説明

石炭ガス化炉の石炭チャー焼結防止方法

【課題】 石炭ガス化炉において、チャーが熱交換器部に堆積して焼結し、熱交換率が低下することを防止する。
【解決手段】 石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸マグネシウムを(MgCO3 )を2%以上、炭酸カルシウム(CaCO3 )を3%以上、又はドロマイト(CaCO3 ・MgCO3 )を3%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石炭ガス化炉の石炭チャーの焼結を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、石炭ガス化炉の熱交換器部に石炭の燃え残りであるチャーが堆積してその場所で焼結した場合には、熱交換率が急激に低下する問題があった。そのため、鉄球を熱交換器に衝突させてチャーを除去したり、熱交換器そのものに振動を与えて除去していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記の従来の石炭ガス化炉におけるチャーの除去方法では、石炭ガス化炉に頻繁に衝撃を与えなければならず、熱交換器部の強度疲労を起こしたり、ガス化炉運転が複雑になる問題がある。さらに、チャーが熱交換器部に堆積することにより熱交換率が低下し、ガス化炉プラント自体の運転を妨げてしまう問題があった。
【0004】本発明は、以上の問題点を解決することができる石炭ガス化炉の石炭チャー焼結防止方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、石炭ガス化炉においてガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸マグネシウム(MgCO3 )を2%以上、炭酸カルシウム(CaCO3 )を3%以上、又はこれらの化合物であるドロマイト(CaCO3 ・MgCO3 )を3%以上、石炭ガス化炉の熱交換器部に投入することを特徴とする。
【0006】本発明では、チャーの重量に対して炭酸マグネシウム(MgCO3 )を2%以上、炭酸カルシウム(CaCO3 )を3%以上、又はこれらの化合物であるドロマイト(CaCO3 ・MgCO3 )を3%以上を石炭ガス化炉の熱交換器部に投入してチャーと混合することによって、MgCO3 、CaCO3 又はCaCO3・MgCO3 に含まれるMg、Ca分がチャー中に含まれる粘性物質と反応して高融点の化合物を形成するので、チャー自体の粘性が高くなり焼結が抑制される。さらに、MgCO3 、CaCO3 又はCaCO3 ・MgCO3 に含まれる炭酸成分がガス化することによりチャー中に気孔を発生させチャーの焼結が抑制される。
【0007】これによって、チャーの焼結が抑制されて焼結度合いの指標となるスラグの強度は低下する。強度が低下したスラグは、石炭ガス化炉内の気流により熱交換器部に付着堆積することなく通過する。
【0008】なお、本発明におけるMgCO3 、CaCO3 又はCaCO3 ・MgCO3 の投入量のチャー重量に対する前記の下限値は、後記する石炭ガス化炉における一般的運転条件である一酸化炭素(CO)60%+二酸化炭素(CO2 )40%の還元雰囲気の800〜1000℃の温度においてチャーが焼結を起こさない充分に低い圧縮強度を実現することができる範囲により決定された。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態においては、石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対してMgCO3 を2%以上、CaCO3 を3%以上又はMgCO3 ・CaCO3 を3%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入する。
【0010】この投入されたMgCO3 、CaCO3 又はMgCO3 ・CaCO3 は、チャーと混合し、これらに含まれるMg分又はCa分がチャー中に含まれる粘性物質と反応して高融点の化合物を形成し、チャー自体の粘性が高くなり焼結が抑制される。また、MgCO3 、CaCO3 又はMgCO3 ・CaCO3 に含まれる炭酸成分がガス化しチャー中に気孔を発生させてチャーの焼結が抑制される。
【0011】これによって、チャーの焼結が抑制されてスラグの強度が低下し、スラグは石炭ガス化炉の気流によって熱交換器部に付着堆積せず通過することができる。
【0012】以下本発明の実験例を説明する。図1に示すように、炭素坩堝に石炭ガス化炉から採取したモーラ炭チャー及びモーラ炭チャーに対して0〜5重量%の炭酸マグネシウム(MgCO3 )、炭酸カルシウム(CaCO3 )又はドロマイト(MgCO3 ・CaCO3 )の粉体を添加したものを入れた(01)。この01の状態のスラグをいれた炭素坩堝を石炭ガス化炉の典型的な運転条件である一酸化炭素(CO)60%+二酸化炭素(CO2 )40%の還元雰囲気中で800〜1000℃で3時間加熱した(02)。これを冷却後、スラグを取り出し、圧縮強度試験を行うことにより添加剤の焼結防止効果を確認した(03)。
【0013】実験によって得られたものを以下に説明する。
【0014】炭酸カルシウム(CaCO3 )を添加した場合のチャーの圧縮強度を表1に示す。◎は坩堝から取り出し時にチャーが崩れ、強度計測できなかったものを示す。
【0015】
【表1】


【0016】炭酸マグネシウム(MgCO3 )を添加した場合のチャーの圧縮強度を表2に示す。◎は坩堝から取り出し時にチャーが崩れ、強度計測できなかったものを示す。
【0017】
【表2】


【0018】また、ドロマイト(CaCO3 ・MgCO3 )を添加した場合のチャーの圧縮強度を表3に示す。◎は坩堝から取り出し時にチャーが崩れ、強度計測ができなかったものを示す。
【0019】
【表3】


【0020】前記表1、表2及び表3に示される結果から炭酸カルシウム(CaCO3 )を3重量%以上、炭酸マグネシウム(MgCO3 )を2重量%以上、及びドロマイト(CaCO3 ・MgCO3 )を3重量%以上チャーに添加することにより、石炭ガス化炉のチャーが焼結を起こさないことが確認された。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸マグネシウムを2%以上、炭酸カルシウム3%以上、又はドロマイトを3%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入することによって、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム又はドロマイトに含まれるMg、Ca分がチャー中に含まれる粘性物質と反応して高融点の化合物を形成するので、チャーの粘性が高くなり焼結が抑制されると共に、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム又はドロマイトに含まれる炭酸成分がガス化してチャー中に気孔が発生してチャーの焼結が抑制される。
【0022】従って、チャーの焼結が抑制されスラグの強度が低下し、スラグは石炭ガス化炉内の気流により熱交換器部に付着することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実験例の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸マグネシウムを2%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入することを特徴とする石炭ガス化炉の石炭チャー焼結防止方法。
【請求項2】 石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸カルシウムを3%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入することを特徴とする石炭ガス化炉の石炭チャー焼結防止方法。
【請求項3】 石炭を高温還元雰囲気で可燃ガスに変換する石炭ガス化炉において、ガス変換後の燃え残り石炭であるチャーの重量に対して炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの化合物であるドロマイトを3%以上石炭ガス化炉の熱交換器部に投入することを特徴とする石炭ガス化炉の石炭チャー焼結防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開平9−157662
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−321575
【出願日】平成7年(1995)12月11日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)