説明

石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法。

【課題】クラフトパルプ製造の苛性化工程において、発泡性が低く、工程条件が変動しても安定して石灰泥ケーキ含水率の低減が得られる石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法を提供することを課題としている。
【解決手段】特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテル単独、又は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルと特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの組合せを有効成分として含有することを特徴とする、石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフトパルプ製造の苛性化工程で生成する、炭酸カルシウムを主体とする石灰泥の脱水処理によって得られる石灰泥ケーキの含水率低下を目的とする石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフトパルプ製造における苛性化工程は、回収した黒液をボイラーで燃焼して得られたスメルトを溶解し、その上澄み液である緑液に生石灰を投入して、緑液中の炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに変換し、生じた炭酸カルシウムを除去して、木材チップの蒸解液とする白液を調製する工程である。緑液は、通常、炭酸ナトリウム、硫化ナトリウムを主成分とした強アルカリ性水溶液であり、この緑液に生石灰を投入すると、生石灰は水と反応して水酸化カルシウムになり、緑液中の炭酸ナトリウムと交換反応を起こし、水不溶性の炭酸カルシウムを生成する。その結果、緑液は水溶性の水酸化ナトリウム、硫化ナトリウムと水不溶性の炭酸カルシウムを含む泥状物(以後「石灰泥」と記す)を含むことになる。
【0003】
石灰泥は、フィルターで固液分離され、濾液は水酸化ナトリウム、硫化ナトリウムを含む白液としてパルプ蒸解工程に送られ、フィルター表面に分離された石灰泥ケーキは剥ぎ取られて、キルンで焼成されて生石灰に再生され、再び苛性化工程に使用される。固液分離に使用されるフィルターは、オリバーフィルター、ヤングフィルターあるいはプリコートフィルター等があり、分離された石灰泥ケーキの含水率は通常20重量%〜40重量%である。しかし、フィルターの目が詰まってくると、石灰泥ケーキの含水率が上がり、脱水処理に支障を来たすばかりでなく、キルンで焼成するときに燃料が多く必要となる。そこで、装置の運転を止めてフィルター濾布面の洗浄が行われるが、洗浄頻度が多いと操業上、支障をきたすことになる。
【0004】
石灰泥の脱水性を改善するために各種の脱水促進剤の適用が提案されてきた。例えば、カチオン性ポリマーを使用する方法(特許文献1参照)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを併用する方法(特許文献2参照)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物等のノニオン界面活性剤を併用する方法(特許文献3参照)、炭素数10〜14の直鎖アルコールのエチレンオキサイド3〜4モル付加物を使用する方法(特許文献4参照)等を脱水促進剤とする方法がある。その他、炭素数10〜22のアルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数5〜20モル、プロピレンオキサイド付加モル数2〜10モル)と炭素数10〜22のアルコールポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数2〜10モル、プロピレンオキサイド付加モル数15〜30モル)を併用する方法(特許文献5参照)、炭素数16〜36の分岐鎖を持つ飽和又は不飽和の高級アルコールのポリオキシエチレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数3〜7モル)及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数3〜7モル)を使用する方法(特許文献6参照)、炭素数6〜24のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加モル数5/95〜95/5モル)と炭素数8〜11のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数2〜10モル)を併用する方法(特許文献7参照)、炭素数6〜24のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数5〜50モルでポリピレンオキサイド付加モル数以上の整数、プロピレンオキサイド付加モル数5〜20モル)と炭素数8〜11のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数2〜10モル、プロピレンオキサイド付加モル数0〜2モル)を併用する方法(特許文献8参照)及び炭素数8〜16の直鎖及び分岐アルキルのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数1〜4モル、プロピレンオキサイド付加モル数3〜6モルでエチレンオキサイド付加モルとプロピレンオキサイド付加モルの和が4〜9モル)と炭素数8〜12のポリオキシプロピレンアルキルエーテル(プロピレンオキサイド付加モル数3〜6モル)を使用する方法(特許文献9参照)などが挙げられる。
【0005】
しかし、カチオン性ポリマーによる方法では、石灰泥スラリーは凝集するが、脱水効果は大きくならず、逆に凝集物中に水を抱き込んで脱水率が低下することがあった。また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを併用する方法、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物等のノニオン界面活性剤を使用する方法や炭素数10〜14の直鎖アルコールのエチレンオキサイド3〜4モル付加物を使用する方法では、これらのものは界面活性能を持つために石灰泥スラリーの発泡を助長し、入り込んだ気泡により石灰泥の沈降不良や石灰泥スラリーの脱水が邪魔されて石灰泥ケーキ含水率が低下せず、脱水促進剤添加の効果が得られない。さらに、苛性化工程の変動により、生成した炭酸カルシウムの物性が変化して、脱水機での石灰泥ケーキ含水率が変動し、上記の脱水促進剤を添加しても安定した石灰泥ケーキ含水率の低下が得られない場合があった。そのため、安定した脱水率の低減が達成しうる石灰泥の脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法が強く望まれている。
【0006】
一方、自然環境への配慮から平成12年3月30日施行された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(平成11年7月13日公布)によって、「ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル」、「ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(炭素数12〜15)」などは環境汚染物質排出移動登録(以下、「PRTR」と記す)が必要とされた。特定のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物等のノニオン界面活性剤や炭素数10〜14の直鎖アルコールのエチレンオキシド3〜4モル付加物がこれに該当し、業界ではこれらの化合物の使用を控える動きが強まってきた。そこで、PRTRに該当しない、自然環境へ影響のより少ない脱水促進剤が求められていた。
【特許文献1】特開昭57−48340号公報
【特許文献2】特開昭62−121700号公報
【特許文献3】特開平7−48793号公報
【特許文献4】特開2000−344518号公報
【特許文献5】特開2002−266273号公報
【特許文献6】特開2002−294577号公報
【特許文献7】特開2003−340500号公報
【特許文献8】特開2004−211020号公報
【特許文献9】特開2008−36541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クラフトパルプ製造の苛性化工程において、発泡性が低く、工程条件が変動しても安定して石灰泥ケーキ含水率の低減が得られる石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究の結果、特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテル単独、又は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルと特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの組合せを有効成分として含有することを特徴とする、石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1の石灰泥脱水促進剤は、(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルを有効成分として含有することを特徴とする。
【化1】

【0010】
請求項2の石灰泥脱水促進剤は、前記((A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルと、(B)一般式(2)〔式中、R2は炭素数8〜22のアルキル基、pは2〜20の整数、qは2〜15の整数である。〕で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを有効成分として含有することを特徴とする。
【化2】

【0011】
請求項3の石灰泥脱水促進方法は、(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルを石灰泥に添加することを特徴とする。
【化1】

【0012】
請求項4の石灰泥脱水促進方法は、前記(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルと、(B)一般式(2)〔式中、R2は炭素数8〜22のアルキル基、pは2〜20の整数、qは2〜15の整数である。〕で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを石灰泥に添加することを特徴とする。
【化2】

【発明の効果】
【0013】
本発明の石灰泥脱水促進剤及びこれを用いた石灰泥脱水促進方法により、クラフトパルプ製造の苛性化工程において、発泡性が低く、工程条件が変動しても安定して石灰泥ケーキ含水率の低減が得られるため、石灰泥ケーキを焼成するためのキルンの燃料消費量を節減でき、コスト削減に大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の石灰泥脱水促進剤は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテル単独、又は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルと特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの組合せを有効成分として含有することを特徴としている。
【0015】
前記一般式(1)で示される特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルは、アルキルアミン又はアルケニルアミンにエチレンオキサイドを付加することによって得られる。前記一般式(1)で示されるR1は、炭素数8〜20の、直鎖又は分岐の、アルキル基又はアルケニル基からなり、好ましくは炭素数が10〜18であって、用いられるアルキルアミン又はアルケニルアミンの例としてはデシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、オクタデシルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、大豆油アミン、イソステアリルアミン、オレイルアミンなどを挙げることができる。また、前記一般式(1)で示されるmとnはアルキルアミン又はアルケニルアミンに付加するエチレンオキサイドのモル数を表し、mとnとしてそれぞれ0〜10モルを付加し、かつ、n+mとして1〜10モル、好ましくは1〜5モルを付加としたものである。
【0016】
前記一般式(1)で示される特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルは、石灰泥の主体である炭酸カルシウムとの親和性が強く、特に石灰泥の脱水速度を速める効果を発揮する。
【0017】
前記一般式(2)で示される特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは高級アルコールにプロピオンオキサイドとエチレンオキサイドを付加することによって得られる。前記一般式(2)で示されるR2は、炭素数8〜22、好ましくは炭素数10〜18の直鎖又は分岐のアルキル基であり、用いられる高級アルコールの例としては、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなどを挙げることができる。また、一般式(2)で示されるpとqは、それプロピオンオキサイドとエチレンオキサイドの付加モル数を表し、pは2〜20モル、好ましくは2〜10モル、qは2〜15モル、好ましくは2〜10モルであり、また、該エチレンオキサイドの付加と該プロピレンオキサイドの付加はランダムでもブロックでも良く、エチレンオキサイドを先に付加しても、プロピレンオキサイドを先に付加してもよいが、好ましくはプロピレンオキサイドを先に付加し、次いでエチレンオキサイドを付加したブロック付加体である。
【0018】
一般式(2)で示される特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのバランスを調整することにより石灰泥の脱水速度を速め、また、泡の発生を抑える効果を発揮する。
【0019】
本発明における前記一般式(1)で示されるR1の炭素数及びnとmで表されるエチレンオキサイドの付加モル数、及び前記一般式(2)で示されるR2の炭素数及びpで表されるプロピレンオキサイドの付加モル数とqで表されるエチレンオキサイドの付加モル数はいずれも統計的な平均値であり、実際にはこの数字より大きい成分、小さい成分のものを含んでいる。
【0020】
本発明の前記一般式(1)で示される、nとmで表されるエチレンオキサイドの付加モル数、及び前記一般式(2)で示されるpで表されるプロピレンオキサイドの付加モル数とqで表されるエチレンオキサイドの付加モル数は、石灰泥の脱水性と発泡を抑える効果から限定されたものであり、上記の範囲を外れるとその効果は著しく劣る。
【0021】
本発明の石灰泥脱水促進剤は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテル単独、又は特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテルと特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを組合せて用いることができるが、特定のポリエチレンオキサイドアミノエーテル(以後、「A成分」と記す)と特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(以後、「B成分」と記す)を組合せて用いる場合は、A成分とB成分の組合わせ比率は、A成分、B成分それぞれの化合物に依って異なるが、一般的にはA成分:B成分=99:1〜10:90(重量比)であり、好ましくは、A成分:B成分=9:1〜5:5(重量比)、さらに好ましくは、A成分:B成分=8:2〜6:4(重量比)である。組合せ比率がこの範囲外では、本発明の成果を充分得ることができない場合がある。
【0022】
本発明の石灰泥脱水促進剤の添加個所は、特に限定されるものではなく、石灰泥ケーキ含水率や真空脱水機の運転状況に応じて適宜選択されるものであるが、一般的には真空脱水機のバットや洗浄機のバット、あるいは石灰泥のストレージタンクやこれらと結ぶ配管ラインに添加される。
【0023】
本発明の石灰泥脱水促進剤の添加量は、苛性化工程の運転状況、石灰泥の固形分濃度、及びに石灰泥ケーキの含水率より適宜決定すれば良いが、A成分を単独で用いる場合はA成分の有効成分として、また、A成分とB成分を組み合わせて用いる場合はA成分とB成分の有効成分の合計として、10〜500ppm(有効成分−mg/石灰泥固形分−kg)、好ましくは50〜300ppm(有効成分−mg/石灰泥固形分−kg)である。
【0024】
本発明の石灰泥脱水促進剤を工程に添加する方法には、薬液ポンプを使用して、原液で添加する、あるいは水や適当な有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、ジオキサン、エチレンカーボネート等に溶解して添加する方法があり、いずれの方法を用いても良い。また、添加する工程の状況に応じて、本発明の石灰泥脱水促進剤を連続的、あるいは間欠的に添加することができる。
【0025】
本発明のA成分とB成分を組み合わせて添加する場合は、A成分とB成分をそれぞれ別々に添加しても、あるいは両者を混合して添加してもよい。
【0026】
本発明の効果が損なわれない範囲において、本発明の石灰泥脱水促進剤に従来から使用されてきた脱水促進剤、例えば、カチオン性ポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、直鎖アルコールのエチレンオキサイド付加物などを併用しても何ら構わない。
【実施例】
【0027】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔脱水試験―1〕オリバーフィルターを用いて石灰泥の固液分離を行っているクラフトパルプ製造工場Aの苛性化工程から、固形分濃度25%の石灰泥を採取し試験に供した。
石灰泥500gを1Lのビーカーに入れ、プロペラ翼付きの攪拌機で撹拌しながら、60〜70℃に加温した。これに表1に記載した組成の脱水促進剤を直接マイクロシリンジで50ppm、150ppm、300ppm(脱水促進剤の有効成分−mg/石灰泥固形分−kg)添加し、120rpmで1分間撹拌した。口径9cmのブフナーロートの目皿にNo2濾紙を敷き、この石灰泥を一気に流し込み、リーフテスター〔(株)宮本製作所製〕を用いて真空度650mmHgで吸引濾過した。30秒吸引を行った後、吸引を停止し、濾過した石灰泥ケーキの重量(W1)を測定した後、105℃の乾燥器中で6時間乾燥した。乾燥した石灰泥ケーキを室温まで放冷した後、乾燥石灰泥ケーキの重量(W2)を測定し、次式により石灰泥ケーキの含水率(%)を求めた。試験結果を表2に示した。
石灰泥ケーキの含水率(%)={(W1−W2)/W1}×100
〔発泡試験〕500mLの共栓付き試験管に加温した石灰泥300mLを入れ、マイクロシリンジで200ppmの脱水促進剤を添加し、上下を5回ゆっくりと転倒させた後に静置し、30秒後の発泡による液面からの泡の高さを測定した。発泡性が高いと脱水性の低下の原因となる。試験結果を表2に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表2の結果より、本発明のポリエチレンオキサイドアミノエーテル単独、又はポリエチレンオキサイドアミノエーテルとポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを組み合わせて用いた実施例1〜7の石灰泥ケーキの含水率は比較例1〜5に比べて低く、顕著な石灰泥脱水促進効果が認められる。また、発泡性においても実施例1〜7の発泡は比較例1〜5より少ないため、脱水がより均一に行われ、石灰泥脱水促進に寄与している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルを有効成分として含有することを特徴とする石灰泥脱水促進剤。
【化1】

【請求項2】
前記(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルと、(B)一般式(2)〔式中、R2は炭素数8〜22のアルキル基、pは2〜20の整数、qは2〜15の整数である。〕で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを有効成分として含有することを特徴とする石灰泥脱水促進剤。
【化2】

【請求項3】
クラフトパルプ製造の苛性化工程において、(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルを石灰泥に添加することを特徴とする石灰泥脱水促進方法。
【化1】

【請求項4】
クラフトパルプ製造の苛性化工程において、前記(A)一般式(1)〔式中、R1は炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基、nとmはそれぞれ0〜10の整数、かつ、n+mは1〜10の整数である。〕で表されるポリエチレンオキサイドアミノエーテルと、(B)一般式(2)〔式中、R2は炭素数8〜22のアルキル基、pは2〜20の整数、qは2〜15の整数である。〕で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを石灰泥に添加することを特徴とする石灰泥脱水促進方法。
【化2】


【公開番号】特開2010−58072(P2010−58072A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227814(P2008−227814)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】