説明

石礫除去機

【課題】 圃場の土塊から選別した石礫を偏りなく石礫回収タンク内に投入し、効率よく回収することができる石礫除去機を提供する。
【解決手段】 圃場の土塊を掘り起こす掘取部3と、この掘取部3が掘り起こした土塊を破砕し石礫を選別する土壌処理コンベヤ4と、この土壌処理コンベヤ4が選別した石礫を投入する投入位置と投入した石礫を排出する排出位置との間で移動可能な石礫回収タンク5とを有する石礫除去機1であって、石礫回収タンク5が投入位置から排出位置へ移動する場合、石礫回収タンク5の内側に配置されている土壌処理コンベヤ4の終端部を、石礫回収タンク5の外側に退避させるコンベヤ退避手段6を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場内の石礫を効率よく除去する石礫除去機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作物の収穫時に障害となる石礫を圃場から除去する石礫除去機が提案されている。この石礫除去機としては、掘り取った土塊をロッドコンベヤで搬送しながら土を篩い落とし、残った石礫をタンクに収納する方式が知られている。また、土塊と共に掘り取った石礫をトロンメル(回転ふるい)で篩いにかけ、残った石礫をタンクへ収納する方式も知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「ストーンピッカ カタログ」株式会社イダ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した各方式を含む従来の石礫除去機においては、ロッドコンベヤやトロンメルの終端が、石礫を投入するタンクの開口縁部に配置されている。このため、ロッドコンベヤやトロンメルから投入された石礫が、タンク内の一側面側に偏って堆積してしまい、バランスよく収容することができないという問題がある。
【0005】
また、従来の石礫除去機において、石礫を投入するタンクは、その開口を上向きにして石礫を投入する投入位置と、当該開口を下向きにして石礫を排出する排出位置との間で、回転移動可能に構成されている。このため、石礫をタンクの中央に投入すべくロッドコンベヤやトロンメルの終端部をタンクの内側中央位置まで延設してしまうと、タンクが回転移動する際、当該終端部がタンクに衝突して邪魔になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、圃場の土塊から選別した石礫を偏りなく石礫回収タンク内に投入し、効率よく回収することができる石礫除去機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る石礫除去機は、圃場の土塊を掘り起こす掘取部と、この掘取部が掘り起こした土塊を破砕し石礫を選別する土壌処理コンベヤと、この土壌処理コンベヤが選別した石礫を投入する投入位置と投入した石礫を排出する排出位置との間で移動可能な石礫回収タンクとを有する石礫除去機であって、前記石礫回収タンクが投入位置から排出位置へ移動する場合、前記石礫回収タンクの内側に配置されている前記土壌処理コンベヤの終端部を、前記石礫回収タンクの外側に退避させるコンベヤ退避手段を有している。
【0008】
また、本発明において、前記土壌処理コンベヤは、前記掘取部から前記石礫回収タンクの外側に配置された固定コンベヤ部と、この固定コンベヤ部の終端に回動可能に連結されているとともに前記石礫回収タンクの内側にまで延設された可動コンベヤ部とを有しており、前記石礫回収タンクが排出位置へ移動する場合、前記コンベヤ退避手段が前記可動コンベヤ部を移動させて前記石礫回収タンクの外側に退避させるようにしてもよい。
【0009】
さらに、本発明において、前記石礫回収タンクの側面には、前記土壌処理コンベヤの終端部を前記石礫回収タンクの内側に延設するための延設凹部が形成されており、前記石礫回収タンクが投入位置にある場合、前記延設凹部を開放するとともに、前記石礫回収タンクが排出位置へ移動する場合、前記延設凹部を閉塞する閉塞板を有していてもよい。
【0010】
また、本発明において、前記閉塞板を前記石礫回収タンクに回転自在に支持する支持フレームと、この支持フレームに回転自在に連結された長尺状のリンクアームと、このリンクアームを前記石礫回収タンクに対して上下動自在に支持する平行リンク機構とを有し、前記石礫回収タンクが投入位置へ移動したとき、前記リンクアームの下端が前記石礫回収タンクを支持している本体フレームに当接して前記リンクアームが前記平行リンク機構に対して上昇し、前記支持フレームを介して前記閉塞板を回転させて前記延設凹部を開放し、前記石礫回収タンクが排出位置へ移動したとき、前記リンクアームの下端が前記本体フレームから離れ、前記閉塞板が自重により前記支持フレームを介して回転して前記延設凹部を閉塞するようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明において、前記掘取部の左右位置であって、前記土壌処理コンベヤの左右端部の前方位置には、土壌を前記掘取部側へ案内する土壌ガイドプラウを配置してもよい。
【0012】
また、本発明において、前記土壌ガイドプラウは、凹面を有する円盤状のディスクプラウで構成されており、前記凹面を内側へ向け、かつ、前方へ向けて拡開する角度で配置されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明において、前記ディスクプラウは回転自在に支持されており、空転可能または駆動回転可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明において、前記土壌処理コンベヤは、複数本の土壌処理ローラを並列配置し、各土壌処理ローラは、土塊破砕用の回転放射状突起を有する複数のスクレーパディスクを軸方向に所定のディスク間隔を隔てて配置しており、前記石礫回収タンク上に配置される土壌処理ローラのうち、最終列から1または2以上の土壌処理ローラは、他の土壌処理ローラよりも前記回転放射状突起の少ないスクレーパディスクを前記ディスク間隔よりも広い間隔を隔てて配置してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圃場の土塊から選別した石礫を偏りなく石礫回収タンク内に投入し、効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る石礫除去機の実施形態を示す前方斜視図である。
【図2】本実施形態の石礫除去機を示す後方斜視図である。
【図3】本実施形態の石礫除去機を示す平面図である。
【図4】本実施形態において、土壌処理コンベヤの連動関係を示す概略図である。
【図5】本実施形態の石礫除去機の正面中央縦断面図である。
【図6】本実施形態において、(a)石礫回収タンクが投入位置にある状態、および(b)石礫回収タンクが排出位置にある状態を示す背面図および側面図である。
【図7】本実施形態において、(a)閉塞板が延設凹部を開放した状態、および(b)閉塞板が延設凹部を閉塞した状態の石礫回収タンクを示す斜視図である。
【図8】本実施形態において、可動コンベヤ部の動作を示す図である。
【図9】本実施形態において、石礫回収タンクが投入位置から排出位置へ移動する様子を示す図である。
【図10】本実施形態において、ディスクプラウをPTO(Power Take Off)機構で駆動する構成を備えた石礫除去機を示す斜視図である。
【図11】本実施形態において、ディスクプラウを油圧で駆動する構成を備えた石礫除去機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る石礫除去機の実施形態について図面を用いて説明する。図1から図3は、それぞれ本実施形態の石礫除去機1を示す前方斜視図、後方斜視図および平面図である。
【0018】
図1から図3に示すように、本実施形態の石礫除去機1は、主として、本体フレーム2と、圃場の土塊を掘り起こす掘取部3と、この掘取部3が掘り起こした土塊を破砕し石礫を選別する土壌処理コンベヤ4と、この土壌処理コンベヤ4が選別した石礫を回収する石礫回収タンク5と、土壌処理コンベヤ4を石礫回収タンク5の外側に退避させるコンベヤ退避手段6と、掘取部3の左右位置に設けられる土壌ガイドプラウ7とから構成されている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0019】
本体フレーム2は、上記の各構成部を支持して本実施形態の石礫除去機1を構成するためのものである。本実施形態において、本体フレーム2は、図1から図3に示すように、前方にトラクター等で牽引するためのヒッチ21を有しており、後方には一対のタイヤ22,22を回転自在に軸支している。なお、本実施形態の石礫除去機1は、牽引式の構成を有しているが、この構成に限定されるものではなく、自走式であってもよい。
【0020】
掘取部3は、圃場の土塊を掘り起こして土壌処理コンベヤ4に渡す役割を果たすものである。本実施形態において、掘取部3は、図1および図3に示すように、山形の先端部を有する複数枚の掘取刃31から構成されており、土壌処理コンベヤ4の前端部に固定されている。
【0021】
土壌処理コンベヤ4は、掘取部3が掘り起こした土塊を破砕し石礫を選別する役割を果たすものである。本実施形態において、土壌処理コンベヤ4は、図1および図3に示すように、機体の前後方向に複数本の土壌処理ローラ41が並列配置されている。そして、各土壌処理ローラ41は、左右端部に設けられたスプロケット42およびチェーン43によって連動して回転するようになっている。
【0022】
本実施形態では、図4に示すように、12本の土壌処理ローラ41(R1〜R12)が、左右端部のいずれか一方にスプロケット42を有している。そして、両軸減速機(図示せず)に接続されたダブルスプロケット44の駆動力が、全ての土壌処理ローラ41に伝達するようにチェーン43で巻回されている。なお、図4では、チェーン43の巻回関係をわかり易くするため、ダブルスプロケット44を各土壌処理ローラ41の外側に図示しているが、実際にはスプロケット42やチェーン43の上方に配置されている。
【0023】
また、本実施形態において、土壌処理コンベヤ4は、石礫を石礫回収タンク5の略中央位置に投入するため、図3および図5に示すように、その終端部が石礫回収タンク5の内側にまで延設されている。一方、後述するように、石礫回収タンク5は、投入位置と排出位置との間で移動可能に構成されている。このため、本実施形態では、石礫回収タンク5が土壌処理コンベヤ4に衝突するのを防止するため、土壌処理コンベヤ4が、石礫回収タンク5の外側へ退避可能に構成されている。
【0024】
具体的には、図4および図5に示すように、土壌処理コンベヤ4は、本体フレーム2に固定される固定コンベヤ部45と、この固定コンベヤ部45の終端に回動可能に連結される可動コンベヤ部46とから構成されている。固定コンベヤ部45は、掘取部3から石礫回収タンク5の外側にかけて配置された土壌処理ローラ41(R1〜R8)がユニット化されている。一方、可動コンベヤ部46は、固定コンベヤ部45の終端から石礫回収タンク5の内側にかけて延設された土壌処理ローラ41(R8〜R12)がユニット化されている。そして、可動コンベヤ部46は、図5に示すように、コンベヤ退避手段6によって、固定コンベヤ部45の終端に設けられた土壌処理ローラ41(R8)の回転軸周りに上下方向に回動するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、土壌処理コンベヤ4を固定コンベヤ部45と可動コンベヤ部46とから構成し、可動コンベヤ部46のみを退避させているが、この構成に限定されるものではない。例えば、1本目の土壌処理ローラ41(R1)の回転軸周りに土壌処理コンベヤ4全体を回動自在に構成し、土壌処理コンベヤ4の終端部が、石礫回収タンク5の外側に退避するまで土壌処理コンベヤ4全体を回動させるようにしてもよい。また、本実施形態では、可動コンベヤ部46の退避移動手段について、退避のさせ易さに鑑みて、稼働コンベヤ部46を回動させることにより退避位置へ移動させているが、このような構造に限るものではなく、スライドさせることにより退避位置へ移動させたり、その他の構成・動作によって退避位置へ移動させてもよい。
【0026】
また、本実施形態において、各土壌処理ローラ41は、図1,図3および図5に示すように、土塊破砕用の回転放射状突起47を有する複数のスクレーパディスク48が、軸方向に所定のディスク間隔を隔てて配置されている。また、石礫の大きさによって、石礫回収タンク5への投入位置を調節するため、最終列から2本の土壌処理ローラ41(R11,R12)は、他の土壌処理ローラ41(R1〜R10)と比較して、回転放射状突起47の少ないスクレーパディスク48を前記ディスク間隔よりも広い間隔を隔てて配置している。
【0027】
なお、回転放射状突起47の少ないスクレーパディスク48を広間隔で配置する土壌処理ローラ41の数は、2本に限定されるものではない。具体的には、石礫を投入する際、石礫回収タンク5上に配置される土壌処理ローラ41であれば、最終列から1または2以上の土壌処理ローラ41を上記の構成にしてもよい。これにより、比較的小さい石礫は、石礫回収タンク5の手前側に抜け落ちる一方、比較的大きな石礫は石礫回収タンク5の中央部よりも奥側へ投入されるため、石礫が効率よく収容されることとなる。
【0028】
石礫回収タンク5は、土壌処理コンベヤ4で選別された石礫を回収するためのものである。本実施形態において、石礫回収タンク5は、図6(a)に示すように、土壌処理コンベヤ4で選別された石礫を投入する投入位置と、図6(b)に示すように、投入した石礫を圃場外で排出する排出位置との間で移動可能に構成されている。具体的には、タンク用油圧シリンダ51を伸縮制御することにより、石礫回収タンク5を昇降させている。なお、石礫回収タンク5の駆動源は、油圧シリンダに限定されるものではなく、電動シリンダ等でもよい。
【0029】
また、本実施形態において、石礫回収タンク5は、図7(a)に示すように、前方に面した側面に凹状の延設凹部52が形成されている。この延設凹部52は、土壌処理コンベヤ4の終端部を石礫回収タンク5の内側中央位置まで延設するための開口部分として役割を果たす一方、石礫回収タンク5を排出位置へ移動させる際、その開口部分から回収した石礫を脱落させてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、石礫回収タンク5が投入位置にある場合には図7(a)に示すように、延設凹部52を開放し、石礫回収タンク5が移動する場合には図7(b)に示すように、延設凹部52を閉塞する閉塞板53を有している。
【0030】
この閉塞板53を開閉させる構成としては、図7に示すように、閉塞板53を石礫回収タンク5に回転自在に支持する支持フレーム54と、この支持フレーム54に回転自在に連結された長尺状のリンクアーム55と、このリンクアーム55を石礫回収タンク5に対して上下動自在に支持する平行リンク機構56とを有している。
【0031】
支持フレーム54は、縦棒54aと横棒54bが直交する略T字状に形成されており、横棒54bの一端が石礫回収タンク5の上方軸受部57に回転自在に支持されている。また、リンクアーム55は、その上端が支持フレーム54の横棒54bと回転自在に連結される一方、その下端には、石礫回収タンク5を支持している本体フレーム2に当接する当接部55aが形成されている。平行リンク機構56は、石礫回収タンク5の下方軸受部58に回転自在に支持された揺動アーム59を有しており、この揺動アーム59の先端が、リンクアーム55の略中央位置に回転自在に連結されている。
【0032】
この構成により、図7(a)に示すように、石礫回収タンク5が投入位置に移動したとき、リンクアーム55の下端の当接部55aが本体フレーム2に当接してリンクアーム55が平行リンク機構56に対して相対的に上昇し、支持フレーム54を介して閉塞板53を回転させて延設凹部52を開放するようになっている。一方、石礫回収タンク5を排出位置へ移動するとき、図7(b)に示すように、リンクアーム55の下端の当接部55aが本体フレーム2から離れ、閉塞板53が自重によって支持フレーム54を介して下降回転し、延設凹部52を閉塞するようになっている。
【0033】
なお、本実施形態では、石礫回収タンク5の動作に連動させて閉塞板53を自動的に開閉させているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、石礫回収タンク5が投入位置にある場合、閉塞板53が延設凹部52を開放し、石礫回収タンク5が排出位置へ移動する場合、閉塞板53が延設凹部52を閉塞するものであれば、別途、駆動源を設け、石礫回収タンク5の動作とは独立して閉塞板53を開閉させるようにしてもよい。
【0034】
コンベヤ退避手段6は、土壌処理コンベヤ4の終端部を石礫回収タンク5の外側に退避させるためのものである。本実施形態において、コンベヤ退避手段6は、伸縮制御可能なコンベヤ用油圧シリンダ61によって構成されており、図1,図5および図6に示すように、その一端が本体フレーム2に対して回転自在に連結されているとともに、その他端が可動コンベヤ部46に設けられた補助フレーム62に対して回転自在に連結されている。
【0035】
この構成により、石礫回収タンク5が投入位置にある場合、図8(a)に示すように、コンベヤ用油圧シリンダ61を伸長させると、可動コンベヤ部46が回転軸(R8)周りに下降し、土壌処理コンベヤ4の終端部が石礫回収タンク5の略中央部まで延設される。一方、石礫回収タンク5が投入位置と排出位置との間で移動する場合、コンベヤ用油圧シリンダ61を短縮すると、図5,図8(b),(c)に示すように、補助フレーム62が前方へ引き寄せられる。このため、可動コンベヤ部46が回転軸(R8)周りに上昇し、土壌処理コンベヤ4の終端部が石礫回収タンク5の外側に退避するようになっている。
【0036】
なお、本実施形態では、石礫回収タンク5が単純な回転移動をするため、コンベヤ退避手段6は、土壌処理コンベヤ4の終端部を石礫回収タンク5の外側に退避させている。この動作の意図は、投入位置と排出位置との間で移動する石礫回収タンク5の軌道から土壌処理コンベヤ4を退避させることにある。したがって、石礫回収タンク5がいかなる動作をする場合であっても、その軌道の外側へ土壌処理コンベヤ4を退避させればよい。
【0037】
また、本実施形態では、コンベヤ退避手段6としてコンベヤ用油圧シリンダ61を採用しているが、この構成に限定されるものではなく、可動コンベヤ部46の昇降動作を制御可能なものであれば、電動シリンダ等でもよい。
【0038】
土壌ガイドプラウ7は、土壌処理コンベヤ4を連動させる部分の通り道を予め確保する役割を果たすものである。上述したように、本実施形態の土壌処理ローラ41は、左右端部に設けられたスプロケット42やチェーン43によって連動されている。このため、スプロケット42やチェーン43あるいはこれらを被覆するカバー等が地面に接触すると、土壌を十分に掘り取れないおそれがある。そこで、本実施形態では、図1および図3に示すように、掘取部3の左右位置であって、土壌処理コンベヤ4の左右端部の前方位置に、土壌を中央側に配置されている掘取部3の方向へ案内する土壌ガイドプラウ7を配置している。
【0039】
土壌ガイドプラウ7は、ディスクプラウ(円盤プラウ)やボトムプラウ(はつ土板プラウ)等によって構成されている。なお、通常、ディスクプラウやボトムプラウは、土壌の切削・破砕・反転・放てきを行うことにより、未耕土を膨軟にして作物の生育に対して最適な状態を作るという、耕うん処理を目的とするものである。これに対して、本実施形態の土壌ガイドプラウ7は、左右の土壌を中央の土壌処理コンベヤ4側へ送りこむ役目を果たすものである。したがって、本実施形態では、牽引抵抗を増大させる破砕や反転を防止するため、ディスクやはつ土板の傾斜角を小さくし、土壌に対するかぶりを小さくしている。
【0040】
本実施形態において、土壌ガイドプラウ7は、図1および図3に示すように、凹面を有する円盤状のディスクプラウ7を採用している。そして、左右両側の土壌を効率良く中央側へ案内するために、各ディスクプラウ7の凹面を内側へ向け、かつ、前方へ向けて拡開する角度で配置している。
【0041】
また、本実施形態の石礫除去機1は、トラクタ等によって牽引するものであるところ、土壌条件によっては牽引抵抗が非常に大きくなる。一般的に、トラクタは、出力に余裕がある場合でも、車重の50〜60%程度しか牽引力を出せない。このため、牽引抵抗が大きいところでは、速度を上げられない、あるいは作業自体ができないといった状態になるおそれがある。このため、本実施形態では、トラクタにかかる牽引抵抗を低減するため、ディスクプラウ7が本体フレーム2に対して回転自在に支持されており、空転可能に構成されている。
【0042】
また、さらなる牽引抵抗の低減を図るため、ディスクプラウ7を駆動回転させて得られる推進力を利用することも可能である。例えば、図10に示すように、トラクタのPTO(Power Take Off)軸(図示せず)に連結されたドライブシャフト81を、本体フレーム2に設けられた動力分配装置82に接続する。そして、この動力分配装置82の出力軸の一方と、ディスクプラウの回転駆動機構83とをドライブシャフト81で連結することで、駆動回転可能に構成しうる。なお、動力分配装置82の他方の出力軸は、土壌処理コンベヤ4等の処理部を駆動する入力軸に連結される。
【0043】
また、図11に示すように、ディスクプラウ7の回転軸23に油圧モータ84を接続するとともに、この油圧モータ84とトラクタの油圧装置(図示せず)とを油圧ホース85で接続する。この構成により、ディスクプラウ7を駆動回転可能に構成しうる。なお、図10および図11では、左右のそれぞれに2枚のディスクプラウ7を配置し、合計4枚のディスクプラウを使用しているが、この構成に限定されるものではない。
【0044】
つぎに、本実施形態の石礫除去機1による作用について説明する。
【0045】
本実施形態の石礫除去機1によって、圃場の石礫を除去する場合、まず、石礫回収タンク5が投入位置に配置されているか否かを確認し、配置されていなければ石礫回収タンク5を投入位置へ移動する。このとき、図7(a)に示すように、リンクアーム55の当接部55aが本体フレーム2に当接し、平行リンク機構56に対して相対的に上昇する。このため、リンクアーム55が支持フレーム54を上方へ持ち上げることにより、閉塞板53が延設凹部52を開放する。
【0046】
つぎに、可動コンベヤ部46が石礫回収タンク5の内側に配置されているか否かを確認し、配置されていなければ、コンベヤ退避手段6によって可動コンベヤ部46を下方へ移動する。このとき、図8(a)に示すように、閉塞板53が延設凹部52を開放しているため、可動コンベヤ部46は比較的低い位置から石礫回収タンク5内へ延設される。このため、土壌処理コンベヤ4の終端部を高い位置で保持する必要がなく、機体高さを抑制し、安定的な配置が可能となる。また、石礫を石礫回収タンク5へ投入する際の騒音や衝撃を低減する。
【0047】
つづいて、各土壌処理ローラ41を回転駆動させた状態で、石礫除去機1をトラクタ等で牽引する。これにより、掘取部3が圃場の土塊を掘り起こし、土壌処理コンベヤ4へと送り込む。また、本実施形態では、土壌ガイドプラウ7が、土壌処理コンベヤ4の左右端部の前方位置にある土壌を掘り起こし、掘取部3側へ案内する。これにより、土壌処理コンベヤ4の左右端部の通り道が予め確保されるため、土壌を掘り起こす作業と石礫を選別除去する作業とを同時に実施できる。
【0048】
また、本実施形態において、土壌ガイドプラウ7としてのディスクプラウ7は、内側に向けた凹面が前方に向けて拡開されているため、左右両側の土壌を効率良く中央側へ案内する。このとき、ディスクプラウ7が空転可能に軸支されているため、土壌との摩擦抵抗が低減する。このため、トラクタが石礫除去機1を牽引する際に発生する牽引抵抗が低減する。
【0049】
また、トラクタのPTO軸や油圧装置によってディスクプラウ7を駆動回転した場合、ディスクプラウ7が進行方向の推進力を発生させる。この推進力により、トラクタにかかる牽引抵抗がさらに低減するため、作業速度を向上させることが可能となる。
【0050】
土塊が送り込まれた土壌処理コンベヤ4では、各土壌処理ローラ41が、スクレーパディスク48で土塊を破砕しながら土壌を篩い落とし石礫を選別する。そして、土壌処理コンベヤ4は、選別した石礫を後方へと運搬した後、終端部から石礫回収タンク5に投入する。このとき、石礫回収タンク5の内側に配置された当該終端部が、石礫回収タンク5の略中央に石礫を投入するため、石礫が石礫回収タンク5内で偏ることがなく満遍なく収容される。
【0051】
また、本実施形態では、最終列から2本の土壌処理ローラ41(R11,R12)が、その隙間から比較的小さい石礫を石礫回収タンク5の手前側で篩い落とす一方、比較的大きな石礫を石礫回収タンク5の中央部近傍に投入する。これにより、石礫回収タンク5内には、石礫が効率よく収容されるため、タンク容量が有効に利用される。
【0052】
そして、石礫回収タンク5内が石礫で満杯になった場合、土壌処理コンベヤ4を停止して、石礫除去機1を圃場の外へ移動するか、石礫積載用のダンプトラックを石礫除去機1に横付けする。その後、コンベヤ退避手段6によって、補助フレーム62を引き寄せると、図8(b),(c)に示すように、可動コンベヤ部46が上方へ回転し石礫回収タンク5の外側まで退避する。これにより、石礫回収タンク5の移動する軌道内に障害物がなくなるため、石礫回収タンク5が排出位置へ移動可能な状態となる。
【0053】
つづいて、石礫回収タンク5のタンク用油圧シリンダ51を伸長すると、図9(a)から図9(d)の順に従って、石礫回収タンク5が投入位置から排出位置へと移動し、石礫を排出する。このとき、可動コンベヤ部46が石礫回収タンク5の外側に退避しているため、石礫回収タンク5が土壌処理コンベヤ4に衝突することがない。
【0054】
また、本実施形態では、リンクアーム55の下端が本体フレーム2から離れるに従って、閉塞板53が自重により支持フレーム54を介して下方へ回転し、延設凹部52を閉塞する。このため、閉塞板53は、石礫回収タンク5の回転移動中に、石礫が延設凹部52からこぼれ落ちるのを防止する。
【0055】
以上のような本実施形態の石礫除去機1によれば、以下のような効果を奏する。
1.圃場の土塊から選別した石礫を偏りなく石礫回収タンク5内に投入し、効率よく回収することができる。
2.石礫回収タンク5が投入位置と排出位置との間を移動する場合、土壌処理コンベヤ4に衝突するのを防止することができる。
3.石礫回収タンク5を排出位置へ移動する場合、延設凹部52から石礫がこぼれ落ちるのを防止することができる。
4.石礫回収タンク5の移動動作に連動させて、閉塞板53を自動的に開閉することができる。
5.土壌処理コンベヤ4の左右端部の通り道を予め圃場に確保し、一工程で土壌の掘り起こし作業と石礫の選別除去作業とを実施することができる。
6.石礫の大きさに応じて、石礫回収タンク5内へ投入する場所を調節するため、石礫回収タンク5内に石礫を効率よく収容することができる。
7.土壌ガイドプラウ7による牽引抵抗を低減し、トラクタの走行速度を向上することができる。
【0056】
なお、本発明に係る石礫除去機1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、複数本の土壌処理ローラ41を用いた土壌処理コンベヤ4について説明したが、この構成に限定されるものではない。すなわち、土塊から石礫を選別して石礫回収タンク5へ運搬する機能を有しており、石礫回収タンク5が投入位置にある場合、その終端部が石礫回収タンク5の内側に配置されているとともに、石礫回収タンク5が投入位置から排出位置へ移動する場合、その終端部が、石礫回収タンク5の外側に退避するものであれば、どのような土壌処理コンベヤ4を採用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 石礫除去機
2 本体フレーム
3 掘取部
4 土壌処理コンベヤ
5 石礫回収タンク
6 コンベヤ退避手段
7 土壌ガイドプラウ(ディスクプラウ)
21 ヒッチ
22 タイヤ
23 回転軸
31 掘取刃
41 土壌処理ローラ
42 スプロケット
43 チェーン
44 ダブルスプロケット
45 固定コンベヤ部
46 可動コンベヤ部
47 回転放射状突起
48 スクレーパディスク
51 タンク用油圧シリンダ
52 延設凹部
53 閉塞板
54 支持フレーム
54a 縦棒
54b 横棒
55 リンクアーム
55a 当接部
56 平行リンク機構
57 上方軸受部
58 下方軸受部
59 揺動アーム
61 コンベヤ用油圧シリンダ
62 補助フレーム
81 ドライブシャフト
82 動力分配装置
83 回転駆動機構
84 油圧モータ
85 油圧ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の土塊を掘り起こす掘取部と、
この掘取部が掘り起こした土塊を破砕し石礫を選別する土壌処理コンベヤと、
この土壌処理コンベヤが選別した石礫を投入する投入位置と投入した石礫を排出する排出位置との間で移動可能な石礫回収タンクとを有する石礫除去機であって、
前記石礫回収タンクが投入位置から排出位置へ移動する場合、前記石礫回収タンクの内側に配置されている前記土壌処理コンベヤの終端部を、前記石礫回収タンクの外側に退避させるコンベヤ退避手段を有している石礫除去機。
【請求項2】
前記土壌処理コンベヤは、前記掘取部から前記石礫回収タンクの外側に配置された固定コンベヤ部と、この固定コンベヤ部の終端に回動可能に連結されているとともに前記石礫回収タンクの内側にまで延設された可動コンベヤ部とを有しており、
前記石礫回収タンクが排出位置へ移動する場合、前記コンベヤ退避手段が前記可動コンベヤ部を移動させて前記石礫回収タンクの外側に退避させる請求項1に記載の石礫除去機。
【請求項3】
前記石礫回収タンクの側面には、前記土壌処理コンベヤの終端部を前記石礫回収タンクの内側に延設するための延設凹部が形成されており、前記石礫回収タンクが投入位置にある場合、前記延設凹部を開放するとともに、前記石礫回収タンクが排出位置へ移動する場合、前記延設凹部を閉塞する閉塞板を有している請求項1または請求項2に記載の石礫除去機。
【請求項4】
前記閉塞板を前記石礫回収タンクに回転自在に支持する支持フレームと、この支持フレームに回転自在に連結された長尺状のリンクアームと、このリンクアームを前記石礫回収タンクに対して上下動自在に支持する平行リンク機構とを有し、
前記石礫回収タンクが投入位置へ移動したとき、前記リンクアームの下端が前記石礫回収タンクを支持している本体フレームに当接して前記リンクアームが前記平行リンク機構に対して上昇し、前記支持フレームを介して前記閉塞板を回転させて前記延設凹部を開放し、
前記石礫回収タンクが排出位置へ移動したとき、前記リンクアームの下端が前記本体フレームから離れ、前記閉塞板が自重により前記支持フレームを介して回転して前記延設凹部を閉塞する請求項3に記載の石礫除去機。
【請求項5】
前記掘取部の左右位置であって、前記土壌処理コンベヤの左右端部の前方位置には、土壌を前記掘取部側へ案内する土壌ガイドプラウを配置している請求項1から請求項4のいずれかに記載の石礫除去機。
【請求項6】
前記土壌ガイドプラウは、凹面を有する円盤状のディスクプラウで構成されており、前記凹面を内側へ向け、かつ、前方へ向けて拡開する角度で配置されている請求項5に記載の石礫除去機。
【請求項7】
前記ディスクプラウは回転自在に支持されており、空転可能または駆動回転可能に構成されている請求項6に記載の石礫除去機。
【請求項8】
前記土壌処理コンベヤは、複数本の土壌処理ローラを並列配置し、各土壌処理ローラは、土塊破砕用の回転放射状突起を有する複数のスクレーパディスクを軸方向に所定のディスク間隔を隔てて配置しており、前記石礫回収タンク上に配置される土壌処理ローラのうち、最終列から1または2以上の土壌処理ローラは、他の土壌処理ローラよりも前記回転放射状突起の少ないスクレーパディスクを前記ディスク間隔よりも広い間隔を隔てて配置している請求項1から請求項7のいずれかに記載の石礫除去機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−217741(P2011−217741A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62635(P2011−62635)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、「超低コスト土地利用型作物生産技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】