では、トレミー管と呼ばれる細長い筒状体を船体から海底面まで延ばし、管の中を通して石材を投入する技術が開示されている。また特許文献2では、海底にシュートと呼ばれる一種の枠構造体を設置し、枠内に石材を投入することで位置管理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−247941号公報
【特許文献2】特開平6−49846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来技術によれば施工位置管理は容易になり、石材を施工箇所に正確に投入することが可能であるが、石材投入用のグラブの操作とは別にトレミー管やシュートの移動や操作が必要になるため、作業に要する時間と手間が増え、作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、石材投入作業における施工位置管理の容易化と作業の効率化を両立させた石材投入ホッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2つの用途の異なるワイヤを用いて遠隔操作が可能であって、基礎捨石マウンドの施工箇所に接近させた状態で石材を投入することができる石材投入ホッパーを提供する。
【0009】
石材投入ホッパーは、石材を一時的に貯留するホッパー本体部と、前記ホッパー本体部を吊り下げるための吊り下げワイヤを装着する吊り下げワイヤ装着部と、前記ホッパー本体部の底部の石材排出口を開閉する一対のゲートを備え、前記一対のゲートは、前記ホッパー本体部に対して固定された支点を中心として回動する能動ゲートと、前記能動ゲートとリンク部材で連結され、前記ホッパー本体部に対して固定された他の支点を中心として前記能動ゲートの回動方向とは反対方向に回動する受動ゲートで構成され、前記能動ゲートに回動用の外力を伝達するためのゲート開閉ワイヤを装着するゲート開閉ワイヤ装着部を備えている。
【0010】
吊り下げワイヤを操作することにより石材投入ホッパーを移動させることができ、ゲート開閉ワイヤを操作することにより一対のゲートの開閉動作を制御することができる。従って吊り下げワイヤとゲート開閉ワイヤという2つの用途の異なるワイヤを操作するだけで石材投入ホッパーを施工箇所に接近させ、石材を投入することができる。これにより石材投入作業における施工位置管理の容易化と作業の効率化を図ることができる。
【0011】
吊り下げワイヤとしてクレーンの主ワイヤを使用することができ、ゲート開閉ワイヤとしてクレーンの補助ワイヤを使用することができる。この場合、クレーンの操縦のみで石材投入ホッパーの操作が可能になるため、石材投入作業のさらなる効率化を図ることができる。
【0012】
開閉ワイヤ装着部より低い位置に滑車を設け、ゲート開閉ワイヤ装着部に装着されたゲート開閉ワイヤを滑車に掛け回してもよい。ゲート開閉ワイヤを滑車に掛け回すことにより、能動ゲートに作用する外力の方向を調整することができるようになる。またゲート開閉ワイヤはゲート開閉ワイヤ装着部と滑車の2点で支持されるようになるので操作時の動作が安定する。
【0013】
ホッパー本体部の内側の石材貯留空間を天井部の石材投入口の径より底部の石材排出口の径の方が大きい円錐台の形状にすることにより、石材排出口での石材の目詰まりを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
石材投入ホッパーは2種類のワイヤのみを用いて遠隔操作が可能であり、施工箇所の至近距離から石材を投入することができるため、石材投入ホッパーを基礎捨石工に用いれば石材を施工箇所に正確かつ効率的に投入することができ、工期短縮と工費削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゲートが閉じた状態の石材投入ホッパーの(a)側面図(b)平面図
【図2】ゲートが開いた状態の石材投入ホッパーの(a)側面図(b)平面図
【図3】ゲート開閉時のゲート開閉レバーとリンク部材の動きを示す図
【図4】基礎捨石マウンドに石材を投入する状況を示す図
【図5】クレーンを使用して石材投入ホッパーを操作する状況を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に本発明の実施の形態の石材投入ホッパーの構造について図1乃至図3を参照して説明する。石材投入ホッパー10は、ホッパー本体部12と、能動ゲート14および受動ゲート16からなる開閉式のゲートを主要な構成として備えている。
【0017】
ホッパー本体部12は円錐台形状の中空の構造体であり、天井部は石材を投入する石材投入口18であり、底部は石材を排出する石材排出口20である。ホッパー本体部12の内部空間は、石材投入口18の径より石材排出口20の径の方が大きい円錐台形状の石材貯留空間であり、石材投入口18から投入された石材を一時的に貯留する。
【0018】
ホッパー本体部12の上部には3個の吊り下げワイヤ装着部24が備えられている。石材投入ホッパー10は吊り下げワイヤ装着部24にそれぞれ装着された3本の吊り下げワイヤ26によって吊り下げることができる。
【0019】
ホッパー本体部12の下部には環状の保護枠28が備えられている。保護枠28はホッパー本体部12の下部から水平に延びる2つの連結部材32とホッパー本体部12の上部から斜め下方に延びる3の連結部材34によってホッパー本体部12に固定されている。保護枠28は能動ゲート14と受動ゲート16の外側に位置しており、能動ゲート14と受動ゲート16を他の物体との接触や衝突から保護する。保護枠28には3本の脚部30が備えられている。
【0020】
能動ゲート14と受動ゲート16はホッパー本体部12の下部に装着されている。能動ゲート14は半円形の底板部14aと、底板部14aの弧の部分と連続する側板部14bで構成されている。受動ゲート16は半円形の底板部16aと、底板部16aの弧の部分と連続する側板部16bで構成されており、能動ゲート14と対をなしている。何れの側板部14b、16bともホッパー本体部12の側面に倣う曲面状に形成されている。
【0021】
ホッパー本体部12の側面には支軸36、38が互いに間隔をおいて同じ高さに備えられている。支軸36には能動ゲート14の側板部14bが回動可能に装着されており、支軸38には受動ゲート16の側板部16bが回動可能に装着されている。
【0022】
能動ゲート14と受動ゲート16は外力が作用していない状態では自重によりそれぞれの底板部14a、16aが石材排出口20の下方に位置する姿勢に維持される。このとき底板部14a、16aが互いに押し合いながら密着するように、支軸36、38は能動ゲート14と受動ゲート16の重心の位置より内側に配置されている。
【0023】
能動ゲート14にはゲート開閉レバー40が備えられている。ゲート開閉レバー40は作用桿部40aと、作用桿部40aの両端と能動ゲート14の側板部14bの両側部をそれぞれ連結する伝達桿部40bで構成されている。伝達桿部40bは受動ゲート16を越えてホッパー本体部12の外側まで延びており、その先端に作用桿部40aが連結されている。作用桿部40aにはゲート開閉ワイヤ装着部42が備えられており、ゲート開閉ワイヤ装着部42にはゲート開閉ワイヤ44が装着されている。
【0024】
3本の脚部30のうち1つの脚部30aは鉛直方向においてゲート開閉ワイヤ装着部42と直線上に並ぶ位置に備えられている。脚部30aには滑車46が備えられており、ゲート開閉ワイヤ44が掛け回されている。滑車46に掛け回されたゲート開閉ワイヤ44を上方に引っ張ることにより、ゲート開閉ワイヤ装着部42を通じて作用桿部40aには滑車46のある斜め下方に向かう外力が入力され、伝達桿部40bを通じて能動ゲート14に伝達される。能動ゲート14には支軸36を中心としたモーメントが作用し、ホッパー本体部12の外側に向けて回動する。
【0025】
能動ゲート14と受動ゲート16は側板部14b、16bに装着されたリンク部材50により連結されている。リンク部材50は能動ゲート14側の端部50aが支軸36と略同じ高さに軸支され、受動ゲート16側の端部50bが支軸38より高い位置に軸支されている。ゲート開閉ワイヤ44を通じて作用桿部40aに外力が伝達されると、能動ゲート14には支軸30周りのモーメントが作用し、受動ゲート16から離れる方向に回動し始める。このときリンク部材50は端部50a側から斜め下方に移動し、もう一方の端部50bに連結された受動ゲート16に支軸38を中心としたモーメントを作用させる。この受動ゲート16に作用するモーメントは能動ゲート14に作用するモーメントとは逆方向であり、受動ゲート16は能動ゲート14から離れる方向に回動する。このように能動ゲート14と受動ゲート16が互いに離れる方向に回動することで石材排出口20が開き、ホッパー本体部12に貯留されている石材60が石材排出口20から排出される。
【0026】
次に石材投入ホッパー10の使用方法について図4および図5を参照して説明する。石材投入ホッパー10の3本の吊り下げワイヤ26は、クレーン70の主ワイヤ72の先端に取り付けられたフック74に連結する。同じくゲート開閉ワイヤ44はクレーン70の補助ワイヤ76に連結する。クレーン70の操縦により、石材を貯留した石材投入ホッパー10を海中に沈め、海底に構築された基礎捨石マウンド80の上に設置する。このとき3本の脚部30は基礎捨石マウンド80に接触させる。こうすることで石材投入ホッパー10の姿勢が安定するとともに基礎捨石マウンド80の施工箇所に対する石材排出口20の高さが常に一定となる。
【0027】
石材投入ホッパー10の設置が完了したら、クレーン70の操縦により補助ワイヤ74を巻き上げる。補助ワイヤ76を巻き上げると、これに連結されたゲート開閉ワイヤ44は上方に引っ張られ、能動ゲート14と受動ゲート16は互いに離れる方向に回動する。これにより石材排出口20が開き、石材排出口20から落下した石材60が基礎捨石マウンド80の施工箇所に投入される。
【0028】
石材60の投入を終えると、主ワイヤ72を巻き上げて石材投入ホッパー10を海上に引き上げる。空になったホッパー本体部12には再び石材60を投入し、一杯になったところで再度クレーン70を操縦し、石材投入ホッパー10を基礎捨石マウンド80の上に設置する。このとき設置する箇所は先に石材60を投入した箇所とは別の箇所となる。このように石材投入ホッパー10の設置箇所を変えながら一定量の石材60の投入を行うことにより、全体にわたって略均一な高さの基礎捨石マウンド80を築くことができる。石材投入ホッパー10の操作はクレーン70の操縦のみで行うことができるため、省力化と作業時間短縮が可能であり、効率的な石材投入作業が実現できる。
【0029】
一回の投入作業による基礎捨石マウンド80の層厚は脚部30の長さによって自由に調整することができる。脚部30を一定の長さに調整しておけば石材投入ホッパー10の設置箇所が変っても石材60の高さは常に一定となるので、基礎捨石マウンド80の層厚管理が容易である。
【0030】
また石材60の投入距離は脚部30の長さと同程度と極めて短いため、施工箇所に対する位置ずれ、散乱等はほとんど問題にはならず、正確な位置に石材60を投入することができる。従って投入後の補修作業の必要性はほとんどなく、この点からも省力化と作業時間短縮による効率的な石材投入作業の実現が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
10 石材投入ホッパー
12 ホッパー本体部
14 能動ゲート
16 受動ゲート
18 石材投入口
20 石材排出口
22 石材貯留空間
24 吊り下げワイヤ装着部
26 吊り下げワイヤ
30、30a 脚部
36、38 支軸
40 ゲート開閉レバー
42 ゲート開閉ワイヤ装着部
44 ゲート開閉ワイヤ
46 滑車
50 リンク部材
60 石材
70 クレーン
72 主ワイヤ
76 補助ワイヤ
80 基礎捨石マウンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石材を一時的に貯留するホッパー本体部と、前記ホッパー本体部を吊り下げるための吊り下げワイヤを装着する吊り下げワイヤ装着部と、前記ホッパー本体部の底部の石材排出口を開閉する一対のゲートを備え、
前記一対のゲートは、前記ホッパー本体部に対して固定された支点を中心として回動する能動ゲートと、前記能動ゲートとリンク部材で連結され、前記ホッパー本体部に対して固定された他の支点を中心として前記能動ゲートの回動方向とは反対方向に回動する受動ゲートで構成され、
前記能動ゲートに回動用の外力を伝達するためのゲート開閉ワイヤを装着するゲート開閉ワイヤ装着部を備えた、石材投入ホッパー。
【請求項2】
前記ゲート開閉ワイヤ装着部に装着された前記ゲート開閉ワイヤを前記ゲート開閉ワイヤ装着部より低い位置で掛け回すための滑車を備えた、請求項1に記載の石材投入ホッパー。
【請求項3】
前記ホッパー本体部の内側の石材貯留空間が、天井部の石材投入口の径より底部の石材排出口の径の方が大きい円錐台の形状である、請求項1または2に記載の石材投入ホッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132163(P2012−132163A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283235(P2010−283235)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(510290072)株式会社池間組 (4)
【Fターム(参考)】