説明

石炭ガス中のタール分解方法

【課題】低品位炭を加熱し低揮発分のチャーを製造する際に排出される石炭ガス中のタールを安価にかつ効率的に除去する方法を提供すること。
【解決手段】低品位炭を加熱ガスにより加熱しチャー及び石炭ガスを製造する工程と、
前記石炭ガスと、結晶水を5%質量以上含む鉄鉱石とを反応させることにより石炭ガス中のタールを分解する工程を実施することによる石炭ガス中のタール分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス中のタール分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱製造プロセスは、粉鉄鉱石及び焼結工場系内、焼結工場系外で発生する篩下粉、ダスト、ミルスケール等の鉄分を含む原料(雑鉄源)並びに石灰石などの造滓材(副原料)を焼結原料とする。前記焼結原料に燃料としてコークス、石炭等の凝結材、および返鉱(成品粒度を満足しなかった焼結鉱で再度焼結処理を行うために循環しているもの)を加えて配合原料とする。現在、一般に行われているドワイトロイド(DL)式焼結機の焼結鉱製造プロセスでは、前記配合原料からなる充填層の下方を負圧とし、上方から下方に空気を流通させて配合原料中の凝結材を燃焼させる。発生した燃焼熱により焼結原料を焼結して塊成化した焼結鉱を製造する。この焼結鉱を高炉では主要な原料として使用する。
【0003】
焼結鉱製造プロセスでは、揮発分の高い凝結材の使用ができない。揮発分の高い凝結材は、その燃焼により発生するタールその他の副生物が、焼結機の排気系統に付着し、支障をきたすからである。又、タールは、発がん性の特定化学物質の指定を受けており、タール除去の取り扱いは、厳重に管理されなければならない。そこで、現状、焼結鉱製造プロセスでは、揮発分の少ない粉コークスと無煙炭が、凝結材として使用されている。
【0004】
粉コークスは、製鉄所で製造するコークスのうち、高炉の製造に適した整粒コークスを篩い出した後の粒径の小さなコークスである。しかし、高炉が使用する整粒コークスに対し、粉コークスの量は少なく、焼結鉱製造用コークスとして不足する。そこで、揮発分の少ない石炭、即ち、無煙炭が、不足分を補充して使用されてきた。
【0005】
しかし、近年、無煙炭の埋蔵量が枯渇してきており、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材が望まれている。
【0006】
製鉄所の焼結鉱製造プロセスは、大量生産のプロセスであるため、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材の原料としては、大量の入手が可能で安価な褐炭、亜歴青炭のような低品位炭が考えられる。
【0007】
高品位の瀝青炭である粘結炭を乾留した場合、石炭中の揮発分は、石炭ガス、タールとして放出され、残留後の固形分はコークスとなる。一方、低品位炭を加熱して熱分解すると、石炭中の揮発分は石炭ガスとして放出され、同時にタールも石炭ガスとともに放出され、残留後の残渣の固形分は、チャーとなる。チャーの形状は、残留後も、ほとんど原形のままであるが,多少の亀裂を生じて膨張または収縮し、砕けやすい性質となっている。成分的には,炭素分と灰分よりなり、焼結鉱製造プロセスの無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材とすることができる。
【0008】
製鉄所の焼結製造プロセスに使用する凝結材は、低揮発分(揮発分5%以下)でなければならないため、低品位炭を加熱してチャーを製造するには、比較的高温で加熱する必要がある。そうすると、石炭ガス中に含有されるタールは、沸点の高い重質タール(沸点≧350℃)の割合が多くなる。一般的に重質タールの除去には、投資額が高額なタール分離装置及びタール処理装置が必要である。
そこで、石炭ガス中に含まれる比較的に重質なタールを安価にかつ効率的に除去する方法が望まれている。
【0009】
焼結鉱製造プロセスの紛コークスと無煙炭の不足対策として、結晶水を含む鉄鉱石を、還元性ガスを用いて還元し、得られる還元鉱石を焼結原料に使用することにより、焼結鉱製造プロセスに用いる凝結材の使用量を削減する焼結鉱製造方法の提案がある(特許文献1)。
この方法によれば、還元鉱石を焼結原料に使用することにより凝結材の使用量を削減することができるが、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材を提供するものではない。
又、還元性ガスとして、高炉ガスを使用するため、高炉ガスが入手できない場所、あるいは余剰の高炉ガスが存在しない製鉄所には適用できないという問題がある。
【0010】
バイオマスを原料とし、450℃乃至550℃で加熱、熱分解してチャーを製造し、発生したタール含有ガスは、多孔質ヘマタイトを充填したタール改質炉へ導入して、650℃乃至800℃でタールを分解する方法の提案がある(非特許文献1)。
【0011】
この方法は、バイオマスの熱分解温度が比較的低温であるため、揮発分が高いチャーしか製造することができず、焼結鉱製造プロセスで使用する凝結材(揮発分5%以下)としては不適切であるという問題がある。また、バイオマスを低温で熱分解するためタール発生量が多くなるという問題がある。
又、タール改質の温度も650℃乃至800℃で比較的低温であり、バイオマスはともかく、石炭由来の重質なタールを充分に分解することはできないという問題がある。
又、タール分解のために、多孔質ヘマタイトを用いており、多孔質ヘマタイト製造のための設備が別途必要であるという問題がある。
又、鉱石還元炉の方式として固定層または移動層であるため、焼結原料である粉鉱石(10mm以下の鉱石)には還元炉として適用し難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−249725号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】製銑第54委員会 製鉄への炭素の新利用に関する研究会最終報告書 平成21年6月17日(独)日本学術振興会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
焼結鉱製造プロセスにおいて、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材を製造することが望まれている。凝結材として低品位炭を加熱し低揮発分のチャーを製造する際に、石炭ガス中にタールが排出される。
本発明の目的は、低品位炭を加熱し低揮発分のチャーを製造する際に排出される石炭ガス中のタール分解方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石と石炭ガスとを反応させることにより石炭ガス中のタールを分解することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0016】
本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
【0017】
(1)低品位炭を加熱ガスにより加熱しチャー及び石炭ガスを製造する工程と、
前記石炭ガスと、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石と反応させることにより石炭ガス中のタールを分解する工程を実施することを特徴とする石炭ガス中のタール分解方法。
(2)前記チャー及び石炭ガスを製造する工程が、石炭の流動層において、石炭を600℃以上、850℃未満で加熱することを特徴とする前記(1)に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(3)前記石炭ガス中のタールを分解する工程から排出される燃料ガスの一部を抜き出し、酸化剤を投入して部分酸化することによって加熱したガスを、前記チャー及び石炭ガスを製造する工程へ導入することを特徴とする前記(2)に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(4)前記石炭ガス中のタールを分解する工程が、前記鉄鉱石の流動層において、鉄鉱石と前記石炭ガスを、800℃を超え900℃以下で反応させることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(5)前記チャー及び石炭ガスを製造する工程から排出される石炭ガスを酸化剤と共に前記石炭ガス中のタールを分解する工程へ投入することを特徴とする(4)に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(6)前記低品位炭及び前記鉄鉱石が、前記石炭ガス中のタールを分解する工程から排出される燃料ガスの排熱により予熱されることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(7)前記チャー及び石炭ガスを製造する工程から排出されるチャーが、焼結鉱製造の燃料であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
(8)前記石炭ガス中のタールを分解する工程において、前記鉄鉱石が還元されて排出される還元鉱石が、焼結鉱製造の原料であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低品位炭を加熱し低揮発分のチャーを製造する際に排出される石炭ガス中のタール分解方法を提供することができる。
又、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る石炭ガス中のタール分解方法のフローを示す図。
【図2】本願発明に係るプロセス収支を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態は、低品位炭を加熱ガスにより加熱しチャー及び石炭ガスを製造する工程と、前記石炭ガスと、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石とを反応させることにより石炭ガス中のタールを分解して除去する工程からなる。本願発明に係る石炭ガス中のタール除去方法のフローを図1に示す。低品位炭を加熱ガスにより加熱しチャー及び石炭ガスを製造する工程(以下、「石炭乾留工程」と記述する。)は、低品位炭を石炭乾留工程1に装入し、低品位炭を加熱分解し、石炭ガスとチャーを製造する工程である。本発明は、無煙炭に代替する揮発分の低い凝結材の提供を目的の一つとしているため、原料としては、大量の入手が可能で安価な褐炭、亜歴青炭、高揮発瀝青炭のような低品位炭である。
【0021】
石炭乾溜のための燃料は、H、HO、CO、CO、N及びCH等を含む加熱された燃料ガスである。燃料ガスは、石炭乾留工程1に吹き込まれ、低品位炭を乾溜する。具体的には、低品位炭は、加熱された燃料ガスにより、H、CO、及びCHを含む石炭ガスと重質油成分であるタールに熱分解され、チャーが残渣となる。チャーは、無煙炭の代替物として、焼結機3に装入される。
【0022】
次に、石炭ガスと、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石と反応させることにより石炭ガス中のタールを分解して除去する工程(以下、「タール分解工程」と記述する。)について説明する。石炭乾留工程1から排出される石炭ガスは、タール分解工程2に吹き込まれる。その際、石炭ガスは、同時にタール分解工程へ吹き込まれた酸化剤(空気または酸素)により部分酸化され、タール分解工程2内の温度上昇に寄与する。
結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石としては、ローブリバー鉱石、ヤンディクージナ鉱石などのピソライト鉱石、またはウェストアンジェラス鉱石などのマラマンバ鉱石などがある。これら結晶水を5質量%以上含有する鉄鉱石は、鉄含有鉱物としてゲーサイト(FeO(OH))を主体とする。ゲーサイトは、結晶水除去後に、多くの気孔を生じて比表面積の大きな粒子構造となるため、ヘマタイトと比較して、タール分解反応を生じさせる触媒しての機能が大きい。
【0023】
タール分解工程2においては、石炭乾留工程1から排出された石炭ガスと酸化剤(空気または酸素)と鉄鉱石が反応し、改質鉱石と燃料ガスを生成する。
タール分解工程2では、石炭ガス中に含有されるタールが各種反応(熱分解、部分酸化、水蒸気改質等)によってガスとCへと転換される。なおこの際、鉄鉱石はこれら反応の触媒として作用する。石炭ガス中のタールは、石炭乾溜の際に発生する芳香族系の炭化水素及び有機化合物の混合体であり、タールの熱分解で発生したCの一部は、鉄鉱石に付着する。又、タールの一部は、投入された酸化剤または石炭ガス中に同伴されるHOと反応し、H、COを発生させる。こうして生成したH、COに加え、元来石炭ガス中には、H、HO、CO,CO、N及びCH等を含むので、これらH、CO等により鉄鉱石はヘマタイトが主としてマグネタイトやウスタイトへ還元され、還元鉱石を生成する。
なお、タールの水蒸気改質反応を促進させる目的で別途スチームをタール分解工程2へ添加しても良い。
以上のプロセスにより、タール分解工程2において、石炭ガス中のタールが除去され、同時に、還元鉱石が製造される。還元鉱石は、焼結機3に装入され、凝結材の削減に貢献する。
【0024】
[発明の第二の実施形態]
発明の第二の実施形態は、前記第一の実施形態において、前記石炭乾留工程1が、石炭の流動層において、石炭を600℃以上、850℃未満で加熱することを特徴とする。
通常、低品位炭の粒径は、数mm以下である。低品位炭は、そのまま、又は、粉砕して、石炭乾留工程1に装入されるが、石炭乾留工程1は、循環流動層であることが好ましい。低品位炭は、一定の粒度分布幅を有するので、石炭乾溜流動層から飛散した粒子を捕集して再度、流動層に戻して充分な粒子滞留時間を確保することができるからである。
【0025】
前記石炭乾留流動層においては、石炭を、600℃以上、850℃未満で加熱することが好ましい。
石炭の加熱温度が600℃未満の場合、石炭乾留工程1で生成されるチャーの揮発分が高くなり、焼結鉱製造において、チャーが無煙炭を代替できなくなるからである。
又、石炭の加熱温度が850℃以上の場合、生成するチャーの揮発分は800℃程度の加熱温度で生成するチャーと大きくは変わらないため、高温とすることによって熱効率が悪化するばかりではなく、チャー中のCとガス中のHO等との反応が進行することにより、チャーの収率が低下するからである。
さらに、より揮発分の少ないチャーを効率的に回収できる加熱温度として、650℃以上、800℃以下がより好ましく、700℃以上、750℃以下が特に好ましい。
【0026】
[発明の第三の実施形態]
発明の第三の実施形態は、前記第二の実施形態において、前記タール分解工程2から排出される燃料ガスの一部を抜き出し、酸化剤を投入して部分酸化することによって加熱したガスを、前記石炭乾留工程1へ導入することを特徴とする。
タール分解工程2から排出される燃料ガスは、H、HO、CO,CO、N及びCH等の可燃成分を含むので、当該燃料ガスの一部を抜き出し、部分酸化炉9において酸化剤(空気又は酸素)を投入して部分酸化することによって加熱したガスとし、石炭乾留工程1の温度を確保することは、熱効率的に好ましい。なお、部分酸化炉を設けずに酸化剤と燃料ガスを直接石炭乾留工程へ投入する方法も考えられるが、酸化剤とチャーの一部が反応してしまい、チャーの収率が低下する恐れがあるため、望ましくない。
【0027】
[発明の第四の実施形態]
発明の第四の実施形態は、前記第一乃至第三の実施形態において、前記タール分解工程2が、前記鉄鉱石の流動層において、鉄鉱石と前記石炭ガスを、800℃を超え900℃以下で反応させることを特徴とする。
当該鉄鉱石の粒径は、10mm以下であるので、そのまま、又は、粉砕して、タール分解流動層2に装入する。当該鉄鉱石は、一定の粒度分布幅を有するので、タール分解流動層2は、循環流動層であることが好ましい。
鉄鉱石と前記石炭ガスを800℃を超える温度で反応させるのは、800℃以下では、温度が低く、タールの分解反応が充分に起きない可能性があるからである。また、還元速度が遅いため、高い還元率の還元鉱石を得ることができないからである。又、900℃を超えると、鉱石が部分的に溶融し、融着してしまうからである。
【0028】
[発明の第五の実施形態]
発明の第五の実施形態は、前記第四の実施形態において、前記タール分解工程2における流動層内の温度を適温に維持するために、前記石炭乾留工程1から排出される石炭ガスと共に酸化剤を前記タール分解工程2へ投入することを特徴とする。 石炭乾留工程1から排出される燃料ガスは、H、HO、CO,CO、N及びCH等ならびにタールといった可燃成分を含むので、流動層内において、当該燃料ガスに、酸化剤(空気又は酸素)を投入して部分酸化することによって加熱し、鉄鉱石と前記石炭ガスの反応温度を確保することは、熱効率的に好ましい。勿論、別途部分酸化炉を設置し、部分酸化炉において燃料ガスと酸化剤を部分酸化させることによって発生した高温ガスを前記タール分解工程2へ投入しても構わないが、別途部分酸化炉を設けることは設備コストの増大や放熱の増加へと繋がるため、好ましくない。
【0029】
[発明の第六の実施形態]
発明の第六の実施形態は、前記第一乃至第五の実施形態において、前記低品位炭及び前記鉄鉱石が、前記タール分解工程2から排出される燃料ガスの排熱により予熱されることを特徴とする。
前記第一乃至第五の実施形態においては、前記タール分解工程2から排出される燃料ガスの排熱は、800℃を超え900℃以下である。そこで、当該排熱を用いて、前記低品位炭及び前記鉄鉱石を予熱することは、熱効率的に好ましい。
【0030】
[発明の第七の実施形態]
発明の第七の実施形態は、前記第一乃至第六の実施形態において、前記石炭乾留工程1から排出されるチャーが、焼結鉱製造の燃料であることを特徴とする。
前記石炭乾留工程1においては、石炭は、600℃以上、850℃未満で加熱されるので、低品位炭の揮発分は、分解、除去され、揮発分の低いチャーが製造可能である。当該揮発分の低いチャーを無煙炭と補完して焼結製造工程で使用することで、さらに、焼結用凝結剤(燃料)の需給の安定化に寄与する。
【0031】
[発明の第八の実施形態]
発明の第八の実施形態は、前記第一乃至第六の実施形態において、前記タール分解工程2で前記鉄鉱石が還元されて排出される還元鉱石が、焼結鉱製造の原料であることを特徴とする。
前記タール分解工程2において、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石は、水分が除去されるとともに、ヘマタイトから、マグネタイト、ウスタイトへの還元が進行する。還元された還元鉱石を焼結鉱製造の原料とすることにより、さらに、焼結鉱石製造に必要な凝結材の低減を可能とする。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
揮発分を48質量%含有し、かつ酸素22質量%を含有する低品位炭及び結晶水が8質量%で付着水との合計が8.5質量%の鉄鉱石を用いて石炭ガス中のタールを分解した。その場合のプロセス収支を図2に示し、石炭及びチャーの組成を表1に、鉱石及び還元鉱石の組成を表2に、ガスの組成を表3に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
図2において、石炭<1>を石炭予熱流動層6において、350℃に予熱した後、石炭乾留工程1に装入した。石炭乾留工程1は、石炭乾留流動層を用い、石炭を800℃に加熱した。石炭乾留工程1の燃料は、タール分解工程2から排出されるガス<10>を用いて鉱石及び石炭を予熱した後のガス<7>の一部を用いた。即ち、タール分解工程2から排出されるガス<10>は、鉱石予熱流動層4、熱交換器5、石炭予熱流動層6及びガス冷却除塵設備7を経由させた後、その一部を抜き出した。抜き出したガス<7>は、熱交換器5を経由させた後、部分酸化炉9において酸化剤(空気)を投入して部分酸化し、温度1200℃のガス<8>を得、石炭乾留工程1に投入して石炭を加熱した。
石炭乾留工程1において、加熱された石炭は、熱分解し、石炭中の揮発分とタールは、放出され、残渣の固形分は、チャー<3>となった。チャー<3>の揮発分は2.7%で、焼結鉱製造用の燃料として、無煙炭に代替できるものであった。
【0037】
タール分解工程2は、鉄鉱石流動層を用い、732℃に予熱した予熱鉱石<5>と石炭乾留工程1から排出したガス<9>(タールを1.4t/hr含む)および酸化剤(空気)を投入して、900℃で反応させた。タール分解工程2へ投入されたタール分は、空気との部分酸化反応、熱分解反応、ガス(HO、CO)との改質反応を起こすことによってガス(主としてH、CO、CO、CH、その他ハイドロカーボン)およびカーボンへと分解して消失するため、タール分解工程2から排出されたガス(鉱石還元炉出口ガス)中にはタール分は含有されなかった。予熱鉱石<5>からは、タール分解工程2において、析出したカーボンが付着し、かつヘマタイトからマグネタイトに還元された還元鉱石<6>が得られた。当該還元鉱石<6>は、焼結鉱製造の原料とすることにより、含有されるマグネタイトがヘマタイトへ再酸化する際の反応熱(発熱)、付着したカーボンの燃焼熱を有効活用できるため、焼結鉱石製造に必要な凝結材の低減を可能とする。たとえば、本実施例の還元鉱石を焼結原料全体に対して1割使用した場合、焼結鉱当り4kg/t程度の凝結剤低減効果を期待できる。
【0038】
鉱石<4>は、鉱石予熱流動層4において、タール分解工程2から排出するガス<10>により予熱され、732℃に予熱した予熱鉱石<5>とし、石炭<1>は、石炭予熱流動層6において、鉱石予熱流動層4から排出するガス<7>により予熱され、350℃の予熱石炭<2>とし、排熱の有効活用を図った。
【産業上の利用可能性】
【0039】
低品位炭を加熱し低揮発分のチャーを製造する際に排出される石炭ガス中のタール分解に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…石炭乾留工程、2…タール分解工程、3…焼結機、4…鉱石予熱流動層、5…熱交換器、6…石炭予熱流動層、7…ガス冷却除塵設備、8…昇圧機、9…部分酸化炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低品位炭を加熱ガスにより加熱しチャー及び石炭ガスを製造する工程と、
前記石炭ガスと、結晶水を5質量%以上含む鉄鉱石とを反応させることにより石炭ガス中のタールを分解する工程を実施することを特徴とする石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項2】
前記チャー及び石炭ガスを製造する工程が、石炭の流動層において、石炭を600℃以上、850℃未満で加熱することを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項3】
前記石炭ガス中のタールを分解する工程から排出される燃料ガスの一部を抜き出し、酸化剤を投入して部分酸化することによって加熱したガスを、前記チャー及び石炭ガスを製造する工程へ導入することを特徴とする請求項2に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項4】
前記石炭ガス中のタールを分解する工程が、前記鉄鉱石の流動層において、鉄鉱石と前記石炭ガスを、800℃を超え900℃以下で反応させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項5】
前記チャー及び石炭ガスを製造する工程から排出される石炭ガスを酸化剤と共に前記石炭ガス中のタールを分解する工程へ投入することを特徴とする請求項4に記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項6】
前記低品位炭及び前記鉄鉱石が、前記石炭ガス中のタールを分解する工程から排出される燃料ガスの排熱により予熱されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項7】
前記チャー及び石炭ガスを製造する工程から排出されるチャーが、焼結鉱製造の燃料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。
【請求項8】
前記石炭ガス中のタールを分解する工程において、前記鉄鉱石が還元されて排出される還元鉱石が、焼結鉱製造の原料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の石炭ガス中のタール分解方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−219182(P2012−219182A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86167(P2011−86167)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】