説明

石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置

【課題】 共存成分の影響を受けない、高精度で、かつ長期安定性の高い、連続測定が可能な石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置を提供すること。
【解決手段】 石炭燃焼排気ガスを測定対象試料とし、酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒によって該試料中の水銀が還元された被還元ガスと、前記測定対象試料または前記試料ガスが酸化触媒によって酸化された被酸化ガスを、紫外線吸光式分析計によって比較し測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料燃焼施設、特に石炭燃焼施設からの排気ガス中の水銀測定方法および測定装置に関し、石炭燃焼排気ガス中の気化した金属酸化物および二酸化硫黄(SO)など全水銀測定に妨害を及ぼす共存成分の影響を低減した全水銀測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼排気ガス中の全金属水銀の測定装置においては、JIS K 0222に規定される、連続測定法や金アマルガムを用いる稀釈測定法を用いた固定発生源用水銀測定装置が使用されてきた。ここで、金アマルガムを用いる稀釈測定法とは、試料ガスを高温にて水銀化合物を金属水銀に還元後、稀釈して水銀を金アマルガムとして捕捉し、一定時間後高温にてアマルガム水銀を再気化させて紫外線吸光法で金属水銀を測定する冷原子吸光法である(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、昨今の用途の拡大に伴い、例えばごみ焼却炉などからの排気ガス中の水銀の測定においては、従前の方法では、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)や二酸化硫黄(SO)あるいは塩化水素(HCl)などの存在によって影響を受けることから、十分な精度を有する測定値を得ることが困難であった。現在、こうした測定方法の改善あるいは新たな測定方法の要請に対して、以下に示す種々の提案がなされている。
【0004】
具体的には、図6に示すように、汚泥や廃棄物の処理などの排ガス中に含有されているガス状全水銀の連続分析法として、必要に応じ水銀含有ガスの加熱(約230℃)を行った後、水銀含有ガスをガス状のまま加熱(約200℃)した金属(金属錫、金属亜鉛等)からなる固体の還元触媒21で処理し、水銀含有ガス中の化合物水銀(塩化物、酸化物等)を金属水銀に還元し、フレームレス原子吸光分析装置22によって測定する方法が提案された(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、図7(A)および(B)に示すように、塩化第二水銀を含有するガス中の水銀を分析する装置31として、錫の粒子32の表面に塩化第一錫の被膜33を形成してなる還元剤34を還元反応器35内に充填し、還元装置36により、前記ガスを還元反応器75を通過させて、そのとき還元剤34により塩化第二水銀中のHg2+をHgに還元し、還元されたHgを分析器(フレームレス原子吸光分析装置)37で分析する。これにより、ガス中の塩化水素ガスの濃度が低い場合でも、正しく水銀分析を行うことができる(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】JIS K 0222−1997
【特許文献1】特公平1−54655号公報
【特許文献2】特開2001−33434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の測定方法あるいは測定装置を用いて、石炭燃焼排気ガスの測定を行った場合には、共存する排気ガス中の金属酸化物(酸化セレン(SeO)等他の金属酸化物、いずれも気体)やガス成分SO、NOおよび水分の干渉影響を受け正確な測定ができなかった。
【0008】
つまり、原子吸光分析法においては、紫外領域の光吸収を利用することから、石炭燃焼排気ガスに共存する数1000ppmレベルの高濃度のSOやNOの存在によって受ける干渉影響を無視することができない。
【0009】
また、金属酸化物については、本発明者の検証によって、水銀化合物の還元処理過程において、水銀化合物と同時に還元反応が起きて、水銀とアマルガムを作り易く、測定精度を著しく低下させるとともに、水銀成分が測定できなくなることがあるとの知見を得た。特に、石炭燃焼排気ガスには、鉛(Pb)やセレン(Se)などの水銀とアマルガムを形成し易い金属の酸化物が比較的多く含まれていることから、その影響が無視できず、従前の方法では、その回避は困難であった。
【0010】
さらに、JIS K 0222に規定される金アマルガム稀釈測定法については、稀釈誤差が大きい、バッチ測定しかできない、高温還元触媒の性能劣化などの問題があった。具体的には、(a)触媒材質の高温劣化、ダスト付着、接ガス材質の腐蝕によって、水銀の再酸化が起こりやすい、(b)共存するSOが酸化しミスト化することで付着成分が発生するため酸スクラバーを設ける必要があるなど保守性が悪い、などの問題があった。
【0011】
また、上記のような要請はあるものの、石炭燃焼排ガスを対象とした稀釈法以外の抽出サンプリング方式による水銀の連続測定装置は、実質的に未開発の状況であった。
【0012】
そこで、この発明の目的は、こうした要請に対応し、共存成分の影響を受けない、高精度で、かつ長期安定性の高い、連続測定が可能な石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法であって、石炭燃焼排気ガスを測定対象試料とし、
酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒によって該試料中の水銀が還元された被還元ガスと、
前記測定対象試料または前記試料ガスが酸化触媒によって酸化された被酸化ガスを、
紫外線吸光式分析計によって比較し測定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置であって、石炭燃焼排気ガスを測定対象試料とし、
試料採取部と、
酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒が充填された還元触媒部と、
前記還元触媒部を配設した被還元ガス用流路と、
酸化触媒を充填した酸化触媒部と、
前記酸化触媒部を配設した被酸化ガス用流路と、
前記被還元ガスおよび被酸化ガス中の水銀濃度を比較し測定する紫外線吸光式分析計と、
を有することを特徴とする。
【0016】
上記のように、排気ガス中の水銀測定においては、水銀化合物を還元し原子状水銀として吸光光度法を用いて測定することによって、非常に高感度の測定が可能になる一方、石炭燃焼排気ガス中の水銀測定においては、従前にはないいくつかの課題を克服する必要があることが判った。特に、石炭燃焼排気ガス中に存在するSeOについては、還元反応時に、水銀とアマルガムを作り易いことから、測定精度を著しく低下させる大きな原因の1つであり、本発明は、この影響を排除することによって、従前の方法ではできなかった測定精度の確保を可能としたものである。
【0017】
つまり、石炭燃焼排気ガス中には、水銀がHg2+やHgの状態で存在するとともに、紫外線吸光式分析計に対して干渉影響などの測定誤差を与えるSO、NOおよび水分などの成分が共存する。本発明においては、試料中の水銀を選択的に還元して含有する全水銀をHgに変換した被還元ガスと、試料を選択的に酸化して全水銀をHg2+に変換した被酸化ガスとを用意し、
(1)紫外線吸光式分析計の紫外線吸光セル(試料セル)が単一の場合には、試料セルに被還元ガスと被酸化ガスを交互に導入し、両者の吸光量を比較する
(2)上記試料セルが複数(通常2つ)の場合には、各試料セルに被還元ガスと被酸化ガスを同時に導入し、両者の吸光量の差量を測定する
ことによって、酸化処理および還元処理によって変化しない他の共存成分の影響を受けずに測定することが可能となる。
従って、1つの試料に対し、酸化および還元を直列的あるいは並列的に行い、両者の処理の差異によって生じる試料中の水銀の状態の差異を測定することによって、石炭排ガス中の水銀測定における高い選択性・測定精度を確保することができる。
【0018】
具体的には、酸性物質との反応性の低い、還元力を有する無機材質の触媒を用いることで、石炭燃焼排気ガス中に多量含まれるSO、NOなどの酸性物質によって生じる触媒の被毒作用を排除することができる。また、こうした処理を施した試料を紫外線吸光式分析計に導入することによって、原子吸光法と同様の分析機能を確保することができ、精度の高い水銀濃度の測定が可能となる。
【0019】
ここで、「酸性物質との反応性の低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒」とは、後述するゼオライト系の触媒や、アルカリ金属の亜硫酸塩などのような無機質の化合物であって、塩化水銀(HgCL)などの2価の水銀(Hg2+)の化合物を金属(Hg)に還元する機能を有するとともに、石炭燃焼排気ガス中に多量含まれるSO、NOなどの酸性物質との反応性の低い触媒をいう。
【0020】
本発明は、上記石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法であって、前記還元触媒および酸化触媒を同一加熱部に収納し、300〜400℃条件下において使用することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置であって、前記還元触媒部と酸化触媒部を同一収容部に収納可能で、前記収容部の温度を300〜400℃に制御された加熱部を有することを特徴とする。
【0022】
上記のように、本発明は、試料中の水銀成分を酸化処理および還元処理を行うことによって、こうした処理を行っても変化しない他の共存成分の影響を受けずに測定することが可能となる。このとき、還元処理については、還元温度を300℃以上とすることで、上記のような排気ガス中に含まれるSeOなどの金属酸化物の反応によって生じる水銀とのアマルガムの発生を防止することができる。一方、水銀測定方法あるいは測定装置に限らず、試料の処理においては、できる限り低温であることが好ましく、特に石炭燃焼排気ガスにおいては、共存する硫黄酸化物が、高温条件下において腐蝕性の高い三酸化硫黄(SO)に変換するおそれがあり、試料の処理温度を極力低温にすること、具体的には500℃以下にすることによって、試料流路での腐蝕あるいは反応物による閉塞等々トラブルを未然に防止することができる。また、酸化処理については、酸化触媒を選択することによって設定温度250〜400℃で所望の触媒効率を得ることができる。
【0023】
つまり、本発明はこうした重複領域を利用したもので、還元処理および酸化処理を、触媒の使用温度を300〜400℃の範囲に設定することによって、同一条件において両触媒ともに所望の触媒効率を得ることができる。従って、還元触媒部と酸化触媒部を1つの加熱部に収納して1つの制御手段によって温度制御することによって、試料処理系の簡素およびコンパクト化を図ることが可能となる。
【0024】
本発明は、上記石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置であって、前記試料採取部と前記紫外線吸光式分析計との中間に、試料を冷却し凝縮水を発生させるとともに、該凝縮水と試料との気液接触空間を有し凝縮水を分離する冷却除湿手段を設けることを特徴とする。
【0025】
従前の還元触媒を用いた測定法においては、約200℃程度の低温条件によって還元処理を行っていた。しかしながら、こうした条件下においては、排気ガス中のSeOの存在によって、Hg−Seアマルガムの生成が進み、紫外線吸光式分析計に導入される試料中の水銀濃度が実質的に低下することが分った。特に、後述するように、石炭燃焼排ガス中に多量に存在するSOによって、Hg−Seアマルガムの生成が促進されることが分った。つまり、試料採取部、特に気液分離器や非加熱の試料導管での凝縮水の生成によって試料中のSeOが容易に溶解し、共存するSOによってSeOが還元されて元素Seが生じ、Hg−Seアマルガムの生成に関与していることが分かった。
【0026】
一方、SeOは水溶性の化合物であることから、石炭燃焼排ガス中に多量に存在する水分を利用し、発生する凝縮水(ドレン)によって溶解させることが可能である。本発明は、こうした石炭燃焼排ガス固有の組成を有効に活かしたもので、試料採取部と紫外線吸光式分析計との中間に、試料を冷却し凝縮水を発生させるとともに、該凝縮水と試料との気液接触空間とドレン分離機構を有する冷却除湿手段を設け、これにより測定系外にSeを含むドレンを排出することで、試料ガス中のSOと反応で生じる金属セレンの生成を最小限に抑えることができる。
【0027】
本発明は、上記石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置であって、前記試料採取部において、稀釈用ガスを注入して所定の比率で希釈された試料ガスを作製することを特徴とする。
【0028】
上記のように、石炭燃焼排ガス中には、測定誤差の発生原因となりうるSO、NOおよび水分などの成分が多量共存する。本発明は、こうした試料ガス中の共存成分による誤差要因を低減する方法として、試料採取部において稀釈用ガスを注入して所定の比率で希釈されて作製された試料ガスを分析計に導入して測定することにしたもので、測定対象である排気ガス中の水銀濃度が比較的高い場合あるいは分析計の検出感度が高い場合には、稀釈用ガスとして使用する例えば乾燥空気などが試料との間で特殊な反応を生じるものではないことから、非常に精度の高い測定装置の供給が可能となった。具体的には、計装空気のように乾燥した空気を使用し、試料中の各成分の濃度が減少させることによって、除湿手段が不要となり、還元触媒部の負荷を軽減するとともに、アマルガムの発生などの大幅に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、従来困難であった石炭燃料排気ガス中の共存成分の影響を受けない高精度で、かつ長期安定性の高い、連続測定が可能な石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置を提供することが可能となった。
【0030】
特に、還元触媒部と酸化触媒部を組合せ、各処理ガスを比較測定することによって、より一層共存成分の影響を受けない、精度の高い測定が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置は、石炭燃焼排気ガスを測定対象とし、(1)試料採取部と、(2)酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒が充填された還元触媒部と、(3)還元触媒部を配設した被還元ガス用流路と、(4)酸化触媒を充填した酸化触媒部と、(5)酸化触媒部を配設した被酸化ガス用流路と、(6)被還元ガスおよび被酸化ガス中の水銀濃度を比較し還元された試料中の水銀濃度を測定する紫外線吸光式分析計と、を有することを特徴とする。
【0032】
<本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の基本的な構成>
本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の基本的な構成を、図1に例示する(第1構成例)。石炭燃焼排気ガスが流通するダクト(以下「ダクト」という。)1に設けられた試料採取部2において吸引された試料が、その直後に設けられた還元触媒部3によって還元された状態で、加熱導管4、冷却除湿手段(冷却除湿器)5、吸引ポンプ6を介して二分され、一方が直接紫外線吸光式分析計7に導入され、他方が酸化触媒部10を介して紫外線吸光式分析計7に導入される。さらに、紫外線吸光式分析計7の校正用ガスとして、精製空気をそのまま使用するゼロガス、および精製空気を利用し水銀発生手段8によって作製されるスパンガスが、切換弁9zおよび9sを介して、直接および酸化触媒部10を介して紫外線吸光式分析計7に導入できる構成を有している。
【0033】
本構成例においては、金属水銀(Hg)を測定する紫外線吸光式分析計に、試料中の水銀を選択的に還元して含有する全水銀をHgに変換した被還元ガスと、試料を選択的に酸化して全水銀をHg2+に変換した被酸化ガスを導入し、両者の吸光量の差量を測定することによって、試料中の全水銀の濃度を共存成分の影響を殆ど受けずに測定することができる。特に、酸化処理および還元処理によって変化しない共存成分については、全く影響を受けずに測定することが可能となる。
【0034】
石炭燃焼においては、一般に、表1に例示するような組成を有する石炭を燃焼させることから、通常、表2に例示するような組成や性状を有する排気ガス(微量元素を含む)が発生する。このとき、排気ガス中に存在するHgは総量として、表2に例示するように、他の微量元素の1/10〜1/100程度の微量である場合が多い。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
試料採取部2は、試料採取管2aおよび1次フィルタ2bからなり、ダクト1に挿入された試料採取管2aから試料を吸引採取し、1次フィルタ2bによって除塵する。上記のように、ダクト内は、約300〜400℃程度の高温状態であることから、多くの場合、試料をそのまま採取することによって、試料採取部2の温度は200℃以上の高温を維持することができる。この場合、試料採取部2に別途加熱手段を設ける必要がないが、冬季や寒冷地などの補完あるいは後段の還元触媒部3の予備加熱として加熱手段を設けることが好ましい。除塵された試料は、還元触媒部3に導入される。還元触媒部3は、試料採取部2に取り付けられるが、ダクト内の高温を利用すべく、試料採取部2と不可分一体とすることも可能である。
【0038】
還元触媒部3は、内部に還元触媒を充填したユニットで、還元触媒は、加熱手段(図示せず)によって中温度域300〜500℃に維持されることが好ましい。つまり、通常、石炭燃焼排気ガス中の水銀は、HgOやHgClあるいはHgの状態で存在するが、Hg2+をHgに還元するには、熱分解反応が不可欠であり、還元温度を300℃以上とすることで、排気ガス中に含まれるSeOなどの金属酸化物の反応によって生じる水銀とのアマルガムの発生を防止することができる。一方、還元温度を500℃以下にすることによって、試料流路での腐蝕あるいは反応物による閉塞等々トラブルを未然に防止することができる。
【0039】
還元触媒部3に充填される還元触媒は、酸性物質との反応性の低い、還元力を有する無機材質の触媒が好ましい。本発明においては、還元触媒に対して塩化水銀などの2価の水銀(Hg2+)の化合物を金属(Hg)に還元する機能を有することが求められるとともに、他の共存成分に対して影響を受けにくいこと、および他の共存成分に対して影響を与えないこと、つまり2価の水銀に対する選択性を有することが求められる。本発明者の検証によって、還元触媒は、酸性物質との反応性の低い、無機材質の触媒が好ましいとの知見を得た。
【0040】
(1)酸性物質との反応性の低い触媒
SO、NO、塩素化合物などの酸性物質は、石炭燃焼排気ガス中に多量含まれることから、還元触媒がSO、NOなどの還元作用を有すると、実質的にHg2+の還元機能の低下を招来することになる。また、例えば無機炭酸塩のような触媒にあっては、炭酸塩を構成する基部が硫酸塩やハロゲン化物あるいは硝酸塩に置換する反応が徐々に進捗し、長期的な使用において酸性物質による触媒の被毒作用は著しくなり還元反応特性が低下するためである。
検証過程において判明した具体的な指標としては、(水溶液中の)イオン解離定数(pKa)を挙げることができ、pKa≦5が好ましい。表3に示すように、代表的な化合物の酸解離定数との関係からpKaが5を越えると、上記反応が生じやすいとの知見を得たものである。
【0041】
【表3】

【0042】
(2)無機材質の触媒
Hg2+をHgに還元するには、熱分解反応とともに、それに伴う遊離酸素あるいは遊離塩素などの再結合を防止することが必要となる。つまり、還元触媒としての活性度を上げるには、触媒表面において酸素や塩素などとの結合を形成あるいは介在する物質が必要となる。広く無機材質を用いることによって、こうした機能を満たすことができるとともに、300〜500℃という高温条件下においても安定した特性を維持することが可能となる。なお、無機材質の触媒とは、触媒自体が同質の無機材質によって構成される必要はなく、触媒表面に触媒活性の高い無機材質が存在する構成において十分機能する。
【0043】
(3)触媒の具体例
検証の結果、具体的には、ゼオライト系の触媒や、アルカリ金属の亜硫酸塩などのような、無機質の化合物が適用可能であることが分った。還元作用については、炭酸塩や水酸塩なども適用可能であるが、石炭燃焼排気ガス中に多量含まれるSO、NOなどの酸性物質の共存によって、機能的には、こうした触媒に限定されることになる。
【0044】
還元触媒の形状は、特に限定されるものではないが、還元触媒部3への充填や交換が容易で圧力損失の少ない粒状体あるいはハニカム形状などが好ましい。このとき、触媒自身がこうした形状に成形されたものだけではなく、こうした形状を担体として表面に担持された触媒であっても適用可能である。
【0045】
冷却除湿器5としては、図2に例示するように、高速冷却が可能な構造を有することが好ましい。つまり、石炭燃焼排気ガス中には多量の水分が含まれることから、ドレンの発生量も多く、効率的な熱交換が可能で、気液接触が可能な所定の距離を有し、かつドレンの分離を的確に行うことができる構造を有することが好ましい。具体的には、図2のように、加熱導管4と接続された試料導入部51から、試料を導入し、コイル状の冷却部52において水分を凝縮させてドレンを発生させるとともに、試料とドレンの接触効率を高めることによって水溶性の金属酸化物をドレンに溶解させる。冷却部52で発生したドレンは、ドレンポット53を経由して、溶解した金属酸化物とともにドレン排出口54から自重落下あるいは吸引ポンプ(図示せず)によって排出される。一方、ドレンポット53の側面には別途供出流路55が設けられ、水分および金属酸化物などが除去された試料を取り出すことができる。
【0046】
また、冷却除湿器5は、試料採取部1と紫外線吸光式分析計7との中間に設けられ、試料を冷却し凝縮水(ドレン)を発生させる冷却機能およびドレン分離機能を有するとともに、発生したドレンと試料との気液接触が可能な空間を有することが好ましい。石炭燃焼排ガス中に多量に存在する水分を利用し、発生するドレンにより共存する酸化セレンなどの水溶性の化合物を溶解し除去することによって、Hg−Seアマルガムなどの生成による誤差要因を排除することができる。
【0047】
以下、図2に例示した冷却除湿器5における金属酸化物の凝縮水への溶解のメカニズムについて、SeOを具体例として説明する。つまり、冷却除湿器5において、上記の機能がなかった場合には、
(1)下式1のように、SeOは水溶性で、HSeOとなる。検証の結果、この反応は極めて速やかに進行することが分かった。
【0048】
SeO + HO → HSeO ・・(式1)。
【0049】
(2)生成したHSeOは、下式2のように、排気ガス中に多量に共存するSOによって還元され、金属Seとなる。検証の結果、この反応は比較的緩やかに進行し、SeOが水に溶解した直後には生成しないことが分かった。実験では、HSeO水溶液に所定濃度のSOガスを導入した場合、黄色〜橙色をなり、次第に濃橙色の沈殿(Se)が生成することによって検証した。
発生した金属Seは水に不溶であり、配管内壁他に赤色の粉末状となって析出し水銀と容易にアマルガムを生成する。
【0050】
SeO + 2SO + HO → Se + 2HSO ・・(式2)。
【0051】
(3)このとき、ドレンをドレン分離機構により外部に排出することで、試料ガス中のSOと反応で生じる金属Seの生成を最小限に抑えることができる。
【0052】
また、一般には、全水銀をHg2+に変換する酸化触媒部10は、250〜400℃程度に加熱する必要があることから、試料処理系の負荷の面では、図2のように、冷却除湿手段5の下流側に設けることが好ましい。
【0053】
酸化触媒部10には、種々の酸化触媒が使用可能であるが、排ガス中に共存するSOの酸化反応性の低い触媒および使用温度が低温であることが好ましい。表4に、本発明の使用に適した酸化触媒を、その使用温度条件と合せて例示する。
【0054】
【表4】

【0055】
紫外線吸光式分析計7は、一般に図3(A)に例示するように、紫外線光源部71、試料セル部72、紫外線検出器73および光学フィルタ74からなる光学系を形成し、試料セル部72に導入された試料中の測定成分による紫外領域の光の吸収量を紫外線検出器73によって検出することによって、試料中の測定成分の濃度を測定することができる。
【0056】
このとき、紫外線吸光式分析計7としては、図3(A)のように、紫外線吸光式分析計7の試料セル72が単一の場合には、試料セル72に被還元ガスと被酸化ガスを交互に導入し、両者の吸光量を比較する。
2つ以上の試料を比較し測定する場合は通常、図3(A)に示すように、試料セル部72を1つの試料セル72aによって構成するタイプが用いられ、切換弁76によって試料ガスと基準ガスを切換えて測定する方法が採られる。このとき、測定方法としては、流路切換式といわゆる流体変調式とよばれる2つの測定方法をあげることができる。
【0057】
流路切換式とよばれる測定方法においては、切換弁76を一定の時間間隔で所定時間駆動して基準ガス(測定成分ゼロ)と試料ガスを順次に試料セル72aに導入し、そのときの測定値をホールドし、各ガス中の成分濃度あるいは両者の差を得ることができる。
【0058】
また、流体変調式とよばれる測定方法においては、切換弁76を一定の変調周期で駆動して基準ガス(測定成分ゼロ)と試料ガスを一定周期で交互に試料セル72aに導入し、その変調周期の交流信号を取り出すことで、直接試料ガス中の成分濃度を得ることができる。紫外線検出器73のゼロ点が、試料ガス中の測定成分がゼロの状態の測定値であることから、理論的にゼロ点の変動がない点非常に優れた特性を有している。また、この測定方法は基準ガスに代えて異なる試料を導入することによって、2つの試料の差量を連続的にかつゼロ点の変動しない安定した測定が可能となる。
【0059】
一方、図3(B)のように、2つの試料セル72aおよび72bを有する場合には、各試料セル72aおよび72bに被還元ガスと被酸化ガスを同時に導入し、両者の吸光量の差量を測定する。つまり試料セル部72を2つの試料セル72aおよび72bで構成し、各々に異なる試料ガスaと試料ガスbを導入し、両者の吸収量の差を検出することができることから、2つの試料の差量を直接測定する場合に用いられる。
【0060】
紫外線光源部71としては、一般に、低圧水銀ランプ、重水素ランプ、キセノンランプ等が使用される。実用性またはコスト面からは低圧水銀ランプが多く使用されている。また、変調可能な光源として測定装置に用いられる場合には、印加電流の調整が容易で応答の速い重水素ランプやキセノンランプが好適である。また、紫外線光源部71を一定周期でON−OFFを繰り返す、いわゆる「変調」手段を採ることも可能である。試料セル72aまたは72bは、通常、加工性および強度面を考慮して石英やガラス或いはステンレス鋼やアルミニウムといった金属管を使用することが多い。形状は、測定成分の濃度に合わせてセル長が決定され、1〜500mm程度の円筒形が一般的であるが、内面にミラーを設けて多重反射を利用した実質長光路セルなども多く利用されている。
水銀測定に利用される紫外線は、他の共存成分の吸収が少ない254nm近傍の波長域を利用する。通常、試料セル72aまたは72bと紫外線検出器73の境界に、光学結晶とともに上記波長域を選択的透過するバンドパスフィルタ(BPF)と呼ばれる光学フィルタ74が設けられ、試料から検出器を保護する役割をも果たしている。
【0061】
紫外線検出器73としては、光電子倍増管やシリコンフォトセル或いはシリコンフォトダイオードが使用可能であるが、光電子増倍管は一般に高感度であるが高価であり、昨今はフォトセルやフォトダイオードが多く用いられている。
【0062】
<本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の他の構成例>
上記第1構成例において、還元触媒部3、冷却除湿器5、酸化触媒部10および紫外線吸光式分析計7の関係は、図4(A)のように配置となる。同様の関係を、本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の他の構成例(第2構成例)について、図4(B)および(C)に例示する。
【0063】
つまり、測定系を構成する還元触媒部3および酸化触媒部10の配設には種々の方法があり、試料の性状や測定装置の仕様によって、直列方式、リターン式、並列式などを選択することができる。1つの試料に対し還元触媒部3および酸化触媒部10を直列的あるいは並列的に配設し、両者の処理の差異によって生じる試料中の水銀の状態の差異を測定することによって、石炭排ガス中の水銀測定における高い選択性・測定精度を確保することができる。
【0064】
具体的には、図4(B)および(C)に示すように、試料採取部(図示せず)において吸引された試料が、その直後に設けられた還元触媒部3によって還元された状態で、冷却除湿器5を介して紫外線吸光式分析計7に導入される被還元ガス流路を構成する。と同時に、図4(A)では、冷却除湿器5の下流で分岐された流路に、酸化触媒部10が配設された被酸化ガス流路を構成する一方、図4(B)では、紫外線吸光式分析計7の下流で分岐された流路に、酸化触媒部10が配設された被酸化ガス流路を構成する。図4(C)では、還元触媒部3の上流において分岐された流路に、酸化触媒部10が配設され、冷却除湿器5を介して紫外線吸光式分析計7に導入される被酸化ガス流路を構成する。
【0065】
また、このとき酸化触媒部10および還元触媒部3に用いる各触媒の動作温度は、各々の触媒効率が十二分に発揮できる温度範囲300〜400℃において使用できるので、酸化触媒部10および還元触媒部3を同一加熱部に収納することができる。その結果、加熱手段を一体化することができ、かつ温度制御もシンプルとなる。具体的には、後述するように、酸化触媒部10に用いる触媒として白金(Pt)系触媒やパラジウム(Pd)系触媒あるいは五酸化バナジウム(V)などを用いることによって、還元触媒部3と同一の動作温度条件において95〜100%の変換効率を有することを確認している。
【0066】
以下、被還元ガス流路および被酸化ガス流路に必ず所定流量(L)以上の試料を連続的に導入することを条件として、各方式を比較し説明する。
【0067】
(A)図4(A)に示す直列方式は、還元触媒部3に流量2Lの試料が流れ、酸化触媒部10に流量Lの試料が流れることから、測定系の応答速度および被還元ガスと被酸化ガスの同時性の面において優れる一方、還元触媒部3および冷却除湿手段5の負荷が大きくなる。試料中の水銀や水分の量が比較的少なく試料条件、あるいは応答性および測定精度が求められる測定装置などに適用することが好ましい。さらに、長期連続測定時においても新しいドレンによる流出構造のためSeやHSeOが滞留することがなくなり、配管系の洗浄作業などのメンテナンス作業も軽減することができる。
【0068】
(B)図4(B)に示すリターン式は、還元触媒部3および酸化触媒部10に流量Lの試料が流れることから、両手段および冷却除湿手段5の負荷が少ない反面、測定系の応答速度および被還元ガスと被酸化ガスの同時性の面において、他の方式に比較して劣る。試料中の水銀成分が比較的安定で水分の量が比較的多い試料条件、あるいは高速応答性を必要とされない測定装置などに適用することが好ましい。
【0069】
(C)図4(C)に示す並列方式は、還元触媒部3および酸化触媒部10に流量Lの試料が流れることから、両手段の負荷が少なく測定系の応答速度および被還元ガスと被酸化ガスの同時性の面において優れる。特に、両手段を試料採取部に近く配設することによって、下流側での被還元ガス流路および被酸化ガス流路の処理を共通化することが可能となる。一方、両手段の下流側において、2つの流路に各々の試料処理手段(ダストフィルタや吸引ポンプなど)を配設する必要があり、冷却除湿手段5については並列流路に対応し略均等に冷却除湿できる機能が必要となる。試料条件については限定されず、あるいは応答性および測定精度が求められる測定装置などに適用することが好ましい。
【0070】
<本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の他の構成例>
さらに、本発明に係る石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置の構成例として、試料採取部において、稀釈用ガスを注入して所定の比率で希釈された試料ガスを作製し、低濃度の水銀を測定する装置を、図5に例示する(第3構成例)。
【0071】
本構成例においては、試料を採取した直後に稀釈用ガスを注入し、所定の比率で希釈されて作製された試料ガスを分析計に導入して測定する方法が採られる。これによって、試料ガス中の共存成分による誤差要因を低減することができる。特に、測定対象である排気ガス中の水銀濃度が比較的高い場合あるいは分析計の検出感度が高い場合には、稀釈用ガスとして使用する例えば乾燥空気などが試料との間で特殊な反応を生じるものではないことから、非常に精度の高い測定装置の供給が可能となった。稀釈用ガスとしては、水分など誤差要因となる共存成分がない清浄ガスが好ましく、例えば、入手が容易で、かつ所定の圧力を有する計装空気や精製空気あるいは計装窒素などが好ましい。
【0072】
具体的には、図5に示すように、ダクト1に設けられた試料採取部2から吸引され、一次フィルタ2bによって除塵された試料が、稀釈ユニット11において稀釈用空気と混合され、所定の比率で稀釈された後、二次フィルタ12、還元触媒部3、吸引ポンプ6を介して二分され、一方が直接紫外線吸光式分析計7に導入され、他方が酸化触媒部10を介して紫外線吸光式分析計7に導入される。稀釈用ガスの供給は切換弁9d、校正ガスの供給は切換弁9zおよび9sによって制御される。試料採取部2から一次フィルタ2bおよび稀釈ユニット11の試料導入口までは、水分の凝縮しない温度に加熱・保温することが好ましい。
【0073】
このとき、稀釈比率は、試料の性状によって調整することが好ましく、石炭燃焼排気ガスを対象とする場合、水分や金属酸化物などの影響を排除して測定精度を維持するためには2〜100倍が好ましく、さらに、水銀の低濃度化に伴う紫外線吸光式分析計7の測定精度を考慮し20〜30倍がより好ましい。こうした稀釈比を選択することによって、試料中の共存成分の濃度が減少させることができ、除湿手段が不要となり、還元触媒部3の負荷を軽減するとともに、アマルガムの発生などの大幅に低減することが可能となる。また、稀釈ユニット11より下流については、下記の稀釈条件を確保することによって導管の加熱や保温は不要となる。さらに、紫外線吸光式分析計7の校正用ガスとして、稀釈用空気をそのままゼロガスとして使用し、水銀発生手段8によって作製されるスパンガスのベースガスとして使用することによって、校正精度の向上も図ることが可能となる。
【0074】
なお、共存成分の影響を排除する面からは上記の稀釈方法を適用することが好ましい一方、試料中の水銀濃度が低く測定精度の確保が難しい場合には、図5に示すように、紫外線吸光式分析計7の上流に水銀濃縮器13を設ける構成を採ることも可能である。具体的には、稀釈後の試料に対して、JIS K 0222に規定される「金アマルガムを用いる稀釈測定法」を適用するものである。金粒子あるいはネット状の金を充填した水銀濃縮器13に、稀釈された試料が一定時間導入され、試料中の水銀を金アマルガムとして捕捉する。一定時間経過後、高温加熱した水銀濃縮器13に精製空気を導入し、その空気を紫外線吸光式分析計7に導入することによって、アマルガム水銀を再気化させて濃縮された状態で測定することが可能となる。従って、試料中の水銀濃度が低い場合であっても、測定精度を十分確保することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上においては、本発明を、主として石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法および測定装置に適用する場合について述べたが、プロセスガス等において組成が類似する試料や各種プロセス研究用などについても、本水銀測定方法および測定装置を適用することが可能である。さらにSOや金属酸化物などが共存する試料を測定する場合には、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る水銀測定装置の基本的な構成を示す説明図。
【図2】本発明に係る試料処理系に用いる冷却除湿器を概略的に示す説明図。
【図3】本発明に係る紫外線吸光式分析計の構成例を示す説明図。
【図4】本発明に係る水銀測定装置の第2構成例を示す説明図。
【図5】本発明に係る水銀測定装置の第3構成例を示す説明図。
【図6】従来技術に係る分析装置の構成を概略的に示す説明図
【図7】従来技術に係る分析装置の構成を概略的に示す説明図
【符号の説明】
【0077】
2 試料採取部
3 還元触媒部
4 加熱導管
5 冷却除湿器
6 吸引ポンプ
7 紫外線吸光式分析計
10 酸化触媒部
11 稀釈ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭燃焼排気ガスを測定対象試料とし、
酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒によって該試料中の水銀が還元された被還元ガスと、
前記測定対象試料または前記試料ガスが酸化触媒によって酸化された被酸化ガスを、
紫外線吸光式分析計によって比較し測定することを特徴とする石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法。
【請求項2】
前記還元触媒および酸化触媒を同一加熱部に収納し、300〜400℃条件下において使用することを特徴とする請求項1記載の石炭燃焼排気ガス中の水銀測定方法。
【請求項3】
石炭燃焼排気ガスを測定対象試料とし、
試料採取部と、
酸性物質との反応性が低く、かつ水銀に対する還元力を有する無機材質の触媒が充填された還元触媒部と、
前記還元触媒部を配設した被還元ガス用流路と、
酸化触媒を充填した酸化触媒部と、
前記酸化触媒部を配設した被酸化ガス用流路と、
前記被還元ガスおよび被酸化ガス中の水銀濃度を比較し測定する紫外線吸光式分析計と、
を有することを特徴とする石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置。
【請求項4】
前記還元触媒部と酸化触媒部を同一収容部に収納可能で、前記収容部の温度を300〜400℃に制御された加熱部を有することを特徴とする請求項3記載の石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置。
【請求項5】
前記試料採取部と前記紫外線吸光式分析計との中間に、試料を冷却し凝縮水を発生させるとともに、該凝縮水と試料との気液接触空間を有し凝縮水を分離する冷却除湿手段を設けることを特徴とする請求項3または4記載の石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置。
【請求項6】
前記試料採取部において、稀釈用ガスを注入して所定の比率で希釈された試料ガスを作製することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の石炭燃焼排気ガス中の水銀測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−271460(P2007−271460A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97591(P2006−97591)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】