説明

石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置

【課題】石綿をリサイクルに供するに際し、運搬の非効率化を伴うことなく、石綿粉塵の飛散防止を確保した非石綿化処理を促進することができる、破砕梱包装置を提供する。
【解決手段】石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置1は、底部を構成する移動可能な床台と、側部及び天井部を構成するハウジングとによって包囲・画定された処理室を有し、処理室内に搭載された破砕機5、梱包機7、放出搬送路9及び集塵機11とを備える。破砕機は、ハウジングに設けられた投入口19より受け入れられた石綿含有廃材を破砕する。梱包機は、破砕後の石綿含有廃材を袋詰めする。放出搬送路は、袋詰めされた石綿含有廃材をハウジングに設けられた放出口21に搬送する。集塵機は、破砕機内、梱包機内、及び、放出搬送路上の袋表面、に対して集塵を行うとともに処理室内を負圧に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃石綿や石綿含有廃材の処理方法としては、様々な方法が提案されている。廃石綿に対しては、従来、石綿を非石綿化するために1500℃程度の高温で加熱し、石綿を溶融して固化する方法が採られていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、
「(1)廃石綿等排出工場から排出される廃石綿等を飛散防止処置して、また、建築物解体・改修工事現場からの排出物は直接二重のプラスチック袋に詰めて、中間処理場へ搬送する。
(2)中間処理現場では溶融施設内の溶融炉・内へ搬送して来た排出物を袋ごと直接投入し、1500℃以上の炉温で溶融固化する。固化された廃石綿の「スラグ」及び「カレル状」内にはアスベスト繊維は溶融され皆無となり無害化される。
(3)溶融固化後、無害化されたスラグ等は特別管理産業廃棄物の範囲から離れ「ガラスくず及び陶器くず」に該当する物質となるために安定型最終処分場に埋め立てることが出来る。」
という廃石綿等の処理方法が開示されている。
しかし、石綿を溶融固化して最終処分場に埋め立てるのでは、資源としてリサイクルすることができないという問題がある。
【0004】
また、石綿含有廃材に対しては、水硬性を有する物質に変換して再利用する技術が提案されている。例えば、特許文献2には、石綿セメント製品を600〜1450℃の温度で、15分〜2時間加熱処理した石綿セメント製品の加熱処理品であって、X線回折による石綿のピークが不在であり、且つガラス状固化物が不在であることを特徴とする水硬性粉体組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平10−837547号公報
【特許文献2】特許第3198148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石綿含有廃材に対して非石綿化処理を行う際には、処理効率を上げるため石綿含有廃材を破砕する場合が殆どである。そして、かかる石綿含有廃材の破砕は、中間処理場などで行われてきた。これは、破砕を行う場合には、粉塵の飛散や作業者の暴露などに関して対策が施された設備が必要であり、また、廃棄物処理法に定める処理業の許可が必要なことから処理を行える場所が限られていたことによる。このため、石綿含有廃材を葺き替え現場から一旦、破砕処理場まで運搬し破砕した後、さらにリサイクル処理場まで運搬するという、二重の運搬工程を強いられていた。また、石綿含有廃材を運搬する際に、路上に石綿粉塵を飛散させる恐れがあるとの指摘もある。さらに、一般に、破砕処理場は、周辺環境への配慮から人里離れた場所に設けられている傾向があり、これに対して、葺き替え現場は、工業地域や市街地に存在していることが多い。このような現状も、運搬工程を非効率的なものとしている。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、石綿含有廃材をリサイクルに供するに際し、運搬の非効率化を伴うことなく、石綿粉塵の飛散防止を確保した非石綿化処理を促進することができる、破砕梱包装置を提供することを目的とする。なお、本発明において、石綿含有廃材(以下、単に廃材と記す)とは、石綿を含有する無機質系材料の廃材を意味する。石綿を含有する無機質系材料とは、繊維原料の少なくとも一部として石綿が使用されるとともに、マトリックスが、セメントの水和あるいは石灰質原料と珪酸質原料とをオートクレーブ養生して生成された珪酸カルシウム水和物等により構成された材料であり、必要に応じて各種の充填材や混和材が併用されることも多い。具体的には、石綿スレートや石綿セメント系屋根材等の石綿セメント板、石綿セメント珪酸カルシウム板、セメント系瓦材、煙突材、押出成形材等をあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置は、底部を構成する移動可能な床台と、側部及び天井部を構成するハウジングとによって包囲・画定された処理室を有し、前記処理室内に搭載され、前記ハウジングに設けられた投入口より受け入れられた廃材を破砕する破砕機と、前記処理室内に搭載され、前記破砕機による破砕後の廃材を袋詰めする梱包機と、前記処理室内に搭載され、前記梱包機で梱包された袋詰め廃材を、前記ハウジングに設けられた放出口に搬送する放出搬送路と、前記処理室内に搭載され、少なくとも前記破砕機内、前記梱包機内、及び、前記放出搬送路上の袋表面、に対して集塵を行う集塵機とを備える。
【0008】
前記破砕機は、破砕後の最大寸法が200mm未満であり、且つ、粒径が1mm未満である微粉の含有比率が5%以下となるように粒度調整して廃材を破砕できるようにすると好適である。
【0009】
また、前記処理室内に搭載され、前記投入口から前記梱包機までの経路中に含水率調整機構を更に備え、前記含水率調整機構は、破砕後の廃材における含水率を20%以下に調整できるようにすると好適である。
【0010】
前記梱包機は、廃材の乾燥状態における質量として5〜30kg/袋の範囲で袋詰めを行うようにすると好適である。
【0011】
好適には、前記床台は、原動機が設けられ、自走可能であり、または、前記処理室は、コンテナ状のユニットとして構成され、車両に積載して移動する。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、石綿をリサイクルに供するに際し、運搬の非効率化を伴うことなく、石綿粉塵の飛散防止を確保した非石綿化処理を促進することができる。
【0013】
なお、本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施の形態によって更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置の斜視図であり、図2は、移動式破砕梱包装置の内部構成を平面的に模式的に示す図である。石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置1は、主に、床台3と、破砕機5と、梱包機7と、放出搬送路9と、集塵機11とを備えている。
【0016】
本実施の形態では、床台3は、車両の車台を兼ねることにより移動可能に構成することができる。一例として、本実施の形態では、原動機を備えた自走可能な構成を有し、より具体的にはトラックをベースとしたものである。なお、原動機には、エンジンは勿論、モータなども含まれ、いずれの態様でも駆動力を発生させるものであれば含まれる。さらに、本発明においては、移動可能な床台3としては、必ずしも自走可能である必要はなく、他の駆動源によって牽引される態様でもよい。あるいは、移動式破砕梱包装置を、床台とハウジングとによって包囲・画定されたコンテナ状のユニットとして構成し、このユニットを車両に積載して所望の場所に移動し、移動した場所でこのユニットを車両から下ろして廃材を処理することもできる。
【0017】
本願発明の移動式破砕梱包装置は、ハウジング13によって外周としての四方の壁と天井が構成され、このハウジングと床台3とによって移動式破砕梱包装置の外周全体が形成される。床台3には、ハウジング13によって包囲・画定された処理室15が設けられている。ハウジング13のうち、少なくとも処理室15の前後面、左右側面、上面を構成する部分には、吸音材17が設けられている。また、一例として、処理室15の後面のハウジング13には、投入口19が設けられており、処理室15の左側面のハウジング13には、放出口21が設けられている。
【0018】
破砕機5は、処理室15内に搭載されており、鬼歯クラッシャーを破砕手段として供え、投入口19より供給された廃材を破砕する。後述するリサイクル材への変換に対応した好適な具体例としては、破砕機5は、破砕後の最大寸法が200mm未満であり、且つ、粒径が1mm未満である微粉の含有比率が5%以下となるように、粒度を調整して廃材を破砕することができる。
【0019】
石綿を含有する無機質系材料に含まれた状態にある石綿は非飛散性であるので、このような無機質系材料が施工された状態にあるときは、石綿粉塵を発生することはないが、取り外す際には石綿粉塵を発生する恐れがあるため、通常は散水等により湿潤状態にして取り外されて廃材となるので、廃材は含水率が高い状態にあることが多い。このような廃材は、投入口19から、コンベアなどを介して、破砕機5に供給され破砕される。このとき発生する粉塵は、集塵機11によって吸引される。なお、廃材を粉砕するときに粉塵の発生を抑制するためには、廃材の含水率は高い方がよい。前記したとおり、廃材は、含水率が高い状態にあることが多いが、乾燥状態にある場合には、予め廃材に散水等を行って含水率を高めたり、あるいは廃材に散水しながら粉砕するのが好適である。
【0020】
梱包機7は、処理室15内に搭載されており、破砕機5による破砕後の廃材を袋詰めする。より詳細には、梱包機7の近傍に、中間コンベア23と、袋供給機25とが設けられており、中間コンベア23は、破砕機5の出口と梱包機7の入口とを架橋するように設けられており、破砕機5から放出された破砕後の廃材は、中間コンベア23に載って梱包機7に投入される。さらに、梱包機7には、袋供給機25から空袋が供給されており、破砕後の廃材は、梱包機7内において袋詰めされる。後述するセメント製造用ロータリーキルンを用いてリサイクル材へ変換する場合に対応した好適な具体例として、梱包機7は、廃材の乾燥状態における質量として5〜30kg/袋の範囲で袋詰めを行うことができる。破砕された廃材を袋詰めするための袋体としては、ダイオキシンの発生の恐れのない可燃性のものであって、廃材の袋詰めを行いやすく、廃材を袋詰めした後のハンドリング性に優れたものが好適であり、例えば厚さが0.1〜0.3mmの、ポリエステル等の樹脂、土嚢袋、ラミネート紙付クラフト紙製の袋体等をあげることができるが、袋詰めされた廃材の密閉性を考慮すれば、ポリエステル等の樹脂やラミネート紙付クラフト紙製の袋体が好適である。
【0021】
尚、本実施の形態では、投入口19から梱包機7までの経路中に、図示省略する含水率調整機構を更に備える。前記したとおり、通常粉砕された廃材は高含水率状態にあるので、後述するセメント製造用ロータリーキルンを用いてリサイクル材へ変換する場合に対応した好適な具体例として、含水率調整機構は、破砕後の廃材における含水率を20%以下に調整する。含水率調整機構としては、例えば赤外線による加熱乾燥法、マイクロ波による加熱乾燥法等を例示することができる。含水率調整機構は、破砕機5内、中間コンベア23上、あるいは、梱包機7内などに設けることができるが、本実施の形態では、一例として、梱包機7内に設けられているものとする。
【0022】
放出搬送路9は、処理室15内に搭載されており、梱包機7で梱包された袋詰め廃材を放出口21に搬送する。具体的な一例として、放出搬送路9は、上流端が梱包機7内に配置され、下流端が放出口21に達するコンベアより構成されている。
【0023】
集塵機11は、処理室15内に搭載されており、破砕機5内、梱包機7内、及び、放出搬送路9上の袋表面、に対して集塵を行えるように、対応するダクトや吸い込み口が接続・配置されている。好適な具体例としては、集塵機11は、処理室15外に最大寸法が5μm以上の粉塵を排出しないするためのフィルター(例えばヘパフィルター等)を具備している。また、集塵機11は、処理室内の個々の処理設備を集塵するだけでなく、処理室15の内部全体を負圧に保つ。集塵機で集塵された空気は、前記フィルターを通過し除塵され、ハウジングに設けられた排気口(図示されない)から外部に排気されるので、石綿粉塵を外部に飛散させることはない。なお、図に記載された集塵機の台数は1台であるが、複数台であってもよい。
【0024】
次に、上述した構成を有する石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置の動作について説明する。
【0025】
廃材は、葺き替え現場、またはリサイクル材料変換施設に移動配置された移動式破砕梱包装置1の投入口19から、コンベアなどを介して、破砕機5に供給される。廃材は、破砕機5において、リサイクル処理の効率化に向けて破砕される。このとき発生する粉塵は、集塵機11によって吸引される。次に、破砕された廃材は、中間コンベア23によって搬送され、梱包機7に投入される。そして、梱包機7において袋詰めされ、放出搬送路9を通って放出口21に送られる。また、このとき、梱包機7内や放出搬送路9上の袋表面に対しても集塵機11による集塵が行われる。なお、その際、袋表面などにエアを吹き当てながら吸引を行うと、付着している粉塵まで効率よく集塵することが可能となる。また、処理室15の内部全体は、集塵機11により負圧に保たれている。
【0026】
このように本実施の形態に係る石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置によれば、リサイクルのための破砕処理場までの運搬を強いられることなく、葺き替え現場において、石綿粉塵の飛散防止を確保した破砕・梱包を行うことができ、あるいは、破砕処理場からリサイクル材料変換施設までの運搬を強いられることなく、リサイクル材料変換施設において、石綿粉塵の飛散防止を確保した破砕・梱包を行うことができる。よって、石綿をリサイクルに供するに際し、運搬の非効率化を伴うことなく、粉塵飛散を防止した非石綿化処理を促進することができる。
【0027】
次に、上記のようにして破砕された廃材を、リサイクル材料へと変換する具体的な手法についても述べておく。すなわち、具体的な例としては、セメント製造用ロータリーキルンを用いて、セメント製造時に廃材をセメント原料とともにキルン内で加熱することにより、セメントへのリサイクルを行うものである。以下に一般的なセメント製造用ロータリーキルンを用いた場合を例にとって、より具体的に述べる。
【0028】
一般的に、セメントの原料には、石灰石を主体とし、他に粘土、珪石、鉄原料等が用いられる。粗砕、混合、微粉砕されたセメント原料は、まず、予熱装置(プレヒーター)に投入されて加熱され、次いでロータリーキルンに投入されて焼成される。通常のセメント製造設備において、予熱装置は、粉体状の原料に適用されるように構成されている。従って、廃材をセメント原料とともに、予熱装置を通してからロータリーキルンに投入しようとすると、廃材を粉末化しなければならず、多量の石綿粉塵を発生するので好ましくない。従って、本発明に関する手法では、廃材は、袋詰めしたままロータリーキルンの窯尻からキルン内に投入するのがよい。また、予熱装置を通過したセメント原料もロータリーキルンの窯尻からキルン内に投入される。
【0029】
石綿粉塵が、ロータリーキルンからの排気中に混入することなく、該廃材中の石綿を確実に非石綿化し、且つセメントに変換して再利用するためには、廃材を最大寸法が200mm未満であり且つ粒径が1mm未満の微粉の含有比率が5%以下であるように粒度調整するとともにその含水率を20%以下に調整し、該廃材の乾燥状態での質量として5〜30kg/袋の範囲で袋詰めしてロータリーキルン内へ投入することが好適である。
【0030】
廃材の最大寸法が200mm以上であると、破砕した廃材の袋詰めが行いにくいうえに、ロータリーキルン投入時の落下衝撃により、ロータリーキルン内部に損傷を与える危険性があることから好ましくない。また、粒径が1mm未満の微粉の含有比率が5%を上回ると、窯尻から廃材をロータリーキルン内に投入したときに、石綿粉塵を生じやすくなることから好ましくない。
【0031】
また、廃材を袋詰めしてロータリーキルン内へ投入するのは、ロータリーキルンの窯尻から廃材をキルン内に投入するまでに、石綿粉塵の発生を防ぐためである。袋詰めされる廃材の含水率が高い方が、破砕時、運搬時の石綿粉塵を抑制するためには好適であるが、含水率が20%を上回ると、ロータリーキルンの窯尻から廃材をキルン内に投入したときに、廃材に含まれる水分が急激に水蒸気に変わる際の体積膨張により、廃材が爆裂して石綿粉塵を発生しやすくなり、また、ロータリーキルンに悪影響を与える危険があることから望ましくない。従って、粒度調整した廃材の含水率を20%以下に調整して袋詰めすることが好適である。
【0032】
また、袋詰めされる廃材の1袋あたりの質量が30kgを上回ると、作業効率が低下することから好ましくない。また、袋詰めされる廃材の1袋あたり廃材の質量が5kgを下回ると、袋詰めに要するコストが高くなりすぎるので好ましくない。なお、本願における含水率とは、(水を含んだ状態における対象物の質量−乾燥状態における対象物の質量)/乾燥状態における対象物の質量×100(%)を意味する。また、乾燥状態とは、対象物を105℃で24時間加熱乾燥した後の状態をいう。
【0033】
また、ロータリーキルンに投入する廃材とセメント原料との合計量に占める廃材の比率は、乾燥状態における質量比率で5%以下とするのがよい。廃材の質量比率が5%を上回ると、得られるセメントの性能のバラツキが大きくなり、セメントとして使用しにくくなることから好ましくない。また、本願は、廃材の処理を目的とするものであるから、廃材の質量比率が1%を下回ると、技術的には何等問題はないが、廃材を処理する効率が低下するので本願の趣旨にはそぐわない。
【0034】
袋詰めされた廃材のロータリーキルンの窯尻への投入は、ベルトコンベヤー等を使用すればよい。予熱装置で加熱されたセメント原料とともにロータリーキルンの窯尻からロータリーキルン内に投入された袋詰めされた廃材は、ロータリーキルン内で回転しながら950〜1450℃で30〜60分間加熱処理される。この加熱処理の範囲内において、最高温度を1200℃以上とするとともに1200℃以上の温度で加熱される時間を15分以上とするのが好適である。この加熱処理により、廃材中の石綿が非石綿化されるとともにセメント原料とともに焼成されて焼結体(セメントクリンカー)となる。前記加熱処理に関する温度および時間の条件は、一般的なセメントの焼成条件であるので、通常のセメントを製造する条件により、廃材を処理することができる。
【0035】
ロータリーキルン内での廃材の加熱処理について更に説明すると、予熱装置で加熱されたセメント原料とともにロータリーキルンの窯尻からロータリーキルン内に投入された袋詰めされた廃材は、袋体が燃焼してロータリーキルン内に露出するとともに、廃材中の水分が蒸発する。一方、窯前方向から微粉炭を燃焼させてロータリーキルン内に送り込まれた熱風は、ロータリーキルンの窯尻側から排出され、集塵装置により熱風中の粉塵が集塵されるが、廃材を前記した条件に調整しておくことにより、集塵された粉塵中には石綿粉塵は含まれない。ロータリーキルンの外へと運び出された熱風の排気中に石綿粉塵が含まれていると、排気を集塵した粉塵に石綿粉塵が含有されるので、その処理に多大なコストと手間とを要することになり好ましくない。
【0036】
窯尻からロータリーキルン内に投入された廃材は、ロータリーキルン内を回転しながら窯尻側から窯前側へと移動し、セメント原料とともに混合され、950〜1450℃で30〜60分間加熱処理され、石綿は非石綿化されるとともに、廃材を構成する成分がセメント原料とともに焼成されて焼結体となる。
【0037】
ロータリーキルン内の温度は、窯尻で950〜1050℃程度であり、中間部の最高温度が1450℃であり、窯前が1200℃程度である。また、焼結体を得るためには、前記加熱処理の範囲内において、最高温度を1200℃以上とするとともに1200℃以上の温度で加熱される時間を15分以上とするのがよい。ロータリーキルン内は高温であるので、ロータリーキルン内で石綿粉塵が発生しても極めて短時間で非石綿化されるため、窯尻から廃材を投入した直後の石綿粉塵の発生を抑制することができれば、石綿粉塵がロータリーキルンからの排気中に含有されることはない。
【0038】
このようにして得られた焼結体は、通常のセメント製造の場合と同様、ロータリーキルンから取り出され、冷却機において冷却された後粉末化され、セメントとして再生される。なお、粉末化に先立ち、再生されたセメントの凝結時間調整を目的として石膏を添加することができることはいうまでもない。
【0039】
また、リサイクル材料変換施設の別の形態としては、熔融してスラグ化し、路盤改良材等としてリサイクルする施設を例示することができる。
【0040】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係る石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置の斜視図である。
【図2】図1の移動式破砕梱包装置に関し、上方からみた内部構造を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 移動式破砕梱包装置
3 床台
5 破砕機
7 梱包機
9 放出搬送路
11 集塵機
13 ハウジング
15 処理室
19 投入口
21 放出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を構成する移動可能な床台と、側部及び天井部を構成するハウジングとによって包囲・画定された処理室を有し、
前記処理室内に搭載され、前記ハウジングに設けられた投入口より受け入れられた石綿含有廃材を破砕する破砕機と、
前記処理室内に搭載され、前記破砕機による破砕後の石綿含有廃材を袋詰めする梱包機と、
前記処理室内に搭載され、前記梱包機で梱包された袋詰め石綿含有廃材を、前記ハウジングに設けられた放出口に搬送する放出搬送路と、
前記処理室内に搭載され、少なくとも前記破砕機内、前記梱包機内、及び、前記放出搬送路上の袋表面、に対して集塵を行う集塵機と
を備えた石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。
【請求項2】
前記破砕機は、破砕後の最大寸法が200mm未満であり、且つ、粒径が1mm未満である微粉の含有比率が5%以下となるように粒度調整して石綿含有廃材を破砕する、
請求項1に記載の石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。
【請求項3】
前記処理室内に搭載され、前記投入口から前記梱包機までの経路中に含水率調整機構を更に備え、
前記含水率調整機構は、破砕後の石綿含有廃材における含水率を20%以下に調整する、
請求項1又は2に記載の石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。
【請求項4】
前記梱包機は、石綿含有廃材の乾燥状態における質量として5〜30kg/袋の範囲で袋詰めを行う、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。
【請求項5】
前記床台は、原動機が設けられ、自走可能である、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。
【請求項6】
前記処理室は、コンテナ状のユニットとして構成され、車両に積載して移動する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の石綿含有廃材の移動式破砕梱包装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−196191(P2007−196191A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20662(P2006−20662)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】