説明

石炭のバイオガス化によりメタン及び他の有用な製品を生成する方法

本発明は、石炭の細粒化、非石炭性原料の分離、化学品の添加及び多段の嫌気性発酵を含む複数の工程において、メタン、二酸化炭素及び他の有用な気体又は液体の生成物へと変換する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭の分離、可溶化、化学処理及び効率的、高速の嫌気性発酵による変換により、石炭からメタン、二酸化炭素、気体及び液体の炭化水素及び他の有用な製品を生成及び製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性消化は、糞、廃棄汚泥及び他の有機物を主体とした原料から、メタン及び他の有用な製品を得るのに用いられる、よく知られた方法である。有機物の原料は、嫌気性発酵又は生分解の基質を提供し、植物及び穀物の廃棄物、下水汚泥及び他のゴミを含んでもよい。嫌気性消化は、メタン及び二酸化炭素のようなガスを生成する前記の炭素質の原料を分解する発酵法又は生分解法である。嫌気性消化は、所定の圧力、温度及び他の条件下で、炭素質の原料を分解してガスに変換するのに、微生物の集団を利用する。
【0003】
アメリカ合衆国は、1兆トン以上の石炭資源を有するが、この内の半分以上が低位の石炭である。石炭は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄及び他の鉱物質から成る不均質の原料である。石炭を燃焼させると、炭素、窒素、及び硫黄の酸化物並びに水銀などある種の重金属が大気中に放出される。石炭の燃焼による汚染は、他の化石燃料よりも際立っている。低位の石炭は、熱量に相応した低い市場価値しかなく、且つ多量の汚染物を生成するため、発電への使用はますます魅力を失ってきた。
【0004】
熱的及び/又は化学的方法を用いた、多種の石炭変換技術が商業的に長年使われている。しかしながら、これらは高温・高圧下で石炭をガス及び化学製品へ変換する方法であり、多くの資本金を要し運転費が高く、熱力学的効率は比較的低く、二酸化炭素の生成量及び他のガスの排出量が著しく、固形の廃棄物を安全に処理するのに大量の水を必要としていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、石炭を汚染無く燃焼するメタン及び他の有用な生成物へとバイオ変換する方法により、上記問題点を解決し、エネルギー源の供給の増加、従来は廃棄されるか又は使用されなかった化石燃料の効率的な利用、環境への影響が低く効率の高い技術の採用することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の工程を含む現地外で(ex situ)石炭をメタン及び他の有用な生成物に変換する方法に関する。
【0007】
(a)少なくとも石炭の一部が可溶化されるように、液体で石炭を処理する。
(b)脂肪酸を含んだ生成物を生成するように、工程(a)の生成物の少なくとも一部を、加水分解性微生物集団で処理する。
(c)メタンを含んだ生成物を生成するように、工程(b)の生成物の少なくとも一部を、メタンを生成させる嫌気性微生物集団で処理する。
それによって石炭が現地外で変換される。
【0008】
一実施態様では、上記工程(a)には、下記の処理を含んでいる。
【0009】
(i)水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのようなアルカリでの石炭の処理
(ii)少なくとも石炭の一部が可溶化されるように、処理(i)の生成物の少なくとも一部を、有機酸(例えば、炭素数4までのカルボン酸又は安息香酸)、又は有機酸の塩又はエステルでの処理、並びに
(iii)鉄の存在下で、処理(ii)の生成物の少なくとも一部を過酸化水素での処理。
【0010】
好適な一実施態様では、工程(a)、好ましくは処理(ii)には、酢酸及び/又は酢酸の塩又はエステル、又は安息香酸及び/又は安息香酸の塩又はエステルが含まれる。
【0011】
上記工程の好適な一実施態様では、工程(b)で処理される工程(a)からの生成物は、処理(iii)で得られた液体の一部である。
【0012】
別の実施態様では、工程(a)の液体は、芳香族炭化水素(好ましくはフェナントレン、クリセン、フルオランテン及びピレン)、窒素を含む環状芳香族、(好ましくは、アクリジン又はカルバゾール)、アントラセン、フルオレン、カテコール及び重油から成る溶媒から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】石炭のバイオ変換システムの一実施例の概略を示す模式図
【図2】石炭のバイオ変換システムの好適な実施例の概略を示す模式図
【図3】加水分解反応器及びバイオガス化反応器内のpH値の経時変化を示す図
【図4】バイオ変換システムによるメタンの累計生産量の経時変化を示す図
【図5】バイオガス化反応器によるバイオガス及びメタンの日々の生産量を示す図
【図6】COMCAPSシステムの加水分解反応器内の全有機酸の日々の濃度を示す図
【図7】COMCAPSシステムの加水分解反応器内に残留する溶解した石炭の日々の濃度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[用語の定義]
「石炭の変換(converting coal)」とは、石炭のエネルギー生成に有用なメタン及び他の生成物への化学的及び/又は物理的変換を意味する。「バイオ変換(bioconversion)」とは、炭素を含む組成、例えば、石炭など炭素を含む分子を、固有又は非固有の微生物により、メタン及び他の有用なガス並びに液状生成物へと変換することを意味する。あるいは、処理に先立つ上記組成から除去された石炭の変換も含む。化学的又は物理的電源からの電気を与えることにより、このようなバイオ変換を刺激することができると思われる。
【0015】
「可溶化する(solubilizing)」又は「可溶化した(solubilized)」とは、石炭に関して用いた場合には、塩、エステル又は酢酸で処理した後の、石炭中の固形分が減少することを意味する。前述のことに限定及び/又は本発明に限定することなく、(i)石炭の基質中の化学結合を切断して、石炭の一部を化学的に分解及び/又は(ii)炭素層を保持している結合のへき開により、そのような固形分の減少を果たすことができると考える。従って、石炭の可溶化は、石炭の化学的分解及び/又は結合のへき開に関することであると言える。
【0016】
「石炭(coal)」とは、燃料として用いられる暗褐色から黒色で、化石化された植物から形成され、種々の有機化合物及びある種の無機化合物から成る、炭素を含む黒鉛状の素材である。
【0017】
本明細書では、2つの用語「バイオガス化(biogasification)」と「メタン発生(methanogenesis)」は基本的に交換可能に用いている。
【0018】
「酢酸塩(acetate)」は、酢酸の1つ以上の水素原子が、塩基の陽イオンに置き換わった塩を意味し、有機陰イオンCHCOOを含んでいる。本発明では、酢酸の塩又はエステルは水と混合しても、しなくてもよい。一実施態様では、酢酸の塩又はエステルは、水との混合物において用いられる。水を溶媒としてそのような酢酸塩が用いられると、(最終的なpH値に依存して)一部が酢酸となるか、酢酸を形成し、可溶化の工程に関与することを正しく認識すべきである。本発明では、安息香酸のような他のカルボキシル酸の塩に対しても同様な定義を意味する。
【0019】
「芳香族アルコール(aromatic alcohol)」は、化学式ROHを有する有機化合物で、Rは単環又は縮合環の芳香族群を意味する。ある実施態様では、芳香族群Rは、置換されていない。別の実施態様では、Rは1つ以上の炭化水素群及び/又は−OH群に置換されている。実施態様によっては、−OHは芳香族環又はその環の置換基に存在するか、双方に存在することもある。
【0020】
「環状脂肪族アルコール(cycloaliphatic alcohol)」とは、化学式ROHを有する有機化合物で、Rは、置換又は非置換の環状脂肪族群を意味する。ある実施態様では、置換基群は、1つ以上の−OH及び/又は脂肪族炭化水素である。脂肪族アルコールには、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール及びシクロヘプタノールが含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0021】
「微生物集団(microbial consortium)」とは、2種以上又は2株以上の微生物を含み、種又は株が互いに作用し合う微生物培地(又は天然の群がり)を意味する。
【0022】
以下の略号はそれぞれ、VS:揮発性固形分、SRT:固形分滞留時間、HRT:加水分解保持時間、VFA:揮発性脂肪酸、AE:酸エステルを意味する。
【0023】
[発明の詳細な説明]
本発明の一面は、石炭を、粒子化、非石炭性鉱物の分離、化学品の添加及び多段の嫌気性発酵を含む複数の工程において、メタン、二酸化炭素及び他の有用な気体又は液体の生成物へと変換する方法に関する。
【0024】
本発明は、以下の工程を含む現地外で石炭を変換する方法を提供する。
【0025】
(a)少なくとも石炭の一部が可溶化されるように、好ましくは酢酸及び/又は酢酸塩又は酢酸エステルなどの液体で、石炭を処理する。
(b)脂肪酸を含んだ生成物を生成するように、工程(a)の生成物の少なくとも一部を、加水分解性微生物集団で処理する。
(c)メタンを含んだ生成物を生成するように、工程(b)の生成物の少なくとも一部を、メタンを生成させる嫌気性微生物集団で処理する。
それによって石炭が現地外で変換される。
【0026】
一実施態様では、上記工程(a)には、下記の処理を含んでいる。
【0027】
(i)水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのようなアルカリでの石炭の処理
(ii)少なくとも石炭の一部が可溶化されるように、処理(i)の生成物の少なくとも一部を、有機酸(例えば、炭素数4までのカルボン酸又は安息香酸)、又は有機酸の塩又はエステルでの処理、並びに
(iii)鉄の存在下で、処理(ii)の生成物の少なくとも一部を過酸化水素での処理。
【0028】
上記の順序通りの処理も一実施態様であるが、石炭の可溶化が促進されるように、処理(i)、(ii)又は(iii)の順序を変えるか又は組み合わせる実施態様も考えられる。本発明の方法では、特定の順序は必要としない。更に、石炭を可溶化させるのに、上記処理(i)、(ii)又は(iii)で用いた溶媒を別々に用いても、組み合わせて用いるか、ある溶媒は用いなくてもよい。
【0029】
工程(a)の液体は、芳香族炭化水素、クレオソート及び重油から選択した溶媒でもよい。ある実施態様では、溶媒は、フェナントレン、クリセン、フルオランテン及びピレンの1つ以上から成る芳香族炭化水素、窒素を含む環状芳香族、アントラセン、フルオレン及びカテコールである。窒素を含む環状芳香族としては、アクリジン又はカルバゾールが好ましい。
【0030】
別の実施態様では、工程(a)の液体は、アルカリ、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸エステル及び過酸化物から選択される。液体がアルカリの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はルイス塩基が好ましい。実施態様によっては、液体は炭素数1〜4のカルボン酸であり、炭素数1〜4のカルボン酸の塩、炭素数1〜4のカルボン酸エステルが含まれる。別の実施態様では、液体は、酢酸、酢酸の塩又は酢酸エステルであり、安息香酸、安息香酸の塩又は安息香酸エステルである。液体が過酸化物である場合には、過酸化水素が好ましく、例えば鉄の存在下で過酸化水素が用いられる。
【0031】
非限定的な実施態様では、0〜300℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜200℃で処理される。
【0032】
非限定的な実施態様では、pH値2〜12、好ましくは3〜11、より好ましくは5〜10で処理されるか、pH値1〜6、2〜5又は3〜4のように酸性域か、pH値8〜13、9〜12又は10〜11のようにアルカリ域で処理されてもよい。
【0033】
非限定的な実施態様では、特定の圧力、大気圧、大気圧よりも高い圧力、大気圧よりも低い圧力から選択して処理される。例えば、縦穴のように現地で石炭の堆積物の処理では、圧力は堆積物にまで及んだ圧力であるか、又は液体を縦穴に導入する位置で調整される加圧された圧力である。
【0034】
特定の実施態様では、工程(a)で用いられる液体は、酢酸、酢酸の塩(すなわち、アセテート)又は酢酸エステルの一つ又は複数の組み合わせたものである。
【0035】
酢酸の塩又はエステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸へキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸ノナニル、酢酸デシル、酢酸ウンデシル、酢酸ラウリル、酢酸トリデシル、酢酸ミリスチル、酢酸ペンタデシル、酢酸セチル、酢酸ヘプタデシル、酢酸ステアリル、酢酸ベヘニル、酢酸ヘキサコシル、酢酸トリアコンチル、酢酸ベンジル、酢酸ボルニル、酢酸イソボルニル及び酢酸シクロヘキシルであるが、これに限定されるものではない。
【0036】
酢酸の代わりに、安息香酸又は他のカルボン酸の塩又はエステルを用いてもよく、上記酢酸塩又はエステルの幾つかに代えて、安息香酸の塩及び/又はエステルを用いることもできる。
【0037】
ある実施態様では、工程(a)の液体は、芳香族炭化水素、クレオソート及び/又は重油のような、処理を促進する1つ又は複数の溶媒である。芳香族炭化水素には、フェナントレン、クリセン、フルオランテン及びピレンが含まれ、窒素を含む環状芳香族、例えばアクリジン、カルバゾール並びにカテコール(又はピロカテコール)も溶剤に適している。アントラセン及びフルオレンのような、芳香族も使用できる。有用な溶媒には、上記の溶媒並びにその混合物、好ましくは共晶組成が含まれる。そのような混合物は、担体液、例えば重油に溶け込む(混合物は溶液の5〜10%程度である)。溶媒を、80〜400℃、好ましくは80〜300℃、より好ましくは100〜250℃、最も好ましいのは約150℃に加熱すると最も効果的である。400℃以上に加熱すると効果が薄れる。
【0038】
ある実施態様では、工程(a)の液体は、亜リン酸エステルを含む1つ又は複数の溶媒である。亜リン酸エステルの一般式はでP(OR)で示される。亜リン酸エステルは、亜リン酸 (HPO)のエステルである。単純な亜リン酸エステルは亜リン酸トリメチル(P(OCH)である。リン酸エステルも考えられる。オルトリン酸は、3つの−OHを有しているので、1、2又は3つのアルコール分子でエステル化され、モノ−、ジ−又はトリ−エステルが生成できる。特定のメカニズムに拘束されることなく、亜リン酸及びリン酸エステル、又はリンのオキソ酸エステル、又はリンのチオ酸エステル、又はリンのオキソ酸とアルコールの混合物、又はリンのチオ酸とアルコールの混合物、又はリンのチオ酸とアルコール及び酢酸及び/又は酢酸塩又はエ酢酸エステルの混合物を含んでいる化合物は、炭素を含んでいる分子と反応して、炭素結合を切断し、分子内に水素を付加して、一酸化炭素、二酸化炭素、並びにメタン生成微生物集団によりメタン及び他の有用な炭化水素へとバイオ変換し易い揮発性脂肪酸のような、より小さな分子を生成することが起こり得る。非限定的な一実施態様では、リンのオキソ酸エステル、又はリンのチオ酸エステル、又はリンのオキソ酸とアルコールの混合物、又はリンのチオ酸とアルコールの混合物と石炭との反応による生成物は、メタン及び他の有用な生成物の生成開始又は生成を増大させるように地下層におけるメタン生成微生物集団を刺激する。
【0039】
本発明の方法は、現地外(石炭などの炭素を含む原料が、地層から移され、本発明の方法で処理される)又は米国特許第3,990,513号明細書に記載の方法により実行された。
【0040】
本発明は、当技術に多くの利点をもたらす。例えば、本発明の方法により石炭が、加熱、発電及び輸送用のクリーンな燃料として利用できる水素、メタン、二酸化炭素及び他の有用な生成物へと変換される。本発明では、バイオ変換を促進及び加速するように、細粒化及び可溶化を含む予備的な工程を活用している。工程(b)で生成された異なった加水分解反応器からの揮発性脂肪酸及び酸エステルのpH値、温度、熱伝導性、栄養分及びCODなどの化学的及び物理的性質を平衡化するため、並びにバイオガス化反応器への揮発性脂肪酸及びエステルの投入速度を調節するためにバッファータンクが用いられる。揮発性脂肪酸及びエステルのバイオガス化反応器への安定した流れにより、反応器内のバクテリアがより効率よく処理するので、平衡化により、生成されるメタン濃度が増大し二酸化炭素濃度が減少する結果、収率が増大し且つ安定する。本発明のシステムは、加水分解反応器の使用を最大化且つ最適化して、石炭の変換効率を高め、小資金で操業費が低く抑えガスの生成が最大となるように設計されている。本発明の方法では、加水分解反応器及びバッファータンク内で生成された水素ガスは、バイオガス化反応器内で使用して、安定して、高速で、高い効率でメタンへと変換することを可能としている。
【0041】
本発明は、地下層において炭を含んでいる鉱物のメタン及び他の有用な炭化水素へのバイオ変換も考慮している。少なくとも1つのリンのオキソ酸エステル又はリンのチオ酸エステル、又は1つ以上の環状及び/又は芳香族アルコール、又は水素、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、リンのオキソ酸、リンのオキソ酸塩、ビタミン、鉱物質、鉱物質塩、金属及びイーストからの抽出物より成る郡から選択された1つ以上の化合物又は化学物質を含む溶液で地下層を処理することにより、バイオ変換される。
【0042】
上記実施態様は、1つ以上の芳香族及び/又は環状脂肪族アルコール、又は芳香族及び/又は環状アルコールの混合物、並びに芳香族アルコール及び/又は環状アルコール、水酸化物、過酸化物及び鉄の1つ以上の混合物を含む化合物を導入することも含まれている。これら化合物の導入により、炭素を含有している分子が、メタン及び他の有用な炭化水素へとバイオ変換され易い、より小さな化合物へ、迅速且つ効率的に分解又は可溶化される。可溶化された生成物は、メタン生成バクテリア集団により新陳代謝されてメタン及び他の有用な炭化水素へと変換される。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、メタン及び/又は他の有用な生成物を含む生成物へと石炭へバイオ変換する工程の一部として、上述したように、石炭が処理されて少なくともその一部が可溶化される。上述のような処理又はそのように処理された生成物と相俟って、メタンを含む生成物を生成するバイオ変換が効果的となる。
【0044】
本発明による石炭のバイオガス化システムには、特定の範囲の粒子径への石炭の細粒化、不純物分離装置、化学処理槽、少なくとも1つの加水分解反応器、バッファータンク及びバイオガス化反応器を組み込むことが好ましい。本システムにおいては、石炭が大きな表面積を有し、可溶化の化学処理及び非石炭粒子の重力による分離がし易くなるように、特定の粒子径の範囲にまで細粒化又は破砕される。破砕された石炭粒子は、分離装置に移送されて、比重の差により非石炭粒子が除去される。次いで、石炭粒子は可溶化タンクへ移送され、小さな炭化水素分子を有する主として液体へと、石炭粒子を可溶化する化学薬品が添加される。可溶化された石炭は、加水分解反応器へ移送されて揮発性脂肪酸及び酸エステルへとバイオ変換される。加水分解反応器内で生成された、可溶性の揮発性脂肪酸及び酢酸塩のような酸エステルは、物理的性質及び化学的性質が平衡化されるように、バッファータンクへ移送されることが好ましい。平衡化された揮発性脂肪酸及びエステルは、メタン生成バクテリアの成長速度及びメタンガスの生成が最適化されるように、調節された流速でバイオガス化反応器へ移送される。
【0045】
本発明は、複数の工程の化学処理段階及び2段の嫌気性消化工程により、例えばメタン、水素及び二酸化炭素並びにそれらの混合物を生成する方法を提供する。好適な実施態様における方法には、以下の工程(a)〜(i)が含まれる。(a)特定の粒径範囲へ原料炭を破砕又はせん断する。(b)石炭粒子を分離装置に移送して、そこで比重差により石炭粒子から非石炭粒子を分離し、非石炭粒子を工程外に除去する。(c)石炭粒子を1つ又は複数のタンクに移送し、そこで主として液相となるように化学薬品により石炭粒子を可溶化する。(d)可溶化された石炭を加水分解反応器へ移送し、嫌気性の条件下で第一の加水分解反応器内の第一の加水分解混合物をある期間(第一の期間)保温する。第一の加水分解混合物は、微生物集団及び石炭の可溶化で得られた水性液体を含んでおり、第一の加水分解反応器内は、可溶化された石炭を基質とする加水分解バクテリア培地を内蔵している。(e)第一の期間保温した後に、第一の加水分解反応器にある混合物の水性液の一部をバッファータンクに移送し、バッファータンク混合物とする。(f)バッファータンク混合物の一部を、揮発性脂肪酸及びエステルを基質とするメタン生成バクテリア培地を内蔵しているバイオガス化反応器へ移送し、バイオガス化混合物とする。(g)バイオガス化混合物をある期間(第二の期間)保温すると、その間にメタン、水素及びそれらの混合物から選択されるガスが生成される。(h)バイオガス化混合物の一部を第一の加水分解反応器に移送し、ある期間(第三の期間)保温する。
【0046】
加水分解反応器及びバッファータンク内において、揮発性脂肪酸及び酸エステルと共に、水素、メタン及び二酸化炭素ガスが生成される。これらのガスは、バッファータンクとバイオガス化反応器との間で循環される。加水分解反応器、バッファータンク及びバイオガス化反応器内の混合物は、バイオ変換が最適化されるように、間欠的に、又は連続的に撹拌される。所望の期間が経過したら、バイオガス化反応器内の混合物の一部が、加水分解反応器へ再循環される。バイオガス化反応器からの固体排出物は、ろ過されて脱水されるが、液体は可溶化タンクに戻されて、石炭の可溶化に利用される。ろ過、脱水された固体排出物は、廃棄物処理設備へ送るか、又は埋め立て又は土壌の改質又は他の用途に有効利用される。
【0047】
好適な実施態様においては、可溶化槽、加水分解反応器、バッファータンク及びバイオガス化反応器は、一連の導管又はパイプを介して連結されており、その導管又はパイプを通って液体又は気体が移送される。すなわち、一連の導管は、可溶化槽の排出口と加水分解反応器の導入口を連結する第一の導管、加水分解反応器の排出口とバッファータンクの導入口を連結する第二の導管、バッファータンクの排出口とバイオガス化反応器の導入口を連結する第三の導管、並びにバイオガス化反応器の排出口と加水分解反応器の導入口を連結する第四の導管から成っている。バイオガス化排出物処理タンクと可溶化槽を連結する第五の導管を含んでもよい。
【0048】
以下の詳細な説明において、本発明の別の特徴、目的及び利点などを述べる。
【0049】
本発明は、水素及びメタンガスを生成するために、石炭の可溶化及び嫌気性消化の改良された方法並びにその方法を実行する装置を提供する。
【0050】
一実施例において、本発明は、機械的工程、化学的工程及び2相の嫌気性消化系を組み合わせたCOMCAPSシステムを利用している。このシステムは、石炭を、ある特定の範囲の大きさへと粒子径を減少させる石炭処理装置、非石炭粒子を除去、廃棄する石炭分離装置、複数の可溶化槽、少なくとも1つの加水分解反応器、バッファータンク、バイオガス化反応器及び廃液処理装置を用いている。COMCAPSシステムにおいて、原料炭は、ある特定の範囲の大きさを有する粒子となるように、細粒化、粉砕又はせん断される。次いで、石炭粒子は、比重式分離系で処理され、非石炭粒子が分離されて、系外に排出される。残った石炭粒子は、複数の可溶化処理タンクへ移送され、化学薬品により、揮発性脂肪酸及び酢酸塩のようなエステルを含んでいる可能性のある、小さな分子から成る主として液体へ可溶化される。可溶化された石炭及び固体は加水分解反応器へ移送され、揮発性脂肪酸及び酢酸塩のようなエステルに変換される。好適な実施態様では、可溶性の揮発性脂肪酸及び酸エステルは、バッファータンクへ移送され、バイオガス化反応器への投入が調整できるように、揮発性脂肪酸及び酸エステルの化学的性質及び物理的性質が平衡化される。その結果、メタン生成に最適となる、pH値、温度及び他の条件を安定に保つことになる。平衡化された揮発性脂肪酸及び酸エステルは、ガスを生成するバイオガス化反応器へ移送される。バイオガス化反応器に残っている液体は加水分解反応器に戻され再循環される。バイオガス化反応器から排出される固体は、ろ過され、脱水される。固体から分離された液体は可溶化槽に戻されて再循環される。
【0051】
本発明は、例えば、石炭固形分の減少、分離、可溶化及び二相の嫌気性消化を含む多段システムによりメタン、水素及び二酸化炭素の生成の方法を提供する。この方法には、石炭粒径の縮小、非石炭粒子の除去及び石炭の可溶化、それに続く石炭固形分、可溶化された石炭及び含水溶液成分を含む混合物の、嫌気性条件での保温工程が含まれ、加水分解手段含まれている。加水分解反応器では、主として水素及び二酸化炭素ガスが生成されるが、メタンも生成され得る。
【0052】
好適な実施態様では、最初の保温の後、加水分解反応器内に存在する揮発性脂肪酸及び酸エステルは、加水分解反応器の排出口を通って、バッファータンクに移送され、揮発性脂肪酸及び酸エステルの物理的性質が平衡化される。バッファータンクにおいても、水素及び二酸化炭素ガスが生成され得る。平衡化された揮発性脂肪酸及び酸エステルは、メタン生成手段を備えた、メタン相消化装置又はバイオガス化反応器へ移送される。メタン相消化装置では、平衡化された揮発性脂肪酸及び酸エステルが、メタン生成手段と混合される。生成された混合物は、ある期間(第二の期間)保温されると、メタン及び二酸化炭素ガスが生成される。混合物を、随時に間欠的に撹拌してから、ある期間静置する。所定の期間後に、メタン相消化装置内に在る混合物の一部は、加水分解反応器へ戻されて再循環される。一方、メタン相消化装置からの廃液は濾過、脱水され、液体は可溶化タンクへ戻されて再循環される。
【0053】
本発明による方法は、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭又は無煙炭など全ての石炭に対して実行できる。本発明による方法は、加熱すると石油と天然ガスに分解する油母頁岩、油母を含んだ堆積岩及び不溶性有機物の混合物を含む化石でも実行できる。油母は、炭素、水素、酸素、窒素及び硫黄を含み、藻、花粉、胞子、胞子外皮(spore coat)及び昆虫を含む凝縮された有機物から形成されている。本発明による方法は、石炭及び/又は油母頁岩及び/又は、排水汚泥、廃棄食物、森林廃棄物及び農業廃棄物(これらには限定されないが)など他の炭素を含んだ有機性基質との全ての混合物において実行できる。
【0054】
本発明による一実施態様では、原料炭は、砕破、粉末化又はその他の方法により、大きな表面積を有するように粒子径をある範囲まで減少させる。好適な実施例では、粒子径の範囲は100〜250ミクロンである。
【0055】
浮沈又は遠心分離など、分離技術を用いて石炭と非石炭の不純物との比重差により、砕破又は粉末化された原料炭中の不純物が除去される。
【0056】
不純物が減少した砕破又は粉末化された原料炭の成分の分子量が減少するように、化学薬品で可溶処理されて、石炭の成分は解重合されて、加水分解し易い化合物へと変化する。可溶化に有用な化学薬品は、酢酸及び/又は酢酸塩及びエステル、アリルアルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、安息香酸、安息香酸塩及びエステル、C1〜C4カルボキシル酸、過酸化水素、ルイス塩基、金属イオン、亜リン酸エステル及びこれらの組み合わせ、並びに上記以外の全ての溶媒が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
好適な実施態様では、可溶化用の化学薬品を水及び原料炭と混合し、約40℃において少なくとも48時間撹拌する。その間に、一連の手順で、手順毎に特定の化学品が添加される。一連の可溶化の手順において、可溶化されずに残った固体は、化学処理工程へ再循環されて、可溶化される。
【0058】
加水分解段階、バッファータンク及びメタン生成段階は、可溶化された石炭、揮発性脂肪酸及び酢酸エステル基質の性質、並びに可溶化された石炭中、揮発性脂肪酸及び酢酸エステル基質中の固体に関連するpH値の変動範囲内での運転が可能である。好適な実施態様では、加水分解反応器のpH値は、5.5〜6.5.及びバイオガス化段階ではpH値は、7.0〜7.5に保たれる。
【0059】
システム全体は、10〜70℃、好ましくは35〜65℃、より好ましくは40〜60℃の範囲における定温又は温度を変化させて運転される。
【0060】
システム全体は、大気圧と同じか又はやや高い圧力で運転されるが、全体又は部分的に大気圧よりも高い圧力でもよい。
【0061】
好適な実施態様では、揮発性脂肪酸及び酢酸エステルが、バイオガス化反応器に入る前に、バッファータンクにおいてその物理的及び化学的性質が平衡化される。物理的及び化学的性質には、温度、伝導度、栄養分及びBODが含まれるが、これに限定されない。平衡化された揮発性脂肪酸及び酢酸エステルは、バイオガス化反応器内において、より効率的にバクテリアと反応し、その結果ガス生成速度及び収率が高まる。
【0062】
本発明においては、周知の全ての加水分解又はメタン生成手段が使用できる。これらには、酸類、アルカリ類、酵素類及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好適な実施態様では、加水分解及びメタン生成手段は、
微生物である。
【0063】
上述又は以下で述べるように、改造された二段嫌気性システムが、多量のメタンを生成すると期待されるが、本発明では、一段、二段又は多段の嫌気性発酵システム又は既知の方法など、全ての嫌気性発酵システムを用いることができる。
【0064】
既知の実施態様では、加水分解反応器から収集された水素の濃度は、10〜60%、好ましくは20〜50%、より好ましくは約35%である。
【0065】
既知の実施態様では、バイオガス化反応器から収集されたメタンの濃度は、40〜80%、好ましくは90〜97%である。
【0066】
バイオガス化反応器から加水分解反応器への液体の再循環は、連続的でも、間欠的でもよい。液体の再循環工程は、少なくとも1秒、少なくとも1分又は少なくとも8時間又はそれ以上と、どのような時間の間隔でもよい。液体再循環システムには、網、篩、ストレーナ、格子、フィルター又は類似の部材、又はその組合せなどタンク又は反応器から別のタンク又は反応器に固体が移動するのを防止又は阻止する部材、並びにタンク及び反応器の間の液体及び固体の移動を実行する既に設計が既知のポンプを組み込んでもよい。
【0067】
既知の実施態様では、メタン生成バクテリア培地を取り付け、バクテリアを成長させる表面を提供するために、バイオガス化反応器に、大きな比表面積を有する1つ又は複数の素材が組み込まれている。
【0068】
本発明においては、加水分解又はメタン生成する中温又は好熱性の全ての嫌気性菌の消化システムが用いることができる。
【0069】
本発明による一実施態様では、水素生成嫌気性システムは、Clostridium種からの微生物を利用する。例えば、Clostridium種には、C.thermolacticum、C.thermohydrosulfricum、C.thermosucinogene、C.butyricum、C.botulinum(ボツリヌス菌)、C.pasteurianum、C.thermocellum及びC.beijirinckiが含まれるが、これらに限定されない。別の実施態様では、水素を生成する嫌気性システムは、Lactobacillus及び/又はEubacteria(真正細菌)種からの微生物を利用する。例えば、Lactobacillus種には、Lactobacillus paracaselが含まれ且つ/又はEubacteria種には、Eubacteria aerogenesが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
好適な加水分解生物には、Clostridium、Bacteroides、Ruminococcus、Acetivibrio、Lactobacillus並びに他のFirmicutes及びProteobacteriaが含まれる。
【0071】
下水汚泥又は醸造廃棄物からメタンを生成に用いられることで知られている、酸生成バクテリアを利用するメタン生成嫌気性システム及びメタン生成生物は、本発明に用いてもよい。D.F.Toerien and W.H.J.Hattingh,Water Research,Vol.3,pgs 385−416,Pergamon Press(1969)の“Anaerobic Digestion,1.The Microbiology of Anaebric Digestion”に嫌気性消化の微生物学の概観が説明されている。そこで述べられているように、酸生成に適した主な種は、Aerobacter、Aeromonas、Alcaligenes、Bacillus、Bacteroides、Clostridium、Escherichia、Klebsiella、Leptospira、Micricoccus、Neiseria、Paracolobacterium、Proteus、Pseudomonas、Rhodopseudomonas、Rhodobacter、sphaeroides、Rubrobacter種、Erythrobacter litorailis、Jannaschia種、Rhodopirellula baltica、Sarcina、Serratia、Streptococcus及びStreptomycesのような属からの種が含まれるが、これに限定されない。本発明では、Methanobacterium oinelianskii、Mb.Formicium、Mb.Sohngeni、Methanosarcia berkeri、Ms.Acetovorans、Ms.Methanica及びMc.Mazei、Methanobacterium thermoautotrophicus、Metahnobacterium bryantii、Methanobrevibacter smithi、Methanobrevibacter arboriphilus、Methanobrevibacter ruminantium、Methanospirillum hungatei、Methanococcoides buntonii、Methanococcus vannielli、Methanothrix soehngenii Opfikon、Methanothrix種、Methanosarcina mazei、Methanosarcina thermophila及びこれらの混合物から成る群から選択される微生物も用いられる。
【0072】
好ましいメタン生成生物には、Methanobacteriaceae、Methnosarcinaceae、Methosaetaceae、Methonocorpusculaceae、Methaanomicrobiaceae及び他のArchaea(古細菌)生物が含まれている。
【0073】
他の有用な微生物及び微生物の混合物は、当業者に明らかになるであろう。
【0074】
例えば、米国特許第6,543,535号明細書及び米国特許出願公開第2006/0254765号明細書は、代表的な微生物及び栄養分を開示しており、その内容は参照事項に組み込まれている。適切な刺激薬も含まれている。
【0075】
これらの生物の成長を促進し、それに本願の方法を促進する種々の化学薬剤を用いてもよい。そのような化学薬剤には、主栄養分、ビタミン、微量元素(例えば、非限定群としての、B、Co、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Se、W、Zn)及び(リン酸塩及び酢酸塩のような)緩衝液が含まれる。成長に適した培地も含まれてもよい。本発明を実行するには、最適な成長条件を決めるために、石炭床中に存在する微生物集団の性質を確認することが先ず必要かもしれない。
【0076】
メタン生成バクテリアには、多岐にわたる基質が用いられるが、最近は、各々の種は、数種の化合物に限られると思われるようになった。従って、下水又は醸造廃棄物のような有機基質中の化合物を完全に発酵させるには、数種のメタン生成バクテリアが要求されるかもしれない。例えば吉草酸(バレリン酸)では、3種のメタン生成バクテリアが必要である。吉草酸は、Mb. Suboxydansにより酸化され、酢酸及びプロピオン酸となり、それ以上には変化しない。Mb.Propionicumのような第二の種は、プロピオン酸を酢酸、二酸化炭素及びメタンに変換することができる。Methanosarcina methanicaのような第三の種は酢酸を発酵するのに必要である。
【0077】
二相嫌気性発酵システムのバイオガス化相からの廃液を、化学処理工程において加水分解するか、又は生的方法において加水分解してもよい。
【0078】
一実施例では、有機基質は、ルイジアナ州ウィルコックス層の褐炭である。以前の研究では、従来の一段の撹拌タンク式嫌気性発酵反応器を用いた研究は、この褐炭の嫌気性消化の可能性を明らかにした(Isbister,J.D.and Barik,S., Microbial Transformations of Low Rank Coals,pp 139−1569)。分析により、この褐炭は、乾燥重量で、炭素が63%、水素が4.5%、窒素が1.3%、硫黄が1.2%、酸素が16%及び灰分が14%であった。良好な嫌気性消化には、25−35のC/N比率が必要なので、アンモニアのような無機の形態又は食品廃棄物、動物の糞又は尿のような有機の形態で窒素が補充される。
【0079】
好適な実施態様においては、可溶化された石炭基質は、動物の糞、食品廃棄物、尿、無機窒素肥料、アンモニア及びそれらの組み合わせから成る群より選択された窒素源が補充される。
【0080】
別に面において、水素及びメタンを生成するのに、本発明は機械的、化学的及び嫌気性工程を組合せたシステムを用いる。このシステムは、石炭破砕機及び重力式分離システム、少なくとも1つの化学処理槽を含む化学処理システム、少なくとも1つの加水分解反応器、バッファータンク及びバイオガス化反応器を含んで構成される。石炭破砕機は、石炭を破砕、せん断又は粉末化する機械的システム、並びに石炭を重力式分離システムへ搬送するコンベヤー又は別の搬送手段を含む。重力式分離システムには、ある範囲の比重の石炭粒子を、異なった比重を有する非石炭粒子から分離することが可能な幾つかの形式の設備が含まれてもよい。石炭破砕システム及び重力式分離システムの設計は、当業者には明らかであろう。
【0081】
化学処理システムは、石炭を可溶化する幾つかの化学薬品を収容できる少なくとも1つの槽を有する。このシステムは、1つ以上の固体、液体の導入口及び排出口、少なくとも底部の1つの排出口、機械式及び/又は油圧式及び/又は磁気式撹拌又は混合手段を有する、石炭を段階的に処理する少なくとも3つの槽を用いる。各槽又は段階における化学的処理には、水と同時か又は順次1つ以上の化学薬品を追加すること、並びに混合物の撹拌、混合又は所望の化学反応が起こるように、所定の期間石炭と活発に接触させることを含んでもよい。第一の槽において化学的処理された後に、槽の内容物は第二の槽に移送されて、水と共に異なった化学薬品で処理され、混合物は効率的に反応するように、撹拌又は混合される。第二の槽において化学的処理された後に、槽の内容物は第三の槽に移送されて、水と共に、又は水を加えずに更に異なった化学薬品で処理され、混合物は効率的に反応するように、撹拌又は混合される。石炭を可溶化するために、追加の処理工程を組み込んでもよい。化学処理システムには、化学処理槽からの石炭の固体分は、前の工程の化学処理槽に戻すか又は先の工程の槽へ移送してもよい。化学処理された後に、可溶化された石炭液は、加水分解反応器へ移送される。
【0082】
好適な一実施態様においては、加水分解反応器は、少なくとも1つの液体導入口、少なくとも1つの液体排出口及びメタン、二酸化炭素、水素及びそれらの混合ガスなど、加水分解反応器内で生成されたガスの排出口を有している。バッファータンクも、少なくとも1つの液体導入口、少なくとも1つの液体排出口及びメタン、二酸化炭素、水素及びそれらの混合ガスなど、バッファータンク内の加水分解用混合物により生成されたガスの排出口を有している。同様に、バイオガス化反応器も、少なくとも1つの液体導入口、少なくとも1つの液体排出口及びメタン、二酸化炭素、水素及びそれらの混合ガスなど、バッファータンク内の加水分解用混合物により生成されたガスの排出口を有している。
【0083】
好適な実施態様のシステムは、加水分解反応器の側壁の1つ以上の開口部を通って移送される、加水分解反応器内の揮発性脂肪酸及び酢酸エステルを含んでいる液体を利用する。その液体は固液分離装置を用いて分離され、大部分が液体の加水分解溶液がバッファータンクに移送されることになる。加水分解溶液は、重量換算で、液体が少なくとも80%、固体が5%以下であることがより好ましい。
【0084】
加水分解反応器、バッファータンク及びバイオガス化反応器の導入口及び排出口は、タンク又は反応器の有効容量が最適となるように位置決めされている。プロセスシステムにおいては、設備費及び運転効率は、有効容量に比例する。好適な実施態様において、加水分解反応器は、その内容積の少なくとも50%、好ましくは95%までの可溶化された石炭原料及び水性液体の混合物を収容している。
【0085】
好適な一実施態様では、加水分解された原料溶液は、加水分解反応器からバッファータンクへ移送され、別の加水分解反応器からの原料溶液と共に平衡化される。2つ以上の加水分解反応器からの原料溶液を平衡化することにより、加水分解反応器からバイオガス化反応器へ直接に移送した際に起こり得る、揮発性脂肪酸及び酢酸エステルの濃度、pH値及び液体の内容物の急激な変化が最小化される。加水分解された原料溶液を平衡化することにより、バイオガス化反応器を安定化させ且つバイオガス化反応器によるガス生成量を増大させる。
【0086】
加水分解反応器とバッファータンクとは、液体を移送する一連の導管で連結されている。それと同様に、システムには、加水分解反応器の排出口とバッファータンクの導入口を連結している第一の導管、バッファータンクの排出口とバイオガス化反応器の導入口を連結している第二の導管及びバイオガス化反応器の排出口と加水分解反応器の導入口を連結している第三の導管が備えられている。
【0087】
石炭破砕機、分離装置、化学処理槽、加水分解反応器バッファータンク及びバイオガス化反応器の容量は、要求に応じて変更できる。
【0088】
一実施態様では、システムには、少なくとも12又はそれ以上の加水分解反応器を含むこともある。それぞれの加水分解反応器は、バッチ、又は部分的にバッチ運転されるのに対し、1つ又はそれ以上のバイオガス化反応器は、ガスを連続的に生成するように運転される。別の実施態様では、システムには、連続的に運転される数台の加水分解反応器を備えており、溶液が絶え間なく加水分解反応器及びバイオガス化反応器に流出入している。
【0089】
1つの化学処理槽、複数の加水分解反応器、1つのバッファータンク及び1つ又は複数のバイオガス化反応器は流体が流通するように、例えば、並列、直列及び並列と直列が組み合って連結されている。好適な構成では、それぞれの滓分解タンクをバッファータンクと並列に連結され、揮発性脂肪酸及び酢酸エステルなどの加水分解された生成物の水溶液をバッファータンクに、連続的、又はバッチで供給する。
【0090】
加水分解及びバイオガス化されている間は、化学処理槽、加水分解反応器、バッファータンク又はバイオガス化反応器の内容物を、連続的又は間欠的に撹拌してもよい。気体、又はモータ駆動の撹拌機、油圧式撹拌機、振とう機、超音波発生装置、磁気式撹拌機、気泡発生機、乳化機又は当業者には既知の全ての他の手段を本発明によるシステムに用いてもよい。
【0091】
以下、本発明の利点、特徴及び詳細について、図面を用いて説明する。
【0092】
図1は、水素とメタンガスを製造する方法の一実施例を示している。石炭は所望の大きさの粒子とするために、破砕機1に供給される。石炭粒子は、石炭と石炭でない粒子を比重の差により分離するために、浮沈タンク又はハイドロサイクロンのような、重力式分離装置2に送給される。分離されて精製された石炭粒子は、1つ又はそれ以上の化学処理槽3に送給されて、化学薬品及び水を加えて、所定の時間、かき混ぜ、撹拌又は混合する。化学処理槽では、石炭が完全に可溶化するように、固形の石炭粒子を複数の槽により槽間を循環してもよい。可溶化された石炭は、1つ又は複数の加水分解反応器4に送給される。加水分解反応器において、ある時間保温すると、水素、メタン及び二酸化炭素が生成される。次いで、揮発性脂肪酸及び酸エステルは、加水分解反応器からバッファータンク5へ移送される。2つ以上の加水分解反応器から送給された揮発性脂肪酸、酸エステルを含む溶液は、バッファータンクにおいて平衡化される。平衡化された加水分解混合物は、バイオガス化反応器6に移送される。バイオガス化反応器において、移送された溶液を、ある期間保温すると、メタン、水素及び/又は二酸化炭素が生成される。更に、バイオガス化反応器内の廃液が濾過されて、濾液は化学処理槽に戻される。バイオガス化反応器における保温及び消化した後の反応器内の液体は、導管を介して化学処理槽3に再循環してもよい。
【0093】
本発明によるメタン及び水素を生成する装置の好適な実施例を図2に示す。石炭は破砕機8により粉砕されて、石炭でない粒子を除去するために、重力式分離装置9に配送される。精製された石炭粒子は、複数の化学処理槽10に配送されて、可溶化される。石炭の可溶化は複合的な処理並びに導管11を介しての処理槽間の循環が必要なこともある。可溶化された石炭は、3つの加水分解反応器12へ配送される。加水分解反応器において、ある時間保温すると、揮発性脂肪酸及び/又は酢酸塩、並びに水素、メタン及び二酸化炭素が生成される。次いで、加水分解された基質を含む液体は、導管を介して加水分解反応器から、バッファータンク13に移送される。そのタンクおいて、複数の加水分解反応器からの溶液は、物理的性質を平衡化される。平衡化された加水分解溶液は、導管を介してバイオガス化反応器14に移送される。バイオガス化反応器において、移送された溶液をある期間保温すると、水素、メタン及び/又は二酸化炭素が生成される。バイオガス化反応器における保温及び消化に続いて、残留する液体の細胞を保持し、液体の一部を別の導管15を介して化学処理槽又は加水分解反応器、あるいは双方に再循環してもよい。3つの加水分解反応器内の残留物は、固体と液体を分離する固体分離装置16に移送してもよい。分離された固体17は、廃棄又は有効利用される。分離された液体18から、処理装置19により、金属イオン、塩及び他の汚染物質が除去されて、その結果残った水は、導管20を介して化学処理槽10に戻される。バイオガス化反応器からの廃液は、固体分離装置16に移送してもよい。
【実施例】
【0094】
破砕機、篩及び振動テーブル、化学処理槽、加水分解反応器、バイオガス化反応器、ぜん動ポンプ、磁気撹拌板、タンク加熱器及びマノメータから成るベンチスケールのシステムを設計、構築した。
【0095】
ルイジアナ州デソート・パリシュ,マンスフィールドのドレット・ヒルズ炭鉱の褐炭(以下「石炭」と称す)を、破砕機(OCG Systems Model 4E)により破砕した。破砕された石炭は、ASTM、No.60の篩に投入してRetch Model AS200振動盤により、250ミクロン以下に篩分けた。篩分けられた石炭を400グラム計り取り、4リットルの第1化学処理槽に投入し、好気性で非生物的に下記の工程で調整した溶液と共に処理した。
【0096】
1.0.05モルの水酸化ナトリウムを含む2リットルの溶液とし2−5分間撹拌してから、Blue M Dry Type Bacterialogical恒温装置において、40℃の定温にて24時間保持した。
【0097】
2.工程1の溶液の上澄み液を、第2の化学処理槽の0.25モル酢酸エチルを含む2リットルの溶液に投入して、2−5分間撹拌してから、Blue M Dry Type Bacteriological恒温装置において、90℃の定温にて24時間保持した。
【0098】
3.工程2の溶液の上澄み液を、第3の化学処理槽の過酸化水素及び0.12グラムの塩化鉄を含む0.4リットルの溶液に投入して、手動で2−5分間撹拌してから、Blue M Dry Type Bacteriological恒温装置において、40℃の定温にて48時間保持した。塩化鉄は、過酸化水素を添加する前に添加した。加水分解反応器に配送する前に燐酸緩衝液を用いてpH値を3.5に調整した。
【0099】
4.上記各工程において、可溶化されずに化学処理槽に残留する石炭は、全ての石炭が可溶化されるまで、上記工程を繰り返した。残留した固形分は、化学処理の前に行う、重力式分離では除去されなかった非石炭粒子が主体であると規定した。
【0100】
可溶化された石炭は、化学処理槽の排出口から、ぜん動ポンプ(Master Flex Model No.7529−25)を用いて、11.5リットルの加水分解反応器の導入側の0.25インチ径の透明な可撓性チューブを介して加水分解反応器に配送された。加水分解反応器の上部を排気してから、外気よりも約1psig(0.07kgf/cm)の正圧となるように窒素を充填した。ほぼ7日に1回、可溶化された石炭の約20%容量を移送する。化学処理槽から加水分解反応器への液体の移送が完了したら、pH計により加水分解反応器内の液体のpH値を測定し、pH値がほぼ5.5−6.0に保たれるように重炭酸ナトリウムにより調整する。
【0101】
加水分解反応器は、頭部にゴム製の栓、底部にO−リングのパッキン及びステンレス鋼製のスクリューを備えた円筒状の透明なアクリル樹脂で構成される。タンクは、液体及び気体の移送及び試料採取用に複数のポート及び弁、100Wの間接加熱式浸漬ヒータ(Marineland Model No.Stealth)及び撹拌機(Stir−Pak Model No.50007−20)を備えている。長さ60mmの磁石式撹拌棒を加水分解反応器内に投入し、タンクを磁力式撹拌盤(VWR Model No.620−S)に載置し、撹拌棒を約400rpmで回転させて連続的に撹拌した。
【0102】
注射器を用いてポートを通して、液体及び気体の試料が1日に数回採取され、液体クロマトグラフ/質量分析計(Varian 500−MS LC)を用いて、嫌気性発酵に由来する、水素、揮発性脂肪酸及び酢酸塩並びに栄養分など気体及び化学成分が分析された。イオンクロマトグラフ分析計(Dionex ICS−3000)を用いて、全有機炭素が測定された。全ての分析は2回繰り返した。約6日間経て、加水分解反応器内のこれら気体及び化学成分の濃度が増大し後、加水分解反応器内に移送した量と同容量の液体が、ぜん動ポンプ(Stenner Model No.175DM5)を用いて、バイオガス化タンクに移送される。
【0103】
バイオガス化反応器も、頭部にゴム製の栓、底部にO−リングのパッキン及びステンレス鋼製のスクリューを備えた円筒状の透明なアクリル樹脂で構成される。反応器は、液体及び気体の移送及び試料採取用に複数のポート及び並びに100Wの間接加熱式浸漬ヒータ(Marineland Model No.Stealth)を備えている。大きな表面を提供して、メタン生成培地の微細物の成長を支えるように、樹脂製の網目状仕切り及び約30個の樹脂製のバイオ用濾過材(Bioballs)を反応器内に設置した。長さ60mmの磁石製撹拌棒をバイオガス化反応器内に投入し、反応器を磁力式撹拌盤(VWR Model No.620−S)に載置した。水、栄養分及びメタンを生成する嫌気性菌から成る約2リットルの溶液を反応器に投入した。撹拌棒を約100rpmで回転させて、反応器内を連続的に撹拌した。
【0104】
化学処理槽から加水分解反応器への液体を移送する前に、加水分解反応器内に移送された液体をバイオガス化反応器へ移送した。加水分解反応器からバイオガス化反応器への移送を完了した時点で、pH計(Thermo Scientific Orion 5 Star pH/SE/Conductivity/DO Benchtop)により、バイオガス化反応器内の液体のpH値を測定し、重炭酸ナトリウムを添加してpH値がほぼ7.5となるよう調整した。
【0105】
バイオガス化反応器において生成されたメタン及び二酸化炭素は、反応器の頂部の弁、それに連結された透明な樹脂管を通ってマノメータ装置へ送られた。マノメータ装置は、水柱と置き換えることにより、生成されたガスの収集及び全ガス容量の測定ができる。注射器を用いて、ガスの出口側の弁に備えられた試料採取ポートから、日毎に試料が採取された。ガスクロマトグラフ(Varian Model GC−500)を用いて、採取されたガスの組成が分析された。バイオガス化反応器内の液体の試料が日毎に採取され、液体クロマトグラフ/質量分析計(Varian Model 500−MS LC)及び三連四重極ガスクロマトグラフ/質量分析計(Varian Model 320−MS)を用いて、揮発性脂肪酸及び酢酸塩及び栄養分の成分を分析した。それぞれの分析は2回行った。ほぼ7日毎に加水分解反応器からバイオガス化タンクへ液体を追加しながら、バイオガス化タンクのガス生成が、約90日に渉って測定及び記録された。
【0106】
[データの解析]
ガスの組成及びバイオガス化反応器の上部空間(ヘッドスペース)とマノメータ装置内のガス量とを併せた容量(全ヘッドスペース)から、バイオガスの収率を計算した。バイオガスの収率は、ガスの温度40℃及びガス圧を0.833気圧の前提で計算した。下記の理想気体の関係式によって、ガスの標準体積を算定した。
Vs=Pa×Va×Ts/Ta×Ps
【0107】
ここで、Vsはガスの標準体積、Vaはガスの実体積、Taはガスの実温度、Tsは標準温度(273K)、Paはガスの実圧力、Psはガスの標準圧力(1気圧)である。
【0108】
化学処理で液化されて第二段階へと移送された石炭の量に基づいて、ガスの容量を標準立方フィート/トンに換算した。65%の石炭が炭素であると仮定して、化学量論的(すなわち、炭素のモル数に基づいて)に、ガスの生成に消費された石炭の量の割合を計算した。ガスの容量の算出値は、ガスの収集及び水の試料採取により損失又は希釈された分を補正した。
【0109】
[結果及び考察]
このシステムの能力の判定基準は、全バイオガス生成量、生成されたガスの組成及びバイオガスへ変換された原料炭の割合である。本システムは、可溶化された約20%容量の石炭を定期的に化学処理槽から加水分解反応器へ移送し、それに伴ってほぼ同等容量の液体が加水分解反応器からバイオガス化反応器へと移送されるバッチ方式で運転された。
【0110】
pH値の日々の測定及びそれに基づく調整により、反応器内の運転は安定に保たれた。
【0111】
加水分解反応器からの揮発性脂肪酸及び酢酸塩を移送してから約16時間以内に、バイオガスの生成が開始され、60日の運転期間に渉って、生成ガス量は着々と増加した。運転を落としていく最終の14日前の、17日間のバイオガスの生成は、安定していた。加水分解反応器内及びバイオガス化反応器内のそれぞれのpH値は、日々測定され所望のpH値に調整された。運転期間中、加水分解反応器中のpH値は、化学処理槽から可溶化された石炭の加水分解が進行するに伴って変化したので、定期的に水酸化ナトリウムを添加して所望の値までpH値を上昇させた。図3には、加水分解反応器及びバイオガス化反応器内のpH値の日々の変化が示されている。図4には、バイオガス化反応器におけるバイオガス及びメタンの累積生成割合(立方フィート/トン)が示されている。図5には、バイオガス化反応器におけるバイオガス及びメタンの日々の生成速度(立方フイート/トン/日)が示されている。
【0112】
固形分中の炭素含有量(例えば、重量、全COD、TOC)に基づいて可溶化石炭が測定され、液体クロマトグラフ/質料分析計(LC−MS)を用いて水相中の有機酸が分析された。図6には、COMCAPSシステムの加水分解反応器内の全有機酸の濃度(mg/l)の日々の変化が示されている。図7には、COCAPSシステムの加水分解反応器内に残留する溶解した炭素量の割合(%)の日々の変化が示されている。
【0113】
システムの運転中には、酢酸塩、全有機酸、COD、A450の値を頻繁に測定した。
【0114】
[結論]
定温度40℃の好熱性の条件の下で、COMCAPSシステムの石炭をメタンガスに変換する能力が評価された。破砕され、篩分された、一連の化学処理により可溶化された石炭の約20%が、嫌気性の加水分解反応器に移送され、加水分解バクテリア培地により可溶化された石炭が優先的に揮発性有機酸及び酢酸塩と変換される。ある時間が経過した後、加水分解反応器内の溶液は移送された可溶化石炭とほぼ同量が、バイオガス化反応器に移送され、メタン、二酸化炭素及び水素が生成される。上述したように、固体の炭素が実質的に完全に可溶化されるまで、工程が繰り返された。可溶化された石炭は、加水分解され、加水分解で生じた揮発性有機酸及び酢酸塩は、メタン、二酸化炭素及び水素に変換される。この条件下において、運転開始から、第15日及び第30日の累積メタンの収量それぞれ17リットル及び42リットルであった。同時期における可溶化炭素の変換率はそれぞれ26.5%及び61.4%であった。同時期における加水分解反応器内に残留している有機酸の濃度はそれぞれ、1490mg/リットル及び1965mg/リットルであった。
【0115】
ここに引用したそれぞれの特許、特許出願及び出版物の開示は全体として、参考文献に組込んだ。
【符号の説明】
【0116】
1 破砕機
2 重力式分離装置
3 化学処理槽
4 加水分解反応器
5 バッファータンク
6 バイオガス化反応器
8 破砕機
9 重力式分離装置
10 化学処理槽
11 導管
12 加水分解反応器
13 バッファータンク
14 バイオガス化反応器
15 導管
16 固体分離装置
17 固体
18 液体
19 処理装置
20 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現地外において石炭を変換する方法であって、
(a)少なくとも石炭の一部が可溶化されるように、液体で石炭を処理する工程、
(b)脂肪酸を含んだ生成物を生成するように、工程(a)の生成物の少なくとも一部を、加水分解性微生物集団で処理する工程、
(c)メタンを含んだ生成物を生成するように、工程(b)の生成物の少なくとも液体部分を、メタンを生成させる嫌気性微生物集団で処理する工程、
を含むことを特徴とする石炭を変換する方法。
【請求項2】
前記工程(a)、(b)及び(c)が異なった容器内において実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)において用いられる石炭は、粉末化された石炭であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)において用いられる石炭は、少なくとも非石炭の不純物の一部が除去された石炭であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(a)には、
(i)石炭のアルカリで処理すること、
(ii)石炭のC1−C4のカルボン酸、安息香酸、又はこれら酸の塩又はエステル、又はそれらの組み合わせで処理すること、並びに
(iii)石炭の鉄の存在下における過酸化水素で処理すること、
を含み、前記処理(i)〜(iii)は特定の順序で実行する必要がないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)の前記加水分解性微生物集団は、酢酸生成菌を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記嫌気性工程は、一段、二段又は三段以上の加水分解及びバイオガス化工程から成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加水分解には、1つ以上の加水分解反応器が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオガス化には、1つ以上のバイオガス化反応器が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記石炭は、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭又はこれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(b)の前記加水分解微生物集団は、Acetivibrio、Clostridium、Lactobacillus、Ruminococcus、Zootermopsis、並びに他のFirmicutes及びProteobacteria、並びにこれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(c)の前記嫌気性微生物集団は、Aerobacter、Aeromonas、Alcaligenes、Bacillus、Bacteroides、Clostridium、Escherichia、Klebsiella、Leptospira、Micricoccus、Neiseria、Paracolobacterium、Proteus、Pseudomonas、Rhodopseudomonas、Sarcina、Serratia、Streptococcus及びStreptomyces、Methanobacterium oinelianskii、Mb.Formicium、Mb.Sohngeni、Methanosarcia berkeri、Ms.Methanica、Mc.Masei、Methanobacterium thermoautotrophicum、Metahnobacterium bryantii、Methanobrevibacter smithi、Methanobrevibacter arboriphilus、Methanobrevibacter ruminantium、Methanospirillum hungatei、Methanococcus vannielli、Methanothrix soehngenii、Methanothrix種、Methanosarcina mazei、Methanosarcina thermophila、Methanobacteriaceae、Methnosarcinaceae、Methosaetaceae、Methonocorpusculaceae、Methaanomicrobiaceae、及び他の古生菌、並びにこれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1つ又はそれ以上の前記処理工程は、連続的又は間欠的に撹拌又は混合されているタンク内、加水分解反応器、又はバイオガス化反応器内において実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)は、メタン生成バクテリアの成長用の培地を提供し且つ前記成長用の表面を増加させる素材を収容している容器内にて起こることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)からの固体は収集され、液体は更に処理されて前記工程(a)に再循環されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(c)の前記嫌気性微生物集団は、メタン生成バクテリア細胞を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記メタン生成バクテリア細胞は、前記廃棄物から分離されて工程(c)の反応器内に保持されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(a)の前記液体は、芳香族炭化水素、クレオソート及び重油より選ばれた溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒は、フェナントレン、クリセン、フルオランテン及びピレンから成る芳香族炭化水素、窒素を含む環状芳香族、アントラセン、フルオレン及びカテコールより選ばれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記窒素を含む環状芳香族は、アクリジン又はカルバゾールであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(a)の前記液体は、アルカリ、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル及び過酸化物からより選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記液体は、アルカリであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アルカリは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリは、ルイス塩基であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記液体は、C1〜C4のカルボン酸、C1〜C4のカルボン酸塩又はC1〜C4のカルボン酸エステルであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記液体は、酢酸、酢酸塩又は酢酸エステルであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記液体は、安息香酸、安息香酸塩又は安息香酸エステルであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記液体は、過酸化物であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記過酸化物は、過酸化水素であることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記過酸化水素は、鉄の存在下で使用されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記工程(a)には、
(i)石炭の水酸化ナトリウムで処理すること、
(ii)処理(i)の少なくとも一部の生成物の酢酸、酢酸塩又は酢酸エステルで処理すること、並びに
(iii)処理(ii)の少なくとも一部の生成物の鉄の存在下における過酸化水素で処理すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記アルカリは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−514088(P2013−514088A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544476(P2012−544476)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/003131
【国際公開番号】WO2011/075163
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512160025)シリス エナジー,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】