説明

石灰粒状体の製造方法

【課題】 製糖工場で大量に発生するライムケーキと、鶏糞燃焼灰とを混合して造粒することによって、高い硬度を有する、とりわけ肥料として有用な安価な石灰粒状体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ライムケーキと鶏糞燃焼灰とを、固形分換算の質量比で99:1〜50:50の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする石灰粒状体の製造方法である。前記製造方法で得られた石灰粒状体はさらに破砕してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製糖工場で発生するライムケーキと鶏糞燃焼灰とを原料として含有した石灰粒状体の製造方法に関する。
より詳しくは、高い硬度を有する、肥料として好適に使用することができる石灰粒状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製糖工場における砂糖製造工程において、原料糖の糖液を精製するために、糖液を石灰乳と炭酸ガスで処理し、生成する炭酸カルシウムに不純物を包含吸着させるが、これを濾過した残渣がライムケーキである。ライムケーキは農地の土壌酸度の矯正剤として用いられているが、散布上の取り扱いが困難等の理由により破棄される量も多く、充分に有効利用されていないのが現状である。
ライムケーキの農地散布の利便性を向上させるために、ライムケーキに種々の造粒促進剤を添加して造粒する方法が従来より提案されており、造粒促進剤の1例として、パルプ廃水濃縮液(特許文献1)、ステフェン廃水濃縮液(特許文献2)、石灰類や苦土類の乾燥粉(特許文献3)、カルボキシル基を有した分子量1500〜50万の高分子(特許文献4)等が提案されている。
一方、鶏糞を焼却して得られる鶏糞燃焼灰は、強アルカリ性であり土壌の酸度矯正剤として利用することもできるが、リンとカリウムを含むため肥料としての利用価値も有するものであり、積極的な活用が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−45058号公報
【特許文献2】特開昭59−82937号公報
【特許文献3】特開2002−331300号公報
【特許文献4】特開2008−23433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでのライムケーキの造粒方法において用いられている造粒促進剤は、水分を含むために含水率が高くなり造粒が困難になるもの、あるいは肥料的効果に乏しいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らはライムケーキを粒状肥料として利用するために鋭意検討した結果、ライムケーキを造粒する装置として真空造粒機を用いることで、従来の技術では困難であった高い硬度を有する緻密な粒状物が得られることを見出した。さらに鶏糞燃焼灰を添加することによって、土壌の酸度矯正に有効でありながら、リン酸とカリウム等の肥料成分を含む石灰粒状体が得られることを見出したものである。
【0006】
即ち、本発明は、製糖工場で発生するライムケーキと鶏糞燃焼灰とを、固形分換算の質量比で99:1〜50:50の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする石灰粒状体の製造方法に関するものである。
また、本発明は、前記製造方法によって得られた石灰粒状体を、さらに破砕する石灰粒状体の製造方法に関するものである。
さらに、本発明は、上記製造方法によって製造された石灰粒状体に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、取り扱いが困難なために充分活用されず、一部廃棄されていたライムケーキと、養鶏場で多量に発生し、その処分に苦慮している肥料成分となる鶏糞燃焼灰とを混合し造粒することによって、両者を有効に活用するものである。また、本発明により得られる石灰粒状体は、カルシウム成分は勿論、リン酸成分、カリ成分を含む粒状肥料であり、且つ、土壌の酸度矯正に好適なものである。
【0008】
そして、本発明に利用する原料は、ほとんど廃棄状態にあるものであるから、極めて安価に本発明石灰粒状体を製造することができる等数々の利点を有するものである。本発明石灰粒状体は、特に肥料として有効活用できることは勿論、融雪剤等としても有効に利用することができる。
上記のように本発明の石灰粒状体は、肥料としての実質的価値は勿論、環境保全の観点からもその産業的意義は多大である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の石灰粒状体の製造方法について更に詳細に説明する。
ライムケーキは製糖工場で発生するものであり、発生する工場によって含水率は異なるが、概ね15〜40質量%程度である。
【0010】
鶏糞燃焼灰は、養鶏場などから排出される鶏の糞を焼却処分して得られる灰であり、排出源として、採卵鶏、ブロイラー、育成鶏等がある。本発明では、前記した各種排出源の鶏糞を単独もしくは混合して焼却したもの、又は単独焼成して混合したもの等いずれの鶏糞燃焼灰であっても使用できる。また、必要に応じてこれを粉砕しても良い。尚、生鶏糞、発酵鶏糞では、粒硬度の低減を招き、本発明のような石灰粒状体は得られない。
【0011】
ライムケーキと鶏糞燃焼灰との混合割合は、固形分換算の質量比でライムケーキ:鶏糞燃焼灰=99:1〜50:50の割合である。前記質量比において、ライムケーキの割合が99を上廻ると、鶏糞燃焼灰による肥料効果が十分に得られない。一方、前記質量比において、ライムケーキの割合が50を下廻っても石灰粒状体は得られるが、ライムケーキの利用を図るという目的から外れることになる。尚、前記質量比は、95:5〜50:50の割合がより好ましく、さらに好ましくは90:10〜50:50の割合である。
【0012】
ライムケーキと鶏糞燃焼灰との混合は、両者が充分に混合されればどのような方法でもよいが、真空造粒機が混練機能を有するものであっても、真空造粒機に導入する前に混合しておくことが望ましい。
真空造粒機は、減圧下で造粒を行うことができる装置のことであり、このような原料の脱気に寄与する装置であれば特に制限はない。真空造粒機として、真空加圧機、真空土練機、真空押出機等が例示でき、これらはいずれでも本発明に適用できるが、製造効率の点から真空土練機または真空押出機が特に好ましい。真空土練機、真空押出機は、混練機能あるいは押出機能を有するスクリュー部、その一部に設けた真空室(減圧室)、及び任意の孔径の孔を有する押出口によって一般的に構成されている。押出口の孔径は、造粒性と必要とされる粒径から適宜設定すればよいが、肥料等に利用する場合においては概ね0.5〜8mmが好ましい。押出口から排出される柱状物は、粒状化のために切断あるいは粉砕すればよく、切断する方法としては押出口の出口に設けたカッターなどで切断する方法が簡便である。
尚、ライムケーキと鶏糞燃焼灰の混合物の含水率が造粒に適さないときは、水の添加、あるいは、乾燥粉などを必要に応じて適宜添加して含水率を調整してもよい。乾燥粉は、肥料原料として一般的に用いているもののうち前記混合物の含有成分と反応してガスを発生しないものが好ましく、例えば、石灰、消石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム等を挙げることができる。尚、前記混合物の好適含水率は造粒機により異なるが、概ね10〜30質量%程度が好ましく、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0013】
次いで、得られた粒状物の乾燥に関しては、特に装置を選ばないが、粒状物同士の付着防止や乾燥効率の点から、転動熱風乾燥機が好ましい。乾燥温度に関しては、80〜150℃が好ましい。
【0014】
上記製造方法で得られた石灰粒状体は、その粒度を下げるためにさらに破砕してもよい。破砕には破砕機を好適に用いることができ、例えば、ジョークラッシャー、ロールクラッシャーを挙げることができる。尚、破砕は粉の発生量ができるだけ少ない方法で行うことが望ましい。
【0015】
本発明の製造方法で得られる粒の形状については特に制限されることなく、各種形状を採用できる。用途により球状が望ましい場合は、造粒後の柱状物を整粒機で整粒してもよい。本発明の石灰粒状体を肥料等に利用する場合において粒度による選別を必要とするときは、篩等を用いた分級によって適度な粒度のものを得ることができる。篩による分級で得られる粒度の目安として、篩目開きで0.5〜8mmの粒度のものが好ましく、このうち1〜4mmのものが特に好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の詳細を実施例を挙げて説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
[ライムケーキ]
製糖工場で発生したものを用いた。分析例を表1に示した。尚、以下ではライムケーキの質量は固形分換算で表すものとする。
【0017】
【表1】

【0018】
[鶏糞燃焼灰]
ブロイラー由来の鶏糞燃焼灰を用いた。分析例を表2に示した。尚、以下では鶏糞燃焼灰の質量は固形分換算で表すものとする。
【0019】
【表2】

【0020】
[真空造粒機]
高浜工業(株)製の真空土練機(型式MPM120N-FS)を用いた。真空室の圧力は、大気圧(約100kPa)を基準(ゼロ)として-100kPa〜-90kPaの範囲とした。押出口は、孔径5mmの孔を90個配した構成とした。押出口から排出された柱状物はカッターで概ね5〜10mmの長さに切断して粒状物を得た。
[破砕機と破砕品]
高浜工業(株)製のロールクラッシャー(型式SH-10)を用いた。篩別した粒径1.5〜3.0mmの粒度のものを破砕品とした。
【0021】
[実施例1]
ライムケーキ1.8kgと鶏糞燃焼灰0.2kgとをミキサー(新東工業(株)製、ミックスマラーMSG−05)で混合し、これを真空造粒機で造粒した。次に、得られた粒状物を転動熱風乾燥機にて85℃で30分間乾燥した(以下、これを造粒品と云う)。
得られた造粒品をさらにロールクラッシャーで破砕した後、篩別した1.5〜3.0mmのものを破砕品とし、破砕品の歩留まりを求めた。
[実施例2、3]
表3の原料組成で実施例1と同様に製造した。
【0022】
[比較例1]
表3の原料組成(鶏糞燃焼灰は無添加)で実施例1と同様にして製造した。
[比較例2]
造粒機をパン型造粒機(容器寸法:960mmφ×200mm、回転速度:20rpm)とした以外は、表3の原料組成で実施例1と同様に製造した後、篩別した1.5〜3.0mmのものを造粒品とした。但し、破砕は行わなかった。
【0023】
[平均粒硬度の測定方法]
木屋式硬度計を用いた。真空造粒機による造粒品は、円柱の横方向の硬度を測定した。また、破砕品は、断面積が最大と判断した面を底部に設置して測定した。尚、測定は各20粒を対象に行い、その平均値を平均粒硬度とした。
【0024】
結果を表3に示した。
【0025】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製糖工場で発生するライムケーキと鶏糞燃焼灰とを、固形分換算の質量比で99:1〜50:50の割合で混合した後、真空造粒機で造粒し、乾燥することを特徴とする石灰粒状体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法によって得られた石灰粒状体を、さらに破砕する石灰粒状体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法によって製造された石灰粒状体。

【公開番号】特開2012−121735(P2012−121735A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271110(P2010−271110)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000203656)多木化学株式会社 (58)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】