説明

石炭船および石炭・鉄鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法及びそれを用いた船舶の使用寿命を予測する方法

【課題】本発明は、石炭船・石炭および鉱石兼用船のホールド内の腐食環境を実験室的に再現した腐食試験方法を提供することを目的とする。
【解決手段】雰囲気調整室を用いた鋼材の腐食試験方法において、粒状の多孔質物質に硫酸を添加し、硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程と、前記鋼材の上に前記硫酸添加粒状多孔質物質を載置し、前記雰囲気調整室内に設置する工程と、前記雰囲気調整室の相対湿度を80〜100%の範囲で任意に選定し、かつ、温度を20℃から80℃の範囲で加熱と冷却を一定サイクルで変化させる工程と、前記鋼材の腐食量又は孔食深さを測定する工程とを有し、前記硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程において、前記硫酸が前記粒状の多孔質物質1g当たり0.01〜100mgの量であることを特徴とする石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭船、石炭・鉱石兼用船ホールドで使用される鋼材を実験室的に再現し評価することのできる石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法及びそれを用いた船舶の使用寿命を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ばら積み貨物船において、1990年代初頭に海難事故が相次ぎ国際問題となった。特に、石炭船や石炭・鉄鉱石兼用船で事故が多く報告されおり、その原因の大部分は船倉内の損傷であった。ばら積み貨物船では、積荷を直接、船倉(以下「ホールド」と言う場合もある)に積載するため、腐食性の積荷の影響を受け易く、船倉内の腐食、特に石炭船、石炭・鉄鉱石兼用船の倉内の側壁部での孔食により、局所的に強度が減少することが問題と考えられている。この孔食が著しく進行した事例や、船の強度を確保する肋骨部分の板厚が極端に減少している事例が報告されている。
【0003】
前記孔食の発生するばら積み貨物船の側壁部は、シングルハルとなっていて、積荷と海水とは鋼材一枚隔てているだけである。そのため、海水と船倉内の温度差により、船倉側壁部には結露水が生じやすく、その場所に石炭の硫黄成分が溶け出し、結露水と反応し硫酸を生成し、硫酸腐食が起こる。
【0004】
このような船倉内の腐食対策として、船倉内には変性エポキシ系塗装が被覆厚さ約150〜200μm施されている。しかし、石炭や鉄鉱石によるメカニカルダメージや積荷搬出の際の重機による傷・磨耗により、塗装が剥がされる場合が多いため、十分な防食効果は望めない。
【0005】
そこで、さらに腐食対策として定期的に再塗装や一部補修する方法が取られているが、このような方法は、非常に大きなコストがかかるため、船舶のメンテナンス費用を含め、ライフサイクルコストを低減させることが課題となっている。
【0006】
これまで、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の評価の例として、特許文献1および2の実施例に示されるように、60℃、100%RH、6時間⇒60℃で0.5%NaCl+0.1%CaCl+0.5%NaSO溶液に0.5時間浸漬⇒60℃、50%RH、17.5時間のサイクル(周期)で裸材およびスクラッチを入れた塗装材の評価が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−262555号公報
【特許文献2】特開2008−174768号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中井達郎、松下久雄、山本規雄、平成18年度日本海事協会(ClassNK)発表会、 p.25−37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1と2では、使用している溶液は0.5%NaCl+0.1%CaCl+0.5%NaSOであり、腐食を加速させる因子として非特許文献1に開示されている希硫酸環境条件とは異なり、実際の石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールドの腐食環境を模擬されているとは言えない。また、石炭船および石炭・鉱石兼用船は、ホールド内側壁部や肋骨部の孔食により局所的強度が減少し、破壊に至ることが問題と考えられている。さらに、ホールド内は、塗装が施されるが石炭や鉄鉱石によるメカニカルダメージや積荷搬出の際の重機による磨耗により、塗装が剥がされるため裸材の孔食深さの評価が必要である。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するために、石炭船・石炭および鉱石兼用船のホールド内の腐食環境を実験室的に再現した腐食試験方法を提供し、さらには船舶の寿命を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の本発明の構成により解決される。
1.雰囲気調整室を用いた鋼材の腐食試験方法において、
粒状の多孔質物質に硫酸を添加し、硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程と、
前記鋼材の上に前記硫酸添加粒状多孔質物質を載置し、前記雰囲気調整室内に設置する工程と、
前記雰囲気調整室の相対湿度を80〜100%の範囲で任意に選定し、かつ、温度を20℃から80℃の範囲で加熱及び冷却を一定サイクルで変化させる工程と、
前記鋼材の腐食量又は孔食深さを測定する工程
とを有し、前記硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程において、前記硫酸が前記粒状の多孔質物質1g当たり0.01〜100mgの量であることを特徴とする石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
2.前記粒状の多孔質物質は、活性炭であることを特徴とする1に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
3.前記粒状の多孔質物質の粒径は1〜20mmの範囲であることを特徴とする1または2に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
4.前記硫酸添加粒状多孔質物質を載置する量が前記鋼材の単位面積あたり0.1〜5g/cmであることを特徴とする1〜3のいずれか1つに記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
5.前記一定周期が1日であることを特徴とする1〜4のいずれか1つに記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
6.前記1〜5のいずれか1つに記載の腐食試験方法を用いることを特徴とする船舶の使用寿命を予測する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、石炭船・石炭および鉱石兼用船のホールド内の腐食環境を実験室的に再現しており、本発明により、石炭船・石炭および鉱石兼用船のホールド用の鋼材選定および評価への利用ができる。また、鋼材の腐食量や孔食深さの経時変化を追い、その結果を外挿することで船舶の寿命を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の腐食試験方法により形成された孔食の直径と深さの関係を示す図。
【図2】石炭船および石炭・鉱石兼用船の孔食深さの予測を示す図。
【図3】石炭船および石炭・鉱石兼用船の平均腐食厚さの予測を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
まず、本発明者らは、石炭船及び石炭・鉱石兼用船のホールド内の腐食で、船舶の破壊に最も影響を与える孔食発生のメカニズムを以下に検討した。
【0015】
ところで、ばら積み貨物船の側壁部は、シングルハルとなっていて、積荷と海水とは鋼材一枚隔てているだけである。そのため、海水と船倉内の温度差により、船倉側壁部には結露水が生じ、鋼材及び石炭表面が濡れ、石炭表面に吸着しているHSO由来の物質が水膜に滲出する。鋼材は、メニスカスを形成する石炭下で孔食が進展し、メニスカス部分では、鋼材の腐食にHが消費されていくため、H濃度が減少していく。
【0016】
一方、石炭表面にはHが多く存在するため、石炭表面とメニスカス部分でH濃度の差が生まれる。その化学ポテンシャルの差を駆動力とし、メニスカス部分に石炭表面からHが供給されると考えられる。そして、乾燥過程で未反応のHは再び石炭表面に固着し、次の結露過程で腐食反応に使用され、この過程が長期的なサイクルで起こり、メニスカス部分で腐食がより進行し、孔食が形成されていく。本発明者らは、この孔食発生のメカニズムを基に、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド内の孔食を実験室的に模擬すべく以下の条件を見出した。
【0017】
石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド内の腐食は、温度と湿度に大きく左右される。ホールド内の温度は、航路や積荷の石炭の種類によっても異なるが、日中は50〜80℃、夜間は20℃〜30℃程度となる。そこで、本発明において温度範囲を20℃〜80℃とすることが好ましく、その間で温度を任意に変動させることで結露を発生させる。
【0018】
この範囲内で試験温度の高温の温度と低温の温度を選定した。高温から低温または低温から高温の温度調整は0.3〜1.0h(時間)の時間内で調整することが望ましい。長時間の温度調整時間を採用することもできるが、温度調整は0.3〜1.0h(時間)の時間内であると、促進試験として好ましいからである。
【0019】
また、湿度は石炭の持つ水分や海水とホールド内の温度差により生じる結露水により、常に高湿潤状態となることから、80〜100%RH(ここで、RHとは相対湿度の略称である。)とした。さらに、一定のサイクルは、ホールド内環境を再現する為に、一昼夜、即ち、一日とすることが好ましい。
【0020】
次に、使用する多孔質物質に関して説明する。本発明者らは、本孔食発生のメカニズムにおいて、孔食形成にはメニスカス部分に長期的な酸の供給が必要である事を明らかにした。したがって、多孔質物質は、乾燥時には添加した硫酸を固着させ、湿潤時に硫酸をメニスカス部に供給する。多孔質物質は粒状であることが好ましく、粒状の多孔質物質を使用することで、本メカニズムの硫酸供給状況を模擬できる。ただし、多孔質物質は硫酸を添加することから、耐硫酸性を持つことが好ましい。本発明において、多孔質物質とは、細かい空孔を有する物質で、特に、その空孔容積が0.1〜10cm/gの範囲にある物質をさすものとする。ここで、空孔容積(細孔容積とも呼ばれる)は、ガス吸着法や水銀圧入法など、公知の方法により測定することができる。
【0021】
多孔質物質としたのは、硫酸を内部に吸収・含浸させるためであり、粒状としたのは実際のホールド内環境での石炭及び鉱石の状態を模擬するためである。多孔質物質は例えば多孔質セラミクッス、試薬一級珪砂、ジルコニヤ、アルミナが挙げられ、石炭、鉱石でも良い。本発明に用いられる石炭としては、活性炭が好ましい。活性炭は品質が一定で多孔性であるため試験結果が安定的に得られる。しかし、これに限られず、石炭を用いる場合は、運搬が予想される石炭の種類を適宜選定することができる。
【0022】
次に、添加する硫酸量に関して説明する。硫酸添加粒状多孔質物質とは粒状の多孔質物質に硫酸を添加して作られる。石炭はその銘柄により大きく性状が異なり、含有する硫酸根の種類及びその含有量も大きく異なってくる。たとえば、本発明者らが多孔質物質である各種の石炭に対して検討したところ、石炭1gあたり0.04〜70mgの硫酸イオンを確認した。これを、硫酸換算で表すと、多孔質物質1gあたりに0.1〜100mgの硫酸添加に相当し、本発明では、この範囲にすることが好ましい。
【0023】
さらに、腐食量、孔食深さ測定の容易さ及び得られる測定値のばらつきの観点から、多孔質物質1gあたり10mg以上の硫酸添加が好ましい。
【0024】
つぎに、雰囲気調整室の内部にこのようにして作られた硫酸添加粒状多孔質物質を鋼材の上に載置する。載置してから雰囲気調整室内に設置するのが効率的であるが、雰囲気調整室内にて硫酸添加粒状多孔質物質を鋼材の上に載置することもできる。
【0025】
さらに、つぎの工程では、雰囲気調整室の内部の相対湿度を高湿潤一定で温度を変化させる。この場合、温度上昇時に結露が起こる。これは鋼材温度が雰囲気調整室の温度上昇に遅れて追随していくため、鋼材と雰囲気調整室の間に温度差が生じるためである。この温度差は鋼材に載置する硫酸添加粒状多孔質物質の種類又は状態により変わり、これによって結露量が変わってくる。また、硫酸添加粒状多孔質物質の量が変化すると鋼材に供給される希硫酸も変化する。したがって、硫酸添加粒状多孔質物質の量により腐食量、孔食進展の度合いも異なってくる。そこで、より正確な腐食量と孔食深さの評価の観点から、硫酸添加粒状多孔質物質を載置する量を鋼材単位面積あたり0.1〜5g/cmとすることが好ましい。この範囲では、腐食量、孔食進展の度合いを再現性よく確認することができるからである。
【0026】
また、本腐食メカニズムでは、実船の孔食は、石炭及び石炭・鉱石が鋼材に接触し、そこに溜まる結露水により形成されるメニスカス部分に石炭由来の硫酸が濃縮することにより発生する。そのため、形成される孔食は石炭の粒径により、形状が異なる。一方、また、非特許文献1によると、ホールド側壁部の孔食は、その大きさに因らず、孔食直径と深さのアスペクト比が、8:1〜10:1になると報告されている。ちなみに、タンカーの孔食は、孔食直径と深さの比は4:1となる。このことから、本腐食試験方法が実船の孔食を再現しているかの判断基準を孔食直径と深さのアスペクト比が、8:1〜10:1となることとした。ここで、測定は試験片上に現れる全ての孔食を対象とし、孔食の直径はデプスメーター(Mitutoyo製:Model No.CD−15C)によって測定し、長径と短径の平均を測定することにより行った。また、孔食の深さはデプスメーター(TECLOCK製:DMD−215)によって測定した。
【0027】
ここでは、この形状の孔食を形成させるために、粒状の多孔質物質の粒径を1〜20mmとすることが好ましい。この範囲であれば、上述した再現性ある評価基準の明確性ある実船の孔食の形状が得られるからである。
【0028】
ここで、粒状の多孔質物質のこの範囲の粒径とは、例えばJIS8801の規定により、目開き1〜20mm範囲のふるいにより選定調整できる。
【0029】
さらに、本発明は、試験によって得られた鋼材の孔食深さ又は腐食量を経時変化で観察し、外挿することで、10年、20年後の孔食深さを予測し、船舶の寿命を予測することが出来る。
【0030】
すなわち、まず、鋼材の孔食深さを経時変化で追うとは、期間を変化させて本試験を行い各期間の孔食深さの測定を行うことであり、その結果を用いて腐食許容板厚に達する期間を予測するとは、経時変化で得られた孔食深さを外挿し、腐食許容板厚に達する期間を計算することである。また、船舶の寿命とは、ばら積貨物船用共通構造規則(鋼船規則CSR-B編)で規定されている鋼材の切替板厚に孔食深さが達することを意味する。
【0031】
以下実施例を設明するが、本発明の実施態様はこれに限られることはない。
【実施例】
【0032】
表1に示す成分となる溶鋼を、真空溶解炉で溶製または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブを加熱炉に装入して1200℃に加熱し、仕上圧延終了温度800℃の熱間圧延により25mm厚の一般用造船鋼板とした。
【0033】
【表1】

【0034】
この鋼板から、5mm×50mm×75mmの試験片を採取し、その試験片の表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去した。裏面と端面をシリコン系シールでコーティングした後、アクリル製の治具に嵌め込み、その上に所定量の硫酸を添加した粒状の多孔質物質を載置し、恒温恒湿器 AGX−325により、相対湿度を一定とし、温度を変化させた温湿度サイクルを28日間与えた。試験後、錆剥離液を用い、各試験片の錆を剥離し、腐食量を測定した。
【0035】
また、生じた最大孔食深さデプスメーターを用いて測定を行った。実施した試験条件を表2に、結果を表3に示す。表2において、例えばNo.1の場合、湿度は95%RHと一定に保持して、温度を80℃で20h(時間)保持し、その後0.5h(時間)かけて20℃まで降温した。さらに、20℃で3h(時間)保持し、その後0.5h(時間)かけて80℃まで昇温した。以上を24時間(一日)で行い、このサイクルを28days(日)行ったことを意味している。
【0036】
多孔質物質の粒径3〜5mmとは、数十μm〜十数mmの粒径の石炭を目開き3mmと5mmのふるいを用いて調整したものである。また、表3において測定された腐食量は、試験前サンプルの重量から試験後サンプルの重量を引くことで測定し、最大孔食深さはデプスメーターにより測定した。孔食直径と深さ比はノギスで測定した。実船の孔食の再現の欄が○とは孔食の直径と深さとの比が実船と同様の8:1〜10:1となった試験条件を意味する。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果から、本発明で規定されている範囲で行なわれた試験では孔食が発生していることが分かる。さらに図1には、各実施例における最大の孔食の直径と深さのアスペクト比をプロットしている。この図から、孔食の直径と深さとの比が実船の孔食と同等の8:1〜10:1であることが分かる。すなわち、本腐食試験方法は、石炭・鉱石兼用船ホールドの実際の腐食環境を模擬できていると考えられる。
【0040】
ここで、実施例No.3、No.29〜33の最大孔食深さを累乗近似により外挿し、12年(4380日)、13年(4745日)、14年(5110日)、および20年(7300日)後の実船の孔食深さと比較したグラフを図2に示す。
【0041】
本試験で得られた、この図の実線の最大孔食深さの外挿曲線は、その曲線が実船で現れる孔食深さの値と近いので、実船の孔食を精度良く予測できることが分かる。
【0042】
本腐食試験方法を用いて,最大孔食深さの経時変化を追うことで、数十年後の最大孔食深さを予測でき、その値と石炭船および鉱石兼用船ホールドに設定されている腐食代を比較することで、寿命を予測することが可能である。
【0043】
同様に得られた腐食量と鋼材の試験面積、鋼材の密度を用いて、数十年後の腐食量(平均腐食厚さ:mm)も予測できる。図3で、実線が外挿した線であり、本試験例では、20年後に平均腐食厚さが1.92 mm、25年後に2.16 mmと予測される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内の腐食環境を模擬しており、孔食深さを経時変化で追い、外挿することで10年、20年先のホールド内の孔食を精度良く予測できるため、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の評価に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気調整室を用いた鋼材の腐食試験方法において、
粒状の多孔質物質に硫酸を添加し、硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程と、
前記鋼材の上に前記硫酸添加粒状多孔質物質を載置し、前記雰囲気調整室内に設置する工程と、
前記雰囲気調整室の相対湿度を80〜100%の範囲で任意に選定し、かつ、温度を20℃から80℃の範囲で加熱と冷却を一定サイクルで変化させる工程と、
前記鋼材の腐食量又は孔食深さを測定する工程
とを有し、前記硫酸添加粒状多孔質物質を作る工程において、前記硫酸が前記粒状の多孔質物質1g当たり0.01〜100mgの量であることを特徴とする石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
【請求項2】
前記粒状の多孔質物質は、活性炭であることを特徴とする請求項1に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
【請求項3】
前記粒状の多孔質物質の粒径は1〜20mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
【請求項4】
前記硫酸添加粒状多孔質物質を載置する量が前記鋼材の単位面積あたり0.1〜5g/cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
【請求項5】
前記一定サイクルが1日であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用耐食鋼の腐食試験方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の腐食試験方法を用いることを特徴とする船舶の使用寿命を予測する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117812(P2012−117812A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264746(P2010−264746)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】