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石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法
説明

石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法

【課題】簡易な操作により容易かつ迅速に分析を行うことができるとともに、公定法との良好な相関性を得ることができる石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法を提供する。
【解決手段】石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、まず石炭灰にX線を照射し、該石炭灰から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光X線法により得られる砒素濃度と、アメリカ環境保護庁の定める公定法(EPA Method 3051)により得られる砒素濃度との間で検量線を作成する。次いで、分析対象物としての石炭灰について前記蛍光X線法により砒素濃度を分析する。そして、蛍光X線法で得られた砒素濃度の分析値から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度が推定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭火力発電所で石炭が燃焼されて排出される石炭灰中に含まれる砒素濃度を分析するための簡易分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌、石炭灰等の対象物に含まれる砒素濃度を分析する方法としては、対象物を塩酸、硝酸等の水溶液に溶解し、溶解された溶解対象物中の砒素濃度を原子吸光光度法で分析する方法が知られている。このような砒素濃度の分析方法により、対象物を体内に取り込んだ場合に胃酸で溶け出す有害成分である砒素の濃度を知ることができる。
【0003】
この種の分析方法が例えば特許文献1に開示されている。すなわち、該分析方法は土壌中の有害物質を分析する方法であって、蛍光X線分析法により土壌中の有害物質の含有量を分析する前分析工程と、土壌に塩酸水溶液を加えて混合後に固液分離する溶出工程と、該溶出工程で分離された固体成分中の有害物質の含有量を蛍光X線分析法で分析する後分析工程とを有している。そして、前分析工程で分析された有害物質の含有量から後分析工程で分析された有害物質の含有量を減算することにより、溶出された有害物質の含有量を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−349514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成の分析方法においては、土壌に塩酸水溶液を加えて混合後に固液分離する溶出工程が含まれていることから、土壌を塩酸水溶液に溶解させる操作と、その後固液分離する操作をその都度行わなければならず、そのような操作が煩雑で分析時間が長くなるという欠点があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されているように、類似する性状の土壌に対して蛍光X線分析法による分析結果は公定法(アメリカ環境保護庁のEPA Method 3051法、JIS K 0102法等)の分析結果に相関性を有するが、性状の異なる土壌の場合には必ずしもそのような相関性は得られない(特許文献1の段落番号0010)。従って、分析対象物が土壌である場合には、有害物質の含有量の分析値が土壌の化学組成による影響を受けやすく、安定した分析を行うことが難しく、公定法との相関性が低いという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、簡易な操作により容易かつ迅速に分析を行うことができるとともに、公定法との良好な相関性を得ることができる石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、石炭灰にX線を照射し、該石炭灰から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光X線法により得られる砒素濃度と、石炭灰に酸を加えて加熱溶解し、得られた溶液中の砒素を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で定量する公定法により得られる砒素濃度との間で検量線を作成した後、分析対象物としての石炭灰について前記蛍光X線法により得られる砒素濃度から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、請求項1に係る発明において、前記石炭灰は、石炭火力発電所で石炭が燃焼されて形成されるものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の種類に拘わらず推定可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の燃焼条件に拘わらず推定可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記検量線として、蛍光X線法による砒素濃度の分析値に対する公定法による砒素濃度の分析値の関係を表す直線を使用し、その直線の傾きを表す比例係数に基づいて分析対象物としての石炭灰について蛍光X線法により得られる砒素濃度分析値に前記比例係数を乗じて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法は、請求項5に係る発明において、前記比例係数は0.79であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係る発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法では、石炭灰にX線を照射し、該石炭灰から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光X線法により得られる砒素濃度と、石炭灰に酸を加えて加熱溶解し、得られた溶液中の砒素を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で定量する公定法により得られる砒素濃度との間で検量線を作成する。その後、分析対象物としての石炭灰について、蛍光X線法により得られる砒素濃度から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定するものである。
【0015】
このため、分析対象物としての石炭灰を水系溶媒に溶解する前処理工程が不要であり、石炭灰にX線を照射すればよく、砒素濃度の分析を速やかに進めることができる。また、分析対象物である石炭灰は土壌に比べて組成が一定していることから、公定法により得られる砒素濃度の分析値との相関性がよく、蛍光X線法による分析値から公定法による分析値を精度よく推定することができる。
【0016】
従って、本発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法によれば、簡易な操作により容易かつ迅速に分析を行うことができるとともに、公定法との良好な相関性を得ることができるという効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蛍光X線法による砒素濃度と公定法による砒素濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の石炭灰中における砒素(As)濃度の簡易分析方法は、分析対象物として石炭火力発電所で石炭が燃焼されて形成された石炭灰等に適用される。石炭火力発電所では微粉砕した石炭がボイラで燃焼され、その燃焼により石炭灰が生成する。斯かる石炭灰は、燃焼ガスとともに浮遊する灰が電気集塵機で集められた細かな球状粒子(フライアッシュ)であるが、灰の粒子が熔融固化してボイラの底部に落下した粒子(クリンカ)が含まれていてもよい。フライアッシュは微細粒子で球形をしているため流動性が良く、コンクリートやモルタルの混和剤等として用いられ、クリンカは孔隙構造を有し、排水性や通気性が良く、路盤材、路床材等の骨材などとして用いられる。
【0019】
砒素の簡易分析方法は、まず石炭灰にX線を照射し、該石炭灰から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光X線法により得られる砒素濃度と、石炭灰に酸を加えて加熱溶解し、得られた溶液中の砒素を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で定量する公定法により得られる砒素濃度との間で検量線を作成する。その後、分析対象物としての石炭灰について前記蛍光X線法により得られる砒素濃度から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定するものである。
【0020】
前記蛍光X線法は、石炭灰にX線を照射するとそのX線が石炭灰の構成原子の内殻電子を外殻にはじき出し、空いた空孔に外殻電子が落ちる際に余ったエネルギーが蛍光X線として放射され、その強度(光子の数)から定量分析を行う方法である。一方、前記公定法は、具体的にはアメリカ環境保護庁で定められている方法(EPA Method 3051)である。その方法には誘導結合プラズマ質量分析法〔ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)〕とフレームレス原子吸光法〔FAAS(Flameless Atomic Absorption Spectrometry)〕とがある。ICP-MSは、ICP(誘導結合プラズマ)によってイオン化された原子を質量分析計に導入することより、砒素の同定及び定量を行う方法である。具体的には、石炭灰0.5gに対し、酸として硝酸10mlを加え、175℃、10分の条件でマイクロウェーブ(マイクロ波)を照射して溶解し、硝酸溶液に溶解した砒素をICP-MSで定量分析する方法である。
【0021】
一方、フレームレス原子吸光法(FAAS)は、試料(石炭灰)を原子蒸気に変え、分析元素(砒素)に固有の波長において、その蒸気の吸光度を測定する元素分析法である。測定される吸光度は、その元素の濃度に比例するので、濃度既知の標準試料について同じ実験条件で測定した吸光度と比較することにより目的元素が定量される。ここで、原子吸光は、遊離基底状態の原子が同種の元素から放射された特定波長の光(主として共鳴線)を吸収する現象である。また、高温加熱して元素を原子化する際に用いられる熱源の違いとして、炎(フレーム)と電気(フレームレス)があり、フレームレスの方が低い濃度で定量を行うことができる。
【0022】
なお、JIS K 0102(2008)に規定されている公定法には、水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光法(水素化物発生ICP-AES)と水素化物発生原子吸光法とがある。水素化物発生ICP-AESは、ICPによって試料(石炭灰)を原子化、熱励起し、これが基底状態に戻る際の発光スペクトルから元素の同定、定量を行う方法である。試料の原子化は、試料溶液中の砒素等を水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で揮発性水素化物に還元し、それを加熱石英セルに導入して行われ、高感度で測定を行うことができる。一方、水素化物発生原子吸光法は、前記水素化物発生ICP-AESにおいて、発光分光法に代えて原子吸光法を用いるものである。酸としては、硝酸に加えて過塩素酸及び硫酸が順次用いられる。
【0023】
燃焼前の石炭はオーストラリア産、インドネシア産等多くの産地で採掘されたものが存在するが、長い年月をかけて特定の成分が石炭化されて形成されることから、多くの成分を含む土壌とは本質的に組成が異なり、組成が一定した均質なものとなっている。石炭火力発電所では、各産地の石炭が単独で、又は適宜組合せて使用される。また、石炭火力発電所で石炭を燃焼させる場合の燃焼方式や燃焼ガス中の酸素濃度、蒸気発生量等の条件は適宜設定される。燃焼方式としては、燃焼炉の四隅から燃焼炉中央の仮想円に対して接線方向にバーナを向けて燃焼を行う方式やバーナを燃焼炉の前後壁又は左右壁に設け、対向して燃焼を行う方式等が採用される。石炭及び石炭灰の組成としては、例えば次のような組成が挙げられる。
【0024】
石炭には、軽元素類として二酸化珪素(SiO)51質量%、アルミナ(Al)25質量%、酸化鉄(Fe)10質量%、酸化カルシウム(CaO)3.5質量%、酸化マグネシウム(MgO)2.8質量%、亜硫酸(SO)2.6質量%、酸化カリウム(KO)1質量%、酸化ナトリウム(NaO)1質量%、全アルカリ量(RO)1.5質量%が含まれ、重金属類として水銀(Ag)0.03ppm、砒素(As)2.4ppm、クロム(Cr)14ppm、カドミウム(Cd)0.03ppm、鉛(Pb)3ppm、ベリリウム(Be)0.26ppm、ウラン(U)0.28ppm、トリウム(Th)0.98ppm、ホウ素(B)17ppm、塩化物イオン10ppm、銅(Cu)2.9ppm、フッ素(F)62ppm、セレン(Se)0.3ppm、亜鉛(Zn)15ppmが含まれている。
【0025】
また、石炭灰には、軽元素類として二酸化珪素(SiO)60質量%、アルミナ(Al)25質量%、酸化鉄(Fe)7質量%、酸化カルシウム(CaO)3質量%、酸化マグネシウム(MgO)1.5質量%、酸化カリウム(KO)2質量%、酸化ナトリウム(NaO)1質量%、全アルカリ量(RO)2.5質量%が含まれ、重金属類として水銀(Ag)0.3ppm、砒素(As)20ppm、クロム(Cr)105ppm、カドミウム(Cd)1.1ppm、鉛(Pb)54ppm、銅(Cu)102ppm、フッ素(F)92ppm、亜鉛(Zn)159ppmが含まれている。なお、全アルカリ量(RO)=酸化ナトリウム(NaO)量+0.658×酸化カリウム(KO)量を表す。
【0026】
前述のように、石炭灰の組成は土壌等の組成に比べて一定している。このため、前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の種類や石炭の燃焼条件に拘わらず推定可能である。
【0027】
次に、前記検量線とそれを用いる蛍光X線法について説明する。
この検量線としては、蛍光X線法による砒素濃度の分析値に対する公定法(ICP-MS)による砒素濃度の分析値の関係を表す直線を使用し、その直線の傾きを表す比例係数を求める。具体的には、図1に示すように、蛍光X線法による砒素濃度(ppm)の平均値と公定法による砒素濃度(ppm)の平均値とは直線関係を示し、その直線の傾きを表す比例係数を求める。この場合、前記直線を得るためには、少なくとも3点の蛍光X線法による砒素濃度の分析値と公定法による砒素濃度の分析値が必要である。そして、得られた分析値に対し、最小自乗法(最小二乗法)等の方法により分析値に最も近似する直線を求める。なお、最小自乗法は、分析値と直線との差の二乗和が最小となるように直線を求める方法である。
【0028】
続いて、分析対象物としての石炭灰について、公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定する。すなわち、分析対象物である石炭灰について蛍光X線法により砒素濃度を分析する。この場合、同じ石炭灰について蛍光X線法による分析を複数回行い、得られた複数の砒素濃度の平均値を使用することが望ましい。そして、その砒素濃度に、前記検量線で得られた比例係数を乗じることにより、公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することができる。
【0029】
次に、上記のように構成された石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法を作用とともに説明する。
さて、事前に検量線を作成する場合には、複数の石炭灰について蛍光X線法で砒素濃度を分析するとともに、前記複数の石炭灰について公定法により砒素濃度を分析する。そして、図1に示すように、縦軸に公定法による砒素濃度、横軸に蛍光X線法による砒素濃度をプロットし、プロットされた分析値に最も近い直線を最小自乗法に基づいて求め、その直線の式からグラフ上に直線を描く。得られた直線の傾きから比例係数を求める。
【0030】
その後、分析対象物である石炭灰について、X線を照射し、発生する蛍光X線の強度を分析することにより砒素濃度を求める。そして、蛍光X線法により得られた砒素濃度に前記検量線で算出された比例係数を乗ずることにより、公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することができる。
【0031】
このように、予め検量線を作成しておくことにより、分析対象物である石炭灰に対し直接X線を照射して分析を行えばよく、砒素濃度の分析を速やかに進めることができる。また、石炭灰は組成が一定しているとともに、蛍光X線法による砒素濃度の分析に支障を来たす成分が含まれていない。従って、蛍光X線法による分析値と公定法による分析値との間で良好な直線関係(比例関係)が得られる。
【0032】
以上詳述した実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法では、予め前記蛍光X線法により得られる砒素濃度と、前記公定法(ICP-MS)により得られる砒素濃度との間で検量線を作成する。その後、分析対象物としての石炭灰について、蛍光X線法により得られる砒素濃度から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定する。
【0033】
このため、石炭灰を水系溶媒に溶解する前処理工程が不要であり、石炭灰にX線を照射して分析を行えばよく、砒素濃度の分析を迅速に進めることができる。また、分析対象物である石炭灰は土壌に比べて組成が一定しており、かつ蛍光X線法による砒素濃度の分析を妨害する成分が含まれていない。従って、蛍光X線法による砒素濃度の分析値と公定法により得られる砒素濃度の分析値との相関性に優れ、蛍光X線分析法による砒素濃度の分析値から公定法による砒素濃度の分析値を精度よく推定することができる。
【0034】
よって、本実施形態の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法によれば、簡易な操作により容易かつ迅速に分析を行うことができるとともに、公定法との良好な相関性を得ることができるという効果を発揮することができる。
(2)前記石炭灰は、石炭火力発電所で石炭が燃焼されて形成されるものである。このため、石炭火力発電所から排出される石炭灰を有効利用する場合に、その石炭灰中に含まれる有害物質としての砒素の濃度を容易かつ短時間に分析することができる。
(3)前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の種類に拘わらず推定可能である。従って、産地の異なる石炭やそれらの混合物を使用して得られた石炭灰であっても、同じ検量線を使用して簡易に分析を行うことができる。
(4)前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の燃焼条件に拘わらず推定可能である。そのため、石炭を燃焼する際の燃焼方式、燃焼ガス中の酸素濃度等の燃焼条件が異なっても、得られる石炭灰について同じ検量線を用いて簡易に分析を行うことができる。
(5)前記検量線として、蛍光X線法による砒素濃度の分析値に対する公定法による砒素濃度の分析値の関係を表す直線を使用し、その直線の傾きを表す比例係数に基づいて分析対象物としての石炭灰について蛍光X線法により得られる砒素濃度分析値に前記比例係数を乗じて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定する。このため、検量線を容易に得ることができるとともに、比例係数を使用して公定法による石炭灰中の砒素濃度を迅速に算出することができる。
(6)前記比例係数は0.79であることにより、蛍光X線法による砒素濃度の分析値から公定法による砒素濃度を一定の比例係数に基づいて速やかに算出することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜10)
石炭火力発電所において、石炭を燃焼させて発電を行うとともに、石炭の燃焼後に生成した石炭灰を灰中継タンクのホッパからサンプリングした。そして、サンプリングされた石炭灰について蛍光X線法により砒素濃度を分析するとともに、公定法(EPA Method 3051)により砒素濃度を分析した。この場合、石炭の燃焼条件を表1に示す5つのユニットで実施するとともに、石炭の種類を表2に示すように10種類として実施した。また、サンプリングはそれぞれ10回ずつ行い、得られた砒素濃度の分析値を平均して平均値を算出した。
【0036】
【表1】

表1において、4コーナファイアリングは、火炉の四隅で同一高さから火炉中央の仮想円に対して接線方向にバーナを向けて燃焼を行う方式を示す。また、対向バーナは、バーナを火炉前後壁又は左右壁に設け、対向して燃焼を行う方式を示す。
【0037】
【表2】

表2において、石炭の種類の欄におけるアルファベット2文字は、石炭が採掘された地域を示す。
【0038】
そして、図1に示すように、蛍光X線法により得られた砒素濃度(ppm)の平均値と公定法により得られた砒素濃度(ppm)の平均値をグラフ上にプロットした。そして、プロットされた実施例1〜実施例10の各点に最も近い直線を最小自乗法に基づいて求めた。その結果、得られた直線の式は、y=0.7927x+2.449であった。ここで、yは公定法により得られた砒素濃度を表し、xは蛍光X線法により得られた砒素濃度を表す。なお、この直線の決定係数Rは0.9975であった。
【0039】
上記直線の傾き、すなわち比例係数は0.7927であるとともに、決定係数が1に非常に近いことから、実施例1〜10の砒素濃度の各分析値がほぼ前記直線上に位置することが示された。従って、実施例1〜10において蛍光X線法による砒素濃度の分析値から公定法による砒素濃度の分析値を精度良く推定できることが明らかになった。
【0040】
なお、前記実施形態又は実施例を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記検量線作成時における蛍光X線法による砒素濃度の分析回数、公定法による砒素濃度の分析回数或いは分析対象物としての石炭灰の蛍光X線法による砒素濃度の分析回数は、3回、5回等適宜設定することができる。
【0041】
・ 分析対象物としての石炭灰は、例えば製鉄所等で石炭を燃焼した後の石炭灰を使用することも可能である。
・ 蛍光X線法として、分析対象物としての石炭灰をベルトコンベヤ上に載せ、その石炭灰にX線を照射し、その石炭灰から発せられる蛍光X線を暗室で連続的に分析する方法を採用することも可能である。
【0042】
・ 本発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法における公定法としては、前記EPA Method 3051のフレームレス原子吸光法(FAAS)又はJIS K 0102(2008)に規定されている水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光法(水素化物発生ICP-AES)若しくは水素化物発生原子吸光法を採用することも可能である。
【0043】
・ 本発明の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法を、砒素以外の他の元素の分析に適用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰にX線を照射し、該石炭灰から発せられる蛍光X線の強度を測定する蛍光X線法により得られる砒素濃度と、石炭灰に酸を加えて加熱溶解し、得られた溶液中の砒素を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で定量する公定法により得られる砒素濃度との間で検量線を作成した後、分析対象物としての石炭灰について前記蛍光X線法により得られる砒素濃度から、前記検量線に基づいて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することを特徴とする石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。
【請求項2】
前記石炭灰は、石炭火力発電所で石炭が燃焼されて形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。
【請求項3】
前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の種類に拘わらず推定可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。
【請求項4】
前記公定法により得られる分析対象物としての石炭灰中の砒素濃度は、分析対象物としての石炭灰を形成する石炭の燃焼条件に拘わらず推定可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。
【請求項5】
前記検量線として、蛍光X線法による砒素濃度の分析値に対する公定法による砒素濃度の分析値の関係を表す直線を使用し、その直線の傾きを表す比例係数に基づいて分析対象物としての石炭灰について蛍光X線法により得られる砒素濃度分析値に前記比例係数を乗じて公定法により得られる石炭灰中の砒素濃度を推定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。
【請求項6】
前記比例係数は0.79であることを特徴とする請求項5に記載の石炭灰中における砒素濃度の簡易分析方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−104848(P2013−104848A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250917(P2011−250917)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】