説明

石油分解能を有する新規微生物

【課題】多環芳香族化合物などの石油成分によって汚染された海水や土壌を比較的短時間で効率的に浄化できる技術を提供する。
【解決手段】フサリウム属に属するF092株(NITE P−795)を用いて石油中の多環芳香族化合物などを分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油分解能を有する新規微生物、および当該微生物を用いて石油汚染環境を浄化する方法に関するものである。本発明の新規微生物は、石油に汚染された海洋および土壌のいずれの環境下であっても、石油中の難分解性物質である多環芳香族化合物(PAHs)を分解可能であり、特に、海洋に流出または漏出するなどした多環芳香族化合物の分解に好ましく用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、石油の汚染による被害が深刻化しており、原油タンカーの座礁事故などによる海洋汚染;石油の精製工場や備蓄基地、コールタールの製造工場や石炭の処理工場などの敷地内や周辺部における土壌汚染などが挙げられる。石油や原油には低沸点化合物や比較的親水性の高い化合物など、自然に分解され易い成分も含まれているが、多環芳香族化合物(PAHs)など非常に分解され難い成分も含まれている。多環芳香族成分は長く環境に残留して生物に悪影響を与えるので問題となっている。
【0003】
難分解性の石油成分に汚染された環境浄化方法としては、例えば、活性炭等を用いた吸着方法、加熱による熱分解法、汚染土壌の不溶化処理法など、様々な化学的または物理的な処理方法がある。しかし近年では、より穏和な条件で安価に実施でき、省エネルギーの観点からも優れている微生物による処理方法(バイオレメディエーション)の開発が盛んである。
【0004】
例えば特許文献1には、液体環境および土壌環境の双方で多環芳香族化合物を効率的に分解できる微生物として、Polyporales目に属するTY−8株及びHapalopilaceae科に属するTY−16株が開示されている。上記文献には、これらの微生物が液体培地にて多環芳香族化合物を分解できることは開示されているが、海水中に含まれる当該化合物を分解できることまでは実証していない。
【0005】
また、非特許文献1〜3には、微生物を用いて土壌中の多環芳香族化合物を分解する方法が開示されている。このうち非特許文献1と2には、Arthrobacter属菌やAcidovorax属菌などの細菌によって汚染土壌の抽出物や汚染土壌の懸濁液を処理する方法が開示され、また、非特許文献3には、Sphingomonas属菌等によって石油成分を浄化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−46048号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H.I. ATAGANAら,ウォーター・エアー・アンド・ソイルポリューション(Water, Air, and Soil Pollution),第141巻,第233〜246頁(2002年)
【非特許文献2】Mikael Erikssonら,アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(Applied and Environmental Microbiology),第69巻、第1号,第275〜284頁(2003年)
【非特許文献3】Marc Vinasら,アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(Applied and Environmental Microbiology),第71巻、第11号,第7008〜7018頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように微生物を用いて石油中の多環芳香族化合物を分解し、石油汚染環境を浄化する方法は幾つか開示されている。しかし、例えば非特許文献1〜3は、土壌汚染を主に浄化する方法であり、海洋汚染については特に言及されていない。また、非特許文献1および2は、石油成分の抽出や汚染土壌のスラリー化といった前処理を前提とした浄化処理技術であり、石油成分などにより汚染された土壌の範囲や量が莫大であることを考慮すると、実用性に乏しい。また、非特許文献3は、汚染土壌を固体状態のままでも浄化できる技術であるが、多環芳香族化合物を十分に浄化できるまで約6ヶ月以上の長時間を有するなど、分解効率に劣っている。一方、特許文献1には、海水中の多環芳香族化合物を分解した実施例は開示されていない。
【0009】
また、上記文献のいずれの微生物も、海水中で成育可能であることは開示されていない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、難分解性化合物である多環芳香族化合物などの石油成分によって汚染された海洋または土壌を、比較的短時間で効率的に浄化できる新規微生物を用いた浄化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し得た本発明の新規微生物は、石油分解能を有するフサリウム属に属するF092株(NITE P−795)である。上記微生物は、特に多環芳香族化合物の分解能に優れており、石油汚染環境の浄化剤として極めて有用である。
【0012】
また、上記課題を解決し得た本発明の石油分解剤組成物(石油汚染環境浄化剤組成物)は、上記の微生物、および基材を含有しているところに要旨を有するものである。
【0013】
また、上記課題を解決し得た本発明に係る石油汚染環境の浄化方法は、上記の微生物または上記の石油分解剤組成物を、石油汚染環境に添加するところに要旨を有するものである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、上記汚染環境は海水または土壌である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、上記の浄化方法は、上記微生物の栄養源および/または界面活性剤を更に添加するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の新規微生物F092株は、多環芳香族化合物などの石油成分に汚染された海洋や土壌(石油汚染環境)を、スラリー化したり石油成分を抽出したりせずとも比較的短時間で浄化することができる。また、本発明の新規微生物F092株は、海水中で成育可能であるため、海水などに流出または漏出した石油(代表的には原油や重油など)成分をその場で分解・浄化することができる。従って、本発明によれば、原油タンカーの座礁事故などによる海洋汚染や、石油を用いる工場の跡地などの土壌汚染などのように、膨大かつ広大な環境汚染を効率的に浄化処理できるものとして、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、多環芳香族化合物などに代表される石油成分中の難分解性物質を効率的に分解して石油汚染環境を浄化し得る新規微生物を検索してきた。その結果、Fusarium(フサリウム)属に属するものであり、石油成分の分解能(すなわち、石油汚染環境の浄化能)に極めて優れる菌株であるF092株を見出し、本発明を完成した。
【0018】
この新規微生物は、後記する実施例に示すように、海水中で成育可能であり、しかも短時間で多環芳香族化合物などの難分解性物質を分解できるなど、海洋環境汚染の浄化に特に適している。また、この新規微生物を用いれば、前述した非特許文献に記載された技術のように、石油汚染土壌をスラリー化したり汚染物質を抽出するといった前処理を行なう必要はなく、石油汚染土壌へ当該新規微生物を散布するのみで土壌を浄化することができる。
【0019】
まず、本発明の新規微生物株F092株について、詳しく説明する。
【0020】
上記のF092株は、下記の通り寄託機関に寄託されている。
(i)寄託機関の名称およびあて名
名称:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8
(ii)寄託日:2009年8月13日
(iii)受領番号:NITE AP−795
(iv)受託番号:NITE P−795
【0021】
F092株を馬鈴薯−グルコース(ポテトグルコース)寒天培地(滅菌前のpH5.6、121℃で20分間滅菌)にて25℃で5〜7日間培養し、光学顕微鏡を用いて観察した形態的特徴は、以下の通りである。即ち、白色系のコロニーを形成し、フィアロ型の多細胞性で紡錘形〜三日月形の大分生子(短径×長径が、おおむね、1〜2μm×20〜25μm程度)および1細胞性の小分生子(短径×直径が、おおむね、1〜2μm×3〜4μm程度)を形成する。以上の形態的特徴から、下記参考文献に照らし、F092株をFusarium属に属する菌と同定した。
渡邊恒雄著「土壌糸状菌−培養株の探索と形態―」ソフトサイエンス社、第26〜27頁、および第221〜225頁(1993年)
【0022】
F092株の最適成育条件はpH5.5〜8.6、温度25〜30℃であり、成育の範囲はpH4〜9、温度10〜35℃である。
【0023】
F092株を上記の馬鈴薯−グルコース液体培地で培養したところ、培地には1,2−ジオキシゲナーゼ活性、2,3−ジオキシゲナーゼ活性、ラッカーゼ(Lac)活性、およびマンガンベルオキシダーゼ(MnP)活性が認められた。よって、F092株による石油成分の分解能には、これら酵素のうち少なくとも1つが関与している可能性がある。
【0024】
F092株を20℃、25℃、30℃および35℃で培養したところ、いずれの温度でも成育したが、最も良好に成育したのは30℃であった。よって、F092株を培養する際の温度やF092株により石油成分を分解する際の温度は、20℃以上、35℃以下程度が好適である。
【0025】
本発明のF092株は、石油成分の分解能に優れているが、特に、置換基を有さず極めて分解され難い多環芳香族化合物であるクリセンなどを効率良く分解できることが実験的に確認された(後記する実施例を参照)。また、本発明者らによる知見によれば、F092株は1,2−ジオキシゲナーゼなどを活発に発現する。F092株は、これら酵素によりクリセンを酸化しつつその炭素−炭素結合を切断していき、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有するベンゼン化合物に導き、最終的に二酸化炭素と水まで分解すると推察される。よってF092株は、クリセンと同様の多環芳香族化合物であるテンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、フルオレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ベンゾピレン、ナフタセン、ペリレンなども分解できると考えられる。またF092株は、ベンゼン、アルキルフェノール類、ハロゲン化フェノール類、ビスフェノール類、ダイオキシン類といった化合物も同様に分解し得ると考えられる。
【0026】
なお、F092株が分解し得る石油成分は、原油や石油に含まれ得るものであれば原油由来のものや石油由来のものに限定されない。例えばクリセンなどの多環芳香族化合物は山火事によっても発生する。その一方で、かかる多環芳香族化合物は自然には分解され難い。よって、本発明で処理すべき石油成分は、原油や石油に含まれる成分であれば、その起源は問わないものとする。なお、一般的に精製前の石油を特に原油というが、本発明では石油と原油を特に区別しないものとする。原油には、原油を用いた石油製品(例えば、重油、ガソリン、灯油、軽油など)も含まれる。後記する実施例ではC重油を用いた。C重油は、動粘度によって分類された3種の重油であり、軽油のほか90%以上が残渣油である。
【0027】
本発明のF092株は、石油成分中の多環芳香族化合物を効率よく分解できるため、海水汚染環境、土壌汚染環境の別を問わず、石油汚染環境の浄化処理に好適に用いられる。
【0028】
特に本発明のF092株は、海水中で成育可能であり、海水汚染環境の浄化に好適に用いられる。本発明によれば、上述した種々の石油成分を高濃度に含む汚染海水を効率よく分解することができる。本発明によって処理可能な石油汚染海水の濃度は、F092株を、好ましくは後記する栄養源や界面活性剤などと併用したり、撹拌培養を行ったり、当該菌株の培養期間を長くするなどして高めることができ、おおむね、15,000〜50,000ppm程度の汚染海水を処理することができる。
【0029】
また、本発明のF092株は、土壌汚染環境の浄化にも好適に用いられる。本発明によれば、従来のように石油汚染土壌をスラリー化したり汚染土壌中の石油成分を抽出しなくても、石油汚染土壌へF092株を添加してF092株と石油汚染土壌を接触させるのみで石油成分を分解することができる(後記する実施例を参照)。
【0030】
しかも本発明によれば、上述した種々の石油成分を高濃度に含む汚染土壌を効率よく分解することができる。本発明によって処理可能な石油汚染土壌の濃度は、F092株を、好ましくは後記する栄養源や界面活性剤などと併用したり、当該菌株式の培養期間を長くするなどして高めることができ、おおむね、15,000〜50,000ppm程度の汚染土壌を処理することができる。
【0031】
F092株と石油汚染土壌を接触させる方法は常法に従えばよい。例えば、F092株を液体培地で培養した場合には、その培養液を石油汚染土壌に散布すればよい。
【0032】
本発明のF092株は、麦芽エキス培地、ポテトグルコース培地などの液体培地を用いて培養することが好ましい。実施例に用いた麦芽エキス培地およびポテトグルコース培地の組成は、後記する実施例に示すとおりである。なお、実施例に用いたポテトグルコース培地の組成は、通常用いられるポテトグルコース培地とは若干異なり、通常培地に比べ、ポテトの量が2.5倍(200g/L→500g/L)であり、酵母エキス(5g/L)を更に加えている点で、通常組成のものと相違している。また、当該液体培地のpHは、F092株の至適pHに合わせて5〜8.5程度に調整することが好ましい。
【0033】
上述したように、F092株は石油成分を高度且つ短時間に効率よく分解できるため、石油分解剤若しくは石油汚染環境浄化剤として用いることができる。具体的には、F092株をそのまま、石油分解剤として用いても良いし、F092株を含む液体培地を、石油分解剤として用いても良い。あるいは、栄養源や界面活性剤など(後記する。)を含むものであってもよい。あるいは、F092株に、微生物を含む処理剤に通常添加される添加剤(代表的には保存剤など)を添加したものを、石油分解剤として用いることもできる。
【0034】
上記の石油分解剤は、液体培地などでF092株を十分に成育させたものであってもよいし、或いは成育させたものを冷蔵保存したものであってもよい。
【0035】
次に、本発明の石油分解剤組成物について詳しく説明する。本発明の石油分解剤組成物は、上記のF092株、および基材を含有している。ここで、上記のF092株は、添加剤を更に含む石油分解剤として含有されていても良い。
【0036】
本発明に用いられる基材は特に限定されず、微生物の担持に通常用いられるものであって、石油成分を吸収できるものなどが好適に用いられる。具体的には、例えば、紙、繊維、布帛、フィルター、合成繊維などの紙・繊維製品類;木材チップなどの建材製品;フィルム、プラスチックなどの素材などが挙げられる。例えばプラスチックとして、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などが代表的に例示される。上記基材のなかでも、微生物によって分解される生分解性プラスチックや生分解性繊維などの生分解性基材が好ましく用いられる。生分解性基材は、多環芳香族化合物などの石油成分を吸収できるだけでなく、石油成分の浄化処理後は、当該生分解性基材自体も分解されるからである。生分解性基材には、原料により、生物資源(バイオマス)由来のバイオ基材と、石油由来の石油基材とに大別されるが、本発明では、いずれも使用可能である。バイオ基材の代表例としては、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、変性ポリビニルアルコール、カゼインなどが挙げられ、石油基材の代表例としては、例えば、PET共重合体などが挙げられる。
【0037】
本発明のF092株を上記基材に担持し、成形物(製品)を得る方法は特に限定されず、基材の種類に応じて、通常用いられる方法を適宜採用すれば良い。例えば、基材を製品に加工した後、F092株含有溶液を当該製品の表面に被覆したり、当該製品に浸漬するなどの方法が挙げられる。あるいは、製品に加工する前に、基材とF092株含有溶液などを混合するなどの方法を採用しても良い。
【0038】
基材に担持するF092株(培養物)の配合量は、使用する基材の種類などに応じ、適宜適切に制御すればよい。例えば、ポリプロピレンなどのプラスチック素材やポリ乳酸などの生分解性基材を用いる場合、基材全体100質量部に対し、F092株を培養した培養物、例えば木粉などで培養した培養物を、おおむね、5〜15質量部の比率で配合することが好ましい。
【0039】
次に、本発明に係る石油汚染環境の浄化方法について詳しく説明する。本発明の浄化方法は、上記のF092株または上記の石油分解剤組成物を、石油に汚染された海水または土壌の石油汚染環境に添加するところに特徴がある。
【0040】
F092株を石油に汚染された海水や土壌などの石油汚染環境に添加する場合には、F092株の栄養源若しくは界面活性剤、またはこれらの混合物を添加することが好ましい。栄養源はF092株の成育を活発化し、ひいては石油成分の分解能を活性化することができる。また、界面活性剤は、脂溶性が高く親水性の低い石油成分を固体状の土壌などから脱離し易くしてF092株による分解を促進することによって、より効率的な浄化処理が可能になると考えられる。
【0041】
F092株の栄養源としては、例えばディフコ製の麦芽エキスなどのようにフサリウム属の栄養源として市販されているものを用いることができる。あるいは、グルコースなどの炭素源;ポリペプトンなどの窒素源;マグネシウム塩やマンガン塩などの微量元素源;クエン酸などのpH調整剤などを適宜選択して用いてもよい。
【0042】
栄養源の添加量は、F092株の量などに応じて適宜調整すればよいが、一般的には栄養源の量は多いほどF092株の成育は良好であり、石油成分の分解効率は向上する。その一方で、炭素源や窒素源などの栄養源が多過ぎると環境への悪影響が懸念される。以上を考慮して、添加する栄養源の量は、処理対象である石油汚染海水や石油汚染土壌100質量部に対して、おおむね、5〜15質量部の比率にすることが好ましい。
【0043】
使用する界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤など特に制限されないが、F092株への悪影響が少ないことから非イオン界面活性剤が好適である。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。より具体的には、Tween20、Tween60、Tween80を用いることができる。
【0044】
界面活性剤は、F092株の成育環境に対する石油成分の分散性を向上させる他、炭素源となるなどF092株の成育を促進する可能性もある。しかし、界面活性剤の量が多過ぎるとかえってF092株の成育に悪影響を与え得る。そこで、界面活性剤の添加量は、処理すべき石油汚染環境100質量部に対し、おおむね、0.05質量部以上、1.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上、0.75質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
培養に当たり、撹拌の有無は特に限定されず、静置培養および撹拌培養のいずれも採用することができる。撹拌培養時の撹拌速度は、処理対象である原油の種類や濃度、量などによっても相違するが、F092株の分解能を有効に発揮させるためには、おおむね、50〜150rpmの範囲内に制御して行なうことが好ましい。
【0046】
処理対象である石油汚染海水や石油汚染土壌は、採水または採掘した上で容器に挿入し、F092株や栄養源などを添加し、F092株が良好に成育できるように温度や湿度を調整してもよい。しかし、海水汚染や土壌汚染は広範囲に及ぶことが多く、処理すべき海水や土壌を逐一採水または採掘すると、かえって処理効率が低下し得る。よって、石油汚染海水または石油汚染土壌に、そのままF092株を添加してもよい。なお、F092株は、おおむね、25℃で十分に成育することから、日本国内であれば、F092株は温度調節せずとも常温で石油成分を分解できると考えられる。但し、湿度は比較的高く保つべきであるので、適時水を散布することなどが好ましい。
【0047】
F092株の添加量は、汚染海水や汚染土壌の汚染状態などに応じて適宜調整すればよい。
【0048】
本発明者らによる知見によれば、F092株による石油汚染海水や石油汚染土壌の処理中は、遮光した方が効率が良い。よって、石油汚染海水や石油汚染土壌にF092株を添加した後は、ブルーシート等で被覆するなどして照射光量を抑えることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適切に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
実施例1:F092株の単離およびスクリーニング試験
まず、下記組成の麦芽エキス(ME)寒天培地10mLを用意する。本実施例では、蒸留水の代わりに人工海水(NaCl濃度3.5質量%、pH8.2)を用いてME寒天培地を作製した。
ME寒天培地:麦芽エキス(20g/L)、グルコース(20g/L)、
ポリペプトン(1g/L)、寒天(20g/L)
【0051】
次に、上記のME寒天培地10mLに、PAHsの一種であるクリセン溶液(0.25%のTween80を含むジメチルホルムアミドの1%クリセン溶液)を0.1mL加え、スクリーニング用培地とした。
【0052】
このスクリーニング培地に、愛媛大学農学部構内で採取された土壌とキノコ42種;松山市内で採取された土壌とキノコ57種;松山市郊外で採取された土壌とキノコ12種の合計111種の試料を接種し、暗所にて、25℃で7日間静置培養した。当該培地で成育する菌のなかから、成育速度が最も速い(クリセンの分解率が最も高い)菌として、本発明の新規微生物F092菌株を選択した。この新規微生物F092株は、愛媛大学農学部構内で採取された土壌から選抜されたものであった。なお、成育速度(分解率)は、上記のクリセン含有ME培地で培養した菌の成育直径(B)と、クリセンを含有しないME寒天培地で上記と同様にして培養した菌の成育直径(A)を測定し、Aに対するBの比率(B/A×100)を算出したものであり、F092株の成育速度は約96%であった。
【0053】
なお、F092株による高いクリセン分解能は、上記のクリセン含有ME寒天培地において、人工海水の代わりに蒸留水を加えて作製したME寒天培地(pH4.7)を用いて上記と同様にして培養を行なっても認められ、試料中、最も高い分解率(約96%)を有していた。
【0054】
以上の実験結果により、F092株は、海水で作製したME寒天培地、および蒸留水で作製したME寒天培地のいずれの条件下においても極めて高い成育速度で成育し、クリセンを高度に分解できることが分かった。すなわち、F092株は、海水中の多環芳香族化合物を高度に分解できる微生物として極めて有用であることが実証された。
【0055】
実施例2
本実施例では、下記組成のクリセン含有ME液体培地でF092株を15日および30日間培養した後、培養液中に残存しているクリセンを定量し、F092株による、ME液体培地中のクリセンの分解率を測定した。
【0056】
詳細には、まず、下記組成の麦芽エキス(ME)液体培地20mLを用意する。本実施例では、蒸留水の代わりに人工海水(NaCl濃度3.5質量%、pH8.2)を用いてME液体培地を作製した。
ME液体培地:麦芽エキス(20g/L)、グルコース(20g/L)、
ポリペプトン(1g/L)
【0057】
次に、上記のME液体培地20mLに、クリセン溶液(0.25%のTween80を含むジメチルホルムアミドの1.14%クリセン溶液)を0.4mL添加し、クリセン含有ME液体培地を得た。
【0058】
比較のため、上記のクリセン含有ME液体培地に対し、界面活性剤であるTween80を表1に記載の比率(体積比率)で添加した界面活性剤入りクリセン含有ME液体培地を用意した。同様に、上記のクリセン含有ME液体培地に対し、窒素栄養源であるポリペプトンを表1に記載の比率(体積比率)で添加したポリペプトン入りクリセン含有ME液体培地を用意した。
【0059】
また、参考のため、上記のそれぞれのME液体培地について、人工海水の代わりに蒸留水を加えたクリセン含有ME液体培地(pH4.7)を用意した。
【0060】
次いで、上記のようにして作製した合計6種類のクリセン含有ME液体培地中に、F092株を接種し、暗所にて、25℃で15日間または30日間静置培養した後、後記する方法でクリセンの分解率を測定した。
【0061】
更に培養条件の比較のため、上記のようにして作製したクリセン含有ME液体培地(界面活性剤およびポリペプトンの添加なし)にて撹拌培養(撹拌速度80rpm)を行ない、後記する方法クリセン分解率を測定した。
【0062】
(クリセン分解率の測定)
培養開始から15日および30日間経過後にろ過により、ろ液と残渣(菌体)に分けた。ろ液は酢酸エチルで抽出した。残渣は酢酸エチルで16時間ソックスレー抽出した。それぞれの抽出液を減圧濃縮後、合併して内部標準である4−クロロビフェニールを加え、シリカゲルカラムで精製した。ジクロロメタンで溶出する画分を濃縮後、GC−MSにより残留クリセンを定量した。GC−MSの条件は、以下の通りである。
カラム:ジーエルサイエンス社製のTC−1(長さ30m×内径0.25mm)
キャリヤーガス:ヘリウム
昇温条件:80℃で2分間保持後→150℃まで20℃/分で昇温→300℃まで
25℃/分で昇温→300℃で10分間保持
カラム流速: 1.5mL/分
注入口温度: 260℃
イオン化電圧: 70eV
【0063】
これらの結果を表1(人工海水)および表2(蒸留水)に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
これらの表より、F092株は、人工海水または蒸留水で作製したME液体培地のいずれにおいても高い成育速度で成育し、クリセンを高度に分解できることが分かった。また、F092株によるクリセン分解作用は、ME液体培地中栄養源であるポリペプトンや界面活性剤を添加したり、撹拌下で培養することにより、一層促進されることも分かった。
【0067】
実施例3
本実施例では、原油含有ポテトグルコース(PG)寒天培地中にF092株を接種し、培養後の菌糸の成育直径(cm)を測定した。
【0068】
詳細には、まず、人工海水または蒸留水を用いて、下記組成のPG寒天培地を作製した。
PG寒天培地:ポテト(500g/L)、グルコース(20g/L)、
酵母エキス(5g/L)、寒天(20g/L)
【0069】
上記の各PG寒天培地中(10mL)に、溶媒(ヘキサン1mL)に溶解した原油を濃度が5000〜15000ppmになるように加えた後、F092株を接種し、暗所にて25℃で培養した。F092株は同心円状に成育するので、培養後の菌糸の直径(cm)を2日毎に測定した。本実施例で用いた原油は、インドネシアから輸入した原油(太陽石油から提供)であり、その組成は、以下のとおりである。
炭化水素(alkane fraction)62%
芳香族化合物6%
窒素、硫黄および酸素を含む化合物(NSO)7%
アスファルト(asphaltene)25%
【0070】
これらの結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3より、F092株は、原油中および海水を含む原油中のいずれにおいても成育可能であり、且つ、5000〜15000ppmの広範囲の濃度域において成育することが分かった。よって、本発明のF092株は、海水中で成育可能であり、石油で汚染された海水中の多環芳香族化合物を高度に分解できる微生物として極めて有用であることが分かった。
【0073】
実施例4
本実施例では、F092株と基材(生分解性を有するポリプロピレン繊維を使用)を用いて海水中の石油を分解浄化することを模擬して、以下の実験を行なった。本実施例では、石油成分としてC重油を用いた。
【0074】
まず、人工海水(NaCl濃度3.5質量%、pH8.2)を用いて作製した実施例3に記載のPG寒天培地20mLを、三角フラスコに加えた。
【0075】
次に、ポリプロピレン繊維(東レ・ファインケミカル社製のポリプロピレン繊維シートを使用)を2cm×2cmのサイズにカットし、C重油を吸収させた。クリーンベンチ内で一晩放置し、溶媒を除去した。C重油の濃度は1000ppmである。本実施例では、C重油として、重油規格(JISK2205)の3種1号に相当するC重油であり、太陽石油株式会社製のC重油を用いた。上記C重油の組成は、以下のとおりである。
炭化水素(alkane fraction)44%
芳香族化合物41%
窒素、硫黄および酸素を含む化合物(NSO)8%
アスファルト(asphaltene)7%
【0076】
このようにしてC重油含浸ポリ乳酸繊維を、上記のPG液体培地20mLに浮かべ、暗所にて、25℃で0〜60日間静置培養した後、C重油の分解率を以下のようにして測定した。比較のため、上記のPG液体培地にC重油のみ(ポリプロピレン繊維を使用せず)を加え、同様に培養を行い、C重油の分解率を測定した。
【0077】
C重油の分解率は、Mishraらの方法(In Situ Bioremediation Potential of an Oily Sludge−Degrading Bacterial Consortium,Sanjeet Mishra,Jeevan Jyot,Ramesh Chander Kuhad,Banwari, Lai,Current Microbiology,Vol.43,328−335(2001))を参考にして測定した。ここでは、C重油量[全石油炭化水素(total petroleum hydrocarbon、TPH)の量]およびC重油を構成する炭化水素(alkane fraction):芳香族化合物;窒素、硫黄および酸素を含む化合物(NSO);およびアスファルト(asphaltene)の両方を測定した。
【0078】
測定方法の概要は以下のとおりである。まず、培養開始(0日)からそれぞれ15日間、30日間および60日間経過後の培養物を採取した。培養物にヘキサンを加えて抽出した。ヘキサン抽出後の溶液をさらにジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した。それぞれの抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。一方、菌株を添加せずに同様にして培養を行った培養物を採取し、上記と同様にして、ヘキサン、ジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した各抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。このようにして得られた各抽出物の重量を比較し、全石油炭化水素部(TPH)の分解率を算出した。
【0079】
さらに、各抽出物にヘキサンを加え、ヘキサン可溶部と不溶部に分けた。このうちヘキサン可溶部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン、トルエン、およびクロロホルム:メタノール(1:1)で順次溶出した。このようにして得られたヘキサン溶出部は炭化水素を、トルエン溶出部は芳香族化合物を、クロロホルム:メタノール(1:1)溶出部は窒素、硫黄および酸素を含む化合物(NSO)並びにアスファルトを、それぞれ含む。このうち炭化水素および芳香族化合物の分解率は、ヘキサン溶出部およびトルエン溶出部をガスクロマトグライー(GC)で分析し、処理前後のそれぞれの溶出物のピーク面積を比較して算出した。GC条件は、以下の通りである。また、NSOおよびアスファルトの分解率は、クロロホルム:メタノール(1:1)可溶部およびアスファルトからなるヘキサン不溶部を合わせたものの重量を測定し、処理前後の重量を比較して算出した。
カラム:ジーエルサイエンス社製のTC−5(長さ30m×内径0.25mm)
キャリヤーガス:ヘリウム
昇温条件:60℃〜280℃まで10℃/分で昇温→280℃で10分間保持
カラム流速:1.5mL/分
注入口温度:300℃
【0080】
TPH、炭化水素、芳香族化合物、並びにNSOおよびアスファルトの分解率を、表4(基材添加あり)および表5(基材の添加なし)に、それぞれ示す。
【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
まず、全石油炭化水素部(TPH)に着目すると、F092株を用いると、ポリプロピレン繊維の有無にかかわらず培養後約2ヶ月程度で、1000ppmのC重油の半分以上を分解することができた。表4と表5を対比すると、ポリプロピレン繊維を使用しない場合は分解率が一層促進され、培養後2ヶ月程度で約80%程度のC重油を分解することができた(表5を参照)。
【0084】
同様の傾向は、C重油を構成する各成分についても認められた。すなわち、表4に示すように、F092株とポリプロピレン繊維を用いた場合は、培養後約1ヶ月程度でC重油中の炭化水素および芳香族化合物の半分以上を分解することができた。また、表5に示すように、ポリプロピレン繊維を使用しない場合は分解率が一層促進され、培養後約1ヶ月程度でC重油中の炭化水素および芳香族化合物の2/3以上を分解することができ、培養後約2ヶ月程度で約70〜80%にまで分解能が促進された。
【0085】
以上の結果より、本発明法は、C重油で汚染された汚染海水を十分に浄化できる技術として極めて有用であることが十分実証された。
【0086】
実施例5
本実施例では、前述した実施例4において、C重油の代わりに原油を用いたこと以外は実施例4と同様にして実験を行なった。原油は、実施例3で用いた原油を使用し、添加した原油濃度はC重油と同様、1000ppmである。
【0087】
TPH、炭化水素、芳香族化合物、並びにNSOおよびアスファルトの分解率を、表6(基材添加あり)および表7(基材の添加なし)に、それぞれ示す。
【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
まず、全石油炭化水素部(TPH)に着目すると、F092株を用いると、ポリプロピレン繊維の有無にかかわらず培養後約2ヶ月程度で、1000ppmの原油の約2/3程度を分解することができた。表6と表7を対比すると、ポリプロピレン繊維を使用した場合は分解速度が促進され、培養後約1ヶ月程度で半分以上の原油を分解することができた(表6を参照)。
【0091】
同様に、原油を構成する各成分についても、F092株を用いると、ポリプロピレン繊維の有無にかかわらず培養後約2ヶ月程度で、1000ppmの原油の約2/3程度を分解することができた。表6と表7を対比すると、ポリプロピレン繊維を使用した場合は分解速度が促進され、培養後1ヶ月程度で、原油中の炭化水素の半分以上を分解することができた。
【0092】
以上の結果より、本発明法は、原油で汚染された海水を十分に浄化できる技術として極めて有用であることが十分実証された。
【0093】
実施例6
本実施例では、F092株によるクリセン汚染土壌中のクリセン分解率を測定した。
【0094】
まず、クリセン汚染土壌を以下のように調製した。愛媛大学農学部附属農場から採取した土壌(弱酸性のpH6.2)を3mmのメッシュで篩い分けし、120℃で2時間滅菌した。別途、0.25%のTween80を含むジメチルホルムアミドに0.01%のクリセンを添加した溶液を作製した。上記滅菌土壌(乾燥重量で100g)にこのクリセン溶液(1mL)を加えた。また、比較のために、滅菌処理を行っていない土壌に対して、同様に上記クリセン溶液を添加した。いずれも土壌中のクリセン濃度は10ppmである。
【0095】
上記のようにして調製したクリセン汚染土壌にF092株を接種した。詳細には、F092株の生菌ペレットは、前述したME寒天培地上で成育させたF092菌をコルクボーラー(直径5mm)で寒天ごと打ち抜いて作製し、上記のクリセン汚染土壌100g中にこの生菌ペレット8個を加えた。この方法によれば、土壌全体中のペレット全体の重さ(生重)は約2質量%となり、本実施例では、これをF092株の添加量とした。
【0096】
更に、上記のクリセン汚染土壌に対し、栄養源としてグルコースまたはポリペプトンを、表9(グルコース添加)または表10(ポリペプトン添加)に記載の比率で添加し、暗所にて、25℃にて15日間または30日間培養した。比較のために、上記の栄養源を添加しないクリセン添加土壌にて、同様に培養した。
【0097】
培養開始から15日間または30日間経過後に土壌の一部を採取し、ジクロロメタンで16時間ソックスレー抽出した。抽出液を減圧濃縮後、内部標準液である4−クロロビフェニールを加え、シリカゲルカラムで精製した。ジクロロメタンで溶出する画分を濃縮後、GC−MSにより残留クリセンを定量した。GC−MSの条件は、以下の通りである。
カラム:ジーエルサイエンス社製のTC−1(長さ30m×内径0.25mm)
キャリヤーガス:ヘリウム
昇温条件:80℃→150℃まで20℃/分で昇温→300℃まで25℃/分で
昇温→300℃で10分間保持
カラム流速:1.5mL/分
注入口温度:260℃
イオン化電圧:70eV
【0098】
処理前のクリセン量から、分解率を算出した。結果を表8(コントロール)、表9(グルコース添加)および表10(ポリペプトン添加)に、それぞれ示す。
【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
表8〜10より、F092株を用いれば、栄養源を添加しなくても、土壌中のクリセンを分解できることが分かる(表8を参照)。F092株のクリセン分解率は、グルコースやポリペプトンの添加によって一層促進され、培養後30日で、グルコース添加群ではクリセンの半分以上を、ポリペプトン添加群ではクリセンの約2/3程度を、分解することができた。
【0103】
上記の実験結果により、F092株を用いれば、海水および土壌を問わず、クリセンなどの石油中多環芳香族化合物を効率よく分解できることが実証された。
【0104】
実施例7
本実施例では、前述した実施例5において、原油の濃度を15,000ppmとしたこと以外は実施例5と同様にして実験を行なった。
【0105】
TPH、炭化水素、芳香族化合物、並びにNSOおよびアスファルトの分解率を、表11(基材添加あり)および表12(基材の添加なし)に、それぞれ示す。
【0106】
【表11】

【0107】
【表12】

【0108】
これらの表より、F092株を用いると、15,000ppmと高濃度の原油であっても、ポリプロピレン繊維の有無にかかわらず培養後約2ヶ月程度で、原油中の炭化水素の約4割程度を分解することができた。なお、培養後約1ヶ月程度までの炭化水素の分解率については、ポリプロピレン繊維を使用しない方が分解速度が促進される傾向が見られた(表11と表12をご参照)。
【0109】
以上の結果より、本発明法は、15,000〜50,000ppm程度の高濃度の原油で汚染された海水を浄化できる技術としても極めて有用であることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油分解能を有するフサリウム属に属するF092株(NITE P−795)。
【請求項2】
多環芳香族化合物分解能を有するフサリウム属に属するF092株(NITE P−795)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微生物、および基材を含有することを特徴とする石油分解剤組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の微生物、または請求項3に記載の石油分解剤組成物を石油汚染環境に添加することを特徴とする石油汚染環境の浄化方法。
【請求項5】
前記石油汚染環境は海水または土壌である請求項4に記載の浄化方法。
【請求項6】
さらに、前記微生物の栄養源および/または界面活性剤を添加する請求項4または5に記載の浄化方法。

【公開番号】特開2011−67199(P2011−67199A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180540(P2010−180540)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「第59回日本木材学会大会研究発表要旨集」 発行日:平成21年2月28日 発行所:日本木材学会
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】