説明

石橋の欄干補強構造

【課題】既存の石橋の欄干を外観を損ねることなく補強し、欄干の崩壊を防止すること。
【解決手段】本発明では、石橋(1)の上部に基礎石(10)を設置するとともに、基礎石(10)の上部に柱(11)を間隔をあけて設置し、柱(11)の上端部間に笠(12)を設置した石橋(1)の欄干(2)を補強するための石橋(1)の欄干補強構造において、基礎石(10)及び柱(11)の内部に補強体(13)を貫通状に設け、補強体(13)の下端部を石橋(1)の内部で固定するとともに、補強体(13)の上端部を笠(12)の内部で固定することにした。また、前記基礎石(10)と笠(12)とにホゾ(28,29)を形成し、ホゾ(28,29)に柱(11)の上下端部を嵌入することにした。さらに、前記石橋(1)を構成する円弧状に積み上げた複数の拱環石(6)の上面側に支持体(19)を張設するとともに、支持体(19)に前記補強体(13)の下端部を固定することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石橋の上部に基礎石を設置するとともに、基礎石の上部に柱を間隔をあけて設置し、柱の上端部間に笠を設置した石橋の欄干を補強するための石橋の欄干補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから河川に架けられる橋として、特許文献1に開示されているように、石を積み上げて形成した石橋が建造されている。この石橋には、落下防止のために左右縁部に欄干が設けられている。
【0003】
通常、石橋に設けられた欄干は、石橋の上部に基礎石を載置するとともに、基礎石の上部に石製の柱を間隔をあけて載置し、柱の上端部間に石製の笠を載置した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−62609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の石橋の欄干にあっては、石橋の上部に基礎石を設置するとともに、基礎石の上部に柱を間隔をあけて載置し、柱の上端部間に笠を載置した構造であったために、長期間の使用の間に振動や劣化などの影響で欄干が崩壊してしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明者は、崩壊のおそれのある既存の石橋の欄干を外観を損ねることなく補強するための構造について鋭意研究を重ね、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に係る本発明では、石橋の上部に基礎石を設置するとともに、基礎石の上部に柱を間隔をあけて設置し、柱の上端部間に笠を設置した石橋の欄干を補強するための石橋の欄干補強構造において、基礎石及び柱の内部に補強体を貫通状に設け、補強体の下端部を石橋の内部で固定するとともに、補強体の上端部を笠の内部で固定することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記基礎石と笠とにホゾを形成し、ホゾに柱の上下端部を嵌入することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記石橋を構成する円弧状に積み上げた複数の拱環石の上面側に支持体を張設するとともに、支持体に前記補強体の下端部を固定することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、石橋の上部に基礎石を設置するとともに、基礎石の上部に柱を間隔をあけて設置し、柱の上端部間に笠を設置した石橋の欄干を補強するための石橋の欄干補強構造において、基礎石及び柱の内部に補強体を貫通状に設け、補強体の下端部を石橋の内部で固定するとともに、補強体の上端部を笠の内部で固定することにしているために、既存の石橋の欄干を外観を損ねることなく補強することができ、欄干の崩壊を防止することができる。
【0012】
特に、基礎石と笠とにホゾを形成し、ホゾに柱の上下端部を嵌入することにした場合には、欄干の強度を増大させることができる。
【0013】
また、石橋を構成する円弧状に積み上げた複数の拱環石の上面側に支持体を張設するとともに、支持体に補強体の下端部を固定することにした場合には、拱環石に下側から突き上げる力が作用しても張設された支持体で拱環石が上方に向けてずれるのを防止することができ、石橋の崩壊をも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る石橋及び欄干を示す側面図。
【図2】同側面一部切欠断面図。
【図3】同部分拡大側面断面図。
【図4】同部分拡大正面断面図。
【図5】同部分拡大正面断面図(敷石に設けた支持体で固定する場合)。
【図6】同部分拡大正面断面図(アンカーで固定する場合)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る石橋の欄干補強構造の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0016】
本発明は、図1に示すように、石橋1の左右縁上部に設けられた欄干2を補強する構造に関するものである。
【0017】
石橋1は、従来より、地盤3に一対の土台4,5を形成し、土台4,5の間に複数の拱環石6を円弧状に積み上げてアーチ7を形成し、アーチ7の左右縁上部に壁石8を積み上げるとともに、左右の壁石8の間に中詰め土砂を詰め込み、上端部に敷石9を平坦状に載置している。
【0018】
欄干2は、石橋1の敷石9の左右縁上部に基礎石10を敷設するとともに、基礎石10の上部に前後に間隔をあけて複数の角柱状の石製の柱11を載設し、柱11の上端部間に石製の笠12を架設している。
【0019】
そして、本発明では、図2〜図4に示すように、基礎石10及び柱11の内部に補強体13を貫通状に設け、補強体13の下端部を石橋1の内部で固定するとともに、補強体13の上端部を笠12の内部で固定している。
【0020】
補強体13は、棒状の本体部14の下端部に末広がり状の固定部15を形成するとともに、固定部15に貫通孔16を形成する一方、本体部14の上端部に水平円板状に張出した留部17を着脱自在に形成している。なお、留部17は、本体部14に螺着したナットを用いることもできる。
【0021】
この補強体13は、固定部15を石橋1の内部で固定している。
【0022】
この固定方法としては様々な方法が考えられるが、図2〜図4に示す固定方法では、石橋1のアーチ7を構成する複数の拱環石6の上面側に連続する一条の溝18を形成し、溝18に円弧棒状の支持体19を収容し、支持体19を拱環石6(アーチ7)の上面側を下方に向けて付勢した状態で張設し、支持体19の端部を土台4,5の内部のアーチ7の端部において支持板20,20で固定し、その支持体19を補強体13の固定部15に形成した貫通孔16に挿通させることで、補強体13の固定部15を石橋1の内部で固定している。
【0023】
また、図5に示す固定方法では、石橋1の敷石9の上面側に一条の溝21を形成し、溝21に直線棒状の支持体22を収容し、支持体22を敷石9の端部で固定し、その支持体22を補強体13の固定部15に形成した貫通孔16に挿通させることで、補強体13の固定部15を石橋1の内部で固定している。
【0024】
また、図6に示す固定方法では、補強体13の下端部にJ字型のアンカー形状の固定部23を形成し、この固定部23を敷石9の内部に直接固定することで、補強体13の固定部23を石橋1の内部で固定している。
【0025】
さらに、補強体13は、図2〜図4に示すように、敷石9と基礎石10と柱11にそれぞれ形成した貫通状の挿通孔24,25,26に本体部14を挿通するとともに、隣接する笠12の端部同士に嵌合状に形成した断面下向き凸型の段付き穴27に留部17を埋設しており、補強体13の周囲の空間をボンドやセメントなどの接着剤(図示省略)で充填している。
【0026】
ここで、基礎石10の上端部と隣接する笠12の端部下側には、凹状のホゾ28,29がそれぞれ形成されており、柱11は、上下端部をホゾ28,29に嵌入させている。
【0027】
そして、石橋1の欄干2を補強する際には、補強体13の下端部を石橋1の内部で固定した後に、基礎石10の挿通孔25に補強体13の本体部14を挿通させて基礎石10を石橋1の敷石9の上部に設置し、その後、柱11の挿通孔26に補強体13の本体部14を挿通させるとともに柱11の下端部を基礎石10の上端部に形成したホゾ28に嵌入させて柱11を基礎石10の上部に設置し、その後、補強体13の上端部に留部17を取付け、柱11の挿通孔26から接着剤を注入するとともに、柱11の上端部に笠12のホゾ29を嵌入させながら柱11の上端部に隣接する一対の笠12を段付き穴27の内部まで塗布した接着剤で固定する。
【0028】
以上に説明したように、本発明では、基礎石10及び柱11の内部に補強体13を貫通状に設け、補強体13の下端部を石橋1の内部で固定するとともに、補強体13の上端部を笠12の内部で固定することにしている。
【0029】
そのため、本発明では、既存の石橋1の欄干2を外観を損ねることなく補強することができ、欄干2の崩壊を防止することができる。
【0030】
また、本発明では、基礎石10と笠12とにホゾ28,29を形成し、ホゾ28,29に柱11の上下端部を嵌入することにしているために、欄干2の強度を増大させることができる。
【0031】
また、本発明では、石橋1を構成する円弧状に積み上げた複数の拱環石6の上面側に支持体19を張設するとともに、支持体19に補強体13の下端部を固定することにしているために、拱環石6に下側から突き上げる力が作用しても張設された支持体19で拱環石6が上方に向けてずれるのを防止することができ、石橋1の崩壊をも防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 石橋 2 欄干
3 地盤 4,5 土台
6 拱環石 7 アーチ
8 壁石 9 敷石
10 基礎石 11 柱
12 笠 13 補強体
14 本体部 15 固定部
16 貫通孔 17 留部
18 溝 19 支持体
20 支持板 21 溝
22 支持体 23 固定部
24,25,26 挿通孔 27 段付き穴
28,29 ホゾ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石橋の上部に基礎石を設置するとともに、基礎石の上部に柱を間隔をあけて設置し、柱の上端部間に笠を設置した石橋の欄干を補強するための石橋の欄干補強構造において、
基礎石及び柱の内部に補強体を貫通状に設け、補強体の下端部を石橋の内部で固定するとともに、補強体の上端部を笠の内部で固定したことを特徴とする石橋の欄干補強構造。
【請求項2】
前記基礎石と笠とにホゾを形成し、ホゾに柱の上下端部を嵌入したことを特徴とする請求項1に記載の石橋の欄干補強構造。
【請求項3】
前記石橋を構成する円弧状に積み上げた複数の拱環石の上面側に支持体を張設するとともに、支持体に前記補強体の下端部を固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の石橋の欄干補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185233(P2010−185233A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30685(P2009−30685)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(509044132)有限会社吉本本家石材店 (1)
【Fターム(参考)】