説明

石炭温度管理要否判定方法及び石炭取扱支援装置

【課題】 貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止する。
【解決手段】 ステップSA11で、ユニット停止の場合は、ステップSA12へ進み、貯炭場に貯蔵された石炭の燃料比が、1.3未満か否か判断する。燃料比が1.3未満の場合は、ステップSA13へ進み、燃料比が1.3以上の場合は、ステップSA14へ進む。ステップSA13では、ユニットの停止予定期間が7日を超過するか否か判断し、7日を超過する場合には、石炭温度管理処理を実施する。ステップSA14では、ユニットの停止予定期間が14日を超過するか否か判断し、14日を超過する場合には、石炭温度管理処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、石炭を燃料として用いる火力発電所において、貯蔵される石炭の自然発火を防止するための石炭温度管理要否判定方法及び石炭取扱支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火力発電所では、貯蔵石炭の自然発火を防止するために、温度管理を適切に実施して安全性を確保している。例えば、貯炭場では、石炭を積んだままの状態にしておくと、酸化反応が進行して発熱する虞がある。この状態を放置すると、さらに昇温して、自然発火に至る。このため、貯炭場の石炭パイルの温度の監視を行っている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、ユニット(発電ユニット)停止時には、炭種に関わらず、貯蔵石炭の温度管理を実施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−264770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、インドネシア炭を貯蔵する場合に、石炭が異常に温度上昇し易いため、対策が遅れると、自然発火に至る可能性があった。
【0005】
この発明は、前記の課題を解決し、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる石炭温度管理要否判定方法及び石炭取扱支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、貯蔵される石炭の温度を監視する温度監視工程を少なくとも含む前記石炭の自然発火を防止するための前記石炭の温度管理方法の実施の要否判定方法であって、前記石炭の着火性を示す所定の指標と、前記石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、前記温度管理方法の実施の要否を判定することを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、石炭の着火性を示す所定の指標と、石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、温度管理方法の実施の要否を判定する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の石炭温度管理要否判定方法であって、前記所定の指標として、前記石炭の固定炭素含有率の前記石炭の揮発分含有率に対する比として表される燃料比を採用し、前記石炭が所定の燃料比未満の場合に、前記石炭の貯蔵予定期間が、予め定められた第1の貯蔵予定期間を越えるときか、又は貯蔵される前記石炭が所定の燃料比以上の場合に、前記石炭の貯蔵予定期間が、前記第1の貯蔵予定期間より長い予め定められた第2の貯蔵予定期間を越えるときに、前記温度管理方法を実施すべきと判定することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の石炭温度管理要否判定方法であって、前記所定の燃料比を、略1.3とすることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の石炭温度管理要否判定方法に係り、前記第1の貯蔵予定期間、及び前記第2の貯蔵予定期間を、それぞれ、略7日、及び略14日とすることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2、3又は4に記載の石炭温度管理要否判定方法であって、前記貯蔵予定期間を、その停止によって前記石炭を貯蔵させることとなる所定の装置の停止予定期間とすることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の石炭温度管理要否判定方法であって、前記所定の装置に関し、工期情報を含む工事情報を取得する処理と、取得した前記工事情報に基づいて、前記停止予定期間を求める処理とを実行することを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、貯蔵される石炭の自然発火を防止するための石炭取扱支援装置であって、前記石炭の着火性を示す所定の指標と、前記石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、前記石炭の温度を監視する温度監視工程を少なくとも含む温度管理方法の実施の要否を判定する石炭温度管理要否判定手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、石炭の着火性を示す所定の指標と、石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、温度管理方法の実施の要否を判定するので、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、石炭が所定の燃料比未満の場合に、石炭の貯蔵予定期間が、予め定められた第1の貯蔵予定期間を越えるときか、又は貯蔵される石炭が所定の燃料比以上の場合に、石炭の貯蔵予定期間が、第1の貯蔵予定期間より長い予め定められた第2の貯蔵予定期間を越えるときに、温度管理方法を実施すべきと判定するので、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、所定の燃料比を、略1.3とするので、判定基準を明確化することにより、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、第1の貯蔵予定期間、及び第2の貯蔵予定期間を、それぞれ、略7日、及び略14日とするので、判定基準を明確化することにより、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、貯蔵予定期間としての停止予定期間を、第1の貯蔵予定期間、及び前記第2の貯蔵予定期間と比較することにより、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、所定の装置に関し、工期情報を含む工事情報を取得し、取得した工事情報に基づいて、停止予定期間を求めるので、温度管理要否判定を自動化することができ、貯蔵石炭の温度管理を一段と的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、石炭の着火性を示す所定の指標と、石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、温度管理方法の実施の要否を判定するので、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による石炭温度管理要否判定方法を説明するための処理手順図である。
【図2】同石炭温度管理要否判定方法を含む石炭取扱方法を実施するために用いられる監視装置の構成を説明するための図である。
【図3】ユニット停止後の停止日数と貯炭場の燃料比1.3未満の石炭の温度との間の関係を示す示性図である。
【図4】ユニット停止後の停止日数と貯炭場の燃料比1.3以上の石炭の温度との間の関係を示す示性図である。
【図5】ユニット停止後の停止日数と原炭バンカ又は中継ホッパの石炭の温度との間の関係を示す示性図である。
【図6】ユニットの停止予定期間を説明するための説明図である。
【図7】石炭の種類毎の産地及び燃料比の例を示す図である。
【図8】同石炭取扱方法の石炭温度管理方法を説明するための処理手順図である。
【図9】この発明の実施の形態2による石炭取扱支援システムの構成を示す図である。
【図10】同石炭取扱支援システムの支援サーバの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1による石炭温度管理要否判定方法を説明するための処理手順図、図2は、同石炭温度管理要否判定方法を含む石炭取扱方法を実施するために用いられる監視装置の構成を説明するための図、図3は、ユニット停止後の停止日数と貯炭場の燃料比1.3未満の石炭の温度との間の関係を示す示性図、図4は、ユニット停止後の停止日数と貯炭場の燃料比1.3以上の石炭の温度との間の関係を示す示性図、図5は、ユニット停止後の停止日数と原炭バンカ又は中継ホッパの石炭の温度との間の関係を示す示性図、図6は、ユニットの停止予定期間を説明するための説明図、図7は、石炭の種類毎の産地及び燃料比の例を示す図、図8は、同石炭取扱方法の石炭温度管理方法を説明するための処理手順図である。
【0024】
この発明の実施の形態1に係る石炭取扱方法は、図1に示すように、燃料として石炭を用いる火力発電所において実施される石炭温度管理要否判定方法(ステップSA11〜ステップSA14)と、石炭温度管理方法(ステップSA15)とを含んでいる。また、この石炭取扱方法では、図2に示すように、監視装置1を用いて、貯炭場7や、原炭バンカー8、中継ホッパ9に貯蔵された石炭の温度の監視等を行う。
【0025】
この実施の形態の火力発電所では、加圧下で流動床燃焼を行い蒸気を発生させる加圧流動床ボイラと、加圧流動床ボイラで発生した蒸気及び排ガスでそれぞれ駆動される蒸気タービン及びガスタービンと、発電機とを備えたPFBC(Pressurized Fluidized Bed Combustion)複合発電方式の発電ユニットが採用され、燃料として石炭と水と石灰石とからなるCWP(Coal Water Paste)が用いられる。貯炭場7から運ばれた石炭Cは、原炭バンカ8へ投入され、粗粉砕機で粉砕され、コンベアにより中継ホッパ9へ送られた後、一部は微粉砕機で粉砕されてから水と混ぜられてスラリとされ、このスラリと、粗粉炭と、石灰石と、水とが混ぜ合わされてCWPが製造される(図2参照)。
【0026】
監視装置1は、図2に示すように、所定の制御プログラムに従って構成各部を制御する制御部2と、各種制御プログラムやデータが記憶される記憶部3と、表示部4と、操作部5と、A/D変換器等を含む入出力部とを有している。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)等からなり、記憶部3に記憶された所定の制御プログラムに従って構成各部を制御し、石炭状態表示処理等を実行する。制御部2は、石炭状態表示処理で、貯炭場7、原炭バンカー8、及び中継ホッパ9に貯蔵されている石炭の炭種や、燃料比等を、表示部4に表示させるとともに、貯炭場7、原炭バンカー8、及び中継ホッパ9に配置された温度センサ12,13,14からの温度検出情報を、入出力部を介して取得し、表示部4に表示させる。また、制御部2は、ユニットの停止が予定されているときは、停止予定期間を表示部4に表示させる。
【0027】
記憶部3は、ROM、RAMや、FD(フレキシブル・ディスク)、HD(ハード・ディスク)、CD−ROMが装着されるFDD、HDD、CD−ROMドライバ等からなっている。記憶部3は、石炭状態表示処理プログラム等の各種プログラムを記憶するプログラム記憶部と、例えば、現在取扱い中の石炭の炭種情報や、石炭炭種毎の燃料比情報や、ユニット停止予定期間情報等の各種情報を記憶する情報記憶部とを有している。これらの現在取扱い中の石炭の炭種情報や、燃料比情報や、ユニット停止予定期間情報等は、例えば、操作部5を介して入力されて予め記憶部3に記憶される。
【0028】
この石炭温度管理要否判定方法では、石炭の着火性と、その貯蔵予定期間とに基づいて、石炭の温度管理の要否を判定する。この実施の形態では、石炭の着火性を示す指標として、燃料比を用いる。燃料比は、(固定炭素含有率/揮発分含有率)によって表され、この値が小さい石炭ほど着火性(自然発火の危険性)が高いことを示す。また、石炭の貯蔵期間としては、例えば、ユニット(発電ユニット)の停止予定期間を用いる。
【0029】
次に、この実施の形態の石炭温度管理要否判定方法について詳述する。貯炭場に貯蔵された石炭の温度管理要否判定方法から述べる。まず、ステップSA11(図1)で、ユニット停止か否か判断し、ユニット停止の場合は、ステップSA12へ進み、停止でない場合には、処理を終了する。ステップSA12では、貯炭場7に貯蔵された石炭Cの燃料比が、1.3未満か否か判断する。燃料比が1.3未満の場合は、ステップSA13へ進み、燃料比が1.3以上の場合は、ステップSA14へ進む。発明者は、過去の運用実績や実験結果等から、燃料比1.3を境に、石炭の経過時間に対する温度上昇率が大きく変化し、燃料比が1.3未満の石炭については、特に早期に温度管理が必要となることを突き止め、判定基準として採用した。例えば、インドネシア産のピナン炭、ボンタン炭、マリナウ炭、プリマ炭は、燃料比がいずれも1.3未満である(図7参照)。
【0030】
ステップSA13では、ユニットの停止予定期間が、第1の貯蔵予定期間としての7日を超過するか否か判断する。停止予定期間が7日を超過する場合には、ステップSA15へ進んで、後に詳述する石炭温度管理処理を実施し、停止予定期間が7日を以下の場合には、石炭温度管理処理を実施せずに終了する。ここで、燃料比と、停止予定期間とから、昇温管理温度(例えば、50℃)に到達する可能性がある場合に、温度管理を行うものとする。なお、昇温管理温度は、貯炭場7の温度分布について、測定を行い解析を実施した結果に基づいて、真の温度を把握する指標として設定した。また、停止予定期間は、例えば、ガスタービン翼を点検する場合には、図6に示すように、蒸気タービン解列から、燃料製造時の石炭前処理系統起動までの間の期間T0とする。石炭温度管理は、期間T0の始めから実施する。
【0031】
燃料比が1.3未満の石炭として、例えばピナン炭を用いる場合に、実績より、最も高い初温は、略40.3℃であり、このピナン炭を貯炭した場合の昇温率は、略0.9℃/日であった。これより、ユニット停止後の停止日数tと貯炭場の石炭の温度θとの間の関係は、図3に示すように、(θ=40.3+0.9t)として求められ、昇温管理温度として50℃に達する最短日数は、11日であることがわかる。したがって、11日以降の期間Ta3では、この昇温管理温度に達する可能性がある。余裕期間Ta2を差し引いた期間Ta1(この例では、7日)を、昇温管理温度に到達する可能性のない期間として、すなわち、判定基準として用いる。なお、工程変更等により、停止期間が期間Ta1以上となった場合には、期間延長が判明した時点から石炭温度管理を行う。
【0032】
ステップSA14では、ユニットの停止予定期間が、第2の貯蔵予定期間としての14日を超過するか否か判断する。停止予定期間が14日を超過する場合には、ステップSA15へ進んで石炭温度管理処理を実施し、停止予定期間が14日以下の場合には、石炭温度管理処理を実施せずに、処理を終了する。
【0033】
燃料比が1.3以上の石炭を用いる場合に、実績より、最も高い初温は、略40.3℃であり、この石炭を貯炭した場合の昇温率は、略0.5℃/日であった。これより、ユニット停止後の停止日数tと貯炭場の石炭の温度θとの間の関係は、図4に示すように、(θ=40.3+0.5t)として求められ、昇温管理温度として50℃に達する最短日数は、20日であることがわかる。したがって、20日以降の期間Tb3では、この昇温管理温度に達する可能性がある。余裕期間Tb2を差し引いた期間Tb1(この例では、14日)を、昇温管理温度に到達する可能性のない期間として、すなわち、判定基準として用いる。なお、工程変更等により、停止期間が期間Tb1以上となった場合には、期間延長が判明した時点から石炭温度管理を行う。
【0034】
原炭バンカ8又は中継ホッパ9の石炭の場合には、ユニット停止予定期間が、例えば、30日を超過する場合に、石炭温度管理を行うこととし、30日以下の場合には、石炭温度管理を行わないものとする。原炭バンカ8又は中継ホッパ9の石炭の場合、実績より、最も高い初温は、略33.5℃であり、この石炭を貯炭した場合の昇温率は、略0.45℃/日とする。これより、ユニット停止後の停止日数tと貯炭場の石炭の温度θとの間の関係は、図5に示すように、(θ=33.5+0.45t)として求められ、昇温管理温度として50℃に達する最短日数は、37日であることがわかる。したがって、37日以降の期間Tc3では、この昇温管理温度に達する可能性がある。余裕期間Tc2を差し引いた期間Tc1(この例では、30日)を、昇温管理温度に到達する可能性のない期間として、すなわち、判定基準として用いる。なお、工程変更等により、停止期間が期間Tc1以上となった場合には、期間延長が判明した時点から石炭温度管理を行う。
【0035】
次に、石炭温度管理処理について説明する。この石炭温度管理処理では、貯蔵されている石炭が、その温度から判断して、発火の危険があるか否か、2段階(例えば、昇温管理温度40℃と、50℃)に分けて判断する。まず、ステップSB11(図8)で、石炭温度を監視する。すなわち、監視装置1の表示部4に表示された貯炭場7、原炭バンカ8、及び中継ホッパ9の石炭の温度を監視する。次に、ステップSB12で、貯炭場7、原炭バンカ8、中継ホッパ9のいずれかの石炭の温度が40℃以上か否か判断する。いずれかが40℃以上の場合は、ステップSB13へ進み、いずれも40℃未満の場合は、ステップSB11へ戻る。ステップSB13では、監視を強化し、次の対応の準備を行う。すなわち、貯炭場7に関しては、石炭の拡散・填圧作業の検討を行い、原炭バンカ8に関しては、パトロールの強化を行い、未測定の原炭バンカ8全ての温度測定を行う。また、中継ホッパ9では、パトロールの強化を行う。
【0036】
次に、ステップSB14で、貯炭場7の石炭の温度が50℃以上か否か判断し、50℃以上の場合は、ステップSB16へ進み、50℃未満の場合は、ステップSB11へ戻る。また、ステップSB15で、原炭バンカ8、中継ホッパ9のいずれかの石炭の温度が50℃以上か否か判断し、50℃以上の場合は、ステップSB17へ進み、50℃未満の場合は、ステップSB11へ戻る。
【0037】
ステップSB16では、貯炭場7で、石炭の拡散、填圧作業を実施する。また、ステップSB18では、原炭バンカ8、及び中継ホッパ9で、石炭の抜出作業を実施する。
【0038】
こうして、この実施の形態の構成によれば、石炭の着火性を示す指標として、燃料比を用い、石炭の貯蔵期間として、ユニットの停止予定期間を用い、石炭の温度上昇率の差異から、その判断基準の燃料比を1.3に設定して、この値で、1.3未満、1.3以上に分けて、それぞれについて、判定基準の停止予定期間を、安全性の目安として7日、14日に設定して、石炭の温度管理の要否を判定するので、判定基準を明確化することにより、貯蔵石炭の温度管理を的確に行い、昇温時に迅速に対応し、石炭の自然発火を確実に防止することができる。
【0039】
(実施の形態2)
図9は、この発明の実施の形態2による石炭取扱支援システムの構成を示す図、図10は、同石炭取扱支援システムの支援サーバの構成を示すブロック図である。
【0040】
図9に示すように、石炭取扱支援システム16は、石炭取扱を支援する支援サーバ17と、石炭の状態を管理するための管理端末18a,18b,…とが、ネットワーク19を介して接続可能とされて概略構成されている。この実施の形態では、また、支援サーバ17には、ネットワーク19を介して、設備に関する工事情報を扱う日常保修管理システムの保修管理サーバ21が、接続可能とされ、支援サーバ17は、工期情報を含む工事情報を取得する。保修管理サーバ21は、例えば、パトロール時の不調発見等を受けて作成された作業依頼票を受け取り、工期を含む工事票を作成し、工事完了後に検収原票を受け取る。この例では、保修管理サーバ21は、受け取った作業依頼票や工事票を、受領時や作成時に、または、支援サーバ17からの要求により、支援サーバ17へ送付する。作業依頼票や工事票は、不具合処理のほか、定期検査のためのものを含んでいる。
【0041】
図10に示すように、支援サーバ17は、所定の制御プログラムに従って構成各部を制御する制御部27と、各種制御プログラムやデータが記憶される記憶部28と、所定のプロトコルに従ってデータ通信を行うための通信部29と、表示部31と、操作部32とを有している。
【0042】
制御部27は、CPU等からなり、記憶部28に記憶された所定の制御プログラムに従って構成各部を制御する。制御部27は、記憶部28に記憶された制御プログラムに従って、例えば、石炭温度管理の要否を判定する石炭温度管理要否判定処理や、石炭温度管理処理等を実行する。石炭温度管理要否判定処理は、工事情報取得処理と、ユニット停止判定処理(実施の形態1のステップSA11に対応)と、燃料比判定処理(実施の形態1のステップSA12に対応)と、停止予定期間判定処理(実施の形態1のステップSA13、SA14等に対応)とを含んでいる。
【0043】
制御部27は、工事情報取得処理で、保修管理サーバ21から工期情報を含む工事情報を取得する。制御部27は、ユニット停止判定処理で、取得した工事情報に基づいて、石炭の貯蔵に係るユニット停止予定があるか否か判定する。制御部27は、燃料比判定処理で、現在、貯炭場7(原炭バンカ8、中継ホッパ9)に貯蔵されている石炭の燃料比が、1.3未満か否か判断する。制御部27は、停止予定期間判定処理で、取得した工事情報に基づいて、停止予定期間が、期間Ta1(Tb1、Tc1)を超過しているか否か判断する。石炭温度管理処理は、温度情報取得処理(実施の形態1のステップSB11に対応)と、温度判定処理(実施の形態1のステップSB12、SB14、SB15に対応)と、指示情報表示処理(実施の形態1のステップSB13、SB16、SB17に対応)を含んでいる。制御部27は、指示情報表示処理で、異常時に、対応する指示情報を表示部31に表示させる。
【0044】
記憶部28は、石炭温度管理要否判定処理プログラムや、石炭温度管理処理プログラム等の各種プログラムを記憶するプログラム記憶部と、例えば、現在取扱い中の石炭の炭種情報や、石炭炭種毎の燃料比情報や、ユニット停止予定期間情報等の各種情報を記憶する情報記憶部とを有している。これらの現在取扱い中の石炭の炭種情報や、燃料比情報等は、例えば、操作部32を介して、予め記憶部28に記憶される。
【0045】
管理端末18a(18b,18c、…)は、例えば、パーソナルコンピュータ等からなり、所定の制御プログラムに従って構成各部を制御する制御部と、各種制御プログラムやデータが記憶される記憶部と、所定のプロトコルに従ってデータ通信を行うための通信部と、表示部と、操作部とを有している。
【0046】
この実施の形態の構成によれば、上述した実施の形態1と略同様の効果を得ることができる。加えて、制御部27が、自動的に判定処理を行うので、貯蔵石炭の温度管理を一段と的確に行い、自然発火を確実に防止することができる。
【0047】
(実施の形態3)
この例の構成が上述した実施の形態1の構成と大きく異なるところは、低燃料比炭の最大貯炭量を設定するように構成した点である。
【0048】
この実施の形態では、悪天候等による石炭の受入不可を考慮して、石炭消費量3日分以上の貯炭量の確保を目安とする。例えば、インドネシア産石炭を混焼運用する時の最大貯炭量を求める。25%混焼時には、230MW運転時に、略485t、221MW運転時に略470tのインドネシア産石炭が必要となるものとして、最大貯炭量を3500t(所定の石炭専用船1隻分)とする。また、50%混焼時に、230MW運転時に、略970t、221MW運転時に略930tの石炭が必要となるものとして、最大貯炭量を7000t(石炭専用船2隻分)とする。また、75%混焼時に、230MW運転時に、略1450t、221MW運転時に略1400tの石炭が必要となるものとして、最大貯炭量を7000tとする。また、専焼時に、230MW運転時に、略1940t、221MW運転時に略1860tの石炭が必要となるものとして、最大貯炭量を7000tとする。
【0049】
この実施の形態の構成によれば、上述した実施の形態1と略同様の効果を得ることができる。加えて、例えば、インドネシア産石炭の最大貯炭量の目安を設定したので、拡散・填圧のためのスペースを確保することができる。
【0050】
以上、この発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、現在取扱い中の石炭炭種情報や、石炭燃料比情報や、ユニット停止予定期間情報を、記憶部に記憶させる場合について述べたが、必ずしも記憶部に記憶させなくても良いし、必ずしも表示部に表示させなくても良い。また、余裕期間は、必ずしも設けなくても良い。
【0051】
また、必ずしも、判定基準の燃料比を1.3に固定せずに、一般に、燃焼比と、停止予定期間とに基づいて、温度管理の要否を判定しても良い。また、石炭温度に加えて、CO濃度等のガス濃度の監視を行うようにしても良い。また、石炭の種類を、CTスキャン等により特定するようにしても良い。また、単に燃料比に代えて、一般に、燃料比の関数を用いても良い。また、ユニット停止予定期間に限らず、例えば、貯炭場における貯蔵日数に基づいて、温度管理要否判定を行うようにしても良い。
【0052】
また、実施の形態2で、例えば、貯炭場における石炭の保有量を管理する石炭保有量管理システムや、受入物資として石炭を扱う物流管理システム等が導入され、これらのシステムで石炭炭種情報等が扱われている場合に、これらのシステムに接続可能として、支援サーバが、石炭炭種情報等を自動的に取得して、この情報に基づいて燃料比を求めて、温度管理要否判定を行うようにしても良い。また、支援サーバは、保修管理サーバのほか、作業の進捗管理処理を行う作業管理サーバから工事情報を取得するようにしても良い。
【0053】
また、支援サーバにおいて、石炭温度管理要否判定処理や、石炭温度管理処理等を、制御部が、対応する制御プログラムを実行することによって行う場合について述べたが、一部又は全部を専用のハードウェアを用いて行い、他の一部を対応するプログラムを実行して処理するようにしても良い。また、それぞれ別々のCPUが実行しても良いし、例えば、単一のCPUが実行しても良い。さらに、各処理を別々の情報処理装置が行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
石炭を燃料として用いる火力発電所のほか、一般に、製鉄所や採掘場等の石炭を貯蔵する場所において適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 監視装置
2 制御部
3 記憶部
4 表示部
7 貯炭場
8 原炭バンカ
9 中継ホッパ
12,13,14 温度センサ
16 石炭取扱支援システム
17 支援サーバ(石炭取扱支援装置)
27 制御部(石炭温度管理要否判定手段)
28 記憶部
C 石炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵される石炭の温度を監視する温度監視工程を少なくとも含む前記石炭の自然発火を防止するための前記石炭の温度管理方法の実施の要否判定方法であって、
前記石炭の着火性を示す所定の指標と、前記石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、前記温度管理方法の実施の要否を判定することを特徴とする石炭温度管理要否判定方法。
【請求項2】
前記所定の指標として、前記石炭の固定炭素含有率の前記石炭の揮発分含有率に対する比として表される燃料比を採用し、前記石炭が所定の燃料比未満の場合に、前記石炭の貯蔵予定期間が、予め定められた第1の貯蔵予定期間を越えるときか、又は貯蔵される前記石炭が所定の燃料比以上の場合に、前記石炭の貯蔵予定期間が、前記第1の貯蔵予定期間より長い予め定められた第2の貯蔵予定期間を越えるときに、前記温度管理方法を実施すべきと判定することを特徴とする請求項1に記載の石炭温度管理要否判定方法。
【請求項3】
前記所定の燃料比を、略1.3とすることを特徴とする請求項2に記載の石炭温度管理要否判定方法。
【請求項4】
前記第1の貯蔵予定期間、及び前記第2の貯蔵予定期間を、それぞれ、略7日、及び略14日とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の石炭温度管理要否判定方法。
【請求項5】
前記貯蔵予定期間を、その停止によって前記石炭を貯蔵させることとなる所定の装置の停止予定期間とすることを特徴とする請求項2、3又は4に記載の石炭温度管理要否判定方法。
【請求項6】
前記所定の装置に関し、工期情報を含む工事情報を取得する処理と、取得した前記工事情報に基づいて、前記停止予定期間を求める処理とを実行することを特徴とする請求項5に記載の石炭温度管理要否判定方法。
【請求項7】
貯蔵される石炭の自然発火を防止するための石炭取扱支援装置であって、
前記石炭の着火性を示す所定の指標と、前記石炭の貯蔵期間、又は貯蔵予定期間とに基づいて、前記石炭の温度を監視する温度監視工程を少なくとも含む温度管理方法の実施の要否を判定する石炭温度管理要否判定手段を備えたことを特徴とする石炭取扱支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−159111(P2010−159111A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1659(P2009−1659)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)