説明

石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材およびその製造方法

【課題】多数の部材を組み合わせて構築しても、表面の石積み等を模擬する造形模様に違和感がなく、自然景観と融和し、自然環境の復元につなげられる構築物を構築するためのプレキャスト部材を低コストで提供する。
【解決手段】石積み等を模擬した各種の構築物を構築するためのプレキャスト部材1は、部材本体2の表層部に石積み等の積み石の目地部を模擬表現することによって造形6を形成するための、ワックス、または油分を含んだ粘土、または両方の組合せからなる目地部形成型材を用いた製造方法により形成された溝状凹部3の延びる方向、溝幅、溝深さ等は任意で、部材表面に積み石模様の造形6が形成される。造形6は、部材毎に自由に設定でき、多種多様な積み石模様が形成できる。溝状凹部3の内空に繊維状物4aを装着して、溝状凹部3に流入した土砂や水分等を滞留させて小動物が棲息し、植物が植生するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然環境と融和する自然石による石積みを模擬した擁壁または石造橋を模擬したコンクリート橋または、石張工を模擬した護岸または石積み堰を模擬した堰など各種の構築物を構築するためのプレキャスト部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレキャストコンクリート製のブロックやパネルを積み重ねて擁壁や護岸を構築することや、プレキャストコンクリート製のL型擁壁を設置して宅地造成盛土することが多く行われている。例えば、コンクリートブロック積み擁壁は、工場製品として製造された数種類の同一形状・同一模様のコンクリートブロックを現場に運搬して人力またはクレーン等の機械を用いて積み重ね、背面に胴込め・裏込めコンクリートおよび/または砕石などの裏込め材を充填して構築される。近年では、景観に配慮して、表面を粗面仕上げしたブロックや表面に石積み模様を模造したブロック、自然石を埋め込んだブロックなども用いられるようになってきた。また、より自然な景観となるようにブロックに設けた凹部を利用して芝草などの植生ができるように考えられたものもある(例えば、特許文献1、2参照)。補強土擁壁の表面パネルやL型擁壁などにおいても同様に表面を粗面仕上げした製品や表面に石積み模様を模造した製品も多数ある。
【0003】
プレキャストコンクリート製のブロックや補強土擁壁の表面パネル、L型擁壁などの表面に石積み模様を模造する方法としては、ウレタンゴム、シリコンゴムなどからなる目地深さが1〜2cm程度の石積み模様の型枠を製造型枠の底面に配置しコンクリートを打設する方法や造形面を上面としてコンクリート打設後に同様の石積み模様の型枠を高圧で押しつけて模様を付ける方法が一般的に採られている。
【特許文献1】特開2001−279693号公報
【特許文献2】特開2002−332650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような工場生産されたコンクリート製品を積み重ねるなどして構築した擁壁や護岸は、いずれも表面形状がワンパターンで、コンクリート構造物的景観の域を出ていない。「自然再生推進法」の施行や「景観緑三法」の制定に伴い、自然景観や自然環境をできるだけ保護することが重要視されるようになってきていることから、このようなプレキャストコンクリート製品により構築した擁壁や護岸はその景観が画一的で人工的になるうえ、小動物が棲息し、植物が植生する空間を侵していることが問題視されている。
【0005】
一方、例えば、各地の城や皇居など古い建造物に見られる石垣は美しく、しかも、石垣の隙間からシダなどの植物が植生していることで、石垣の荘厳な美しさが一層浮き上がる。このような石垣を美しいと感じるのは石垣の積み石の大きさ、形状、配置形態などに一つとして同じものがなく、しかも全体としてはバランスが保たれている。つまり、このような不調和の中の調和に安らぎを感じるのは、画一的な大量生産技術の社会で生きる我々が、昔の石工の手作りの技術による風土に根ざした自然に調和した造詣美に現代の我々が本能的に惹かれるからである。そして、最近ではこのような日本古来の伝統的な風土の保存に関する法律に基づいた「歴史的風土保存地区」の指定もなされており、そのなかで自然石を用いた石垣や石張が見直されてきている。しかし、現在では自然石の入手は難しく伝統的な石工による手作りの特殊技術は衰退しており、その施工を実現するには莫大な費用と時間がかかる。
【0006】
また、従来の製造方法でプレキャストコンクリート製品の表面に石積み等の画一的でない造形模様を形成するには多種多様な石積み模様の型枠を取りそろえなければならないことになり、さらに実在の石垣を忠実に模擬するために目地部の深さを深くしようとすると石積み模様の型枠材であるウレタンゴムなどの消耗が激しく転用回数が少なくなるため、莫大な費用がかかる。
【0007】
本発明は、自然景観と融和するとともに自然環境の保全・復元につなげられる自然石による石積みを模擬した擁壁、または石造橋を模擬したコンクリート橋、または石張工を模擬した護岸、または石積み堰を模擬した堰などの各種の構築物を構築するための、石積み等を模擬した造形模様が部材毎に自由に設定されたプレキャスト部材と、これを低コストで提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、次のように構成する。
【0009】
第1の発明は、石積みを模擬した擁壁または石造橋を模擬したコンクリート橋または石張工を模擬した護岸または石積み堰を模擬した堰などの各種構築物を構築するための表層部に造形を施したプレキャスト部材であって、表層部に石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための、ワックス、または油分を含んだ粘土、またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を用いた製造方法により形成される溝状凹部を有し、該溝状凹部の延びる方向、溝幅、溝深さ等が変更されることで石積み等を模擬する造形模様が部材毎に自由に設定されている、石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材を特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、石積み等を模擬する造形が各部材毎に独立した完結模様を形成しており、該石積み等を模擬する造形模様は、隣接配置する部材との境界において石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を出現するように設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬した凹部を境としてその厚み方向後側を基体部、前側を表層部とし、該基体部は部材同士を結合する凸凹嵌合部を少なくとも一方向に有していると共に、表層部に設ける石積み等を模擬する造形模様が擁壁などの構築物の表面を構成する全ての部材毎に相異していることにより、目地模様が画一的でない擁壁などの各種構築物の構築を可能とする、ことを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第2の発明において、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬した凹部を境としてその厚み方向後側を基体部、前側を表層部とし、各部材同士の少なくとも一方向の結合手段は、相対する部材端部の基体部と表層部を切除して形成した鈎状段部を互いに係合させる構成であり、表層部に設ける石積み等を模擬する造形模様が擁壁などの構築物の表面を構成する全ての部材毎に相異していることにより、目地模様が画一的でない擁壁などの各種構築物の構築を可能とする、ことを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第2〜第4の発明において、結合部における相対する部材端部の少なくとも双方の一部分の表層部を切除して形成した凹部に、横断して収まる後付け部材が後付けで貼り付けられている、ことを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第1〜第5の発明において、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための溝状凹部に繊維状物またはポーラス状物または土砂が装着されていて、該繊維状物またはポーラス状物または装着された土砂により前記溝状凹部に流入した土砂や水分等を滞留させて小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間を形成する、ことを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第1〜第5の発明において、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための溝状凹部に種子を含まない厚層基材または厚層基材が装着されていて、小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間が形成されている、ことを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第1〜第5の発明において、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャを模擬するためのテクスチャ形成型材を用いた製造方法により形成される凹凸部を有し、該凹凸部のテクスチャが目地部を模擬するための溝状凹部で仕切られた表層部毎に自由に設定されている、ことを特徴とする。
【0017】
第9の発明は、実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種凹状型枠に、熔融されたワックスを流し込み、ワックス冷却固化後に該各種凹状型枠から離型して、ワックスからなる紐状又は分岐状等の各種目地部形成型材ピースを製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って前記各種目地部形成型材ピースを型枠の内底部に配置し、隣接配置する目地部形成型材ピースの端部同士を接合することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共にワックスからなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離したワックスからなる目地部形成型材を回収し、再度熔融させて各種目地部形成型材ピース製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする。
【0018】
第10の発明は、実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種凹状型枠に、油分を含んだ粘土を押し込み、十分に充填した後に脱型して、油分を含んだ粘土からなる紐状又は分岐状等の各種目地部形成型材ピースを製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って前記各種目地部形成型材ピースを型枠の内底部に配置し、隣接配置する目地部形成型材ピースの端部同士を接合することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共に油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離した油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材を回収し、若干の補修を加えて各種目地部形成型材ピースとしての再利用を可能とするまたは練り直して材料として各種目地部形成型材ピース製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする。
【0019】
第11の発明は、実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種弾性凹状型枠に、流動性経時固化材を流し込み、固化後に脱型して、紐状又は分岐状等の各種凸状押し型材を製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って油分を含む粘土塊を連続させて配置し、次に前記粘土塊に各種凸状押し型材を押し込んで連続する目地模様を模擬した凹状型枠を製作し、該凹状型枠に熔融されたワックスを流し込み、ワックス冷却固化後に該凹状型枠から離型して、ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材を製作する工程、前記ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材を型枠の内底部に配置することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共にワックスからなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離したワックスからなる目地部形成型材を回収し、再度熔融させて目地部形成型材製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする。
【0020】
第12の発明は、ワックスまたは油分を含んだ粘土または各種粒状物質材料の少なくとも1つの材料を用いて、石積みなどにおける積み石または張り石のテクスチャの形態を反転模擬したテクスチャ形成型材を型枠内に形成する工程、ワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を型枠内に形成する工程、前記テクスチャ形成型材および前記目地部形成型材を備えた型枠に流動性経時固化材を打ち込み、流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共に前記テクスチャ形成型材および前記目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離または削り取る工程、剥離または削り取ったワックスまたは油分を含んだ粘土または各種粒状物質材料を回収し、材料としての再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする。
【0021】
第13の発明は、型枠の内側に積み石または張り石のテクスチャを模擬形成するためのテクスチャ形成型材を全面的に形成したうえ、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するためのワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を前記テクスチャ形成型材の上に形成することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャと目地部を模擬形成するための形成型材を備えた型枠を製作し、前記型枠に表層部を形成する擬石用の流動性経時固化材と基体部を形成する擬石用以外の流動性経時固化材を2層に分けて打ち込んで製造し、型枠を取り外した後に前記テクスチャ形成型材と前記目地部形成型材を硬化成形品の配置場所から剥離または削り取って再利用すると共に硬化成形品の表面仕上げをする、ことを特徴とする。
【0022】
第14の発明は、型枠の内側に石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するためのワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を形成したうえ、該目地部形成型材で仕切られた区域毎に積み石または張り石のテクスチャを模擬形成するためのテクスチャ形成型材を形成することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャと目地部を模擬形成するための形成型材を備えた型枠を製作し、前記型枠に表層部を形成する擬石用の流動性経時固化材と基体部を形成する擬石用以外の流動性経時固化材を2層に分けて打ち込んで製造し、型枠を取り外した後に前記テクスチャ形成型材と前記目地部形成型材を硬化成形品の配置場所から剥離または削り取って再利用すると共に硬化成形品の表面仕上げをする、ことを特徴とする。
【0023】
第15の発明は、石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材を製造に用いる石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための目地部形成型材の原型となる凸状型材の製作方法であって、実在する石積み等の目地部に油分を含んだ粘土を十分に押し込んで目地部の空間を型取り、剥離して紐状又は分岐状等の形状に整形して凸状型材を製作、または該凸状型材を基に目地部を模擬して任意形状に造形した凸状型材を製作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると次の効果がある。
【0025】
(1)石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するためのワックスまたは油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材の形態を部材毎に設定して製造することで石積み等を模擬した造形模様を部材毎に自由に設定でき、それらを組み合わせた各種構築物全体としての造形模様も自由に設定できるので、画一的でない造形模様の自然景観に融和した擁壁などの各種構築物を構築できる。
【0026】
(2)目地部を模擬して形成した溝状凹部を小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間として形成できるので、従来のコンクリートブロックによる画一的な構築物などに比べて自然景観及び自然環境保護に関しても優れた各種構築物を構築できる。
【0027】
(3)石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャを模擬するためのテクスチャ形成型材の形態や配置状態を目地部形成型材で仕切られた区域毎に設定して製造することで模擬する積み石毎のテクスチャを自由に設定できるので、模擬する積み石等の形状とテクスチャーが画一的でない、自然の石積み等を忠実に模擬した各種構築物を構築できる。
【0028】
(4)石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための目地部形成型材の材料として、成型の簡易性や硬化成形品からの脱型性、転用性に優れたワックスまたは油分を含んだ粘土を用いているので、石積み等の造形を模擬する一連の目地模様を形成した型枠の製作工程における低コスト化を実現できる。すなわち、ワックスは加熱されて所定温度(融点や軟化点)に達することで熔融し流動性を持ち、冷却されると凝固する性質を持っていることから、加熱して熔融させて各種形状の凹状型枠に流し込み、冷却させることにより容易に各種形状に成型することができる。そして、凝固すると適度な硬さと柔軟性及び靭性を兼ね備えているので、流動性経時固化材の打ち込みに対し型くずれせず所望の造形を形成できるとともに流動性経時固化材の硬化後の脱型性に優れている。さらに、各種形状に成型するための凹状型枠への負担が軽いので、その凹状型枠を数多く転用できる。しかも、型材として使用することによる性状の変化は起こらないので、加熱して熔融させることにより何度でも繰り返し使用できて経済的である。
【0029】
一方、油分を含んだ粘土は優れた可塑性を持っており、常温または若干の熱を加えることで柔軟に変形し得ることから、各種形状の凹状型枠に押し込むことにより容易に各種形状に成型することができ、成型されたものの曲げや切断、貼り付け、結合などの加工も簡単にできるので所望の造形模様を形成した型枠を容易に製作できる。そして、常温で適度な硬さと柔軟性及び靭性を兼ね備えているのでとともに油分を含んでいるため流動性経時固化材の硬化後の脱型性に優れている。さらに、各種形状に成型するための凹状型枠への負担が軽いので、その凹状型枠を数多く転用できる。しかも、型材として使用することによる性状の変化は起こらないので、何度でも繰り返し使用できて経済的である。
【0030】
(5)ワックスまたは油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材は、実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作するので、比較的深い(10cm程度まで)実在する石積み等の目地部形態を忠実に造形できる。
【0031】
(6)粒径0mmから10mm程度の範囲で粒度調整された粒状物質材料(例えば、土質材料)は適度な水分を加えることにより適度な可塑性と形状保持性を合わせ持ち容易に成形できて、流動性経時固化材の打ち込みに対し型くずれせず所望の造形を形成できる。よって、該粒状物質材料を用いてテクスチャ形成型材を型枠内にその場で形成することで積み石などのテクスチャを模擬した造形を部材毎または目地部形成型材で仕切られた区域毎に自由に設定できるので、画一的でないテクスチャの自然景観に融和した擁壁などの各種構築物を構築できる。さらに、前記粒状物質材料は流動性経時固化材の打ち込みにより硬化することはなく型枠脱型後に容易に崩れて基の状態に戻るので、何度でも再利用することができるので経済的である。
【0032】
(7)実在する石積み等の目地部の空間を型取る型取り材として油分を含んだ粘土を用いることで、従来のシリコンゴム等を用いた型取り方法に比べて硬化待ちやバックアップ作業が不要となり短時間で作業を完了でき、かつ材料費が非常に安価なので、低コストで実在する石積み等の目地部空間の型取りを行える。
【0033】
(8)石積み等を模擬する造形模様を各部材ごとに完結するように設けることにより、多数の部材を組み合わせて擁壁などの各種構築物を構築しても、表面の石積み等を模擬する造形模様に違和感がなく、自然の石積み等を忠実に模擬することができる。
【0034】
(9)本発明の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材を積み重ねるなどして各種の構築物を構築する際は、部材同士を凸凹嵌合や段状係合手段、または横断して収まる後付け部材により結合するので、結合が確実であると共に、結合部において各部材毎に石積み等の模様を現出する造形が完結した状態で接合しているので、結合部に不連続な部分や、不自然な隙間、一直線的な目地部が生じることはなく、自然の石積み等を忠実に模擬することができ、さらに、目地部を模擬して形成した溝状凹部に小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間として形成できるのでより一層自然の石積み等に近づけることができる。
【0035】
(10)石積み等を模擬した造形を、目地部形成型とシート状のテクスチャ形成型材により形成する場合には、目地部形成型はシート状のテクスチャ形成型材の上に配置されただけで接着や緊結はされていないので、脱型時においてはまずシート状のテクスチャ形成型材を脱型し、続いて目地部形成型を脱型することになる。よって、シート状のテクスチャ形成型材は簡単に離型されることから消耗が少なく数多く転用できる。
【0036】
本発明において、各種の模擬構築物用プレキャスト部材とは、(1)石垣を模擬した擁壁、(2)石造橋を模擬したコンクリート橋、(3)石張工を模擬した護岸、(4)石積み堰を模擬した堰、(5)石張舗装を模擬した舗装平板、(6)石積みまたは石張りを模擬した階段、小水路、建築外構、花壇、塀、(7)石積みまたは石張りの模様の土木・建築構造物、(8)石積みまたは石張りの模様のテーブル、椅子、プランターなどの製品、(9)その他、屋内外に設置される石積みまたは石張りの模様のモニュメントなどの造形物などを含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施形態を図により説明する。本発明は、石垣を模擬した擁壁、石造橋を模擬したコンクリート橋、石張工を模擬した護岸、石積み堰を模擬した堰など、[00 ]で記載した各種の石造構築物を模擬した構築物に適用可能なものであるが、図1(a)は、本発明の一実施形態であるワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を用いた製造方法により形成された溝状凹部を有する石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材の斜視図である。図1(b)は同図(a)のA−A断面図である。この実施形態では、一例として擁壁構築用プレキャスト部材1の形状が長方形のブロック型のもので、部材表面の積み石模様の造形6が1枚で完結していないものを示すが、部材の形状は、L型、パネル型など擁壁の構造形式や部材同士の組み合わせ方によって種々の形状としてよく、部材表面の積み石模様の造形6を1枚で完結させてもよい。
【0038】
石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1は、コンクリートなどの流動性経時固化材からなる部材本体2の表層部に石垣における積み石の目地部を模擬表現することによって造形6を形成するため、該目地部を模擬する目地部形成型材を用いた製造方法により形成された溝状凹部3を有している。この溝状凹部3の延びる方向、溝幅、溝深さ等は不規則に設けられていて部材表面に積み石模様の造形6が形成されている。この造形6は、部材毎に自由に設定でき、多種多様な積み石模様が形成できることが特徴である。
【0039】
図1に示す実施形態では、溝状凹部3の内空に繊維状の植生基盤材(例えば、天然ヤシ殻繊維)等の繊維状物4aを装着していて、該繊維状物4aにより該溝状凹部3に流入した土砂や水分等を滞留させて小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間を形成するようにされている。図示例では、繊維状物4aに滞留された土砂より蔦状その他の植物5が部材表面に垂れて植生した状態を示す。このように、実際の石積みの目地部から植物が植生しているように自然に部材表面を緑化できる。また、溝状凹部3に流入した土砂や水分等を滞留させて小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間を形成する方法としては繊維状物4aの代わりに積極的に土砂を装着する方法やポーラス状物を溝状凹部3の奥にあらかじめ埋め込んでおく方法を採ってもよく、その他の方法として、種子を含まない厚層基材または厚層基材を装着してもよい。厚層基材とは、育成基盤材と種子、接合剤(高分子系樹脂又は普通ポルトランドセメント)、肥料その他(化成肥料、pH緩衝材)を混合したものである。小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間を形成し、周辺環境と融和させ自然の植物植生に委ねるには種子を混合しないが、積極的に緑化したい場合はその周辺環境に合った種子を混合しても良い。繊維状物4aなどの装着方法としては、部材製作段階での埋込みと部材製作後の装着の両方とも可能であるが、部材製作後の装着では脱落防止策を施す必要がある。種子を含まない厚層基材または厚層基材を用いるのは、主に陸上部の擁壁などへの適用が考えられる。
【0040】
図2は、石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材による擁壁構築の実施形態の一例を示す。図2(a)、(b)に示す石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1は、部材表層部に石垣における積み石の目地部を模擬表現する溝状凹部3を有している。この溝状凹部3の延びる方向、溝幅、溝深さ等は不規則に設けられていて、部材毎に異なる積み石模様の造形6が形成されている。また、この積み石模様の造形6は各プレキャスト部材1毎に完結している。
【0041】
また、このプレキャスト部材1は、厚み方向に見て溝状凹部3を境(図では太幅輪郭線で示す)として、該溝状凹部3よりも後側を基体部15、前側を表層部14とし、該基体部15は、水平方向の両側に部材同士を嵌合結合する凸凹部16、17を有している。さらに、表層部に形成される石積み模様の造形6は、各部材毎に独立した完結模様で、かつ擁壁を構成する全ての部材毎に相異していることから、各プレキャスト部材1を組み合わせることにより、図2(c)に示すように全体として目地模様が画一的でない擁壁の構築を可能とする。
【0042】
図3、図4は、図2に示す実施形態と若干異なる石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1の結合手段の例を示す。すなわち、図3、図4に示す石垣を模擬した擁壁において、プレキャスト部材1は溝状凹部3を境としてその厚み方向後側を基体部15、前側を表層部14とし、表層部に形成される石積み模様の造形6は、各プレキャスト部材1毎に独立した完結模様の造形を形成していて、この石積み模様の造形は、擁壁を構成する全ての部材毎に相異している。そして、各プレキャスト部材1同士の上下左右のうち、少なくとも一方向の結合手段は、図4(a)、(b)に示すように、相対する部材端部の基体部15と表層部14を切除して鈎状段部18、19を互いに係合させる構成とし、鈎状段部18、19を介してプレキャスト部材1を組み合わせることにより、図3に示すように全体として目地模様が画一的でない擁壁の構築を可能とする。
【0043】
また、鈎状段部18、19において、前側に位置するプレキャスト部材1の鈎状段部18の裏面側にナット部材20が埋設されていると共に、後側に位置するプレキャスト部材1の鈎状段部19にボルト孔21が貫通してあり、鈎状段部19の背面側からボルト孔21に挿通した接合ボルト22をナット部材20に螺合することで、隣接するプレキャスト部材1同士の結合を確実なものとしている。
【0044】
図5は他の実施形態を示す。この実施形態では、プレキャスト部材1同士の上下左右の結合部において、相対する部材端部双方の一部分の表層部14を切除して鈎状段部19で形成される凹部に後付け部材14−1を配置し、後付けで貼り付けられている。また、背面側でのナット部材20とボルト22との螺合によりプレキャスト部材1と一体化してもよい。後付け部材14−1の表面は、石積み模様の造形6の表面凸凹模様と同調するような凸凹模様とするのがよい。
【0045】
図6(a)は、図1に示す石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1を製造するための型枠の斜視図である。図6(b)は同図(a)のB−B断面図である。また、図7(a)〜(e)には、図1に示す石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1の製造工程を示す。
【0046】
型枠7は汎用性を持たせた定盤8上にシート状のテクスチャ成形型材9aを敷設し、その上に目地部形成型材10を形成し、さらに、シート状のテクスチャ形成型材9a及び目地部形成型材10を取り囲むように定盤8上に側面型枠11を組み立てて構成される。定盤8、シート状のテクスチャ形成型材9a、側面型枠11は同一形状の部材を製造する際の汎用型枠材としてその形状のまま繰り返し使用される。また、目地部形成型材10は各部材の製造の度に形成され、脱型時に回収され、再形成されて繰り返し使用される。
【0047】
定盤8は他のプレキャスト部材を製造する際の定盤を使用して良い。シート状のテクスチャ形成型材9aには自然石のテクスチャを型取りまたは模擬して製作したウレタンゴムまたは油分を含んだ粘土またはワックスなどからなる型材を使用し、製造する部材の表層部形状に合わせて敷設する。ただし、模擬する積み石のテクスチャや採用する仕上げ方法によっては目地部形成型材10を定盤8の上面に直接形成し、シート状のテクスチャ形成型材9aを仕切られた切られた領域毎に部分的に敷設するようにしてもよく、敷設しなくてもよい。また、部分的に敷設する場合のシート状のテクスチャ形成型材9aは各部材の製造の度に形成され、脱型時に回収され、再形成されて繰り返し使用されてもよい。目地部形成型材10は、ワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなり、その性状として、成型の簡易性や硬化成形品からの脱型性、転用性の特性を備えているので、この特性を利用して、成型、脱型の操作を円滑に行うことができる。
【0048】
具体的には、図8(a)〜(d)に示す工程によりワックスまたは油分を含んだ粘土からなる紐状又は分岐状等の各種目地部形成型材ピース10b(図8dに示す)を製作し、該目地部形成型材ピース10bを図10(a)に示すように型枠7の内底部に配置したうえ、隣接配置する目地部形成型材ピース10bの端部同士を接合することにより、製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を形成する。または図9(a)〜(d)に示す工程により、ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材10c(図9(d)に示す)を製作し、該目地部形成型材10cを図10(b)に示すように型枠7の内底部に配置することにより、製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を形成する。側面型枠11は製造する部材の側面の形状に合わせた形状とし、流動性経時固化材の打ち込み時に壊れないように定盤8上に組み立てる。
【0049】
次に、型枠7の組み立てが完了した後、必要に応じてシート状のテクスチャ成形型材9aの上にスペーサ12を介して構造鉄筋又は補強鉄筋としての鉄筋13を配筋し、コンクリート等の流動性経時固化材2aを充填する。このとき鉄筋13は上方に支持材を設けて支持しても良い。流動性経時固化材2aが固化した後に側面型枠11を脱型し、さらに、定盤8上から部材本体2を外し、シート状のテクスチャ形成型材9a及び目地部形成型材10を部材本体2から脱型する。そして、必要に応じて溝状凹部3の内空に繊維状の植生基盤材(天然ヤシ殻繊維)等の繊維状物4を装着することにより図1に示す石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材1が成形される。なお、該繊維状物4は型枠7の組み立てが完了した後に目地部形成型材10の頂部に装着しておき、流動性経時固化材2aに一部埋め込まれ状態で溝状凹部3の奥に装着するようにしても良く、繊維状物4の代わりにポーラス状物(ポーラスコンクリート、透水性モルタルなど)または土砂を装着するようにしても良い。
【0050】
コンクリート等の流動性経時固化材からなる製品の表層部に造形を施す型材料としてワックスまたは油分を含んだ粘土を用いることが本発明の特徴の一つであり、本発明者の繰り返し実験により、前記の通り、ワックスまたは油分を含んだ粘土の実現可能性が確認されたものである。
【0051】
本発明に使用するワックス材の種類としては、次のものがある。(1)パラフィンワックス。の他、(2)マイクロクリスタリンワックス(製品例(商品名):Hi−Mic−2045、Hi−Mic−1070、日本精鑞(株)社製など)。(3)配合ワックス(製品例(商品名):PALAVAX−1230、BONTEX−0100、日本精鑞(株)社製など)。配合ワックスとは、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスの機能をさらに強化・向上させるために、衛生上の安全を考慮した樹脂等を混合させたものをいう。(4)混合ワックス。配合ワックスとは、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、配合ワックスの複数種のワックスをそれぞれ適当な割合で混合したものやさらに機能を強化・向上させるために、化成品や合成ワックスと呼ばれているワックスなどその他のワックスを必要に応じて適当な割合で混合したものをいう。
【0052】
また、一般に粘土には、土粘土、紙粘土、油粘土、樹脂粘土その他種々の名称で呼ばれているものがあるが、本発明に使用する油分を含んだ粘土とは、炭酸カルシウムなどに鉱物油、植物油などの油分を混ぜた人工の粘土であって、放置しても固化、乾燥しないため繰り返し使用できる特性を有する粘土であり、一般に油粘土と呼ばれている粘土がこれに含まれる。油分を含んだ粘土の具体例としては、中部電磁器工業(株)の製品、製品名:プラスクレイなどがある。
【0053】
本発明による石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法には、表層部に造形を施すための目地部形成型材を備えた型枠を製作する方法の違いにより、方法1:ワックスからなる各種目地部形成型材ピースを用いて製作する度に異なる形態となる目地部形成型材を備えた型枠を製作する方法。方法2:油分を含んだ粘土からなる各種目地部形成型材ピースを用いて製作する度に異なる形態となる目地部形成型材を備えた型枠を製作する方法。方法3:ワックスからなる一連の目地模様を用いて製作する度に異なる形態となる目地部形成型材を備えた型枠を製作する方法、の3種類の方法がある。
【0054】
図8(a)〜(d)、図9(a)〜(d)および図10(a)、(b)によりそれぞれの方法の詳細を説明する。
【0055】
図8(a)〜(d)は、前記方法1におけるワックスからなる各種目地部形成型材ピースの製作工程と方法2における油分を含んだ粘土からなる各種目地部形成型材ピースの製作工程をまとめて表現している。
【0056】
図8(a)は、各種目地部形成型材ピース10bの原型となる凸状型材10−1を製作する工程を示す。ここでは、凸状型材10−1の原材料である型取り材として油分を含んだ粘土を用い、油分を含んだ粘土の優れた可塑性を活かして、油分を含んだ粘土(イ)を常温で練り返しを行うか若干加熱して柔らかくした後に実在する石積み等23の目地部に十分に押し込んで目地部の空間24を型取り、剥離して紐状又は分岐状等の形状に整形して油分を含んだ粘土からなる凸状型材10−1を製作する。
【0057】
図8(b)は、紐状又は分岐状等の各種凹状型枠25を製作する工程を示す。まず、前記凸状型材10−1を原型として、ウレタンゴムやシリコンゴムまたは石膏やセメント系の流動性経時固化材などを用いて型取りを行い、実在する石積み等の目地部の形態を復元した紐状又は分岐状等の各種凹状型枠25を製作する。次に、油分を含んだ粘土を常温で練り返しを行うか若干加熱して柔らかくした後にその凹状型枠25に十分に押し込み、成形後に剥離して図8(d)に示す紐状又は分岐状等の油分を含んだ粘土からなる凸状型材10−1を複製する。そして、複製した凸状型材10−1に、油分を含んだ粘土が持つ特性を活かして曲げ、切断、削り取り、つなぎ合わせ、盛り付けなどの加工を加えることにより石積み等の目地部空間を模擬して任意形状に造形した油分を含んだ粘土からなる凸状型材10−1を製作する。そしてまた、この任意形状に造形した凸状型材10−1を原型として、ウレタンゴムやシリコンゴムまたは石膏やセメント系の流動性経時固化材などを用いて型取りを行い、紐状又は分岐状等の各種凹状型枠25を製作する。
【0058】
この工程を繰り返すことにより、任意形状の多種多様な各種凹状型枠25を増やしていくことができる。ここで、各種目地部形成型材ピース10bの原材料である型材料10aとしてワックスを用いる場合の凹状型枠25は、ウレタンゴムやシリコンゴムなどを型枠材料とした型枠とするのが好ましく、型材料10aとして油分を含んだ粘土を用いる場合の凹状型枠25は、石膏やセメント系流動性固化材などを型枠材料とした型枠としてもよい。
【0059】
図8(c)、(d)は、図8(a)、(b)に続く工程であって、各種目地部形成型材ピース10bを製作する工程を示す。型材料10aとしてワックスを用いる場合は、ワックスの特性を活かして、加熱して熔融させ流動性を持たせたワックス10aを各種凹状型枠25に流し込んで成型し、自然冷却または強制的に冷却させて固化させた後に各種凹状型枠25から離型して各種目地部形成型材ピース10bを製作する。型材料10aとして油分を含んだ粘土を用いる場合は、油分を含んだ粘土10aを常温で練り返しを行うか若干加熱して柔らかくした後に各種凹状型枠25に十分に押し込んで成型し、各種凹状型枠25から離型して各種目地部形成型材ピース10bを製作する。この場合は、押し込んで成型した後直ちに離型することができる。そして、図8(c)、(d)に示す工程を繰り返し行うことにより、ワックスまたは油分を含んだ粘土からなる各種目地部形成型材ピース10bを複製することができる。
【0060】
図9(a)〜(d)は、前記方法3におけるワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材を製作する工程を示す。
【0061】
図9(a)は、油分を含む粘土塊26を配置する工程を示す。ここでは、部材を製作する型枠と同一な形状・寸法の型枠7−1の内部に、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って油分を含む粘土塊26を連続させて配置する。
【0062】
図9(b)は、連続する目地模様を模擬した凹状型枠25−1を製作する工程を示す。前記粘土塊26に紐状又は分岐状等の各種凸状押し型材10−2を押し込んで連続する目地模様を模擬した凹状型枠25−1を製作する。ここで用いる各種凸状押し型材10−2は、図8(a)〜(d)に示す各種目地部形成型材ピース10bの製作工程と同じ工程により製作できる。各種凸状押し型材10−2は、型材料10aとしてワックスやセメント系のモルタルなどの流動性経時固化材を用い、加熱して熔融させ流動性を持たせたワックスやセメント系のモルタルなどの流動性経時固化材10aを各種凹状型枠25に流し込んで成型し、流動性経時固化材が固化した後に各種凹状型枠から離型して製作する。
【0063】
図9(c)、(d)は、図9(a)、(b)に続く工程であって、ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材10cを製作する工程を示す。一連の目地模様を形成した目地部形成型材10cの製作は、型材料10aとしてワックスを用い、加熱して熔融させ流動性を持たせたワックス10aを前記連続する目地模様を模擬した凹状型枠25−1に流し込んで成型し、自然冷却または強制的に冷却させて固化させた後に凹状型枠25−1から離型することにより行う。
【0064】
図10(a)は、前記方法1におけるワックスからなる製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を備えた型枠7を製作する工程および、方法2における油分を含んだ粘土からなる製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を備えた型枠7を製作する工程をまとめて表現している。目地部形成型材10を備えた型枠7の製作は、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って図8に示す工程で製作した各種目地部形成型材ピース10bを型枠7の内底部に配置し、隣接配置する目地部形成型材ピース10bの端部同士を接合することにより行う。
【0065】
ここで、ワックスからなる各種目地部形成型材ピース10bを用いる場合には、各種目地部形成型材ピース10bを適当な箇所で切断するなどして加工し、隣接配置する目地部形成型材ピース10bの端部同士をシリコンシーリング材や熔融させたワックスなどにより接合するか、場合によっては突き合わせておくだけでもよい。また、油分を含んだ粘土からなる各種目地部形成型材ピース10bを用いる場合には、各種目地部形成型材ピース10bを適当な箇所で切断や曲げ、若干の形状修正などの加工を行い、隣接配置する目地部形成型材ピース10bの端部同士を同種の油分を含んだ粘土を付け足すなどして接合するか、場合によっては突き合わせておくだけでもよい。
【0066】
図10(b)は、前記方法3におけるワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材10cを用いて製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を備えた型枠7を製作する工程を示す。目地部形成型材10を備えた型枠7の製作は、型枠7の内底部に図9に示す工程で製作したワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材10cを配置することにより行う。
【0067】
図11(a)は、さらに他の実施形態に係る製品を製造するための型枠斜視図である。図11(b)は同図(a)のH−H断面図である。また、図12(a)〜(e)には図11に示す型枠を用いた製品の製造工程を示す。
【0068】
型枠7は汎用性を持たせた定盤8上の所定の位置に側面型枠11を組み立て、その内側にあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って目地部形成型材10を形成し、該目地部形成型材10で仕切られた区域ごとにデザインされたテクスチャ模様に従って粒状物質材料によるテクスチャ形成型材9bを形成することにより構成される。定盤8、側面型枠11は同一形状の部材を製造する際の汎用型枠材としてその形状のまま繰り返し使用される。また、目地部形成型材10および粒状物質材料によるテクスチャ形成型材9bは各部材の製造の度に形成され、脱型時に回収され、繰り返し使用される。
【0069】
具体的には、図12(a)〜(e)に示すように、まず、定盤8の上面に側面型枠11を組み立て、その内側に図10(a)または(b)に示す方法により、ワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方からなる目地部形成型材10を形成する。次に、該目地部形成型材10で仕切られた区域ごとに粒状物質材料を投入し、模擬する石のテクスチャの形態を反転模擬したデザインに合わせて素手や各種器具を用いるなどして造形して粒状物質材料によるテクスチャ形成型材9bを形成する。これにより型枠7を完成させる。そして、型枠7内にまず擬石用の流動性経時固化材2bを打ち込んだ後、目地部形成型材10の頂部に種子を含まない高層基材4bを装着して、次に、擬石用以外の流動性経時固化材2aを2層に分けて打ち込んで製造し、流動性経時固化材2a、2bが固化した後に側面型枠11を脱型し、さらに、定盤8上から部材本体2を外し、部材本体2に付着した粒状物質材料によるテクスチャ形成型材9bを削り取るとともに目地部形成型材10を部材本体2から脱型する。そして、部材本体2の表面に表面仕上げを施す。ここで、定盤8の上面にあらかじめシート状または粒状物質材料によるテクスチャ形成型材を全面的に形成した上に目地部形成型材10を形成し、更に目地部形成型材10で仕切られた区域毎にシート状または粒状物質材料によるテクスチャ形成型材を形成する方法で型枠7を組み立てても良く、模擬する積み石のテクスチャや採用する仕上げ方法によってはテクスチャ形成型材を形成しなくてもよい。また、種子を含まない高層基材4bは、部材本体2の表面に表面仕上げを施したあとに溝状凹部3の内空に後付けで装着しても良く、種子を含まない高層基材4bの代わりに厚層基材またはポーラス状物(ポーラスコンクリート、透水性モルタルなど)または土砂を装着するようにしても良い。
【0070】
テクスチャ形成型材9bを造成する粒状物質材料としては、粒径0mmから10mm程度の範囲で粒度調整された土質材料が好ましく、擬石用の流動性経時固化材2bの骨材と同じ調合とするのが最も好ましい。また、土質材料の代わりに、石炭灰や水砕スラグ、ガラス破砕物、プラスチック破砕物、金属屑などのリサイクル材を使用しても良い。擬石用の流動性経時固化材2bには、例えば、骨材に花崗砕石(常陸稲田砕石販売合資会社製)などを用い、固化材に必要に応じて白セメントまたは/および顔料を加えた普通セメントを用いたモルタル、またはガラス繊維やカーボン繊維などで補強されたセメントなどがある。擬石用以外の流動性経時固化材2aとしては、普通コンクリートの他、ポーラスコンクリートや高強度コンクリートまたはガラス繊維やカーボン繊維などで補強されたセメントやガラス繊維で補強されたプラスチックなどが適用できる。
【0071】
また、表面仕上げ方法としては、(1)そのまま、(2)洗い出し、(3)ビシャン仕上げ、(4)ブラスト仕上げなどがある。洗い出しには、擬石用の流動性経時固化材を打ち込む前に型枠面に洗い出し液(例えば、HEBAU製)を塗布しておき、脱型後に型枠に接していた面を高圧水等で洗い流す方法や洗い出し液の塗布は行わず、脱型後に型枠に接していた面を酸性の液体により洗ってセメント分を除去する方法がある。ビシャン仕上げとは、特殊なハンマーで叩いて表面を凸凹に仕上げる方法である。ブラスト仕上げとは、砂や鉄などの研磨材を圧縮空気やモーターの力を使って高速で飛ばし、製品の表面を凸凹に仕上げる方法である。
【0072】
なお、上述した製作プロセスは、石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法に適用される場合のみならず、他の如何なる人工石材の製造方法に適用するようにしてもよいことは勿論である。
【0073】
本発明は、各実施形態に示した構成を適宜変更して実施することは構わない。
例えば、型枠7の定盤8を任意曲率のアーチ状なものに変更し、任意曲率の擁壁の構築に対応する部材とすることもできる。また、型枠7の側面型枠11や鉄筋13などの構成をL型擁壁用、護岸張ブロック用、補強土パネル用などに変更し、それぞれの構成形態に合った部材を製造することもできる。また同様に型枠7の構成を工夫したり、擬石用の流動性経時固化材2bを型枠7のテクスチャ形成型材9及び目地部形成型材10により形成される凹凸に沿って薄く同じ厚さで打ち込み、擬石用以外の流動性経時固化材2aにガラス繊維やカーボン繊維などで補強されたセメントやガラス繊維で補強されたプラスチックなどを用いて流動性経時固化材2aも凹凸に沿って薄く同じ厚さで施工したりすることにより打ち込み型枠部材を製造し、それを現場にて外郭として組み立て、内部に鉄筋を配筋してコンクリートを打設することにより、例えば、石造橋を模擬したコンクリート橋などの構築物を構築することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態を示す斜視図、(b)は、図(a)A−A断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る石垣を模擬した擁壁を示す図で、(a)は、擁壁構築用プレキャスト部材を分離して示す正面図、(b)は、図(a)C−C断面図、(c)は、擁壁構築用プレキャスト部材を組み立てた態様を示す正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る石垣を模擬した擁壁を示す正面図である。
【図4】(a)は、図3のD−D断面図、(b)は、図3のE−E断面図である。
【図5】(a)は、本発明のさらに他の実施形態に係る石垣を模擬した擁壁を示す正面図、(b)は、図(a)F−F断面図、(C)は、図(a)G−G断面図である。
【図6】(a)は、本発明の一実施形態に係る製品を製造するための型枠の斜視図、(b)は、図(a)B−B断面図である。
【図7】(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明の一実施形態に係る製品の製造工程を示す図である。
【図8】(a),(b),(c),(d)は、ワックスまたは油分を含んだ粘土からなる各種目地部形成型材ピースの製作工程の図である。
【図9】(a),(b),(c),(d)は、ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材の製作工程の図である。
【図10】(a),(b)は、製作する度に異なる形態となる目地部形成型材10を備えた型枠の製作工程の図である。
【図11】(a)は、本発明のさらに他の実施形態に係る製品を製造するための型枠の斜視図、(b)は、図(a)H−H断面図である。
【図12】(a),(b),(c),(d),(e)は、本発明のさらに他の一実施形態に係る製品の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 石垣を模擬した擁壁構築用プレキャスト部材
2 部材本体
2a 流動性経時固化材
2b 擬石用の流動性経時固化材
3 溝状凹部
4a 繊維状物
4b 種子を含まない厚層基材
5 植物
6 積み石模様の造形
7 型枠
7−1 型枠7と同一な形状・寸法の型枠
8 定盤
9a シート状のテクスチャ形成型材
9b 粒状物質材料によるテクスチャ形成型材
10 目地部形成型材
10a 型材料
10b 目地部形成型材ピース
10c 一連の目地模様を形成した目地部形成型材
10−1 凸状型材
10−2 凸状押し型材
11 側面型枠
12 スペーサ
13 鉄筋
14 表層部
14−1 後付け部材
15 基体部
16 凹部
17 凸部
18 鈎状段部
19 鈎状段部
20 ナット部材
21 ボルト孔
22 ボルト
23 実在の石積み等
24 目地部の空間
25 凹状型枠
25−1凹状型枠
26 油分を含んだ粘土塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石積みを模擬した擁壁または石造橋を模擬したコンクリート橋または石張工を模擬した護岸または石積み堰を模擬した堰などの各種構築物を構築するための表層部に造形を施したプレキャスト部材であって、表層部に石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための、ワックス、または油分を含んだ粘土、またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を用いた製造方法により形成される溝状凹部を有し、該溝状凹部の延びる方向、溝幅、溝深さ等が変更されることで石積み等を模擬する造形模様が部材毎に自由に設定されている、ことを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項2】
石積み等を模擬する造形が各部材毎に独立した完結模様を形成しており、該石積み等を模擬する造形模様は、隣接配置する部材との境界において石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を出現するように設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項3】
石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬した凹部を境としてその厚み方向後側を基体部、前側を表層部とし、該基体部は部材同士を結合する凸凹嵌合部を少なくとも一方向に有していると共に、表層部に設ける石積み等を模擬する造形模様が擁壁などの構築物の表面を構成する全ての部材毎に相異していることにより、目地模様が画一的でない擁壁などの各種構築物の構築を可能とする、ことを特徴とする請求項2に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項4】
石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬した凹部を境としてその厚み方向後側を基体部、前側を表層部とし、各部材同士の少なくとも一方向の結合手段は、相対する部材端部の基体部と表層部を切除して形成した鈎状段部を互いに係合させる構成であり、表層部に設ける石積み等を模擬する造形模様が擁壁などの構築物の表面を構成する全ての部材毎に相異していることにより、目地模様が画一的でない擁壁などの各種構築物の構築を可能とする、ことを特徴とする請求項2に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項5】
結合部における相対する部材端部の少なくとも双方の一部分の表層部を切除して形成した凹部に、横断して収まる後付け部材が後付けで貼り付けられている、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項6】
石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための溝状凹部に繊維状物またはポーラス状物または土砂が装着されていて、該繊維状物またはポーラス状物または装着された土砂により前記溝状凹部に流入した土砂や水分等を滞留させて小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間を形成する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項7】
石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための溝状凹部に種子を含まない厚層基材または厚層基材が装着されていて、小動物が棲息し、植物が植生するに足る連続した空間が形成されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項8】
石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャを模擬するためのテクスチャ形成型材を用いた製造方法により形成される凹凸部を有し、該凹凸部のテクスチャが目地部を模擬するための溝状凹部で仕切られた表層部毎に自由に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材。
【請求項9】
実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種凹状型枠に、熔融されたワックスを流し込み、ワックス冷却固化後に該各種凹状型枠から離型して、ワックスからなる紐状又は分岐状等の各種目地部形成型材ピースを製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って前記各種目地部形成型材ピースを型枠の内底部に配置し、隣接配置する目地部形成型材ピースの端部同士を接合することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共にワックスからなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離したワックスからなる目地部形成型材を回収し、再度熔融させて各種目地部形成型材ピース製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項10】
実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種凹状型枠に、油分を含んだ粘土を押し込み、十分に充填した後に脱型して、油分を含んだ粘土からなる紐状又は分岐状等の各種目地部形成型材ピースを製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って前記各種目地部形成型材ピースを型枠の内底部に配置し、隣接配置する目地部形成型材ピースの端部同士を接合することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共に油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離した油分を含んだ粘土からなる目地部形成型材を回収し、若干の補修を加えて各種目地部形成型材ピースとしての再利用を可能とするまたは練り直して材料として各種目地部形成型材ピース製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項11】
実在する石積み等の目地部の空間を型取った凸状型材や目地部を模擬して造形した凸状型材を原型として製作した紐状又は分岐状等の各種弾性凹状型枠に、流動性経時固化材を流し込み、固化後に脱型して、紐状又は分岐状等の各種凸状押し型材を製作する工程、石積み等の目地模様を模擬してあらかじめ各部材ごとにデザインされた目地模様に従って油分を含む粘土塊を連続させて配置し、次に前記粘土塊に各種凸状押し型材を押し込んで連続する目地模様を模擬した凹状型枠を製作し、該凹状型枠に熔融されたワックスを流し込み、ワックス冷却固化後に該凹状型枠から離型して、ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材を製作する工程、前記ワックスからなる一連の目地模様を形成した目地部形成型材を型枠の内底部に配置することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するための目地部形成型材を備えた型枠を製作する工程、前記型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共にワックスからなる目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離する工程、剥離したワックスからなる目地部形成型材を回収し、再度熔融させて目地部形成型材製作への再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項12】
ワックスまたは油分を含んだ粘土または各種粒状物質材料の少なくとも1つの材料を用いて、石積みなどにおける積み石または張り石のテクスチャの形態を反転模擬したテクスチャ形成型材を型枠内に形成する工程、ワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を型枠内に形成する工程、前記テクスチャ形成型材および前記目地部形成型材を備えた型枠に流動性経時固化材を打ち込み、前記流動性経時固化材が硬化した後、型枠を外すと共に前記テクスチャ形成型材および前記目地部形成型材を硬化成型品の配置場所から剥離または削り取る工程、剥離または削り取ったワックスまたは油分を含んだ粘土または各種粒状物質材料を回収し、材料としての再利用を可能とする工程、を有することを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項13】
型枠の内側に積み石または張り石のテクスチャを模擬形成するためのテクスチャ形成型材を全面的に形成したうえ、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するためのワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を前記テクスチャ形成型材の上に形成することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャと目地部を模擬形成するための形成型材を備えた型枠を製作し、前記型枠に表層部を形成する擬石用の流動性経時固化材と基体部を形成する擬石用以外の流動性経時固化材を2層に分けて打ち込んで製造し、型枠を取り外した後に前記テクスチャ形成型材と前記目地部形成型材を硬化成形品の配置場所から剥離または削り取って再利用すると共に硬化成形品の表面仕上げをする、ことを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項14】
型枠の内側に石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬形成するためのワックスまたは油分を含んだ粘土またはワックスと油分を含んだ粘土の両方の組合せからなる目地部形成型材を形成したうえ、該目地部形成型材で仕切られた区域毎に積み石または張り石のテクスチャを模擬形成するためのテクスチャ形成型材を形成することにより、石積みなどにおける積み石または石張工における張り石のテクスチャと目地部を模擬形成するための形成型材を備えた型枠を製作し、前記型枠に表層部を形成する擬石用の流動性経時固化材と基体部を形成する擬石用以外の流動性経時固化材を2層に分けて打ち込んで製造し、型枠を取り外した後に前記テクスチャ形成型材と前記目地部形成型材を硬化成形品の配置場所から剥離または削り取って再利用すると共に硬化成形品の表面仕上げをする、ことを特徴とする石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造方法。
【請求項15】
石積み等の模擬構築物用プレキャスト部材の製造に用いる石積みなどにおける積み石または石張工における張り石の目地部を模擬するための目地部形成型材の原型となる凸状型材の製作方法であって、実在する石積み等の目地部に油分を含んだ粘土を十分に押し込んで目地部の空間を型取り、剥離して紐状又は分岐状等の形状に整形して凸状型材を製作、または該凸状型材を基に目地部を模擬して任意形状に造形した凸状型材を製作する、ことを特徴とする凸状型材の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−110983(P2006−110983A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53687(P2005−53687)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(503092319)株式会社造形集団 (3)
【出願人】(591050866)大木建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】