説明

石炭粒子の回収処理システム

【課題】構造が簡略で、コストをさらに削減した石炭粒子の回収処理システムを提供する。
【解決手段】石炭を搬送する搬送ベルト10と、搬送ベルト10に残留する石炭の粒子を水洗により除去する洗浄装置20と、搬送ベルト10を洗浄した排水をタンク30に導入する回収パイプ51と、タンク30の上部から洗浄装置20に連通し、洗浄装置20にタンク30の上澄み水を供給する供給パイプ52と、タンク30から貯炭場40へと連通し、貯炭場40へタンク30内の下部の水を散水する散水パイプ53とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を搬送する搬送ベルトに残留した石炭粒子を回収処理する石炭粒子の回収処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を搬送する搬送ベルトには、石炭搬送後に石炭粒子が残留するが、この搬送ベルトを洗浄することなくそのまま連続使用すると石炭粒子により摩擦でローラが損傷するという問題がある。このため、搬送ベルトには、通常搬送ベルトを洗浄して石炭粒子を除去する洗浄装置が隣接して設置されている。
【0003】
図3に従来の搬送ベルトに残留した石炭粒子を回収処理する、石炭粒子の回収処理システムを概念的に示す。
【0004】
この回収処理システムでは、まず、洗浄装置20から搬送ベルト10に洗浄水が供給されて、搬送ベルト10の石炭粒子が水洗により除去される。
【0005】
搬送ベルト10を洗浄した後の石炭粒子を含有する排水は、回収パイプ51を介して一旦タンク30Aに回収され、石炭回収装置90へと送られる。石炭回収装置90では、排水に凝固剤を添加して排水中の石炭粒子を除去する。凝固剤により凝固した石炭粒子は泥炭となり、石炭回収装置90から排出される。なお、排出された泥炭90Aはバキュームカー110により屋外に設けられた貯炭場40へと運ばれる。
【0006】
そして、石炭粒子が除去された排水はタンク30Bに回収貯蔵され、搬送ベルト10を洗浄する際に供給パイプ52を介して洗浄装置20へと供給され、洗浄水として再利用される。
【0007】
一方、貯炭場に集められた泥炭(石炭)は、自然発火しないように大量の工業用水を撒いたり、一定の頻度で石炭をブルドーザー等により掘り返したりして管理され、一定量以上になるとボイラ等に投入する石炭として有効利用されている。
【0008】
このように従来の石炭粒子の回収処理システムでは有効に資源を利用する工夫がされている。しかしながら、システムが複雑であったり、石炭を運ぶ搬送費用が石炭粒子の回収処理システムのランニングコストをあげる原因となっていたりと問題があった。
【0009】
なお、従来技術としては以下に示す特許文献が挙げられる。
【0010】
【特許文献1】特開平09−85255号公報
【特許文献2】特開2002−66534号公報
【特許文献3】特開2005−337644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、構造が簡略で、コストをさらに削減した石炭粒子の回収処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、石炭を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに残留する石炭の粒子を水洗により除去する洗浄装置と、前記搬送ベルトを洗浄した排水をタンクに回収する回収パイプと、前記タンクの上部から前記洗浄装置に連通し、前記洗浄装置に前記タンクの上澄み水を供給する供給パイプと、前記タンクから貯炭場へと連通し、前記貯炭場へ前記タンク内の下部の水を散水する散水パイプと、を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システムにある。
【0013】
かかる第1の態様では、搬送ベルトの洗浄に用いた水を回収してタンク内に貯蔵し、搬送ベルトの洗浄水及び貯炭場への散水用の水として再利用することで、洗浄水及び散水用の水のコストが削減できる。また、タンク内の下部の水を直接貯炭場に散水して石炭の粒子を水と共に排出するという構成に簡略化したことで、石炭回収装置、凝固剤、バキュームカー等が不要となり、タンクの数を減らすこともでき、コストが削減できる。さらに、石炭粒子の貯炭場への搬送費用、貯炭場の管理費用も削減できる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の石炭粒子の回収処理システムにおいて、前記タンク内の前記回収パイプとの連通部より上部に石炭粒子の通過を防止するフィルタを具備していることを特徴とする石炭粒子の回収処理システムにある。
【0015】
かかる第2の態様では、タンク内にフィルタを具備しているので、石炭を含有しない上澄み水を常時洗浄装置に供給することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記タンク内において前記供給パイプより上部の第1の設定位置に水面が到達したことを検知する第1の水面センサと、前記タンク内において前記供給パイプよりも上部で且つ前記第1の設定位置よりも下部の第2の設定位置に水面が到達したことを検知する第2の水面センサと、導入パイプを介して前記タンク内に水を供給する水供給設備と、前記第2の水面センサが第2の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記水供給設備を稼働させ、前記第1の水面センサが第1の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記水供給設備の稼働を停止させる水供給設備制御装置と、を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システムにある。
【0017】
かかる第3の態様では、タンク内の水位が第2の設定位置より下部になるとタンクに水が供給されるので、供給パイプより上部にタンク内の水を保つことができ、洗浄装置に供給する水を確保することができる。また、タンク内の水位が第1の設定位置まで到達すると水の供給が停止するので、タンク内の水が許容量を超えてしまう虞がない。
【0018】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の石炭粒子の回収処理システムにおいて、前記タンク内において前記供給パイプより下部で且つ前記散水パイプより上部の第3の設定位置に水面が到達したことを検出する第3の水面センサと、前記散水パイプに取り付けられた開閉自在な自動弁と、前記第3の水面センサが第3の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記第2の水面センサが第2の設定位置に水面が到達するのを検知するまで自動弁を閉じるように制御する自動弁制御装置と、を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システムにある。
【0019】
かかる第4の態様では、散水パイプより上部にタンク内の水位を保つことができるので、タンク内の水が枯渇する虞がなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、石炭を搬送する搬送ベルトの石炭粒子を低コストで回収処理することができる石炭粒子の回収処理システムとなる。また、石炭粒子の回収処理システムを構築する初期費用が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態の説明は例示であり、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0022】
(実施形態)
図1は本実施形態の石炭粒子の回収処理システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、石炭を搬送する搬送ベルト10には、搬送ベルト10を洗浄する洗浄装置20が隣接するように設置されている。また、搬送ベルト10には、洗浄装置20から排出された水を回収する回収パイプ51が設置されており、回収パイプ51はタンク30へと連通している。
【0023】
タンク30の上部には、洗浄装置20へと連通している供給パイプ52、タンク30の下部には、貯炭場40へと連通している散水パイプ53が設けられている。さらに、タンク30の上部には、水供給設備80から連通している導入パイプ54も設置されている。
【0024】
供給パイプ52には開閉自在な自動弁62、及び洗浄装置20に水を供給するためのポンプ72が設けられている。また、散水パイプ53には開閉自在な自動弁63、及び水を貯炭場40へと供給するためのポンプ73が設けられている。自動弁62及び自動弁63は、それぞれ、タンク30から洗浄装置20に水を供給する際、又は貯炭場40に水を排出する際に開く。
【0025】
図2を用いてタンク30の内部について説明する。同図はタンク30内部の概略を示す図である。
【0026】
タンク30には、上部に供給パイプ52、供給パイプ52より下部に回収パイプ51、回収パイプ51よりさらに下部に散水パイプ53が設置されている。タンク30の供給パイプ52との連結部より下部で、且つ回収パイプ51との連結部より上部にフィルタ33が設けられている。このフィルタ33は、石炭粒子の通過を防止するようにタンク30内に配設されたメッシュ状の部材である。
【0027】
また、タンク30内部には、供給パイプ52より上部の第1の設定位置に第1の水面センサ36、供給パイプ52よりも上部で且つ第1の水面センサ36よりも下部に第2の水面センサ37、供給パイプ52より下部で且つ散水パイプ53より上部に第3の水面センサ38が設置されている。第1の水面センサ36は、タンク30内の水面100(以下水面100とする)が第1の設定位置に到達したことを検知するためのもの、第2の水面センサ37は、水面100が第2の設定位置に到達したことを検知するためのもの、第3の水面センサ38は、水面100が第3の設定位置に到達したことを検知するためのものである。
【0028】
本実施形態の石炭粒子の回収処理システムの一連の動作について説明する。
【0029】
まず、洗浄装置20から洗浄水が供給されて搬送ベルト10が洗浄される、すなわち、搬送ベルト10に残留した石炭粒子が水洗により除去される。
【0030】
搬送ベルト10洗浄後の石炭粒子を含有する水は排水として回収パイプ51を通過してタンク30へと回収される。排水は石炭粒子と水とが混濁した状態でタンク30に回収されるが、時間の経過と共に石炭粒子が沈殿し、タンク30内の水は下部へいくほど石炭粒子の濃度が高くなり、上部は石炭粒子がほとんど存在しない状態(以下、上澄み水)となる。本実施形態では、タンク30内にフィルタ33を設けており、石炭粒子を含有する排水はフィルタ33より下部に設けられた回収パイプ51からタンク30内に導入され、水のみがフィルタ33より上部へと移動する。このため、タンク内30のフィルタ33より上部の水は石炭粒子が存在しない水、フィルタ33より下部の水は排水よりも石炭粒子の濃度が高い水となる。
【0031】
搬送ベルト10を洗浄する際には、供給パイプ52に設けられた自動弁62を開いてポンプ72を稼働させることで、タンク30内の上澄み水が供給パイプ52を介して洗浄装置20へと供給され、洗浄装置20から搬送ベルト10へと洗浄水が供給される。
【0032】
貯炭場40へ散水する際には、散水パイプ53に設けられた自動弁63を開いてポンプ73を稼働させることで、タンク30内のフィルタ33より下部の水が貯炭場40へと散水される。
【0033】
ここで、タンク30内の水量の管理について説明する。
【0034】
タンク30内の水量が減少して第2の設定位置に水面100が到達すると、第2の水面センサ37が図示しない水供給設備制御装置に信号を送信する。第2の水面センサ37から信号を受信した水供給設備制御装置は、水供給設備80を稼働させ、水供給設備80は導入パイプ54を介してタンク30に水を供給する。
【0035】
水の供給によりタンク30内の水量が増加して第1の設定位置に水面100が到達すると、第1の水面センサ36が水供給設備制御装置に信号を送信する。第1の水面センサ36から信号を受信した水供給設備制御装置は、水供給設備80の稼働を停止させる。
【0036】
この構成により、供給パイプ52より上部にタンク30内の水を保つことができ、洗浄装置20に供給する水を確保することができる。また、タンク30内の水位が第1の設定位置まで到達すると水の供給が停止するので、タンク30内の水が許容量を超えてしまう虞がない。
【0037】
しかしながら、水供給設備80から水を導入しているにもかかわらず、第2の設定位置よりも水面100が下がってしまう場合もある。すなわち、水供給設備80からの水の供給量及び回収パイプ51を介して回収する排水の回収量よりも、貯炭場40への散水量及び洗浄装置20への水の供給量が越えてしまう場合である。水面100が第3の設定位置に到達した場合は、第3の水面センサ38が、図示しない自動弁制御装置に信号を送信する。第3の水面センサ38から信号を受信した自動弁制御装置は、自動弁63を強制閉塞する。そして、水の供給によりタンク内の水量が増加して第2の設定位置まで水面100が到達すると、第2の水面センサ37が自動弁制御装置に信号を送信する。第2の水面センサ37から信号を受信した自動弁制御装置は、自動弁63を開閉自在な状態になるように強制閉塞を解除する。
【0038】
この構成により、タンク30内の水が枯渇する虞がない。
【0039】
本発明にかかる貯炭場40への散水は、タンク30内に蓄積した石炭粒子を排出するという目的を果たすだけではなく、貯炭場40に貯蔵されている石炭が自然発火するのを防ぐことができる。従来は、石炭が自然発火するのを防ぐために、工業用水を大量に撒いたり、一定の頻度で石炭をブルドーザー等により掘り返したりする必要があったが、本発明の石炭粒子の回収処理システムでは不要である。また、石炭粒子を含有する水を直接貯炭場40へ撒くので、従来必要とされていた石炭回収装置や石炭の凝固剤も不要である。なお、貯炭場40に貯蔵された石炭粒子は、日照り等により乾燥し、一定量以上貯まったところで石炭として利用することができる。
【0040】
なお、本実施形態ではタンク30が1つの場合について説明したが、勿論、同様の機能を持つタンクを複数設けてもよい。
【0041】
フィルタ33は、石炭粒子を通過させないようなものであればよく、特に材質は限定されない。タンク30内にフィルタ33は設けなくてもよいが、フィルタ33を設けることで、洗浄装置20に水を供給する際に排水の石炭粒子が沈殿するのを待つ必要がなくなる。
【0042】
散水パイプ53の貯炭場40側の一端に、左右に稼働自在な稼働部を設けて貯炭場40全体に散水できるようにしてもよい。
【0043】
本発明の石炭粒子の回収処理システムでは、搬送ベルトを洗浄した洗浄水は、一部は再び洗浄水として用いられ、残りは石炭粒子と共に貯炭場へ排出され、貯炭場の石炭の自然発火を防止するための水として用いられる。このように、搬送ベルト洗浄後の排水を、洗浄用及び散水用の水として再利用するため、従来の石炭粒子の回収処理システムに比べて大幅に水のコストを削減できる。
【0044】
また、従来必要とされていた石炭を凝集させる凝集剤、石炭回収装置、回収した石炭(泥炭)を運搬するバキュームカー、石炭を乾燥させる乾燥プール等が必要ない。
【0045】
以上より、本発明の石炭回収システムは、従来に比べて非常にコストを削減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態の石炭粒子の回収処理システムを概念的に示す説明図である。
【図2】本実施形態のタンク内部の概略を示す図である。
【図3】従来の石炭粒子の回収処理システムを概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 搬送ベルト
20 洗浄装置
30 タンク
33 フィルタ
36 第1の水面センサ
37 第2の水面センサ
38 第3の水面センサ
40 貯炭場
51 回収パイプ
52 供給パイプ
53 散水パイプ
54 導入パイプ
62、63 自動弁
72、73 ポンプ
80 水供給設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに残留する石炭の粒子を水洗により除去する洗浄装置と、
前記搬送ベルトを洗浄した排水をタンクに回収する回収パイプと、
前記タンクの上部から前記洗浄装置に連通し、前記洗浄装置に前記タンクの上澄み水を供給する供給パイプと、
前記タンクから貯炭場へと連通し、前記貯炭場へ前記タンク内の下部の水を散水する散水パイプと、
を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の石炭粒子の回収処理システムにおいて、
前記タンク内の前記回収パイプとの連通部より上部に石炭粒子の通過を防止するフィルタを具備していることを特徴とする石炭粒子の回収処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の石炭粒子の回収処理システムにおいて、
前記タンク内において前記供給パイプより上部の第1の設定位置に水面が到達したことを検知する第1の水面センサと、
前記タンク内において前記供給パイプよりも上部で且つ前記第1の設定位置よりも下部の第2の設定位置に水面が到達したことを検知する第2の水面センサと、
導入パイプを介して前記タンク内に水を供給する水供給設備と、
前記第2の水面センサが第2の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記水供給設備を稼働させ、前記第1の水面センサが第1の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記水供給設備の稼働を停止させる水供給設備制御装置と、
を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の石炭粒子の回収処理システムにおいて、
前記タンク内において前記供給パイプより下部で且つ前記散水パイプより上部の第3の設定位置に水面が到達したことを検出する第3の水面センサと、
前記散水パイプに取り付けられた開閉自在な自動弁と、
前記第3の水面センサが第3の設定位置に水面が到達するのを検知すると前記第2の水面センサが第2の設定位置に水面が到達するのを検知するまで自動弁を閉じるように制御する自動弁制御装置と、
を具備することを特徴とする石炭粒子の回収処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−1141(P2010−1141A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162438(P2008−162438)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)