説明

石炭ガス化石炭搬送システム及び石炭ガス化複合発電プラント

【課題】発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送すると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合に、ガス化炉の圧力変動への応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムを提供する。
【解決手段】ガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、フィードホッパからガス化炉に不活性ガスを用いて石炭を気流搬送する搬送管を備え、不活性ガスをフィードホッパの底部及びコーン部側面からそれぞれ供給する複数の供給系統を配設し、複数の供給系統に不活性ガスの流量を調節する流量調整弁を設置し、複数の流量調整弁を操作してフィードホッパに供給される不活性ガスの流量を制御する制御装置を設置してフィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させて不活性ガスの石炭搬送流量を制御する石炭ガス化石炭搬送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭等の固体燃料を用いた石炭ガス化石炭搬送システム及び石炭ガス化複合発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉や石炭ガス化炉等の大容量プラントへの石炭搬送技術として、ホッパと搬送先の圧力差を利用して、ホッパに投入した不活性ガスに石炭を同伴させる方式がある。この石炭搬送技術の実用化にあたり、石炭搬送流量の制御技術の開発が必要不可欠である。
【0003】
特開2008−133493号公報の第1図、特開昭58−6827号公報の第1図、特開昭60−31438号公報の第1図には、ホッパと搬送先の圧力差を利用して石炭を搬送する方式であって、石炭搬送流量に応じて搬送配管から投入する不活性ガスの流量を変化させる石炭搬送流量の制御方法がそれぞれ開示されている。
【0004】
これらの公知例のうち、特開2000−119666号公報の第1図には、ホッパとガス化炉の圧力差を利用して石炭を搬送する方式において、石炭を搬送する窒素をホッパ底部から、ホッパを加圧する窒素をホッパのコーン部側面から、それぞれ投入する窒素の投入方法が記載されている。そしてこの方法では、ホッパのロードセルと、ホッパからガス化炉に石炭を搬送する複数系統の搬送管における分岐前後の該搬送管に設けた粉体流量計で計測した石炭搬送流量を用いて、分岐した前記搬送管に設けた流量調整弁の開度を調整する石炭搬送流量の制御方法が開示されている。
【0005】
また、特開昭59−36028号公報の第1図及び特開昭58−74427号公報の第1図には、ホッパと搬送先の圧力差を利用して石炭を搬送する方式において、粉粒体の搬送ガスをホッパ底部から投入して粉粒体を流動化させ、ホッパ内に挿入した複数の搬送配管のそれぞれに、ブースター気体の投入部、及び流量調整弁を設けることによって、分配器を用いずに複数の搬送配管それぞれの粉粒体の搬送流量を制御する制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−133493号公報(第1図)
【特許文献2】特開昭58−6827号公報(第1図)
【特許文献3】特開昭60−31438号公報(第1図)
【特許文献4】特開2000−119666号公報(第1図)
【特許文献5】特開昭59−36028号公報(第1図)
【特許文献6】特開昭58−74427号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記した公知例においては、フィードホッパとガス化炉の圧力差を利用してホッパに投入した不活性ガスに石炭を同伴させる石炭搬送技術において、石炭搬送流量を変化させる場合に、フィードホッパに投入する搬送用の不活性ガス(主に窒素)、及び搬送管から投入する不活性ガスの流量、及び搬送管に設けた流量調整弁の開度を変化させている。
【0008】
しかしながら、搬送管を流れる不活性ガスの総流量を変化させると搬送管内の流速が変化するため、配管の磨耗又は石炭閉塞のリスクが生じる。この配管の磨耗又は石炭閉塞のリスクを回避するためには、石炭搬送流量の制御範囲(即ち、ガス化炉負荷)が制約されるという課題がある。
【0009】
更に、ガス化炉の圧力は、ガス化炉本体及び後流機器のパージやブロー実施、及び後流機器の異常などで一時的に変動する場合があるが、ガス化炉の一時的な圧力変動に対応した制御を行うことは困難であるという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送すると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にも、ガス化炉の圧力変動への応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な、石炭ガス化石炭搬送システム及び石炭ガス化複合発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の石炭ガス化石炭搬送システムは、石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、前記フィードホッパからガス化炉に不活性ガスを用いて石炭を気流搬送する搬送管を備え、不活性ガスを前記フィードホッパの底部及びコーン部側面からそれぞれ供給する複数の供給系統を配設してこれらの複数の供給系統を通じて不活性ガスを当該フィードホッパに供給し、前記複数の供給系統にその内部を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁をそれぞれ設置し、前記複数の流量調整弁を操作してこれらの複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量をそれぞれ制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって前記複数の流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させ、前記フィードホッパから前記ガス化炉に石炭を気流搬送する不活性ガスの石炭搬送流量を制御することを特徴とする。
【0012】
また本発明の石炭ガス化石炭搬送システムは、石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、フィードホッパからガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する搬送管を備え、前記フィードホッパに供給する不活性ガスを該フィードホッパの底部及びコーン部側面にそれぞれ供給する複数の供給系統を配設し、前記複数の供給系統に当該供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁を夫々設置し、前記複数の供給系統に設置された前記流量調整弁を操作して当該複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量を制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させ、前記複数の供給系統のうち、前記フィードホッパの底部から不活性ガスを供給する供給系統は、前記フィードホッパのコーン部底面から上昇流で不活性ガスを該フィードホッパ内に供給し、前記複数の供給系統のうち、前記フィードホッパのコーン部側面から不活性ガスを供給する供給系統は、前記フィードホッパの高さ方向に複数段設置された投入部から不活性ガスを該フィードホッパ内に供給するように構成したことを特徴とする。
【0013】
また本発明の石炭ガス化石炭搬送システムは、石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、フィードホッパからガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する搬送管を備え、前記フィードホッパに供給する不活性ガスを該フィードホッパの底部及びコーン部側面にそれぞれ供給する複数の供給系統を配設し、前記複数の供給系統に当該供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁を夫々設置し、前記複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して当該複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量を制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させて前記フィードホッパから前記ガス化炉に石炭を気流搬送する不活性ガスの石炭搬送流量を制御する石炭ガス化石炭搬送システムであって、前記制御装置はこれらの複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節することによって前記複数の供給系統への不活性ガスの供給割合を一定としたままで、供給する不活性ガスの総流量を変化させ、前記石炭搬送流量を調整するように構成したことを特徴とする。
【0014】
また本発明の石炭ガス化石炭搬送システムは、石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、フィードホッパからガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する搬送管を備え、前記フィードホッパに供給する不活性ガスを該フィードホッパの底部及びコーン部側面にそれぞれ供給する複数の供給系統を配設し、前記複数の供給系統に当該供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁を夫々設置し、前記複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して当該複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量を制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させて前記フィードホッパから前記ガス化炉に石炭を気流搬送する不活性ガスの石炭搬送流量を調整する石炭ガス化石炭搬送システムであって、前記フィードホッパの上流側にロックホッパを設置し、このフィードホッパとロックホッパとを接続する均圧管に該均圧管から分岐して圧力を逃がす脱圧管を配設し、前記フィードホッパ上部に加圧用の不活性ガスを供給するフィードホッパ加圧用の不活性ガス供給系統と当該不活性ガス供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁をそれぞれ設置し、前記ロックホッパの上流側に加圧バグフィルタを設置し、前記加圧バグフィルタには該加圧バグフィルタの圧力を調節する圧力調整弁を設置し、前記制御装置は加圧バグフィルタの圧力を調節する前記圧力調整弁の開度及び前記フィードホッパ加圧用の不活性ガス供給系統に設置した前記流量調整弁の開度をそれぞれ調節して、前記フィードホッパの圧力を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、前記した石炭ガス化石炭搬送システムの何れかの構成を備えた石炭ガス化複合発電プラントであって、ガス化炉で生成した生成ガスから熱を回収する熱回収部と、熱回収部の生成ガスを脱塵する集塵部と、集塵部を経た生成ガスを精製するガス精製部と、精製された生成ガスを燃料としてガスタービン装置で燃焼させて発電する発電部と、ガス化炉で生成した生成ガスに含まれているチャーを収容して前記ガス化炉に再投入するチャーホッパと、前記集塵部で回収したチャーを前記石炭ガス化石炭搬送システムと同じ構成の搬送方式でチャーホッパに搬送するチャー搬送システムをそれぞれ備え、前記制御装置によって発電部の発電出力の目標値と計測したガス化炉の圧力及び発電部の発電出力に基づいて当該発電部に燃料として供給する生成ガスの流量を決定し、決定された生成ガスの流量となるようにガス化炉に供給する石炭を搬送する不活性ガスの流量を調節する流量調整弁の開度、石炭及びチャーの搬送流量の目標値をそれぞれ決定し、フィードホッパに供給する石炭の搬送流量及びフィードホッパからガス化炉に供給するチャーの搬送流量の実測値と前記目標値との比較に基づいて、石炭ガス化石炭搬送システム及びチャー搬送システムに供給する不活性ガスの総流量、フィードホッパの底部とコーン部側面に供給する不活性ガスの流量割合、及び搬送管に設置した流量調整弁の開度をそれぞれ制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な、石炭ガス化石炭搬送システム及び石炭ガス化複合発電プラントが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを示すプロセスフロー図。
【図2】本発明の第2実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを示すプロセスフロー図。
【図3】フィードホッパに投入する不活性ガスの総流量比で石炭搬送流量を制御した実験結果。
【図4】フィードホッパのホッパ底面とコーン部側面の流量割合で石炭搬送流量を制御した実験結果。
【図5】本発明の第3実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを示すプロセスフロー図。
【図6】本発明の第4実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを示すプロセスフロー図。
【図7】本発明の第5実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを示すプロセスフロー図。
【図8】本発明の第6実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを用いた石炭ガス化複合発電プラントを示すプロセスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例である石炭ガス化石炭搬送システム、及びこの石炭ガス化石炭搬送システムを用いた石炭ガス化複合発電プラントについて、図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1実施例である石炭ガス化石炭搬送システムについて、図1を用いて説明する。
【0020】
この本発明の第1実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、石炭を搬送する不活性ガスをフィードホッパの底部とコーン部側面にそれぞれ供給する複数の供給系統と、各供給系統に設置した流量調整弁と、この流量調整弁の開度を調節して各供給系統を流れる不活性ガスの流量制御する制御装置を備え、各供給系統への不活性ガスの供給割合を変化させることで、石炭搬送流量を調整するように構成している。
【0021】
図1に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムのプロセスフロー図では、石炭を気流搬送する不活性ガスに窒素を用い、窒素をフィードホッパ底部とコーン部側面に供給する系統と、各系統の流量調整弁と、各系統の窒素流量を制御する制御装置を備えた、石炭ガス化石炭搬送システムを示している。
【0022】
図1に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムを詳細に説明すると、フィードホッパ2に充填された石炭1は、自身の粉体圧で圧密されるものの、フィードホッパ2に供給された窒素により流動化される。これと同時に、フィードホッパ2の圧力は、ガス化炉5の圧力より高く加圧される。フィードホッパ2とガス化炉5の間で生じた差圧により、石炭1は、窒素に同伴され、搬送管3と石炭バーナ4を通り、ガス化炉5に気流搬送される。
【0023】
ガス化炉5における石炭1の燃焼状態を安定させるためには、石炭搬送流量の変動を抑制し、ガス化炉5圧力を安定させる必要がある。
【0024】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムのように、フィードホッパ2とガス化炉5の間に生じた差圧を用いる石炭搬送方式では、石炭搬送流量の変動を抑制し、ガス化炉5の圧力を安定化するには、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定に保持する必要がある。これは、フィードホッパ2とガス化炉5間の差圧は、主に搬送管3と石炭バーナ4内を流れる石炭1及び搬送窒素の摩擦抵抗(圧力損失)によって生じるためである。
【0025】
このためには、搬送窒素の流量を一定とし、フィードホッパ2内での石炭1の流動化状態をより定常に近づける運用が望ましい。この運用は、石炭搬送流量の変動抑制に繋がり、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧の安定化に有効である。
【0026】
しかし、ガス化炉5の圧力は、石炭搬送流量の変動に起因する石炭1の燃焼状態の変動だけでなく、他の要因でも変動する。ガス化炉5圧力の主な変動要因は、ガス化炉5本体及び後流機器でのパージやブロー実施時、ガス化炉5の後流機器の圧力異常時などである。
【0027】
ガス化炉5圧力が変動した場合でも、石炭搬送流量を安定化させる運用方法として、(1)フィードホッパ2の圧力をガス化炉5圧力に応じて変動させ、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定に保持する方法と、(2)フィードホッパ2の圧力を一定とし、フィードホッパ2に供給する搬送窒素の総流量、又は各供給系統への分割割合のうち少なくとも一方を調整して石炭1の流動化状態を変えて、石炭搬送流量を調整する方法が挙げられる。
【0028】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、上記(2)を用いた運用方法を説明する。尚、上記(1)の方法は、実施例3の図5を用いて説明する。
【0029】
フィードホッパ2内の石炭1を流動化し、かつ石炭1を搬送管3に同伴できる搬送窒素の供給系統として、フィードホッパ2のホッパ底面から投入する窒素6の供給系統6bと、フィードホッパ2のコーン部側面から投入する窒素8の供給系統のうち、少なくとも一方を用いる。コーン部側面から投入する窒素8の供給系統は、高さ方向で複数段に分割すると良い。
【0030】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、コーン部側面から投入する窒素8の供給系統の一例として搬送窒素の供給系統を高さ方向に3分割し、窒素8を分岐して、コーン部側面下段から投入する窒素9の供給系統9b、コーン部側面中段から投入する窒素10の供給系統10b、及びコーン部側面上段から投入する窒素11の供給系統11bとの3系統に分割構成している。コーン部側面から投入する窒素8の供給系統を分割する主な理由は、次の2つである。
【0031】
理由の1つ目は、フィードホッパ2内のコーン部側面の局所領域の石炭1を、安定に流動化するためである。理由の2つ目は、フィードホッパ2内の石炭1の残量低下時に、コーン部側面上段から投入する窒素11とコーン部側面中段から投入する窒素10の流量を低減するためである。これによって、搬送窒素が石炭1を吹き抜けてフィードホッパ2内に拡散することによる、石炭1の流動化状態の変動を抑制する。
【0032】
そして本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、ガス化炉5本体及び後流機器でのパージやブロー実施時、又はガス化炉5の後流機器の圧力異常時に、一時的にガス化炉5の圧力が変動した場合、制御装置15によって、まず、フィードホッパ2に供給する搬送窒素の総流量を変化させる。
【0033】
ここで、フィードホッパ2に供給する窒素6、9、10、11の各供給系統6b、9b、10b、11bによる窒素の分割割合を一定のままで搬送窒素の総流量のみを変えると、フィードホッパ2からガス化炉5に供給する石炭搬送流量も変動することになる。
【0034】
そこで、石炭搬送流量を一定に保持するように、フィードホッパ2に供給する窒素6、9、10、11の各供給系統6b、9b、10b及び11bを流れる各搬送窒素の分割割合を調整する。
【0035】
前記各供給系統6b、9b、10b及び11bを流れる各搬送窒素6、9、10、11の分割割合を調整するためには、前記各供給系統6b、9b、10b及び11bに設置された流路調整弁7、12、13及び14の開度を制御装置15からの操作信号に基づいて調節すれば良い。
【0036】
ここで、搬送窒素の総流量、及びフィードホッパ2に供給する搬送窒素の各供給系統6b、9b、10b及び11bへの分割割合に対する石炭搬送流量の影響を反映した各流路調整弁7、12、13及び14の開度の初期設定を事前に設定しておくことで、ガス化炉5の圧力や、所望の石炭搬送流量に対する操作条件を素早く選定して調節することができる。
【0037】
上記した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムの方式であれば、フィードホッパ2の圧力を一定とした運用であるため、一時的に応答性に優れた制御が可能である。
【0038】
次に、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムによって、ガス化炉5の部分負荷運転に適用する場合の運用方法を図1を用いて説明する。
【0039】
図1に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムおいて、ガス化炉5を発電用に用いる場合、50%負荷以下での安定運転を求められる。ここで、搬送管3内での流速低下による石炭1の閉塞リスクを回避するため、搬送窒素流量を極力一定として、石炭搬送流量のみ調整する必要がある。
【0040】
これに対しては、ガス化炉5の負荷に応じて、搬送窒素の総流量を一定のままで、フィードホッパ2に供給する各供給系統6b、9b、10b及び11bの搬送窒素の分割割合を変えることで対応すると良い。各供給系統6b、9b、10b及び11bへの搬送窒素の分割割合での調整範囲を超えた場合には、搬送窒素の総流量を変えて対応する。なお、この場合、石炭1を安定搬送できる最低流速が、石炭搬送システムで許容するガス化炉5の最低負荷に相当する。
【0041】
上記した運用方法を実現するため、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいては、ガス化炉5及びフィードホッパ2の圧力を圧力検出器91、92でそれぞれ検出し、前記圧力検出器91、92で測定したガス化炉5及びフィードホッパ2の圧力値を制御装置15に取り込む。
【0042】
制御装置15では、圧力検出器92で検出したガス化炉5の圧力が定常状態であると想定して、ガス化炉5とフィードホッパ2の両者の差圧と石炭搬送流量を所望の値に保持するべく、フィードホッパ2に供給する搬送窒素の各供給系統6b、9b、10b及び11bを流れる窒素の流量の初期値を演算する。
【0043】
次に前記制御装置15では、搬送窒素6、9、10、11が各供給系統6b、9b、10b及び11bを流れる流量を演算した上記初期値に調整するように、前記各供給系統6b、9b、10b及び11bにそれぞれ設置されている流量調整弁、即ち、フィードホッパ2のホッパ底面から投入する供給系統6bによる窒素6の流量調整弁7、フィードホッパ2のコーン部側面下段から投入する供給系統9bによる窒素9の流量調整弁12、フィードホッパ2のコーン部側面中段から投入する供給系統10bによる窒素10の流量調整弁13、フィードホッパ2のコーン部側面上段から投入する供給系統11bによる窒素11の流量調整弁14の開度を、制御装置15から指令される弁開度信号に基づいてそれぞれ調整する。
【0044】
ここで、制御装置15によって調整される各供給系統6b、9b、10b及び11bを流れる搬送窒素流量の初期値、及び各供給系統6b、9b、10b及び11bに夫々設置した流量調整弁7、12、13及び14の開度については、搬送窒素の総流量、及びフィードホッパ2に供給する搬送窒素の各供給系統6b、9b、10b及び11bへの分割割合に対する石炭搬送流量の影響を反映した各流路調整弁7、12、13及び14の開度の初期設定値を制御装置15に事前に設定しておくことで、石炭ガス化石炭搬送システムが短時間で定常状態に達することが可能となる。
【0045】
上記した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムに関して、フィードホッパ2に投入する搬送窒素の操作条件が石炭搬送流量に及ぼす影響を実測して、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムの妥当性と石炭搬送流量の調整範囲を次の通り確認した。試験条件として、ガス化炉5の圧力は1MPa及び2MPaとし、フィードホッパ2の圧力はガス化炉5の圧力よりも0.2MPa高めた状態を初期条件とした。
【0046】
図3に、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、横軸のフィードホッパに投入する不活性ガス総流量比と、縦軸の石炭を搬送する搬送流量比との関係を示す特性図を表した。
【0047】
図3に示した特性図ではフィードホッパ2に投入する搬送窒素の流量比を変えた場合の石炭搬送流量比が示されており、フィードホッパ2への搬送窒素の投入系統は、図1の実施例に示したように、フィードホッパ2のホッパ底面の供給系統6bから投入する窒素6のみ、又はフィードホッパ2のコーン部側面の各供給系統9b、10b、11bから投入する窒素8を分岐した窒素9、10、11とした。
【0048】
即ち、フィードホッパ2のコーン部側面から投入する窒素8から分岐して供給される搬送窒素は、図1の実施例に示したフィードホッパ2のコーン部側面下段から投入する窒素9の供給系統9b、フィードホッパ2のコーン部側面中段から投入する窒素10の供給系統10b、フィードホッパ2のコーン部側面上段から投入する窒素11の供給系統11bとの3系統に構成し、これらの各供給系統9b、10b、11bによって投入する窒素の供給量を均等に分割した。
【0049】
その結果、図3に示したように、フィードホッパ2への搬送窒素の供給系統を、ホッパ底面の供給系統6bから投入する窒素6のみ、及びコーン部側面の各供給系統9b、10b、11bから投入する窒素8を分岐した窒素9、10、11のみにした何れの場合であっても、石炭搬送流量比は、ガス化炉5の圧力に拘わらず、搬送窒素の流量比に比例した。また、同じ搬送窒素流量比では、コーン部側面から投入する窒素8を分岐した窒素9、10、11を用いることで、石炭搬送流量比を高めることが可能となった。
【0050】
以上説明したように、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムによれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムが実現できる。
【実施例2】
【0051】
次に本発明の第2実施例である石炭ガス化石炭搬送システムについて図2を用いて説明する。
【0052】
図2に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、図1に示した第1実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと基本的な構成が同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分のみ以下に説明する。
【0053】
図2に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、搬送窒素をフィードホッパ2の底部から上昇流で供給する供給系統と、フィードホッパ2のコーン部側面から搬送窒素を供給する複数の供給系統を有し、後者の複数の供給系統ではフィードホッパ2の高さ方向に複数段、かつ各段で接線方向に備えた複数本のノズルから分割して搬送窒素を供給し、この複数の供給系統に設置した流量調整弁と、前記流量調整弁の開度を調節して各供給系統を流れる不活性ガスの流量制御する制御装置を備え、各供給系統への不活性ガスの供給割合を変化させることで、石炭搬送流量を調整するように構成している。
【0054】
即ち、図2に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、石炭1の搬送窒素を、フィードホッパ2のホッパ底部から上昇流で供給する供給系統6bと、フィードホッパ2のコーン部側面より高さ方向に3段、かつ各段から90度間隔に備えられた4本のノズルから接線方向に供給する供給系統9b、10b、11bと、各供給系統6b、9b、10b、11bに設置した流量調整弁7、12、13、14と、これらの流量調整弁7、12、13、14の開度を調節する制御装置15を備えており、前記制御装置15の指令信号によってこれらの流量調整弁の開度をそれぞれ制御して、各供給系統6b、9b、10b、11bを流れる窒素流量を制御する。
【0055】
そして本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、フィードホッパ2のホッパ底部から投入する窒素6の供給系統6bでは、フィードホッパ2の底部に設けたホッパ底面の窒素投入部16で搬送窒素を衝突させ、緩慢な上昇流としてフィードホッパ2に供給する。
【0056】
これにより、フィードホッパ2のコーン部底部の石炭1を流動化させるものである。また、本実施例のように、ホッパ底部に設置した窒素投入部16を、4方向の対向噴流を衝突させる構造とすることで、フィードホッパ2のコーン部底部に設けた下方の石炭抜出し弁17から、余った石炭1をフィードホッパ2から回収することも可能となり、操作性に優れる。
【0057】
次に、フィードホッパ2のコーン部側面の下段に設置した下段投入部103から投入する窒素9、コーン部側面の中段に設置した中段投入部102から投入する窒素10、コーン部側面の上段に設置した上段投入部101上段から投入する窒素11は、それぞれ90度間隔に備えられた4本のノズルから接線方向に窒素9、10,11をフィードホッパ2内に供給するように構成している。
【0058】
上記した構成の窒素の供給系統を用いることで、フィードホッパ2のコーン部における石炭1の流動化と、石炭1の付着(ブリッジング)防止を両立できる。
【0059】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、フィードホッパ2のコーン部側面から投入する窒素8を、高さ方向に3段、同一高さで4本のノズルで分割した場合を示したが、フィードホッパ2の形状や石炭の流動化状況に応じて、高さ方向の分割数や同一高さに設置するノズル本数を増減させても構わない。
【0060】
また、フィードホッパ2のコーン部側面から投入する窒素9,10,11の各供給系統9b、10b、11bのみを用いた場合、フィードホッパ2の底部からホッパ底面の窒素投入部内の石炭1が、流動化されずに残留することになる。
【0061】
そこで、フィードホッパ2の底部における石炭1の残留量を減らすには、フィードホッパ2の底面から投入する窒素6の供給系統6bを併用することが望ましい。
【0062】
ガス化炉5の圧力変動や負荷変化に対応する、搬送窒素の各供給系統の運用方法は、第1実施例の石炭ガス化石炭搬送システムの場合と同じである。
【0063】
本実施例でも、フィードホッパ2に投入する搬送窒素の操作条件が、石炭搬送流量に及ぼす影響を実測し、本発明の妥当性と石炭搬送流量の調整範囲を確認した。試験条件として、ガス化炉5の圧力は1MPa及び2MPaとし、フィードホッパ2の圧力はガス化炉圧力よりも0.2MPa高めた状態を初期条件とした。
【0064】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいても、フィードホッパ2に投入する搬送窒素の流量比を変えた場合の石炭搬送流量比は、図3に示した第1実施例の石炭ガス化石炭搬送システムの場合と同様である。
【0065】
したがって、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいても、フィードホッパ2への搬送窒素の投入系統を、ホッパ底面から投入する窒素6のみ、及びコーン部側面から投入する窒素8のみのいずれの場合でも、ガス化炉圧力によらず、石炭搬送流量比は、ガス化炉圧力によらず、搬送窒素の流量比に比例することになる。また、同じ搬送窒素流量比では、コーン部側面から投入する窒素8を用いることで、石炭搬送流量比を高めることができる。
【0066】
以上より、搬送窒素の総流量比0.3〜1.4の範囲で、石炭搬送流量は搬送窒素の総流量に比例することを確認した。これにより、搬送窒素の総流量で、石炭搬送流量を調整可能である。
【0067】
次に、搬送窒素の総流量を一定として、以下の(1)式に定義するコーン部側面の流量割合を変化させた場合の石炭搬送流量比を実測した結果を図4に示す。
【0068】
コーン部側面の流量割合=コーン部側面から投入する窒素8の流量/(ホッパ底面から投入する窒素6の流量+コーン部側面から投入する窒素8の流量) ・・・(1)
その結果、コーン部側面の流量割合は、石炭搬送流量比に比例した。このことから、搬送窒素の総流量を一定として、ホッパ底面から投入する窒素6とコーン部側面から投入する窒素8の割合を変えることでも、石炭搬送流量を調整できる。
【0069】
以上の試験結果より、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、石炭搬送流量は、搬送窒素の流量、及び投入方法で調整できることを確認し、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムの妥当性を確認した。また、図3と図4を合わせると、石炭搬送流量の調整範囲としてガス化炉負荷50〜100%にも対応可能であり、発電用の石炭ガス化石炭搬送システムに適用可能である。
【0070】
また、一時的にガス化炉5の圧力が変動する場合に備えて、(1)式で定義したコーン部側面の流量割合の調整手段を備える。例えば、ガス化炉5の圧力が一時的に上昇し、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧が低下して、石炭搬送流量のみならず搬送窒素流量も低下することが予想される場合は、コーン部側面の流量割合を高めて対応すると良い。
【0071】
これにより、搬送窒素流量が低下しても、石炭搬送流量を維持できる。この操作方法は、フィードホッパ2の圧力を一定に保持できるため、ガス化炉5圧力変動に対する石炭搬送流量の変動抑制と、応答性に優れた制御方法となる。
【0072】
従って、ガス化炉5及びフィードホッパ2の圧力を図1の制御装置15に取り込み、ガス化炉5の圧力が定常状態の際に、両者の差圧を所望の一定値に保持するようフィードホッパ2に供給する搬送窒素の各系統の流量を調整する。
【0073】
ここで、搬送窒素の各供給系統とは、フィードホッパ2のホッパ底面から投入する窒素6の供給系統6bと、コーン部側面から投入する窒素8の供給系統である。コーン部側面から投入する窒素8の供給系統は、コーン部側面の下段投入部103から投入する窒素9の供給系統9b、コーン部側面の中段投入部102から投入する窒素10の供給系統10b、コーン部側面の上段投入部101から投入する窒素11の供給系統11bのように複数段に分割させて構成する。
【0074】
これは、フィードホッパ2内の石炭残量に応じて、コーン部側面から投入する窒素8の高さ方向の流量配分を可変にするためである。
【0075】
制御装置15は、フィードホッパ2のホッパ底面から投入する窒素6の流量調整弁7、フィードホッパ2のコーン部側面の下段から投入する窒素9の流量調整弁12、コーン部側面の中段から投入する窒素10の流量調整弁13、コーン部側面の上段から投入する窒素11の流量調整弁14の開度をそれぞれ調整し、各供給系統6b、9b、10b、11bに供給する搬送窒素の流量をそれぞれ調整する。また、ガス化炉5の圧力変動時や負荷変化時には、制御装置15によって上記の(1)式で定義したコーン部側面の流量割合を調整し、石炭搬送流量の変動を抑制する。
【0076】
また、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムによれば、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合でも、不活性ガスの総流量を一定で、かつフィードホッパの圧力も変えずに、石炭搬送流量のみ制御できる。これにより、一時的なガス化炉圧力変動にも対応する、応答性に優れた石炭搬送流量の制御技術を提供できる。
【0077】
さらに、搬送管に設けた流量調整弁の開度、及び搬送配管から投入する不活性ガスの流量変化も併用することで、石炭搬送流量の制御範囲を拡大し、かつ通常運転時の石炭搬送流量の変動を抑制する。従って、長時間の連続運転に適した、信頼性の高い石炭ガス化複合プラントを構築できる。
【0078】
本実施例によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムが実現できる。
【実施例3】
【0079】
次に本発明の第3実施例である石炭ガス化石炭搬送システムについて図5を用いて説明する。
【0080】
図5に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、図2に示した第2実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと基本的な構成が同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分のみ以下に説明する。
【0081】
図5に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、第2実施例に記載の石炭ガス化石炭搬送システムに、フィードホッパの加圧窒素の供給系統と、圧力逃がし配管と、加圧バグフィルタと、圧力調整弁を加え、フィードホッパの圧力制御機能を持たせた石炭ガス化石炭搬送システムである。
【0082】
図5に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、常圧ホッパ19、ロックホッパ21からフィードホッパ2に石炭を供給し、フィードホッパ2の圧力調整機能を持たせた石炭ガス化石炭搬送システムであり、ミル18で粉砕された石炭1は、まず常圧ホッパ19に貯蔵され、常圧ホッパ19の下部に設置された粉体弁20を通って、常圧ホッパ19に貯蔵された石炭1が常圧のままでロックホッパ21に移送される。
【0083】
常圧ホッパ19からロックホッパ21への石炭1の移送時には、常圧ホッパ19とロックホッパ21との間に配設された均圧管22に設けた均圧弁23を開けて、常圧ホッパ19とロックホッパ21の圧力を均圧にすることで、常圧ホッパ19のコーン部での石炭1の閉塞や滞留を抑制する。
【0084】
また、常圧ホッパ19は、常圧のバグフィルタも兼ねており、常圧ホッパ19とロックホッパ21との間に配設した均圧管22を介して飛散した石炭1を回収し、石炭1の系外の放出を防ぐ。
【0085】
更に常圧ホッパ19は加圧バグフィルタ30と連通しており、この加圧バグフィルタ30とロックホッパ21との間には脱圧弁29を設けた脱圧管28が配設されている。
【0086】
前記常圧ホッパ19からロックホッパ21に移送された石炭1は、フィードホッパ2の圧力まで加圧される。このときは、常圧ホッパ19の下部に設置された粉体弁20、常圧ホッパ19とロックホッパ21の間の均圧管22に設置した均圧弁23、ロックホッパ21の下部に設置された粉体弁24、ロックホッパの均圧弁27は全て閉じられている。
【0087】
ロックホッパ21の加圧後に、ロックホッパ21の粉体弁24、ロックホッパ21の均圧弁27、ロックホッパ21とフィードホッパ2との間に配設された均圧管25に設けたフィードホッパ2の均圧弁26を開けて、ロックホッパ21中の石炭1を、フィードホッパ2に移送する。このとき、ロックホッパ21とフィードホッパ2との間に配設された均圧管25を用いることで、ロックホッパ21のコーン部での石炭1の閉塞や滞留を抑制する。
【0088】
ロックホッパ21からフィードホッパ2への石炭1の移送終了後に、ロックホッパ21の粉体弁24とロックホッパ21の均圧弁27を閉じる。そして、制御装置15からの操作信号によって加圧バグフィルタ30の圧力調整弁31の開度を調整することで、加圧バグフィルタ30及びフィードホッパ2の圧力を調整すべく、ロックホッパ21と加圧バグフィルタ30との間に配設された脱圧管28に設置した脱圧弁29を開ける。
【0089】
尚、加圧バグフィルタ30は、ロックホッパ21やフィードホッパ2の脱圧にも適用できる。加圧バグフィルタ30で回収された石炭1は、常圧下で加圧バグフィルタ30の粉体弁32を開けることで、加圧バグフィルタ30から常圧ホッパ19に移送されて、ガス化炉5に搬送できる。
【0090】
フィードホッパ2に移送された石炭1は、第2実施例の石炭ガス化石炭搬送システムに記載された手順に沿って搬送窒素によってフィードホッパ2の底部で流動化され、搬送窒素に同伴されて、フィードホッパ2から搬送管3と石炭バーナ4を通って、ガス化炉5に搬送される。
【0091】
第2実施例の石炭ガス化石炭搬送システムに記載された手順によっても、フィードホッパ2の圧力及び石炭搬送流量の変動が大きい場合は、フィードホッパ2の圧力の調整手段として、窒素8の供給系統を更に分岐し、流路調整弁34を設けた供給系統33bを配設してフィードホッパ2の上部から窒素8の一部を分岐しフィードホッパ加圧窒素33として前記フィードホッパ2の上部から投入する供給系統33bを更に配設し、このフィードホッパ加圧窒素33を窒素の供給系統33bを通じてフィードホッパ2の上部に投入して供給すると良い。
【0092】
供給系統33bを流れるフィードホッパ加圧窒素33の流量調整弁34の開度は前記制御装置15によって制御するようにして、圧力検出器91で検出したフィードホッパ2の圧力値に応じて、フィードホッパ加圧窒素33の流量を調整すると良い。
【0093】
フィードホッパ2で余剰窒素が発生した場合は、ロックホッパ21とフィードホッパ2との間に配設した均圧管25、ロックホッパ21と加圧バグフィルタ30との間に配設した脱圧管28、加圧バグフィルタ30、及び加圧バグフィルタ30の圧力調整弁31を介して、この余剰窒素を系外に放出する。
【0094】
ここで、フィードホッパ加圧窒素33を、フィードホッパ2の上部に供給する理由は、フィードホッパ2内の石炭1を流動化させないためである。
【0095】
次に、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおいては、ガス化炉5圧力が変動した場合に石炭搬送流量を安定化させる運用方法として、(1)フィードホッパ2の圧力をガス化炉5圧力に応じて変動させ、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定に保持する方法と、(2)フィードホッパ2の圧力を一定とし、フィードホッパ2に供給する搬送窒素の総流量、又は搬送窒素を供給する各供給系統への搬送窒素の分割割合のうち、少なくとも一方を調整して石炭1の流動化状態を変え、石炭搬送流量を調整する方法を示している。
【0096】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムに、上記(1)の方法、及び(2)の方法を適用した場合の運用方法を、順に説明する。
【0097】
まず、前記(1)の方法である、フィードホッパ2の圧力をガス化炉5圧力に応じて変動させ、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定に保持する運用方法について説明する。
【0098】
圧力検出器92で測定したガス化炉5の圧力値を入力した制御装置15によってガス化炉5の圧力変動を検知した場合に、ガス化炉5の圧力に応じて制御装置15の操作によってフィードホッパ2の圧力を変動させる。
【0099】
フィードホッパ2の圧力を高める場合は、制御装置15によってフィードホッパ加圧窒素を供給する供給系統33bに設置した流量調整弁34の開度を大きくし、加圧バグフィルタ30の圧力調整弁31の開度を小さくして加圧バグフィルタ30から排気される窒素の流量を減少させると良い。
【0100】
フィードホッパ2の圧力を下げる場合は、制御装置15の操作によって上記と逆の操作をすると良い。このようにすることによって、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定に保持できるため、フィードホッパ2に投入する搬送窒素の流速の条件を変えずに、石炭搬送流量の変動を抑制できる。
【0101】
次に、前記(2)の方法である、フィードホッパ2圧力を一定とし、フィードホッパ2に供給する搬送窒素の総流量、又は搬送窒素を供給する各供給系統への搬送窒素の分割割合のうち、少なくとも一方を調整して石炭1の流動化状態を変え、石炭搬送流量を調整する運用方法について説明する。
【0102】
この場合、搬送窒素の調整方法は、第2実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおける手順と同様の手順である。
【0103】
フィードホッパ2の圧力が変動して石炭搬送流量の変動を抑制できない場合には、制御装置15によってフィードホッパ加圧窒素を供給する供給系統33bに設置した流量調整弁34の開度を操作してフィードホッパ加圧窒素33の流量を増加させ、加圧バグフィルタ30の圧力調整弁31の開度を小さくすることで、フィードホッパ2の圧力を安定化させることができる。
【0104】
本実施例によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムが実現できる。
【実施例4】
【0105】
次に本発明の第4実施例である石炭ガス化石炭搬送システムについて図6を用いて説明する。
【0106】
図6に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、図5に示した第3実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと基本的な構成が同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分のみ以下に説明する。
【0107】
図6に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、第3実施例に記載の石炭搬送システムにおける搬送管に流量調整弁、加速用の窒素投入部、粉体流量計測装置、フィードホッパに重量計測装置をそれぞれ備え、粉体流量計測装置と重量計測装置で計測した石炭搬送流量を制御装置に取り込み、前記制御装置15によって流量調整弁の開度調整、及び加速用の窒素流量を調整することで、石炭搬送流量を目標値に調整する機能を持たせた石炭ガス化石炭搬送システムである。
【0108】
図6に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、フィードホッパ2からガス化炉5に石炭を窒素で気流搬送する搬送管3に流量調整弁36、加速用の加速窒素39を投入する窒素投入部38、石炭流量計測装置37を夫々設置し、フィードホッパ2に重量を計測するフィードホッパロードセル35を備え、石炭流量計測装置37とフィードホッパロードセル35で計測した石炭搬送流量をもとに、前記制御装置15によって流量調整弁36及び流量調整弁40の開度と加速用の加速窒素39の流量を調整し、石炭搬送流量を目標値に調整する機能を持たせた石炭ガス化石炭搬送システムである。
【0109】
図6に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、フィードホッパ2にフィードホッパロードセル35を備えてフィードホッパ2内のフィードホッパ重量を計測し、前記制御装置15によってフィードホッパ重量の変化から石炭搬送流量の瞬時値を監視できる。
【0110】
フィードホッパ2の圧力が変動する場合、フィードホッパロードセル35で計測したフィードホッパ重量が所望値となるように前記制御装置15によって流量調整弁36及び流量調整弁40の開度をそれぞれ制御する。
【0111】
フィードホッパ重量は圧力の影響で変動する場合があるので、フィードホッパ2の圧力がフィードホッパ重量に及ぼす影響を事前に検定しておくことで、フィードホッパ2の圧力を極力一定で運用することが望ましい。
【0112】
また、石炭搬送流量を精度良く計測するために、フィードホッパ2からガス化炉5に石炭を搬送する搬送管3に設置した石炭流量計測装置37とフィードホッパロードセル35で計測した石炭搬送流量をもとに、前記制御装置15によって流量調整弁36及び流量調整弁40の開度をそれぞれ調整し、石炭搬送流量を目標値に調整する。
【0113】
石炭流量計測装置37は、フィードホッパロードセル35を基準にして事前に検量線を作成しておけば良い。この石炭流量計測装置37によれば、フィードホッパ2の圧力が変動した場合でも、搬送管3を通じてガス化炉5に供給する石炭搬送流量の瞬時値を計測可能である。
【0114】
石炭流量計測装置37には、石炭による閉塞防止の観点から非接触タイプが望ましく、静電容量式やマイクロ波式の粉体流量計などが有望である。
【0115】
本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムにおける搬送管3には、流量調整弁36と加速用の加速窒素39を投入する加速窒素投入部38が設置されている。搬送管3の流量調整弁36を調節することで、搬送管3に縮流部を形成して石炭を流れにくくし、石炭搬送流量を調整することが可能となる。
【0116】
加速窒素投入部38では、加速窒素の流量調整弁40で流量調整された加速窒素39が搬送管3に供給される。この加速窒素39の流量を変えることで石炭搬送流量を調整する。加速窒素39を供給する理由は、以下の3つである。
【0117】
まず、理由の1つ目は、フィードホッパ2に投入する搬送窒素流量の最小化である。搬送窒素でフィードホッパ2内の石炭1を流動化し、搬送管3内で閉塞せずに搬送できれば良く、フィードホッパ2に投入する搬送窒素流量は、少ないほど良い。
【0118】
フィードホッパ2に投入する搬送窒素流量を多くすると、搬送管3内における石炭1の閉塞リスクは低下するものの、フィードホッパ2内で流動化する石炭1量が増し、石炭1の残量で流動化状態が変動しやすくなる。流動化状態の変動は、石炭搬送流量の変動要因となる。
【0119】
理由の2つ目は、搬送管3内での窒素の摩擦抵抗の増加させることによる、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧の向上である。ガス化炉5内の高温ガスによる搬送管3内への逆流を抑止するため、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧は0.1MPa以上とする運用が安全である。
【0120】
従って、加速窒素39を搬送管3内に供給することにより、フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を高めることができる。特に、石炭搬送流量の少ない部分負荷運転時には、搬送管3での石炭の摩擦抵抗が小さいため、加速窒素39の投入が必要となる。
【0121】
理由の3つ目は、加速窒素39の流量変化による石炭搬送流量の調整である。フィードホッパ2とガス化炉5の差圧を一定で運用した場合、加速窒素39の流量を増加させると、搬送管3内の窒素の摩擦抵抗が増加する。この結果、石炭搬送流量は減少する。
【0122】
逆に、加速窒素39の流量を減少させると、搬送管3内の窒素の摩擦抵抗が減少するため、石炭搬送流量が増加する。
【0123】
以上のことから、本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、石炭搬送流量の瞬時値をもとに、石炭搬送流量を目標値に調整する制御機能を持たせた。搬送管3の流量調整弁36や、加速窒素39の流量調整弁40の開度は、制御装置15によって制御する。それぞれの流量調整弁の開度は、圧力検出器91で検出したフィードホッパ2の圧力、圧力検出器92で検出したガス化炉5の圧力、フィードホッパロードセル35及び石炭流量計測装置37で計測した石炭搬送流量に基づいて制御装置15で決定される。
【0124】
本実施例によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムが実現できる。
【実施例5】
【0125】
次に本発明の第5実施例である石炭ガス化石炭搬送システムについて図7を用いて説明する。
【0126】
図7に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムは、図6に示した第4実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと基本的な構成が同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分のみ以下に説明する。
【0127】
図7に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、実施例4に記載の石炭搬送システムにおける搬送管に分配器を設け、1本の搬送管から複数の石炭バーナに石炭を均等供給し、石炭搬送流量の計測値に応じて前記制御装置15によってこれらの石炭バーナに供給する酸素流量を決める機能を持たせた石炭ガス化石炭搬送システムである。
【0128】
図7に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムでは、フィードホッパ2からガス化炉5に石炭を窒素で気流搬送する搬送管3に、上流側(フィードホッパ2側)から、流量調整弁36、加速窒素投入部38、石炭流量計測装置37がそれぞれ設置されており、この石炭流量計測装置37の下流に、搬送管3を分配する分配器41が設けられている。
【0129】
搬送管3は前記分配器41において複数系統の搬送管42に分配され、分配後の搬送管42は石炭バーナ4を介してガス化炉5にそれぞれ接続される。ここで、複数系統となった分配後の搬送管42、及び石炭バーナ4の口径と配管長さを統一することで、分配後の搬送管42には、石炭と搬送窒素を均等分配して供給できる。
【0130】
石炭搬送流量の計測には、第4実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと同様に、フィードホッパ2に設置するフィードホッパロードセル35と、搬送管3に設置する石炭流量計測装置37を用いると良い。
【0131】
また、事前に分配器41から、複数系統の搬送管42の端部に設置した石炭バーナ4までの均等分配を検定しておくと良い。複数系統の搬送管42への均等分配の検定方法は、圧力損失の実測、個々の系統での石炭搬送流量の実測、トレーサの使用などが挙げられる。
【0132】
事前の検定で、複数系統の搬送管42における個々の系統への均等分配を確認できれば、個々の分配後の搬送管42における石炭搬送流量の制御は不要となる。これにより、機器点数や制御ロジックを簡略化した石炭搬送システムを構築できる。
【0133】
石炭バーナ4の先端に付着物が付着・成長し、搬送管42の個々の系統の圧力損失がばらつく可能性のある場合には、石炭バーナ4の上流側の搬送管3又は搬送管42の配管圧力を計測し、石炭バーナ4をパージする系統を別途備えれば良い。
【0134】
石炭バーナ4の上流側の搬送管3又は搬送管42の配管圧力、すなわちフィードホッパ2と石炭バーナ4の差圧が、規定値以下となった場合には、石炭バーナ4の先端の付着物が成長したと判断し、石炭バーナ4をパージする。石炭バーナ4の上流側の搬送管3又は搬送管42の配管圧力、及びパージの制御も、制御装置15で行うと良い。
【0135】
次に、ガス化炉5に設置した石炭バーナ4に供給される石炭バーナ酸素43の供給方法について説明する。ガス化炉5に設置した前記石炭バーナ43には石炭バーナ酸素43を供給する分岐した供給管43bが配設されており、石炭バーナ酸素43の流量は、この分岐した供給管43bの上流側の配管に設けられた石炭バーナ酸素流量調整弁44によって流量調整される。
【0136】
石炭バーナ酸素流量調整弁44を複数系統に分岐した供給管43bの上流側の配管に設けることで、上記石炭搬送の場合と同様の考え方で、制御装置15で制御される石炭バーナ酸素流量調整弁44の操作によって石炭バーナ4に供給される石炭バーナ酸素43の流量を複数の供給管43bに均等分配できる。
【0137】
石炭バーナ4に投入する石炭バーナ酸素43の流量は、石炭搬送流量に応じて、制御装置15によって制御される。制御装置15は、フィードホッパロードセル35及び石炭流量計測装置37で計測した石炭搬送流量の瞬時値を取り込んでいるため、石炭搬送流量の変動にも対応した、石炭バーナ酸素43流量の制御が可能である。
【0138】
石炭バーナ酸素43の流量は、石炭搬送流量に対する比率を一定に制御すると良く、ガス化炉5内での火炎温度や石炭のガス化効率の変動を抑制する。ガス化炉5内での火炎温度の変動抑制は、ガス化炉5及び石炭バーナ4の信頼性向上に、ガス化効率の変動抑制は、石炭ガス化複合発電プラントの安定運転に、それぞれ寄与するためである。
【0139】
本実施例によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化石炭搬送システムが実現できる。
【実施例6】
【0140】
次に本発明の第6実施例である石炭ガス化石炭搬送システムを用いた石炭ガス化複合発電プラントについて図8を用いて説明する。
【0141】
図8に示した本実施例の石炭ガス化複合発電プラントに用いられる石炭ガス化石炭搬送システムは、図7に示した第5実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと基本的な構成が同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違した部分のみ以下に説明する。
【0142】
図8に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムを用いた石炭ガス化複合発電プラントは、第1実施例乃至第5実施例に記載した石炭ガス化石炭搬送システムを、石炭搬送システムだけでなく、ガス化炉で発生した生成ガスに含まれたチャーをチャーホッパからガス化炉に再投入するチャー搬送システムにも適用した石炭ガス化複合発電プラントである。
【0143】
図8に示した本実施例の石炭ガス化石炭搬送システムを用いた石炭ガス化複合発電プラントにおいて、石炭1やチャー50の搬送窒素、及び石炭バーナ酸素43やチャーバーナ酸素82は、空気分離器45で製造される。
【0144】
また、ガス化炉5において、石炭1とチャー50は、酸素によってガス化し、COやHを主成分とする生成ガス47を発生する。一方、石炭1とチャー50に含まれる灰分は、ガス化炉5内で溶融し、スラグ46として回収される。
【0145】
生成ガス47は、ガス化炉5の下流側に設置した熱回収部48で約350℃に冷却され、熱回収部48の下流側に設置したサイクロン49に供給される。サイクロン49において、生成ガス47は脱塵され、生成ガス中に含まれるチャー50が回収される。
【0146】
チャー50をガス化炉5に再投入するチャー搬送システムは、第1実施例乃至第5実施例の石炭ガス化石炭搬送システムに示したいずれかの実施例の石炭搬送システムと同様の方式を適用しても良いが、本実施例では第5実施例の石炭ガス化石炭搬送システムと同様の方式を適用した構成について後で説明する。
【0147】
サイクロン49で脱塵された生成ガス47は、サイクロン49の下流側にそれぞれ設置された熱交換器53、ベンチュリ54、水洗塔55で冷却され、脱硫装置56で脱硫される。このようにして、冷却・精製された生成ガス47は、前記熱交換器53で再加熱され、発電用の燃料としての生成ガス57として、燃焼器59に供給される。
【0148】
燃焼器59に供給された発電用の生成ガス57は、コンプレッサ60から供給された空気と燃焼して高温、高圧の燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによってガスタービン61を駆動する。さらに、ガスタービン61から排出された排ガスの廃熱をガスタービン61の下流側に設置したボイラ62で回収し、ボイラ62で発生させた蒸気によって蒸気タービン63を駆動する。
【0149】
本実施例の石炭ガス化複合発電プラントでは、発電出力を目標値となるように制御する。従って、ガスタービン61及び蒸気タービン63の出力信号を、制御装置15に取り込み、ガスタービン61及び蒸気タービン63の出力を制御すべく、発電用の生成ガス57の流量やガス化炉5への石炭搬送流量を調整する制御が必要となる。そこで前記制御装置15によって発電用の生成ガスの流量調整弁58の開度調整することで、発電用の生成ガス57の流量を調整する。
【0150】
次に、チャー搬送システムについて説明する。ガス化炉5を経てサイクロン49で回収された生成ガスに含まれたチャー50は、チャーホッパ51に移送される。チャーホッパ51には、空気分離器45で製造した搬送窒素が供給されている。チャーホッパ51とガス化炉5の圧力差を利用して、チャー50は搬送窒素に同伴して、チャー搬送管75、チャーバーナ81を介して、ガス化炉5に搬送され再投入される。
【0151】
チャーホッパ51に供給される搬送窒素は、石炭搬送システムと同様に複数系統あり、それぞれチャーホッパ底面から投入する窒素66、チャーホッパコーン部側面から投入する窒素68と呼ぶ。チャーホッパコーン部側面から投入する窒素68は、高さ方向で複数段に分割されており、下からチャーホッパコーン部側面下段から投入する窒素69、チャーホッパコーン部側面中段から投入する窒素70、チャーホッパ側面上段から投入する窒素71と呼ぶ。
【0152】
チャーホッパ51からガス化炉5へのチャー50の搬送においても、図3及び図4に示した石炭搬送流量を制御した場合の実験結果と同様に、搬送窒素の総流量や、チャーホッパ底面から投入する窒素66及びチャーホッパコーン部側面から投入する窒素68の分割割合を変えることで、チャー搬送流量を調整できる。
【0153】
従って、所望のチャー搬送流量を満足するように制御装置15によって各供給系統に設けられた流量調整弁の開度を調整して窒素流量を制御する。
【0154】
ここで、流量調整弁とは、チャーホッパ底面から投入する窒素の流量調整弁67、チャーホッパコーン部側面下段から投入する窒素の流量調整弁72、チャーホッパコーン部側面中段から投入する窒素の流量調整弁73、チャーホッパ側面上段から投入する窒素の流量調整弁74である。
【0155】
また、チャー搬送流量の別の調整手段として、チャー搬送管75に設置したチャー加速窒素投入部76において、チャー加速窒素77を投入する。チャー加速窒素77の流量は、チャー搬送流量の瞬時値に応じて、目標値に合うように制御装置15で調整すると良い。これにより、チャー加速窒素の流量調整弁78の開度は、制御装置15で調整される。
【0156】
前記した石炭搬送システムで加速窒素39を用いる3つの理由は、第4実施例の説明に示した理由と同じである。チャー搬送システムでも、チャー加速窒素77を用いる理由はこの石炭搬送システムで加速窒素39を用いる理由と同じである。特に、チャー搬送システムでは、2つ目の理由として挙げた、ガス化炉5からの高温ガス逆流防止の観点から、チャー搬送管75での窒素の摩擦抵抗増加が、重要になる。
【0157】
チャーのかさ比重は石炭の約1/3と小さいことから、チャーと搬送窒素の重量比である固/気比は、石炭の固/気比より低くなる。これにより、チャー搬送管75におけるチャーの摩擦抵抗(圧力損失)が小さくなることに起因する。
【0158】
次に、チャー搬送流量の瞬時値の計測手段として、チャーホッパロードセル52とチャー流量計測装置80を用いる。チャー流量計測装置80は、石炭流量計測装置と同様に、粉体流量計が有望である。
【0159】
最後に、チャーバーナ酸素82の流量は、チャー搬送流量の瞬時値に応じて、チャーに対する酸素の重量比を保持すべく、制御装置15で決定される。制御装置15は、チャーバーナ酸素流量調整弁83の開度を調整することで、チャーバーナ酸素82の流量を制御する。
【0160】
以上説明した様に、本実施例によれば、石炭を貯蔵するフィードホッパから石炭をガス化するガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する際に、発電出力の目標値に対応してガス化炉負荷を変えて運転する場合に石炭をガス化炉に安定搬送できると共に、ガス化炉圧力が一時的に変動した場合にもガス化炉圧力変動に対応した応答性に優れた石炭のガス化炉への搬送制御が可能な石炭ガス化複合発電プラントが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、石炭等の固体燃料を用いた石炭ガス化石炭搬送システム及びガス化複合発電プラントに利用できる。
【符号の説明】
【0162】
1:石炭、2:フィードホッパ、3:搬送管、4:石炭バーナ、5:ガス化炉、6:窒素、7:流量調整弁、8、9、10、11:窒素、6b、9b、10b、11b、33b:供給系統、12、13、14、36:流量調整弁、15:制御装置、16:窒素投入部、17:石炭抜き出し弁、18:ミル、19:常圧ホッパ、20、24、32:粉体弁、21:ロックホッパ、22、23、25:均圧管、26、27:均圧弁、28:脱圧管、29:脱圧弁、30:加圧バグフィルタ、31:圧力調整弁、33:加圧窒素、34:流量調整弁、35:フィードホッパロードセル、37:石炭流量計測装置、38:加速窒素投入部、39:加速窒素、40:流量調整弁、41:分配器、42:搬送管、43:石炭バーナ酸素、44:石炭バーナ酸素流量調整弁、45:空気分離器、46:スラグ、47:生成ガス、48:熱回収部、49:サイクロン、50:チャー、51:チャーホッパ、52:チャーホッパロードセル、53:熱交換器、54:ベンチュリ、55:水洗塔、56:脱硫装置、57:生成ガス、58:流量調整弁、59:燃焼器、60:コンプレッサ、61:ガスタービン、62:ボイラ、63:蒸気タービン、64:硫黄分燃焼炉、65:煙突、66、68、69、70、71:窒素、67、72、73、74、78:流量調整弁、75:チャー搬送管、76:チャー加速窒素投入部、77:チャー加速窒素、79:余剰窒素、80:チャー流量計測装置、81:チャーバーナ、82:チャーバーナ酸素、83:チャーバーナ酸素流量調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、前記フィードホッパからガス化炉に不活性ガスを用いて石炭を気流搬送する搬送管を備え、不活性ガスを前記フィードホッパの底部及びコーン部側面からそれぞれ供給する複数の供給系統を配設してこれらの複数の供給系統を通じて不活性ガスを当該フィードホッパに供給し、前記複数の供給系統にその内部を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁をそれぞれ設置し、前記複数の流量調整弁を操作してこれらの複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量をそれぞれ制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって前記複数の流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させ、前記フィードホッパから前記ガス化炉に石炭を気流搬送する不活性ガスの石炭搬送流量を制御することを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項2】
石炭をガス化するガス化炉と、ガス化炉より高い圧力に加圧して石炭を貯蔵するフィードホッパと、フィードホッパからガス化炉に不活性ガスで石炭を気流搬送する搬送管を備え、前記フィードホッパに供給する不活性ガスを該フィードホッパの底部及びコーン部側面にそれぞれ供給する複数の供給系統を配設し、前記複数の供給系統に当該供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁を夫々設置し、前記複数の供給系統に設置された前記流量調整弁を操作して当該複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの流量を制御する制御装置を設置し、前記制御装置によって複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節して前記複数の供給系統を通じて前記フィードホッパに供給される不活性ガスの供給割合を変化させ、前記複数の供給系統のうち、前記フィードホッパの底部から不活性ガスを供給する供給系統は、前記フィードホッパのコーン部底面から上昇流で不活性ガスを該フィードホッパ内に供給し、前記複数の供給系統のうち、前記フィードホッパのコーン部側面から不活性ガスを供給する供給系統は、前記フィードホッパの高さ方向に複数段設置された投入部から不活性ガスを該フィードホッパ内に供給するように構成したことを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、
前記制御装置はこれらの複数の供給系統に設置された前記流量調整弁の開度を調節することによって前記複数の供給系統への不活性ガスの供給割合を一定としたままで、供給する不活性ガスの総流量を変化させ、前記石炭搬送流量を調整するように構成したことを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、
前記フィードホッパの上流側にロックホッパを設置し、このフィードホッパとロックホッパとを接続する均圧管に該均圧管から分岐して圧力を逃がす脱圧管を配設し、前記フィードホッパ上部に加圧用の不活性ガスを供給するフィードホッパ加圧用の不活性ガス供給系統と当該不活性ガス供給系統を流れる不活性ガスの流量を調節する流量調整弁をそれぞれ設置し、前記ロックホッパの上流側に加圧バグフィルタを設置し、前記加圧バグフィルタには該加圧バグフィルタの圧力を調節する圧力調整弁を設置し、前記制御装置は加圧バグフィルタの圧力を調節する前記圧力調整弁の開度及び前記フィードホッパ加圧用の不活性ガス供給系統に設置した前記流量調整弁の開度をそれぞれ調節して、前記フィードホッパの圧力を制御することを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、
前記フィードホッパからガス化炉に不活性ガスを用いて石炭を気流搬送する前記搬送管に当該搬送管を流下する流体の流量を調節する第1の流量調整弁と、加速用の不活性ガスを投入する加速用の不活性ガス投入部と、当該搬送管で搬送される石炭の流量を計測する粉体流量計測装置をそれぞれ設置し、前記不活性ガス投入部に供給される不活性ガスの流量を調節する第2の流量調整弁を設置し、前記フィードホッパに当該フィードホッパに供給された石炭の重量を計測する重量計測装置を設置し、前記制御装置は前記粉体流量計測装置及び重量計測装置の各計測値に基づいて前記第1の流量調整弁の開度、及び第2の流量調整弁の開度を調整して、石炭搬送流量を所望値に制御することを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の石炭ガス化石炭搬送システムにおいて、
前記不活性ガス投入部よりも下流側に位置する前記搬送管に当該搬送管を流通する流体を複数に分岐した分配搬送管に分配する分配器を設置し、前記分配器で分配された複数の分配搬送管を前記ガス化炉に設置した複数のバーナにそれぞれ接続したことを特徴とする石炭ガス化石炭搬送システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の石炭ガス化石炭搬送システムを備えた石炭ガス化複合発電プラントであって、
ガス化炉で生成した生成ガスから熱を回収する熱回収部と、熱回収部の生成ガスを脱塵する集塵部と、集塵部を経た生成ガスを精製するガス精製部と、精製された生成ガスを燃料としてガスタービン装置で燃焼させて発電する発電部と、ガス化炉で生成した生成ガスに含まれているチャーを収容して前記ガス化炉に再投入するチャーホッパと、前記集塵部で回収したチャーを前記石炭ガス化石炭搬送システムと同じ構成の搬送方式でチャーホッパに搬送するチャー搬送システムをそれぞれ備え、
前記制御装置によって発電部の発電出力の目標値と計測したガス化炉の圧力及び発電部の発電出力に基づいて当該発電部に燃料として供給する生成ガスの流量を決定し、決定された生成ガスの流量となるようにガス化炉に供給する石炭を搬送する不活性ガスの流量を調節する流量調整弁の開度、石炭及びチャーの搬送流量の目標値をそれぞれ決定し、フィードホッパに供給する石炭の搬送流量及びフィードホッパからガス化炉に供給するチャーの搬送流量の実測値と前記目標値との比較に基づいて、石炭ガス化石炭搬送システム及びチャー搬送システムに供給する不活性ガスの総流量、フィードホッパの底部とコーン部側面に供給する不活性ガスの流量割合、及び搬送管に設置した流量調整弁の開度をそれぞれ制御することを特徴とする石炭ガス化複合発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162660(P2012−162660A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24593(P2011−24593)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)