説明

石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法、並びに石炭ガス化装置

【課題】スラグ排出孔周辺のスラグ付着物を効果的に除去して、スラグ排出孔の閉塞を防止すること。
【解決手段】内部で石炭16、19の燃焼反応が生じ、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスと、スラグ25と、が生成される反応炉本体11と、反応炉本体11内とスラグ排出孔12を通して連通されるとともにスラグ排出孔12を通して反応炉本体11内からスラグ25が排出される排出槽13と、を備える石炭ガス化装置4において、スラグ排出孔12周辺に付着したスラグ付着物を除去する方法であって、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込む引込工程を有する石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスを製造する石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法、並びに石炭ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の石炭ガス化装置として、内部で石炭の燃焼反応が生じ、石炭ガス化ガスとスラグとが生成される反応炉本体と、反応炉本体内とスラグ排出孔を通して連通されるとともにスラグ排出孔を通して反応炉本体内からスラグが排出される排出槽と、を備える構成が知られている。
【0003】
しかしながら、この石炭ガス化装置では、例えばスラグ排出孔周辺(スラグ排出孔の内周面や、排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部など)に付着したスラグ付着物により、スラグ排出孔が閉塞されて反応炉本体からスラグが排出されなくなる可能性があった。
そこで、この問題を解決するために、例えば下記特許文献1記載のガス化炉の運用方法を、反応炉本体から排出槽にスラグを排出する石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法に適用することが考えられる。
【0004】
この方法では、排出槽に酸素含有ガスを供給し、スラグ排出孔から排出槽に流入するガスに含まれる可燃性成分を燃焼させる。ここで、排出槽に流入するガスは、スラグ排出孔から排出槽に排出されるスラグとともに流入する。
この方法は、スラグ排出孔から排出槽に流入するガスに含まれる可燃性成分を燃焼させることにより、排出槽の内部温度、特にスラグ排出孔周辺の温度を高温で保持してスラグ付着物を加熱して除去し、スラグの排出を順調に行うことを企図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−99760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法では、スラグ排出孔から排出槽にスラグとともに流入するガスは微量であるため、前記可燃性成分の燃焼によってスラグ排出孔周辺の温度を高温で保持することが困難であった。
したがって、前記従来の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法では、スラグ付着物が十分に除去されないおそれがあった。その結果、石炭ガス化装置において、スラグ付着物によりスラグ排出孔が閉塞され、反応炉本体からスラグが排出されなくなるおそれがあった。
なお、前記排出槽に酸素含有ガスを供給するバーナーを用いてスラグ排出孔周辺の温度を高温に保持することも考えられるが、この場合、バーナーから供給される燃料ガスの使用量を増やさなければならならず、コスト増などにつながり不利である。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、スラグ排出孔周辺のスラグ付着物を効果的に除去して、スラグ排出孔の閉塞を防止できる石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、反応炉本体内で生成された高温の石炭ガス化ガスを利用し、排出槽に引き込み、さらにこれを燃焼してスラグ排出孔周辺を加熱するとスラグ排出孔周辺のスラグ付着を防止できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法は、内部で石炭の燃焼反応が生じ、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスと、スラグと、が生成される反応炉本体と、前記反応炉本体内とスラグ排出孔を通して連通されるとともに前記スラグ排出孔を通して前記反応炉本体内から前記スラグが排出される排出槽と、を備える石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法であって、前記反応炉本体内から前記スラグ排出孔を通して前記石炭ガス化ガスを前記排出槽内に引き込む引込工程を有し、前記スラグ排出孔周辺に付着したスラグ付着物を除去することを特徴とする。
なお、スラグ排出孔周辺とは、スラグ排出孔の内周面、もしくは排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部を意味している。
【0009】
この発明によれば、引込工程時に、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して石炭ガス化ガスを排出槽内に引き込むので、反応炉本体内で生成された高温の石炭ガス化ガスを排出槽内に多量に流入させることが可能になり、この石炭ガス化ガスによってスラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ付着物を効果的に除去することができる。
【0010】
また、前記排出槽には、前記反応炉本体から排出された前記スラグを冷却する冷却液体が貯留され、前記引込工程は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を下降させる液面下降工程を有していても良い。
【0011】
この場合、排出槽に冷却液体が貯留されているので、反応炉本体から排出槽に排出されたスラグを冷却液体によって冷却することができる。
また、液面下降工程時に排出槽内の冷却液体の液面を下降させることで、排出槽内を負圧にすることができる。これにより、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して排出槽内に石炭ガス化ガスを引き込むことができる。
【0012】
また、前記引込工程は、前記液面下降工程の後、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を上昇させる液面上昇工程を有するとともに、前記液面下降工程と前記液面上昇工程とを交互に繰り返しても良い。
【0013】
この場合、液面下降工程と液面上昇工程とを交互に繰り返すので、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して排出槽内に石炭ガス化ガスを繰り返し引き込むことが可能になり、スラグ付着物をより効果的に除去することができる。
また、液面下降工程を継続して行うのではなく、液面下降工程と液面上昇工程とを交互に繰り返すので、排出槽内の冷却液体の液面位置を所定の高さ範囲で確保することが可能になり、反応炉本体から排出槽に排出されたスラグを冷却液体によって効果的に冷却することができる。
【0014】
また、前記排出槽内に引き込まれた前記石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼工程を有していても良い。
【0015】
この場合、ガス燃焼工程時に、排出槽内に引き込まれた石炭ガス化ガスを燃焼させることで、スラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ排出孔を通して石炭ガス化ガスを排出槽内に引き込むことでスラグ付着物を加熱することと相俟って、スラグ付着物をより効果的に除去することができる。
また、石炭ガス化ガスを燃焼させることでスラグ付着物を加熱することができるので、スラグ付着物を加熱するために排出槽内に燃料ガスを別途供給しなくても良く、供給する場合であってもその使用量を抑えることができる。
【0016】
また、前記石炭ガス化装置は、前記排出槽における前記スラグ排出孔の開口周縁部を加熱する孔加熱バーナーを更に備え、前記ガス燃焼工程は、前記孔加熱バーナーからの酸素ガスの噴射量を通常運転時よりも増加させ、前記石炭ガス化ガスに前記酸素ガスを吹き付けることで前記石炭ガス化ガスを燃焼させても良い。
【0017】
この場合、石炭ガス化装置の通常運転時に、排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部を孔加熱バーナーにより加熱することで、スラグ付着物の発生自体を抑えることができる。
また、ガス燃焼工程時に燃焼させる石炭ガス化ガスが、排出槽内に引き込まれることで多量に流入しているので、排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部で、孔加熱バーナーから噴射される酸素ガスを石炭ガス化ガスに確実に吹き付け、石炭ガス化ガスを確実に燃焼させることができる。
【0018】
また、前記引込工程は、前記スラグ付着物による前記スラグ排出孔の閉塞状況に基づいて行われても良い。
【0019】
この場合、引込工程が、スラグ付着物によるスラグ排出孔の閉塞状況に基づいて行われるので、例えばスラグ排出孔が完全に閉塞される前に、確実に引込工程を行うことができる。したがって、スラグ付着物によりスラグ排出孔が閉塞されるのを確実に抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係る石炭ガス化装置は、内部で石炭の燃焼反応が生じ、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスと、スラグと、が生成される反応炉本体と、前記反応炉本体内とスラグ排出孔を通して連通されるとともに前記スラグ排出孔を通して前記反応炉本体内から前記スラグが排出される排出槽と、を備える石炭ガス化装置であって、前記反応炉本体内から前記スラグ排出孔を通して前記石炭ガス化ガスを前記排出槽内に引き込む引込機構を備えていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、引込機構により、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して石炭ガス化ガスを排出槽内に引き込むことで、反応炉本体内で生成された高温の石炭ガス化ガスを排出槽内に多量に流入させることが可能になり、この石炭ガス化ガスによって、スラグ排出孔周辺に付着したスラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ付着物を効果的に除去することが可能になり、スラグ付着物によりスラグ排出孔が閉塞されるのを抑え、反応炉本体から排出槽にスラグを円滑に排出することができる。
【0022】
また、前記排出槽には、前記反応炉本体から排出された前記スラグを冷却する冷却液体が貯留され、前記引込機構は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を下降させる液面下降手段を備えていても良い。
【0023】
この場合、排出槽に冷却液体が貯留されているので、反応炉本体から排出槽に排出されたスラグを冷却液体によって冷却することができる。
また、液面下降手段により排出槽内の冷却液体の液面を下降させることで、排出槽内を負圧にすることができる。これにより、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して排出槽内に石炭ガス化ガスを引き込むことができる。
【0024】
また、前記引込機構は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を上昇させる液面上昇手段を備えていても良い。
【0025】
この場合、液面下降手段により、排出槽内の冷却液体の液面を下降させた後、液面上昇手段により、排出槽内の冷却液体の液面を上昇させることで、排出槽内の冷却液体の液面位置を所定の高さ範囲で確保することができる。これにより、反応炉本体から排出槽に排出されたスラグを冷却液体によって効果的に冷却することができる。
また、このような排出槽内の冷却液体の液面を下降および上昇を交互に繰り返すことで、反応炉本体内からスラグ排出孔を通して排出槽内に石炭ガス化ガスを繰り返し引き込むことが可能になり、スラグ付着物をより効果的に除去することができる。
【0026】
また、前記排出槽には、前記排出槽内に引き込まれた前記石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼機構が設けられていても良い。
【0027】
この場合、ガス燃焼手段により、排出槽内に引き込まれた石炭ガス化ガスを燃焼させることで、スラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ排出孔を通して石炭ガス化ガスを排出槽内に引き込むことでスラグを加熱することと相俟って、スラグによりスラグ排出孔が閉塞されるのを確実に抑えることができる。
また、石炭ガス化ガスを燃焼させることでスラグ付着物を加熱することができるので、ガス燃焼機構から、スラグ付着物を加熱するために排出槽内に燃料ガスを別途供給しなくても良く、供給する場合であってもその使用量を抑えることができる。
【0028】
また、前記ガス燃焼機構は、前記排出槽における前記スラグ排出孔の開口周縁部を加熱する孔加熱バーナー備え、前記ガス燃焼機構は、前記孔加熱バーナーからの酸素ガスの噴射量を通常運転時よりも増加させ、前記石炭ガス化ガスに前記酸素ガスを吹き付けることで前記石炭ガス化ガスを燃焼させても良い。
【0029】
この場合、排出槽に前記孔加熱バーナーが設けられているので、通常運転時に排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部を孔加熱バーナーにより加熱することができる。これにより、スラグ付着物の発生自体を抑えることができる。
また、引込機構によって石炭ガス化ガスを排出槽内に引き込み多量に流入させることができるので、排出槽におけるスラグ排出孔の開口周縁部で、孔加熱バーナーから噴射される酸素ガスを石炭ガス化ガスに確実に吹き付け、石炭ガス化ガスを確実に燃焼させることができる。
【0030】
また、前記スラグ排出孔周辺に付着したスラグ付着物による前記スラグ排出孔の閉塞状況に基づいて、前記引込機構に前記石炭ガス化ガスを引き込ませる制御機構を備えていても良い。
【0031】
この場合、制御機構が、スラグ付着物によるスラグ排出孔の閉塞状況に基づいて、引込機構に石炭ガス化ガスを引き込ませるので、例えばスラグ排出孔が完全に閉塞される前に、確実に石炭ガス化ガスを引き込ませることができる。したがって、スラグ付着物によりスラグ排出孔が閉塞されるのを確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、スラグ排出孔周辺のスラグ付着物を効果的に除去して、スラグ排出孔の閉塞を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化反応炉を備える石炭ガス化システムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化反応炉の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(石炭ガス化システム)
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化反応炉(石炭ガス化装置)を備える石炭ガス化システムを説明する。
図1に示すように、石炭ガス化システム1は、石炭を原料として水素ガスと一酸化炭素ガスを主成分とする石炭ガス化ガスを生成し、この石炭ガス化ガスから最終的にメタン、メタノールおよびアンモニア等の製品を製造するプラント設備である。
【0035】
石炭ガス化システム1は、石炭粉砕・乾燥設備2と、石炭供給設備3と、石炭ガス化反応炉4と、熱回収設備5と、チャー回収設備6と、シフト反応設備7と、ガス精製設備8と、化学合成設備9と、空気分離設備10とを備えている。
【0036】
一般に石炭は、外径が不均一であり、その種類によって所望の値より多くの水分を含む場合がある。そこで、まず石炭粉砕・乾燥設備2において、石炭は、例えば平均粒子径が30〜60(μm)程度の微粉炭となるように粉砕され、さらに所定の水分含有量となるように乾燥された後に、石炭供給設備3に供給される。なお、石炭粉砕・乾燥設備2の後から石炭ガス化反応炉4までは、乾燥した石炭中の水分量が変化しないように、石炭は密閉された空間内を移動する。
【0037】
続いて、石炭は、石炭ガス化反応炉4内に供給するために石炭供給設備3内で搬送ガス等により所定の圧力まで昇圧され、その後で石炭ガス化反応炉4に搬送(気流搬送)される。
一方で、空気分離設備10は、空気を圧縮して液化し、液体となった空気から沸点の違いにより乾燥した酸素ガスや窒素ガス等を分離する。空気分離設備10で分離された酸素ガスは、石炭ガス化反応炉4に供給される。
【0038】
そして、石炭ガス化反応炉4は、石炭供給設備3から搬送された石炭を、空気分離設備10から供給された酸素を用いて熱分解することにより、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする高温の石炭ガス化ガスやチャー(未ガス化石炭残滓または熱分解残滓)などを生成する。これらの石炭ガス化ガスおよびチャーは、石炭ガス化反応炉4から熱回収設備5に供給される。
【0039】
熱回収設備5では、石炭ガス化反応炉4から搬送された石炭ガス化ガスおよびチャーを、水蒸気との間で熱交換させて冷却するとともに水蒸気の温度を高める。なおこの水蒸気は、例えば前述の石炭粉砕・乾燥設備2等に石炭の乾燥等の目的のために供給される。
熱回収設備5で冷却された石炭ガス化ガスおよびチャーは、熱回収設備5からチャー回収設備6に供給され、チャー回収設備6でチャーが回収される。
【0040】
チャー回収設備6を通過した石炭ガス化ガスは、シフト反応設備7に供給される。そして、石炭ガス化ガス中の一酸化炭素ガスに対する水素ガスの比率を一定の値まで高めるために、シフト反応設備7中に水蒸気が供給され、下記の化学反応式(1)で示されるシフト反応により、一酸化炭素ガスが消費されて代わりに水素ガスが発生する。
【0041】
CO+H2O→CO2+H2 ・・・(1)
【0042】
シフト反応設備7で成分を調整された石炭ガス化ガスは、ガス精製設備8に供給され、石炭ガス化ガスに含まれる二酸化炭素ガスや、硫黄を成分として含むガス等が回収される。
ガス精製設備8で精製された石炭ガス化ガスは、化学合成設備9に供給され、メタンやメタノール等の製品が製造される。
【0043】
(石炭ガス化反応炉)
次に、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化反応炉4について詳細を説明する。
図2に示すように、石炭ガス化反応炉4は、内部で石炭の燃焼反応が生じ、石炭ガス化ガスとスラグ(灰分)25とが生成される反応炉本体11と、反応炉本体11内とスラグ排出孔12を通して連通されるとともにスラグ排出孔12を通して反応炉本体11内からスラグ25が排出される排出槽13と、を備えている。
【0044】
反応炉本体11は、上流側の部分酸化部14と、下流側の熱分解部15と、を備えている。
部分酸化部14は、内部に投入されるガス化石炭16を、酸素含有ガス17を酸化剤(ガス化剤)としてガス化して、主に一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス、水蒸気で構成されるガス化ガス18を生成する。ここで部分酸化部14では、後述するようにガス化石炭16に含まれる灰分を溶融排出する必要があるため、部分酸化部14内の温度は、その灰分の融点以上とする必要がある。そのため、部分酸化部14から熱分解部15に導入されるガス化ガス18も部分酸化部14内で高温となっており、熱分解部15においてこのガス化ガス18中に改質石炭19を投入することで、改質石炭19が昇温して熱分解反応を起こし、石炭ガス化ガスを含む生成物20を得ることができる。この生成物20は、熱分解部15に設けられた炉出口21を通して前記熱回収設備5に供給される。
【0045】
このような反応炉本体11は、下段に前記部分酸化部14、上段に前記熱分解部15を設けた上下二室二段式となっている。また反応炉本体11は、部分酸化部14と熱分解部15が小径のスロート22を介して接続されたいわゆるスロート構造となっている。このように二室二段とすることで、石炭のガス化を行う部分(部分酸化部14)と、熱分解を行う部分(熱分解部15)と、を完全に分けることができ、各部分の操作条件を自由に設定することが可能となる。すなわち、反応炉本体11では、ガスの流路に絞り(スロート22)を入れて部分的に流速を増加させる構造にすることにより、上室(熱分解部15)に投入された石炭粒子(改質石炭19)等が下室(部分酸化部14)に落下することが防止され、各室で独立した反応条件を設定できる。なお部分酸化部14、熱分解部15およびスロート22は、水平断面が円形の筒状構造を有する。
【0046】
部分酸化部14には、ガス化石炭16と、ガス化石炭16を部分酸化(部分燃焼、燃焼反応)させるための酸化剤である酸素含有ガス17(例えば、酸素ガス、または、酸素ガスおよび水蒸気)とをともに投入するための、1本または複数本のガス化バーナー23が設置されている。ガス化石炭16と酸素含有ガス17とは、ガス化バーナー23で部分酸化部14へ吹き込まれ、急速に混合される。なお、このガス化バーナー23から部分酸化部14内に供給されるガス化石炭16は、石炭粉砕・乾燥設備2において粉砕・乾燥されたものであり、酸素含有ガス17中の酸素ガスは、空気分離設備10で分離されたものであり、水蒸気は、熱回収設備5から供給されたものである。
【0047】
部分酸化部14においては、投入されるガス化石炭16に含まれる炭化水素中の炭素や水素成分を、できるだけ多くCO、Hに転換する(ガス化転換率を高める)ことが好ましい。そのためには、ガス化石炭16から発生する揮発分がすす化する前に酸素含有ガス17と反応するように、ガス化石炭16と酸素含有ガス17とを素早く混合させる必要がある。そこで、例えば前記ガス化バーナー23として二重管構造等を用い、ガス化石炭16と酸素含有ガス17とを同じ位置から投入することが好ましい。
【0048】
なお、二重管構造を用いずに酸素含有ガス17を投入する場合には、部分酸化部14内の石炭粒子濃度の高い部位に吹き込むことが好ましい。したがって、酸素含有ガス17の投入ノズルをガス化石炭16との投入ノズルと同じ高さに位置させ、酸素含有ガス17とガス化石炭16とを同高さレベルに投入することが好ましい。これにより、石炭投入口と酸素含有ガス投入口を別にしてもガス化石炭16のガス化転換率が低下するのを抑制することができる。
また、ガス化石炭16の気流搬送ガスとしては、非酸化性のガス、例えば、窒素ガスやプロセスより生成したガス等を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
部分酸化部14での操業圧力および温度は、例えば、0.1〜20MPa、1300〜1700℃で維持される。なお圧力は、熱分解部15側の圧力に合わせて調整されるとともに、温度は、部分酸化部14内におけるガス化石炭16の部分酸化により維持される。
以上のように部分酸化部14で生成したガス化ガス18はスロート22を通り熱分解部15に送られる。
【0050】
熱分解部15には、熱分解部15の内部に、石炭粉砕・乾燥設備2において粉砕・乾燥された改質石炭19を供給する石炭供給ノズル24が設けられている。この熱分解部15では、石炭供給ノズル24から投入された改質石炭19の熱分解反応が起こり、この熱分解反応によって改質石炭19から生成物20として石炭ガス化ガス、チャー、そしてタールなどが生成する。石炭ガス化ガスは燃料や化学原料として、チャーは固体燃料として、タールは化学原料あるいは燃料として使用可能である。熱分解部15に投入するものとして、改質石炭19単独でも熱分解反応により前記生成物20を製造することは可能であるが、改質石炭19の他に水素ガスや水蒸気、酸素ガスのうち一種類以上を同時に投入することで生成する石炭ガス化ガスやタールの性状や量を変化させることが可能である。
【0051】
熱分解部15での操業圧力および温度は、例えば、0.1〜20MPa、500〜1200℃で維持される。熱分解部15と部分酸化部14とはスロート22を介して上下接続されているため、ほぼ同じ圧力で操業される。
操業圧力に関しては、低すぎると、部分酸化部14内でのガス滞留時間を確保するために容積を大きくする必要があり、その結果、部分酸化部14の内面の表面積が大きくなって放散熱量が増加するため好ましくなく、高すぎると設備製作費用が高くなる。そのため、石炭ガス化ガスの用途に合わせて1〜3MPa程度の操業圧力とすることが好ましい。また、高圧側の操業においては、熱分解部15に改質石炭19と共に水蒸気を投入することで、ガス化や水素化を進行させることもできる。
【0052】
熱分解部15での温度に関しては、生成物20のうち、回収の対象とする回収物が主として石炭ガス化ガスおよびタールの場合は、500〜800℃と比較的低い温度条件が好ましく、回収物が主として石炭ガス化ガスの場合は、800〜1200℃と比較的高い温度条件が好ましい。
また、回収物が主として石炭ガス化ガスの場合は、熱分解部15に水蒸気や水素などの改質助剤を加えたり、部分酸化部14に水蒸気などの改質助剤などを加えたりして、熱分解部15内でのガス化反応を促進することが好ましい。
また、熱分解部15で生じたチャーは、部分酸化部14の燃料として、ガス化石炭16と共に燃料として投入されて、循環利用されることが好ましい。
【0053】
ここで部分酸化部14において、ガス化石炭16に含まれる灰分は、部分酸化部14内でのガス化石炭16の部分酸化による高温により溶融状態のスラグ25となり、前記スラグ排出孔12を通して排出槽13に排出される。
排出槽13は、反応炉本体11の下方に配置されており、この排出槽13には、反応炉本体11から排出されたスラグ25を冷却する冷却水(冷却液体)26が貯留されている。反応炉本体11からスラグ排出孔12を通して排出槽13に排出される溶融状態のスラグ25は、スラグ排出孔12の内周面12aの下端から落下し、冷却水26の液面に衝突するとともに冷却水26により冷却される。これによりスラグ25は、冷却水26中で粒状に粉砕された状態で凝固する。
【0054】
そして本実施形態では、排出槽13には、冷却水26中のスラグ25を排出槽13の外部に廃棄する廃棄機構27と、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込む引込機構28と、排出槽13内に引き込まれた石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼機構29と、スラグ排出孔12の閉塞状況に基づいて引込機構28に石炭ガス化ガスを引き込ませる制御機構30と、が設けられている。
【0055】
廃棄機構27は、排出槽13から下方に向けて延在し冷却水26中のスラグ25を冷却水26とともに外部に流出させる廃棄路31と、排出槽13の下方に配置され廃棄路31から流出された冷却水26が貯留される貯留槽32と、廃棄路31において排出槽13と貯留槽32との間に設けられ、廃棄路31を流通する冷却水26中のスラグ25を濾過するロックホッパ33と、廃棄路31において排出槽13とロックホッパ33との間、およびロックホッパ33と貯留槽32との間にそれぞれ設けられたバルブ34と、を備えている。
【0056】
引込機構28は、排出槽13内の冷却水26の液面を下降させる液面下降手段35と、排出槽13内の冷却水26の液面を上昇させる液面上昇手段36と、を備えている。
液面下降手段35は、排出槽13内から冷却水26を流出させることで冷却水26の液面を下降させる。この液面下降手段35は、前記貯留槽32と、排出槽13から下方に向けて延在し排出槽13内と貯留槽32内とを連通する流出路37と、流出路37に設けられた液面レベル調節弁38と、を備えている。
【0057】
液面上昇手段36は、排出槽13内に冷却水26を流入させることで冷却水26の液面を上昇させる。この液面上昇手段36は、前記貯留槽32と、貯留槽32と排出槽13とを連通する流入路39と、流入路39に設けられ貯留槽32に貯留された冷却水26を排出槽13に移送する移送ポンプ40と、流入路39において移送ポンプ40と排出槽13との間に設けられ流入路39を流通する冷却水26の流量を調節する流量調節弁41と、を備えている。
なお、排出槽13内の冷却水26の液面位置(液面レベル)は、排出槽13に設けられたレベル計42により検出可能となっている。
【0058】
ガス燃焼機構29は、排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12bを加熱する孔加熱バーナー43で構成されている。孔加熱バーナー43は、燃料ガス(例えば、メタンガス)および酸素ガスを混合し、排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12bに向けて噴射する。孔加熱バーナー43から噴射される燃料ガスおよび酸素ガスそれぞれの噴射量は調整可能となっている。
【0059】
制御機構30は、スラグ排出孔12周辺(スラグ排出孔12の内周面12a、もしくは排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12b)に付着したスラグ付着物によるスラグ排出孔12の閉塞状況を検知する。この制御機構30は、排出槽13側からスラグ排出孔12を監視する監視カメラ44と、監視カメラ44から監視結果が監視データとして送出され、この監視データに基づいてスラグ排出孔12の閉塞状況を検知する検知・制御部45と、を備えている。
【0060】
検知・制御部45は、例えば監視データを演算処理することでスラグ排出孔12の閉塞状況を検知する。また検知・制御部45は、このように検知したスラグ排出孔12の閉塞状況に基づいて液面下降手段35の液面レベル調節弁38を開閉する。さらに、この検知・制御部45は、レベル計42から液面位置データが送出されるとともに、液面上昇手段36の流量調節弁41を制御可能とされている。
【0061】
(石炭ガス化反応炉におけるスラグ除去方法)
次に、以上のように構成された石炭ガス化反応炉におけるスラグ除去方法(石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法)について説明する。
【0062】
ここで石炭ガス化反応炉4では、前述のようにこの石炭ガス化反応炉4で石炭ガス化ガスを製造する通常運転時に、排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12bを、孔加熱バーナー43によって加熱する孔加熱工程を行うとともに、廃棄機構27を作動させ、冷却水26中のスラグ25を排出槽13の外部に廃棄する廃棄工程を行う。
【0063】
孔加熱工程では、例えば、図示しない温度検出機構によって検出された排出槽13内における温度に応じて、孔加熱バーナー43からの燃料ガスおよび酸素ガスの噴出量が予め決められている。
このように石炭ガス化反応炉4の通常運転時に孔加熱工程を行い、排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12bを孔加熱バーナー43により加熱することで、スラグ付着物の発生自体を抑えることができる。
【0064】
また廃棄工程は、例えば一定間隔おきに行う。これにより、冷却水26中に溜まったスラグが定期的に外部に排出される。
この廃棄工程では、まず、ロックホッパ33に設けられた図示しない給水手段によってロックホッパ33内に水を供給し、ロックホッパ33内を満水状態とする。その後、廃棄路31に設けられた両バルブ34を調節し、排出槽13内の冷却水26中のスラグ25を冷却水26とともに廃棄路31に流通させる。このように、ロックホッパ33内を満水状態とした後、排出槽13内のスラグを排出することで、排出槽13内の冷却水26の液面位置が変化するのを抑えることができる。
【0065】
また、これらの孔加熱工程および廃棄工程とともに、制御機構30によりスラグ排出孔12の閉塞状況を検知する検知工程を行う。そして、検知工程の検知結果に基づいて、例えば、反応炉本体11からのスラグ排出孔12を通したスラグ25の排出に支障が生じうると判定した場合などに、本発明に係る石炭ガス化反応炉におけるスラグ除去方法を実施する。
【0066】
この方法では、まず前記廃棄工程を行う。これにより、排出槽13内のスラグ25がロックホッパ33に廃棄され、後述する液面下降工程時に液面下降手段35の流出路37をスラグ25が流通することが抑えられる。
【0067】
次いで、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込む引込工程を行う。
この引込工程では、まず、制御機構30の検知・制御部45が、液面下降手段35の液面レベル調節弁38を開状態にすることで、排出槽13内の冷却水26を流出路37を通して貯留槽32に流出させ、排出槽13内の冷却水26の液面を下降させる液面下降工程を行う。このように排出槽13内の冷却水26の液面を下降させることで、排出槽13内を負圧にすることが可能になり、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して排出槽13内に石炭ガス化ガスを引き込むことができる。なお、このように引き込まれた石炭ガス化ガスは、反応炉本体11の部分酸化部14内の部分酸化により生成された高温の可燃ガス(例えば、炭化水素ガスなど)が主成分となっている。
【0068】
ここで、排出槽13の上端部は、上方から下方に向かうに従って内径が漸次拡径しているとともに、排出槽13において上端部よりも下側に位置する部分は、上下方向に延在する直胴部となっており、この液面下降工程では、反応炉本体11内で生成された石炭ガス化ガスが、排出槽13の上端部内に引き込まれる程度、冷却水26の液面を下降させることで排出槽13内を負圧にする。なおこのとき、前記石炭ガス化ガスを、例えば2Nm以上10Nm以下、30秒から60秒程度で一度に引き込むことが好ましい。
これにより、排出槽13内上部の温度は、例えば800℃程度であったものが1100℃程度まで上昇する。
【0069】
以上のような排出槽13内の冷却水26の液面の下降が終了したとき、制御機構30の検知・制御部45が、液面レベル調節弁38を調節して、流出路37からの冷却水26の流出を規制することで、液面下降工程が終了する。
【0070】
その後、制御機構30の検知・制御部45が、液面上昇手段36の流量調節弁41を調節することで、貯留槽32内の冷却水26を流入路39を通して排出槽13に流入させ、排出槽13内の冷却水26の液面を上昇させる液面上昇工程を行う。これにより、液面下降工程で下降した排出槽13内の冷却水26の液面位置を、例えば液面下降工程前の位置に復元することが可能になり、液面位置を所定の高さ範囲で確保することができる。
【0071】
そして引込工程は、これらの液面下降工程および液面上昇工程を交互に繰り返す。これにより、排出槽13内の冷却水26の液面位置を所定の高さ範囲で確保しつつ、反応炉本体11内の石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込むことが可能になる。
その後、例えば、液面下降工程および液面上昇工程を交互に繰り返すことで、スラグ付着物によるスラグ排出孔12の閉塞状況が改善されたり、あるいは、液面下降工程および液面上昇工程が予め設定された所定の回数だけ繰り返されたりしたとき等に、引込工程が終了する。
【0072】
また本実施形態では、前記引込工程とあわせて、排出槽13内に流入された石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼工程を行う。このとき本実施形態では、孔加熱バーナー43からの酸素ガスの噴射量を増加させ、石炭ガス化ガスに酸素ガスを吹き付けることで石炭ガス化ガス中の可燃ガスを燃焼させる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る石炭ガス化反応炉におけるスラグ除去方法、並びに石炭ガス化反応炉4によれば、引込工程時に、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込むので、反応炉本体11内で生成された高温の石炭ガス化ガスを排出槽13内に多量に流入させることが可能になり、この石炭ガス化ガスによってスラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ付着物を効果的に除去することが可能になり、スラグ付着物によりスラグ排出孔12が閉塞されるのを抑え、反応炉本体11から排出槽13にスラグ25を円滑に排出することができる。
【0074】
また、引込工程が、スラグ付着物によるスラグ排出孔12の閉塞状況に基づいて行われるので、例えばスラグ排出孔12が完全に閉塞される前に、確実に引込工程を行うことができる。したがって、スラグ付着物によりスラグ排出孔12が閉塞されるのを確実に抑えることができる。
【0075】
また、液面下降工程と液面上昇工程とを交互に繰り返すので、反応炉本体11内からスラグ排出孔12を通して排出槽13内に石炭ガス化ガスを繰り返し引き込むことが可能になり、スラグ付着物をより効果的に除去することができる。
また、液面下降工程を継続して行うのではなく、液面下降工程と液面上昇工程とを交互に繰り返すので、排出槽13内の冷却水26の液面位置を所定の高さ範囲で確保することが可能になり、反応炉本体11から排出槽13に排出されたスラグ25を冷却水26によって効果的に冷却することができる。
【0076】
また、ガス燃焼工程時に、排出槽13内に引き込まれた石炭ガス化ガスを燃焼させることで、スラグ付着物を加熱することができる。したがって、スラグ排出孔12を通して石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込むことでスラグ付着物を加熱することと相俟って、スラグ付着物をより一層効果的に除去することができる。
また、石炭ガス化ガスを燃焼させることでスラグ付着物を加熱することができるので、ガス燃焼機構29から、スラグ付着物を加熱するために排出槽13内に燃料ガスを別途供給しなくても良く、供給する場合であってもその使用量を抑えることができる。
【0077】
また、ガス燃焼工程時に燃焼させる石炭ガス化ガスが、排出槽13内に引き込まれることで多量に流入しているので、排出槽13におけるスラグ排出孔12の開口周縁部12bで、孔加熱バーナー43から噴射される酸素ガスを石炭ガス化ガスに向けて確実に吹き付け、石炭ガス化ガスを確実に燃焼させることができる。
【0078】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、排出槽13に孔加熱バーナー43が設けられるものとしたが、孔加熱バーナー43は無くても良い。この場合、ガス燃焼機構として、排出槽13内に引き込まれる石炭ガス化ガスに酸素ガスを吹き付ける吹付ノズルを採用しても良い。
さらに、ガス燃焼機構29は無くても良い。
【0079】
また前記実施形態では、制御機構30の監視カメラ44からの監視データに基づいて、スラグ付着物によるスラグ排出孔12の閉塞状況を検知・制御部45が検知するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、スラグ排出孔12の上端部と下端部との差圧を測定することで、スラグ排出孔12の閉塞状況を検知しても良い。
さらに前記実施形態では、スラグ付着物によるスラグ排出孔12の閉塞状況に基づいて引込工程を行うものとしたが、これに限られるものではない。例えば、予め決められた所定時間毎に引込工程を定期的に行うものとしても良い。
【0080】
また前記実施形態では、引込工程は、液面下降工程と液面上昇工程とを交互に繰り返すものとしたが、これに限られるものではない。
さらに前記実施形態では、排出槽13内の冷却水26を貯留槽32に流出させることで排出槽13内の冷却水26の液面を下降させたが、これに限られるものではない。
さらにまた、前記実施形態では、排出槽13内の冷却水26の液面を下降させることで、反応炉本体11内の石炭ガス化ガスを排出槽13内に引き込むものとしたが、これに限られるものではない。
【0081】
また前記実施形態では、反応炉本体11は、部分酸化部14および熱分解部15を有する上下二室二段式となっているものとしたが、これに限られるものではなく、内部で石炭の燃焼反応が生じ、石炭ガス化ガスおよびスラグが生成される反応炉本体を備える石炭ガス化装置であれば、本発明を適用することができる。
【0082】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0083】
次に、以上説明した作用効果についての検証試験を実施した。
本検証試験では、実施例1、2および比較例の計3例の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法を実施した。
ここで、実施例1、2および比較例ではいずれも、前記実施形態の石炭ガス化反応炉4を用いた。また、ガス化バーナー23から部分酸化部14内に、ガス化石炭16を500kg/h、酸素ガスを280Nm/h、および水蒸気を50kg/hでそれぞれ投入した。さらに、孔加熱バーナー43は、燃料ガスとしてのメタンガスを10Nm/h、および酸素ガスを25Nm/hでそれぞれ噴射した。
このとき、スラグ25が20kg/hでスラグ排出孔12から排出され、徐々にスラグ排出孔12周辺に付着して成長し始めたことが監視カメラ44により確認された。
【0084】
(実施例1、2について)
そこで実施例1では、排出槽13の冷却水26の液面を30秒間で30mm下降(すなわち、1mm/secで下降)させた後、液面を上昇させ、液面の下降および上昇を3回、繰り返し行った。また実施例2では、排出槽13の冷却水26の液面を30秒間で30mm下降(すなわち、1mm/secで下降)させつつ、孔加熱バーナー43の酸素ガスの噴射量を30Nm/hに増加させた。
そして、実施例1、2および比較例とも、その後のスラグ付着物の様子を監視カメラ44で観察した。
【0085】
その結果、実施例1、2では、スラグ付着物が溶融されて除去されたことが確認された。
なお実施例1では、排出槽13の前記直胴部の上端に設置した熱電対により測定した温度が、液面の下降および上昇を繰り返した前後で、800℃から1200℃に上昇したのが確認された。また実施例2では、前記熱電対により測定した温度が、液面を下降させつつ孔加熱バーナー43の酸素ガスの噴射量を増加させた前後で、800℃から1250℃に上昇したのが確認された。
【0086】
(比較例について)
一方、比較例では、前述した条件で操業してスラグ排出孔12周辺にスラグの付着が確認されてから、排出槽13の冷却水26の液面を変化させずに孔加熱バーナー43の酸素ガスの噴射量を30Nm/hに増加させたところ、排出槽13上部の温度はほとんど変化せず、スラグ排出孔12に付着したスラグ付着物に変化が見られないことが確認された。これは、液面変化をさせなかったことにより、石炭ガス化ガスの引き込みがなく、燃焼反応が促進されなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0087】
4 石炭ガス化反応炉(石炭ガス化装置)
11 反応炉本体
12 スラグ排出孔
12b 開口周縁部
13 排出槽
16、19 石炭
25 スラグ
26 冷却水(冷却液体)
28 引込機構
29 ガス燃焼機構
30 制御機構
35 液面下降手段
36 液面上昇手段
43 孔加熱バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で石炭の燃焼反応が生じ、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスと、スラグと、が生成される反応炉本体と、
前記反応炉本体内とスラグ排出孔を通して連通されるとともに前記スラグ排出孔を通して前記反応炉本体内から前記スラグが排出される排出槽と、を備える石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法であって、
前記反応炉本体内から前記スラグ排出孔を通して前記石炭ガス化ガスを前記排出槽内に引き込む引込工程を有し、前記スラグ排出孔周辺に付着したスラグ付着物を除去することを特徴とする石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項2】
前記排出槽には、前記反応炉本体から排出された前記スラグを冷却する冷却液体が貯留され、
前記引込工程は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を下降させる液面下降工程を有していることを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項3】
前記引込工程は、前記液面下降工程の後、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を上昇させる液面上昇工程を有するとともに、前記液面下降工程と前記液面上昇工程とを交互に繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項4】
前記排出槽内に引き込まれた前記石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼工程を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項5】
前記石炭ガス化装置は、前記排出槽における前記スラグ排出孔の開口周縁部を加熱する孔加熱バーナーを更に備え、
前記ガス燃焼工程は、前記孔加熱バーナーからの酸素ガスの噴射量を通常運転時よりも増加させ、前記石炭ガス化ガスに前記酸素ガスを吹き付けることで前記石炭ガス化ガスを燃焼させることを特徴とする請求項4に記載の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項6】
前記引込工程は、前記スラグ付着物による前記スラグ排出孔の閉塞状況に基づいて行われることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の石炭ガス化装置におけるスラグ除去方法。
【請求項7】
内部で石炭の燃焼反応が生じ、少なくとも水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含有する石炭ガス化ガスと、スラグと、が生成される反応炉本体と、
前記反応炉本体内とスラグ排出孔を通して連通されるとともに前記スラグ排出孔を通して前記反応炉本体内から前記スラグが排出される排出槽と、を備える石炭ガス化装置であって、
前記反応炉本体内から前記スラグ排出孔を通して前記石炭ガス化ガスを前記排出槽内に引き込む引込機構を備えていることを特徴とする石炭ガス化装置。
【請求項8】
前記排出槽には、前記反応炉本体から排出された前記スラグを冷却する冷却液体が貯留され、
前記引込機構は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を下降させる液面下降手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載の石炭ガス化装置。
【請求項9】
前記引込機構は、前記排出槽内の前記冷却液体の液面を上昇させる液面上昇手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の石炭ガス化装置。
【請求項10】
前記排出槽には、前記排出槽内に引き込まれた前記石炭ガス化ガスを燃焼させるガス燃焼機構が設けられていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の石炭ガス化装置。
【請求項11】
前記ガス燃焼機構は、前記排出槽における前記スラグ排出孔の開口周縁部を加熱する孔加熱バーナーを備え、
前記ガス燃焼機構は、前記孔加熱バーナーからの酸素ガスの噴射量を通常運転時よりも増加させ、前記石炭ガス化ガスに前記酸素ガスを吹き付けることで前記石炭ガス化ガスを燃焼させることを特徴とする請求項10に記載の石炭ガス化装置。
【請求項12】
前記スラグ排出孔周辺に付着したスラグ付着物による前記スラグ排出孔の閉塞状況に基づいて、前記引込機構に前記石炭ガス化ガスを引き込ませる制御機構を備えていることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の石炭ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107085(P2012−107085A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255073(P2010−255073)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)