説明

石灰質造粒物およびその製造方法

【課題】石灰質粉末に、着色剤と水性バインダーを添加、混合して造粒した造粒材を製造するにあたり、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性について優れるだけでなく、造粒時の臭気についても殆ど問題にならないようにする。
【解決手段】フミン酸カリウムのようなフミン酸塩類とカーボンブラックのような顔料を分散せしめた水懸濁液と、フミン酸塩類または/及び造粒助材から成る水性バインダーとの混合液を添加して混合する湿式製法とし、該混合したものを造粒し、乾燥し、分級することで、土壌改良材、肥料、融雪材として利用できる良質な石灰質造粒物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰石、ドロマイト、スラグ等の鉱物質粉末物や貝殻など天然粉末物を、着色材とバインダーを添加、混合して造粒してなる石灰質造粒物およびその製造法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
わが国の耕地土壌は、火山性土壌、沖積性土壌など各種まちまちであるが、これら土壌について、作物の育成に適した土壌環境に改造するため、多くの土壌改良材や肥料が用いられている。これらの土壌改良材等としては、土壌のpHを調整する目的のもの、土壌の保水力を向上する目的のもの、作物生育に不足の養分を補給する目的のもの、土壌の保肥力を向上する目的のもの、肥効を促進する目的のものなど、それぞれの特徴を持った各種の土壌改良材等が知られている。
これら各種の土壌改良材及び肥料にあっては、性能を増すためと使いやすくするために、粉砕した鉱物質、天然物、副産物などの粉末(以下「原料粉末」という。)を原料として造粒したもの、及びカーボンブラックなどで着色し、造粒したものがある。このような土壌改良材及び肥料は、土壌のpHを中和せしめ、安定化せしめ、あるいは保肥力を向上せしめるなどの効果を発揮して土壌を改良し、植物の発芽や生育を容易にしたり助長したりするような土壌環境を作り、その土壌環境を一定期間、維持、持続せしめる効果を発揮するものである。また、特に黒色系に着色された土壌改良材及び肥料は、融雪材としても効果的に利用できる。
このように土壌改良材、肥料あるいは融雪材として用いられるものとして、石灰質系粉末を用いたものがあり、このような石灰質系粉末材を粒状にすることにより石灰質造粒物とした場合には、機械による散布が可能であり、施工の際に発生する紛塵の飛散を抑制し、施工後土中で時間をかけて粒が崩壊する為、長期に渡る肥料効果の持続が可能である。
このような石灰質造粒物を製造するものとして、石灰質粉末に腐植酸およびアルカリ物質を配合し、これに水を加えて混錬し、造粒するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−278972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前記特許文献1のものは着色材の添加がなく、このものに着色材を添加した場合、着色工程が必要になるが、該着色工程においては、一般に着色材として黒色顔料が多く用いられており、この代表的な黒色顔料にカーボンブラックがある。このカーボンブラックでの着色には、原料の粉末とカーボンブラックとを乾式混合し、次にバインダー及び水などを加えて造粒し、乾燥、分級して製品化することになる。この原料粉末とカーボンブラックとの乾式混合工程において、着色性が悪く多量のカーボンブラックの添加を必要とし、さらに混合に際して著しく粉塵が発生し、作業環境は劣悪状態となるという問題がある。
【0004】
また、造粒工程においては、液状バインダーとして、アルコール発酵廃液、糖蜜、イースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、乳酸発酵廃液、カラメル製造廃液、パルプ廃液、リグニン系化合物や、粉末系バインダーとして、加工でんぷん、セルロース系化合物、粘土系鉱物などから選ばれた少なくとも一つ以上を用いる場合が多い(以下、これらを総称して「造粒助剤」という。)。この造粒に関しては、工程管理も複雑となり、また、一部バインダーには独特の臭いを持つものもあり、悪臭の発生が多々あり、作業環境は劣悪状態であるという問題がある。
【0005】
すなわち、着色した石灰質造粒物は、原料を粉末化し、着色するために適宜にカーボンブラックに代表される着色材を添加混合し、糖蜜などのバインダーを用いて造粒している。この製造方法では、多量のカーボンブラックを原料と乾式混合しなければ目的とする着色性は得られず、さらに、乾式混合であることから、カーボンブラックの粉塵発生が著しく、また造粒に際しての悪臭の発生も多々あり、いずれも作業環境劣悪状態となり、製造には粉塵対策や悪臭対策などの付帯設備が必要になる。また、着色と造粒の二工程が必要になるため製造工程が複雑となり、製造工程管理面や品質管理面などに難しい面があり、これらに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述したごとき実情に鑑み鋭意研究した結果創作されたものであって、請求項1の発明は、石灰質系粉末に、フミン酸塩類に着色材を分散せしめた水懸濁液と、フミン酸塩類または/及び造粒助材から成る水性バインダーとの混合液を添加して造粒してなることを特徴とする石灰質造粒物である。
請求項2の発明は、水懸濁液または水性バインダーの少なくとも一方にフミン酸塩類を含有するものとし、石灰質系粉末100重量部に対して、水懸濁液を固形分換算で0〜5重量%と、水性バインダーを固形分換算で0.1〜10重量部との混合液を添加して造粒し、乾燥したものを0.1〜10mmに分級してあることを特徴とする請求項1の石灰質造粒物である。
請求項3の発明は、水懸濁液は、フミン酸塩類の水溶液を用いて着色材が分散形成されているか、フミン酸塩類と水を用いて着色材が分散形成されているかであることを特徴とする請求項1または2記載の石灰質造粒物である。
請求項4の発明は、水懸濁液には、着色材として無機質顔料、有機質顔料の中から選択される少なくとも一つ以上が混合されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項5の発明は、水性バインダーは、フミン酸塩類を固形分換算で100重量部に対して造粒助材を0〜5000重量部添加混合してなるものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項6の発明は、石灰質系粉末は、石灰石、貝化石・貝殻またはドロマイトの少なくとも一つ以上を主成分とし、平均粒度1mm以下に粉砕したものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項7の発明は、フミン酸塩類は、土壌、亜炭や褐炭で代表される若年炭類、風化した石炭類、レオナダイト類、草炭、泥炭の少なくとも一つ以上について、アルカリ抽出した後、酸性溶液で沈降して得られる高分子有機酸、または硝酸に代表される酸化剤を用いて酸化分解して得られる高分子有機酸のアルカリ金属塩類及び/又はアンモニウム塩から選ばれた少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項8の発明は、造粒助材は、アルコール発酵廃液、イースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、乳酸発酵廃液、カラメル製造廃液、パルプ廃液、リグニン系化合物、加工でんぷん、セルローズ系化合物、糖蜜、リグニンに代表されるものから選ばれた少なくとも一つ以上であり、水性バインダーは、前記選んだ造粒助材を水溶液若しくは水分散液としたものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項9の発明は、水懸濁液は、着色材100重量部に対して、フミン酸塩類を0.1〜100重量部添加して得られるものであることを特徴とする請求項4乃至8の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項10の発明は、着色材は、有色の無機質顔料であり、鉄黒、ベンガラ、カーボンブラックに代表されるものであることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項11の発明は、着色材は、有色の有機質顔料であり、フミン酸塩類、松煙、油煙に代表されるものであることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項12の発明は、石灰質造粒物は石灰質土質改良材であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項13の発明は、石灰質造粒物は肥料であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項14の発明は、石灰質造粒物は融雪機能を備えた着色材が含まれている場合、融雪材であることを特徴とする請求項4乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物である。
請求項15の発明は、石灰質系粉末に、フミン酸塩類に着色材を分散せしめた水懸濁液と、フミン酸塩類または/及び造粒助材から成る水性バインダーとの混合液を添加した後、造粒して製造することを特徴とする石灰質造粒物の製造方法である。
請求項16の発明は、水懸濁液または水性バインダーの少なくとも一方にフミン酸塩類を含有するものとし、石灰質系粉末100重量部に対して、水懸濁液を固形分換算で0〜5重量%と、水性バインダーを固形分換算で0.1〜10重量部との混合液を添加して均一に混合したものを造粒し、乾燥したものを、粒度が0.1〜10mmに分級した請求項9の石灰質造粒物の製造方法である。
請求項17の発明は、水懸濁液には、着色材として無機質顔料、有機質顔料の中から選択される少なくとも一つ以上が混合されていることを特徴とする請求項15または16記載の石灰質造粒物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明が実施されたものは、石灰質造粒物を製造した際に、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性について優れるだけでなく、造粒時の臭気についても殆ど問題になるものはなく、粉塵の発生も湿式であるがゆえに抑制されたものになり、この結果、製造が容易であるばかりでなく、作業環境に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するにあたり、原料粉末と着色材との乾式混合工程の改善をすること、新規バインダー類の選択に着目したものである。その特徴は、従来の原料粉末と着色材との乾式混合工程に対して、予め着色材をフミン酸塩類によって分散せしめた水懸濁液(以下「フミン酸カーボン液」という。)を用いて湿式混合方式に改良したものである。さらに新規バインダーの選択としてフミン酸塩類の造粘性、粘着性、吸着性などの特性を応用したものである。これらによって、粉塵発生が少ない作業環境に改善し、集塵装置などの付帯設傭が軽減でき工程管理が簡便となった。
【0009】
次に、造粒工程でのバインダー類としてフミン酸塩類を用いることと、フミン酸塩類と従来バインダーを併用することにより、フミン酸塩類の脱臭性によって、従来バインダーの特有の臭いの発生が大幅に抑えられた造粒方法を見いだした。したがって脱臭装置などの付帯設備が軽滅され、製造工程の簡略化することに成功した。
【0010】
従来の着色した石灰質造粒物の製造は原料紛末と着色材との乾式混合工程(着色工程)と造粒工程が必要であったが、本発明では着色材としてフミン酸カーボン液を用いることで、液体バインダーに着色材を混合しておくことが可能となり、この混合液を用いることで、着色と造粒を一度に行うことができ、製造工程の簡略化(製造工程管理面のメリット)と作業時間の短縮に成功した。
【0011】
また、石灰質系原料(粉末)100重量部に、直接フミン酸塩類の水溶液を固形分換算で0.1〜10重量部を均一に混合して着色し、さらに必要に応じて水を添加しながら造粒して、粒状物を製造するものもできる。この場合、着色材としてフミン酸カーボンを用いないために、フミン酸特有の色である茶褐色から黒褐色の粒状物となり、土壌とほぼ同じ色に着色した粒状の石灰質造粒物が製造できる。そして該石灰質造粒物は、土壌改良材、肥料、さらには融雪材として用いることができる。
【0012】
本発明に用いるフミン酸カーボン液は、鉄黒、ベンガラ等の酸化物系顔料、鉱物質顔料、有機質顔料および/またはカーボンブラック等の無機質顔料、あるいは染料を100重量部に対して、フミン酸塩類を固形分換算で0.1〜100重量部をホモジナイザーなどの撹拌機を用いて水に分散せしめ、総固形分が5〜40重量%濃度になるように調整した水懸濁液である。
【0013】
本発明に用いることが出来るフミン酸塩類としては、土壌、亜炭や褐炭等の若年炭類、風化した石炭類、レオナダイト類又は草炭や泥炭等からアルカリ抽出後、酸性溶液で沈降分離して得られる高分子有機酸、そして亜炭や褐炭等の若年炭類又は繊維質の残る草炭や泥炭などを硝酸などの酸化剤を用いて酸化分解して得られる高分子有機酸など(以下「フミン酸類」という。)をナトリウム、カリウム等のアルカリ金属化合物と反応させたアルカリ金属塩類として用いられ、さらにアンモニア水と反応させたアンモニウム塩等で例示される。
【0014】
これらのフミン酸塩類は、作物が生育しやすい土壌環境に改善、維持する機能を有する腐植酸質資材として、地力増進法で指定されている土壌改良材である。また、フミン酸塩類のうち、カリウム塩そしてアンモニウム塩は、肥料取締法において腐植酸肥料として認められており、これらを土壌に散布または埋設して使用することは、作物育成の土壌環境及び養分の供給に関して、非常に好ましい物質となる。
【0015】
本発明における石灰質系原料は、粒度分布が1mm以下の範囲の粉末を用いることができる。その製造方法の一例としては、まず、石灰質系原料にフミン酸塩類または/及びフミン酸カーボン液を均一に混合し、石灰質系原料を着色する。この混合に際しては、湿式混合のために、粉塵が舞い上がることが抑制される。従来のカーボンブラック粉末と石灰質原料粉末とを乾式混合による着色方式に比べて、作業環境は極めて良好になり、かつ、少ないカーボンブラックの使用量で優れた着色性が得られる。
【0016】
次に、着色された石灰質系原料とフミン酸塩類または/及び糖蜜などの造粒助材を添加し、均一に混合し、押し出し造粒機、パン型造粒機その他通常の造粒機を用いて、造粒する例について説明するが、その製造方法の一例としては、石灰質系原料にフミン酸塩類または/及びフミン酸カーボンと、フミン酸塩類または/及び糖蜜などの造粒助剤を均一に混合した混合液を添加し、均一に混合し着色する、これを押し出し造粒機、パン型造粒機、その他通常の造粒機を用いて、造粒することができる。この混合に際しては、湿式混合のために、粉塵が舞い上がることが抑制される。この結果、従来のカーボンブラック粉末と石灰質原料粉末とを乾式混合による着色方式に比べて、作業環境は極めて良好になり、かつ、少ないカーボンブラックの使用量で優れた着色性のあるものが得られた。
【0017】
ここに用いるフミン酸塩類は、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩類そしてアンモニウム塩が有効に使用できる。またここに用いるフミン酸塩類が高分子有機酸塩類である場合、造粘性、粘着性および吸着性に優れた特性を持っている。また例えば、フミン酸塩類としてフミン酸カリウム溶液を石灰質系原料に添加した場合、フミン酸カリウムの造粘性と粘着性によってバインダー効果を発揮し、石灰質系原料粉末を接合し、造粒機で造粒をすることが可能となる。この造粒には、造粒助材として糖蜜などまたはその他の造粒助材を併用することなしに行うことができる。また、このフミン酸カリウムと糖蜜など、またはその他の造粒助材を併用しても両者がバインダー効果を発揮し、造粒することができる。
【0018】
これによって石灰質系原料の造粒が容易になり、さらに糖蜜など、またはその他の造粒液のみの造粒助材に比べて、固形分比較で実用強度(硬さ)を持った製品が得られる。また、両者を併用することによっても、従来の糖蜜などまたはその他の造粒液のみで製造した造粒物より強度面においても優れた造粒物が得られる。
【0019】
また、本発明は、石灰質系原料を造粒機に移送した後に、フミン酸カリウムを水に溶解した溶液に糖蜜など、またはその他の造粒液を混合した混合溶液を均一に混合して、造粒を行う。フミン酸が含有されていることから着色性が向上し、造粒が容易になり、高い強度を持った造粒材が製品として得られる。この製造には、湿式混合、湿式造粒で行うために粉塵が舞い上がることが抑制され、清浄な作業環境で行うことが出来る。
【0020】
本発明の石灰質造粒物は、石灰質の土壌改良材及び肥料、さらには融雪材として使用できるが、土壌改良資材や肥料として用いる場合、他の土壌改良材や肥料成分と同時に施用でき、また、配合肥料成分としても使用することができる。
【0021】
これらの土壌改良材は、植物の育成に適した土壌環境を整えるために、土壌を物理的、化学的、生物学的に改善する作用を持っている。地力増進法で指定されている12種類の土壌改良材の作用は、個々に資材によって作用効果が異なるが、土壌の保水力の向上、土壌の膨軟化の促進、保肥力の改善、微生物の活性化、透水性の向上、漏水防止作用、リン酸供給能の改善、土壌の団粒形成の促進などの作用を持った資材である。これらの土壌改良材を適正に耕地に散布することのよって、耕地の生産力を回復し、作物に適した土壌環境を維持するものである。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の具体的な実施例について、比較例と共に記載するが、本発明はこれら実施例に限定されないものであることは勿論である。
【0023】
[実施例1]
石灰石粉末100重量部に対して、水性バインダーとして、フミン酸カリウム溶液(10%水溶液)と水を加え、固形分換算で1.0、1.5、2.5重量部になるよう添加したものを、混合機で混合し、造粒機で丸く造粒し、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
[比較例1]
石灰石粉末100重量部に対して、糖蜜溶液(35%水溶液)と水を加え、固形分換算で1.5、2.5、5.0重量部になるよう添加したものを、混合機で混合し、造粒機で丸く造粒し、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0024】
【表1】

【0025】
これら実施例1、比較例1の結果を表1に示す。表1から、実施例1のものは造粒物強度、崩壊性、造粒性とも優れており、かつ製造時の臭気もなかったが、比較例1のものは固形分換算で1.5%のものが造粒物強度、造粒性の点で劣り、また製造時、強い臭気が発生した。
【0026】
[実施例2]
フミン酸カリウム塩(固形物)の5重量部を水100重量部に溶解し、この水溶液にカーボンブラックを35重量部添加し、分散し、固形分換算として13重量%濃度の均一な懸濁液を製造し、着色材液とした。
この着色材液について固形分換算で0.3、0.8、1.5重量部を石灰石粉末100重量部にそれぞれ添加したものに、水性バインダーとして、フミン酸カリウム溶液(10%溶液)を固形分換算で1.0、1.5、2.5重量部になるよう添加したものを、混合機で混合し、造粒機で丸く造粒し、乾燥・1〜5mmで分級して石灰質造粒物を製造した。
【0027】
[比較例2]
石灰石粉末100重量部に対して、カーボンブラック粉を0.54重量部添加し、乾式混合したものに、糖蜜溶液(35%溶液)を固形分換算で1.5、2.5、5.0重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0028】
【表2】

【0029】
前記実施例2、比較例2の結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明を実施した実施例2のものは、固形分換算したときに、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性の何れについても優れた結果となり、また製造時の臭気も殆どなかった。そしてこれら製造された造粒物は、土壌改良材や肥料だけでなく、融雪材としての機能も発揮できることになる。これに対し、比較例2のものは、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性に劣るものが多く、また製造時に何れも強い臭気が有った。
【0030】
[実施例3]
炭酸苦士石灰粉末100重量部に対して実施例2で作成した着色材液を固形分換算で0.3、0.8、1.5重量部になるよう添加したものに、水性バインダーとして、フミン酸カリウム溶液(10%水溶液)と水を加えて固形分換算で1.5、2.5、5.0重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0031】
[実施例4]
糖蜜溶液(35%溶液)100重量部に対して消石灰粉末5.0重量部添加混合し、濃度40重量%、pH9.0の混合液になるよう調整し、この混合液100重量部に対して、フミン酸カリウム溶液(10%溶液)を100重量部添加混合し、濃度25重量%の水性バインダー液Aを作成した。
一方、炭酸苦土石灰粉末100重量部に対して、実施例2で作成した着色材液を固形分換算で0.3、0.8、1.5重量部になるよう添加したものに、前記水性バインダー液Aを固形分換算で5.0重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0032】
[比較例3]
炭酸苦土石灰粉末100重量部に対して、カーボンブラック粉を0.34重量部添加し、乾式混合したものに、糖蜜溶液(35%水溶液)と水を加えたものを、固形分換算で1.5、2.5、5.0重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例3、4、そして比較例3の結果を表3に示す。この結果から明らかなように、本発明を実施した実施例3のものは、固形物換算したときに、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性の何れについても優れた結果となり、また造粒時の臭気も殆どなかった。また、実施例4のものについても、固形物換算したときに、造粒物強度、崩壊性、造粒性、着色性の何れについても優れた結果となり、また造粒時の臭気は若干はしたが問題になるほどではなかった。そしてこのように製造された造粒物は、土壌改良材や肥料だけでなく、融雪材としての機能も発揮できることになる。これに対し、比較例3のものは、造粒物強度、造粒性、着色性に劣るものが多く、また製造時に何れも強い臭気が有った。
【0035】
[実施例5]
ホタテ貝殻粉砕粉末100重量部に対して、実施例2で作成した着色材液を固形分換算で0.3、0.8、1.5重量部になるよう添加したものに、水性バインダーとして、フミン酸カリウム溶液(10%水溶液)を固形分換算で1.0、1.5、2、5重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質造粒物を製造した。
【0036】
[比較例4]
ホタテ貝殻粉砕粉末100重量部に対して、カーボンブラック粉末を0.34重量部添加し、乾式混合したものに、糖蜜溶液(35%溶液)を固形分換算として1.5、2.5、5.0、7.5重量部になるよう添加し、混合機で混合し、造粒機で丸くし、乾燥・1〜5mmで分級し石灰質土壌改良材及び肥料を製造した。
【0037】
【表4】

【0038】
実施例5、比較例4の結果を表4に示す。この結果から明らかなように、本発明を実施した実施例5のものは、比較例4のものに比較すると、造粒強度、造粒性、着色性、崩壊性について何れも優れた結果となり、また造粒時の臭気も殆どなかった。これらは土壌改良材や肥料だけでなく、融雪材としての機能も発揮できることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰質系粉末に、
フミン酸塩類に着色材を分散せしめた水懸濁液と、フミン酸塩類または/及び造粒助材から成る水性バインダーとの混合液を添加して造粒してなることを特徴とする石灰質造粒物。
【請求項2】
水懸濁液または水性バインダーの少なくとも一方にフミン酸塩類を含有するものとし、
石灰質系粉末100重量部に対して、
水懸濁液を固形分換算で0〜5重量%と、水性バインダーを固形分換算で0.1〜10重量部との混合液を添加して造粒し、乾燥したものを0.1〜10mmに分級してあることを特徴とする請求項1の石灰質造粒物。
【請求項3】
水懸濁液は、フミン酸塩類の水溶液を用いて着色材が分散形成されているか、フミン酸塩類と水を用いて着色材が分散形成されているかであることを特徴とする請求項1または2記載の石灰質造粒物。
【請求項4】
水懸濁液には、着色材として無機質顔料、有機質顔料の中から選択される少なくとも一つ以上が混合されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項5】
水性バインダーは、フミン酸塩類を固形分換算で100重量部に対して造粒助材を0〜5000重量部添加混合してなるものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項6】
石灰質系粉末は、石灰石、貝化石・貝殻またはドロマイトの少なくとも一つ以上を主成分とし、平均粒度1mm以下に粉砕したものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項7】
フミン酸塩類は、土壌、亜炭や褐炭で代表される若年炭類、風化した石炭類、レオナダイト類、草炭、泥炭の少なくとも一つ以上について、アルカリ抽出した後、酸性溶液で沈降して得られる高分子有機酸、または硝酸に代表される酸化剤を用いて酸化分解して得られる高分子有機酸のアルカリ金属塩類及び/又はアンモニウム塩から選ばれた少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項8】
造粒助材は、アルコール発酵廃液、イースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、乳酸発酵廃液、カラメル製造廃液、パルプ廃液、リグニン系化合物、加工でんぷん、セルローズ系化合物、糖蜜、リグニンに代表されるものから選ばれた少なくとも一つ以上であり、水性バインダーは、前記選んだ造粒助材を水溶液若しくは水分散液としたものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項9】
水懸濁液は、着色材100重量部に対して、フミン酸塩類を0.1〜100重量部添加して得られるものであることを特徴とする請求項4乃至8の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項10】
着色材は、有色の無機質顔料であり、鉄黒、ベンガラ、カーボンブラックに代表されるものであることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項11】
着色材は、有色の有機質顔料であり、フミン酸塩類、松煙、油煙に代表されるものであることを特徴とする請求項4乃至9の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項12】
石灰質造粒物は石灰質土質改良材であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項13】
石灰質造粒物は肥料であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項14】
石灰質造粒物は融雪機能を備えた着色材が含まれている場合、融雪材であることを特徴とする請求項4乃至11の何れか1記載の石灰質造粒物。
【請求項15】
石灰質系粉末に、
フミン酸塩類に着色材を分散せしめた水懸濁液と、フミン酸塩類または/及び造粒助材から成る水性バインダーとの混合液を添加した後、造粒して製造することを特徴とする石灰質造粒物の製造方法。
【請求項16】
水懸濁液または水性バインダーの少なくとも一方にフミン酸塩類を含有するものとし、
石灰質系粉末100重量部に対して、
水懸濁液を固形分換算で0〜5重量%と、水性バインダーを固形分換算で0.1〜10重量部との混合液を添加して均一に混合したものを造粒し、乾燥したものを、粒度が0.1〜10mmに分級した請求項9の石灰質造粒物の製造方法。
【請求項17】
水懸濁液には、着色材として無機質顔料、有機質顔料の中から選択される少なくとも一つ以上が混合されていることを特徴とする請求項15または16記載の石灰質造粒物の製造方法。

【公開番号】特開2008−247998(P2008−247998A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88574(P2007−88574)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591100563)栃木県 (33)
【出願人】(507102425)有限会社ドライテック (1)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【出願人】(507102436)日本苦土工業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】